平成25年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(尾崎太郎議員の質疑及び一般質問)
平成25年9月 和歌山県議会定例会会議録
第5号(尾崎太郎議員の質疑及び一般質問)
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午前10時0分開議
○議長(山田正彦君) これより本日の会議を開きます。
日程第1、議案第97号から議案第126号まで、並びに諮問第1号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
3番尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 おはようございます。
議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
先輩・同僚議員も触れておりましたが、このたびの東京オリンピックの開催決定はまことに喜ばしい限りであります。前回の東京オリンピックのときには私はまだ生まれておりませんでしたが、映像や書物を通して見る当時の風景は日本国中にエネルギーが満ち満ちているようで、まさに興国の勢いを感じさせるものであります。
我が国の伝統武道である柔道は東京オリンピックで競技種目として採用されましたが、無差別級ではオランダのアントン・ヘーシンクが神永昭夫選手を破り、金メダルに輝きました。開催国であり、お家芸である柔道の無差別級で日本人が外国人に敗れるという事態は、柔道関係者以外にも大きな衝撃をもたらしましたが、オランダ柔道連盟の会長は、ヘーシンクの勝利がなければ柔道は国際的なスポーツとなることがなかったと発言しています。
昨年のロンドンオリンピックには私も視察に行ってまいりましたが、生で見るオリンピックは、いわゆる世界選手権とは桁違いの高揚感と緊張感があり、人類の祭典と呼ぶにふさわしいものでありました。
オリンピック史上初となる3きょうだいそろってのオリンピック出場を果たした本県出身の田中3きょうだいが出場する体操競技を視察いたしましたが、手に汗握るとはまさにこのことか、観客の我々でさえこうなのだから、演技を見守るコーチや監督、そして選手諸君の心のうちはいかばかりでありましょうか。
体操競技が行われた会場は意外なことに空席が目立ったのですが、これは業者が席を買い占め、高値で転売しようとしていたためとのことでした。英国政府の指示で会場の警備に当たっていた兵士が空席を埋め、日本国中が、いや世界中が固唾をのむ中、いよいよ競技が始まりました。
田中兄弟を初め内村航平選手など精鋭を擁する日本体操男子団体は、金メダルを有望視され、極限のプレッシャーの中での演技となったことと察しますが、一時はメダル圏外の得点となってしまい、応援団も落胆の色を隠せませんでしたが、内村選手の申し出により採点が見直され、銀メダルに輝くことになり、我々応援団は、失意のどん底から一転歓喜で湧き返り、選手の健闘をたたえたのでした。
開催国である英国は、当初メダル圏外と見られていましたが、よく健闘し、団体銅メダルに手が届いていましたが、日本が銀メダルとなったためにメダルを逸することになりました。しかし、会場ではブーイングが起こるどころか、日本の栄誉をたたえる拍手が起こり、さすが英国は紳士の国であるとの意を強くしたのであります。
田中3きょうだいを初め、日本選手団の活躍には本当に感動いたしましたが、各国選手の演技も、またすばらしいものでありました。男子もかくやと思える米国女子の跳馬は、彼我の差にため息が出るほどでした。世界最高のパフォーマンスに触れることができ、大変有意義な視察でありましたが、大声で君が代を斉唱したかったというのが本音でもあります。
7年後の東京オリンピックには今からわくわくしますが、本県では2年後に迫った国体に備え、ゴールデンキッズ発掘プロジェクトが実施されているところですが、願わくば、この中から東京オリンピックで活躍できる人材が育ってほしいものです。
もとより本県では、スポーツ振興基本計画の中で、平成28年、2016年のオリンピックに10人の選手を送ることを目標としていましたが、さきのオリンピックにおいて目標を達成できたことはうれしい誤算でありました。東京オリンピックの開催が決まった今、県としては新たな目標を掲げ、選手の育成に取り組むべきであると考えます。
そこで、教育長にお尋ねします。
オリンピックを教育的見地からどのように捉えるか。ゴールデンキッズ発掘プロジェクトの現状と課題、また今後の目標についてはどうか。
○議長(山田正彦君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する答弁を求めます。
教育長西下博通君。
〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) まず、オリンピックを教育的見地からどのように考えるかということに対してお答えします。
7年後に東京で開催されることが決定したオリンピックには、世界中の国と地域からトップレベルの競技者が集まってきます。
このオリンピックは、スポーツを通じて心身を鍛えるとともに、異なる国籍や文化的背景を持つ競技者たちがお互いに友情を深め、フェアプレーの精神を育むことによって豊かな人間形成に寄与するなど、教育的にも価値が高いと考えています。
また、トップレベルの競技者の卓越したわざや、最後まで諦めず目標に向かってひたむきに取り組む姿に触れることによって、スポーツに対する興味や関心を大いに高めるとともに、スポーツのすばらしさを知ることができるものと思っております。
とりわけ本県にとっては、2年後に控えた国体やインターハイの成功に向けて、スポーツ機運の醸成につながるものと大いに期待をしております。
ゴールデンキッズにかかわりましてお答えします。
ゴールデンキッズ発掘プロジェクトは、ことしで8年目を迎え、修了生は157名に及んでいます。修了生たちは、質の高いさまざまな育成プログラムを受け、着実に成果があらわれてきております。中でも、ボート、カヌー、テニス、水泳など、多くの競技において全国大会で優勝や上位入賞を果たしている者もおり、とりわけレスリング競技は今年度国際大会に出場を果たし、大きな成果があらわれています。
今後、本プロジェクトの中から東京オリンピックや世界の舞台で活躍する競技者を育成するためには、一定の成果をおさめている競技にとどまらず、さまざまな競技団体との連携をより一層強める必要があります。
こうした取り組みを通して、2年後の国体やインターハイのみならず、オリンピックなどの世界の舞台で活躍し、県民に夢と感動を与えられるようなトップレベルの競技者を継続的に育てていきたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 本当にオリンピックに行ってくれる選手がこの和歌山から育ってもらいたいと思います。
先ほど柔道の例を出したんですが、私もずっと空手をやっておりまして、高校時代も空手部だったわけですが、次の東京オリンピックでは非常にチャンスです。空手もずっと競技の候補には上がっておったんですが、公開競技ででも東京オリンピックで見れればなと、そんな期待をしております。
また、継続的に選手を育てていくとの答弁がありました。和歌山は、今、国体に向けていろんなスポーツ施設が整備をされているんですが、しかし、非常に充実したスポーツ環境にあるとは言いがたいところもあるんですね。県民の中からは、やっぱりスポーツに親しむために県立体育館もさらに充実させて使っていきたいなと、そんな声も聞いております。
知事、この辺のところについてどうお考えでしょうか。
○議長(山田正彦君) 知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 県立体育館は、本県のスポーツ施設の拠点の1つとして、これまで多くの県民に広く利用されてまいりました。
ビッグホエール、ビッグウエーブができましたので、そういう意味では和歌山県で唯一の立派な体育館というわけではもはやないのですけれども、生涯スポーツの拠点として県民に親しまれておりまして、現に利用率も大変高いものがあります。
実は、いろいろ過去の経緯を申し上げますと、行革を大変熱心にやらないかんというのが私の就任の前から県庁でいろいろ検討してきたことでありました。それを引き継いでいろいろ検討してきたんですが、そのときには、この県立体育館もビッグウエーブなどができたら廃止して、費用というかコストを削減しようというような考え方があったんですが、実は耐震を調べたら県立体育館のほうは大丈夫ということでありました。それならば、県民の皆さんが楽しんでおられるんだから維持しようではないかというふうに考えたところでございまして、現在でもこの考え方には変わりはありません。
いろいろな使い方があると思いますけども、県民の皆さんが有意義に使っていただいて、楽しい生活をしていただければいいんじゃないか、そういうふうに思っております。
○議長(山田正彦君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 ぜひよろしくお願いいたします。
さて、いわゆる従軍慰安婦問題については、これまでも何度か論じてきましたが、先ごろの橋下大阪市長の発言をきっかけに再燃したような感があり、しかも、事態はより深刻になっているようであります。
「慰安婦の強制連行はなかった」という橋下市長の発言はそのとおりで、1992年7月6日の第1次調査結果の発表に際して、加藤紘一官房長官は「強制連行を裏づける資料は見つからなかった」、「誠心誠意探して見つからなかったということは韓国政府も信じてくれると思う」などと述べています。
にもかかわらず、翌年、2次調査の結果といわゆる従軍慰安婦問題の元凶とも言うべき河野談話が出されます。ジャーナリストの櫻井よしこ氏によれば、1次調査と2次調査で条件がほぼ同じにもかかわらず、両長官の談話が強制連行については正反対となっているのは、日韓間の合意、密約があったと推測されていますが、十分うなずける話であります。
石原官房副長官や河野官房長官の当時の発言を振り返ってみましょう。石原官房副長官、「第1次調査では募集の強制性は見つからず、韓国政府も当初はそれほどこの問題に積極的ではなかったため、これでおさまると思った」、「関与を認めただけでは決着しないと思った」、「行くと決めた時点で――元慰安婦本人への聞き取り調査のことですが――結論――強制性を認めるということ――はある程度想定されていた」、「最後まで迷いました」、「真実よりも外交的判断を優先させた」、「証言だけで結論に持っていった。批判は覚悟している」。
河野官房長官、「文書はなかった。けれども、本人の意思に反して集められたことを強制性と定義すれば、強制性のケースが数多くあった」。
平林内閣外政審議室長、「募集段階で官憲などが直接かかわることはなかった」、「軍や警察の服装に似た人がいたことから、慰安婦が政府の関与と受け取った場合はあるかもしれない」。
もっとも、石原官房副長官は「密約はなかった」としていますが、密約がなかったとするならば、93年2月に就任した金泳三大統領が「この問題では日本側が真実を明らかにすることが重要で、物質的補償は必要ない」と語ったことから、強制性さえ認めればこの問題が収束するものだとの希望的観測を持ち、真実をねじ曲げたものだと思われます。
いずれにせよ、銃剣を突きつけるような形での軍による慰安婦の強制連行などは、なかったことは明らかであります。文書がどこにもないからといって真実がなかったとは言えないなどと言う者もいますが、軍や官憲が組織的に連行に関与したのであれば文書があって当然ですし、大規模な奴隷狩りのようなことが行われていたのならば、それに対する抗議行動などもあるはずで、それらは語り継がれもし、報道もされたことでしょう。
我が国においても、敗戦後、占領軍を相手に春をひさぐ女性がいたことは事実で、愉快なことではないですが、これらの女性がもし米軍に組織的に強制連行されたとしたら、その数が数十万はおろか数万でも数千でも、数百ですら米軍に対する抵抗はとどまるところを知らず、占領政策は収拾がつかなくなっていたことでしょう。かの地にあっても、そうであったに違いありません。
なかったことの証明は論理的に不可能な悪魔の証明であり、挙証責任は当然「ある」とするほうにありますが、そもそも慰安婦をいわゆる従軍慰安婦問題にしてしまったきっかけが我が国にあることは痛恨のきわみであります。
吉田清治なる人物による「私の戦争犯罪 朝鮮人強制連行」は、彼が日本軍人を引率して済州島で女性を強制連行し、強姦したという体験をつづった本ですが、現地の「済州新聞」の記者による取材によれば、住民らは「そのようなことはなかった。吉田はうそをついている」と語っています。後に吉田清治氏は、週刊誌によるインタビューで、「本に真実を書いても何の利益もない。真実を隠し、自分の主張をまぜて書くなんていうのは、新聞だってやるじゃないか」と答えています。
虚構であることが明らかとなったこの著作は、しかし、国際社会では真実であるかのように受けとめられています。96年に国連人権委員会に提出されたクマラスワミ報告では、慰安婦を「military sex slavery」と定義づけるべきだとし、慰安婦を性奴隷という存在におとしめていますが、同報告には吉田氏の証言がそのまま引用されています。
これを受けてか、1997年度の中学校用教科書に慰安婦問題が掲載されました。日本書籍、「女性を慰安婦として従軍させ、ひどい扱いをした」、東京書籍、「多数の朝鮮人や中国人が従軍慰安婦として強制的に戦場に送り出された」、大阪書籍、「朝鮮などの若い女性たちを慰安婦として戦場に連行しています」。当然、これらの記述は、文科省の検定を通っているのです。
現在では、新しい歴史教科書をつくる会等、保守系団体の運動や実証的研究の深まりから、中学校の教科書からは慰安婦という言葉は消えています。残念ながら慰安婦を示唆する記述があるものはあり、高等学校の教科書には慰安婦の記述は残ってしまっています。
慰安婦が今日的な視点からは過酷な人生を強いられたこともあったであろうことは想像にかたくありませんが、戦場の兵士もまた徴兵という過酷な運命を引き受け、なおそれぞれの人生を生きたのであり、どちらも西洋的な意味における奴隷では断じてありませんでした。
性の問題を語るには、ある種の作法を持ってするのが大人の態度であり、橋下市長の発言はこの作法を欠いたもので、「米軍にもっと日本の風俗を活用するように言いました」などの発言は非難されてしかるべきです。一体おまえは何様だと米軍に思われても仕方ありません。「どこの軍にでも同じような制度はあった」との発言も、自分の浮気を、「どいつもこいつもみんな浮気しているのだからとやかく言うな」と言っているようで、真実としてはそうかもしれませんが、居丈高に言うことではありません。酒場での愚痴ならわかりますが、大都市の市長が公的な場で発言することではないでしょう。
これらの発言のため、慰安婦問題がさらにこじれてしまったことは、本当に残念であります。
しかし、慰安婦の強制連行はなかったということは、先人と我が国の名誉のため、声を大にして言い続けなければなりません。
大体、朝鮮は1910年に我が国が併合しており、朝鮮は日本でした。このことの是非はひとまずおくとして、朝鮮人は法的には日本人となったので、選挙権も被選挙権も付与され、実際に多数の立候補者も出ています。中には衆議院に当選された方もあり、活躍されましたが、日本が戦地で慰安婦とするために、ふるさとで婦女子を軍が強制連行するようなことがあれば、彼は黙っていたでしょうか。いや、朝鮮出身議員でなくとも、帝国議会でそのような蛮行が取り上げられないはずはないでしょう。
戦前も現在と変わらず、選挙によって選ばれた議員により帝国議会は運営されていたのです。昭和15年の斎藤隆夫代議士の「支那事変処理に関する質問演説」は有名ですが、少なくとも今の代議士連中と比べ、当時の代議士が劣っていたとはとても言えますまい。
ちなみに、朝鮮出身者は創氏改名後も民族名で立候補しています。創氏改名が強制でなかったことの証左の1つと言えるのではないでしょうか。
また、慰安婦問題について考えるとき、以前テレビで見たソウルでの性売買防止法に反対する売春婦のデモの光景が頭をよぎります。2003年の「朝鮮日報」によれば、性売買の代金として動いた金額が1年に24兆ウォン、GDPの4.1%を占めるそうであり、これは農林、漁業と同レベルであるそうです。かの国において、売春とはいかなる社会的、歴史的背景を持つものなのでしょうか。
無責任な政治家や官僚のために、我が国の子供たちが無用の罪悪感を持つようなことがあってはなりません。和歌山県の教育を預かる者として、教育長は慰安婦問題をどのようにお考えですか。
○議長(山田正彦君) 教育長。
〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) いわゆる従軍慰安婦問題につきましては、議員御指摘のとおり、政府の調査において、軍や官憲による、いわゆる強制連行を直接示す記述は見当たりませんでしたが、関係者からの聞き取りや国内外の文書及び出版物を参考に総合的に判断し、1993年に当時の河野官房長官が出した談話が政府の公式見解となっております。
ただ、この問題に関しましては、今後も国内外でさまざまな議論がなされていくと思いますので、その状況を真摯にしっかりと見守ってまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 安倍内閣が誕生しました。自民党の総裁になったときですか、ちょっと時期は失念しましたが、一時、河野談話を見直すかのような動きがありました。今はちょっとそういうことがとまっておるようでありますけれども、議員の中にもこの談話について疑念を持つ人は少なくともたくさんいるんですね。
そして、明らかなことは、政府が幾ら探しても強制連行を直接に示す文書というのは、これはなかった。少なくともこのことは明らかでありますから、もし教育の現場でこの問題について、それはいろいろと関心を生徒が持つことはあると思うんですが、事実としては、いろいろと文書を探したけれども、それはなかったんだということは明らかにしていただきたいなと思います。
それでは、次の質問に移ります。
平成15年の地方自治法の一部改正により、公の施設の管理について指定管理者制度が導入されました。地方自治法244条の2第3項で「普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するものに、当該公の施設の管理を行わせることができる。」とあります。
総務省は、2012年、「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」を発表しましたが、それによりますと、指定の取り消し、業務停止、期間満了取りやめが2415件に上っています。制度の創設以来9年間では4549件になり、果たして指定管理者制度がよき制度なのかどうか、立ちどまって考える時期に来ていると言えます。
条文は「公の施設の管理を行わせることができる」となっており、必ずしも指定管理者を選定する必要はないわけですが、導入に当たって、その施設ごとにメリット、デメリットを検証していたとは思われません。当時は、とにかく盲目的に指定管理者制度を導入していったのではないでしょうか。
導入から10年がたち、2期目、3期目の選定も行われていますが、当該施設の指定管理者の実績をどう評価すべきなのかも慎重に検討を要する課題であります。
総務省は、平成19年の自治行政局長通知で、複数の者から事業計画書を提出させることが望ましいとしていますが、詳細な事業計画書の作成には相当のコストがかかるので、事業者としては受注の可能性を見込めなければ参加はしないでしょう。
選定基準の項目や配点方法によっても、新規応募者の受注の蓋然性は大きく変わってきます。新規応募者数は漸減傾向にありますが、指定管理業は比較的大きな利益を見込めるものだけに、選定において現在の指定管理者が必要以上に有利でないならば、新規応募は減ることはないと推察されます。
複数の者から事業計画書を提出させることが望ましいとは言いますが、偏りのない選定基準を設けることにより、結果として複数の者が選定に参加するようになるのです。
さらに、公募にすべきであるかどうかも、それぞれの施設の特性を踏まえ検討すべきであると考えます。とりあえず公募にしておけば公正だでは短絡に過ぎるでしょう。
公募にすれば、当然、業務の種類、内容などをまとめた仕様書に基づいて事業計画書が書かれますが、施設によっては、仕様書に経験的に伝えられてきた運営上のノウハウ、当該施設の沿革からくる施設利用者の暗黙の同意などを文章化して盛り込むことが難しいものもあります。こういった施設については、非公募とするのもかえって合理的という場合もあると考えます。
わかやま館は、MIDファシリティマネジメントが指定管理していましたが、現在では直営で管理しております。この施設には年間約1億円という極めて高額の指定管理料が支払われておりながら、行革課によれば、十分には行政目的を果たせていませんでした。直営化は妥当な判断でありましょう。
ビッグ愛はスポーツ振興財団が指定管理者ですが、8階の一部分は国際交流協会が指定管理しています。担当課によりますと、この部分には国際交流センターが設置されており、これを指定管理しているのが国際交流協会であるとのことです。
センター設置及び管理条例第4条には、センターの管理は知事が指定する指定管理者に行わせるとあります。しかし、国際交流センター指定管理者仕様書には、施設、設備の保守管理、清掃はビッグ愛指定管理者が行うとしています。
センターは8階の一部分にあるのですから、それが合理的というものですが、それであれば国際交流協会は果たして指定管理者制度の本旨に沿った指定管理者であると言えるのかどうか疑問です。
条例によれば、センターは、1、県民の国際交流等に関する活動の支援に関すること、2、国際交流等に関する情報の収集及び発信に関すること、3、県内に在住または滞在する外国人に対する支援に関すること、4、設置の目的を達成するために必要な業務を行うこととなっており、指定管理者は知事のみの権限に属する事務を除く業務を行うことになっています。
もともと指定管理は公の施設の管理のための制度ですが、ビッグ愛という施設の8階の一部分を施設だとすることには、普通の県民感覚では無理があるのではないでしょうか。私は、このようないびつな形の指定管理を寡聞にして知りません。恐らく全国にほとんど例がないのではないでしょうか。
国際交流の施策の一部を国際交流協会へ委託するとしたほうが、よほど実態に即しています。同じ8階には消費生活センターも入っており、これは行政組織規則で定められたものであり、県職員によって運営されています。9階には知事が会長を務める和歌山県青少年育成協会が入っていますが、これらは県の施策の一部を委託されており、県職員も派遣されております。
要するに、国際交流センターを指定管理制度で運用する必然性はないのではないかと思うのです。そもそも、ますます国際化が進展するであろう現代において、国際交流という極めて重要な分野を国際交流協会へ丸投げのようなことをするのはどうなのか。丸投げではないとおっしゃるかもしれませんが、少なくともセンター設置及び管理条例におけるセンターの業務、繰り返しになりますが、県民の国際交流等に関する活動の支援、国際交流に関する情報の収集、発信等は指定管理者、すなわち国際交流協会が行うこととなっているのです。いわば、これらの業務に関しては丸投げなのです。
これらの業務は、本来、県のしかるべき課が所管すべきですが、その一部はしかるべき団体に委託することもあるというのが本来の姿と言えます。
議会としても、委託事業であれば、毎年の予算審議の中で事業の妥当性を検証できます。また、センターの業務について提案しようとしても、指定管理者には議会として公式に提案することはできません。
こういったことからも、国際交流センターは、消費生活センターのごとく行政組織としたほうがよいのではないでしょうか。少なくとも指定管理者制度になじむとは言えません。
そこで、総務部長にお尋ねします。
指定管理者制度については、問題点を指摘した国際交流センターを含め、施設に応じて真に効率的かつ適切な運用がなされているか検証を要すると考えるが、いかがか。また、公募とするならば、指定管理者が入れかわる蓋然性がなければ意味がありません。選定においてどのような点に留意すべきであると考えるか。
○議長(山田正彦君) 総務部長市川靖之君。
〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 指定管理者制度につきましては、公の施設の管理について、多様化する住民ニーズに、より効果的、効率的に対応するため、民間の能力を活用しつつ住民サービスの向上と経費の節減を図ることを目的に平成15年の地方自治法の一部改正により導入された制度であり、今日まで、議員から御指摘のありました国際交流センターを含め、52の施設で導入してまいりました。
また、指定管理者制度を導入したそれぞれの施設においては、指定期間満了前に実績や効果を検証し、これまで12の施設で民間譲渡、廃止または直営と見直しを行ってきたところでございます。
県としましては、今後も指定管理者制度の目的を踏まえ、引き続き適切に取り組んでまいります。
次に、公募における指定管理者の選定についてでございますが、議員御指摘のとおり選定基準の公正さは重要と考えており、また、その選定の機会により多くの者が参加でき、よりよい提案が行われることが望ましいと認識しております。今後も、よりよい制度となるよう検討を行ってまいります。
○議長(山田正彦君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 法律では、指定管理にしてもよいとなっているんで、必ずしも指定管理にする必要はないとなってるんですね。ですから、その当該施設が指定管理者制度になじむかどうかというのを施設毎にやっぱり検討して、できれば、こういう議論が行われましたというのを議会にでも教えていただければ。我々も、やっぱりその施設がそれになじんでるのかどうかというのを、意見を言いたいなあと思うんです。
それから、予算の執行ということに関してはいい面もあるんです、指定管理者にして。ちょっと先ほどの質問でも言いましたけれども、指定管理の期間って物すごい長いですよね。3年だとか5年だとか、それはその施設に応じて違うんでしょうけど、知事の任期でも4年ですよね。選挙で選ばれるという、これ以上にない選定を経てる知事の任期が4年なんですね。それで、大体4年たったら、我々も含めて県民の審判を受けるわけでありますけれども、指定管理はそれよりも長い期間、ずうっと自主的に運営していって、その間、いろんな報告はいただきますけれども、例えば毎年の予算審議のような議会のチェックというのは入れることができないんですね。
ですから、この期間の妥当性も含めて、一遍、10年たったわけですから、県庁として検証をしていただければなあと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは、次の質問に移ります。
本県の入札制度は、前知事の官製談合事件の反省から生まれたものゆえ、当初は発注者のいわゆる配慮などを排除すること、談合の防止を主眼としていましたが、現在では「建設工事にかかる新公共調達制度の手引」25年度版で知事が述べているように、県内企業への優先発注、地元企業の受注機会の確保なども考慮され、より充実したものとする努力がなされております。
入札には一義的に、公平性、競争性、透明性が求められますが、いたずらに競争性だけを追う優勝劣敗の制度では地域の建設企業の健全な育成、発展は望めません。
本県におきましても、平成23年度には、新規参入特例として、当該年度を含まない過去1カ年度に県発注の土木一式工事に入札参加しているが、受注実績がない企業を入札参加条件とする入札を実施したところであります。したがって、余りにも受注に偏りが見られる場合には、なお制度の変更を含め、対策を講じる必要があると考えます。
お配りしております資料1は、A社が応札した1億円以上の全ての入札結果です。ある時期以降の落札率は何と100%であります。
1億円以上の工事の予定価格は非公表であり、調査基準価格を下回った場合、低入札調査が行われ、落札者が決定されますが、見積もりの内訳のうち直接工事費では75%、共通仮設費では70%、現場管理費では70%、一般管理費では30%のいずれかを1項目でも下回れば特別重点調査となり、事実上失格します。
A社の驚異の14連勝のうちには、A社よりも高い札を入れた会社が特別重点調査にかかって失格しているのに、それより低い札を入れたA社が4項目ともぎりぎりですり抜け、落札したものも複数含まれております。予定価格は伏せられているのですから、その積算能力は既に入神の域に達しています。
資料2をごらんください。不思議なことに、A社は、1億円未満の工事となると途端に神通力を失い、受注できない工事も出てくるのです。1億円未満の工事は予定価格を公表しておりました。それゆえ競争力が落ちたのだとしたら、何とも不思議な話であります。
また、同手引によれば、不服申し立て手続の整備について、平成20年の6月から実施に向け検討するとあります。昨年の県立医大の強要事件を受けてか、入札資格停止に当たる行為として、職員に対する脅迫的な言動、入札制度に関して虚偽の風説を流布することなどが追加されています。無論、このような行為は許すべからざるものですが、不服申し立て制度が十分には改善されているとは言えない状況で、多少の愚痴程度は言いたくなるのが人情です。
「これからは文句の1つも言えなくなりました」との業者の声を聞いたことがあります。脅迫的な言動や虚偽の風説の流布に過剰に反応しているようであります。
県は、公共調達をよりよくするため、発注者である県、建設事業者、県民、この3者が建設的な議論を行い、問題点を迅速に解決することが必要だとしていますが、事業者が意見を述べることをためらうようではいけません。
そこで、県土整備部長にお尋ねします。
脅迫的な言動や虚偽の風説の流布とは具体的にどのようなことを指すのか。資料1、2を見てどのような感想を持つのか。
○議長(山田正彦君) 県土整備部長尾花正啓君。
〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 職員に対する脅迫的な言動とは、例えば、入札に際し、自社に有利な入札参加要件を設定するよう職員を威嚇したり恐怖を与えたりして仕向ける言動が当たります。
虚偽の風説の流布とは、うそ偽りを不特定多数の人に伝播することで、例えば「県の入札制度は県外企業に有利になるように仕組まれている」等の真正ではないうわさを意図的に流したりする行為であり、これらについて確証が得られれば入札参加資格停止等の措置を行うこととしております。
また、次に配付された資料についての感想でございますが、まず、県としては平成20年6月より、発注者の恣意性を排除するとともに、透明性、公平性、競争性を高めるために条件つき一般競争入札を全面導入しております。
この表の感想でございますが、議員も表題に書いていただいているように、この表はA社応札工事ということで、1億円以上の全ての工事全数ではないということはあらかじめ断らせていただきます。その上で、まず見ると、落札率が非常に低いということで、70%前後ということで非常に低いというふうに感じてます。これは低ければよいということではなくて、この率を見る限り競争性は確保されているというふうに考えております。
また、複数工事を受注しているということで、一括下請、いわゆる丸投げという懸念もありますが、これにつきましては、県の監督職員が工事の施工体制を確認するとともに、施工体制Gメンとして抜き打ちで工事現場のチェックを厳正に行っており、問題はないと考えます。
今後とも、必要であれば制度を見直し、適正な運用に取り組んでまいります。
○議長(山田正彦君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 1億円以上の全部の工事を表にしたとは、さっき私、質問で言わなかったと思います。A社が応札した1億円以上の工事──要するにA社は、1億円以上の工事があっても、その入札に参加するかどうかというのはA社の自由ですから。A社が参加した全ての1億円以上の工事を表にまとめたということです。
そうすると、ある時期から以降は、それをごらんいただいたらわかるんですけれども、A社の落札率は100%になっている。ところが、ある時期以前は必ずしも100%ではなくて、おおむね3割ぐらいの落札率なんです。それから、予定価格を公表した工事について外れたやつもそこに書いておりますけれども、結構低い落札率になってるんです。
ですから、ある会社がその工事を受注する確率なんていうのは、これは単純に参加者数で確率があるわけじゃないです。それは理解してます。例えば、5社が参加したからといって5分の1の確率って、そんな当たりもんじゃないんですから、そういうことではないことはわかっております。
ですけれども、過去の例を見ましたらいろいろと、もちろん、参加者数が多くなれば受注のチャンスというのも下がるでしょうし、得意な工事であれば、参加者数が多くてもその受注の可能性というのは高まると思うんですね。ですから、単純に参加者数掛ける何と、例えば3社が入った入札が3回行われたからといって、3回連続とる確率が3の3乗分の1にはならないでしょうね。
しかし、そういうことをわかった上でも14回連続同じ会社が落札するというのは、だからどうだというのではないのかもしれませんが、おおと驚いても別に不思議じゃないぐらいの数字であることも事実だと思うんですね。
ですから、私、先ほど質問で言いましたけれども、これ、受注の偏りって申しましたけど、23年度に敗者復活戦みたいな制度をやっていただきました。これは当時、たしか我々が公共調達委員会というのを自民党の中につくっておりまして、そこで中村裕一議員が、私がつくったような表をつくってくれたように記憶しております。それを見て知事とこへ行ったら、「おお、こんなにとれてないとこがあるのか。Aランクで」というような話になりましてね。そこからこういう制度を1回やってみようかと。
この敗者復活の制度みたいなものについては割と好評で、そこで受注実績をつくった企業が、また入札にそれで参加できていくと。今、いろんなことがありまして、仕事の量がふえてきてましたんで実施されてないみたいですが、しかし、一方では地場産業みたいなところもあって、競争性を確保するんだけど、地元業者の育成というところから見れば、そういうとれてないところにもう一度チャンスを与えようじゃないかということにも合理性はあると思ってるんですね。
そういう意味で、一方的に例えば強い企業が、この企業は物すごい強いから、やったら勝つでと。例えばボクシングでも、階級を廃止したらヘビー級のボクサーが絶対勝つんやでと。でも、これは対等の競争ですと言えばそれまでですから。そういう意味ではどうなのかな、14回連続とるというのはどうなのかなと思わないでもないんですね。だから、どうだというわけでもないんですけど。
そういうことで、一度、この表が何を意味するのかというのは我々も含めて検討をしていただきたいなとは思います。
そこで、さらに、今答弁の中で、職員を威嚇したり恐怖を与えたりして仕向ける言動があかんということですね。そら、そんなことしたらあかんですけども、しかしこれ、恐怖を与えたというのは誰が判定するんかなと、恐怖を与えたりするのはどないして判定するんかなと思うんですね。これ、客観的に声のトーンが何ホン以上とか、そんなもんないわけですから。
これ、何かセクハラにちょっと似たとこあって、女性が嫌だと感じたらそれはセクハラと言うんですけど、職員が恐怖を感じたと言われたらって、何か話しにくいなと思うんです。もうちょっとこういう例だと、セクハラでも、「わからんやないか」と言ったら「こんな事例です」というふうに具体的な事例を列挙して、そこからおぼろげながらに、あっ、こんな例はセクハラやなと今わかってて注意してるんです、私も。セクハラにならんようにね。たまに「セクハラ違うか」と言われることありますけど、しかし、できるだけそういうことを注意してやってる。
だから、こんな例ですよというのをもうちょっと例示してもらわんと、何かさっき言いましたけど、気に入らんことでも、まあちょっと愚痴も言いたくなることありますよね。ぱあっと課長のところへ行ったら、「課長、何なよ、こんなもんおかしいん違うん」って、こんなんでも場合によっては「ああ、恐怖を感じた」と言われたらぐあい悪いん違うかと思って。普通の何かフランクなコミュニケーションというのが阻害されるようでは、あんまりええことないんじゃないかと思うんです。
だから、もう一歩踏み込んで、今ここで答弁してくれとは言いませんけど、こんな例ですよというのぐらいちょっと親切に例示してもうたらどうですかね、本当に。
真正でないうわさを意図的に流したりする行為というのは、実際に具体的にビラでも配ってるというようなことでしょうから、これはまあわからんでもないんですけど、内心だけにかかわることというのは何とも注意のしようが難しいところがありますんで、ぜひこれをお願いしておいて、これは要望しておきます。
質問を終わります。(拍手)
○議長(山田正彦君) 以上で、尾崎太郎君の質問が終了いたしました。