平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)
平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録
第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)
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午前10時0分開議
○議長(新島 雄君) これより本日の会議を開きます。
日程第1、議案第1号から議案第16号まで、議案第33号から議案第58号まで、議案第60号から議案第69号まで及び議案第71号から議案第85号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
9番濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 質問に先立ちまして、発生の確率が高まる東南海・南海地震、大津波に備えて、地域の住民が自主的に避難場所を整備しようという活動を1つ紹介させていただきたいと思います。
私の住む新宮市三輪崎という地区は、海岸沿いに位置し、大津波が発生した場合、昔から「八幡さんに逃げろ」と合い言葉のように言われています。その八幡神社は、海抜約30メートルの境内が緊急避難先レベル3の避難先施設として指定されています。しかしながら、現実的に避難対象となっている区民が全員その境内に収容できるのか、境内へ上がる階段が4メートルほどの幅しかなく、しかもやや急なため、避難をしてきた人たちが殺到し、渋滞するおそれもあります。災害弱者であります高齢者や足腰に支障のある方や幼い子供が急いで上ることは大変困難ではないか、また備蓄なども置いてありません。
そのような課題を解消しようと、当地区では、三輪崎区、八幡神社、市、業者の代表などで構成する八幡神社避難場所整備実行委員会を昨年12月に立ち上げました。最初の活動として、避難場所を拡張するため、同神社本殿の背後にある荒れ地となっていた場所を整備するため、委員会メンバーや漁業協同組合ら区民約70名が参加し、樹木伐採、草刈りなどのボランティア作業を行いました。地元である市長、副市長、私も参加いたしました。区民の皆さんと意見を交わしながら、作業に汗を流させていただきました。今後は、重機での整地、新たな避難路、誘導灯や備蓄倉庫なども設置する計画です。
この活動の意義は、行政だけに頼るのではなく、区民の命を区民の力で守ろうという防災意識が高まること、また行政側としても、地域の自主的な取り組みにより、既に住民に理解が得られた状況の中、避難地整備事業を円滑に進めるための協力も得られます。早期整備、地域による維持管理などのさらなる協力が見込める上に、本県の平成24年度の新しい支援施策、市町村が実施する減災、避難、救助に必要な各種対策を総合的に支援する「まけるな!!和歌山パワーアップ」補助事業を活用することにより、避難対策推進のモデル的な取り組みとしてもアピールできるのではないかと考えます。
このことに限らず、県や市町村の行政に地域住民が新しい事業を要望するとき、早く取り組みを開始してもらうためには、住民や自治会などの汗をかくという積極的な活動や協力体制を整えておくことが、実現への近道ではないかと感じました。
災害時には生命線となる高速道路の早期建設、熊野川河口大橋建設などの国への要望を長年にわたり県と一体となって続けておりますが、和歌山県という地方の、そのまた地方と言っても過言ではない紀南地域、とりわけ新宮・東牟婁地域においては、大災害の足音が迫りくる中、つながってこそ効果を発揮する高速道路であるはずが、近畿自動車道紀勢線は事業化にさえなっていない区間が残っています。田辺からすさみまでは平成27年までに延伸されますが、なかなか追い越しができない片側1車線では、確実な移動時間のめどが立てにくく、観光客の呼び込みや企業誘致において敬遠される足かせにもなっています。
2009年、745億円の事業費が見込まれていた近畿自動車道紀勢線御坊─田辺間の4車線化も、民主党政権によって取り消されてしまいました。また、地元が待ち望んでいた開通間近の那智勝浦新宮道路を民主党国会議員が視察に訪れ、「豪華過ぎる。道路のルイ・ヴィトン、エルメスだ」などと地方をばかにした事実など、怒りはいまだにおさまりません。
そういった状況を打破し、地方にとって必要不可欠な事業を実現させるためには、我々議員が地域を代表して強く国に働きかけることは当然の責務ですが、いわゆる住民のパワー、国が動かざるを得なくなるほどの地域の盛り上がりや事業実現に向けてのおぜん立て、先行的に準備を始めておく取り組みが重要ではないかと考える次第です。
それでは、前置きが長くなりましたが、通告に従い、一般質問をさせていただきます。
大きな項目1つ目、台風12号被害の復旧・復興についてであります。
地震や風水害により住家を失い、あるいは大規模な補修を必要とする被災者を救済する国の制度として、被災者生活再建支援制度があります。この制度では、家屋の被害状況に応じて支給額を決定したり義援金の分配額を決めるための基準として、まず被害認定の査定を行います。住家の損害割合が50%以上の場合を全壊、40%以上50%未満の場合を大規模半壊、20%以上40%未満の場合を半壊、20%未満の場合を床上浸水と判定することになっています。
水害により被災した住家に対する被害調査は、研修を受けた市や県の職員と民間の建築士で2~3人のグループを組み、外観の損傷状況の目視による把握、住家の傾斜の計測、浸水深の確認及び住家の主要な構成要素すなわち柱や基礎や壁などの部位ごとの損傷割合を判定し、総合的な判定を行うものです。
半壊や床上は、被災者生活再建支援制度の原則対象とはなりませんが、見舞金や義援金などは給付されます。その際、半壊と判定された被災者と床上浸水と判定された被災者との間には、金額に格差が生じます。事細かく査定の基準は設定されておりますが、人が判定を行うために、まれにその判定結果を不服とするケースもあります。
例えば、床上浸水の判定の中には、床から10センチメートルのケースもあれば、床から1メートル以上の高さまで浸水したケースも存在します。1階部分の壁などが水につかると、変色やカビ、板がふやけた状態になり、修繕を要する状況となります。被災者は半壊と判定されるであろうと考えていたが、結果は床上となり、不慮の災害による精神的ダメージに加え、強いられる金銭の負担。せめてもの救いと期待していた支援制度も当てが外れ、頭を抱える被災者の行き場のない心境を何度も耳にしました。
査定の基準は内閣府によって定められており、これまでも何度か改定がなされ、現行に至ります。また、判定の結果が基準をわずかに下回る際どい判定の家屋については、他の調査員も加わり再査定を行い、慎重な協議の上、判定を行ったとのことです。しかしながら、職員全員が認定作業の手順などについて今回初めて説明を受け、しかも直ちに実施しなければならないという必要に迫られたため、被災者からの聞き取り対応の際に、職員のやや自信なさげな雰囲気を察し、正確に判定してもらえているのかと不安を感じたという被災者からの話も聞きました。
市の担当職員の方にお尋ねしたところ、日ごろから有事に備えて、災害認定の職員研修や勉強会を実施する必要を認識したとのことでした。
そこで、災害認定研修の必要性について、知事の所見をお聞かせください。
○議長(新島 雄君) ただいまの濱口太史君の質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 今回の台風12号災害では、住家の被害認定について、甚大な被害を前になかなか調査ができずにたたずんでいた新宮市等に県の職員が乗り込みまして、民間の建築士の方々の協力もいただいて迅速に調査を行いました。これが、すべての対策、例えば義援金の早期配分など、被災者の生活再建に大きく寄与したものと考えております。
しかしながら、何分にも急場をしのぐ対応であったことは否めません。住家の被害認定を迅速かつ的確に行うためには、認定調査についての十分な知識と技術を持つ人材をあらかじめ養成しておくことが必要だと感じました。そこで、県では、今回の経験を踏まえ、来るべき東海・東南海・南海地震に備え、平成24年度の当初予算案におきまして、市町村や県の職員、民間の建築士等に研修を行い、県独自の住家被害認定士を養成するための経費を計上したところであります。
○議長(新島 雄君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいま御答弁をいただきました。
今のお話の中にもありましたように、新宮市の代表といたしまして、心から、知事のそういった御指示の中、県の職員の方が駆けつけていただいたこと、新宮市は心強く、この場をおかりしまして感謝を申し上げたいと思いますし、今回は被災をした地域だけでしたが、来る──来ないにこしたことはありませんが、大きな災害があったときには、ほかの地域の方も同じようなことになるかと思います。県下を挙げてこういった研修に取り組んでいただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。
続きまして、2つ目の質問に移らしていただきます。
災害復旧の現状についてお聞きします。
復旧・復興アクションプログラムの中期計画の中に、道路や河川の本格的復旧を24年度末までに全体の95%を完了するという目標が設定されています。現地調査を踏まえ、工事の設計も済み、新宮建設部管内においての件数は、道路・橋梁が100カ所31億200万円、河川・砂防・海岸が97カ所62億1000万円、合わせて197カ所93億1200万円に上り、緊急を要する工事の約8割が23年度内に発注の予定となっています。新宮市域で見ますと、道路・橋梁が47カ所14億7900万円、河川・砂防・海岸が39カ所7億3500万円、合わせて86カ所22億1400万円となっています。
既に土木建設業者の入札が始まっているところですが、24年度中に全体の95%の箇所の工事を完了させるためには、土木建設業者に協力していただけることが大前提となるわけですが、工事箇所の数と管内建設業者の数を照らし合わせてみると、かなり人出が足りない状況も心配されます。
そこで、復旧工事について、現在の進捗状況や今後の見通しについて、知事にお尋ねいたします。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 公共土木施設の早期本格復旧は、被災地域の皆様の安全・安心や日常生活、産業振興等に欠かせないことから、和歌山県復旧・復興アクションプログラムの中で、平成24年度に95%の箇所を完成させるという目標を設定しております。改良復旧など大がかりな──ということは少し時間のかかる工事も含めまして、補助金の査定も全部終了いたしました。
台風12号による公共土木施設の災害復旧箇所は、県工事で1181件ありますけれども、この災害査定を踏まえ、順次工事発注を進めているところでございます。契約済みの箇所は3月1日現在で全体の約36%でございまして、どんどん発注をしていきたいと考えております。
被害の大きかった地域では工事量も大きくなるために、入札手続の簡素化や、あるいは近接工事を一括して発注するなど、工夫をしながら進めているところでありまして、引き続き、一日も早い本格復旧に向け、全力で取り組んでまいる所存でございます。
○議長(新島 雄君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、3つ目の質問に移らせていただきます。
大水害から早くも半年が経過し、低気圧や台風に伴う豪雨などにより河川の流量が増大する出水期まで、残り半年を切りました。しかしながら、台風12号豪雨がもたらした洪水によって至るところに堆積した土砂や砂利は、いまだにしゅんせつが行われていません。特に、北山川との合流点や敷屋、日足地区等は、目視によるところではありますが、堆積量も多く、台風6号、そして12号の際には記録的な水位の上昇により甚大な被害のあった地域でありますので、早急な対応を求めてやみません。
12月議会においても、早急な熊野川の被災状況の調査、河川整備計画の見直しや河床掘削計画の検討をお願いいたしました。それに対し、県土整備部長から、台風12号等により堆積し治水上支障となっている土砂については、応急対策として早急に撤去を進めてまいりますとの御答弁をいただき、流域住民とともに心強く感じたところであります。
進捗状況について河川課に尋ねましたところ、現在、大量の堆積土砂や砂利の撤去作業を効率よく、かつ迅速に行うため、方法をいまだ検討中とのことですが、雨が降るたびに2次災害の恐怖で不安にかられる流域住民のために、計画が立ち次第、住民への公表とともに一日も早い工事の着工を念願いたします。引き続きの強い要望とさせていただきます。
ちなみに、熊野川河口より上流に向かって5キロメートルの範囲は国の直轄となっており、国が200億円の事業費をかけて、5年間で約460万立米の堆積砂利等を撤去する河床掘削工事や、沿岸部の堤防の改修工事を行っていただくこととなっております。
また、もう1つの重要な課題とされています上流ダムの操作規定の見直しや対策につきましても、12月議会においてお尋ねをし、知事より、昨年10月31日に開催された台風第12号による紀伊半島南部の災害の復旧・復興に関する国・三県合同対策会議において、国土交通副大臣に、利水ダムの洪水時における活用、ダム間の連携や予備放流などを奈良県、三重県、和歌山県から合同提案を行ったこと、それから、電源開発、国、3県で構成されたダム操作に関する技術検討会の中で、被災県であり管理者でもある和歌山県の立場として、改善策がきちんと盛り込まれていくように今後も尽力をしていくとの御答弁がありました。このことにつきましても、さらに厳しい態度で訴えをしていただきたいと、強く継続の要望といたします。
参考までに、先日、新宮市議会の行政調査に同行し、鹿児島県さつま町にある鶴田ダムを視察してまいりました。このダムは、治水と利水機能をあわせ持つ多目的ダムです。平成18年7月の記録的な豪雨により甚大な被害を受けた川内川流域の洪水被害軽減を目的として、最低水位を約10メートル下げ、夏場の洪水調整容量を約1.3倍に増量させるために、下部に新たな放流管を増設するという再開発事業に平成19年度より着手しています。国直轄事業として、ダムの構造そのものを約460億円かけて改造し、治水機能を大きく高めようとしています。また、ダム操作規則の見直しもなされました。
熊野川上流のダム群はすべて利水ダムであり、根本的に鶴田ダムとは目的が違いますが、とうとい人命が失われている現状をかんがみて、国や企業に対し、住民にとって脅威ともなるこれらのダムに治水機能を持たせ、下流域の安全を確保するための尽力を切に願うものであります。
さて、川の流量に影響を与えるダムの放流についてお尋ねをいたします。
電話サービスを利用すれば、放流のタイミングだけでなく放流予定量も知らせることができるそうですが、一般的には、下流域の住民や行楽客へ放流を知らせる方法としては、数カ所設けられたパトライトやサイレンでタイミングを知らせるだけで、下流域の水位がどれぐらい上昇するかまでを知らせることはできません。
平成24年度の当初予算の3つの大きな柱である安全の政策、その中の台風や集中豪雨等の風水害対策の強化として風水害に強い県土づくり、その項目の中に洪水情報の充実を新たな事業として掲げ、大規模洪水などに対して早目に安全な場所へと避難を促すため、洪水はんらんレベルに応じた浸水想定区域図の作成や、熊野川の県の管理区間の洪水予報河川の指定を拡充していくとのことです。
その事業の概略について、県土整備部長に説明を求めます。
○議長(新島 雄君) 県土整備部長森 勝彦君。
〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) 現在、県では、熊野川を水位周知河川として、日足地区と本宮地区において、新宮市、田辺市が避難勧告等の発令を判断する目安となる水位等に達した各段階で水位情報を両市に伝達するとともに、報道機関の協力を得て住民の方々へ周知しております。あわせて、伊勢湾台風時と同程度の大雨による洪水を対象に浸水想定区域図を作成し、公表しております。
台風12号による被害を踏まえ、平成24年度の新政策として、議員御指摘の洪水情報の充実に取り組んでいくこととしております。まず熊野川において、流域住民の方々により確実に安全な場所に避難していただくために、既存の浸水想定区域図に加え、既往最大規模の洪水である台風12号相当の浸水区域と、それよりさらに大きな洪水規模の浸水区域を示した、洪水はんらんレベルに応じた浸水想定区域図を作成する予定としております。
また、県として、熊野川の日足地区、本宮地区について、今後の降雨や水位の予測を気象台と共同して発表する洪水予報河川の指定に向けて取り組むこととしております。
○議長(新島 雄君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいま御答弁をいただきました。
もう1つ改めてお聞きしたいのですが、洪水予報はどのように予測を立てるのでしょうか。また、どのような情報がどのような経路で流域住民に伝達されるのでしょうか。県土整備部長に説明をお願いいたします。
○議長(新島 雄君) 県土整備部長。
〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) 洪水予報は、気象台の流域の雨量予測をもとに、県で日足地区と本宮地区の水位予測を行い、洪水予報として両者で共同発表するものです。
来年度、県では水位予測のための流出モデルを作成しますが、このとき、上流の水位観測値があれば予測精度の向上が図れることから、熊野川では水位計を増設することとしております。発表した洪水予報は、県及び気象庁のホームページでの公表や報道機関の協力も得て住民の方々に周知するとともに、新宮市、田辺市に伝達することになります。
○議長(新島 雄君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 それでは、続きまして、大きな項目2つ目の質問に入らせていただきます。
ジオパークの取り組みに対する所見についてであります。
皆様、お手元のカラーの資料を見ながらお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
先般、本県では、知事の発案でジオパークの研究を始めたと耳にしました。ジオパークとは余り聞きなれない言葉でしたので調べてみましたところ、ジオとは大地や地球を意味し、地球活動によって形成されたさまざまな自然遺産が地域に存在している場所で、地層、地形、火山などの成り立ちを探求し、また、その地域で暮らしてきた先人がつくり上げてきた文化も含め、地域の歴史的ストーリーを広く深く知ってもらおうという自然豊かな公園のことです。また、それらの資源をまちづくりや地域の活性化に活用し、あるいは情報発信の機能を高めることで地域資源の価値を高める努力、そのような地域の人たちが取り組む活動そのものもあわせて、ユネスコ環境・地球科学部門の支援により2004年に設立された世界ジオパークネットワーク・GGNが評価し、認定するものです。
現在、世界ジオパークネットワークには、ヨーロッパと中国を中心として27カ国86カ所のジオパークが加盟しています。また国内では、日本ジオパークネットワーク・JGNという組織があります。
昨年9月、高知県室戸が世界ジオパークに認定されたとの報道がありました。ノルウェーで開かれた国際会議からの知らせを受け、室戸市役所に集まった多くの市民が喜びを爆発させていました。世界ジオパークは、国内では室戸が5地域目で、洞爺湖有珠山、糸魚川、山陰海岸、島原半島が認定されています。国内版の日本ジオパークは15地域あります。ちなみに、現在、日本ジオパーク認定申請を目指して活動している地域というのは11地域もありますが、近畿圏内にはまだ1カ所もありません。
世界遺産との違いはといいますと、双方、ユネスコの支援のもとでの活動でありますが、主に保護を目的とする世界遺産に対し、ジオパークは、学術的に貴重で重要な自然遺産を保護しつつ、それを教育や科学の普及などに活用し、また、新たな観光資源として地域の振興に生かすことを目的としています。したがって、一般の人が近づけない、あるいは保護のためには近づくべきでないような場所は、ジオパークにはならないそうです。
さて、「地域づくり」という雑誌の2011年10月号に「ジオパークと地域の活性化」というテーマの特集があり、全国にあるジオパーク関係者による手記が掲載されておりました。ジオパークへの取り組みが地域にどのようなメリットをもたらすのかを探るため読んでみますと、各地共通の感想や思いが幾つも語られていました。その中から印象に残った内容を御紹介します。
まず1つ目、地域全体を活用するため多くの住民の主体的な参画が必要とされ、まちづくりそのものである。住民の帰属意識が高まった。2つ目、地元の人たちが訪ねてきた人たちに伝えるとき、ジオパークの特徴、テーマ、ストーリーを語ることが必要である。3つ目、学術情報の整備と、それを生かした教育活動もジオパークの重要な活動であり、子供たちがふるさとの特色、歴史風土を学ぶことで、地域への愛着や誇りの醸成も期待される。4つ目、官民協働の観点から協議会を設立し、行政、教育、観光、研究、環境、経済などに関係する団体で構成している。また、広域での市町村連携が図れる。5つ目、認定そのものが目標ではない。ジオパークのその仕組みは未来にわたって持続可能でなければならず、地域振興が継続するために事業の推進を続けていくことが重要である。6つ目、地形や地層の成り立ちや歴史的な自然活動を知ることにより、地域に合った防災対策や防災学習、防災意識の向上に活用できるなど、挙げれば切りがないほど地域振興や活性化、防災へのメリットを期待させる内容がつづられています。
特に興味深いところでは、洞爺湖有珠山ジオパークの話で、目指すようになったきっかけは、有珠山噴火による長期間の立入規制や風評被害により激減した観光客や修学旅行生を呼び戻すためだったそうです。災害を1つの契機として、火山の恵みや危険性を学び、次世代を担う子供たちにも防災教育を続け、火山との共生と減災に向けた人づくりにも取り組むことができたとのことです。
では、本県に当てはめてみますと、特に紀南地域の地質遺産の多さには驚きます。例えば、火山活動の名残である那智の滝は日本一の落差を誇り、一枚岩、虫食い岩等は古座川弧状岩脈として日本地質百選にも選ばれています。田辺市には、厚い砂岩層が幾重にもそびえ、何匹ものカエルが空を仰いでいるように見えるひき岩群があり、すさみ町天鳥の海岸には、天鳥の褶曲と名づけられた見事な褶曲をした砂岩泥岩の交互層があります。また串本町には、あたかも大島に向かって橋のくいを並べたような地形の橋杭岩、新宮市には、先日2月6日の──あいにく雨となりましたが──お燈まつりで知られる神倉神社の御神体であるゴトビキ岩やジェット船が案内してくれる瀞峡などがあり、地質資源の宝庫であります。
一方、地震、津波、土石流等の地質に起因した自然災害への取り組みが非常に重要な地域であり、教育活動を含めた防災活動は、地域の持続可能な発展に欠かせません。
地域の活性化を図るためには、まず地域に大きな目標や構想が必要です。しかも、その目標によって地域の人たちがそれぞれの夢や将来を描けるものでなくてはなりません。そして、いろいろな人たちやさまざまな分野、業界が共有できるプランであることが重要だと考えます。多くの賛同が得られ、目標を達成するために時間を割き汗をかく覚悟の上で役割を担おうという協力的な人、やる気ある人が1人でも、積極的な団体が1つでもふえることが、地域の活性化の第一歩だと考えます。
その観点からしますと、本県の近畿初のジオパークを目指すための取り組みは、今後の地域振興、活性化において大きな可能性を秘めていると考えます。ジオパークの取り組みに対する知事の所見をお聞かせください。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 紀南地方には、約1500万年前、ちょうど日本海ができたころだそうですが、熊野カルデラができたと言われております。しかし、その後、山が削られてしまいまして、今はその姿はないんですが、一枚岩等の弧状岩脈は、そのカルデラの底で火山活動があった証拠だと言われております。また、その他多くの景勝地は、地球規模の大地の動きによる遺産でございます。
ジオパークは、すぐれた地質や地形を中心とした大地の遺産、その保護や教育を前提とした観光システムでありまして、そこに地域の人の活動が盛り込まれなければいけないということになっております。ジオツーリズムは、現地にガイドを置き、地質、地形の説明に加え、人と大地にかかわるヒストリーやストーリーを説明するものでありまして、新たな観光資源の開発であり、地域の持続的な発展をこれで目指そうというものでございます。
和歌山には、地質的にもいいものはいっぱいあるわけでございまして、いいものはどうしてもいいんですけども、しかし、ブランドをつけてPRをするということは絶対に得でございますので、どんどんやっていこうということで、ちょっと思いつきというか発意をいたしまして、ジオパークの認定を目指そうということで今、取り組み始めたところでございます。
その中で、必ずしも地質や地形といった地学的な教育にとどまらず、その地域の特産品に新たな付加価値を与えたり、あるいは防災意識を高めるといった可能性があると思います。こういったジオパークの活動は、地元の価値の再発見と言ってもいいかと思います。このため、行政だけじゃなくて地域住民や民間企業、そういうものが一体となって研究と教育、あるいは環境と保全、農林水産業、観光・商工、防災等の各部門が協力し合って連携していくことが重要でございます。
今後、関係市町村で行うジオパークの活動を支援しながら、紀南地方の大地の遺産、歴史、文化を広く世界に発信するため、世界ジオパークを目指して頑張っていきたいと思っております。
○議長(新島 雄君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 前向きな御答弁をいただきました。
ジオパークの認定に対しましての要件等についてお尋ねをいたします。
世界ジオパーク認定を目指すに当たり、ジオパーク認定の要件等について環境生活部長にお尋ねをいたします。
世界ジオパークへの申請枠は、年に2つの地域までと聞いております。現在、日本ジオパークが15地域、その他の地域でもジオパークを目指しているところもある中で、相当厳しい関門が待っていると思われますが、世界ジオパーク認定の要件や、どうすればジオパークになれるかなどをお聞かせください。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長保田栄一君。
〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) ジオパークの認定の要件等につきましては、まず認定を受ける地域の面積が十分大きく、そして世界的に重要と認められる大地の遺産が多くあり、観光など地域経済の発展に役立てられることであります。また、具体的な活動を進めるため、地域住民、民間企業、行政機関が運営に深くかかわっております地域協議会などの組織があること、活動を長期的に持続させるための公的な財政支援が整っていることなども必要であります。
日本ジオパークとして名乗りを上げるためには、日本ジオパークネットワークに加盟申請し、日本ジオパーク委員会の審査を受けなければなりません。審査では地域の活動実績が重視されます。世界ジオパークの認定は、日本ジオパーク委員会の推薦を受け、世界ジオパークネットワークに加盟申請し、審査を受ける必要があります。
以上です。
○議長(新島 雄君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 それでは、もう1つお尋ねしたいと思います。
世界ジオパーク認定までの道のりは長く険しいものになると思われますが、今後どのように取り組むのか、また今後のスケジュールはどのようになるのかを環境生活部長にお伺いいたします。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長。
〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 今後の取り組みについてですけれども、地域住民、民間団体の方々にジオパークを知っていただくため、紀南地方の各地で講習会を開催し、地域協議会をできるだけ早く立ち上げたいというふうに考えているところです。
具体的な活動としましては、ホームページやパンフレットの作成、また大地と人とのかかわり等を説明できるガイドを養成しまして、ジオサイト解説板の整備等も行い、ジオツアーを計画したいと考えております。
世界ジオパークの認定は、議員からもお話をいただきましたが、競争相手も多く大変厳しいと聞いております。何とか頑張って、最短のスケジュールとなる4年後を目標に据えて取り組んでまいりたいというふうに考えております。
以上です。
○議長(新島 雄君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいま御答弁をいただきました。
4年という目標といいますか、最短のスケジュールとなると思われますが、かなり厳しい条件がいろいろその中にはあると思われますが、この中で私が一番関心を持ちましたのが、もともとその地域にある素材を付加価値をつけて全国の方に知らしめていくという、特に、我々の住む紀南地域におきましては熊野というブランドがあります。熊野とジオパーク──信仰という部分で結びついているジオパークというのは、余り全国にも例がないかと思います。今、既にこの地域は世界遺産に指定をされておりますが、それとうまくマッチングしたような形で全国的、またあるいは世界的に売り出しをできれば、地域の振興にかなり大きな期待ができると思われますので、今後とも力を合わせて、この実現に向けて頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、3つ目の大きな項目、海洋再生可能エネルギーの利用についてでございます。
新宮・東牟婁地方の活性化並びに産業振興面では、新宮港の活用は不可欠であると思われます。しかし、新宮市が保有する工業団地への企業誘致は満足なものとはなっておらず、新宮・東牟婁地域の地勢的な面、道路網の不備などに大きな課題を持っております。
一方で、高野・熊野の世界遺産を生かしたクルーズ船誘致や地球深部探査船「ちきゅう」の誘致など、地域においてもさまざまな活性化策が展開されています。
さて、質問の話に移します。
1年前の東日本大震災の津波による福島第1原子力発電所の事故を受け、放射性物質が海洋や大気中に放出され、食品や人体への影響が懸念されています。日本国内の電力のおよそ3割を賄っていた原子力発電のあり方が問われ、重大な社会問題として取りざたされております。このことをきっかけに、今後も日本全国で深刻な電力不足が予測される中、これからの日本のエネルギー政策の転換期を迎えました。そうした昨今、海洋エネルギー資源の活用が注目されつつあり、新宮港が再び脚光を浴びることで地域の持続的な発展へのチャンスになると言えます。
本県は、これまでにも、再生可能エネルギーの導入として、和歌山県に近い南海トラフに最大の埋蔵量を持ち、日本の総資源量は日本で消費される天然ガスのおよそ100年分以上と推計される世界有数のエネルギーであるメタンハイドレートや、全国有数の日照や遊休地を生かした太陽光発電の普及などに積極的に取り組んでこられました。
この件については、さきの12月議会においても、我が党の森礼子議員からの質問に対し、知事より、本県の再生可能エネルギー導入の適地性を認識され、各種相談に対するワンストップ対応や全庁的な取り組み体制の拡充、メタンハイドレートが持つ可能性を踏まえた積極的な取り組みについて御答弁されたところであります。
先月、海洋産出試験が他の地域で実施されることとなり、まことに残念でなりませんが、本県の沖合に賦存するメタンハイドレートが将来商業化され、新宮港がその発掘拠点となれれば、港の有効活用はもとより、エネルギー関連企業や研究機関の誘致など、多くの雇用と地域経済の振興が期待されます。国策上も、石油や天然ガスなどのエネルギーの8割以上を海外からの輸入に頼っている現状を考えれば、国内で産出できることは大きな前進となります。
そうした動きの中、海洋基本計画を受けて、内閣官房総合海洋政策本部では、海洋再生可能エネルギー利用促進のための制度整備方針を平成24年春に決定するべく検討されています。
総合海洋政策本部は、海洋基本法に基づき海洋施策を集中的かつ総合的に推進する政府機関で、海洋基本計画や海洋に関するそれぞれの事務を実施しています。整備方針には、外部有識者による助言会議を設置し、政府全体のエネルギー政策見直しの方向性を踏まえ、平成24年度に総合実証実験海域の選定作業を進め、平成25年度から総合実証実験海域での施設整備を開始するとの計画があります。このため、国の平成24年度予算案では、総合海洋政策本部に海洋再生可能エネルギーの利用促進に関する調査費として2000万円が計上されています。これは、総合実証実験海域の整備に向けて、海外の事例を参考に、我が国における制度設計、海域の選定方法について調査検討するためのものです。
国内で条件の異なる5地域程度を選定するとのことですが、先手必勝とばかりに、きのう新宮市長と新宮港振興会が総合海洋政策本部を訪れ、新宮港沖を総合実証実験海域に指定していただくよう、どこよりもいち早く要望を行いました。他の海域に比べ、新宮港沖の黒潮の流れは非常に速く、また強いため、海流による海水の流れの運動エネルギーを水車、羽根の回転を介して発電させる海流発電や潮流発電の試験場所に適していると評価が高く、指定の実現に大いに期待するところであります。
海洋再生可能エネルギーの利用に向けた総合実証実験海域への選定に対して、県も積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 県といたしましては、海洋再生可能エネルギーの利用促進に向けた国の取り組みに対して、メタンハイドレートへの対応と同様にアンテナを高く掲げ情報収集を行うとともに、新宮港の利用促進や地域の活性につながるように、そんな対応ができるように、新宮市など地元関係機関と十分協議して、足並みをそろえて国への働きかけ等を進めてまいりたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 今後とも、この流れにつきましてはいろいろと県から後押しをいただきますよう、よろしくお願いいたします。
最後になりましたが、私がこの県議会議員という職をいただきまして何をやりたいかといいますと、やはり和歌山県を元気にしたい、新宮地域を元気にしたい、その思いでこの場に立たせていただけるようになりました。
ただいまいろいろ御質問をさせていただきました中には、これからの取り組みもたくさん含まれておりますが、新しい取り組みにこそ地元の若い人たちが希望を持って取り組めると思いますので、そういった力を県全体で後押ししていただける、そういった知事のお考えを常にお願いしたいと思います。
そして、新宮・東牟婁につきましては、ほかの地域にも被災された地域はございますが、まだまだ復興・復旧というところには──復興元年という位置づけもあります。今始まったばかりだと思います。
一番初めに質問をさせていただきました被災者につきましての支援についてですけども、なかなか制度自体はきっちりとしたもので、公平感のあるものだと思います。ただ、しかし、その中には光のなかなか当たりにくいとか、救済の対象からどうしても外れてしまう方とかがいらっしゃいます。どうしても私たちはそういう方の声を拾ってしまうわけですけれども、自分も政治に携わる人間として、心のこもった何か助けられるものに尽力をできたらと思っております。これは何1つ、自分でできることではありませんけれども、皆さんのそういったお力をいただきますよう御理解をいただいて、被災を受けられた方、また地域に温かい御支援を引き続きお願いいたします。
そういった思いを込めて、この質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(新島 雄君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。