平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録

第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午前10時0分開議
○議長(山田正彦君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第136号から議案第162号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 41番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 1つ目に、和歌山県の食品加工戦略についてであります。
 8月26日から27日に高知県へ、県当局の方々やわかやま産業振興財団コーディネーターの中谷吉隆先生と一緒に出張いたしてまいりまして、和歌山県同様、恵まれた農水産物資源を持つ高知県の産業振興計画の大きな柱である食品加工における人材育成のための高知大学土佐FBC(フード・ビジネス・クリエーター)の取り組みの説明を受けるとともに、土佐FBCから巣立った事業者や企業へ訪問、また、土佐FBC内で実際に昆布からのアルギン酸の抽出実験を行う実験授業も見せていただきました。
 ちょっと小さいんですけど、これが土佐FBC内の実験風景でありまして(パネルを示す)、実際に企業の人、あるいは事業者の人、講師の人3人ぐらいで、10人強の生徒さんが熱心にビーカーとか試験管を使って抽出実験をやられておりました。
 翌日、わかやま産業振興財団元コーディネーター、元花王執行役員で、現高知県工業技術センター資源利用加工特別技術支援員として御活躍中の木村昭雄氏のお導きで高知県工業技術センターへ伺って、主に食品開発の取り組み、人材育成、依頼分析、設備利用推進の状況等を聞かせていただきましたが、昨年度の依頼分析だけでも、食品加工分野中心に年間700件、設備利用は1155件に及んでいるという利用頻度の多さと、工業技術センターにおいても人材育成の取り組みが積極的に行われていることに驚きを覚えました。
 その後、センター内の施設を見学させていただいて、広々とした食品試作室2室にはたくさんの食品加工機器が設置され、企業の方が実際に利用されていました。(パネルを示す)これが高知県の工業技術センターの食品試作室であります。こうやって企業の方や研究員の方がおられて、熱心にこの広々したところで試作作業に励んでおりました。
 また、2年前にJST事業で和歌山県と同様に落選した高知県でありましたが、それにめげずに県単独で、機械を含め、約2億円の予算で隣接した中庭に建設した食品加工研究棟を拝見することができました。(パネルを示す)これが食品加工研究棟でありまして、これも広いですね。この中に加工機械等々がたくさん置かれてて、そしてその裏には、こういう形でビニールで仕切られてるんですけど、その原材料とか、あるいは試作品を搬出入できるようなトラックが横づけできる、そういう出入り口も設けてありました。中には、今申し上げたように、食品加工機器と広々とした実験実習室があり、機械メーカーの方が常駐して技術指導されていましたし、そのトラックを横づけできる搬出入口もあったということで、まことに使い勝手のいいものでありました。
 そこで質問ですが、1つ目、平成22年度からスタートした和歌山県産業技術基本計画も4年目を迎えましたが、県の重点5分野の1つであるバイオ・食品分野のこれまでの具体的な戦略、取り組みの進捗状況を商工観光労働部長にお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 和歌山県産業技術基本計画におけるバイオ・食品分野の取り組みを進めるため、工業技術センターでは食品産業部を設置し、民間出身の食品産業部長の登用や農林関係の研究機関等の研究員の配置など、組織の充実を図ってきたところです。
 さらに、食品加工の試作を行える機器の充実、企業研究者への加工設備機器の開放の周知など、県内食品産業の新商品開発や加工技術の課題解決などに係る支援を強化してきました。
 また、食品加工のニーズを捉えるための技術相談会や研究報告会、食品製造業向けの品質管理や技術向上研修の開催など、食品加工への参入を目指す団体から先端的な技術開発を目指す企業までの食品加工に関する技術の向上の取り組みを通しで支援する施策も充実させてきました。
 これらの体制と仕組みに加え、国の地域イノベーション戦略支援プログラム、県の先駆的産業技術研究開発支援事業やわかやま中小企業元気ファンドなど、競争的資金の獲得により、機能性研究や商品開発の実績が顕著にあらわれてきたところです。その結果、基本計画に定めた数値目標につきましても、バイオ・食品分野では、平成22年度から24年度までの3年間の実績で見ると、工業全体の製造品出荷額と付加価値額がそれぞれ5%以上の伸び率を示すなど、計画の進捗はおおむね順調と考えております。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、6月の定例会で、私は、本県の工業技術センターの食品産業部の食品加工室を企業等に気軽に使っていただけるような移設、改築についてお尋ねさせていただきました。その際の仁坂知事の御答弁の中で、本県の工業技術センターの発祥が他県のように農業振興機関ではなく技術開発機関として始まったということと、本県の幾つかの農業試験場でも加工の実験を少しはやっていて、それを活用したらどうかという意味合いのお話が非常に印象的で、ずっと耳について離れませんでした。
 それならば、県下にある果樹試験場なども、工業技術センターとも十分連携をとった上で、梅、柿、ミカン、桃などの機能性研究や加工食品開発のための機能、役割を担っていただけるような果樹試験場施設の活用に合わせた充実はお考えいただけるのでしょうか。知事にお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 果樹関係の試験場では加工に適した栽培技術や果実の成分分析を、工業技術センターでは機能性成分の評価や加工品の試作などの技術開発支援を行い、これらを企業と有機的に連携させることにより和歌山県の食品加工を推進しております。
 機能性成分の豊富な梅新品種、例えば「露茜」の新商品開発に向けた研究を例に挙げますと、果樹試験場うめ研究所は、効率的に果実の赤い色の赤色色素をふやす技術開発、それから色素の成分分析などを行っておりまして、一方、これと連携して工業技術センターでは、食品産業部に保有している加熱水蒸気発生装置とか、あるいは高性能におい嗅ぎ装置つきガスクロマトグラフィーなどの機器を活用して、色を生かした食品素材の開発、試作加工品の香りの分析など、より高度な技術開発支援を行っております。
 このほかにも、梅酒の香りに着目した新たな商品開発とか、あんぽ柿の感性価値評価による食感や色の品質調査などの商品開発に、両研究機関が連携して取り組んでおるところでございます。
 一言で言うと、生の農産品をもとにしたちょっとした成分分析とか加工方法などの試験は、それぞれの農業試験場で行って、高度の試験研究は──機器も高いもんですから、あるいは扱う人の専門性も高いもんですから──工業技術センターに集中するという方式をとってるわけでございます。
 工業技術センターの試験研究の際にも、やっぱり農産品の専門知識も必要でございますよね。さらに、今度はそれぞれの農業試験場の試験研究も、ちょっと高度なことをやっとかないとスキルが落ちてくるということもございますので、実は人員的にも、果樹試験場等から工業技術センターへ研究員の配置を行って人事交流をしているわけです。それで、食品加工の本格的な技術開発が円滑に行われるように工夫をしているところでございます。
 今後とも連携を密にしてやらせたいというふうに思っておりますが、議員の御指摘を受けて考えるところは、この点もPRも大いにしないといけないというふうに思います。工業技術センターも、我々が見学に行きますと、中小企業の方々が、結構、それぞれの試験研究を工業技術センターにある結構高い機械なんかでやってるという図をよく見るんですけれども、もっともっとたくさんの人が利用していただけるようにPRも大いにやっていきたい、そんなふうに思っております。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 先ほどパネルをお見せしたように、工業技術センターの1階に作業ができる食品試作室がありますと、それも今さっきお見せしたように、トラックを横づけできるような搬出入口があれば、企業の方も、センターの所員の方も、実にスムーズに商品開発に取り組めるわけであります。
 例えば、新潟県食品研究センターでは米加工のメーカーの方の米菓や切り餅づくりの試作、また宮崎県食品開発センターでは漬物メーカーの干したくあんの機能性成分に着目した研究作業が、それぞれセンターの所員の技術指導のもと行われていましたし、高知県工業技術センターでは、ユズ皮の油分を抽出する作業を機械メーカーの方とともに食品業者の方が行おうとしていました。それも、機械や作業室の使用が事前に予約されているためか、非常にオープンな形で行われていました。
 機能性分析、評価といった技術開発支援のみならず、その場で実験、試作ができる企業、事業者のインキュベーション、起業支援に大きな力添えになる、そんな工業技術センターであってほしいなあと思いますし、それだけ本県として重点を置くべき食品加工分野ではないかと思います。
 今後の地域イノベーション戦略支援プログラムの進捗と商品の具現化も見据えながら、全国でも指折りの高品質な果実を生み出す果樹試験場とさらに連携を密にしていただいて、県庁内の農商工連携を進めていただきたいと要望さしていただきます。
 3点目に、特定保健用食品(トクホ)の北海道版、食品機能性表示制度「ヘルシーDo」が平成25年8月に始まりました。2011年に始まった北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区の取り組みの一環で、道庁が消費者庁と協議してきました。
 認定条件は、道内の産業育成が前提としてあって、機能性素材を道内でつくり、基本的に道内の工場で商品を製造することと、機能性素材に関する論文をつくり、科学雑誌で掲載することです。表示については、健康増進の効能は表示できず、「健康でいられる体づくりに関する科学的な研究が行われた」という表示しかできません。それでも、着実な前進だと私は思います。初回認定取得は12商品でした。「今後も追随企業がめじろ押しだ」と北海道バイオ工業会の小砂憲一会長はおっしゃっています。
 ことし6月、政府の規制改革会議において、健康機能を農林水産物にも表示することを認める方針も打ち出してきており、この12月には具体的なものも見えてくるのではと期待を寄せるものであります。
 ポンジュースのえひめ飲料は、ことし3月に温州ミカンを原料にしたジュース「アシタノカラダ」の容器上に「β-クリプトキサンチン みかん約3個分」、「農研機構果樹研究所の研究成果を活かして開発した商品」と書いていますが、具体的な効能は書かれていません。
 神奈川県では、ことし8月、農林水産物の健康機能を生活習慣病の予防に生かそうと、県立保健福祉大学と協力して医食農連携プロジェクトをスタートさせ、今後3年間で県内スーパーなどに栄養ケアステーションを設置して、管理栄養士が常駐して消費者に農林水産物の機能性を生かしたレシピを紹介したり、栄養指導をしたりしていくそうであります。
 医食農連携プロジェクトには、食品の機能性表示への方向性も含まれてきます。政府の規制改革会議の一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備を盛り込んだ答申の流れもあり、消費者庁は今月にも、健康食品の広告、表示に関するガイドライン(指針)を新たに策定する意向ですし、北海道に端を発した全国各地の取り組みも今後加速される中、トクホなら効能実験に2~3億円かかるところ、北海道のヘルシーDoなら、研究、論文作成にかかる費用が2000万円程度で済むということであります。本県の中小零細食品業者も、もっと食品加工開発に取り組んでいただけるのではないかと期待されます。
 健康によいとされる有用果実資源等が豊富にあり、機能性研究も国の競争的資金をいただきながら鋭意推進して商品化を図ろうとしている本県であります。その動きをテンポアップするためにも、地域貢献のミッションを持っている県下の大学等にも論文作成に協力いただきながら、ぜひ和歌山版の食品機能性表示制度の検討を始めていただきたいと思います。これは、要望にさせていただきます。
 和歌山下津港の将来戦略についてであります。
 去る9月4日から6日、京都府と福井県に改新クラブ5名で視察調査に行ってまいりました。初日には京都府議会を訪れて、去る12月4日にユネスコの無形文化遺産に登録された「和食;日本人の伝統的な食文化」を中心となって支援してきた京都府の取り組みを、3日目には再開を待つ美浜原子力発電所のスタンバイ状況を、そして2日目には、日本海側拠点港である京都舞鶴港の地方港湾としての戦略について調査させていただきました。
 舞鶴港は、若狭湾の中でもさらに湾内にあって、防波堤も要らないくらい波がない、静穏度が高い天然の良港であり、もともと軍港として栄えた名残の赤れんがの倉庫群が観光スポットにもなっている港であります。釜山港との間に週2回の定期航路、中国の大連、青島、上海との間に週1便の定期航路、そして月1便でロシアのナホトカとの定期航路がありますし、北海道の小樽との間に毎日発着の直通フェリーもあります。石炭の輸入が多く、輸出も主に中古車や石炭灰といった廃棄物、再利用ガラスや紙、パルプ類ということで、このところ、3年連続、取扱量も過去最高を更新しています。
 平成23年に日本海側拠点港に選定された京都舞鶴港は、日本海側の主要港湾として、国際競争力の強化、災害時の太平洋側港湾の代替機能の確保といった目的を有し、2025年を目標年度に明確な港湾戦略を描いています。
 すなわち、1つ目、中国航路週4便、韓国航路週1便の国際フェリーの拠点として、2番目に、既存航路を活用した国際海上コンテナの拠点として中、韓、露との交流拡大、それにあわせた国際海上コンテナターミナルの整備、3点目に、外航クルーズ船の拠点として年間14回程度の寄港を目指しています。
 日本海側の代表的な地方港湾という地の利もあるとはいえ、貨物取扱量からしても、我が和歌山下津港は負けてはいない国際拠点港湾であり、太平洋側の玄関港であります。それこそ、背後地の観光地ヘ人をいざなう観光面からのクルーズ船のさらなる誘致、商業貨物のための外国との定期航路の一層の確保、あるいは当港ならではの取扱貨物の選択と集中と、それに付随した港湾施設の活用と整備等々、明確な将来に向けた港湾戦略があってしかるべきであります。
 現状は、鉄鋼業、石油精製業の原材料や製品の物流拠点、そしてコンテナ取扱量の約半分は花王和歌山工場への動物油、植物油などの原料輸入に頼っており、港には鋼管や季節的に原木や塩などが野積みされているのが目につくぐらいの状況であり、厳しい現実があります。
 そこで質問ですが、1つ目、和歌山下津港における外航クルーズ船誘致の現状と今後の戦略について、商工観光労働部長にお願いいたします。
○議長(山田正彦君) 商工観光労働部長。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 外航クルーズ船の本県への誘致につきましては、中国上海市にある客船運航会社の拠点や東アジアにある旅行会社に対し、寄港を働きかけるなど、積極的に取り組んでまいりました。
 その結果、平成24年8月及び10月に計3回、イタリアのコスタクルーズ社が運航する「コスタビクトリア」が和歌山下津港に寄港し、3日間で3000人を超える観光客が県内観光やショッピングを楽しみました。
 その後も、平成25年3月に、世界最大級のクルーズコンベンション「シートレード・クルーズ・シッピング・マイアミ」に出展するなど、引き続き本県への誘致に取り組んでいるところです。
 今後とも、客船運航会社や旅行会社に対し、本県観光資源の魅力をセールスするなど、和歌山下津港を初めとする本県への誘致に向け、積極的に取り組んでまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、和歌山下津港における取扱貨物の現状と本港の特徴を生かした今後の戦略について、企画部長にお伺いします。
○議長(山田正彦君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 和歌山下津港につきましての取扱貨物の現状と、本港の特徴を生かした今後の戦略についてでございますが、和歌山下津港は、本県唯一の国際拠点港湾として、輸出入貨物が全体の6割を占め、3年連続で増加しております。
 公共岸壁では、鋼材、原塩などのばら積み貨物や、化学工業品、製造食品、産業機械などのコンテナ貨物を取り扱っております。特にコンテナ貨物に関して、韓国・釜山との間に2航路、神戸港との間に1航路、合計3つの定期航路があり、平成24年の取扱量につきましては、20フィートコンテナを1本とする単位では4144本と前年比8%増となりましたが、輸出が輸入の4分の1と不均衡が発生するとともに、本県の製品輸出や消費物輸入において、本港の利用割合が低い状況にあります。
 このため、県では、本県のすぐれた産品や製品などの新たな輸出貨物発掘や、他港を利用している県内の輸出入企業に対して本港への利用転換を働きかけるとともに、船会社に対して、本港の利便性向上につながる航路の拡充を求めるポートセールス活動を精力的に行っておりまして、その結果、先ほど申しましたとおり、3年連続というような取扱量の拡大にもつながったと考えております。
 今後も引き続き、ばら積みやコンテナ貨物の中で本港の利用可能性の高い貨物とその荷主の洗い出しに努めまして、本港に拠点がある県内物流事業者とともに、荷主や船会社に対するポートセールスに積極的に取り組んでまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 3点目に、その今まで答えていただいた戦略を踏まえた将来における港湾整備について、県土整備部長にお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 和歌山下津港の整備につきましては、現在、本港区では、外航クルーズ船の安全な入出港や大型貨物船の荷役効率の向上のため本港沖防波堤を、また、物流効率化を図るため青岸岸壁及び臨港道路の整備を行っております。さらに、北港区では、企業立地のため北港沖防波堤の整備を行っております。
 今後も、地域の経済活性化に資するため、和歌山下津港の利便性、安全性の向上を図る施設の整備や維持管理に努めてまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 日本海側の地方港の雄として生き残りをかけて頑張っている港ということで、以前から興味のあった京都舞鶴港を訪れたわけであります。そしたら、目標年度を定めた京都舞鶴港の全体的な将来に向けた港湾戦略をきちっと立てておられました。
 今回、この質問を取り上げる中で、国際クルーズ船は観光交流課、航路や貨物戦略は総合交通政策課、そして港湾整備は港湾整備課ということで、以前より細分化された縦割り行政の現実と課題をかいま見た気がしました。ぜひ国際拠点港湾として、和歌山下津港の将来を見据えたまとまった港湾戦略を県全体の横断的な施策として今後提示いただきますよう、要望させていただきます。
 3点目です。サイクリングロード整備についてであります。
 平成26年度に向けた和歌山県の新政策のうち、魅力ある地域づくりとして、自転車利用促進事業や紀の川サイクリングロードのみならず、川、海、山のサイクリングロードの利用環境の整備の積極的な推進をうたっていただいております。紀の川サイクリングロードでは、紀の川、吉野川の源流までつなげていただきたいものですが、自県内のサイクリング促進にも、積極的な奈良県との協調にも御尽力いただいておりますし、山のサイクリングロードでは高野山へ向かうコース、海のルートは紀中・紀南へのルートと、健康づくりに、環境負荷軽減に、そして観光振興に、今後のサイクリングロード整備が楽しみであります。
 もう1つ考えていただきたいのは、和歌山市の海岸線から大阪との府県境を越えて走る岬・泉南方面へのルートであります。折しも岬町は、国土交通省のみなとオアシス認定に向けて大きく動いています。ことし8月25日には、「みなとオアシスみさき」の仮登録式が行われました。
 みなとオアシスとは、国土交通省が「みなとまちづくり」として、港に関する交流施設、旅客ターミナル、緑地、マリーナなどを活用した交流拠点地区の愛称であります。すなわち、海の風景、潮の香りといった自然や、古くから交易等の場として栄えた時代をほうふつさせる歴史、海に開かれた港町として歩んできた文化など、多くの魅力で知的刺激を与えてくれる港の元来有する資源を人々が訪れやすいものとするため、休憩スペース、トイレ及び駐車場を活用してサービスを提供できる港の施設や地区をみなとオアシスとして登録し、広く案内することにより、地域のにぎわい創出を図ることを目的とするものです。
 そのみなとオアシスの岬町における海岸部の仕掛けの1つとして、和歌山市の加太、河西公園に向けたサイクリングコースを検討しておられます。大阪との府県境は、峠越えの少々ハードなコースもありますが、雄ノ山峠を越えれば、山中渓までのコース、和歌山市木ノ本、西庄から岬町の甲山を通るコース、それに加太の大川峠を抜けるコース等々、いろんなコースを楽しめますし、岬町にも和歌山市にも、土取り跡地を利用した公園や周遊道路があります。主に加太港、加太の町並み、コスモパーク加太、森林公園、大川峠から岬町の小島自然海浜、甲山、土取り跡地のいきいきパークみさきを経由して深日港、みさき公園裏の長松自然海浜、淡輪漁港、そしてせんなん里海公園への折り返しでちょうど50キロ、すばらしい海の景観が楽しめるサイクリングコースが検討されています。大阪側からも和歌山側からも、マニアには既に部分的に利用されているルートでもあります。
 岬町のみなとオアシスでのみなとまちづくりに協力しながら、大阪府南部に向けたサイクリングロードの利用環境の整備についてもコースの1つとしてお加えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。県土整備部長にお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 和歌山県の自転車利用推進策として、川、山、海のサイクリングロードの利用環境整備に取り組んでいるところです。
 まず、川のルートとしましては、和歌山市から九度山町に至る紀の川沿いのルートを平成25年3月に自転車道線として県道認定を行い、今後、整備を進めることとしております。さらに、九度山町から橋本市の区間につきましても、本議会に路線の延伸に係る議案を上程しているところです。また、世界遺産の高野山や熊野三山など紀伊山地をめぐる山のルートや、新宮市から和歌山市までの風光明媚な海岸沿いをめぐる海のルートについても、選定を進めているところです。
 議員御提案のみなとオアシスによるみなとまちづくりとの連携につきましては、いまだ岬町から具体的なお話をお伺いしておりませんけれども、今後、海のルートとしまして調整が図れる部分があれば、和歌山市や岬町とも連携をしてまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 私も、サラリーマン時代に4年近く横浜市の港近くで働いて、海にすぐ行けるところに住んでいたことがあります。その港には、漁港、プレジャーボートや遊漁船の船だまりがあったり、大きな客船が停泊していたり、海上コンテナやばら積み貨物がヤードや倉庫に並べられ、ガントリークレーンでコンテナが本船に積み込まれていたり、また、タグボートやはしけ船が行き来していたり、倉庫付近では港湾労働者がフォークリフトを駆使して荷役をしていたりと、一生懸命に働いている漁業者や港湾労働者の息遣いが感じられて、何とも言えない港の持つ独特な魅力的な雰囲気というものがありました。
 風光明媚な海岸線とともに、港の空気を体感しながらのサイクリングコースがごく身近にあるわけでありまして、大阪との府県境の魅力の再発見、また大阪府や府内の市町との交流も、和歌山県の発展のためには必要な要素であります。ぜひ民間のサイクリング愛好者の動向、趣向にも目を向けていただいて、サイクリングロードのさらなる利用環境整備に努めていただきたいと要望させていただきます。
 4点目、行きます。OECDの学習到達度調査(PISA)結果から。
 経済協力開発機構(OECD)は、本年10月8日に国際成人力調査(PIAAC)の結果を公表しました。2011年から2012年に24カ国・地域で初めて行われました。読解力、数的思考力、IT(情報技術)活用力の3分野で、日本は読解力、数的思考力の平均点で1位、IT活用力は、高い習熟度を持つ人の割合は10位でしたが、平均点では1位となり、全3分野で平均点はトップでした。
 この調査では、職業別のほかに学歴別でも各国の成人の社会適応能力がはかられ、中卒者、高卒者、大卒者、どの学歴でも高得点をマークし、中でも中卒者がOECD平均の高卒者と同程度で、アメリカ、ドイツの高卒者を上回っていました。生産現場で働く労働者の能力の高さが日本の経済を支えていると言っても過言ではない結果です。
 しかるに、12月3日には、OECDは、15歳、すなわち日本でいえば義務教育終了後の高校1年生対象に、65カ国・地域の約51万人に対して実施した学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。PISAは、実生活で直面する課題に対して知識や技能をどの程度活用できるかを評価するのが狙いとされています。単なる点数の優劣ではなく、グローバル人材の求められる今の世の中には必要な視点だと評価するものです。
 今回の日本の平均点は、読解力が4位、前回8位、科学的応用力も4位、前回5位、数学的応用力は7位、前回9位と、全3分野で前回に続き上昇、平均得点は3分野とも2000年の調査開始以降で最も高い結果でした。文部科学省は、脱ゆとり教育を掲げ、学習内容をふやし、思考力の育成などを重視した新学習指導要領などの成果で、生徒の学力が向上していると評価分析しています。
 ちなみに、今回は、日本からは全国191の高校などの1年生約6400人が参加しています。
 読解力では、論述式で、17問中11問で答えを書かない無答率がOECD平均より高く、苦手な傾向が根強いことがわかり、今後も書く力をつけていくことが要求されます。また、読解力は、日本を含む全ての参加国で女子のほうが男子よりも得点が高い傾向が見られています。科学的応用力でも、論述式で平均正答率がOECD平均より10ポイント以上低い問題もあったようです。数学的応用力でも、答えが書かれていない無答率の高さも目立っていたし、あわせて行われた生徒の意識調査では、「数学で学ぶ内容に興味がある」と答えたのは38%、これはOECD平均53%を大きく下回り、数学への興味、関心は参加国・地域の中でも際立って低い状況です。
 帝京大学の清水静海教授によれば、計算自体は小学生レベルなのに解けていないのは、問題の読解力が低く、生活場面に即して数学を使うことになれていないためだ、全く回答を書かない無回答は社会に出たときに『わかりません』と引き下がってしまうことにつながると警鐘を鳴らしています。
 そこで質問ですが、1点目、今回のPISAの調査結果で、国の脱ゆとり教育の学力向上策は功を奏してると言えるかもしれませんが、やはり以前より指摘されている学習意欲や勉強に対する関心の低さは改善されていないのではないかと思います。これに対して教育委員会はどう考え、どう実際の授業、指導に生かしていくおつもりでしょうか。教育長にお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) PISAの調査の結果、課題があるとされた学ぶ意欲や学習に対する関心につきましては、議員の御指摘のとおり、本県においても同様の傾向が見られます。
 こうした課題を解決するために、学習意欲や勉強に対する関心を高めるポイントなどを示した「和歌山の教育 基礎・基本」を作成し、県内全ての学校に配布し、これを活用するよう指導しているところです。また、各学校においては、各教科等において子供が日常生活で興味の持てる教材を使うなど、子供の意欲を引き出すためのさまざまな授業の工夫を行っております。
 今後とも、学ぶ意欲や学習に対する関心を高めるため、一層創意工夫を凝らした授業づくりに取り組むよう、各学校を指導してまいりたいと思っております。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 また、保護者の職業や教育歴、家庭の裕福さを反映した社会経済文化的水準で見ると、日本では、高水準校と低水準校の得点差が、2003年以降、拡大しているとOECDから指摘されています。また、上海などアジアの上位国・地域と比べ、上位層が少なく下位層が多い傾向は変わっていません。やはり基礎学力の充実が急がれますし、学習内容の増加に伴い、授業についていけずに学ぶ意欲を失う子供も少なくないのではないでしょうか。学び自体に興味を持たせる取り組みと、生徒のほうも、わからないことに粘り強く取り組む姿勢が必要だと思います。
 学びの取り組み姿勢を充実させるための義務教育9年間、また、その後の高校教育における本県の目指す教育のあり方について、教育長の考え方をお聞かせください。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 確かな学力を身につけさせることは、子供たちが明るく豊かな学校生活を送るための根幹をなすものであります。とりわけ義務教育段階では、学校において、学力向上の基礎・基本となる授業に集中する力、粘り強く続ける力、意欲的に取り組む力という3つの力を育むとともに、家庭でもしっかりとした学習習慣を身につけさせることが重要だと考えております。
 高等学校におきましては、義務教育段階で身につけた力を発展させ、みずからの興味や関心を生かしながら個々の持つ能力や特性をより伸長させ、人生をたくましく切り開いていく力を育み、日々、夢と希望を持って学ぶことのできる指導を進めていきたいと考えております。
 和歌山の子供たちが「和歌山の学校で学んでよかった」と言えるような、自信と誇りを持てる学校教育を推進してまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 今、教育長に和歌山に言及いただいて、「自信と誇りを持てる学校教育」という力強いお言葉を聞かせていただきました。ぜひ子供たちに学ぶ楽しさと根気よく学ぶことの必要性に気づかせてあげる、そんな教育をよろしくお願い申し上げまして、質問を閉じさせていただきます。(拍手)
○議長(山田正彦君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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