平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)
平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録
第3号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)
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午後1時0分再開
○議長(新島 雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
日程第2、議案第1号から議案第16号まで、議案第33号から議案第58号まで、議案第60号から議案第69号まで及び議案第71号から議案第84号まで、並びに追加提出議案、議案第85号を一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第3、一般質問を行います。
21番中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 2月定例県議会冒頭の一般質問に立たしていただきます。
この議会は、平成24年度予算初め県民のためにお役に立つ予算、そしてまた重要な条例が上程をされております。
我々県民の代表であります議員も、大いに議論を闘わせたいと思っておりますし、また、がん対策条例案検討会初め、いろいろ政策も提案していきたいというふうに思っておりますので、議員諸氏、お互い頑張ろうではございませんか。
それでは、通告に従いまして一般質問を行ってまいりたいと思います。
まず1番目に、平成24年度当初予算と県政運営について5点伺います。
1番目に、当初予算の基本的な考え方について、知事に伺います。
昨年、私たちは、東日本大震災と台風12号水害を経験し、このとうとい犠牲を教訓に、改めて防災対策を練り直す決意をしたところであります。
さらに、公共事業の重要性を再認識するとともに、「コンクリートから人へ」という、民主党政権では国民の安全は守れないことがわかり、もはやこれ以上任せておけないと痛感をいたしました。
本県では、いつ発生するかわからない東南海・南海地震など大規模災害に対し、防災対策の見直しと充実は待ったなしの状況にあります。
また、県経済は、海外経済の減速や円高の影響などにより、依然として厳しい状況にあり、経済が元気になる施策を積極的に講じる必要があります。
こうした和歌山県が直面する大問題に加えて、福祉・医療・教育の充実、国体の開催準備など、対応すべき課題が山積する中で、財政の健全性も確保しながら予算編成をすることは、まことに大変だったと推察しますが、どのようなことに重点を置いたのか。知事の思いをお伺いいたしたいと思います。
○議長(新島 雄君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のとおり、世界経済の減速や深刻な円高による景気の一層の低迷に加え、特に当県では、台風12号災害からの早期復興や急がれる東海・東南海・南海地震への対策など、本県は大変いろんな問題を抱えております。
こうした社会経済情勢を踏まえ、平成24年度当初予算では、次の3つの柱に重点を置いて予算編成を行いました。
まず、災害に備えた安全の政策でございます。これは、3つぐらい問題意識がございますが、1つは地震・津波、2つ目は水害、特に台風関係、それから従来からある安全でございます。
第1の点については、県民が住みなれた地域で平穏に暮らせるように、被害想定の見直しや沿岸部の学校、福祉施設へのライフジャケットの配備、防災教育の充実など、たくさんにわたります地震対策、津波対策の強化を盛り込んでおります。
次に、台風12号関係では、12号災害そのものからの早期復興が引き続き多大の課題を持っておりますが、それによりわかりました洪水情報の充実等々を加え、また従来からある問題意識では、中小河川の浸水対策あるいはため池の対策、こういうものを急いで災害に強い県土づくりを着実に進めたいと思います。
第2番目の柱は、福祉や医療を充実させる安全・安心の政策でございます。これについても、従来からさまざまな政策を充実させてまいりましたが、特に24年度では、親の虐待から子供を守るための対策、相談体制を強化するとともに、親に対する教育を充実するといった対策、それから県内どこでも質の高いがん治療を受けられるような体制づくり、そういうものに新たに取り組んでまいりたいと思います。
さらに、新たな成長に向けた挑戦の政策でございますが、これについてもさまざまな産業政策を充実してまいりましたが、来年度は特に、県内産業の競争力強化に加えて、和歌山で育った若者が県内企業に就職できるように、そして和歌山を支えるように、そういう仕組みづくりに取り組んでまいりたいと思いますし、外国人観光客の受け入れ態勢の充実とか、あるいは農林水産業では競争力強化に向けた研究開発の推進、あるいは全体の若者の国際化、あるいは国際人の育成、そういう本県の飛躍につながる将来を見据えた政策に取り組んでもらいたいと思っております。
これらの取り組みを踏まえまして、一般会計当初予算額は、4年連続で前年度を上回る5748億円と積極的な予算措置を行いましたが、一方でいろいろな工夫をいたしまして、歳出と歳入の最終的な差である収支不足額は約17億円にとどめました。
元気な和歌山の実現に向けた新政策の重点的な推進を図りながら、これによって財政健全性の確保という課題にも対処した予算に仕上げたつもりでございます。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 和歌山県で県民に何を望むかといえば「高速道路」というようなことがよくアンケートで答えられるわけでありますけども、本当に願ってることというのは、やはりふるさとで生まれ育った子供たちが学校を出て就職するときに、和歌山へ残りたい人はみんな残れるようにしてあげるということが、私は究極の県政の目標でありますし、県民が望んでいることだと思います。
知事は、経産省出身で、私たちはとにかく経済に元気をつけるために大いに頑張っていただきたいと思いますし、そういうことで頑張っていただいてると思います。24年度の執行に当たっては、そういう気持ちで大いに頑張っていただきたいということを期待申し上げておきたいと思います。
続いて、2番目の今後の行財政改革の取り組みについて伺います。
予算編成に関連して、行財政改革について伺います。
今回、平成24年度を初めとする新行財政改革推進プラン(改定版)が示されました。政権交代や法律、財政、経済などが刻々と変化する中で、プランの見直しは当然のことでありますが、これまでの行革プランの評価と改定版の要点、さらに知事の思いをお伺いいたしたいと思います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) このたび、御指摘のように、平成24年度から28年度までの5年間を取り組み期間といたします新行財政改革推進プラン──改定版でございますが──の素案を策定いたしました。
これまで、この改定する前の新行財政改革推進プランに基づきまして、財政の危機的状況を回避することを喫緊の課題としていろいろ取り組んでまいりました。特に、職員数の削減等による人件費の抑制あるいは事務事業の見直しなどにいろいろ取り組んだ結果、単年度収支不足額は段階的に圧縮が進んでまいりまして、財政調整・県債管理基金残高も、プランは最終年度で22億円ぐらいかなあということだったんですが、200億円ぐらい確保いたしまして、持続可能な財政構造への転換に向けて着実な成果を上げたと思います。
ただし、今後は、水害復興あるいは防災対策、それから紀の国わかやま国体などの行政需要が見込まれておりまして、毎年一生懸命政策の充実に励んでおりますものですから、これ以上一本調子で人間の数を削減していくのはちょっと難しいかなあというふうに思っております。
一方、それをやめて、その結果、またもとのもくあみというわけにはまいりませんので、これまで頑張ってきた、改善されてきた財政状況を悪化させないようにするというバランスも必要だと思います。
そこで、両方考えまして、行政需要に応じた適切かつ最小必要限の体制の構築と、それから将来発生が見込まれる多額の財政需要にも適切に対応しながらやっていくということで、財政調整・県債管理基金は大体最終年度でも100億円を堅持するようにしておいて、それで具体的には、事務事業の一層の見直しとか、あるいは知事部局等におけるさらに40人の職員削減、あるいは歳入確保の推進などによりまして170億円の行財政改革を進めて、同時に新たな行政需要にも適切に対策した上で、今のような行革を達成して財政の健全性を確保するということが今回の改定版の目標でございます。
どうぞ、よろしく御理解賜りますようにお願い申し上げます。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 3番目に、地方公務員の給与削減について伺います。
東日本大震災の復興財源を捻出するため、国家公務員給与を削減する法案が去る2月29日に可決されました。
この法案は、国家公務員の給与を平均で0.23%引き下げるよう求めた人事院勧告を昨年4月にさかのぼり実施することに加えて、平成24年度から2年間は人事院勧告分も含めて平均で7.8%削減することが盛り込まれており、約6000億円の財源が東日本大震災の復興に充てられるそうです。
このこと自体は大変結構なことでありますが、この法案が衆議院総務委員会で審議が行われたとき、地方公務員の給与削減についても、「地方自治体が法案の趣旨などを踏まえて自主的かつ適切に対応する」という文言が附則に追加されたと伺います。
しかし、本県を含め地方自治体では、これまでも、給与の削減はもとより、定員も削減し、行財政改革に取り組んできており、今まで何もやってこなかった国が急にやることになったからといって、地方に口出ししてくることはいかがなものかと思います。
既に地方6団体からも国に対して反対の意思を伝えていますが、知事の御所見を伺います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 2月29日、国において国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律が可決されまして、地方公務員の給与についても、地方公務員法及びこの法律の趣旨を踏まえ、地方公共団体において自主的かつ適切に対応するよう規定されております。
都道府県では、実態を調べますと、先ほど5年間の行革の話を申し上げましたが、もうちょっと長くとりますと、平成11年以降、国に先行いたしまして、すべての都道府県で累計2兆円を超える独自の給与カットを実施しております。また、国の非現業の職員数が、これはちょっとしか減ってないんですけども、それをはるかに上回る2割弱もの職員数の削減を実施しとるというのが現状です。
本県においても、行財政改革に積極的に取り組み、平成13年度からの11年間で考えますと、給与カットによりまして約97億円の人件費を削減し、それから17.5%、約3300人もの職員数を削減するなど、これまで財政状況等を勘案して総人件費を削減してきた我々としての努力の結果があります。
その努力全体で見ないといけないので、今回の7.8のところだけを見られるというのはおかしいなあというふうに思っておる次第でございまして、今後、地方財政対策など、国の動向及び他の都道府県の状況を注視しながら、今の考え方をもとに、適切に頑張って対処してまいりたいと思います。
○議長(新島 雄君) できれば挙手をいただけたらありがたいです。
中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 4番目に、社会保障と税の一体改革について伺います。
世界に類を見ない少子高齢化が進行し、社会経済状況が激変する中、国民生活の安心を確保するためには、社会保障制度を根本的に改革する必要があることは論をまちません。
そこで、政府は、社会保障改革の全体像とともに、必要な財源を確保するため、消費税を含む税制抜本改革の基本方針を示すべく議論を進め、昨年6月に社会保障・税一体改革成案を決定し、その基本的な考え方や具体的な改革内容に従って、さらにその内容を具体化した社会保障・税一体改革大綱を本年2月に閣議決定しました。
現在、閣僚が全国11会場に出向いて、きょうの不安をあしたの安心のためにと称して対話集会を実施しています。
しかし、新聞報道などによると、安心どころか、集会では国民理解が進むというより、消費税増税に反対する意見が多数寄せられているということであります。
与党民主党内でも、有力者である小沢一郎氏が反対しており、総理がみずから説得に当たるべきとの声が上がっております。また、社会保障の内容が十分詰め切れていないことから、増税が先行するとの報道もあります。
そもそも、政権交代をした2年半前の総選挙では、民主党は消費税の増税は少なくとも4年間はやらないと言っていました。子ども手当など集票効果のあったマニフェストの財源16.8兆円の出所を聞かれたら、無駄を省き、埋蔵金を掘り起こせば十分捻出できると主張していました。事年金に至っては、毎月7万円の基礎年金を支給すると言っていたのではないでしょうか。
政治は最高の道徳と言われることがありますが、「うそつきは泥棒の始まり」ということわざもあります。果たして知事は、福祉と経済を両方担当する県政の責任者として、社会保障・税一体改革についてどのような評価をされていますか、御所見を伺います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は、少子高齢化の進展や、あるいは雇用形態が変化する中で、近い将来、我が国の社会保障制度がこのままでは維持していけなくなるんではないかという強い危機感を感じております。
そういう意味で、社会保障の保障制度の機能を維持し、制度の持続可能性を確保するための改革が必要でありまして、そのために最後の財源である消費税を充てるということは理解できるとずっと言っております。
しかし、ということは、最後の財源でございますので、これを上げることで日本がずうっと安泰になるということがみんなに理解できないと、なかなかつらいのうということでございます。
そのための改革、やることはたくさんあると思いますので、それをきっちりやるということを示さないと、なかなか理解が得られないんじゃないかというふうに考えます。
現在の閣議決定された社会保障・税一体改革大綱では、新しい年金制度の創設を初め社会保障改革やその財源についての内容が、どうも今申し上げましたような長い目で見たときの国家の安泰とか社会保障制度の持続とかいう点から、本当にそうなのかということについて、私は確証に至っておりません。
したがって、将来の見通しをしっかり立てて、社会保障と税の一体改革の必要性をこの際国民的に徹底的に議論して、それでその上で国民の理解を得つつ、これを進めていくということが大切だと考えております。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 5番目に、職員の秋採用について伺います。
去る1月20日、東京大学が、およそ5年後をめどに秋入学制度を導入する素案を発表しました。早速、4月から旧帝国大学や早慶など11大学と協議を開始するほか、経済界にも協議を呼びかけるとしています。
これは、我が国のように4月入学を実施する国は少数で、世界の大学と交流を深め、優秀な学生を受け入れるためには世界標準がよいとして、濱田純一総長の強い思い入れで進められています。
制度的には、法改正により、平成20年から各学長の判断で実施できることになっています。
最近のアンケートでは、国立大学を中心に3割から4割前後の大学が評価し、導入を検討すると回答しています。
また、経団連や経済同友会など経済団体は、おおむね理解を示しており、政府でも、このほどグローバル人材育成推進会議を開き、秋入学について各省で議論をすることが報道されています。
秋入学については、春に高校を卒業してからの半年間をどう過ごすかというイヤーギャップの問題や、ほかの学校制度、社会制度に影響する大きな問題ですが、既に早稲田や慶応、上智大学では実施されており、今後進展する可能性があります。
そこで、知事の秋入学に対する評価と、本県職員採用試験への導入の可能性についてお伺いをいたします。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御指摘のように、現在、東京大学などが検討している秋入学につきましては、どの程度広がっていくか予想は余りつきませんけれども、しかし一部の大学において少なくとも導入されて、そこから秋に卒業生が出てくるということになりました場合は、本県においても、優秀な人材を確保するために、春に加え、秋の採用も実施すべきだと私は思います。
なお、本年度は、ちょっと理由が違いますが、本年、台風12号による災害からの復旧・復興等で繁忙をきわめましたので、本年春の採用予定者の中から臨時的に数名を昨年の秋に採用するなど、柔軟に対応させていただいたところでございます。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 大きな2番目といたしまして、防災対策として被害想定の見直しについて伺います。
未曾有の大災害となった東日本大震災を受けて、中央防災会議では、平成23年8月28日、南海トラフの巨大地震モデル検討会を設置し、近い将来起きる東海・東南海・南海地震の想定を見直すことにいたしました。
ことしの3月から4月ごろには、最終取りまとめとして最大クラスの震度分布、津波高等の推計結果が公表をされます。
本県では、東日本大震災以来、東南海・南海地震対策について総合的に見直しをしてきております。特に、今春、今申し上げた最大クラスの震度分布、津波高等の推計結果が公表されることに合わせて、新年度予算において、地震・津波被害予測調査、河川津波遡上シミュレーション調査の予算を計上しておりますが、いよいよ迎えた本番とも言うべき想定地震の見直しに、知事はどのような御見解をお持ちでしょうか、お伺いをいたします。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御指摘のように、現在、国の中央防災会議におきまして東海・東南海・南海地震の被害想定の見直しについて議論されておりまして、どうも今月末とか、あるいは4月とか、はっきりしませんが、近く震度分布、津波高等の推計結果が公表されると聞いております。その結果によっては、当然我が県におけるハザードマップ等々の見直しが必要であると考えております。
これを予測しておりましたので、県といたしましては、これまた御指摘のように、予算案にそのための予算を盛り込ませていただいておりますが、4月といたしますと、公表を受けて、精緻な被害想定、浸水予想図の作成などに着手する所存でございます。そのための予算は結構かかりますので、約1億円計上させていただいております。
完成後は、これを市町村に基礎データとして提供することで、市町村に対して地震・津波ハザードマップの修正を促していくということになるかと思います。
しかしながら、幾ら精度を高めたとはいえ、想定は想定であります。自然災害ではどんなことも起こり得るということを念頭に、やはり命を守るためにはまず逃げるということが非常に大事でございますので、我々よくやっている避難三原則などの防災教育あるいは啓発、それから防災訓練等々も含めて力を入れ、さまざまな対策を講じていきたいと思っております。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 大きな3番目といたしまして、沖積平野の津波対策について伺います。
まず、ハード整備の必要性について伺いたいと思います。
さて、東南海・南海地震対策については、今も知事も言われましたけども、現在、通常起きる規模の地震と1000年程度で起きるかもしれない地震の2つを想定しており、通常よく起きる地震に対してはハード整備を行いますが、1000年に一度起きる大地震に対しては、もうハード整備は行わないでひたすら逃げろというような雰囲気があります。
これは明らかに間違いで、東日本大震災でも、津波から村を守った普代水門や太田名部防潮堤、道路以外の機能を果たした仙台東部道路などがあります。また、今日では失敗と言われた釜石湾口の大深度防波堤も、津波の衝撃力を減衰したと言われております。12号台風では、砂防堰堤があるところとないところでは運命を分けました。
実際に、御坊市のような沖積平野にある市街地では、約1万人という単位で平野周辺の高台へ避難することは大変困難で、果たして避難塔のような施設に収容できるのかというと、これも難しいものではないかというふうに心配いたしております。
南海地震のような巨大地震は数分間も揺れ続け、地震がおさまっても腰が抜けて逃げられないと想像しておりますが、実際に東日本大震災ではそういう事例が報告されています。また、家具の転倒や住宅の倒壊で負傷して逃げられない、避難路の障害物で逃げおくれるということもあるでしょう。昭和の東南海地震では新宮市街が半焼したように、火災で逃げられないことが十分予想されます。
そこで、伺います。逃げる場所が限定される沖積平野の市街地など避難が困難な地域において、やはり防潮堤や水門などのハード整備を十分行うことが必要と考えますが、知事はどのようにお考えでしょうか、御所見を伺います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 東日本大震災を教訓とした中央防災会議の報告におきましては、比較的頻度の高い津波に対する海岸保全施設等の整備と最大クラスの津波に対する住民避難を軸とした総合的な対策という2つのレベルの想定と、それぞれの対策が示されております。
しかしながらというか、したがってというか、ハード、ソフトとも両方大事であるということはもう明らかでございます。
特に、議員御指摘のような逃げる場所が限定されるだらだらと広がった平野、低地、こういうところについては、現在の国において行われてる想定地震の見直しの検討結果を踏まえ、特に最大クラスの津波からの避難対策について、ハードウエアの対策も、ソフトもそうですが、両方考えていかないといけないということだと考えております。
とりわけ、御指摘のように、防潮堤あるいは護岸、それから今回早急に手を打とうと思っております陸閘とか水門とか──後者は自動化、陸閘はふたをしてしまうとか──そういうような対策も含めて、たくさんのハードウエアをやっぱり変えていかないといけないというふうに思います。
さらに申し上げますと、津波被害が予想されるようなまちの市街地あるいはその隣接地に避難場所としての高台を計画的に、長期的につくっていくということとか、あるいはもっと長期的になるかと思いますけれども、住むところを少しずつ高いところに移していくというようなことも必要ではないかと、特にかなりの南部については必要じゃないかというふうに思いますので、そういうことも関係部局に指示を出して、これから考えていきたいと考えてるところでございます。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 2番目に、堤防強化について伺います。
津波が遡上し、堤防から越流する心配をして、堤防の強化やかさ上げの必要性を以前から主張してまいりましたが、新年度予算案に河川津波遡上シミュレーション予算2500万円が計上されました。大いに評価すると同時に、今後の取り組みに期待をいたします。
さて、霞堤防もある日高川初め県内河川の津波対策をいかに進めるのか、知事の御所見を伺います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 東日本大震災では、河川を遡上した津波が河川堤防を越えて沿岸地域に甚大な被害をもたらしたということなので、河川を遡上する津波への対策が重要であると、議員御指摘のとおりでございます。
このため、県では、国において行われている想定地震の見直しの検討結果を踏まえまして、また昨年9月に出されました河川津波対策についての国からの通知に基づきまして、日高川を初め県内の主要な河川で津波遡上シミュレーション、こういうものをやっていこうと、あるいは河川堤防の耐震耐津波点検を実施しようというふうに考えております。
これらの点検結果によりまして対策が必要と判断される箇所については、優先順位を決めまして、堤防のかさ上げとか、あるいは強化とか、そういうものをやっていかないといかんというふうに考えております。もちろん、ソフト対策が大事だというのは言うまでもございません。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 3番目に、海岸事業費の増額について伺います。
知事は、東日本大震災、12号台風以前から河川整備の必要性を説かれていましたが、津波対策としては河川同様に海岸整備も必要と考えますが、知事の御所見を伺います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 現在、地震につきましては、特に東海・東南海・南海地震につきましては、想定地震の見直しの検討が行われているところでございますが、この結果を踏まえて、各地域において防災・減災対策において検討される必要があると考えておることは、先ほど申し上げたとおりでございます。その中には、当然、海岸事業費、海岸事業というのもありますので、所要の予算の確保に努めてまいりたいと考えております。
なお──というか今年度の話でございますが、特に東日本大震災を踏まえ、防災・減災対策の総点検を実施しました。その結果、さまざまな案件が明るみに出てまいりまして、水門の自動化とか陸閘の廃止とか、そういうのがたくさんメニュー化されてきております。そのための予算を重点的に24年度予算についても盛り込んでおりますので、海岸事業費についてはかなりの増額になってるということでございます。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 大きな4番目といたしまして、県立医科大学の不適正経理について伺います。
1月5日、「毎日新聞」に県立医科大学の不適正経理が報道されました。記事によると、県立医科大学の元教授が在籍当時に、医師を派遣した病院から現金を受け取りながら医局の裏金として使用したのではないかというものでした。
私は、記事を読んで特に腹立たしいと思ったことは、県内では医師不足と言いながら県外の病院に派遣していることで、しかも、そこから研究費といえども金をもらうということは許せないことだと思いました。
同時に、疑問もいっぱいでした。派遣したからもらったのか、もらったから派遣したのか。一体、派遣決定の経緯はどうだったのか。寄附金と派遣先の関係はどうなっているのか。医局会計の実態はどうだったのか。寄附金の性格は、税法やその他の法律ではどういう性格のものか。他の医局ではどうなっているのか。正式寄附金会計とは。透析患者の紹介料の実態は。また、文科省の研究費を不適正に支出したとして返還をしましたが、返還の財源は医局会計から支出したという話も聞くが、実態はどうだったのか。
報道を受けて、医科大学では、弁護士や会計士もメンバーとする委員会を学内に立ち上げて調査し、去る2月8日、学長が会見を開き、調査結果を公表しました。
その調査報告書を読んだ感想は、私のような門外漢でも、とても誠実に調査したとは思えない内容でした。
さらに疑問が深まりました。例えば、調査の日時、方法が不明であること。調査資料や記録は公文書管理法の対象になると思うが、実在するのか。調査の協力が得られなかった人がいたと聞くが、それはだれか。なぜ協力してもらえないのか。特に、出納帳がないということは信じられません。もしそうだとしても、現金で保有してないなら、銀行口座を調べればわかることではないか。Aさんが平成22年10月に雇用が解消されたという意味は何なのか。Bさんが23年12月に退学した理由は。全医局会計に不明朗な入出金がなかったと言うが、何をもってないと言えるのか。その証拠は。記事のもととなった大阪の病院からの資金提供の事実はなかったのか。恣意的な配置は認められなかったと言うが、証拠は何か。そもそも、この報告書で説明したと考えているのか。また、正式寄附金会計というものがありますが、今回の質問に当たり、資料としてその内容を伺いました。1件当たりの金額の大きさと数の大きさに驚きました。適正な奨学寄附金ということですが、そんなにたくさんの寄附をしてくれるような立派な研究が多く行われているのでしょうか。寄附者には、一般の企業や団体からの寄附は余り見当たらず、やはり民間病院と製薬会社などの納入業者ばかりが目につきました。そして、議会への説明は、福祉環境委員会で説明したことで終わったと考えているのか等々であります。
そこで、知事に伺います。
今回の報告をどのように評価されましたか。私は、よくわからないことばかりですが、知事自身、満足されているのでしょうか、御所見を伺います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 県立医科大学腎臓内科・血液浄化センターに係る新聞報道に対する調査結果につきましては、御指摘のような報告をまとめ、発表する前ですが、県立医科大学の板倉学長と調査委員会の宮下委員長から報告を受けました。
今回の一連の事件は、かつて大学に一般化していて、それでいろいろな批判を受けて、ほとんど整理されていった、そういう古い体質がまだ残っておったということだというふうに思っておりまして、こういうのは残っていっちゃいけないので、徹底的に正していかないといけないと思っております。
ただ、横領とか、あるいは贈収賄とか、そういうものはないと報告されておりまして、私もそれはそうだろうなというふうに思っています。
今後は、以前の慣例はとにかく直すと言われていて、もう一切きちんとしていきますというふうに言うとるので、そうしてもらいたいというふうに申し上げましたし、思っております。
そうした意味で、全体の本質と、それから今後そういうことを許しちゃいかんという点では、調査結果については別に文句はございません。
唯一不満な点は、そのときも申し上げましたが、事情聴取に応じなかった某大阪堺市の病院があるんです。こういうものはけしからんと思いますので、私は民間病院名を公表すべきだと言ったんですが、それはされてませんけれども、それだけが不満な点でございます。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 続いて、今回のことも含めて医大の不祥事は、平成20年から4年間で新聞に報道されただけで12件もあります。不祥事が続く原因は、統治、いわゆるガバナンスができてないということではないでしょうか。
かつて、法人化するときの説明では、独立大学法人になれば、県の負担は毎年1%ずつ軽減され、自主的に大学が経営され、しかも優秀な人材が集まり、地域医療も進展するということでありました。しかし、実際は、平成24年度も予算案に40数億円の運営交付金が計上されています。多額の税金を投入しているにもかかわらず、言うことは聞いてくれなくなったという印象であります。
そもそも、独立大学法人を定めた法律自体、有効だったのかと私は思っています。私は、管理責任を問いやすい直営がいいのではと考えております。少なくとも、今回のことで経営と運営が分離すべきであるというふうに考えますが、知事の御所見を伺います。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 大学の運営に当たりましては、大学人ならではの専門的な知識というものも期待しますし、あるいは大学の自治とか自主権が与えられることによって大学関係者が張り切っていろいろやろうという自発的な向上心とかやる気、こういうものが高まっていくということも期待されるところです。
現在、和歌山県立医大は、板倉学長のもと、全学を挙げて地域医療の充実とか、あるいはさまざまな改革に取り組んでいると考えています。
それからまた、医大のさまざまな指標があります。全国の中での順位とか、そういうのも結構上位にありまして、そんなにだめ大学ではないと思います。
今のところ、そういう点では、その医大の活動について、不祥事はきちんと正していかないといけませんが、大問題だとは私は思っておりません。
それからまた、大事な医大の方針、これは県で中期目標を定めまして議会にお諮りし、それに沿って中期計画を医大でつくっていただいて議会へ報告するということになっておりまして、こういう形を使いながら、地方独立行政法人としてしっかりやってもらうというふうに考えたらまあいいんじゃないかと現在のところは思っております。
県としては、任せっ切りというわけにいきませんので、ちゃんと中期目標が達成されているか、中期計画をきちんとやっとるか、そういうことと、それから日々いろんな問題意識が生じますから、そういう問題について、どう解決していくかということについて常に話し合おうということにしております。
ここで、月一遍ぐらい、これは議会でも申し上げましたが、連絡協議会というのをつくって意見交換をしております。その中で、今申し上げましたような観点から、適切な指導を行ってまいりたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 医科大学のことにつきましては、県議会も主体的に、大いに私も取り組んでいきたいというふうに思っております。
大きな5番目につきまして、質問を移りたいと思います。
放置竹林について伺います。
今やとどまるところを知らない獣害でありますが、果樹試験場から、放置された竹林がイノシシの重要なえさ場になっているという、そういう報告がありました。そして、報告によると、かんきつ類が少ない4月から6月にイノシシがタケノコをいっぱい食べて、それで子供を育ててる。その竹に除草剤を入れて枯れされて竹林を根絶したら、えさがなくなって幼獣が育たなくなって獣害が減るという、こんなレポートを出してくれております。
今、竹林がある里山というのは、もう本当に危機的な状況になっております。人が入らなくなって里山が守られなくなったということであります。この里山をきちんと管理することが獣害対策になると思っております。
かつて、有用だった竹や建築材、それから日用材として、もっと使えるように我々もしていかなくてはならないわけでありますけども、この放置竹林を何とか管理をするということが大切だというふうに思っております。
今後とも、ぜひ県でも取り組んでいただきたいと思いますが、農林水産部長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 農林水産部長増谷行紀君。
〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 県では、これまで農作物の鳥獣害対策として、捕獲に重点を置きながら、防護さくの設置、えさ場の解消などの環境整備を総合的に実施してまいりました。
県の果樹試験場の研究成果にもあるように、放置竹林がイノシシのえさ場となっており、竹林を枯らすことにはイノシシを圃場に寄せつけない一定の効果があるものと認識しております。
こうしたことから、今後、えさ場となる竹林については、鳥獣害防止対策交付金の活用による刈り払いを行うほか、里山整備の観点から、紀の国森づくり基金の活用をお願いし、平成24年度より市町村や地域住民等と協働して新たな放置竹林対策を進めてまいりたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 最後に、熊野古道王子跡を活用した誘客について伺いたいと思います。
平成15年に、県議会の有志でスペイン・ガルシア州を訪問いたしました。大変すばらしいところだという、そういう印象でありますが、特に印象に残ったのは、熊野古道と姉妹道であるサンティアゴの道であります。この道の終わり近くにあるまちを見おろす丘は歓喜の丘と呼ばれ、長くつらい旅路の果てにようやくたどり着いたときに、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目の当たりにして、みんな歓喜に打ち震えるのだそうであります。
ちょうど熊野にも伏拝というところがあり、都からの旅の終わりに大斎原の鳥居を見て伏し拝んだという故事を思い出します。洋の東西を問わず、宗教に関係なく、人の感じること、考えることは同じだなあというふうに思いました。
さて、熊野もうでは、熊野三山に参拝するだけではなく、旅すること自体が修行であり、大いに意味のあることだと言われております。また、古道に点在する王子は、休憩所ではなく、奉幣や経供養などの儀式が行われ、参拝者の庇護を祈願する重要な施設でありました。俗に熊野九十九王子と言われますが、99カ所あるわけではなく、たくさんという意味だそうで、時代によって増減したようであります。
紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産になり、和歌山の自然や文化は世界に誇れるすばらしいものとの自信を持ちました。しかし、熊野古道では、世界遺産に登録されたのは中辺路と大辺路などで、紀伊路だけは取り残されました。確かに古い姿を残すことも大切ですが、熊野もうでの神髄は長い旅路を歩いて熊野に到達することにあり、世界遺産にはならなくても、歩いて旅することの意義を改めてアピールできないかと思います。
幸い、昨今は健康志向が強く、ウオーキングもブームです。JR紀勢線は、古道沿いにあり、一度に歩けなくても区分けして歩くのに大変便利です。幸い、王子は歩くのに適当な距離に配置されています。
そこで、王子を現代に復活させ、古道歩きを楽しむ旅人の支援拠点として整備してはどうかと考えますが、知事の御所見を伺うものであります。
○議長(新島 雄君) 知事。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御指摘のように、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」につきましては、平成26年に登録10周年を迎えるわけですけれども、県では、熊野参詣道、紀伊路など一部区間において世界遺産エリアの拡大を実は目指しているところでございまして、これ、ステップが要るんですけれども、頑張っていきたいと思っております。
誘客促進策の1つといたしましては、県内外から訪れる旅行者に参詣道を安心・安全に歩いてもらうために、熊野参詣道、紀伊路を初めとした参詣道ウオークマップを整備しております。
今年度は、さらに高野山の参詣道とか高野七口ウオークマップを制作するとともに、参詣道の魅力について、メディア露出やホームページなどで積極的に情報発信を行い、誘客に取り組んでおります。
御指摘の熊野参詣道、特に紀伊路や中辺路の沿道に点在する王子社は、いにしえ人が参拝やみそぎを行うとともに、休憩や宿泊をとった、そういう記念すべき場所であります。
現在の王子社跡は、熊野古道特有の重要な観光資源と認識しておりまして、滞在時間の長期化、あるいは特にリピーターをねらって、ある種の人は、コレクションマニアの人が多いもんですからスタンプラリーをやろうということで、まず手始めに中辺路を開発し、それから次に大辺路と高野山の、何だったっけ、ちょっと忘れましたが──高野山の(「町石道」と呼ぶ者あり)済みません、町石道を追加いたしました。
これは、スタンプラリーを置くべきところというのは、主として実は王子社に置いておりまして、王子社を回っていただくという、そういう仕掛けをつくってるわけでございます。
今後は、さらにそれを紀伊路にも広げて、それで和歌山県、あとは小辺路とか奥駈とかの他県に行くところがありますけれども、ただ、そういうところはちょっと置いといて、紀伊路などの王子社の跡の活用も必要であると思いますので、文化財の指定状況や旅行者の利便性等を考慮しながら、この設置拡大に取り組むということをやっていきたいな、そんなふうに思っております。
○議長(新島 雄君) 中村裕一君。
〔「終わりました」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。(拍手)