平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(全文)
平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録
第7号(全文)
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平成24年2月
和歌山県議会定例会会議録
第7号
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議事日程 第7号
平成24年3月8日(木曜日)
午前10時開議
第1 議案第1号から議案第16号まで、議案第33号から議案第58号まで、議案第60号から
議案第69号まで及び議案第71号から議案第85号まで(質疑)
第2 一般質問
第3 議案の付託
第4 請願の付託
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会議に付した事件
第1 議案第1号から議案第16号まで、議案第33号から議案第58号まで、議案第60号から
議案第69号まで及び議案第71号から議案第85号まで(質疑)
第2 一般質問
第3 議案の付託
第4 請願の付託
第5 休会決定の件
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出席議員(41人)
1番 森 礼子
2番 立谷誠一
3番 尾崎太郎
4番 藤山将材
5番 新島 雄
6番 山下直也
7番 門 三佐博
8番 井出益弘
9番 濱口太史
10番 鈴木太雄
11番 服部 一
13番 山田正彦
14番 坂本 登
15番 宇治田栄蔵
16番 尾崎要二
17番 山本茂博
18番 平木哲朗
19番 前芝雅嗣
20番 浅井修一郎
21番 中村裕一
22番 冨安民浩
23番 岸本 健
24番 中 拓哉
25番 花田健吉
26番 角田秀樹
27番 吉井和視
28番 向井嘉久藏
29番 谷口和樹
30番 多田純一
31番 片桐章浩
32番 藤本眞利子
33番 浦口高典
34番 大沢広太郎
35番 谷 洋一
36番 岩田弘彦
37番 高田由一
38番 奥村規子
39番 山下大輔
40番 松坂英樹
41番 長坂隆司
42番 雑賀光夫
欠席議員(1人)
12番 川口文章
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説明のため出席した者
知事 仁坂吉伸
副知事 下 宏
知事室長 野田寛芳
国体推進監 中村正次
危機管理監 宇恵元昭
総務部長 米澤朋通
企画部長 柏原康文
環境生活部長 保田栄一
福祉保健部長 鈴木敏彦
商工観光労働部長 大門達生
農林水産部長 増谷行紀
県土整備部長 森 勝彦
会計管理者 米山重明
教育委員会委員 柏井洋臣
教育長 西下博通
公安委員会委員 溝端莊悟
警察本部長 山岸直人
人事委員会委員長 守屋駿二
代表監査委員 楠本 隆
選挙管理委員会委員長 諸木良介
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職務のため出席した事務局職員
事務局長 森田実美
次長 佐本 明
議事課長 堀 達也
議事課副課長 吉田政弘
議事班長 中井 寛
議事課主任 中尾祐一
議事課主査 保田良春
議事課主査 中村安隆
総務課長 上坊 晃
調査課長 谷村守彦
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午前10時0分開議
○議長(新島 雄君) これより本日の会議を開きます。
日程第1、議案第1号から議案第16号まで、議案第33号から議案第58号まで、議案第60号から議案第69号まで及び議案第71号から議案第85号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
3番尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
昨年の12月26日、和歌山県庁南別館管理業務総合評価一般競争入札の開札が行われました。この入札には3事業体が参加していましたが、落札者以外の事業体がそれぞれ入札の不透明さを訴え、管財課に抗議。管財課の余りの不誠実に、監察査察室に入札の妥当性の検証を依頼するという異例の事態に発展しました。
事の発端は、開札中に契約担当官である管財課の職員3人全員が落札者を入札者に告げることなく開札場を退出したことによります。3人の職員とは、管財課長の田伏啓治、同班長の里村雅之、同主任の土井富夫の3人であります。
以下は、開札場に入場した3人のうち2人、南方文也氏と犬飼幸洋氏から状況を聞き取ったものです。
3人は、入札者から見て、向かって左側に田伏課長、真ん中に土井主任、右側に里村班長が座りました。開札は土井主任が行い、入札金額を確認、執行調書に記入し、あらかじめ出していた評価点を入札金額で割る作業を電卓で行い、算出された数字を総合評価点として執行調書に記入しました。
その後、調書を隣の田伏課長に見せたところ、田伏課長はなぜか頭を抱え、それを見た里村班長は、土井主任伝いに調書を受け取ると電卓で検算を始めました。そして、3人で何やら相談すると、田伏課長が「では、しばらくお待ちください」と述べたので、入札者は「何をしに行くのか」と質問したところ、「審査委員会に承認をもらってきます」と返答。「おかしいやないか。結果出たんやろ」との声に、「出ています」、「ほな、発表せえ」、「承認もらっていないので発表できません」、「開札したんやから、せめて金額ぐらい言え」とのやりとりがあり、3人でしばらく相談した後、田伏課長が「金額だけなら発表できます」と言い、土井主任が入札金額を伝えました。それぞれ、1億7000万円、1億5800万円、1億7800万円でありました。入札金額に相当の開きがあるため、幾ら総合評価だとはいえ、事実上、入札結果は出たと判断した入札者は、3人が退出することにそれ以上抗議をしませんでした。
約10数分後、3人は開札場に戻りましたが、この際、開札場に入場者以外の者も入ることを認められ、計11名が入りました。
落札することになる事業者は、このとき一緒に入った関係者に「課長がこっちを見て、まずいなという顔をしていた」と語っているのを他の事業者が聞いています。
そして、落札者が発表されましたが、1200万円差を逆転しての落札に場内は騒然とし、収拾を図るためか、田伏課長が終了を宣言し、全員を退出させ、最低落札金額を提示した事業体の代表と管財課職員3名とで約40分間の話し合いが持たれています。
そもそも、南別館に限って、なぜ管理運営を一括して一民間事業者に任せているのでしょうか。議会棟のあるこの北別館、本庁舎等、いずれも管財課が管理をし、清掃、警備、設備管理と分け、それぞれ業務を委託しています。一方、県立体育館や県民文化会館、紀三井寺競技場等、広く県民が利用する施設については、現在、指定管理者が管理をしているところであります。
この点につきまして、決算委員会における総務部長の答弁によりますと、平成18年に官民で競争するということで市場化テストを行った、入札には管財課も参加し、民間のほうが業務を効率的に行えるとの結論が出たので民間でパッケージで委託するという方針を決めたそうであります。
例えば、パスポートセンターのようないわゆる窓口業務を民間にお任せするというならともかく、庁舎の管理はいかがなものかと思いますが、総務部長も同委員会において、「庁舎管理業務の内容は直営になじむ業務であると思われる」、「南館については、危機管理センターや情報管理の部門も入っており、安全性だけ考えると直営のほうが望ましいと思われる」と答弁しております。
南別館を本庁舎と同じように直営とし、個々に発注をかければ、入札参加者がふえ、単価が下がり、万々歳であります。管理に公務員の人件費は高いというならば、本庁舎の管理に実質的にどれほど管財課の職員がかかわっているというのでしょうか。
裏を返せば、通常であれば庁舎の管理業務は毎年入札で過酷な価格競争をしなければならないのに、このような形であれば、3年間も総合評価方式の入札なので、比較的いい値段で受注できるのですから、実においしい仕事であると言えましょう。このような形とは、あたかも指定管理のような形であります。指定管理者と南別館のような民間による管理は、法的位置づけは違いますが、外形は少なくとも県民から見れば同じように見えます。この違いをわかっている県庁職員が何人いることでしょう。
さて、落札できなかった事業体を構成する各事業者は、余りに不自然な入札に、今回の入札を思い起こしてみたようです。ある事業者は、ヒアリングの前に「どんな審査員に審査されるのだろうか」との不安を口にしたところ、落札業者の社長から「前回と同じで、1人死んだので、それだけかわっている」と知らされたことを思い出しました。また、ある事業者は、審査委員長から「徒歩1時間で来られますか」と質問されたことがひっかかっていました。
私が聞き取った各事業者の疑問点は、おおよそ次のようなものです。
1、なぜ開札中に3人全員が開札場を出たのか。
2、なぜ落札業者だけが事前に審査員を知っていたのか。
3、そもそも、なぜ庁舎の管理という創意工夫の余地がほとんどない分野で、加算点に22点もの大差がつくのか。
4、なぜ審査委員長は、徒歩1時間で来られるのかとの質問をしたのか。
皆さんそれぞれに管財課を問い詰めたようですが、管財課の不誠実な対応に不信感を募らせた各事業者は、監察査察室に入札の不当性を訴えたのです。残念ながら、監察査察室の回答は全く不得要領なもので、各事業者は監察査察室にも憤りを隠しておりません。
監察査察室は、管財課の「当時、審査委員会は継続して開かれていた状態であったため、落札者を決定する前に審査委員会に総合評価点の最終確認が必要と考えた」との言いわけを是とし、「ただし、入札参加者の立場から不信感や疑念を持たれる可能性がある結果となっており、改善等検討依頼の文書を発出した」と述べております。また、退出は手順にのっとり行われたとしております。
しかし、当の管財課が作成した入札実施要項によれば、開札に当たっての留意事項の4に、入札者またはその代理人は、入札中は契約担当官等が特にやむを得ない事情があると認めた場合のほか、開札場を退場することはできないとしております。3人全員が退出すれば、入札者はどのようにして了解を得るというのか。手順のようなものがあるとすれば、それはこの条項を踏まえたものであるはずなので、少なくとも3人全員が退出する手順などはないと考えるべきです。
地方自治法施行令第167条の8によれば、一般競争入札の開札は、「入札者を立ち会わせてしなければならない」と定めています。監察査察室は、一般的な総合評価入札の場合、開札時に入札額の公表をしない場合もあるなどとしていますが、この入札の実施要項の開札に当たっての留意事項の1に、開札は、入札者またはその代理人を立ち会わせて行うと定めているのです。
また、審査委員会の所掌事務には、総合評価点の承認あるいは落札者決定の承認などは含まれておりません。
3人は、開札場に戻った後、落札者を発表しますが、これは明らかに開札ではありません。先ほど述べましたように、このときは入札者以外の者の入室が認められているのです。開札に当たっての留意事項の3には、入札者またはその代理人は、開札場に入場しようとするときは、入札関係職員の求めに応じ、競争入札参加資格を証明する書類、身分証明書または入札権限に関する委任状を提示し、または提出しなければならないとあるのです。したがって、入札者以外の者が入室して行われた行為は開札ではないと解するのが妥当です。
この入札において、開札とは一体何のことを言うのでしょうか。入札金額は開示されることになっていたとしか考えられません。開札場に入札者を集める意味が全くないからです。
監察査察室は、「不信感や疑念を持たれる可能性がある結果となっており」と書くべきではなかった。「不信感や疑念を持たれる結果となっており」と書くべきでした。これで不信感を持たない方がおられるとしたら、お目にかかりたいぐらいであります。
落札金額も告げず、3人全員が退出しようとした真の理由は、果たして何であったのでしょうか。
さて、南別館の平成18年の入札では、あらかじめ評価委員の氏名は公表されていました。平成20年の入札と今回の入札で氏名が公表されていないならば、委員の氏名は非公開だと事業者は受け取るでしょう。非公開ならば、これを知ろうとする行為は入札妨害に当たるおそれがあり、普通は自粛します。ですから、落札事業者だけが審査員を知っていたことに疑問を感じて当然なのです。
これに対する管財課の回答は、審査員がだれであるかは特に秘すべき情報ではないので、申し出があればお知らせするというものです。詭弁もここにきわまれり。では、公表しておけばよいのです。
そして、落札事業者が審査員を知っていたことについては、この落札業者は現在南別館の管理運営業務を受託中であり、審査員の任期は平成20年8月20日から平成24年3月31日までで、審査委員会の所掌事務には「委託事務の適正かつ確実な実施の確保についての審査を行うこと」があるので、当該業者が審査員を知っていても不思議ではないとしています。
確かに、審査委員会設置要綱にはその旨の規定があります。審査員の名前は秘匿すべき情報ではなかった、審査員の任期は4年であった、審査委員会は受託業務の適正かつ確実な実施の確保を審査していた、それゆえ、だから前回の落札業者でもある今回の落札業者が審査員を知っていたというならば、知っていたこと自体には問題はないにしても、審査員と落札業者の間に何らかのコミュニケーションがあることになり、そのことがたとえ審査員の高いモラルにより審査に影響がなかったとしても、入札の仕組みとしてはとても妥当であるとは言えますまい。
入札実施要項の入札参加資格に関する事項の13には、和歌山県庁南別館管理業務委託に係る総合評価を行う委員会の委員または当該委員と直接の利害関係のある者でないこと、コンソーシアムにあっては、構成員のいずれについてもこの要件を満たすものであることとの規定があります。
なるほど、審査員の氏名は秘匿情報ではないのでしょう。何となれば、だれが審査員なのかわからなければ、自分が審査員と直接利害があるかどうかはわからないのですから。審査員を知ってしまって、たまたま直接利害関係があれば入札に参加できなくなってしまいます。だから、そんなことがないように、質問されない限り、だれが審査員か、あえてはお知らせしませんということなのですか。随分御親切なことです。これは、もちろん皮肉であります。
このような規定を設けるならば、審査員の氏名は秘匿情報でないというのはおかしい。審査員の氏名は、必ず公表しておかなければならないはずです。
さらに言えば、もし直接利害関係があるということで入札参加資格が得られなければ、事業者には何ら責任がないので、その審査員を差しかえなければなりません。実におかしな規定であります。だれが審査員であるかは、現に受託している事業者以外にはできるだけ知られたくはないという意図があったと考える以外に説明がつくでしょうか。
次に、疑問点の3でありますが、ある事業者は、入札公告が出た後、開札までに、里村班長から「審査員は持ち点制である」と伝えられ、「それでは、120割る4で1人30点ですか」と問うと、「まあそうやな」と里村班長が答えたといいます。また、別の事業者も、同時期に里村班長からその旨聞いたと言っております。ところが、監察査察室の聞き取りでは、管財課は、加算点評価は委員4名の合計点方式であると回答した事実はないとしております。事業者がわざわざこんなつくり話をするとは思えないので、理解に苦しみます。
市場化テストとして行われた南別館の平成18年の入札では、このときは審査委員会ではなく評価委員という名称ですが、委員会は5人で構成されておりました。加算点は300点であり、5の倍数です。平成20年と今回の入札の審査委員会は4人で構成されていて、審査員の任期は4年間であり、亡くなった1人が入れかわった以外、同じメンバーであります。平成20年の入札での加算点は60点で、4の倍数であり、今回の入札では加算点は120点で、やはり4の倍数です。
審査委員会設置要綱の第2条の3に、委員会の所掌事務として、総合評価競争入札における提案書の審査方法を定め、それに基づく審査を行うこととありますので、加算点のあり方は、同じ委員会が、なぜか平成20年の入札では60点、今回は120点と決めたことになります。つまり、平成20年の入札では入札金額が落札決定に大きなウエートを占め、今回の入札では加算点、すなわち提案が落札に大きな影響を及ぼします。加算点の割合がもし平成20年の入札と同じであれば、今回、入札金額を1200万円も安く入れた事業体は、楽々今回の落札事業体を抑えて総合評価点で1位になっていたのです。
税金1200万円分の管理を施される快適な南別館。南別館で働く県職員は別格。北別館にいるのは我々議員ども。ここはそこそこの管理でよいのです。
そもそも、この入札では、業務要求水準をすべて満たしているか否かについて必須項目審査が行われ、事業計画がすべての業務要求水準を満たしている場合にのみ適格とされ、基礎点120点が付与され、入札参加できる仕組みとなっているのです。本来であれば、この審査を事前審査として行い、入札参加資格を与えた上で通常の金額での競争に付せば、県民に堂々と説明できる入札になっていたのに残念です。
合算か合議かはともかく、このような落札金額の逆転を許した加算点の評価がどのように行われたかは、事業者だけではなく、多額の税金を余分に払うことになるだけに、県民の方々も関心をお持ちになることでしょう。
本入札に係る審査委員会は、3回開催されています。平成23年9月12日、11月10日、入札執行日である12月26日であります。
9月12日の議事録を見ますと、前回60点であった加算点を120点にしたのは、実は審査委員会ではなく事務局、すなわち管財課の案であったことがわかります。その旨の説明を聞いた委員から、「今回から加算点が120点になって、入札参加にとって影響が大きいので、採点の基準をつくっておいてほしい」との発言があり、事務局は「基準をつくっておきます」と答えております。
この日の委員会の冒頭、配付資料として配られた入札実施要項には、加算点項目の評価基準が示されています。事業実施に係る管理体制に関する提案では、ア、管理業務の質の向上に寄与する資格及び実務経験を有する者の勤務に関する方策、イ、管理業務の質の向上に寄与する人員体制構築の方策、業務改善に関する提案では、ア、各業務の質の向上を図る方策、イ、業務コスト削減のための工夫、ウ、快適な執務環境を確保するための方策、エ、災害時・緊急時の対応方法となっています。
平成20年の入札での実施要項には、ウ、快適な執務環境を確保するための方策、エ、災害時・緊急時の対応方法がありませんでした。今回は、職員の執務環境を快適にするために税金を投入するつもりであったということになりはしませんか。
それはともかくとして、この評価基準以外に採点の基準をつくることになっていたのです。一体、公表されている評価の基準以外に、事務局である管財課はどのような採点の基準をつくったのか。
そこで気になるのは、今回の落札事業体が平成20年に落札した際、審査委員会がその業務の適正かつ確実な実施の確保について審査を行っているという事実です。業務は3年にわたっているので、審査の後も業務が続くことを考えれば、改善すべきところがあったなら、そのままにしておくよりも何らかの指導があったと考えるほうが自然です。それは、この審査委員会の審査の傾向を知ることになり、採点の基準を公表しないならば、同じ委員が審査する審査には、今、管理を行っている事業体が著しく有利な立場になると考えても無理はありません。
留意しなければならないのは、議事録を見れば明らかですが、審査委員会は管財課の案の追認機関にすぎず、もし指導したのが管財課であっても、指導内容はそのまま審査委員会の傾向としてあらわれるであろうということです。
平成18年の入札は、官民競争入札型市場化テストとして実施されており、あくまでも市場化テストでありました。テストであるがゆえに検証が必要であったのであり、そのため評価委員会の所掌事務として、評価委員会設置要綱に「業務の適正かつ確実な実施の確保について審査を行うこと」が盛り込まれたのではないでしょうか。もしも庁舎の管理を民間に委託するというかつてない試みがうまくいかなかった場合には、次回からは本庁舎と同じような通常の管理がなされるという建前であったのです。だからこそ、平成18年の委員会は評価委員会であり、平成20年以降は審査委員会なのでしょう。
テストの結果、建前としては、南別館の管理は民間委託がよいということになったからこそ、管理を委託すべく、平成20年の入札が行われたのです。これ以降はテストではないので、他の委託契約の入札と何ら変わることはないはずであり、本来、委託業務の適正かつ確実な実施の確保についての審査などという所掌事務は不要であるのです。確保できる確信がなければ委託してはいけないのであり、だからこそ市場化テストをして検証したのです。
つまり、平成20年以降の入札では、審査委員会の所掌事務に「業務の適正かつ確実な実施の確保について審査を行うこと」を入れる必要はなかった。
では、なぜこの事務を入れたのでありましょうか。
入札実施要項の中で、管理運営業務の質の設定において、1、県は南別館勤務者全員に対して、設備管理、清掃、警備について満足度に関するアンケート調査を実施するとあり、これは平成20年の入札も今回もそうなっております。
アンケート調査は、不満、やや不満、普通、やや満足、満足の5段階評価で行い、不満は1点、やや不満は2点、普通は3点、やや満足は4点、満足は5点の配点とし、「平均して普通以上の評価を受けることとする」とあります。
アンケートは県が実施するもので、審査委員会ではありませんが、審査委員会が行う業務の実施の確保についての審査がこのアンケートをもとにしたものであるのではないか。そうであれば、このアンケートの項目の幾つかが加算点審査の際の採点の基準になっている可能性があります。
このアンケートも、本来、不要なはずです。本業務は、今や通常の委託業務なのです。皆さん、管財課から北別館の清掃のぐあいをアンケート調査されたことがあるでしょうか。
一般的に、審査委員会に事業者が接触することは望ましいことではありません。所管課ともそうでしょう。それを正当化するのに使えるので、もはや必要ではない規定をあえて残したのではないでしょうか。
ちなみに、審査員の任期は本年3月31日で切れるので、今回の落札事業体の──といっても平成20年のときと同じ事業体ですが──業務の実施の確保についての審査は、だれが行うのかは不明です。目的が達成されたから、もういいのかもしれませんが。
今回の入札で3番手であった事業体は、平成18年の入札の落札者でもありました。この事業体は、惜しくも平成20年の入札では2番手であり、今回の落札事業体に敗れていますが、平成20年の入札における評価点は60点満点中16点、落札事業者は同じく18点であり、得点率はそれぞれ26.66%、30%です。今回の入札では、同じ事業体がそれぞれ120点満点中76点、94点であり、得点率はそれぞれ63.33%、78.33%であります。
同じ事業体をほぼ同じ審査員が審査して、前回では約3.4%の差で、今回は15%の差が出ているのです。15%の差は、金額にして1000万円以上にもなります。どちらも南別館を管理した経験を持つ事業体なのです。よほど他を圧倒する画期的な提案がなされたとしか言いようがないのですが、しょせんは庁舎の管理、創意工夫の余地など、そんなにあるはずもありません。
ちなみに、今回2番手であった事業体は72点、得点率は60%でした。
平成20年の入札に比べ、今回は加算点が倍に引き上げられたのみならず、全体的に得点率がアップしております。満点が60点から120点に変わったとしても、平成20年の入札も今回も同じ審査委員会が審査しているのですから、得点率は変わらないようなものですが、この点でも、今回、できるだけ入札金額の入札結果に及ぼす影響を少なくしようとする意図が働いたことが見てとれます。
事業計画は11月21日から28日までの間に提出することになっていたので、事業計画が提出されてから後、審査委員会が開かれたのは12月26日、入札執行日当日だけということになります。繰り返しになりますが、審査委員会は3回だけしか開かれておりません。
11月10日の審査委員会では、入札参加資格の審査が行われました。例の採点の基準が決められたとすれば、この11月10日の審査委員会以外にはないのですが、議事録を見る限り、議論が行われた形跡はありません。恐らくは、事務局が資料として配付し、説明しただけなのでしょう。事務局が示した案をたたき台にして議論で深めるというのならまだわかりますが、委員みずから言うように、この入札では加算点は大変大きな影響を持つにもかかわらず、事務局のなすがままなのです。
同議事録によれば、委員長から、「次回は12月26日です。これも前回と同様です。これについて御意見、御質問はありませんか。事務局のほうで質問案をつくる予定はありますか」との発言があり、土井主任が「前回と同様にする予定です」と答え、委員長は「質問案は、次の委員会でヒアリング前に決めるということですか」と質問、土井主任が「そうです」と応じ、委員長が「質問案を決定してから各委員さんで個別に質問して、合計して30分までです。それでは、次回はこの形で進めていきます」と締めています。この日の委員会は約30分間でした。
事業計画書提出の際、ヒアリングの説明事項という文書が手渡されましたが、その中でヒアリング時に事業計画書の要点をA4用紙3枚以内に取りまとめた資料を提出することを求めています。事業計画書は、かなりのボリュームがあり、これを読み込み、採点するのは容易なことではありません。採点の参考にレジュメが要るのはよいとしても、入札執行日当日に持ってこいでは、いかにも審査はやっつけ仕事のように思えてしまいます。ヒアリング時に審査委員から「この中に書いてあると思うけど」と言われ、読んでいないのかと思った事業者もいるのです。
12月26日の議事録によれば、これは、審査場面は黒塗りでほとんど判読できませんが、10分間のプレゼンの後、委員長が5~6分統一質問をすることになっております。この統一質問は、事務局がつくったものであることは議事録から明らかですので、委員長が各事業体に「常時勤務責任者は徒歩で1時間以内に来られますか」と尋ねた質問は事務局がつくったことになります。
業務要求水準書によれば、常時勤務責任者は1時間以内に出勤が可能であるとされています。
入札実施要項の加算点審査の項目に、基本的には要求水準書等と提案内容の比較を行い、加点するとあります。また、評価の基準のエには、災害時・緊急時の対応方法とあります。
ある事業体の計画書にだけ、常時勤務責任者が徒歩1時間以内に出勤可能とされていたのかもしれません。事業者が監察査察室に落札事業体の計画書を見てほしいと訴えたのも無理はありません。徒歩1時間がそれほど重要なことであるならば、その旨公表しておけば、各事業体は常時勤務責任者を徒歩1時間圏内に住む者から選んだでありましょう。
加算点の審査は、各事業体10分ずつのプレゼンと約20分間ずつの質問、応答の後、3時30分から始められ、わずか30分間で終了しております。結果として30分間で終了したのではありません。4時から開札になっていたので、30分で審査を終えなければならなかったのです。
入札執行日当日の議事録によれば、「得点を話し合いで決めていただけたらと思いますが」と発言があり、「前にそうしましたね」と応じております。この部分は、発言者を黒塗りしており、だれが発言者なのかはわかりません。ともかく、今回と前回は、合議、話し合いで審査が行われたのです。
それにしても、わずか30分で何をどう話し合ったというのでしょうか。真に合議で審査をするなら、それこそコンセンサスを得るのに膨大な時間がかかりましょう。何冊かの本の中で1冊だけ直木賞を選ぶなら随分時間がかかるでしょうが、合議でできても点数化しなければならないとすれば、委員それぞれに主観があるのですから、だからこそ委員が複数名いる意味があるのですが、体操競技のように各委員が独自に採点、合算する以外にないと思うのです。
合議と決まったのは入札執行日当日、里村班長は、審査方法について聞かれたとき、「それは未定です」と答えるべきだったのです。
ある事業体は、審査委員から、「かなり安くしているとアピールしていますが、そうすると品質が落ちませんか。ねえ、皆さん」と質問されています。業務要求水準書は満たしているのが前提であるのに、あたかも安かろう悪かろうであるかのような印象を他の委員に与えようとしたと感じたそうです。
また、この事業体は、財務内容についても否定的な調子で聞かれたそうですが、これも参加資格審査をパスしているので財務内容には問題がないのであり、この事業体にだけこの種の質問をしたのであれば、そのこと自体、問題であると言えます。少なくとも落札事業体以外のもう1つの事業体には、この種の質問はなかったそうであります。
ちなみに、このような質問をされたのは、1200万円差を逆転された事業体でありました。審査は合議で行われたと後で言われても、この事業体は納得するはずもありません。
南別館管理業務の平成18年の入札は、行革室が行いました。そのときには、開札場において、入札者の面前で開札後、すぐ入札金額を公表、その場で総合評価点を算出し、落札者を発表しています。また、開札場には評価委員が同席しておりました。非の打ちどころがない入札手順であります。
しかも、市場化テストであるこの入札には、管財課も民間事業者と競争すべく参加していたのです。管財課は、なぜこのすぐれたやり方を踏襲しなかったのか。
平成18年の入札執行調書を見ると、4事業体が参加しており、加算点はそれぞれ227.0、163.6、192.4、209.2となっております。合議制では小数点があらわれることはちょっと考えにくいので、恐らくは各評価委員がそれぞれに採点を行い、それを合算して評価委員の人数で割って加算点を算出したのでしょう。やはりこの点でも、平成18年の入札は真っ当なものであります。
なぜ平成20年からは合議で審査するようになったのか。ここで、ちょっと想像力をたくましくしてみましょう。
私は、ある企業の4人から成る採用担当委員会の委員長です。この企業の総務部長からの推薦で就任することになりました。
昨年は、部長の大学の後輩の息子が受けに来ました。成績のよい子でしたが、内気な子だったので面接は苦手だと思い、採用試験では筆記試験の比重を思い切って上げました。
ことしは取引先の娘が受けに来ます。学習院大学卒なので漢字が苦手でしょう。だから、今回は筆記試験の比重はできるだけ軽くしておこう。先日、久しぶりに部長と飯を食いに行ったら、この子がバイトをしていました。偶然ってあるものだな。そのときにボランティアの経験が相当あると小耳に挟んだ。思い切って面接点を上げておこう。私が委員長になってから、面接点は4人の話し合いで決めるようにした。社会貢献がいかにこれからの企業活動に大切な視点かを他の委員に説いてやれば何とかなるだろう。でも、筆記試験で最低限の得点はとってもらわないとな、それが心配だ。部長もそろそろ定年、後輩の会社で世話になるらしい。
以上は、私の妄想です。話の落ちは、学習院卒の娘の筆記試験の点は予想を超えて悪かったのです。
官製談合事件を引き起こした木村知事時代の平成18年の入札が真っ当で、二度と不正が起こらない仕掛けをつくると意気込んだ現知事の入札がこれほどの物議を醸すとは、何と皮肉なことでしょうか。
平成20年からの入札の審査委員会委員長の森口佳樹和歌山大学教授は、県の入札監視委員会委員や県環境生活部指定管理者選定委員会委員長を務めるなど、入札に精通しているとされています。たとえそれが違法ではないにせよ、平成18年の入札とこれほど違ったやり方をあえてしたのでありますから、森口教授には御自身が指揮をとった入札についての説明責任があると言えます。ぜひとも森口教授の入札に対する見識をお伺いしたい。
はっきり申し上げて、この入札では、その気になれば、外形的には違法とは言えないような形で特定の事業体の落札の蓋然性を高めることは可能です。可能と申し上げたのであって、そのようにしたとは申しておりません。
しかし、仁坂知事は、二度と不正が起こらない仕掛けをつくると何度もこの本会議場でおっしゃいました。入札も人がするものですから、仕掛けで不正は完全には防げないでしょうが、不正が起こる蓋然性を極力低く抑えるものはつくるという意味であったはずであります。
この入札は、そうなっていたとお考えでしょうか。これが知事の言う日本一の入札制度なのでしょうか、お尋ねをいたします。
○議長(新島 雄君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御質問にお答えする前に、尾﨑議員の御質問の中で、部下に対してちょっと酷ではないかなというような御発言がありましたので申し上げときますが、開札会場において管財課長が、「調書を見た管財課長がなぜか頭を抱え」というふうにおっしゃいましたが、本人はそんな事実はありませんと、そういうことを言うておりました。
それから、何々なのかという推定をもって状況を説明しておられますけれども、1つ1つの動作は、見る人によっては別の意味で自然に解釈することもできると思います。だから、そういう意味では、一方の当事者の話だけ聞いて発言されますと、この県政の最高機関でありますところの県議会の議事録に残ってしまいますので、ひょっとしたらある人にとっては酷であるという可能性もありますので、その点、申し上げたいと思います。
質問でございますが、南別館の管理業務に係る入札につきましては、南別館が24時間対応の防災センターとしての機能を有しているということから、金額面ではなくて、必要な品質を確保できるよう、しかもそれが一体としてきっちり管理してもらえるようということで、これはよく議論になっております簡易型では全然ありませんで、標準型の総合評価一般競争入札により実施したものでございます。
先ほど、テストという話がありましたが、この市場化テストというのは、そういうものを全部直営でやるべきか否かということを私が知事になる前に調べたときのネーミングでございまして、そのときの結論は、それは外へ出したほうがいいということだったので、現在は、仰せのように一括型で管理委託をしていいかどうかというような問題意識になってると考えております。
これを緊急時に防災センターとして直ちに機能する体制を確保するという当該契約の性質とか目的に照らしまして、地方自治法の施行令にあります総合評価一般競争入札を採用した──これはいわゆる標準型ですが──採用したことは、私は適切であったと思っております。
今度は、標準型の総合評価ということになりますと、入札審査委員会で議論をしていただくということになります。その委員は、現在、見てまいりますと、法律、財務、経営、建築技術の専門家から構成しておりますが、こういう点で人望、識見ともにある人ということで部長が選んでおりますけれども、私は顔ぶれを見て、妥当ではないかなあというふうに思います。
入札参加者からの通報がありましたので、監察査察監がすぐ飛んでいっていろいろ調べたようであります。結論は、私も報告を受けておりますが、職員または委員が点数を差しかえる等の不正な行為をしたというのは認められませんということでございました。
御存じのように、私は、皆さん──皆さんというか県民の皆さんですね、あるいは県庁の諸君からの批判も十分覚悟の上で、和歌山とはあんまりしがらみのない検事出身の監察査察監をわざわざ常勤で雇わしていただいておりまして、それはこういう問題のときに、あの人はあの人と親戚だからどうのこうのということになったらまずいなあということでやらしていただいておる次第なんでございまして、その者が論理的にきちんと調べて回答し、それを私も報告を受けたというふうな状況でございます。
しかしながら、じゃあ今回の問題について、監察査察監も言っておりますけれども、全く100点であったかというと、違うなあというところもございます。委員会に最終確認を得る必要があったと本人たちは言うとるんですが、あるいはそう思い込んでおるんですが、必ずしも開札担当者3人全員が開札室を退出する必要がなく、また議員御指摘のように、結果をさっさと言ってしまって何の問題もないというふうに思います。それによって結果として入札者に疑問や誤解を与えたということは、改めたほうがよい話だと考えております。
この点を踏まえ、より透明性を担保するため、開札の前に審査委員会の議事を終了した上で開札手続を行い、入札者の面前で計算の上、落札者を決定する手続には少なくとも改めたい、そんなふうに思って指示をしたところであります。
なお、その他、採点配分の決定方法等、尾﨑議員の御提言には、どの業者がとったから愉快とか不愉快とか、そういう話ではなくて、制度のあり方の問題としていつも考えておかなきゃいけない問題が多数含まれていたと思います。そういうことも含めまして、これは南別館だけの話ではありませんので、総合評価のあり方、そういうものについては今後ともよく考えていい制度にどんどんしていきたい、こんなふうに思っております。
○議長(新島 雄君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 まず、知事に申し上げておかなければなりませんけれども、私は開札室で行われたことについて聞き取ったときに、お2人の方から聞いたときに「このことを本会議場で申し上げますけれども、そのためにはお二方のお名前を言わなければなりません。アンフェアになりますから」と申し上げました。堂々とそのお二方は、「このように光景を目撃したから、ぜひこれを県民の代表であるあなたが本会議場で発言してほしい」と言われたので申し上げたのであります。議員の発言について知事からあれこれと言われることは少々遺憾でございますので、それだけ申し上げたいと思います。
その上で、今回のこの入札において、3人が退場した、そして知事もおっしゃいましたけれども、その場で落札者をとりあえず発表しても何の問題もなかった、なのに出ていった。それが事の発端で、何でそんなことすんのよというところから疑念を生じたわけなんですね。ですから、私が少々推察をしてるのは事実ですが、そういう疑惑を抱かす事実がまずあったということを前提にするということを御承知おきいただきたいんです。
事実が、何があったのかというのは、これはわからないことでありまして、我々は捜査機関ではありませんから。ただ、妥当性を判断するというのが議会の大きな権能の1つでありまして、この入札が妥当であったのかどうかを知事にお尋ねしたかったわけであります。
お話では、一部妥当性を欠いたところもあるというところでございましたので、その点についてはしっかり検証していただきたいんですが。
私が質問の中でも申し上げましたけれども、普通は総合評価するときに、こういう基準で採点をしますよということをお知らせせんとフェアではないと思うんです。もしその一部の基準だけを一部の人が知っておったら、それはアンフェアなんですね。
そういう意味で、この審査委員の言われた採点の基準というものがあるということは議事録から明らかなんですが、この採点の基準というものをぜひ一度公開していただきたい、それで検証したいと思うんですが、総務部長、この点についていかがでございますか。
○議長(新島 雄君) 総務部長米澤朋通君。
〔米澤朋通君、登壇〕
○総務部長(米澤朋通君) 採点の評価項目とその配点については、公表しておるところでございます。詳細の採点基準の公表につきましては、委員会の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、公表は差し控えたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 差し控えられたら差し控えるだけ疑惑が深まるんですけどね。知事らしくないですね、これ。やっぱりどんな採点基準で採点したのか、ぱっと明らかにしてもうたら。
私は、るるの経緯の中で、恐らくその中の項目の幾つかは、今現在受注している事業者に有利な項目になっていると、これは推察をしてるんです。推察ですから見てみないとわからない。それは、やっぱりこれだけの総合評価点で点差がついてるんですから、説明を県民の前でできなければならないと思うんです。1200万円も安く入札金額を入れたところが負けてるんですから。
そういう意味で、この点について、知事の御見解を再度お尋ねいたします。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は今尋ねられませんでしたので、打ち合わせもなくて、総務部長が今申し上げました。
しかし、私に尋ねられたら、そんなものは全部公表してしまえという考え方でおります。ただ、その結果、何が起こるかということも、またいろいろ検証せないけません。
ですから、私はもう何でも公表してしまえという方針なんですが、その結果、議員きょう御指摘であったように、例えばだれかがそれでインチキをするとか何とかいうおそれが出てきたりすると、これはまた考えなきゃいけません。
しかし、議員のきょうのお話を聞いてるだけですぐに判断をしますと、これは公表してしまったほうがいいよなというふうに私は思います。
○議長(新島 雄君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 ようやく知事らしくなってきましたね。うれしい限りでございます。
ぜひ、これは公表して、これは議会もやっぱり検証していかなければいけない。よい入札制度をやっぱりつくっていかなければならないんですよ。常にブラッシュアップしていかなければなりませんから。ぜひ私ども、それを検証してまいりたいと思います。
それで、私の、これこそ印象ですけど、知事、監察査察室、入札事務に本当に明るいとは言いがたい。この和歌山県って、実は入札に関して一番詳しいのは知事なんですよ。私はあなたと何度も論争しましたけど、自分でもおっしゃってました、私が一番詳しいんだと。まあ、それは私もそう思うんです。
ですから、ここはやっぱりそんな、監察査察室の報告を受けたからと思わずに、きょうの私の質問をもう一遍読んでいただいて、白紙の状態で、その採点の基準も見て判断をしていただければと思うんです。
点数を書きかえたり、そんな不正はないだろう、そう思いますよ。思いますけど、きのうもきょうも、こういう大阪府警の不祥事が新聞に出てました。これは一体何なんでしょうね。こういうことがやっぱり警察官にも起こるんです。
こんなこと、私、ちょっとだれかに相談受けて、「先生、わし、ビール1本しか飲んでないのに0.15以上も出たんよ。そんなこと絶対ないで。そんなん、あれもう2時間たってたから、数値そんなに出るはずないんや」と相談受けても、「あんた、それ飲んでんねやったらあかんで」とやっぱり言うたと思うんですよ。
まさか、そんなことを警察官がやるわけがない。このまさかということが起こり得るんです。だから、知事、あなたは制度、仕掛けをつくるとおっしゃったんですよ。
この警察の手順も、その人の前で、容疑者の前で数値を測定することになっておったんです。それが、なぜかその目の前で行われなかった。それだけ見れば、ただその手順をすっ飛ばしただけかもわかりませんけれども、その手順をすっ飛ばすということが不正を生む土壌になってくるわけなんです。
だから、細かい手順でも、手順というのはやはり踏んでいかなければならない。その点について、再度知事の御見解をお伺いしたいと思います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 悪魔は細部に宿ると申しますので、一般論として申し上げますと、尾﨑議員のおっしゃるとおりだと思います。
今回の問題も、私はすべての部下を信じてます。実は、はっきり言うと、田辺で証紙を横領した者も形式的には信じておりました。しかし、それは私たちが至らなかったので愚かしいことになりまして、私自身の処罰もさしてもらいました。そういうつもりでいつもおります。
その仕掛けの1つが監察査察制度であります。これは十分抑止力にもなってるし、それから、それは入札制度については多分私のほうが詳しいと思いますけれども、自分でつくりましたからね。だけど、その運用で不正をしてないかどうか等々については、少なくとも他よりも圧倒的に十分な信頼感を持って監察査察監のあの調査は見ることができると思います。
それから、私も中身については結構聞いておりますので、そういう意味で、今回のケースについては、改めるべきところはあったかもしれないけれども、少なくとも入札という手続が不正に行われたという、したがってこの入札は無効とか、そういうことではなかったと私は思っております。
○議長(新島 雄君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 入札が不正に行われたということは、あんまり私は申し上げてないんですね。妥当ではなかったと申し上げてるんです、今のところですね。妥当ではなかっただろうと。
なぜ妥当ではなかったかといいますと、私は県民に選ばれて議会へ送っていただいてますから、県民の立場に立ちます。知事もそういう立場である反面、行政府の長でありますから、部下を信頼するというのはわかります。しかし、私は、前提として、全面的に皆さん方を信頼するというのでは議会の職責を果たせないんです。やっぱりチェックをするという大きな役割が我々にあるんですね。ですから、そういう観点から見させていただいております。
これ、(資料を示す)ある事業体から預かった事業計画書ですが、これ読もうと思ったら大変ですよ。私も、これ、一生懸命読もうと思いましたけど、これはかなりの労力が要るんです。これが送付されておっても、レジュメを出すんがその当日とか、あの議事録を見たら、本当にほとんど審査、きちっとされてるというようなそぶりがないと。
これ、私、一生懸命自分で書いて提出したのに、えらいこんなに簡単なもんやなと思ったらショック受けると思うんですね。しかも、この審査によって1000万単位で落札金額が変わってくるといえば、なおのこと、そのように思うと思うんです。ですから、これは制度として成熟したものなのかどうかというのは、なおこれ検証を要するんです。
だから、何かその監察査察室も、不正がなかったからどうかこうかとか、それは司法の役割だと思いますよ、私は。そういうことがあれば、それはもう我々の出番を超えてくるわけなんですね。そういう意味で、そういう提言をしてるのではないのです、あくまでも。
この入札は、手順としても、それから仕組みとしても、審査会のあり方としても、考慮する、一度立ちどまって考えてみる余地が大いにあるのではないかとまず申し上げてるんです。この点について、再度答弁を求めます。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 先ほど、前の前の答弁でも、尾﨑議員の御指摘は考慮すべきところはたくさんあると思うので、制度の問題として考えていきたいと思いますというふうに申し上げたと記憶しております。そういう意味で、今の質問に対しては、そのとおりでございますということだと思います。
ただ、私がさっき申し上げましたのは、違法というのは、例えば刑法上の違法があるというだけではなくて、この手続が一切無効であったかのような妥当性を欠くものがあったとは思っておらんということでございます。
○議長(新島 雄君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 私、ちょっと繰り返しになりますけど、この審査委員会のあり方について、審査のあり方について、すごくおかしい審査──これ、違法じゃないですよ──審査のやり方がおかしいなというのは声を大にして言っていきたい。そして、なぜこんな審査のやり方になってるのかということについては、るる先ほどの質問で申し上げたので、自分なりにある程度思いを持っております。
しかし、この3人が、何で3人全員退出したのか、それが本当にわからないんですね。わからなかった。そんなん、だれが考えても1人残っておってもよさそうなもんですね。
それで、考えておったんですけれども、開札が終わって、話し合いが持たれております、先ほど申し上げました40分間。その中で、ぱぱっとやりとりの中で、その入札執行調書をコピーさしてくれと事業者が言ったんですね、おかしいから。目の前で落札者発表せんのに、今ごろ来てこんなんておかしいやないかということで調書をコピーさしてもらったそうです。このことが妥当かどうかは別として、この執行調書は土井主任がひとりで書いたと本人も申し上げておるみたいでして、監察査察室での聞き取りでもそうでありますし、事業者さんにもそのように申し上げてる。これは、土井主任がひとりで書いたものでございますと。
ぱっと一読しまして、また知事にそれは印象の問題だと言われるかもしれませんけど、字が違います。
これ、(知事に資料を手渡す)筆跡を見ていただきたいんですけど、普通、私はあんまり字がきれいじゃないですから、字のきれい下手は印象かもわかりません。しかし、入札額に書いてあるところの「8」の字は右側から始まるんです。総合評価点を書いてる数字は、左側から「8」の字が始まります。これは一体どういうことなのかと私は考えるんですね。土井主任は、自分がひとりで書いたと、これはいろんな関係者に申しております。しかし、これを見る限り、私はどうしても同一人物が書いたとは思えないんです。
今、執行調書を知事にお見せしましたけれども、判断、どう考えられるかわかりませんけれども、この8の字、知事がごらんになってどうお考えですか。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) こう見ますと、初め──第一印象ですよ──ああそうか、ひとりで書いたんかというふうに思いましたね。だけど、8を見ろと言われて見ると、確かにちょっと違うなというふうに思いましたね。
ただ、議員の御指摘が何ゆえにそうなるのかというのは実はわかりませんで、私に何か筆跡鑑定をされるのかよくわかりませんで、例えば土井主任なる者がひとりで書くのと、それからだれかが書くのと、そこにいる委員長なり課長なりが書くのと何か関係があるのかなというようなことを──それは私が書いたというのが記憶違いであった可能性もあるし、それをもって何が起こってくるんだろうかというのが、明晰なる尾﨑議員の御指摘ですから、非常に不安を持ちながら聞いておりました。
○議長(新島 雄君) 尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕
○尾崎太郎君 明晰なる知事もよく考えていただきたい。私は、知事が明晰であることに疑いを持っておりませんので、ほかの職員と話しするより知事といつも話ししたほうがいいと思ってるんです。これは本音で申し上げてるんですよ。
8の字、これが違うというのは、この調書を別人が書いたということを私は示唆してると思うんですね。ところが、土井主任は、私がひとりで書いたとあらゆる関係者に申してる。これが何を意味するのかというのは、今ここで議論をする時間はございません。きょうは、こうして本会議場で議論したわけですから、県民の皆さん方に御判断をいただきたいと思います。
質問を終わります。
○議長(新島 雄君) 以上で、尾崎太郎君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
39番山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 皆さん、おはようございます。よろしくお願いいたします。
さて、この週末には、いまだ傷もいえない中で、3.11、東日本大震災から1年を迎えることになります。
同じように、私たちの県でも、先日、濱口議員のほうからもお話がありましたけれども、台風、大雨の甚大な被害から、まだまだ再建の途中で苦しんでられる方がいらっしゃいます。県民一丸となって試練を乗り越える途上にあります。この機会に、改めて心からのお見舞いと御冥福をお祈りしたいと思います。
先輩・同僚議員、知事初め県当局の皆さんもそれぞれ現場に立ち、悲しい気持ちを共有してきているわけですが、とにかくそういった被災地を支え続けるためには、未来に責任を負う政治家として、中途半端ではなく、真剣に前を向き、行動し続けることが求められると思います。
この議会でも、何としても元気な和歌山を実現させ、和歌山再生から日本も元気にしていくといった強い思いを持って、質問並びに具体的な提言をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
今回は3本柱、3つの項目で一般質問を進めさせていただきたいと思っています。
1問目は、和歌山を初め日本全体が抱える問題、その問題の本質に迫りつつ解決策の1つとなる具体的な提言として、女性にもっと活躍してもらえる社会環境整備の必要性とその推進についてお尋ねいたします。
2問目は、和歌山の個性を発揮するための提言として、近自然工法のさらなる推進について。
そして3つ目は、和歌山県の中小事業者の皆さんのビジネスチャンスの拡大策、アジア、中国へのチャレンジに伴うサポート体制の充実に係る提言。
これら3つの項目に絞り、分割方式で質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。
さて、今、和歌山、日本が置かれている実態、その危機的な状況は、日々のマスメディアなどでも伝えられる状況にありますが、その深刻さ、問題の根深さは相当のものと覚悟する必要があります。そこでは、単に消費税の引き上げ、社会保障制度の手直しといったことで解決されるものではありません。和歌山を初め各地方それぞれの地域、日本社会全体で噴出している問題については、対症療法による対応は既に限界に達しつつあり、もっと本質的な、根本的な対応が必要とされています。
今の地方、国全体に係る根本問題、その本質とは何かについては、私自身、これまでこの議会においても、さまざまなデータ、専門家の意見なども紹介しつつ議論してきたところですが、その中でも、次の2つの指摘について特に重要なものと考えています。
1つは、藻谷浩介氏の指摘。彼は、ことしから所属先を変え、日本総合研究所で調査部主席研究員として活躍されておりますが、一昨年、日本政策投資銀行当時に出版した「デフレの正体」において今の日本の病巣を指摘し、各方面で大きな反響を呼びました。
そこで指摘されているポイントは、今の日本が抱える問題の根本要因は人口構造の変化である、それを読み解くところから地方経済、日本経済が直面する課題が明らかとなる、今の景気の波を打ち消す大きな人口の波が日本全体を洗っていて、日本の再生、地方の再生においては、その根本部分にフォーカスした課題設定と解決策の模索を真剣に始めなくてはならないというものであります。
もう1つは、イギリスの経済雑誌「エコノミスト」が出した経済分析レポート、タイトルは「The Japan syndrome」。
少子高齢化の進展は、有効な対策を打てないと一国の経済を短期間に衰退へと導き、未来の希望を摘み取ってしまう。そのことに現在の日本人自身も理解が足りず、もっと真剣に向き合わなくてはいけない。この問題に真正面から取り組まない限り、日本の衰退はどうしようもないと分析されています。
それぞれに共通して指摘されていることは、人口問題、少子高齢化、労働生産力の減退、世帯別の所得額の減少から消費の低迷などが現在の日本、地方の病巣であり、それらの現象を正面からとらえることなしに未来はないということです。
そこで、そういった現状認識を持って、その具体的な解決策を提案する最初の質問に入らせていただきます。
今、我々には、危機的状況に対応していく具体的かつ実効性の極めて高い方策、政策があります。それは、現在の日本社会において眠っている力、潜在的な力である「女子力」を引き出す。女性に頑張ってもらう。まだまだ改善の余地が大きく残されている女性の活動に係る環境整備の徹底した充実といったことが、その答えとなります。
質問冒頭で指摘した和歌山県を含めた日本の根本問題、それらすべてについて、女性の活躍、男女共同参画社会の実現がかぎとなります。
まず、人口減少、少子高齢化について、その解決策は、当然のことながら、どうやって子供を産み育てる環境を整え、子供の数をふやし、高齢者の割合を減少させていくのかといったことが課題ですが、まさに女性政策として男女共同参画が示す目標であります。
また、労働生産人口の減少についても、これまで、労働生産人口が縮小し、社会保障の維持もままならない状況というのは、もう20年以上も前から危機的な認識だけは示しつつも答えを出せていない。国政の無策で、既に現時点から外国人労働者を何百万人単位で受け入れるというようなことは不可能であり、八方ふさがりのように思いますが、しかし、これも解決策はあります。
それは、現在、潜在化している日本の力を掘り起こす。内閣府の調べでは、女性の潜在的労働力は、30歳代を中心に342万人、全労働人口の約5%ということです。日本の人口の約半分を占めつつ、眠れる活力源として放置され続けてきた女性の活躍によって、新たな光は見えてきます。
また、世帯別の所得額の減少から消費の低迷といった問題も、女性が活発に働ける環境を整えることで、女性も収入を得て、世帯別の所得額も上がり、消費も上向くことが期待されます。
また、経済の再生といった視点でも、ことし平成24年2月、政府の男女共同参画局が取りまとめたリポートでは、次のように分析されています。
少子高齢化による労働力人口の減少が進む中、女性を初めとする多様な人材を活用することは、我が国の経済社会の活性化にとって必要不可欠である。女性がその能力を十分に発揮して経済社会に参画する機会を確保することは、労働供給の量的拡大という観点に加えて、グローバル化や消費者ニーズが多様化する中で、持続的に新たな価値を創造することが期待される。女性の活躍による経済社会の活性化を改めて認識しなければならない。
単純な計算として、342万人の女性の力が発揮されることによって約7兆円、GDP比では約1.55%の新たな経済成長が望める。女性の活躍促進は、我が国の経済社会を支え、生産性や競争力を高めるとともに、さらには新たな価値創造にも大きく貢献することが期待されるということです。
女性の労働力参加率の増大は、国民1人当たりの国民総生産を増加させ、すぐれた女性人材の活用は時間当たりの労働生産性を増すこととなり、実際に多くの欧米諸国ではそれを実現してきています。
ここで認識すべきは、私たちの日本は、女性問題について非常におくれた後進国となってしまっているという実態です。今、女性活用は国家戦略と考えるのが先進国の常識であり、それは民間企業の経営トップにおいても、女性活用は企業戦略であると考えるのが世界標準となっています。
私も尊敬する女性経営者の1人である内永ゆか子さん、ベルリッツコーポレーション代表取締役会長であり、株式会社ベネッセホールディングスの取締役副社長の内永さんは、昨年9月にサンフランシスコで開催されたAPECの2011年APEC女性と経済サミットに出席したときのことを次のように話されています。
今回のハイレベル政策対話会合では、改めて女性の活躍が経済発展に欠かせないものであるという認識で一致し、どの国も真剣に取り組んでいることを確信した。特に、今回の実行委員長となったヒラリー・クリントン国務長官が、最終日の会合において、ゴールドマン・サックスの調査に基づいた数字を挙げて、「もし女性の就業・起業を妨げている障害が取り除かれれば、アメリカでは9%、ユーロ圏では13%、日本では何と16%のGDPの上昇が望める」と述べたことが大変印象に残った。日本も、これからもっと積極的に声を上げ、経済活性化における女性の貢献の可能性と、そのための取り組みを推進することの重要性について発信していくべきであると痛感したということです。
内永さんは、1990年代の後半、日本IBMで働いていた当時、女性活用は企業戦略であるという全世界のIBMの戦略精神に間近で触れ、そこでは、「女性管理職をふやすのは社会貢献や義務などではなく、あくまで企業戦略ということを改めて認識し、そのことを企業のトップが腹の底から理解して明確に打ち出すことの重要性を感じた。それが成長を続ける企業の最低条件」と語っています。
世界的に持続的な成長を続ける企業の多くは、女性の管理職は当たり前、執行役員、経営者も数限りなくいる、それが世界の現実です。
日本でも、最近は、女性の力がどれだけ有効なものであるかに気づいた企業では、多くの女性管理職並びに社長が誕生しています。その1人である資生堂の岩田喜美枝さんは、世界の情勢を見て、おもしろい解説をされています。
先進諸国のうち、女性の労働力率や出生率が日本並みに低い国の代表格はギリシャ、イタリア。女性が働きにくい国は、経済も低迷し、先行きが暗いと見るべきだとしています。
確かに、ヨーロッパの現実を直視して、ギリシャ、イタリアの国家存亡に直面する危機的な状況と比較して、フランス、ドイツなど女性の社会進出が目覚ましい国との違いは顕著であり、その明暗をはっきりと分けています。
少子化が進み、人口減少、労働生産人口の極端な落ち込みから社会保障制度の崩壊、世帯別所得額の減少から消費の低迷、経済の衰退といった国家の存亡にかかわる社会問題、それら危機的な問題の根本的な解決策として、女性の活躍、女性の力の掘り起こしが重要な処方せんであることを今まさに改めて認識し、真剣に取り組んでいくことが求められます。
そこでは、今、女性みずからが権利を主張するのではなく、改めて男性側からこそお願いをして女性に頑張ってもらえる環境をともにつくり上げていくことが、日本、地方のそれぞれの地域において必要な時代だということです。
そこで質問ですが、女性の頑張れる環境を整えることについて、まずは全般的な認識として、その重要性をどのように考えておられるか、知事の認識をお伺いいたします。
次に、環境生活部長にお尋ねしますが、県内における男女共同参画の推進状況について、どのように認識されておられるか。
また、男女共同参画への取り組みは、まさに重要なものですが、しかし、和歌山県内における取り組みを確認してみると、県内の各市町村で男女共同参画の計画策定と条例の制定状況などを見ると惨たんたる状況です。
お手元の資料を御確認ください。お配りさしていただいていると思いますけれども、これは内閣府の男女共同参画局が、ことし、この1月に公表した資料です。
都道府県別の男女共同参画の基本計画の策定状況と条例の制定状況について書いておりますが、見るも無残な状況になっていますが、計画の策定状況としては、和歌山県内の30市町村のうち12の市町しか策定されておらず、全国との比較の中で47都道府県中41位。条例の制定状況では、30市町村のうち制定されているのはゼロで、47都道府県中47位。唯一地域内の自治体での条例制定がないという情けない状況になっているのが和歌山県の実態です。
この改善については、知事のリーダーシップ、県当局の本気度も試されますが、まずこの状況について認識をお尋ねします。
あわせて、この状況を改善する取り組みとして、今後、具体的にどういった改善策を考えておられるか、環境生活部長にお伺いいたします。
また、この当初議会で、新年度に向けた予算の計上に係る問題について、男女共同参画の事業内容としては、働く女性の相談業務、実際に活躍する女性を和歌山に招き、働く女性のよいモデル提示ともなる講演会などの開催、女性の社会進出についての広報・啓発から社会的認知の向上活動、各企業への働きかけの運動などなど、必要とされる取り組みに対して予算が計上されています。
男女共同参画関係の予算は、事業名として、男女共同参画行政推進と男女共同参画センター運営費となっております。それぞれ合わせて、本年度、今の平成23年度で6089万6000円であったものに対して、平成24年度、私たちが今議会で審議している新年度の予算としては総計3616万1000円と、約半減する状況です。これは、国からのふるさと雇用の費用がなくなったことが大きく影響しているのですが、しかし、現在の女性問題の最後進地域としてやゆされる和歌山県において、これはないといった厳しい状況です。
この予算の計上の状況について、環境生活部長はどのように考えておられるか。
また、今後、どういった取り組みを進めるにせよ、ある程度の予算確保ができないと、それは幾ら知恵を絞っても、実際問題、成果を期待するのは難しい状況です。特に和歌山県は、男女共同参画で後進地域となってしまっていて、他の地域をこれからキャッチアップしなくてはいけないわけですから、このままではいけないと思います。
今後、さらなる対応も必要になってくると考えますが、環境生活部長から御答弁をお願いいたします。
○議長(新島 雄君) ただいまの山下大輔君の質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 人口減少、少子高齢化、労働生産人口の減少等、さまざまな問題を解決するためには、女性がその能力を十分に発揮し、活躍をすることが重要であります。女性の参画が進み、女性の活躍する場面が多くなればなるほど、その潜在的な力が発揮される可能性が大きいということを認識しております。
男女が働くことで世帯の所得を高め、消費につながる可能性があるなど、女性が活躍することは、単なる労働供給の量的拡大だけにとどまらず、新たな価値をも生み出します。
家庭において、家事や子育て、介護等は主に女性が担っていること、雇用の分野においては、女性に非正規雇用が多い等、女性が働くことを阻害するさまざまな問題、あるいは意識の問題も含めて、そういうことがあるということも認識しております。
このような問題を解決し、働きたい女性が結婚、出産後も働き、経済活動を初めさまざまな分野に参画できるよう、子育て環境をよくしたり、あるいは雇用環境をよくしたり、あるいは社会活動において応援をしたり、そういうことを整備することが重要だと思っております。
本県においても、女性の社会参画を進め、経済等さまざまな分野で活躍できるよう、環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長保田栄一君。
〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 御質問の5項目を一括してお答えさせていただきます。
まず、県内における男女共同参画の状況についてですが、5年ごとに実施しております県民意識調査によると、男は仕事、女は家庭など、性別によって男女の役割を決めるような固定的性別役割分担に否定的な人の割合は、平成14年度の51.3%から平成22年度は53.9%と徐々に改善されてきております。しかし、平成21年の全国平均55.1%には至っておらず、まだまだ男女共同参画の意識啓発が必要な状況であると認識をしております。
また、県内市町村の計画及び条例の策定状況については、全国的に見て低い状況であり、早急に推進すべき課題であると認識をしております。
市町村における計画は、男女共同参画社会基本法第14条第3項により努力義務とされていることや、市町村によっては取り組む優先順位が低いことも影響しているものと考えております。
県としましては、こうした現状を改善するため、現在、改定作業を行っている第3次和歌山県男女共同参画基本計画において、市町村計画策定率と条例制定市町村数の数値目標を設定し、重点的に取り組んでまいりたいと考えております。
その目標達成に向けては、市町村の計画策定等に係るアドバイザー派遣や、市町村職員に対する男女共同参画意識の高揚を図るための研修などの支援を引き続き実施するとともに、首長等に対しても計画策定を強く働きかけるなど、より効果的なアプローチを検討してまいります。
次に、平成24年度男女共同参画行政に係る予算は、ふるさと雇用再生特別基金の終了に伴い厳しい状況ではありますが、民間団体と市町村が連携して企画、運営を行う新しい事業なども盛り込み、知恵を絞りつつ、最善の努力をしてまいります。
今後は、先ほど申し上げた第3次和歌山県男女共同参画基本計画に沿って効果的な事業を展開していくため、必要な予算の確保に努め、男女共同参画を推進してまいります。
以上です。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
女性が活躍できる環境整備、共同参画について、私たちのこの国の子供の年間出生数は、ピーク時には270万人おりました。現在は100万人、3分の1近くになっています。しかも、あと40年後、2050年には49万人まで落ち込むことが予想されていて、それは何とピーク時の5分の1以下です。
国の宝、金の卵の子供の数が5分の1以下になる、そういう現実が突きつけられていると。私たちの国は、坂の上の雲どころか、坂の下の溝にはまり込もうとしています。今、政治の責任として本気で取り組まないと、これからの時代の人たちに本当に申しわけない。
本日提言した女性の問題、共同参画は、人口問題、労働力問題など、本当に難しい課題に対して実効性の高い対応策となります。ぜひ、知事を先頭にして一気呵成に取り組んでいただきたい。これは、ほかを切って取り組んでも、世論の応援はその倍ほどついてくる政策だと思いますので、ぜひ知事には強力なリーダーシップを発揮して頑張っていただきたいと思います。これは要望としておきます。
次に、和歌山らしさの追求、和歌山県全体で取り組む近自然工法の推進について。
今、和歌山県再建に向けて、地域として望まれることは、いかにして他の都市にない和歌山の魅力を先鋭化させ、和歌山の個性として磨き上げていくか。和歌山の未来を考えるとき、大都市・大阪のカウンターパートとして、大阪では得られない潤い、いやしの空間の創造、すぐれた自然環境を前面に押し出した新わかやま創造が求められ、それには方向性を明確にした県土づくりが求められます。
そんな中、昨年の台風12号などの影響により県土に大きなダメージを受けた和歌山で、この3年ぐらいは、その復旧を初めとした多くの公共事業が発生することとなり、そこでは、単に従来工法によりコンクリートを流し込むといった手法だけでなく、できる限り和歌山の自然の環境、景観を保ちつつ、治山、治水、復元を実現させていく取り組み、いわゆる近自然工法、多自然型工法をしっかりと導入していくことが重要です。
そもそも、近自然工法、また多自然型工法とは、人間の利便性追求型社会から、地球環境や自然生態系に配慮した社会、いわゆる環境保全型社会へと変えていくことを基本的な考えとして生まれたのが近自然工学であり、効率性の追求を図る都市とは違い、地方、特にその自然環境を財産とする和歌山などでは、率先して活用することが望まれる技術です。現在は、国としても、多自然型川づくりやエコロード事業など、さまざまな形で推進されています。
近自然工法の概念は、そもそもヨーロッパのスイス、ドイツなどでその理念が確立されたと言われており、現在では、スイス、ドイツにおいて、公共工事の施工時には絶対的な条件として考えられております。
私自身、以前にヨーロッパ、中でもドイツを訪問した際に、町の美しさに感動しました。日本では、町なかで美しい景観に感動することはそうあるものではないですが、ドイツでは美しい並木道や親水型の河原、公園などに自然があふれており、町じゅうのあちこちに心を奪われる美しい風景が創造されています。これは、単に自然があるといったことではなくて、ドイツ国民が努力して環境への取り組みを徹底して進めてくる中でつくり上げてきたものです。
和歌山県の場合は、そもそも美しい海があり、美しい川があり、美しい山がある。自然に恵まれた地域であり、その地域特性をどのようにして伸ばしていくか。そういった地域資源を十分に活用して、自然と共生した、都会にはない和歌山独自の空間、魅力をしっかりと引き出す県土整備こそが必要とされるのだと考えます。
今後は、新たな公共事業には多自然型、近自然工法を徹底して導入し、そこから都会との違いを際立たせる魅力ある和歌山づくりを進め、地域の活性化、産業の振興までつなげていくことが望まれます。
そういった中、私自身、平成17年の6月定例会において、当時はまだ全国でもそんなに事例のなかった近自然工法の取り組みについて初めて提案をさせていただいたところですが、しかし、現状においては、近自然、多自然型工法と言いながらも、そもそもの基本理念を踏まえることなく、従来の公共工事の手法に単に見ばえだけで緑をふやすといった誤った認識の多自然型工事が幾つも見受けられ、その原因としては、事業内容が軽んじられる予算至上主義と行政特有の前例主義があると指摘されるところです。
和歌山県として、それなりに取り組んできてくれていることは理解しつつも、これまでの反省を生かしつつ、さらなる推進に期待するところです。
近自然工法を誕生させたと言われる元スイス連邦のクリスチャン・ゲルディ氏は、次のようにその有効性を説明します。「景観は、人々の心情に影響を与え、創造性をはぐくむ印象の源であり、文化のあらわれである」。
景観が人間に与える影響を考えれば、いやしの効果、生き生きと生命力をよみがえらせる地域力の創造、それは和歌山のリゾートコンセプトにもぴったりとフィットする哲学であり、今後の地域づくりには不可欠な視点だと考えます。
そこで、県土整備部長にお伺いいたしますが、まず和歌山県として、私自身、平成17年6月定例会で提案してから、近自然工法への取り組みについて、どのように進めてきてくれているか、現状の取り組み状況についてお聞かせください。
また、近自然工法を取り入れた公共工事によるその成果をどのように考えておられるか、また、和歌山県として、ここまで近自然工法に取り組む中で、その反省点としてどういったことが挙げられるか、御説明いただきたいと思います。
また、今後について、近自然工法に取り組む見通しについてお聞かせください。
多自然型、近自然工法による整備は、先進地のドイツなどでは、土木工学の専門家だけではなく、少なくとも生態学、景観工学の専門家が加わることが義務づけられています。ポイントは、この3者が参加しなければプロジェクトとして認められないということです。
以前にも指摘したことですが、改めての提案として、河川、治山などの公共工事を行う場合に、和歌山モデルとして、土木工学の専門家だけではなく、環境、生態、景観といった専門家を現場にも動員し、参画させるという県独自のルールづくりをぜひ行ってもらいたいと思います。そのような取り組みをルール化しているところは、まだ全国にはありません。ぜひ、こういったところでも和歌山モデルを確立していただきたいと考えますが、これも県土整備部長に御答弁をいただきたいと思います。
また、この近自然工法を提案してから、県内においても、自然整備、リサイクル資材を複合的に組み合わせながら自然復元を目指す工法を提案するといった県内事業者も出てきています。
そういった特殊技術を持つ地元事業者については、今後、和歌山県内のみならず、全国、国外にもその技術を広げ、ビジネスチャンスをつかみ、和歌山県の発展にも寄与していただかなければいけないわけですが、まずそのためにも地元の施工実績を積ませる必要があると考えます。今後、自然の生態系を大切に考えた工事を施工する地元事業者の育成といったことについても力を入れていただきたいと思いますが、県のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○議長(新島 雄君) 県土整備部長森 勝彦君。
〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) まず、県の近自然工法への取り組みについてでございますが、河川事業において、治水機能の確保は当然のことながら、環境に配慮した工法への取り組みも大変重要と認識しております。
県では、平成17年6月以降、南部川等で近自然工法の取り組みを始めるなど、現在、13河川で自然環境に配慮した河川工事を実施しております。
河川の中期的な整備内容を定める河川整備計画策定の際には、治水、利水、環境など、さまざまな知見を持った学識者等で構成する委員会の意見を聴取し、環境への配慮を盛り込んだ計画づくりを行っております。
また、個々の工事の実施に当たっては、県から依頼している河川環境アドバイザーの意見をお伺いするなどしながら工事を実施しております。
次に、成果でございますが、ブロック積みだった河川護岸に、近自然工法を取り入れることで川らしい自然環境や景観が創出され、河川が本来有している生物の良好な生育環境が生み出されるとともに、人にとってもいやしの空間となっています。
例えば、住吉川では堤防のり面に植生が戻り、動植物の良好な生息生育空間を形成しています。また、川の中に配置した自然石により流れに変化をつけたことで、自然の瀬やふちが形成され、急な流れに弱い小魚の生息が確認されております。
このような成果も見られることから、さらに近自然工法の取り組みが必要と考えております。
次に、これまでの反省点ですが、自然環境に配慮した公共事業については、平成2年に国からの通達が出され、平成9年には河川環境の整備と保全が河川法の目的として明確にされました。
これを受けて、災害復旧を初め、すべての河川事業で環境への配慮を念頭に置いた川づくりを進めております。
さまざまな工夫を重ねながら、治水機能と環境機能を両立できた事例がある一方、植生が根づかなかったり、河床や水際が単調になってしまっているような事例や、護岸工法として自然の素材を使用するだけで環境に配慮しているとの不十分な事例も見られるなど、改善すべき点もあると考えております。
次に、今後の取り組みですが、これまでの取り組みの改善すべき点を踏まえ、それぞれの河川の特性に応じ、環境に十分配慮しつつ、洪水を安全に流せるバランスのとれた川づくりを進めていきたいと考えております。
用地の制約を大きく受ける都市部の河川においても、環境への配慮を工夫し、川づくりを進めていきたいと考えております。
また、計画策定時にいただいた環境生態系や景観に係る学識者の意見を生かしながら、和歌山独自の取り組みも取り入れつつ、和歌山らしさを持った価値のある川づくりを考えてまいります。
最後に、県発注工事においては、県内企業の健全な育成と発展を図るため、県内企業で施工可能な工事は県内企業へ発注することを原則としております。平成22年度からは、さらなる品質向上や地域経済の活性化のため、建設業界の競争力強化事業を立ち上げ、資格等の技術力向上への取り組みや新技術開発への取り組みへの支援を始めたところでございます。
新技術開発の支援としては、環境に配慮した工法など和歌山県の特色や実情に合ったものを募集し、施工実績のない技術には、県が管理する河川などの実験フィールドを提供し、その効果検証費用も支援しております。
このような取り組みを通じて、県内企業が開発した新技術により、県内外を問わず事業展開できることを期待するものでございます。
今後とも、議員御提案の環境に配慮した工法を含めた県内企業の育成や新技術開発支援に取り組んでまいります。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
多自然型、近自然工法について、この取り組みはお金も少しだけかかりますが、しかし、これは県政百年の大計となる取り組みです。未来の和歌山県民に大きな財産を残すものともなりますので、これまでもそれなりに努力はしていただいてますが、今後はさらに力を入れて徹底的に取り組んでいただけるよう再度お願いして、これも要望とさせていただきます。
次に、最後の質問項目となりますが、アジア・中国市場への戦略、その足がかりとなる和歌山から山東省に進出する企業メリットの創造について。
先月、2月に発行されたジェトロ中国北アジア課が作成したレポートでは、現在の中国との関係について、次のように分析されています。
日本が人口減少局面となる中で、国内市場を中心に事業展開してきた中小企業の事業環境は厳しさを増す一方、日本の中小企業は、成長を続ける振興市場開拓を通じて自社ビジネスの拡大を目指す動きが顕在化しており、とりわけ2010年に日本を抜いてGDP規模で米国に次ぐ世界第2位となった中国市場の開拓を目指す企業がふえている。対中貿易では、2012年1月──ことしの1月ですけれども──発表された財務省貿易統計をジェトロがドル建てで換算したところ、2011年の日中貿易は総額3449億1623万ドルで、前年比14.3%増と、過去最高を記録するものとなっている。日中貿易は、堅調な中国経済に支えられた輸出の増大、中国製完成品・部品等に対する日本側の需要拡大を受けた輸入の増加により2年連続で増大。日本の貿易総額に占める中国のシェアは20.6%と、日本経済に対する中国、中国経済に対する日本、相互の互恵関係は一層深まる状況にあるとしています。
中国といった国に対しては、その振る舞いから、許せないといった中国アレルギーを感じられる方も少なくありません。私自身としても、中国という国の問題は多く感じるところですが、しかし15億の民を抱える中国といった国そのものを一くくりで見るだけでなく、そこにある個人、企業といったものを丁寧に見ていくことが重要です。
先ごろ、県内企業の技術を中国山東省政府に売り込むためのお手伝いをするために、山東省済南市に行ってまいりました。商談そのものはまずまずで、今後に期待を持たせるものとなったのですが、そのときにお手伝いいただいた和歌山県の中国アドバイザーである陳進躍さんとお話しする中で、改めて現在の中国の現実、その一面を肌で感じることとなりました。
陳さんは、和歌山県のアドバイザーであるとともに福岡県のアドバイザーも兼ね、その他、大手日本企業のコンサルもされています。おっとりした学者肌で、人柄もよく、日本と中国それぞれに深い見識を持ち、適宜適切なアドバイスをいただける信頼できる方です。お金のためだけでなく、やりがいのある仕事がしたいと、最近は高額な金額を提示されても目先の利益を追うような仕事は断られていて、中国では珍しいタイプの人物だと思います。
今回、正式なビジネスの話が一段落した後、夜の9時過ぎから2人でホテルを出て、ちょうどその日はバレンタインで、にぎわう済南のまちを、スターバックスのコーヒー片手に、いろんな話をしながら約2時間散歩しました。マイナス6度という極寒の中、体は冷え切りましたが、陳さんと時間をかけてゆっくりとお話をさせていただく中で、非常に有意義な時間となり、中国の実像とはといったことについて改めて考えさせられました。
陳さんの奥さんは、中国の某有名銀行の幹部であり、今は附属の研修センターで所長をされているということです。
子供さんは、娘さんがお1人いらっしゃって、アメリカのスタンフォード大学を卒業後、同大学院の修士号も取得され、現在は世界銀行で働かれている。日本が大好きで、スタンフォードのプログラムで世界各国への自由研究でも日本を選択し、企業インターンとして約6カ月間、日本での就業体験もある日本びいきのお嬢さんということです。
この陳さんの娘さんのお話について、いろいろとお聞きしてくる中で、改めて中国の見方について考えさせられました。中国からアメリカ、スタンフォード大学、そして今は世界銀行で活躍している。マスコミでも取り上げられるよくある話のようですが、しかし身近な話として改めて伺うと、そのよくある話こそが非常に重要なものだと気づかされました。
陳さん御自身は、そもそも優秀な方ではありますが、決して特別の立場を与えられた人ではありません。党の幹部でもなく、中国の中では身一つで生き抜いてきたごく一般の市民です。その娘さんも、特に特権階級としてエリート教育を受けてきたわけではありません。娘さん自身が欧米の有名大学への進学を望み、御両親からは奨学金を受けることを条件として許可され、一生懸命勉強して複数の大学から奨学金つきの合格をかち取った。その中で、返還不要の奨学金5万ドルという一番条件のよかったスタンフォード大学へ進学することにして、卒業後は世界銀行に就職。今は世界各国で多くの友人をつくる中でさまざまなビジネスを応援して、自身もいろいろと挑戦を続けているということです。
今の日本で、特に内向きになっている現在の私たちの国で、こういった話はなかなか聞く機会は少なくなっています。しかし、中国では、こういった人物がごろごろいるのが現在の中国の一面であり、現実です。
今、中国を見て、その国自体を決して一くくりで語ることができないと痛感します。国として理解しがたく、日本からは許しがたいことも多いですが、そういった中国という国そのものと、そこにある企業、個人、人間もさまざまであって、よい部分もあれば悪いところもある。それぞれへのアプローチをバランスよく丁寧にしていかないと、ある面では間違った認識を増幅させ、ひいては大きなチャンスを逃すことにもなります。
現在の中国へのアプローチについては、山東省済南でも、アメリカ、フランス、イギリスなど、それぞれに企業、個人ベースで、したたかにつき合いを深めている現実があります。
そういった中、今の日本企業、個人の対応については、一部でナイーブ過ぎる反応を感じます。結局は、日本の個人、企業は、まだまだ豊かであり、ある意味ぬるま湯につかっている状態で、チャレンジングスピリットも不足している。
今の日本、和歌山の企業の皆さんも、ここで未開の地への冒険をちゅうちょしていると、世界の成長センターとなるアジアに立地する日本、しかも国際空港に隣接するという和歌山の大きなアドバンテージをみすみす逃してしまうことになりかねません。
あくまで国といった単位での物事の見方、とらえ方だけでなく、和歌山県、和歌山市、山東省、済南市、さらには企業、個人といったミクロの単位での丁寧な取り組みが今後は重要であり、その上に、これまで培ってきた努力、過去30年にわたる親善交流、そこで得た人脈、信頼は強力な武器となります。それを今こそ生かす時期であり、アジア・中国進出への足がかりとして、特に山東省での経済活動について、これまで積み上げてきた交流のアドバンテージを、しっかりと活用した取り組み、和歌山県の戦略が期待されるところです。
そこで、商工観光労働部長に幾つかの質問並びに提言をさせていただきます。
まず、これまでの山東省との取り組みを踏まえて、特に商工、ビジネスの部分で成果をどのように考えておられるか。
また、ビジネスマッチングの事業において、これまでの取り組みの反省点についてどのように考えているか。また、その反省点を踏まえて、今後、具体的にどのように改善していこうと考えておられるか。
中国の成長パワーは、和歌山県としてもぜひとも取り込んでいかなければならない重要なものであり、今後は特に中国を市場と考えて、県として和歌山県の企業にビジネスチャンスをつかんでもらうことを願うわけですが、そのためには、今後、県としてどういったことに力を入れていこうと考えておられるか。
また、あわせて、和歌山県が姉妹提携を結んでいる山東省、現時点において和歌山県の企業が特に山東省でビジネスを行う場合のメリットについて、どのように考えているか。また、実際に成果の上がっている事例があれば、具体的に示していただきたいと思います。
私の友人が経営する企業で、県と山東省との友好提携を踏まえて、実際に山東省青島に出店してくれた具体的な事例がありますが、しかし、和歌山県が姉妹提携を結んでいるメリットを特に感じることはないと話します。中国の他の省に独自で出店するのと比較して、特段メリットを感じていないということです。これではいけないのであって、今後、山東省との友好提携の利点を生かす取り組みについて県はどのように考えているか、お示しいただきたいと思います。
現在の中国におけるビジネス、現実問題として、リスク管理なく中国に飛び込むのは危険も少なくないと思います。そこでは、それなりの戦略が必要で、例えば中国では、日本では考えられないくらい、政治、行政府の権威は絶大です。そこを上手に活用すると、リスクは大幅に軽減されます。
県内企業の山東省への進出で、山東省政府が協力してくれる状況をもっと前面に押し出せるような仕組みをつくれれば、リスク管理が高まります。通常、民間だけで行うと、そこにはリベートなどの話も少なからず耳にしますが、和歌山県との30年にもわたる友好関係を上手に利用してもらうことで、そういったこともなく、山東省政府がバックアップしているというお墨つきのもと、スムーズな企業活動につなげる、そういった体制を整えることが非常に有効な手段となります。
そこで最後に、具体的な提言として、企業の中国進出に係る和歌山県のサポート体制のさらなる充実として、山東省政府の中に置く和歌山県企業のサポートデスクの設置について提案させていただきます。
山東省、省政府の中に設置する和歌山県企業への専属のサポートデスク、この話をさきに紹介した私の知人の経営者にも相談したところ、窓口を一本化させ、県内企業をバックアップするための取り組みで、県の職員が常駐してくれるサポートデスクがあれば、本当に助かるということです。それは、今後、和歌山の企業が中国へ進出する大きな追い風になると期待を寄せていました。
ぜひ、この機会にサポートデスクの設置について真剣に取り組んでもらいたいと思いますが、商工観光労働部長に御答弁をお願いします。
○議長(新島 雄君) 商工観光労働部長大門達生君。
〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 山東省における県内企業の活動の活性化に資する取り組みに関する御質問に、一括してお答えいたします。
山東省との商工分野における経済交流に関しては、平成17年度から毎年、本県企業と山東省企業との商談会を開催してきました。参加企業は、第1回の9社から第7回の昨年は17社と増加傾向にあり、また参加業種も、繊維、家具など製造業種から飲食、福祉などのサービス関連業種へと幅広い業種に広がってきており、数多くのビジネスチャンスを創出してきたものと考えています。
一方で、これまでの商談会では、具体的な商談に結びつきにくいとの声もあることから、本県企業ニーズと合致した出会いの場となるよう、山東省政府と協議しながら工夫を凝らして商談会を開催するとともに、議員御質問の中にもございましたアドバイザー、すなわち中国人ビジネスコーディネーターや商社OB派遣などの施策をフル活用し、市場としてますます期待できる中国への進出を支援してまいります。
次に、山東省との提携につきましては、山東省政府の支援を得た上で、新たなビジネスチャンスを創出できる大きなメリットがあり、これまでも山東省のパートナー企業とビジネスを展開するなどの成果が出ております。
今後とも、多くの企業がビジネス展開できるよう、提携のメリットを生かした取り組みを進めていく必要があると考えております。
また、議員御提案のサポートデスクに関しては、中国で第2位の経済規模となった山東省との経済交流を活発化させ、企業活動を支援する体制を充実させていくことは重要であると認識してございます。
これまでも、山東省商務庁との提携により、県内企業の相談に総務庁が協力する体制を構築するとともに、山東省政府へ本県職員を派遣するなどして山東省政府との友好関係の強化に努め、企業活動を支援してまいりました。
今後は、山東省商務庁との協力体制を基本に、これまでの友好交流の中で培ってきた人脈やジェトロ青島事務所の組織力などをより一層活用しながら、工夫した商談会の実施、中国人ビジネスコーディネーターや商社OB派遣の有効的な活用など、さまざまな施策を効果的、総合的に展開するという形で、さらに県内企業が円滑に活動できるような体制づくりに積極的に取り組んでまいります。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
中国山東省におけるビジネスチャンスの拡大、和歌山県企業のバックアップということについて、中国へのチャレンジは、47都道府県でしのぎを削っている状況です。和歌山県の規模で行うとすると、その予算額から考えても、そんなに選択肢はなく、中途半端にいろいろやるよりも、思い切った選択と集中が必要だと思います。
これまで、知事自身も何度もトップセールスを行われる中で、それは直接の人脈と信頼を得ることにつながり、大きな武器となっていると思います。そういった関係をこれまで築けているからこそ、和歌山県であれば今回のサポートデスクも可能となる、取っておきの手だと思います。
特定の県による地方政府内に設置する県内企業専属のサポートデスクといったものは、調べた限り、どこもありませんでした。しっかりとアピールして、それを活用していくことで、必ず大きな成果がついてくるものと確信します。これは、本当に効果の大きい中国戦略として、和歌山県の未来のために何としても実現させてもらいたいと思います。
そこで、改めて、このサポートデスクについて、知事から御答弁をいただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 通告がなかったもんですから、議長のお許しを得て申し上げます。(「通告はやってる。再質問の通告はしてる。質問項目の上位者への質問は全然問題ない」と呼ぶ者あり)議長の御許可を得ましたので申し上げます。
サポートデスクについては、議員の問題意識、いろんな情報をとって、それで和歌山企業にそれを伝え、それで和歌山企業のお世話をするということは大変大事なことであります。そのために、じゃあどういうふうにするかというと、自前のものを持つというのが、割合すぐ、だれでも考えるところなんでございます。議員の御提言は、実は自前のものであるようなところがあり、自前のものでないようなところもあるわけです。
自前のものでないというところは、県の職員が行って、そこに座っていていろんな仕事をすると、こういうところだと思います。
実は、和歌山県は、山東省に職員を常時1人ずつ派遣しております。これは、中国関係の要員に仕立てようというようなことも長期的に考え、かつリエゾンオフィサーとして連絡もとってもらおうというふうに思ってるわけです。
私は、現地のことは、現地にいろいろ根の張っている、そういう組織でないとなかなか難しいというふうに思います。したがって、我々は、山東省政府にも動いてもらう、そのためのネットワークはきちんとつくっておく。それから、既にジェトロや領事館があるわけですから、そういうものを全部傘下におさめて思うままに操ると、こういうほうがずっと効率的であろうと思います。
私自身の経験を──ジェトロの実は海外要員もやりました。ひとり事務所の難しさというのは、よくわかっております。
それから、自分自身が突如として外国に行かされて、頑張りましたけれども、現地に溶け込むまで随分時間がかかります。したがって、県の職員を独立してやらせるということは、かえって副作用もあるかもしれませんので、今のところ、ややネガティブでございます。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
知事がおっしゃるように、当然、各国の駐在員とか外に出せばいいというものではなくて、自前でできることは簡単にできるけれども、金と効果が本当についてきてるかというところは確かに問題あって、今、それを整理されてるというのはよく理解します。
ただ、今回、私が提案させてもらってんのは、1人で中国でどっか事務所置けじゃなくて、山東省政府の中に置くというのが実はみそなんですね。しかも、我々は30年交流やってきてると。向こうの外事弁公室、和歌山県の窓口になるところというのは、もう人的な交流もずっとして、お互いの人間関係はできてると。その中に、例えば和歌山県の職員を1人置いて、日本企業が何か困ったこととか相談事があるときに、その日本人に対して相談をかけて、それに対して、外事弁公室を初め山東省政府の中でその問題解決に対して全体で協力してもらうと。
実は、このサポートデスク、1人置くことによって、しかも和歌山県企業に対しての専属のサポートデスクということで、これはもうほかからもどんどん置けというようなことになっても、なかなか置けるもんじゃないですし、今、我々が提案して、しかも30年の交流があるからこそ実は実現できる話であって、先ほどもちょっと申しましたように、知事自身もトップセールスをされてると。そういう意味では、省庁、向こうの共産党書記長なんかとも信頼関係がある中で、今、和歌山がやれば、かなりうまくいくだろうというようなことは、実は私も行って、そういう感触も確認してきております。そういう部分では、ぜひ実現させてもらいたい。
もう1つ、ジェトロとか領事館とか、いろんなものを巻き込んでという話もありますけれども、実際、これは知事も御経験からわかってると思いますけれども、ジェトロの、今、山東省の青島所長の北条さんともお話しさせてもらう中で、やっぱりジェトロも含めて、外部から中へ入り込むというのは本当に難しいんですね、中国というのは。例えば、民間の三井物産の加藤所長なんかともこの間もちょっとお話ししてくる中で、実際、外部の民間企業が入る、外郭団体が入るというのと、和歌山県が山東省とおつき合いしてくる中で和歌山県が入り込むという入り込み方とは、全然違うわけですわ。
だから、県の山東省とのおつき合いの中で省政府の中に人間が置けるという、こういう入り込み方というのは普通の機関はできませんので、我々がおつき合いしてきた中の大きなメリットとしてそういうのがあって、しかも山東省自身も、中小の和歌山の事業者とぜひ積極的なおつき合いしたいということを向こうも望んでますんで、こういうときに和歌山のサポートデスクを省内に置いて、しかもその問題解決にも省を挙げて当たっていただくというような形ができれば、これは和歌山県の企業にとっても大きなメリットになりますし、大きな成果というのが得られると思いますので、そういう認識でありますので、ちょっと先ほど、知事の答弁とは認識が違いますので、改めて知事にちょっと御答弁いただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 山東省には、既に若い職員を送っとるわけです。その職員がリエゾンオフィサーといいまして、ちょっと難しい言葉を使いましたが、連絡役を果たせるようにもなっております。
それは、なぜ置けたかというと、まさに議員お話しのように、30年も長い間、我々がおつき合いしてて、それでそれを預かってあげようと、ほんで仕込んでもらってるわけですが、仕込むだけじゃおもしろくありませんから、我々もそのルートを通じて、山東省政府にいろいろ動いてもらおうというようなことも考えてるわけです。
そういう意味で、山下議員の言っておられることと実はおんなじなんですが、名前をつけて、例えばちょっと身分の高い初任者みたいな、ちょっと格の上の人を送ることがプラスかというと、どちらかというとマイナスになるんじゃないかと、そういうふうに思って申し上げた次第でございます。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
もうこれは、あんまりかけ合って──ぜひ和歌山のプラスになるように考えてもらいたいと。
先日も行ったときに、今、県から送られている担当職員の方とも話ししてまいりました。
実際、今言ってるそのオフィサーとしての役割が果たせてるかといったら、半日は語学研修で半分はつぶされ──それはもうそれでいいんです、人を育てるという意味でね。ただ、今、言われるように、別にそれは位の高い人間置く必要もなくて、担当者レベルでいいんですよ。フットワークの軽い、やる気のある若い職員を送って、サポートデスクという──外事弁公室、中国人の方が窓口で対応するというようなことも、これは例えば山口県初めいろんなところに全部対応してるんですね。
そういう部分では、和歌山専属の、しかも日本人である県職員が窓口になって親身にお世話するというサポートデスクの看板をつくって対応するということは、私はおのずから結果は大きく違ってくると思ってます。だから、できれば置いていただきたいと思いますので、最後にこれはもう要望といたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○議長(新島 雄君) 以上で、山下大輔君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前11時57分休憩
────────────────────
午後1時0分再開
○議長(新島 雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
13番山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕(拍手)
○山田正彦君 御激励ありがとうございます。
この今期2月定例会も、一般質問最終日でございまして、5日間16人、私を除いて15人の県議会議員が、おのおのの立場で、地域の代表として、あるいはまた県勢の浮揚のためにいろいろ御意見を活発に議論されました。
十人十色という言葉がありますが、40人40人色だと思っております。ただ、図らずも、今回、このトリを務めよと、こういうことを御指名いただきました。私で本当にええんかなあと、そう思ってるんです。
というのは、ふだんよりやっぱりちょっと緊張します。柄にも似合わずというんですか、緊張を覚えておりますが、終わりよければすべてよしという言葉もありますから、極力ブレーキを確認しながら、すぐ脱線するくせがあるんですけど、すらっとというんか、スリムにというんか、スマートに終われればいいなあと、こう努力することをお誓いしながら、私なりに幾つかをもって質問させていただきます。この格調のある、格式のあるこの本会議場の雰囲気を壊すことのないように十分注意しながら質問させていただきたいと思います。
まず、通告に従いまして、鳥インフルエンザ埋却地の最終処分に対する現状と今後の県の対応方針についてをお伺いいたしたいと思います。
23年、去年は大変な年でありました。また、和歌山県にとりましても大変な1年でありました。大自然のなせるわざとはいえ、想定外の出来事ばかり、余りにも甚大でありました。
東北は別として、特に我が県では、台風12号における豪雨による紀伊半島大水害で被災されました皆さん方にはお見舞いを申し上げると同時に、一日も早い災害復旧と復興に最大限の努力を傾注しなければいけないなあと、そう思っている1人であります。
幸いと言ったら言葉が適当かどうかわかりませんが、私の選挙区である紀の川市地域では、台風12号の豪雨による被害は、あったことはあったんですが、そんなに大したことはなかったなあということで安心してありがたかったんですが、忘れていただいては困るのは、紀の川市にとって大変な出来事として、去年の2月15日、家畜伝染病に係る鳥インフルエンザが発生いたしました。
皆さんもまだ御記憶にはあると思うんですが、他府県では、平成16年1月に山口県で、あるいはまた同年の2月には京都府で24万羽と、国内では79年ぶりとなる発生が確認されました。その後、毎年のように、茨城県、埼玉県、宮崎県、岡山県、愛知県、島根県、鹿児島県などで鳥インフルエンザが発生いたしました。
その処分状況がテレビやその他で報道されるたびに、失礼な話ですけど、他人事のように思っておりました。
ところが、まさか地元で発生するとは思っておりませんでした。青天のへきれきの思いでありました。
幸い、和歌山県として初期対応が本当に素早く、対策本部が設置され、完全にそれが機能して、県職員初め紀の川市の職員、多くの関係者の皆さん、それから自衛隊の派遣要請に素早くこたえていただいた結果、報道関係者もびっくりするぐらいスムーズに所期の目的が達成されたと思っております。
知事御自身も、多分納得のいく対策本部長、采配だったろうと私は勝手に推測しております。本当にすばらしい采配であったと思います。
そのスムーズな処置がされた大きな要因の1つに、埋却地としての紀の川市が所有している土地の提供がありました。隣接している土地所有者と紀の川市長が、素早く直接交渉されました。3年間の法的な発掘禁止期間終了後には必ず掘り起こすからと、そういうことで最終処分することを条件に承諾を得たからであります。
私も、あの町内会です。地元中の地元として、その場に立ち会った1人として、てんまつをよく理解しているつもりであります。
そこで、和歌山県に確認したいんですが、最終処分に対する取り組みの現状と、当埋却地の今後について、当時、今の農林水産部長増谷部長は──私は日高かなあと思ってたんですけど有田だったんですね──有田の振興局長として有田地方のその対策本部の対応やらいろいろしていただいたとは思うんですが、現地の部長ではなかったので、前任者からの引き継ぎもいろいろ聞いていただいたと思うし、十分御認識はされて勉強もしていただいたと思うんですが、単なる事務的な答弁ではなくて、大変な問題を抱えたこの状況を今後どのように取り計らっていただけるのか、まずお伺いいたします。
○議長(新島 雄君) ただいまの山田正彦君の質問に対する答弁を求めます。
農林水産部長増谷行紀君。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 紀の川市が、市有地での埋却に当たり、3年間の法的な発掘禁止期間終了後に掘り返し、最終処分することを条件に近隣住民の承諾を得たという経緯から、紀の川市から最終処分するように要望を受けております。
国に対しては、その費用負担について、6月に県の政府要望を行うとともに、7月にも全国知事会議から政府要望を行いました。
さらに、11月には、私から同じ問題を抱える愛知県、三重県の部長に呼びかけ、3県主務部長の連名で、農林水産省消費・安全局長等への要望活動を行いました。
しかし、国は、家畜伝染病予防法上、埋却した時点が最終処分であり、掘り返しについての規定はなく、国の費用負担は、掘り返しについては認められないという立場でございます。
もし、掘り返し最終処分することに国の費用負担が認められなければ、今後、緊急を要する状況において埋却地の確保が困難となることが予想され、また、家畜伝染病の蔓延防止に係る事務は、本来、国が果たすべき事務であり、国は当然に応分の費用負担を負うべきものと考えております。
今後も、引き続き国に対し要望を行っていくとともに、紀の川市と最終的な処分方法等について協議を行っていく所存でございます。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 先ほどもちょっと御案内したように、鳥インフルというふうに陽性が出たのは平成23年2月15日午前10時45分ということでありますし、その簡易検査で陽性が出た。そして、すぐ対策本部を設置していただきました。
それで、いろいろな取り組みの中、3月14日、移動制限解除、現地対策本部解散まで、鳥12万羽、鶏卵約24トン、それから飼料が約85トン、それから防疫に関係していただいた作業員延べ2600人と、こういうふうに伺ってます。
関係者の皆さん、特に地元貴志川あるいは桃山の建設業者さんの24時間ぶっ通しの掘削作業やら、あるいは埋設作業、それから24時間体制で防疫をやっていただいた皆さん方の交代時には、あの冷え切った体でお帰りになってくる防疫作業員のために、豚汁をたくさんつくって提供していただいた赤十字奉仕団の貴志川あるいは桃山支部の皆さん、とにかく1人1人の心を1つにした行動に対して、本当によくやっていただいたということで、ただただ感謝するのみであります。
知事も、後日、関係者に対して感謝状を差し上げてくださいました。私も立ち会わせていただきました。
これは、農林水産部長にお答えいただいて。しかも、あと約2年という猶予がありますから、そういう体制で取り組んでいただけるということは、農林水産部長のお返事ということは和歌山県のお返事だと思いますので、あえて知事にはお尋ねしてなかったんですけど、私の話を聞いていただいたら、過去の記憶というか、苦労が走馬燈のようにめぐってくるんではないかなと思ってるんです。
とにかく、あの一致した地元の熱意を、逆に無駄にすることなく、3年後にはきれいさっぱりに復旧をしていただきたい、そういうように強く思っております。
知事に対して質問はしてないんですけど、もし御感想でもあったら、議長の許可を得て、お取り組みの覚悟をお聞かせいただけたらと思います。よろしく。
○議長(新島 雄君) 知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議長の許可を得ましたので、お答え申し上げたいと思います。
本件は、2つの点で大変重要でございます。
1つは、家畜伝染病を予防するためには、速やかに穴を掘って埋めてしまわないといけないわけです。それが、穴を下手に掘らすと後でひどい目に遭うかもしれないぞとだれかが思った瞬間に、この作業がもう停滞いたします。
したがって、ああすればこうなるということもよく考えて国は政策を考えないと、それこそ今度はぐずぐずしてる人たちが続出して、どんどん病気が広がるということになりかねないと私は思っております。
2つ目は、法令で何かそうなってると、こう言うんですけども、ほんまかいなというのもございまして、梅の農地の20度問題なんかもそうでありましたように、本来ならば、趣旨から考えれば別の解釈もできるんじゃないか、あるいは運用もできるんじゃないかという議論もあろうかと思います。
実は、結構熱心に、もう要望というか攻撃というか、やっておりますが、今後とも一生懸命やっていきたいと思っております。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 私も、この勉強するにつけて、あれは焼却したらそのとき終わり、埋設したらそのとき終わり、後は知りませんと、こんな法律であったとは知らんかったんです。まあ、よろしくお願いしておきたいと思います。
それでは、第2問目の質問に入ります。
義務教育修了後の高等学校の教育の現状とその取り組みについてということで、まず4点ばかり、教育長にお尋ねするんです。
きのうも片桐議員が教育のことについて、いろんな取り組みの話、例も出してしました。私は、教育問題を取り上げるつもりは今回ないんです。それはまた別の機会にしようとは思うんですが、後段、質問したい高等専修学校のことについてお伺いしたいので、まず、どんだけ公立なり、あるいは私立学校と専修学校が違うんか、あるいは冷遇されてるんかということを対比したいがための御質問でありますので、よろしくお願いして。
まず1つ目には、中学校卒業生の進学状況はどうなってるんかな。進学率と、それから公立あるいは私立、その他学校へ行ってる比率はどうなっているんか、まず教育長にお伺いしたいと思います。
○議長(新島 雄君) 教育長西下博通君。
〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 平成23年3月の中学校卒業生徒の高等学校等への進学率は98.5%となってございます。
その内訳は、県内公立高校へ81.4%、県内私立高校へ13.1%、その他へ4.0%となっております。また、専修学校等への進学率は0.2%となっております。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 何度も御足労いただいて申しわけないんですが、その場合の公立高等学校の学生に対する経費、アバウトな話でいいんですけど、一体幾らぐらいかかってるんでしょうか。
○議長(新島 雄君) 教育長。
〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 学校施設、設備の整備や管理費、教職員給与などの教育費は、公立高校の生徒1人当たりに、平成22年度決算で約101万円となってございます。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 皆さんも、101万円という数字、覚えといてください。
それで、その公立学校へ入学しました。近々入学試験もあるんですけど、中学卒業生が勉強して、公立学校へ入りました。
ところが、現実としては、途中中途退学、あるんですね、たくさん。それと、その状況と、何で中途退学するんだろうなあという、その原因の究明なんか、反省する点がありましたらお答えいただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 教育長。
〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 公立高校における中途退学者数につきましては、平成22年度は484名であります。中途退学率は1.9%となっております。
主な理由として、例年、学校生活・学業不適応や進路変更が挙げられます。こうしたことから、それぞれの高等学校で目標を持って学習できるよう、中学校への学校説明会等を充実させるとともに、基礎学力の向上を初め、きめ細かで丁寧な指導を行ってきた結果、中途退学率は、5年前から比べますと、5年前の2.5%から減少傾向にございます。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 パーセントは非常に低いとは思うんですけど、中学校卒業生約1万人ぐらい、そのうちで98.5といいますから、9850人ぐらい入学したときで480名ということだったですか。少なくとも、公立の学校で299名、300名ぐらい、定時制高校も入れるからそうなるんですけど。
先ほども申し上げましたように、この原因をとやかく言うつもりは、別の機会にぜひ話ししたいと思うんですが、高校の無償化もあります。
ひどい話ですけど、高校生あるいは大学生でも、小学校の高学年の算数がわからないというような大学生もいるように聞きます。だから、ところてん式みたいに手をつないで小学校卒業し、中学校、義務教育として卒業する。
この前、テレビでやってましたけど、外国では留年するのは当たり前だというような状況でありますが、日本人の日本人的な感覚としてはなじまないから今までそうなったんだろうと思うんですけど、その意味では橋下市長の言い分も多少わからんこともないなあと思うんですが、そういう関係にあって、今、皆さん方も多分心痛めてることではないかなと思うんですけど、高校──特に公立ということにしときます。公立高校における生徒の、格好で人を評価するというのはいかがなもんかとは思うもんの、余りにも目に余るような服装なり、あるいは言葉が適当かどうかわかりませんけど、パンツの見えるようなスカートはいたりという子が目に余るほどあると思うんです。
この辺の現状をどう学校としてとらまえて──それには僕もちょっと資料としてあるんですけど、校則なり高校入学するときの誓約書があるんです。校則はちゃんと守りますよということがあるんですけど、それがちゃんと厳正にされてるかどうかなあと、その辺の取り組みについての教育委員会の見解をお尋ねしたいと思います。
○議長(新島 雄君) 教育長。
〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 御指摘の点につきましては、私も大変心を痛めているところでございます。
心は形をあらわす、形は心をあらわすと言いますけども、生徒の身だしなみや言動等に問題があるときは各学校の校則に照らして、ふだんの学校生活において、きちんとした服装やあいさつ、行動がとれるよう、温かく、かつ厳しく指導を行うとともに、修学旅行の事前指導等、さまざまな機会を通しまして、人としてのあり方を考えさせて、規範意識を身につける指導を行っているところでございます。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 現場の先生方、生徒指導の先生方にお伺いしても、本当に御苦労してるのが現状であります。モンスターペアレントと言われるような方もいらっしゃいますし、子供の表現の自由を認めよというような、わかったようなわからないようなことを言って怒ってくる父兄もいてるということで、本当に現場の教師としては大変御苦労だなあというふうにも思っております。
ただ、私は、いつも申し上げているように、これもまた本当に教育の話、いっぱいしたいんですけど、何か区別と差別がごっちゃまぜになってるような教育現状ではないかなあ、そう思うんです。
よくできる子は、やっぱりよくできる子ということで区別をして考えないといけないし、それからちょっとどうかなと思う人は、ちょっと時間をかけてでも丁寧に勉強してもらうというように、それをするのが差別ではなくて区別だろうと思うんですけど、今の教育現場、義務教育も含め高校もこういう状況を見る中で、やっぱり社会が悪い、我々大人が悪いんでないかなと。子供やあるいは学校の先生方だけに何してんなあというようなことで怒るのは筋違いで、やっぱりこれを看過してきた社会が悪いんではないかなと、そういうふうに、本当に自分自身も反省しなければいけないなと思ってます。
実は、去年の12月の14日からですか、2週間、ライオンズクラブ、私もお世話になってるもんですから、交換留学生として、マレーシアの16歳のミッシェル・ウィー──プロゴルファーにあるミッシェル・ウィーと同じ名前なんですが──ミッシェル・ウィーという子が私の家へホームステイに参りました。それで、あっちこっち行きたいと言うもんですから、高野山も連れていったし、金閣寺も見たいなということで連れていったんですが、16歳ですからハイスクールだからということで、私も2校ほどに急にお願いして、学校体験入学させていただけませんかと言うたら、校長先生が快く受けていただきました。
それから、結果的には1日、合計3日なんですが、3日過ごした同級生なんかに大変好意的に振る舞っていただいてありがたかったと、こういうふうに本人も言ってるんですが、どこの学校とは言いません、一般論の話ですが、帰ってくるなり私に、「和歌山のお父さん、今の日本の高校生はどうなってるんですか。見ること、聞くこと、すること、オー・マイ・ゴッド」と、こう言うわけです。
「本当にこれで学生としての規範意識があるんかな、真剣さがあるんかな。私には、残念ながら、その辺は全然感じられませんでした。私のマレーシアでは、本当に真剣に一生懸命勉強してます。そして、将来は、やっぱり生活の安定する、しかも希望のある一流企業へ就職したいんだという思いで一生懸命勉強してるんですけれども、日本の学生は余りにも甘やかされ過ぎて、どうなってるんですか」と言われたんで、私も返事に困りました。
それが、でも、やがては、今、大手企業の大学の就職でも、外国から日本へ来てる留学生を相手に就職の門戸を広げようというような一流企業があると。昔、「大学は出たけれど」というような言葉がはやりましたが、本当に真剣に考えないと日本の将来はないでと、こういうふうに思いたいんです。
重ねて言いますが、このことについて議論するつもりはちょっとありません。そういう現状を大変憂いてる1人であります。
そこで、きょうの本来の質問の趣旨であります高等専修学校について、幾つか御質問したいと思います。
私は、この勉強して質問する資料をもらうまで、専修学校もてっきり、公立学校や私立学校と同じように、同じジャンル、同じレベルで、国なり、あるいは県の教育委員会が管轄してくれるもんだと思ってた。
ところが、本当に自分の不勉強さを恥じておりますが、これはそうじゃない。和歌山県といえば、総務部、総務学事課の窓口だと、こういうふうになっているんです。びっくりしました。本当に申しわけなかったけど、不勉強を恥じます。
それで、先ほどは公立のことを聞きました。今度は、その専修学校あるいは私立学校のことについて、和歌山県としてどんだけの補助なりをしてるんかということを、まず総務部長に御質問いたします。
○議長(新島 雄君) 総務部長米澤朋通君。
〔米澤朋通君、登壇〕
○総務部長(米澤朋通君) 私立学校の運営に対する県からの補助金につきましては、国庫補助及び地方交付税の基準財政需要額への算入があることを踏まえ、平成24年度当初予算案においては、生徒1人当たり32万8030円で積算した額を計上しております。
私立高等専修学校につきましては、国庫補助等の対象となっていない中、県単独での補助として、生徒1人当たり3万円で積算した額を計上しております。
また、この学校の運営に対する補助に加えまして、私立高等学校及び高等専修学校に在籍する生徒に対しまして、高等学校等就学支援金として、保護者の所得の状況に応じ、生徒1人当たり年額11万8800円から23万7600円を交付しておるところでございます。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 そうなんですね。その対比するのは、余りにもお恥ずかしいというか失礼な話なんですけど、高等学校とこの高等専修学校では比較になりません。約10分の1、あるいは公立のいろんな──先ほど説明聞いたら、101万から比べますと33分の1か35分の1かということにしかなりません。
中学校の卒業式までは、みんな平等に扱われるわけです。小学校、中学校、義務教育よく頑張ったということで、先ほど申し上げましたように、手つないで卒業するという面もあるかもしれませんが、卒業式が済んでガラッと表へ一歩出ましたら、全く残酷な現実があります。
和歌山県には、2つの専修学校がありますね。1つは、橋本にあるきのくに国際高等専修学校、それから御存じのようにというんですか、紀美野町にあるりら創造芸術高等専修学校というのがあります。私は、今回、りらをモデルにして話を進めていきたいと思うんです。
りらは、平成19年4月、和歌山県の認可を受けて開校いたしました。以来5年が経過する中で、ことしの春も6人が卒業されて、新入生としては、15名程度入学希望されてる方がある。公立校を中退して途中入学する生徒も過去にはいたということで、多少変動あると思うんですけど、44~45名程度の専修学校になろうかなあと思うんです。
ことしの6人の卒業生の中には、4人は専門のさらに知識を深めたいということで、4人が大学へ進学されるというふうに聞いてますし、もう1人は劇団へ入団される。それで、もう1人は、ダンスの指導者を目指して頑張るんだということで、お互いそれぞれ将来を見込んだ行動を起こすということで、巣立たれることなんです。
生徒が、みずからの希望や能力によって自由に学校選択ができるという機会をつくるというのは、和歌山県にとっても、教育環境の充実面から見ても、大変意義のあることだと思っております。
私も、時折、りらの学校を訪れて、りらの学生やらに接することがあります。自分で選んだ道だからといって、とにかく生徒は生き生きとして目を輝かせております。礼儀も正しいし、立ち振る舞いにも本当に好感を覚えております。
入学を希望して、体験入学を通じて将来に大きく成長することを夢見る学生も多くいると聞いてる中で、最終的には学校運営のための経費、つまり校納金というんですか、授業料のほかに教材費とか、あるいは冷暖房の空調費とか施設の整備費とか実験実習費とか通学バスの協力金とか、とにかくたくさんの経費がかかり、保護者にも大きな負担が強いられることから、学校はええんだけども、例えば母子家庭なんかの場合、とてもそのお金が納められないということで断念するケースが多いとお伺いしております。
参考までに、私の知る限り、お隣の大阪府では、公立、私立の高等学校と同様に高等専修学校も授業料の無償化を実施して、生徒からの希望や能力によって自由に学校選択ができる機会を保障するということに積極的に取り組んでいらっしゃいます。これも、大阪府の橋下知事時代にそういうことをしたという資料がありますが。
そのほかには、兵庫県あるいは奈良県、京都府もそれぞれ、多少金額的には差はあるものの、それなりに対応していただいているのが実情だろうと、そういうことになっております。
そこで、もう一度、総務部長に、本県の高等専修学校に対しての現状をどう認識されているのか、改めてお伺いいたします。
○議長(新島 雄君) 総務部長。
〔米澤朋通君、登壇〕
○総務部長(米澤朋通君) 高等専修学校は、学習指導要領に縛られず、柔軟かつ特色ある教育を実践することができることから、中学校卒業生にとって、特定の分野において専門性の高い学習機会を得るための選択肢になっているものと認識しております。このため、高等専修学校に対し、県単独で補助を行っているところでございます。
補助内容につきましては、全国の状況と比べて低い水準ではございませんが、議員御質問にありましたように、近畿各府県の状況も勘案いたしまして、平成23年度に、今年度でございますが、定額制から生徒1人当たり補助単価を基礎にする算定方式に拡充をしたところでございます。
この制度拡充によりまして、りら創造芸術高等専修学校に対する運営補助は、前年度比倍増の105万円となっているところでございます。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 部長としては、一定の評価をして、それなりのできる範囲のことは一生懸命やってくれてる、これはよくわかります。後で、最終的に知事の御判断を仰ぎたいと思うんですが。
りらは、開校以来、しっかりした教育理念のもとに、主体的でありながら協調性を、また生きる底力を備えた若者を育成すると、こういうふうにあります。
現実にそのとおり実践している姿に、私も及ばずながら共感して、お手伝いできるところはと思っているところなんですが、2010年ですか、仁坂知事もりらを訪問された。そして、生きる底力をつけるための教育について、生徒や職員と熱く語られたと報道にもありました。
2011年に、田辺市で、私たち議員も出席さしていただきましたが、天皇皇后両陛下をお迎えしての全国植樹祭でのきのくに創世神話のあのオープニング、すばらしいショーでした。どこの劇団なり、劇団四季にもお願いしてるんかなあと思うぐらい神聖なものであったし、すばらしいショーでしたが、後で聞いたんですけれども、全国植樹祭和歌山県実行委員会から出演を依頼されたりらの学生でありました。
それから、2011年の10月、動物愛護週間に和歌山県動物愛護センターの御依頼があり、「シロとミミと家族」ということで、動物を保護しようという、そういう創作演劇を依頼され、各所でまた公演されました。
その後も申し上げますが、それからこの2月、海草振興局健康福祉部からの依頼で、自殺予防普及啓発事業として、演劇「NIGELLA」というのを創作して公演されました。
これはどういうことかということは、とにかく見ていただいた人でないとわからないかもしれませんけど、感銘を受ける、人間としてどうあるべきか、どう生きるべきかというような創作された演劇を発表されました。企画からプランニング、演出、すべてを生徒自身が、お互いにかんかんがくがくの意見を交わしながら、徹夜しながら、話し合いながらこの劇を仕上げたということで、本当に心打たれる公演でありました。
また、その当日、これは2月のいつやったですか、西下教育長にも御尽力いただいて、生きる底力シリーズのシンポジウムというのを開催して、もちろん西下和歌山県教育長、大江和歌山市の教育長、西原海南市の教育長、松下紀の川市教育長、橋戸紀美野町教育長、それから山上りら校長先生が参加されて、和歌山大学の出口先生のコーディネートのもとに有意義な意見交換をされました。私も、観衆の1人として参加させていただきまして、大変有意義なシンポジウムであったと感心している1人であります。
またそれと、りらにはもう1つの側面があります。
それは、学校のある紀美野町真国地区は、非常に高齢化が著しく進んで、人口流出があって、俗に言う「限界集落」という言葉、適当かどうかわかりませんけど、大変そういうことで悩んでいる地域であります。したがって、小学校も廃校となりました。その真国小学校を紀美野町から無償でお借りして、今、使っていらっしゃるんですが、その真国地区の村おこしにも大いに貢献していますし、和歌山県として取り組んでいる平成23年度からの過疎集落再生活性化支援にもその事業が合致して、芸術を核とした住民主役の集落づくりにも積極的に参画していらっしゃって、効果も上げてくれております。
知事も、これ、和歌山単独の事業だということで、改めて気配りには感心するんですけれども、本当に大金を投入しての地域おこしのために頑張っていただいてます。
先ほど、ちょっと前後しますが、りらの卒業生の中に、私、残念ながらNHKの朝ドラの「カーネーション」というのを見てないんですけど、2月27日の放送で──コシノジュンコさんというのは次女役かな──次女役のコシノジュンコさんのお婿さんになった相手、ドラマでは大輔君というらしいんですけど、この役者が和歌山の森下竣平君、和歌山の子。去年、りらを卒業しました。その子がNHKの、ちょこっとしか今回は出てこなかったんですけど、主役であるジュンコさんの相手役の旦那の役で出たいうことですし、それと卒業した生徒が芸大系の4年生大学にどんどん進んでるという、そういう実績もあります。
りらばっかりではいけませんけども、りらの話をしたら切りがありません。そんだけ一生懸命、いろんなことに取り組んでくれてます。ある意味では、普通高校ではできないようなことをするから専修学校のいわれかもしれませんけども。
そういうことで、とにかく小さな学校でありますが、大きな挑戦をしているこのりらに、その今言う私立学校の10分の1にもならん、公立の、押し出されて仕方なしと言ったら語弊がありますけど、高校へ行って、それで途中退学するような子供さんにでも100万余りを応援しているにもかかわらず、りらに年間たった3万円。これで教育を標榜するというんか、和歌山県の仁坂知事のその熱い思いというのがどこにあるんかなあという思い、私、勝手にしてるんですけど、今までの受け答えを聞かれた中で、知事は、もちろん和歌山県の行政の最高責任者であるのは当然なんですけど、それと同時に政治家であるわけなんです。政治家仁坂として、私の申し上げたこの熱い思いの一部でも感じてもらって、どうこれから取り組んでくれるかなあと、そういうふうな期待を込めて知事に質問いたします。よろしくお願いします。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) りら創造芸術高等専修学校は、生徒の自主性を育て、地域と一体となった活動を展開しておりまして、その活動ぶりはすばらしく、今後とも学校が教育の充実発展に尽力されることを期待します。
子供たちが生きる力を備え、自立した社会人に育つことが重要で、学校の種別を問わず、各学校がそれぞれの役割を担い、特色ある教育を実践することが必要であります。
高等専修学校は、りらに限らず、生徒が本当に学びたいことを探求し、多様な学習機会を得るための選択肢となっているということで重視していくべきだというふうに思います。
私も、りらを評価するということについては、議員に劣るところはありません。ただ、制度が制度でございますので、現在では、金銭的な意味では総務部長が御説明したようなことになっておりますが、せめて真心で対応しようと思いまして、議員御指摘のようないろいろな活動もやってまいりました。
ただ、それで十分かどうか、今後よく検討して、真心の心だけじゃいかんということでございましょうから、今後、頑張っていきたいというふうに考えております。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 政治家仁坂氏に期待をして、この問題は急にきょう言ったからあしたからどうということである問題では決してありませんので、実績をもっと冷静に客観的に見てあげていただいて、適正な評価をしてあげていただけたらなと、そう思います。
それから3番目──予定では30分で終わるつもりだったんですけど、ごめんなさい、ちょっとアドリブが多過ぎました。
役務に係る発注方法は、今どうなってるんかなあということで、私も関心を持って、この際に幾つかのことについて質問させていただきます。
簡単に役務いうても、この資料をいただいたら125ほどあるんですね。これにはびっくりしました。
だから、いろんな話を聞くんですけど、一応改めて会計管理者にお伺いするんですけど、この125全部というわけじゃありませんが、一般的にこの業務の発注状況はどうなってるんかなあということについて、まずお伺いしたいと思います。
○議長(新島 雄君) 会計管理者米山重明君。
〔米山重明君、登壇〕
○会計管理者(米山重明君) 役務の業務につきましては、民間でも多く発注されているものがございます。そういうものにつきましては、標準的な市場価格となるように、公表されている希望価格を聴取したり、あるいは複数の事業者から参考見積書を徴したりして予定価格を積算しております。
また、積算基準のあるものにつきましては、必要に応じて、その基準に基づいて積算をいたしております。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 この役務の中には、僕もびっくりしました、本当に不勉強ですが。賞状を書いてもらう、あるいはそこへポットで置く植木、あるいは速記、それからテープ起こし、それからつぼ生け──催し物にこうやって生ける──そういうことまで一々、そのたびに発注してると思うんで大変だろうと思うんです。
それで、一応課で起案して、予定価格を立てて発注する、こういうことになってるんだと思うんですけど、反面、応札する業者にとって、大変この厳しいデフレの経済環境の中で、生活をかけて入札するんですよ。その結果、現状では最低制限価格の設定がありません。ないと思います。
したがいまして、最低の入札額を入れられた業者が落札することになる、これは当然のことなんですけど、この現状をどう考えていらっしゃいますか。お気持ちを聞かせていただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 会計管理者。
〔米山重明君、登壇〕
○会計管理者(米山重明君) 県が入札により契約の相手方とするのは、原則として、予定価格の制限の範囲内で最低の額をもって申し込みをした者とするように地方自治法で定められているところでございます。
しかしながら、その市場において過度な価格競争、あるいは調達する業務について品質の低下が懸念されるような場合につきましては、地方自治法施行令で認められている最低制限価格の設定について考慮する必要があると考えております。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 今、申されたように、地方自治法施行令第167条の10の第2項では、「工事又は製造その他についての請負の契約を締結しようとする場合において、当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、あらかじめ最低制限価格を設け」ることができると、こうなってるんですね。
この問題に対しての御意見をお伺いしたいんですけど、これは、このことについては異論がありませんか、どうですか。
○議長(新島 雄君) 会計管理者。
〔米山重明君、登壇〕
○会計管理者(米山重明君) 最低制限価格を設けることができるという法令の趣旨は、もっともであるというふうに考えております。
入札予定価格の積算基準がある業務につきましては、必要に応じ、森林整備等の業務のように最低制限価格を設定しているものもございますが、他の役務の業務につきましては、今後、他府県の動向等も含め、その必要性について調査してまいります。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 すべての業務を一律に価格設定するのは、大変難しいことだろうかもしれません。
しかし、でも、予算を立てるということは、その業務をなりわいとしている人間がいるわけですね。その人間がかかわるということであるんです。だから、予算を無視すると、無視とは言いませんけど、オープンにするという、余り極端なことをするということは、人としての生活を認めないということと同じになるんじゃないか、その作業する人の人格を認めていないということになるんではないかな、そう思うんです。
予定価格が少ないからということで、ひょっとしたら無神経に、まあ小さい金やからもう適当でええわというふうにもし取り扱われているということになれば、大変なことだと思うんです。
仕事が小さければ小さいなりに、やっぱり対象業者も、失礼な話ですけど、零細業者になり、親方、お母さん、御主人、あるいはその助手に奥さんが行って済むようなことになるから、もうええわということではないんです。
彼らは彼、あるいはそういう業者さんは業者さんによれば、本当にその日その日の晩酌の酒の1本が違ってくる、あるいはおかずの量が違うほど、直接影響するようなことになると思うんです。およそ、この自治法には血が通ってないように思うんです。
ぜひ、この仁坂県政として、私、いつも申し上げますけど、熱い気持ちで、ぬくもりのある対処をしていただきたい。そういうことを強く申し上げておきたいと思うんですが、知事の御所見があれば、お伺いしておきます。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員の方々もよくお聞きと思いますけども、積算価格というのは合理的につくってあるはずでございまして、これが100%でも全然構わないんでございます。そういうことを常に業界の方にも申し上げております。
これを無視してというか、無理に入札というか、受注だけを考えて無理な価格づけをいたしますと、赤字になって倒産をするという可能性もあります。したがって、そういうことはぜひ防いでまいりたいんですけれども、一方で入札をして透明性を確保していくということもやらなきゃいけません。
と同時に、いろんな工夫ができるわけですが、最低価格というのが合理的に、客観的につくれるかどうかという問題もあります。つくれるものは、ぜひつくりたいなあと思っておるんですが、今のところ、全部についてつくれるという見通しが余り立ってないというのが現状でございます。
いずれにしても、無理な受注などはやめていただいて、堂々と自分の積算で入札してほしいと、そんなふうに切に要望しております。
○議長(新島 雄君) 山田正彦君。
〔山田正彦君、登壇〕
○山田正彦君 2月議会の最終一般質問、終わります。
熱い思いの一部でもわかっていただいて、ともに頑張って、県勢発展のために頑張りたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
○議長(新島 雄君) 以上で、山田正彦君の質問が終了いたしました。
お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
お諮りいたします。お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第1号から議案第16号までは予算特別委員会に、また議案第85号は行政改革・基本計画等に関する特別委員会に付託いたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
次に、お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第33号から議案第58号まで、議案第60号から議案第69号まで及び議案第71号から議案第84号までは所管の常任委員会に付託いたします。
次に日程第4、請願の付託について申し上げます。
今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
お諮りいたします。3月9日及び12日から14日までは委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 御異議なしと認めます。よって、3月9日及び12日から14日までは休会とすることに決定いたしました。
次会は、3月15日定刻より会議を開きます。
本日は、これをもって散会いたします。
午後1時56分散会