平成22年12月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)
県議会の活動
平成22年12月
和歌山県議会定例会会議録
第6号
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議事日程 第6号
平成22年12月13日(月曜日)
午前10時開議
第1 議案第134号及び議案第143号から議案第178号まで(質疑)
第2 一般質問
第3 議案の付託
第4 請願の付託
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会議に付した事件
第1 議案第134号及び議案第143号から議案第178号まで(質疑)
第2 一般質問
第3 議案の付託
第4 請願の付託
第5 休会決定の件
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出席議員(43人)
1番 泉 正徳
2番 山本茂博
3番 前芝雅嗣
4番 浅井修一郎
5番 吉井和視
6番 向井嘉久藏
7番 門 三佐博
8番 町田 亘
9番 森 礼子
10番 平木哲朗
11番 花田健吉
12番 須川倍行
13番 大沢広太郎
14番 谷 洋一
15番 平越孝哉
17番 岸本 健
18番 川口文章
19番 尾崎太郎
20番 藤山将材
21番 新島 雄
22番 山下直也
23番 井出益弘
24番 宇治田栄蔵
25番 多田純一
26番 中 拓哉
27番 服部 一
28番 角田秀樹
29番 山田正彦
30番 坂本 登
31番 尾崎要二
32番 中村裕一
33番 片桐章浩
34番 原 日出夫
35番 浦口高典
36番 長坂隆司
38番 小川 武
39番 冨安民浩
40番 奥村規子
41番 山下大輔
42番 松坂英樹
43番 藤井健太郎
44番 雑賀光夫
46番 松本貞次
欠席議員(1人)
45番 野見山 海
〔備考〕
16番 欠員
37番 欠員
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説明のため出席した者
知事 仁坂吉伸
知事室長 曽根義廣
国体推進監 中村正次
危機管理監 前硲健作
総務部長 宮地俊明
企画部長 柏原康文
環境生活部長 保田栄一
福祉保健部長 西上邦雄
商工観光労働部長 岡本賢司
農林水産部長 阪中栄一
県土整備部長 原 広之
会計管理者 神田泰仁
教育委員会委員 寺村多喜
教育長 山口裕市
公安委員会委員 片山博臣
警察本部長 山岸直人
人事委員会委員長 守屋駿二
代表監査委員 楠本 隆
選挙管理委員会委員長 諸木良介
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職務のため出席した事務局職員
事務局長 森田実美
次長 佐本 明
議事課長 堀 達也
議事課副課長 吉田政弘
議事課課長補佐兼班長 田中健司
議事課主任 中尾祐一
議事課主査 保田良春
議事課主査 中村安隆
議事課主事 的塲健司
総務課長 上坊 晃
調査課長 中井祥之
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午前10時0分開議
○副議長(山下直也君) これより本日の会議を開きます。
日程第1、議案第134号及び議案第143号から議案第178号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
11番花田健吉君。
〔花田健吉君、登壇〕(拍手)
○花田健吉君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、一般質問に入らせていただきたいと思いますが、その前に、仁坂知事、再選おめでとうございます。
仁坂県政の2期目のキャッチフレーズは「あたたかい改革」だとお聞きいたしました。いつも県民の目線に立って弱い方、困っている方に寄り添う温かいまなざしで県政を進めていただくことを心から期待をいたしまして、質問に入らせていただきます。
現在、我が国経済は深刻なデフレ経済にあえいでおります。特に民間活力の乏しい私たちの地方においては、一層深刻な状況であることは御承知のとおりであります。このたび、政府は突然TPPの議論を持ち出しておりますが、まだまだ農産物を初めとして我が国と関係国の価格格差は大きく、知事からも再三御答弁がありましたように、政府はもう少しそれぞれの産業に対し政策を施してからTPPに参加しないと、国内はさらにデフレが深刻化し、不況が蔓延するのではないかと憂慮するところであります。経済学者の論をまたなくても、デフレ経済の恐ろしさは皆さんもよく御承知のとおりでありますが、デフレがさらなるデフレを呼ぶデフレスパイラルになると、事態はさらに深刻になってまいります。
建設業界に限って申し上げますと、バブル崩壊後、和歌山県だけではありませんが、公共事業のデフレ化が進みました。バブル時代は資材や労働賃金が高騰し、公共事業の設計単価が高くなりましたが、バブル崩壊後、過当競争が始まり、設計単価は逆にどんどん抑えられ、現在のデフレになっているのです。
公共事業により建設された公共施設は私たち国民の共有の財産であり、時代を超えた共有の社会資本であります。また、公共事業は、その時々の経済状況をかんがみ、国民生活を守り、経済を活性化させるための起爆剤として用いられてきたことは御承知のとおりであります。
しかし、昨今、公共事業は余り景気対策の効果がないと論じられるようになりました。なぜなのでしょうか。民主党政権はまさにこのことをとらえて、「コンクリートから人へ」の合い言葉のもと、給付型の政策に転換したのであります。政府は、子ども手当や高等学校の無償化等の給付政策を実行するために公共事業を、昨年は20%削減し、来年度はさらに10%削減すると政策提言しています。それらの手当が消費に回り経済を刺激し、景気回復につながるというのですが、にわかに信じることはできません。
先般、新聞のアンケート調査でも4割を超える方が、子供の将来のため子ども手当を貯蓄に回すと回答されていました。消費を拡大させ、景気回復を図るどころか、縮小させてしまうことも危惧されます。一刻も早く子ども手当のような給付型施策から子育てをサポートする環境整備に力を尽くしてもらいたいと思います。
しかし、昨今、公共事業も景気対策に有効な手段でないと言われるようになってしまいました。1930年代、アメリカが大不況を克服するためにニューディール政策を行い、景気対策と雇用対策を同時に行ったことは有名でありますが、以後、我が国においても、不況の波が押し寄せるたびに景気と雇用を安定させるために公共投資を行ってまいりました。そして、経済波及効果を生み出すことによりすべての産業に活力を与え、それが消費行動につながり、オイルショックやバブル崩壊後の危機的状況にあった日本の経済不況を乗り切ってまいりました。
10年前、平成12年の和歌山県の公共投資額は国関係、県、市町村を合わせると2251億円の公共建設投資がありましたが、平成21年度の大型補正予算を除くと年々厳しい状況になっています。前知事時代は、大型工事は大手ゼネコンが受注し、県内業者は下請に回り、他府県の下請業者と厳しい競争にさらされ、利益の少ない中で仕事をしていました。
仁坂県政になってほとんどの事業が県内業者に発注されるようになったことは高く評価するのですが、依然、建設業者の倒産や廃業が続いています。そのことは同時に多くの県民の、特に若者の働く場が失われたことになります。公共事業が大幅に削減されたことも大きな原因であると思いますが、それだけが現在のような建設業界を疲弊させたのではないと私は考えます。
その1つの理由として、公共事業の設計段階における単価の決定方式が大変問題であると考えています。官製談合事件の後、我が県政は大変厳しい県民の批判渦巻く中ではありましたが、仁坂知事は就任してすぐ県民の信頼回復と公正で公平な入札システムを導入するため公共調達委員会を立ち上げ、現在の入札制度の骨格をつくられました。現在の入札システム自体はまだ少し改善の余地はあると思いますが、一定の成果は得られたと考えます。しかし、建設業界は今、入札システムの問題だけでなく、深刻なデフレに悩んでいます。
そもそも、景気対策や雇用対策の一面を持つ公共事業がデフレに陥ることがおかしいと思いますが、過当競争から来るダンピングの激化から生じるデフレスパイラルが深刻化しています。このデフレスパイラルは、建設単価の決定過程においても大変大きな影響を及ぼします。
厳しい受注競争は従業員の給料の値下げやボーナスのカットを生み、また、当然協力業者や資材納入業者にも値下げの協力を求めます。しかし、請負業者が従業員の給料を抑えたり、出入り業者の資材等の単価を低く抑えれば抑えるほど、数カ月先の設計単価に反映されるというシステムに問題があると思います。
現在の設計単価の算出方法は、一定期間の県内の実勢単価の平均を採用しています。厳しい入札価格で工事を受注すると、当然建設会社は支出を抑えようと懸命に努力しますが、その結果、建設業界全般の実勢単価を押し下げます。その押し下げられた実勢単価が次の工事の設計単価に反映されるという仕組みは、余りにも厳しいシステムと言わざるを得ません。建設業界は企業努力をすればするほど実勢単価を押し下げ、次なる設計単価の引き下げをつくり出し、みずからがデフレスパイラルを誘発してしまうという過酷な制度です。
一方、一括して大量購入できる大手ゼネコンや物流コストのかからない都市部の建設業者は比較的楽に資材等を購入できますが、和歌山県のような地方の零細業者は設計単価以上の資材を時には購入して工事を完成させなくてはならなくなり、地域間格差を生み出す不公平なシステムであるとも言えます。安く購入できる都会の業者と高く購入せざるを得ない地方の業者の平均単価を設計単価に反映するのであれば、地方の業者は初めから赤字覚悟で工事を請け負うことになるではありませんか。
昨年、一般競争入札で公募しても応札のなかった工事が約3%あったと聞いています。従業員のことを考えると、どんな仕事でも確保しておきたいというのが業者の心理だと思いますが、それでもなお応札しないのは、設計段階から受注しても赤字になることがわかっているからであります。最近は、民間建築の単価のほうがまだましだと民間建築の営業に力を入れている建設会社も多いと聞きます。
当局は、低価格から来る公共工事の品質の低下や適正価格の観点から、最低制限価格を設定することにより品質確保と経済効果を担保しようとしています。しかし、幾ら最低制限価格を引き上げても設計段階の単価が低ければ、それらの効果は余り期待できません。建設資材等の製品はただでできているわけではありません。製造過程で当然コストがかかり、そのコストに見合う製品単価があるはずであります。その単価に近い価格を採用せず、実勢単価を採用することが建設業界の構造的デフレを引き起こす要因の1つになっているのではと考えます。
6月議会で、私は、「風が吹いたらおけ屋がもうかる」という話を引き合いに出しましたが、経済とは、循環させることにより波及効果が生まれ、その効果がまた新たな経済効果を生み出すという経済の原則があります。自由競争社会は一度デフレを起こすとインフレに戻すことは難しいと思いますが、唯一公共事業において、当局の主導によりある程度のデフレ対策が可能であると思います。そして、そのデフレ対策が民間産業にもよい影響を及ぼし、全体のデフレを抑制することができる可能性が生まれてきます。
我が国は自由競争社会ですから競争原理は認めますが、デフレを誘発するような仕組みを認めるわけにはまいりません。当局は、国土交通省と各都道府県の例をすぐに持ち出しますが、勇気を持ってストップ・ザ・建設デフレを和歌山県から全国に発信していただきたいと思います。
ちなみに、現在当局が確認している建設業者は5000数百社とお聞きいたしました。そのうち法人事業税を県に納めている建設業者は、約2700社余りであります。約半数であります。その額も年々減少していますし、県の発注総額からするとごくわずかであり、21年度のように大型の補正を組んでも建設業界の税収は伸びません。
本来納めていただいた税金で公共事業を行い、そしてまた税金を納めてもらうという循環が正常な社会だと思います。公共工事に携わっても税金を納めるだけの利益が出ないのは、一般競争入札制度や設計単価だけに原因を求めるものではありませんが、建設業界の聞き取り調査を行い、その意見もぜひ取り入れていただきたいと思います。
それでは、知事にお伺いをいたします。
建設業界のデフレの原因についてどのように思われますか。知事がつくった設計単価の決定方法ではありませんが、この際、和歌山県方式と銘打って仁坂知事独自の決定方法を検討してみてはいかがですか。お答え願います。
次に、県土整備部長に3点お伺いいたします。
1つ、現在の設計単価の決定方法をどう思いますか。2つ、設計単価の変動についてお答えください。3つ、この設計単価の決定方法は法律で決められているのですか。御答弁をお願いいたします。
次に、身体障害福祉対策についてお伺いをいたします。
最初に、御坊駅の段差解消についてお伺いをいたします。
御坊駅と紀伊田辺駅は紀勢本線の中でも大変特異な特徴を持った駅であります。それは、各駅停車の乗り継ぎ駅だからであります。両駅は、各駅電車は通勤時間帯を除くとほとんどの電車で1度下車し、乗り継がなくてはなりません。
そこで、今回の質問の趣旨になるわけですが、御坊駅以南の特急のとまらない駅から乗車して和歌山方面に行くとき、特急列車に乗りかえるときはもちろん、そのまま各駅停車で御坊駅の次の紀伊内原駅に行くときでも御坊駅で一たん乗り継がなくてはなりません。そこで問題が生じています。体の御不自由な方、特に車いすの方や目の御不自由な方にとって大変な脅威と不便をかける駅となっています。ホームとの段差が大きいために訓練を受けた盲導犬が電車からおりようとせず、立ち往生するというのです。
また、電車とホームの間隔が広いため、つえが入ってしまって怖くておりられないそうです。しかも、2番線、3番線に到着するので、駅員の方も気づきにくいということ。仕方がないので、近くの方に助けられて乗降しているとお聞きいたしました。
冒頭述べましたが、仁坂県政はあたたかい改革をさきの選挙でお訴えになったのですから、障害者の立場に立って御坊駅が乗り継ぎ駅だということを強く御認識いただき、一刻も早く段差解消にお力添えをいただきたいと思います。
そこで、企画部長にお尋ねいたします。
御坊駅の段差解消の今後の見通しと対応についてお答えください。
次に、障害者用の駐車スペースについてお尋ねをいたします。
最近、車いすがかかれた青い駐車スペースがふえてまいりました。公共施設は当然のことですが、民間のスーパーや営業店等でも随分御配慮をいただき、喜んでいます。この障害者用スペースのさらなる普及について福祉保健部長にお伺いをいたします。
また、このスペースに障害者の方が駐車しようとしても置けない場合があるとお聞きいたしました。しばらくあくのを待っていると、障害者ではなく健常者の方が駐車していることもよく目にするとお伺いをいたしました。とても残念なことでありますが、県当局はこの駐車スペースの啓発について県民に対し、どのような対策をとられているのか、あわせて福祉保健部長にお伺いをいたします。
次に、重い障害があるために収入が限られ、生活保護を余儀なくされている方が保有を認められている車の使用について、知事初め当局に強く要望いたします。
と申しますのは、例えば1級の障害者の方で定期的に病院に通院しなくてはならず、車の保有を認められているケースについてであります。この方にとっては、車は生命を維持していくために必要不可欠なものですから、当然、生活保護を受けていても保有を認めていただいています。しかし、この車の使用については大変厳しく、原則、病院の往復以外には認められていません。日用品の購入や地域の集会、選挙の投票所への移動にも使用は認められていません。
そこで、生活保護法の所管は厚生労働省ですから、適正で明確な使用マニュアルの設定と公共交通機関のおくれている和歌山県の紀南のような地域では現行制度を少し緩和させていただき、せめて日常生活用品の購入と選挙の投票ぐらいは車の使用を認めるように関係部局に働きかけていただきたいと思います。
次に、障害者手帳の提示による高速料金の割引についても要望をいたします。
現在、ETCをつけた障害者の所有する車は半額制度を適用されていますが、視力障害の方は自分の車を使用していませんし、ETCカードを所有していない方も多いし、車を所有している方でも、ETCの機種と車が登録制になっていて限定されていますから、もし善意の方の車に乗せて送ってもらった場合でもETC割引は適用されません。そんなときは身体障害者手帳を提示し、本人確認ができれば障害者割引ができるよう関係機関に要望していただきたいのです。
もう1点、高速サービスエリアでの身体障害者用トイレも利用しやすいように改修していただくよう、既に当局から関係機関に御要望いただいているとお聞きいたしておりますが、早期実現に引き続きよろしくお願いいたします。
次に、身体に重い障害のある方の選挙投票について選挙管理委員長に御所見をお伺いいたします。
現在、障害の種別と等級が重度の方に限り在宅郵便投票できますが、該当者の範囲が大変狭く限られていて、それ以外のかなり重いと思われる障害者の方には認められていません。私の地域でも、投票所までは約2キロメートルあり、視力や下肢に重い障害のある方にとってはとても歩いていける距離ではありません。
選挙の投票権は、日本国憲法により国民に与えられた最も尊重されなければならない権利と義務であると思います。在宅郵便投票は不正投票が行われるかもしれないという推定理由だけで重い障害のある方の投票権を制約しているのは、憲法の趣旨にのっとっていないとも思います。行こうと思えば行けるのではと健常者の方から見れば思われるかもしれませんが、特に視力や下肢の重い障害がある方で規定に入らない方にとっては、投票に行きたいけれど、やっぱり心と体の負担を考えるとやめておこうという気持ちになっても、それを責めることはできません。
数年前、手続が複雑でプライバシーの問題等国民から大変不評だった不在者投票制度が選挙期間中だれでも簡単に投票できる期日前投票制度に変わり、随分皆さんに喜ばれ、投票率向上にも貢献しています。その期日前投票と重い障害者の方の在宅郵便投票を制度的に比較してみても、重い障害者の方の在宅郵便投票の制約が厳し過ぎるのではと私は思います。もう少し障害者の在宅郵便投票の制度が見直され、国民の大切な権利である清き一票を投じることができるように制度改正に御尽力をいただきたいと思いますが、選挙管理委員会委員長のお考えをお伺いいたします。
次に、去る10月28日、私が委員長をさせていただいていますが、小川武副委員長、平木哲朗議員、須川倍行議員、岸本健議員、山下直也副議長、井出益弘議員、森礼子議員、松本貞次議員、奥村規子議員から成る人権・少子高齢化問題等対策特別委員会は、高知県議会を訪問し、高知県の中山間地域の課題と対策について意見交換をしてまいりました。
和歌山県と同じように、中山間部は過疎化と少子高齢化が進み、生活環境が激変し、住民生活が脅かされていると申されていました。地域の商店が消滅し、公共交通の撤退などによる生活環境が悪化、また施設の老朽化による水源確保の不安や、さらに病院や診療所の廃止により地域の医師不足が深刻化しているということでした。
和歌山県においても同じような悩みを持った中山間地域は少なからずあるのではないか。現在、顕在化していなくても間もなく厳しい生活環境になると予想される地域が県内にはかなりあると思います。中山間地域の過疎化と少子高齢化は山や森林の環境にも大きく影響を及ぼし、鳥獣害被害も年々深刻になる一方であります。中山間地域において住みなれた地域で安心して暮らし続けることができる生活環境を築くため、我が県においても今から対応を考えていく必要があると考えます。
今回、視察を終えて痛切に感じたことは、生活に最低限必要な物資の確保をどうするかということであります。高知県ではこうした状況に対応するため、高知県中山間地域安全安心サポート体制支援事業により、移動販売等に必要な車両の購入や改造及び附帯する部品購入等に要する経費に対し、補助制度を既に導入されていました。補助先は市町村、事業実施主体は市町村、団体、企業、任意団体等と幅広く、1台当たり1300万円を上限に補助率は4分の3以内、また、販売エリアが複数の市町村にまたがる地域では市町村が補助対象者とならない場合もあり、その場合は直接、団体、企業、任意団体等に3分の2を補助する制度であります。この制度は、食料品や日用雑貨などの提供とあわせて、見守り活動等を同時に行うこととなっています。
そこで、知事にお伺いをいたします。
過疎地域の生活の今後の安全保障について御所見をお伺いいたします。
企画部長にお伺いいたします。
過疎地域の買い物支援について、今後の対応をお伺いいたします。
しかし、このような食料品や日用雑貨の購入が困難な地域は、中山間地域だけではありません。先般、雑賀議員からも質問がありましたので、私からは要望とさせていただきますが、私の近くの美浜町など、比較的人口の多い市街地でも買い物弱者の問題が起こっています。地域密着型の中規模スーパーが進出したため、近所の商店が閉店され、やがて郊外に大型スーパーマーケットが進出してくると、地域密着型の中規模のスーパーが閉店されました。
そうすると、身近なところに食料品や日用雑貨を購入するところがなくなり、高齢者だけの家庭では、タクシーに乗って往復1000円以上も払って買い物に行かなくてはならない地域が出てきてしまったのです。県内の比較的市街地と言えるところでも実は核家族化が進み、子供たちは遠く離れて住んでいて、過疎地域より便利そうに見えるが、実は深刻な状況のところが現実としてあります。
そしてまた、今後さらにそういう地域がふえてくると予想されます。そうした実情を御認識いただき、当局の今後の対応を強く要望して、第1問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(山下直也君) ただいまの花田健吉君の質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、建設業界のデフレという点でございますが、消費者物価については引き続きデフレ傾向にあります。建設資材等も全国的な公共投資の減少による需要と供給のアンバランスからデフレ状態にあるということは否定できないと思います。
議員お話しの設計単価につきましては、従来から実勢単価を調査し、決定しております。しかしながら、設計単価は調査のやり方や発注時期との時間のずれ等により、実際に建設業者の方が購入する単価とある程度乖離があるということは認識しております。乖離があると認められる場合は速やかに適正な設計単価となるように努めてまいりましたし、引き続きそうしたいと考えております。
なお、本県では昨年12月に、ダンピング対策の充実を図るため最低制限価格の見直しを行いました。従来は、建設資材費などは営業努力で安く調達が可能であるという想定で積算をしておりましたが、それは議員御指摘にありましたように、大企業とか、あるいは中堅企業ぐらいだとひょっとしたらそれは可能だけれども、地方の中小企業はそういうことは無理だということが理論的にも、また調査をしましたのでよくわかりましたので、これについては見直しをしまして、人件費も含めて建設資材費は設計価格の100%を支払ったとしても赤字の出ないような積算方法に改めました。こういう点は、ある意味では和歌山方式であったんじゃないかというふうに考えております。
設計単価の独自の方式を検討してはどうかということなんですけれども、設計単価は取引の実例、価格を考慮して適正に定めなければならないわけでございます。それをどういうふうにして把握するかというのが結構難しくて、母数の関係で国の考え方に基本的には依拠しております。それが変わると我々も可及的速やかに対応していくということなんでございます。
ただし、先ほどの例にも明らかなように、明らかな事情があって和歌山県は別の算定方法をとるべきだということがきちんと説明できる場合は、それは配慮していきたいと思いますし、そういう考え方が和歌山方式になると考えております。
実際の取引単価が適正に設計単価に反映できるように私たちもいつも考えてまいりますけれども、産業界におかれましても、議員の先生方におかれましても、どんどん意見、提言を賜りたいと、そう考えております。
次に、過疎の問題でございますが、過疎地域につきましては、急激な人口減少の中で高齢化が進展し、集落機能の維持が困難となるなど、生活環境上多くの課題を抱えております。
私は、県下各町をくまなく見て回りました際に、日用品の確保に苦労されていること、通院に多額の費用がかかること、鳥獣被害が想像以上であること、不安な気持ちで御高齢の方がお一人で暮らしていることなどさまざまな深刻で切実な悩みに接し、改めて県民だれ一人として見捨てないようにしようという思いを強くしました。
このため、これまでも高齢者の見回りとか防災無線の配布とか努力をしてまいりましたが、特に今年度から取り組んでいるわかやま版「過疎集落支援総合対策」を初め、今申し上げました見守りあるいは生活交通対策、それから鳥獣害対策、生活基盤の整備や防災対策などハード・ソフト両面からさまざまな施策を結集して、過疎地域で生活する方々が住みなれた地域で安全かつ安心して暮らせるように、生活環境を築くことに全力で取り組んでまいりたいと思います。
23年度新政策におきましても、これまでそういう観点から積み重ねてまいったんですが、選挙の際の知見も踏まえましてさらに改善を図ってまいりたいと考えております。
○副議長(山下直也君) 県土整備部長原 広之君。
〔原 広之君、登壇〕
○県土整備部長(原 広之君) 設計単価の決定方法についてでございますが、資材等の設計単価は専門の調査機関の調査結果を採用しているところでございます。具体的には、実際の県内の流通価格を調査し、原則として最も頻度の高い価格を設計単価として採用しております。
設計単価は、調査対象の抽出方法や調査の頻度あるいは調査の範囲、あるいは調査時期と発注時期の時間のずれ等により、個々の取引価格とある程度乖離が生じることは認識してございます。乖離が大きい場合には原因を分析、検証して適正な設計価格となるよう努めてまいります。
次に、設計単価の変動についてでございますが、主要な労務費及び資材単価を10年前と比較しますと、普通作業員単価は約1割の下落、生コンクリート単価はほぼ同水準、アスファルトコンクリート単価は2割程度の上昇、ヒューム管などのコンクリート二次製品単価は製品によって上昇下落の変動が見られます。
次に、設計単価決定における法的根拠についてでございますが、公共工事の発注に際しては予定価格を算出しております。この予定価格は、県財務規則で、契約の目的となる物件について、「取引の実例、価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない」と規定されております。したがいまして、この予定価格の算出に必要な設計単価についても、同様の規則に従い、決定することとしております。
以上でございます。
○副議長(山下直也君) 企画部長柏原康文君。
〔柏原康文君、登壇〕
○企画部長(柏原康文君) 御坊駅の段差解消についてでございますが、駅のホームと列車との段差解消について、JR西日本によりますと、段差の大きさや介助できる駅員の体制などを総合的に勘案の上、計画的に順次工事を実施しているところであり、議員の御指摘の御坊駅につきましては、現在の計画では平成25年度以降とのことです。
県といたしましても、鉄道を利用される皆さんに安心して御利用いただくため、できるだけ早い時期での段差解消をJR西日本に働きかけてまいります。
次に、過疎地域の買い物支援についてでございますが、過疎地域におきましては、急激な購買者の減少や後継者不足などから小売店舗が減少しており、車を運転しない高齢者を中心に日常の買い物に不便を感じている方が増加していることから、いわゆる買い物弱者対策が大きな課題の1つとなっています。
このため、今年度から実施している過疎集落支援総合対策の取り組みでは、住民の方との話し合いの場である寄合会において日常生活品の買い物方法などもお聞きしています。移動販売を利用する方、コミュニティーバスを利用して周辺の商店に買い物に行かれる方、買い物代行サービスを利用される方など、さまざまな形態で日用品を購入されているとのことです。
いずれにいたしましても、過疎地域にお住まいの方の買い物を初めとする生活機能を確保することは大きなテーマでありますので、地域の実態と寄り合いで出た住民の方の意見を踏まえて、関係市町村とも十分連携を図りながら積極的に支援をしてまいります。
以上でございます。
○副議長(山下直也君) 福祉保健部長西上邦雄君。
〔西上邦雄君、登壇〕
○福祉保健部長(西上邦雄君) 障害者用駐車スペースの普及と啓発についてお答え申し上げます。
車いす使用者のための駐車スペースの確保は、障害のある方にとって日常生活を行う上で非常に重要なことでありますので、平成18年に福祉のまちづくり条例を改正いたしまして車いす使用者用駐車区画の設置必要数を大幅に拡大するとともに、平成21年7月には駐車区画をわかりやすくするための青色塗装を義務化したところであります。それとともに、コンビニエンスストアなどの民間事業者や市町村などに対しまして駐車区画の設置を働きかけるなど、駐車スペースの確保に取り組んできております。
また、県民の皆様にも駐車区画の適正利用を御理解いただくために、県内各地域で街頭啓発を行っておりまして、今年度も障害者週間を中心にしまして、大型スーパーや公共施設などにおきまして50回以上の啓発活動を実施したところでございます。
さらに、「県民の友」への啓発記事の掲載や、8月からはテレビ広報番組「県民チャンネル」でも継続して適正利用を呼びかけているところです。加えまして、企業における研修会にも参加をいたしまして適正利用についての認識を深めていただいているほか、県警本部とも連携をいたしまして、運転免許証の更新時に啓発用のリーフレットを配布するなどの取り組みも進めております。今後ともさまざまな機会をとらえまして、駐車スペースの確保とその適正利用の啓発に力を入れてまいります。
以上でございます。
○副議長(山下直也君) 選挙管理委員会委員長諸木良介君。
〔諸木良介君、登壇〕
○選挙管理委員会委員長(諸木良介君) 身体障害者の郵便による不在者投票についてお答えをいたします。
郵便による不在者投票は、身体に重度の障害がある選挙人が市町村の選挙管理委員会に投票用紙を請求し、自宅に郵送された投票用紙に記載した上、郵送で返送する制度でございます。一般的な投票所における投票と異なり、投票管理者や投票立会人のいない自宅で投票の記載を行う制度であり、対象者及び手続については公職選挙法及び同法施行令で具体的に定められております。
なお、障害者の投票環境向上に関する方策全般について、現在、国において有識者による検討会が設置され、幅広く議論がなされているところでございます。選挙管理委員会といたしましては、これら国の施策、動向を注視するとともに、だれもが投票しやすい環境の整備について今後とも市町村選挙管理委員会とも連携し、取り組んでまいりたいと存じてございます。
以上でございます。
○副議長(山下直也君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(山下直也君) 再質問を許します。
11番花田健吉君。
○花田健吉君 御答弁いただきまして、ありがとうございます。再質問ではありません。要望で何点かお願いしたいと思います。
まず、先ほど詳しい数字はあんまり述べなかったんですけども、建設業界のこういう統計の推移がずうっとありますね。それで、国勢調査をもとにしておりますので、17年に国勢調査をやっておりますので、22年まで待たなくてはなりませんが、その17年のときの統計を見ても、建設業界数が6222社──これは県で確認している業者かな。それとも、していないか、ちょっとこれ載っていないんですけども──それが今多分5000数百社とちょっと当局にお聞きしているんですが、その当時の統計はないんですけども、平成19年に法人事業税が28億3000万、年々減ってきて、今26億6000万ぐらいに減ってきているわけですけども──ごめんなさい。これは法人税を納めている業者の数です──2800から2600ぐらいまで今減少しています。
これ、なぜこんなことになってくるのかなと。公共事業というのはある程度利益を担保されている。そしてまたそこで、何遍も申し上げますように、雇用とか景気対策とかといういろんな附帯する効果も当然公共事業には求められているはずでありますのに、こうして法人事業税ですら登録業者の半分ぐらいしか納められない状況というのは、これはどういう分析をされるのか。今後、当局におかれましても分析をしていただいて、できるだけ──全社とは言いませんけども、本当は全社ですけど、みんなやっぱりもうけていただいて法人事業税も我が県に納めていただけると。これが一番正常な姿だと思いますが、それに近づけるように当局にもぜひ分析と、そしてまた対応もお願いしたいと思います。
それと、御坊駅ですけども、今、平成25年以降ということで、この以降というのは一体30年か35年ですかということになってくると思うので、そういうあれではなくて、1年でも早く段差解消に取り組んでいただくように当局からも関係──JR西日本ですけども、そちらのほうにお願いをしてもらいたい。本当にあそこは特異なというか、皆さんのわからない──あそこはまだエレベーターもなければエスカレーターもありません。障害者にとってまだバリアフリーがされていない駅ではありますが、その中でも、階段を上り下りする以前に電車からおりる、おりられないというこんな状況というのを一日も早く、一刻も早く解消してもらいたい。
先ほども申し上げましたように、御坊駅というのは、必ず各駅停車はそこでとまっておりなくてはならない。始発駅であって終着駅、乗り継ぎ駅という3つの要点を持っております。それですから、ぜひ御坊駅の段差解消について一年でも早く解消していただくように、当局からもさらなる働きかけをしていただきたいと思います。
もう1点、選挙の件ですけども、選挙というのは、もう皆さん御承知のとおりです。本当は全員に投票してもらいたいし、もらわなくてはならない本当の我々日本国民の固有の権利であります。海外に住んでおられる方も多分郵便投票されているはずでありますが、その郵便投票制度から見ますと、今言うたように、障害者の方が自宅で投票するのと、海外に長期出張されている方が投票するのと、いかほど違いがあるのかと。少し障害者に対して冷たくはないかということを私は思います。
私も少し足が不自由ですけども、この私ですらやはりぱっと来る──さっきの障害者スペースの件も重なってきますけども、やはりおりて歩くということのプレッシャーに対しては、障害者は物すごくプレッシャーを感じているんです。皆さんが1キロ歩くなんていうのは、きょうは天気がええから歩いてみようかなんていうような気分になるかもわかりませんけども、私たち障害者はなかなかそんな気分にはなれません。できるだけ短く、できるだけ負担を少なくというのが障害者の心理だろうと僕は思うんです。そういうときに、この国民の、本当にこういう国政も県政も市町村政も、これ直接かかわるこういう投票行動に対して、もう少し投票制度が緩和されてもいいのではないかというふうに思います。
以上、強く当局に要望いたしまして質問を終わります。ありがとうございました。
○副議長(山下直也君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で花田健吉君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
41番山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 おはようございます。今議会も張り切って質問させていただきたいと思います。
仁坂知事、2期目の当選おめでとうございます。この厳しい時代に県政のかじ取りは本当に大変かと思いますが、和歌山県のため尽力いただけますことを心から祈念いたします。
それでは、早速ではありますが、議長のお許しをいただきました。通告に従いまして、質問を順次させていただきます。
まず最初に、中国山東省との未来へ向けた関係構築、和歌山県の戦略についてお尋ねいたします。
今、緊張関係にあるこの東アジアにおいて、中でも特に中国との関係については、和歌山県として山東省と友好提携を結び、これまでその関係を深めてくる中では、今後のかじ取りが注目されるものとなります。そんな中、この12月3日に第6回を数える和歌山・山東省の企業商談会が開かれました。この商談会には和歌山県内の企業の皆さん、そして、主催となる和歌山県中小企業団体中央会から山下雅生会長を初め事務局の皆さん、また和歌山県からは商工観光労働部の岡本部長と企業振興課・山下課長補佐が参加される中、私も同行してまいりました。
その報告とともに、あわせて今後中国とどのような関係を構築していこうとするか、和歌山県としての中国戦略、山東省への対応などを含めて県の姿勢について知事の御認識をお伺いしたいと思います。
この商談会は、平成19年7月に和歌山県商工観光労働部、和歌山県中小企業団体中央会及び山東省商務庁の3者の間で交わされた経済協力枠組み覚書に基づき、山東省との経済交流の一環として開催されているものです。平成17年度から毎年定期的に開催されており、今回で通算6回目となり、本県からは化学工業、食品業、飲食業、アパレル業など12社が参加し、12月3日、山東省済南市のソフィテル・シルバープラザ済南で開催されました。
今回の商談会について日程を追ってその内容を少し御紹介させていただくと、12月2日、関空から9時25分発、上海行きの飛行機で出発。上海経由で空路済南へ入る行程で、夕方には到着する予定でした。しかし、上海空港で済南行きの便が3時間おくれるというトラブルがあり、商談会が行われるホテルに到着できたのは午後8時を過ぎた時間でありましたが、山東省政府の皆さんには大変お待たせをすることになりました。
しかし、その後の予定は変更なく行われ、山東省政府主催の歓迎レセプションでは山東省商務庁の閻兆万副庁長と山東省アジア処の李処長を初め、関係者の皆さんからごあいさつを受け、名刺交換、次の日から始まる商談会の打ち合わせなどを行いました。
翌12月3日、商談会当日は8時30分に参加企業の皆さん、そして通訳の方とも合流し、9時からオープニングセレモニーに臨み、その後は終日商談会が開催されました。
今回の商談会では、これまでの経験を生かして企業間の事前調整に力を入れ、参加企業のヒアリングを綿密に行ったことで、和歌山側の企業が求める中国企業とのマッチングもスムーズにいき、それぞれの企業ブースでは活発な面談が行われていました。商談会終了後に参加企業の皆さんから直接お話をお聞きしたところ、商談会の内容として実りある話ができたと喜ばれている企業が多く、例年以上の成果が上がり、今後の展開に期待が持てるということでした。
今回初めて参加されたノカミモータースの中村社長の話では、自動車販売が好調な中国では車への関心が非常に高く、部品やパーツを掲載したパンフレットも早々になくなってしまい、日本、和歌山での感覚とは全く違うと話されていました。ブースにも人だかりができていて、いろんな引き合いがあり、そんな中、山東省政府からも、当初は予定になかった済南市内の自動車テーマパークへ行き、商談とあわせて新たなビジネスについても何か考えがあればアドバイスしてもらいたいと急遽要請されるなど、山東省政府の力の入れようにも感心したということでした。
今回の商談会では現在の東アジアが緊張する状況の影響は感じられず、参加企業数としても、和歌山側からは12社なのに対して、中国側からは86社と過去最高の参加となっていました。
次の日は帰国日で、午前5時にホテルロビーに集合、その後、済南空港へ移動、直行便を利用して空路関西国際空港、そして和歌山への帰路につきました。
強行軍での商談会で、また緊張の高まるこのタイミングでしたので少しの心配もありましたが、しかし、実際に私自身も現場に立ち会い、その様子をつぶさに観察してきましたが、まさに政冷経熱を地で行く商談会であり、大きな成果があったものと思います。
近年は豊富な労働力と技術力の向上により急速に中国経済は発展し、また富裕層も増加し続ける中、新たな市場としても、製造業のみならずサービスなどの分野でもさまざまなビジネスチャンスが期待できる状況が生まれています。日々変化の著しい中国経済にどう対処していくのか、和歌山県としての基本的な姿勢が問われるものとなります。
私自身、今回、日中を初め東アジアでの緊張が続く中で中国の商談会に同行し、身をもってその現実を見てくる中で、改めてさまざまな発見もあり、勉強する機会ともなったのですが、それらは今後の政策づくりにも生かしていきたいと思っています。
今回の商談会で1つだけ、特にノカミモータースの中村社長のお話をお聞きして、改めて感じたことがありました。中村社長が足を運んだ済南の自動車テーマパークというのは、日本で言う販売店の大規模版ですが、和歌山での自動車販売店では想像できない規模だということで、ベンツからBMW、トヨタのレクサスからフォルクスワーゲンまで一手に販売をしている自動車の遊園地のようなところだったそうです。そこでは新車販売から自動車のメンテナンスまで車に関するすべてのサービスを提供していて、中村社長いわく、最初は自動車整備でまだまだ中国では対応し切れないことも多いだろうからいろいろとアドバイスをしようと考えていたが、自動車のメンテナンスの設備は、和歌山のみならず関西でも同規模のものはなく、また設備としても最新鋭の設備を惜しみなく導入しており、本当に驚いたということでした。
この話から改めて感じることは、中国経済の今は規模、質ともにさらにグレードアップしていて、これまでのように、人口が多い分だけ経済規模、GDPも大きいが中身的にはまだまだ経済の三流国といったことではもはやなく、その経済の内容としても日本を凌駕する状態まで来ていて、これには日本としても相当な危機感を持たなくてはいけないと強く感じました。しかし、日本としても絶対的優位な分野はまだあるわけで、10年後はわかりませんが、今なら中国経済に食い込める余地は十分にあるのだと思います。
日本は、今、我々の世代のことだけでなく次の時代を考えても、世界の中、またアジアの中で一流国として生き残らなければならないわけで、そこでは単に中国を疎んじ遠ざけるだけでなく、リスクは十分に管理しながらもしたたかに戦略を練り、自分たちの利益をどのように確保していくのか、今真剣に考えなくてはいけないときだと思います。そういった中で、今後、和歌山県として中国との関係、山東省との関係をどのように構築していくのか。和歌山県の対中国、対アジア戦略が改めて問われるものとなります。
そこで知事にお伺いいたしますが、まず、これまで県が進めてきた中国山東省への取り組みでは、それぞれの担当の皆さんを初め、多くの関係者の御努力で今日まで来ているわけですが、これまでの取り組みをどのように評価され、また、今、中国との関係が緊張する状況についてどういった現状認識を持たれているか。また、あわせて今後中国との関係がどのようになっていくと推察されているか、お答えください。
また、そういった中で、今後、和歌山県として特に山東省との関係についてどういった姿勢で臨まれようとしているか。それぞれの都道府県の取り組みとしては、中国のカントリーリスクを重視し、消極的な姿勢を示しているところもあるようですし、また、逆にこれまでの交流をさらに活発化させようとしている地域も見受けられます。和歌山県としてどういった姿勢で臨まれるか、御所見を賜りたいと思います。
次に、関西広域連合の発足から新しい地域の形を考える、足元の和歌山県、和歌山市の連携についてお尋ねいたします。
関西広域連合がいよいよ発足いたしました。関西広域連合に関しての議論は、私自身、これまでもこの議会で何度も繰り返し行ってきたところであり、今議会では直接的に広域連合に係る質問ではなく、もう少し大きな視点で行政権限、その枠組みといったことについて幾つかの提言並びに質問をさせていただきたいと思います。
今回の関西広域連合設立のねらいとしては、遅々として進まない国の地方分権改革を促す政治的な意味も大きいものであり、連合長への就任が決まった兵庫県の井戸敏三知事も、今回の広域連合はそもそも国に分権を強く迫る仕掛けだと強調し、また大阪府の橋下知事も、権限移譲に抵抗する霞ケ関の言いわけをはね返せるものと期待を寄せています。
そこでは、国と地方、また地方においても都道府県と市町村との権限の新たな調整が必要となり、そこではこの広域連合の取り組みも含めて我々が今進めているのは新たな国づくりだという認識が不可欠だと考えます。この国の形をどういったものにしていくのか。今、日本社会は少子高齢化の進展、長引くデフレ経済など、財政状況はますます厳しくなり、そこではこれまでの発想にとらわれない新たな枠組みづくりが求められます。
財政規模が縮小する中でも行政サービスの質を落とさず、住民の満足度を低下させないためには、それこそ知恵のある行政の実現が必要で、地域においても県と市町村がそれぞれに行ってきた行政サービスのあり方そのものをもう一度抜本的に見直す時期に来ているのだと思います。当然のこととして、行政サービスの受け手となる住民にとって、その提供者が国である、県である、市である、そういったことは関係なく、一番効率的に一番効果的に成果の上がる方法で税金が使われることこそが望まれています。
そんな中、関西広域連合を和歌山県とともに積極的に推進してきた大阪府では、今、広域の取り組みを進めるとともに、足元の行政のあり方をもう一度根本的に見直そうという試みが進められています。「府と市を合わせて不幸せ」とやゆされてきた大阪のあり方を考え直そうと、大阪府の橋下知事は大阪府と大阪市の行政の二重構造を極力なくしていくその打開策として大阪都構想を訴えています。
大阪では、府民体育館と市民体育館など府立と市立の重複施設が数多くあり、それらが行政の無駄遣いの温床になっていると指摘されています。また、公共交通網の整備や空港や港湾施設の整備などの事業でも府と市の調整がうまくいかず、こうしたことが大阪の停滞を招いている元凶と言われてきました。
そういった状況の中で、大阪府の橋下知事が推進する大阪都構想については府民の多くも理解を示し、朝日新聞と朝日放送が共同で行った世論調査によると、反対28%なのに対して賛成43%となり、賛成する府民が反対派を大きく上回る状況が生まれています。
そんな中、和歌山県としても特に中核市としての権限を有する和歌山市との間では、いま一度行政サービスのあり方を見直し、それに伴う事業再編、マネジメント統合などを真剣に議論するタイミングであり、県・市において新たな枠組み、執行体制自体も見直す取り組みを検討する時期に来ていると思います。
和歌山県と和歌山市の連携については、私自身、県議会に初めて登壇させていただいたこの本会議場で、当時、木村知事でありましたが、県市連携の提言をさせていただきました。その後、当局としても、具体的な連携の取り組みとして和歌山県・和歌山市政策連携会議を設置し、毎年1回の割合で現在まで継続されてきています。
その状況を確認してみると、これまで両団体の副知事、副市長が出席する会議を年1回の割合で開催してきています。県市政策連携会議におけるこれまでの議題で主なものとしては、中心市街地の活性化、和大新駅の整備推進、追加インターチェンジの設置、和歌山大学の観光学部の設置促進、内川の河川環境、景観条例の制定、第70回国民体育大会の開催、第2阪和道と国道26号線を結ぶ新規都市計画道路の事業化についてなどとなっています。
このほか、各年度で話し合われた議題とその議論された内容まですべてを確認させていただきましたが、しかし、それらはそれぞれの担当課同士でも従来から調整してきている延長線上の話であり、もっと成果を上げられる仕組みに変えていく必要があります。
今、こういった連携会議において必要とされているのは、事業効果や便益を最大化するためのガチンコによる県から市へ、また逆に市から県へのものも含めて思い切った権限の移譲やマネジメントの統合、できれば将来的には予算統合も含めた事業整理や行政サービスの向上を目指しての徹底した効率化論議など、真剣勝負の県市の議論が求められているのだと思います。
現状において県市がもっと連携して効果を上げるべき事業、県民からも疑問の声が上がるものとして幾つかあります。そんな中、特に今回は和歌山県、和歌山市のシンボルともなる和歌山城の周辺整備、和歌山城を囲む歩道整備について1つの例として取り上げさせていただきます。
この和歌山城の周囲というのは、多くの県民の皆さんが散歩やジョギングで親しんでいる場所ですが、先日、現状の整備状況はおかしいのではないか、行政の感覚を疑うとある県民の方から指摘され、私自身、改めて確認してまいりました。
和歌山城を一周する歩道について、その整備にはそれこそ行政の連携不足の問題が浮き彫りとなる現実があります。お手元にお配りしておりますが、この図面は和歌山城の周囲をあらわすものであります。
まず、この西側の道路は国道となっています。そして、北側の道路は県道、東側が市道で、南側がまた県道といった整備状況です。和歌山城といった視点でだれもコントロールすることなく、それぞれに道路の管理者に任せて全くばらばらの整備をしてきた結果、街路灯もばらばら、歩道もばらばら、その整備の統一感もなく、それぞれの歩道の趣もばらばらになってしまっていて、観光客のみならず、このお城を散策し、お城の周りを一周する市民、県民にとっても違和感のあるものとなっています。
特に夜の状況はひどいもので、例えば夏場に少し涼しくなった日暮れ後にお城を一周ジョギングしようとすると、歩道ごとの照度の違いは相当なもので、明るさの違いというのはかなり決定的に違いのあるもので、危険も感じるような状況です。残念ながら、東京の皇居のように夜のジョギングを楽しめない状況ということです。私も改めて一周してきましたが、まさにそのとおりでした。(パネルを示す)これがその和歌山城の周囲に今整備されている街路灯の写真でありますけれども、ちょうどこの上──右上が北側の歩道で、その下が南側で、左上が東側の市道になっていて、下が西側の国道の街路灯です。
西側は道路だけを照らす背の高い街路灯で、基本的には日暮れ後の歩道は相当暗い状況になります。南側は県道で三年坂の通りですが、歩道側を照らす街路灯があるので、それなりに照度は保たれています。東側も街路灯がありますが、間隔が結構開いているので、照度にばらつきがあります。北側に回ってくると、ここは南側のちょうど市役所前の通りですけれども、背の高い街路灯だけで、ちょうど県道になるんですけれども、しかも、間隔が物すごく広くとってあって、一の橋から汀丁交差点まで普通に歩いても暗くて非常に危険な状況になっています。
また、歩道自体もそれぞれの整備に統一されたものはなく、道路の管理者が変わるところでその材質、色も大きく違っており、調和がとれていません。(パネルを示す)これがその歩道の写真でありますけれども、この歩道において道路の管理者がそれぞれ違っている。こういった、それぞれちょっとばらばらの整備になっているんですね。これがちょうど市役所、市道になっているところの東側の歩道ですけれども、ちょっとつるっとしたような感じで、三年坂の通りが実はこれで、県道なんですけれども、三年坂からずっと例えばジョギングして走ってくると、雨上がりのときなんかはここを回って瀬藤病院のところを市道に入るんですけれども、この市道とちょっと材質が違って、これ、意識して走らないとちょっとつるっとするというような状況も実はあるそうです。
とにかく、こういったばらばらの整備になっているということについては非常に残念であり、しかし、これが和歌山を代表する観光スポットとなるお城の周囲の整備状況の現実です。
これはあくまで一例として取り上げたものですが、行政同士がもっと協力することで地域の魅力を増し、また行政コストを下げ、またもっと成果の上がる事業にできる事例はほかにも数多くあるのだと思います。関西広域連合も発足した今、私たちの足元においてももう一度これまでの行政サービスを提供する仕組み、そのあり方を根本から見直していく作業が必要だと思います。
そこで、県市政策連携会議を担当されている企画部長にお尋ねいたしますが、まず、現在の県市の協調する状況について、その現状認識をお聞かせください。
また、私自身としては、現在の県市協調の取り組みは不十分で、特に県と市が同じ地域で行政サービスを執行していく上では、今の厳しい時代だからこそもっとその効果、効率を考えていくべきだと考えます。県市が調整、協力した上での成果といったことを考えると、予算執行上の効率化、事業実施における便益の向上、事業効果の増大など、どういった成果が上がっているのかといったことが重要であり、単に連携していますといったことでは、従来の県市の関係でもそれらは担当課においてやられてきたことであります。今後はさらにその連携体制を深め、連携による成果をどのように実のあるものとしていけるのか、工夫していく必要があると思います。
そこで、現在の県市協調の取り組みにおける課題と今後の改善策についてどのように考えておられるのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
また、現在設置されている県市政策連携会議の推進に当たって、今後の改善の具体策について、例えば現在は県市で協力するといったことを取り決めているだけで、その後のフォローもされていない状況です。少なくとも1年間の協力する取り組みを進めた後は、その成果がどうであったのか分析、評価し、それを次年度につなげていくことが必要で、また、それらの内容を県民向けにも公表していく仕組みも必要と考えますが、どのように考えられるか。
また、特に今回取り上げた和歌山城の周辺整備などでは、本来は歩道、街路灯などでは統一感を持たせるものとしてストーリー性も演出し、魅力アップが図れたはずです。そのためのマネジメント、執行体制の統合などを図るところから執行予算の軽減も図れた可能性もあり、もっと連携の効果を上げるべきだったと強く感じます。こういった例から考えても、今後の取り組みとして、現況で仕事内容が重複する業務について、例えば和歌山市にある県立図書館と市立図書館、文化ホールとして県文と市民会館など数え上げれば切りがないくらいに統合できそうな事業があると思いますが、それらについて思い切ってマネジメントの一本化、執行体制の統合など進めていく必要があると考えます。
ある事業については和歌山市に移譲して和歌山市が責任を持って政策推進を行う、また、ある事業については県が事業のすべてを引き受けて予算を和歌山市から受託して事業実施に当たるなど、新たな連携の模索が必要だと考えますが、県市における事業統合、マネジメント、執行体制の統合といったことについてどう考えられるか、認識をお伺いいたします。
最後の質問項目ですが、本質的な和歌山教育の改善に係る提言について。
私自身、これまでこの県議会で、和歌山教育、学校のあり方、その役割といったことについて何度も議論してきました。そこでは、学校の中だけで完結させる狭い視野を持つことなく、学校はあくまで社会に出る準備期間であり、子供たちが将来社会に出る状況を見通して、その手助けを行っていく、そして厳しい社会に出てもしっかりと対応できる力を身につけた子供を何としても育てたいといった強い思いを持って取り組んできたところです。
今、特に就職氷河期と言われる状況で、子供たちがこの日本で社会に出て働く場を見つけること自体が大変厳しい状況にあり、しかも、それはことしに限ったものではなくて、国内市場の縮小、国内産業の空洞化など構造的な問題がその根底にある中では、来年、再来年と今後もさらに厳しい就職環境が続くと予測され、そういった状況においては根本的にどういった教育によって真に生き抜く力を持った人材を育てられるか、日本教育そのものが見直されなくてはならない状況にあります。
そこで、今回は、今教育のあり方が問い直される中、公立、私学のあり方も含め、子供たちにとってどういった教育環境が必要とされているのか、これまでの既成概念を超えた今の時代に必要とされる理想の学校の姿といったことを私なりに提案させていただきたいと思っています。
私自身、3年前にあるテレビ番組を見て学校教育のあり方そのものを考えさせられる大きな衝撃を受けました。それは村上龍さんが企画、構成、そして司会も務める「カンブリア宮殿」という番組ですが、そこで取り上げられたある学校の再生物語にこれからの日本の教育を根本的に見直すべき重要なポイントがあると感じました。その紹介された学校というのは品川女子学院という学校です。かなり前には山口百恵さんが通っていた学校としても有名になりましたが、今はそのころの学校からさま変わりして、学校の取り組み自体が社会の大きな注目を集めるものとなっています。
この品川女子学院は80年以上の歴史を誇る中高一貫校ですが、20年ほど前には廃校の危機もささやかれる学校となっていました。しかし、その後わずかの期間で出願者が数十倍に急増し、偏差値も測定不能な状況から急上昇して東京大学への現役合格者も輩出する、今や教育の大激戦区となっている東京にあって有数の人気校へと変貌しています。
なぜ学校を再生できたのか。品川女子学院の生徒や教員がなぜ生き生きと明るく、やる気に満ち、教育界で大きな注目を浴びるようになったのか。わずかの期間で偏差値を飛躍的に向上させ、地域屈指の人気校になった秘密はどこにあるのか。その根底には今の日本教育が抱える大きな問題点を解決させる重要なヒントが隠されていて、その取り組みは和歌山教育も大きく前進させてくれると期待するものです。
私自身、3年越しにこの学校を調査したいと思っていたのですが、先日、その念願がかない、やっと現場に伺わせてもらうことができました。校長先生と教頭先生に直接のお話を伺い、学校も見学させていただいてきましたので、今回の質問ではその品川女子学院に調査に行き、その改革のキーマンとなった人物からお話をお聞きした内容を含めて、新たな和歌山教育への提言とさせていただきたいと思います。
品川女子学院の再生、学校改革、教育の改革は現在の6代目校長、漆紫穂子さんがスタートさせたものです。(パネルを示す)この写真の左側の女性です、漆紫穂子さん。まだお若い方です。昭和36年生まれの現在49歳、まだまだ若い経営者であり、学校長であります。それと、これが畑尾教頭先生。教頭先生からも改革の中身というのをじっくり聞かせていただきました。
畑尾教頭先生の話では、品川女子学院は特別に他校から先生を引き抜いたりコンサルに入ってもらったということはなく、いろいろな改革は漆校長先生が先頭に立って試行錯誤を繰り返しつつ、みずからやり遂げたものだということです。人は入れかえず、しかしながら、結果的にパフォーマンスを劇的に向上させた、それはモチベーションのスイッチが入ったということだと説明を受けました。これがこの品川女子学院を語る上でキーワードとなるものですが、やる気のスイッチが入る。それは子供たちの変化も学校の変革においても同じで、内発的な動機がない限り、内発的な、みずから、内側から生まれてくる動機がない限り人は変わることはないという漆先生の信念でもあります。
まず、モチベーションのスイッチを入れるための環境を整える第一歩として学校改革について。
そのポイントは、学校として教育目標の明確化、そしてその共有化を徹底させることだということです。よい学校づくりは、まずその学校として教職員全員を巻き込んでミッション、ビジョン、バリューを一緒につくることだと言います。
品川女子学院での取り組みを追ってみると、まず学校として何を目標とすべきかを明確にするために学校の設立当初から現在まで取り組んできたものをすべて洗い直して整理し、そうすることで学校が目指す方向が見えてくる。その後、全教員に学校として何を目標にすべきかを考えてもらい、ミッションをつくり上げ、そして、そのミッションを実現するため学校として10年後の姿、ビジョンをつくり、そのミッション、ビジョンの2つを実現していくための判断のよりどころとなるバリューをつくったということです。
そして、この3つは「私たちの生き方 品川女子学院 ミッションステートメント」として1枚のリーフレットにまとめています。お手元の資料、3枚目になります。品川女子学院のミッションステートメント、お配りしておりますので、内容を御確認いただくと理解が深まると思います。このミッションステートメントは、品川女子学院におけるすべての行動の基礎になるものです。
このように、学校の体制をまずは整えた上で、その後さまざまな取り組みを行っていったわけですが、その代表的な取り組みが28プロジェクト──これ別に大したものじゃないですが、(パネルを示す)皆さんの意識に残してもらいたいと思います。「28プロジェクト」と言われるものは品川女子学院の特徴的な取り組みとしてマスコミなどでもよく取り上げられているものですが、その意味は、学校を卒業し大学に進学する18歳を目標にするのではなく、そのずっと先の28歳になったときの生徒が理想とするみずからの姿を明確にイメージさせ、それを目標として未来から逆算して今何をすべきかを考えさせるというものです。
未来から逆算する視野を持つと、おのずと、これは必要、これは不要と取捨選択の軸がはっきりして優先順位が決まってくる。生徒も今と未来がつながっていることに気づき、今は面倒だと感じることにもモチベーションが保てるようになると言います。子供たち自身の未来をしっかりと見詰めさせたライフプランづくりが28プロジェクトであり、品川女子学院の哲学となっています。
この28プロジェクトをベースにして品川女子学院が目指しているのは、だれもが持っているやる気のスイッチを入れること。最初にも少し触れましたが、やる気のスイッチを入れることが何より大切であり、漆校長いわく、やる気のスイッチが入るポイントは自分のやりたいこと、目標が見つかったときだということです。
しかし、簡単にやりたいことや目標は見つかりませんから、そのためにとにかく好きなことややりたいことに出会えるような体験の場を学校として提供していく、徹底して体験の場を提供していくということです。品川女子学院では、徹底して企業とのコラボレーションや企業体験プログラム、大学との連携などを通じて社会人や大学生と接する機会を設けています。これはもう公立、私学問わず、日本国じゅう学校でちょっとはやっていることです。でも、哲学を持って、これが子供たちにどういう影響を与えるのか、社会と接点を持たすことがどういう影響をもたらせるのかということを確信的にやって、それをしっかりと進めるということが実はポイントです。
仕事で生き生きとしている人と接すると、その人へのあこがれが生まれる。そうした中で、この人は格好いい、こんな仕事があるのかと生徒に具体的にイメージしてもらえたら、それが勉強のモチベーションとなる。例えばマーケティングの仕事には心理学の勉強が必要で、数学は苦手だけど心理学の分野に進みたいのなら苦手な数学も頑張る、そうやって子供たちはみずから勉強に対しての姿勢を積極的なものとしていくということです。
品川女子学院の職員室の前には机がずらっと並んでいました。それは授業の合間や昼休みに生徒が自主的に先生に質問しに来るために設けているもので、休み時間はいつも生徒であふれていて、先生たち自身もどうしてここまでやる気になれるのかと不思議がるぐらいに子供たちの姿勢は際立っています。
あくまで子供たちのやる気のスイッチが入りやすい環境を整えること、それが学校の役割であり、それがあれば子供たちはみずから、自分の力で道を切り開いていく、押しつけても行動は変わらないと漆先生は繰り返します。環境が変わるとスイッチが入って、結果として行動が変わる。まずは環境を整えてやること、「北風と太陽」の童話のとおり、押しつけるのではなく、やりたくなるきっかけ、環境をつくっていくのが学校の責任だと話されていました。
この品川女子学院では、28プロジェクトで社会とのかかわりを明確に持たせ、そこからやる気のスイッチが入りやすい環境づくりにさまざまな工夫を凝らしていく。その一環として、とにかく生徒が能動的に行動する、みずから動く力を育てるために生徒のお尻を押してあげる仕掛けを幾つもつくっていく。みずから動く力を身につけさせると数多くの経験をすることになり、結果的に自分の理想の姿を見つける手助けとなる。待ちの姿勢では得るものは少なく、みずから動かなくてはいけないということです。
それまでの学校のように、生徒にはまだ十分な知恵や知識がない、失敗したらかわいそうといって大人がかわってやってしまうのではなく、子供自身が選び、体験し、時には失敗することさえも非常に大切なことだと言います。
品川女子学院では、生徒が能動的に動くように意識して校内を見渡し、生徒の成長につながることで何か任せられることはないかと常に探すようにしていて、文化祭や体育祭などは当然のこととして、健康診断など通常は教員がする仕事まで子供たちに任せています。学校のかばんまで自分たちでデザインし、業者との交渉まで生徒たち自身に行わせているということです。もちろん、教員が全体を把握し、いざというときにはサポートするが、できる限り生徒に任せるということです。
また、品川女子学院でのそれぞれの取り組みは、すべてが「本格的に」、「徹底的に」といった精神で貫かれていて、例えば文化祭なども徹底した社会勉強の場となっています。品川女子学院の白ばら祭では、高等部の生徒は起業体験プログラムの場として取り組んでいます。学園祭の模擬店を実際の会社に見立てて、設立から解散までを体験するというふうになっていて、模擬店1つを出すのに、資本主義とは何か、会社とはどんな仕組みで動いているのかといったことを徹底して教え、アントレプレナーシップやチームワークを身につけさせる。そこでは会社として事業計画書の作成から登記、決算までをやり遂げさせ、そのために司法書士、税理士、公認会計士、弁護士などの専門家、ベンチャーキャピタリスト、企業経営者など、実際のビジネスの世界で働いている人に協力を求めて学校に入ってもらっている。店舗数を絞るための企画コンペを実施したり、ベンチャーキャピタリストから投資を引き出すためのプレゼンテーションをしたりと、まさに本格的な内容となっています。
こういったさまざまな取り組みを通じて、疑似でないリアルな社会の本当の姿にできるだけ接するように仕向け、そのことで学校の勉強と仕事がつながっていること、また今と未来がつながっていることに気づくことができると言います。
漆校長は、学校外とのコラボレーションなどは大変なエネルギーが必要で、大学進学だけを考えれば回り道かと思った時期もあったが、しかし、大学のその先に目標を置くことで生徒のモチベーションが逆に高まり、勉強に打ち込んでくれる、結果として第一志望への合格者がふえたと言います。
このような品川女子学院では、私自身も実際にその現場で見てきた印象として、子供たちが生き生きと明るい学園生活が実現されていて、それは他の進学私学で予備校化し、偏差値の向上を至上命題として灰色の学園生活を送っているものとは明確な違いのある教育を実践されていると感じました。
学校は生徒の人生の物語をつくる場所、夢をつくる場所であって、そして、その夢をかなえる道案内をしてくれるのが学校であり、品川女子学院だということです。理想の話のように聞こえるかもしれませんが、現実の話であり、これは和歌山の学校でも決してできないものではないと私自身は確信して帰ってきたところです。
そこで質問ですが、私はこれまでも社会との接点といったことで何度もこの議会で提言してきましたが、その具体例として今回、品川女子学院の視察を踏まえ、新たな教育のあり方といったものをお話しさせていただきました。まず、この品川女子学院の取り組みについて率直な御感想を教育長にお聞かせいただきたいと思います。
今回は、学校見学、授業風景も見させていただき、まさにやらされる勉強からみずからの目標を持って進んでやる勉強に変えていくことが、勉強だけでなく、子供の成長にどれだけプラスになるか改めて認識させられたところです。心のスイッチを入れる品川女子学院の取り組み、それを導き出す手段となる28プロジェクト、これらの有効性をどのように考えるか。あわせて、ぜひこの取り組みは和歌山でも実践していっていただきたいと思いますが、教育長の御所見を伺いたいと思います。
また、品川女子学院の特徴的な取り組みの1つとして、学習計画、シラバスの作成があります。シラバスとは、日本では主に大学などの講座の内容、指導方針などが書かれた手引書として認識されていますが、(資料を示す)これがその品川女子学院で使われているシラバス、いただいてきましたので、後ほど教育委員会に進呈いたします。
これは、日本では、先ほどもお話ししたように、主に大学などの講座の内容、指導方針などが書かれた手引書として認識されていますが、アメリカの例などに倣い、より教育を家庭、地域にもオープンにしていく道具として、詳細な授業計画を示し、子供たちにどういった成長を促したいかを明確にし、教育効果を上げる、また学校の責任を明確化する意味も含め、今、東京などでは公立、私学を問わず広がっている状況があります。
そういった中で、県教委の方にも内容を確認していただきましたが、この品川女子学院のシラバスを検証した中で県教委としてどのように評価しているか。あわせて、シラバスの作成、生徒、家庭への配布を提言いたしますが、どのように考えるかお聞かせいただきたいと思います。
現在の教育委員会では和歌山教育のビジョンというものを出されています。ただ、そのビジョンに沿って学校ごとのミッション、ビジョン、バリューというものを品川女子学院ではつくっていましたが、今、和歌山の学校では、質実剛健とか文武両道といった、そういうものしか出されていません。そういったことをしっかりともう一度和歌山の学校ごとに見直していく、ミッション、ビジョン、バリューを創造、提示する作業が必要と考えますが、どのように考えるか、教育長にお伺いいたします。
最後に、今学校のあり方を考える中で、大阪では私学の高等学校の無料化を進めようとしています。橋下知事は私学と公立を同一の環境で競争させ、人気のない学校は廃校など退場させるといった話もしています。このことは私自身ももう少し勉強していきたいと思っていますが、現時点で隣の大阪で行われているこの取り組みについて、その意図をどのように理解し、私学を無償化させていくことをどのように評価しているか。これも教育長に御所見を伺いたいと思います。
以上で、私の質問とさせていただきます。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○副議長(山下直也君) ただいまの山下大輔君の質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 中国との関係、一括してお答え申し上げたいと思います。
これまでの中国山東省への取り組みの評価についてでございますが、本県は山東省と友好関係を締結して以来26年になります。この間、さまざまな分野で交流を行ってきた成果が現在の両県省の強固な信頼関係の構築につながっていると思います。また、人間と人間の強い信頼関係も、長くこの友好関係に携わってこられた方の中に根づいていると考えておりまして、私は大いに評価しております。
さらに、平成19年以来、具体的な協力に力を入れようということで、環境協力あるいは観光交流、経済交流、職員交流等々、具体的な協力関係にも力を入れてまいりました。これについても、今後もっとやっていきたいと思います。
次に、中国との関係の現状認識についてでございますが、中国は長年にわたり高度経済成長を続けており、本年にはGDPが世界第2位になることが予想されております。また、中国は日本の最大の貿易相手国ともなっておりまして、お互いになくてはならない間柄であります。したがって、相互にウィン・ウィンの関係を発展させることが両国にとって重要であります。そのためには、もうちょっときちんとした外交をしていただいた上で日中間の交流のパイプはさらに太くしていかなければならないと考えております。
最後に、今後の山東省との関係についてでありますが、山東省は中国国内でGDP第3位を誇っており、同省との交流推進は本県にとって大きなメリットをもたらすものと考えます。
既に申し上げたように、平成19年には両県省の協力関係を一層強化する覚書を交わし、これを起点に経済、観光、環境での交流を以前にも増して活発化させてきました。今後は、この交流関係をより深化させるため、商談会の開催や観光ルートの提示など、具体的かつ実利につながる交流を一層実施していきたいと考えております。また、今後の山東省との交流のかなめとなる人材育成のため、引き続き県職員を同省に派遣することを予定しております。
中国経済が大きく発展している現在、長年にわたって山東省と交流を続けてきた本県については、これは大きなチャンスでありまして、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
○副議長(山下直也君) 企画部長柏原康文君。
〔柏原康文君、登壇〕
○企画部長(柏原康文君) 県市協調の御質問に一括してお答えいたします。
和歌山市との政策立案並びに事業実施面での協調、協業につきましては、平成15年度から県市政策連携会議を開催し、両団体が一致協力して取り組む政策課題について意見交換や連絡調整を行っているところです。
同会議においては、これまで和歌山市内の河川改修や景観形成の促進といった都市環境の整備を初め、企業誘致や医療・福祉、消費者問題等、幅広い分野において率直かつ建設的な協議を行っています。この中では、和歌山北インターチェンジの開設に係る関連道路の整備や産業廃棄物の保管及び土砂等の埋め立て等の不適正処理防止に関する手続など、県市協調の結果、県が事業執行や制度設計の主導を担い、事業目的の迅速な達成を図ることができた事例や、南海和歌山大学前駅や和歌山大学への観光学部の設置など、その時々の重要課題の解決、実現に大きな役割を果たしてまいりました。
しかしながら一方、近年は全国各地で広域行政や地方公共団体間の連携についてさまざまに議論されており、各地域が創意工夫により限られた資金や人材を最大限に活用を図るとともに、これまでの仕組みや制度の抜本的な見直しを含む新しい施策についても積極的に取り組んでいかなければならない時代が到来していると感じております。
そうした厳しい地域間競争の中、本県においても、これまで以上に県市間の緊密な関係の構築や新たな連携のあり方を模索していくことは極めて重要なことであると認識しています。議員の御指摘にありました県と市が別々に事業を行うことによる二重投資の弊害解消、同一地域内のプロジェクト進行の同期化による事業効果の拡大などにつきましては、連携協議の成果のフォローアップとあわせ、和歌山市とより深く検討を進めてまいりたいと思っております。
○副議長(山下直也君) 教育長山口裕市君。
〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 県教育のあり方についてお答えいたします。
品川女子学院の教育につきましては、議員御紹介のとおり、社会とのつながりを重視し、生徒が主体的に学習活動に取り組み、みずから設定した目標に向けて学び続けることを主眼に置いている点で、大変すばらしいというふうに考えます。特に28プロジェクトは、将来の自分をイメージしながら生徒のやる気を引き出すプログラムとして参考になると思います。
本県におきましても、同様のコンセプトであります自立、共生、社会参加を目指した市民性を育てる教育に取り組んでいるところでございます。今後さらに、今回の御提案を参考にして現在進めております地域共育コミュニティを生かし、児童生徒が主体的に自己の生き方や社会との関係を深く考える取り組みについて広げてまいります。
次に、シラバスにつきましては、各教科の目標と内容、使用教材、指導計画等が表や写真などを取り入れて書かれており、生徒、保護者、地域にもわかりやすいものであると拝見いたしました。今後、本県におきましても、教育の方針や授業内容を伝えるシラバスや学習の手引などを充実させ、こういったものを仲立ちとしながら家庭との話し合いを深め、よりよい学校づくり、よりきめの細かな授業づくりを進めてまいります。
次に、高等学校の個性化につきましては、議員御指摘のとおり、生徒や地域の実態に即し、学校としての願いが反映された各学校のビジョンが必要であります。このことから、学校長のリーダーシップと地域にも開かれた全教職員による教育によって明確なビジョンやコンセプトをつくり上げるとともに、それを地域や学校関係者に示す必要があると考え、これまでも指導してまいりました。
そのことによって、中学校とその保護者が子供の個性や希望と各学校のコンセプトに即して学校を選ぶことが可能となり、不本意入学による中途退学の防止や不登校の減少、学力の向上にもつながるものと考えます。
最後に、大阪府の取り組みについてでございますが、本県とは状況が異なりますが、私立高校と公立高校を同一の環境で競争させるということは1つの考え方であると存じます。その場合、授業料等教育費負担に限らず、さまざまな条件もあわせて公平性を確保する必要がございます。経営の独立、建学の精神を重視され、こだわりを持っております私立高校の状況から、条件を同じにするということは難しいものと推測されますが、もしそうなれば公立高校の個性化を促進することにつながる可能性があるかというふうに存じます。
○副議長(山下直也君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(山下直也君) この際、申し上げます。
所定の質問の時間が既にオーバーをいたしております。
以上で、山下大輔君の質問を終了いたします。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前11時34分休憩
────────────────────
午後1時0分再開
○議長(谷 洋一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
23番井出益弘君。
〔井出益弘君、登壇〕(拍手)
○井出益弘君 議長にお許しをいただきましたので、順次、通告に従って一般質問をさせていただきます。
それからまず、ちょっと遅くなりましたが、知事の再選、圧勝的な県民のすばらしい結果が出ましたんで、私も圧勝してほしいなと思ったんですけど、本当にいい結果が得られたと思っています。
まず、通告に従いまして、1つ目に2010年の大連中日貿易投資展示商談会への出席の報告をさせていただきます。
2010年10月20日より24日まで、中国大連市に和歌山県県産品であります富有柿、あんぽ柿の見本展示、試食販売について、また、医療診断と観光をセットとしたツアー客の招致を目的に、谷洋一議長に、尖閣諸島問題発生の時期であったので9月議会にて出張命令をいただくことができなかったため、10月の出発直前の時期に中国現地の大連市の状況を確認した上で出張命令をいただき、橋本市長、かつらぎ町長、九度山町長初め、2団体の各代表の皆さんとともに第2回、大連中日貿易投資展示商談会に出席してまいりました。
参加者は、顧問としまして私が参加させていただきまして、団長には木下善之橋本市長、副団長には山本惠章かつらぎ町長、同じく副団長に岡本章九度山町長、それから橋本市経済部長の岡松克行さん、それからかつらぎ町産業観光課長の井上隆央さん、それから九度山町産業振興課長補佐・柳谷勝さん、それから紀北川上農業協同組合のほうから4名の方、マルい選果場顧問の蓮沼正さん、販売部長の亀井憲一さん、販売委員長の廣畑吾郎さん、販売部長の井尾浩二さんが参加していただきました。それから、通訳の方で渡辺産業運輸株式会社のほうから上野晴美さん、それから和歌山PET画像診断センターのほうから辻美羽さん、そして、私の事務所から中里笑子が参加しました。以上の14名で行ってまいりました。
第1日目の10月20日水曜日は、関西空港8時集合で、搭乗手続後、荷物を預け、空港内特別待合室「おぐり」にて今回訪問団顧問の私より日程概要の説明をしました。10時発全日空の945便で、日本時間の12時25分、中国時間では11時25分──時差1時間ですので──大連空港に到着しました。
大連空港到着後、尖閣諸島問題の影響下の混雑のため、荷物の通関手続に手間取りました。約1時間ぐらい、ただもう待つだけで待ちました。迎えのバスに乗り込み、空港からの道は停滞しており、車の通行量は多く、空は黄砂かスモッグでよどんでおりました。途中で昼食をとり、その後、展示商談会場へ向かい、机、いす、ポスター等の会場設営の準備をしました。
それから、シャングリ・ラホテル大連へ向かいチェックインをしまして、夕食まで休憩をとりました。夕食は、商談会のお世話をしてくださった李國夫氏が私たちに歓迎の食事会を開いてくださいました。
商談会の1日目であります10月21日木曜日は、午前7時半にチャーターしていたバスにて会場に向かいました。到着後、準備作業をし、9時から正面入り口前にて開幕式が行われました。大連市人民政府・張軍副市長より、展示会を通して日本と中国大連の貿易が発展することを願い、両国の経済発展を進め、大連から中国全土へ市場拡大させていきたいと述べられました。続いて、中国国際貿易促進委員会大連市委員会・李泊洲会長より、今回の2010年大連中日貿易促進委員会は日本国際貿易促進協会の協力を得て、日本の34都道府県、300社以上の日本企業が参加し、展示規模は1万4000平方メーター、参加商品は9000品目余りで、工業機械、農作物、日常生活用品など3大分野の30種目を上回りますとの説明、あいさつがあり、続いて日本国総領事館大連駐在所・遠山茂所長のあいさつがあり、その後は日本側参加者を代表して私があいさつをしました。「和歌山県は昨年の第1回に続き、今回で2回目の参加であります。現在の日中関係を心配していましたが、ここに参加の我々は信頼関係を大切に友好的かつ日中貿易投資商談会を成功裏に開催し、来年の第3回商談会へと飛躍の大会にすべくつないでいきたい」と祝辞を述べました。
セレモニー壇上には今回の和歌山県訪問団の団長である橋本市の木下善之市長も登壇され、紹介をされました。開幕式終了後、各ブースにおいて富有柿とあんぽ柿──あんぽ柿は、これは別名「福こい柿」、「福、来い柿」という説明と、試食及び医療観光ツアーの説明を来場いただいたお客様に通訳を交えて繰り返し行いました。
17時より大連新世界ホテルにて、実行委員会の中国国際貿易推進委員会大連国際商会・李泊洲会長による和歌山県代表に対しての歓迎式典と意見交換会がありました。私と木下善之団長、山本惠章副団長、岡本章副団長の4名が招かれました。李会長より、今回も商談会へ参加したお礼と、両県、両国の貿易が盛んになることを願っていますとの祝辞があり、私も和歌山の富有柿が一日も早く中国市場へ開けることをお願いしました。
18時半より新世界ホテルにて日中の代表歓迎レセプションが盛大に行われ、ジェトロ大連事務所・高橋所長や日本総領事館大連事務所所長の遠山所長、木下橋本市長と私が参加しました。
10月22日金曜日は、午前8時半、展示会場へ向け、移動しました。どの柿もお客様の反応はよかったです。橋本市の平核柿は種がなくて甘くて食べやすいが、30元、約400円と値段が高いと言われました。かつらぎ町の紀の川柿は梨みたいな感触で、どんなにしてつくるのかと質問されました。あんぽ柿は甘みが凝縮されていることが好評でした。九度山町の富有柿は名前が富があるという意味で、柿を食べた方々に富が入り、裕福な暮らしをもたらされる、贈答品としては最高の果物ですと説明をしますと、一段とよく売れました。それぞれの柿はいずれもおいしく、日本一や世界一だと思います。そして、試食された方々は、このようなおいしい柿を早く輸入したいと言っておりました。値段は高いですが、それに値する品物だと思います。富有柿、平核柿、あんぽ柿──福こい柿ですけど──いずれも試食以外の柿はすべて早々に完売しました。和歌山は何らかの果物が年じゅう生産されており、年間を通じて日本一の果物王国でありますとのPRをしました。
また、展示場の一角にあるメディカルツアー宣伝ブースでは、和歌山はメディカルツアーの拠点であり、高度な医療診断が可能なPET、施設内に原子炉を備えた国内で数少ないPET設備や最新鋭のMRIやCTなどを備えている和歌山PET画像診断センターなどがあり、さらには世界遺産を初めとした風光明媚な観光地が豊富ですので、ぜひ医療診断と観光をセットにしたメディカルツアー招客あっせんをしていただきたいと旅行社等に説明、PRをしました。
12月10日現在、約20名の申し込みがあり、早ければ年内か新年早々にも来日予定で、旅行社が宿泊先初め、関係先と調整中であります。これにはちょっと、ビザがおりるのが非常に、いつおりるかということがまだ決まらなくて、診療所とかホテルのほうにそれをいつ予約できるかというのが決まらんもんですから、ビザがいつおりるかということを今調整しておるんですけど、どうも年明けになってしまうかもわからんというような返事を聞いております。
時折、会場で展示してあった県観光振興課よりいただいていたポスターを見て、来場者が「和歌山はきれいなところがたくさんありますね」と感動していました。閉会時に中国人通訳の方たちにさらなるPRになればとポスターをプレゼントさせていただきました。
今回の中日展示商談会場への来場人数は約1万5000人でありました。
10月23日土曜日は、旅順人民政府を表敬訪問しました。旅順口区委員会の崔岩副主席が出迎えてくださいました。まず、旅順の案内のビデオを見ました。崔岩副主席から、春にはサクランボ祭りが開催されるので、ぜひその機会にまたお越しくださいと言われました。日本側から団長の木下橋本市長が、柿の市場を開いてくださいとお願いをしました。すると、そんなにおいしい柿なら旅順でつくれないかと尋ねられましたが、気候の違いや風土の違いからまず無理でしょうと丁寧にお答えしていました。
旅順口区は大連市に位置するかつては軍港都市であり、現在は大連市に編入されています。日本の宇部造船が進出しています。中国旅順口区は、日清戦争中の1895年には日本陸軍に占領されたロシア海軍の東洋艦隊の根拠地として軍港、要塞となった場所であります。日露戦争において日本軍による旅順港閉塞作戦及び旅順攻囲戦が起こった場所であります。市郊外の丘陵である203高地などで激戦の末、日本軍が約1万人の死者を犠牲にしたほか、莫大な損害の後に勝利したことにより、1905年1月に占領しました。第二次世界大戦末期の1945年、ソ連軍が侵攻し、旅順を占領し、1955年には中国に返還された歴史がある地域であります。現在は観光地として開放され、多くの観光客が訪問しています。崔岩副主席から観光客の誘致をお願いされました。
10月24日は午前中に中国国際貿易推進委員会のスタッフと懇親会を開催した中で、最近、鹿児島県信用金庫と大連市銀行協会や大連市商工会と交流提携をしたとの情報を聞きました。和歌山県もいずれかは中国のどこかに県事務所を出すことになると思いますから、大連はいかがか、経済界や銀行関係者にも御検討をお勧めくださいとのことで関係資料をいただいてまいりました。ほかに、観光交流の1つに遼寧省ゴルフ協会と和歌山県のゴルフ協会と交流をしたい旨の申し出があり、友好ゴルフ場提携により、お互いの訪問客に特別料金設定ほか、観光交流促進を希望する話がありました。
先ほどのメディカルツアーの訪日希望客の声としまして、帰国時に大阪の家電免税店にて大量の家電を購入して帰りたいという希望とかがありまして、私もそれは、大阪まで行ってまた関空へ帰ってくるんやから、何とかこれを和歌山にて家電免税取扱店が可能にならないかと研究したいと考えております。
また、帰国後の11月10日水曜日、橋本市にて帰朝報告会を開催し、来年の第3回、2011年大連中日貿易投資展示商談会の参加と目的達成のための作戦会議を行いました。
以上が報告でございます。
続きまして、中国大連との貿易を中心とした経済交流の促進について質問させていただきます。
和歌山県民の悲願と考える紀州木材の販売並びに森林環境整備について、本議場でも何回か申し上げてきましたが、林業従事者の高齢化と人件費の高額化、また国内木材市場の崩壊等が重なり、かねてより富裕層であったはずの山主は、木材が売れないばかりか、山と木材のセットにしても売れないという大変な生活苦境に陥っている今日、中国では4年前に中国全土で30年間中国国有林伐採を禁止したため、あと26年間、材木は外材を必要とし、現在ではロシアより木材を輸入しております。
外材の購入については、主に黒龍江省のハルピン市を拠点として、中国がロシアで買いつけた木材を中国人がロシア山林に行き伐採、搬送可能な状態に整備し、貨車やトレーラーにて運搬するという方式をとっています。この方式を私は、中国のロシア方式と勝手に呼んでいます。
しかし、ロシアの木材は間もなく、中国への輸出は自然破壊のため限界となっており、近年では伐採したロシアの土地を中国が借り受け植林を始めています。日本へも木材を求めてくる日も近いと考えますが、そのためには日本もロシア方式で対応し、中国が日本で購入した山林の伐採と搬送可能な状態に整備、そして運搬や伐採後の植林、下草刈りまでを中国人によって可能な限定就労ビザの発給可能な法整備を、また、中国人の林業研修生受け入れや中国でも木工大工の普及のための木材建築技術者育成や関係研修生受け入れの必要性を最近強く感じております。
優秀な林業大学卒業者の若手も余剰人材状況なので、この際、日本で研修をしてもらい、日本の林業を通じて森林整備や水源地環境整備、森林や防災保安林整備等に研修生として参加してもらうのが、日本の高齢化されていく森林労務者の現状を考えるとき、何とか日中両国のために最善の方法は見出せるのではないかと思います。
これについて、私は、県内の山林の多い市町村長初め関係代表者と来年、黒龍江省へ訪問し、森林環境整備と紀州木材中国市場への販売ルート確保のため交流を深める計画をしています。近年、著しい経済成長を続けている中国の中でも大連市は中国の東北4省地方でいち早く市場経済化に取り組んだ地域であり、現在は中国東北部の最大の工業生産額を持つ工業都市であるとともに、東北部最大の港湾、空港貨物の運送基地として繁栄、発展しているのであります。
本県経済の活性化にはこうした経済力があり、貿易に対しても観光ビジネスについても、まず訪問して直に現場を見て行動せねばならないと考えます。
一昨年、大連市や瀋陽市のある遼寧省旅游局及び観光協会と和歌山県観光協会──会長は仁坂知事でありますけど──と交流協定調印の運びとなり、調印式に日中友好議連門会長と私が立ち合わせていただきました。本県経済の発展のためには、経済力があり、信頼関係の拡大しつつある遼寧省、とりわけ大連市とさらに積極的、具体的に経済交流を促進すべきと考えますが、商工観光労働部長の考えをお尋ねします。
次に、有害鳥獣対策、有害鳥獣食肉加工販売について質問させていただきます。
イノシシやシカなどの有害鳥獣は、捕獲後おいしい食肉加工のためには血抜きを初め、保存のための加工や販売可能に加工をいかにするか、それぞれ狩猟者が処理に苦労していますが、県や市町村がこれだけ多くの有害鳥獣繁殖実態に思い切った施策を考えなければ被害額が縮小する傾向には至りません。狩猟者が育つためには、捕獲した有害鳥獣の有効処分方法開発にも公的な力を貸す必要があると思います。そのためのアイデアを出す、例えば学校給食や企業の給食に採用できないか。現在よりも高額な捕獲駆除料を支給するとか、高額で販売できるとか、大量に商品化できるようなことに行政としても取り組む必要があると考えますが、いかがですか。これは農林水産部長にお答えいただきます。
次に、射撃場の建設について質問させていただきます。
知事は、平成21年6月議会では、射撃場の建設及び有害鳥獣対策関連施設について必要性を高く評価し、有害鳥獣対策の射撃場と同時に国体施設の射撃場として県内開催後にも役立つ施設としての4つの条件、1つ、国からの補助金の活用、2つ目に地元市町村の応分の負担、3番目に地元住民同意、4番目に運営主体の存在を提示されていました。
平成22年3月の農林水産委員会議事録によりますと、松本貞次議員の質問に対し、建設候補地は和歌山市、紀の川市、湯浅町であったが、平成21年7月10日に湯浅町に決定し、農林水産省に申請した旨の農林水産部長の答弁があります。ということは、湯浅町が4つの条件に合致していたかということになります。これについてお聞かせいただきたい。
また、私は8年もかけて関係省庁や麻生太郎日本クレー射撃協会会長──これ、元総理の麻生──また、太田豊秋副会長──これ、元参議院議員、農林水産省の副大臣であります──に和歌山県の有害鳥獣被害の現状を説明する中、有害駆除に出動した猟友会会員が死亡事故や重大事故を多発している県になってしまっていることについて、資料を示して何回も農林水産省の担当者を含めて話を聞いていただきました。
また、当時、6年後には和歌山県に和歌山国体が開催され、そのための射撃場もなく、選手は他府県に行き練習に励んでいるが、地元に射撃場が必要であると懇願している。また、銃所持、更新時について、法改正があるから各都道府県では狩猟人口を激減させないために射撃場が必要となるとのことで、射撃場のない和歌山県に射撃場の国の予算援助をお願いし、理解を求め、県の予算要求に対し、国の補助金3億250万円をつけていただいたのであります。
当時の建設候補地、湯浅町での建設は断念したと報告がありました。
射撃場建設として決定する条件に、運営する立場として不可欠な条件があります。銃所持者が試合や練習に来県したときに宿泊可能なホテル等の多い和歌山市もしくは和歌山市周辺が望ましいと考えておりますが、和歌山市初め、これらの候補地とされる市や町は資金難であり、県営の射撃場に応分の負担は極めて困難である状況の中、県営射撃場は県によって建設を進めるべきではないかと考えます。
これだけ有害鳥獣の被害や増殖が問題になっています。5年後には和歌山国体が開催され、射撃種目として、知事は昨年の県議会で、優勝を目指して頑張ってほしいとの答弁をいただきました。射撃場は多くの観点から検討し、決定する必要があります。後々運営管理費が多額の県費負担とならないためには、土日、祭日等は年間を通じて猟友会やクレー射撃協会の大会場として多くの関係者から利用していただける場所、これには交通の便、宿泊施設、地元同意等をいただける場所を選定する必要があります。
そして、大会が開ける最小限の施設規模はトラップ1面、スキート1面、共用射面1面の3面、これが最小限の必要な施設規模であります。これは重要な要件であると考えます。この3面の射撃場は、公式の大会を開ける射撃方向──これは北を向いて打たんと、時間がたってきたら太陽が上がってくるとまぶしくなると。まず、北方向に射撃するとか、そういう最低のこの重要な要件の1つですけども──公式大会を開ける射撃方向等が的確な場所に建設すれば、近畿には唯一の適正な規模の射撃場として他府県の国体やアジア大会、全国大会等にも使用できます。
JOCのオリンピック選手練習場として認定を受ければ、施設助成金がJOCから交付されます。それに他府県の射撃場を使用することになると、整備借用予算として億単位の支払いが必要であります。国体が終わると、後で利用できる県民としてのメリットは何もございません。県内に適正な場所に適正な規模の射撃場をつくれば、近畿はもとより周辺の府県まで、国体時は利用料をもらい、その都度設備の整備料をもらい、貸すことができます。
前回の結果を大変残念に思っていますが、今後は業者に頼らず、多くの専門知識を持ち、かつ業者ではない私たち関連団体の役員にも相談をさらにしながら進めていただきたく思います。知事の答弁をお願いします。
以上で、1回目の質問を終わらせていただきます。(拍手)
○議長(谷 洋一君) ただいまの井出益弘君の質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 射撃場につきましてでございます。
射撃場建設予定地の選定につきましては、これはかつてでございますが、県内市町村で唯一湯浅町から用地の確保と地元同意について責任を持って対応するとの申し出があったため、同町に決定をいたしまして話を進めてきたわけでございます。
射撃場建設については、従来から申し上げてきた4条件のうち、現在は国庫補助金の活用を除く3つの条件が基本と考えております。私も農家からの鳥獣害に対する深刻な声を各地で伺っており、鳥獣害対策を防護から捕獲に大きくかじを切る中、さらに鳥獣を捕獲するハンターの確保対策が必要と考えております。このため、鳥獣害対策の充実強化に向け、農家や猟友会、市町村等の意見を聞きながら鋭意検討を行っておりまして、議員お話しの射撃場についても総合的に考えてまいりたいと思います。
○議長(谷 洋一君) 商工観光労働部長岡本賢司君。
〔岡本賢司君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本賢司君) 中国大連との貿易を中心とした経済交流の促進についてでございますが、大連を初めとした中国の都市部では、近年著しい経済成長により富裕層が大きく増加するなど、消費市場としても非常に大きな需要が生み出されている状況にあると認識してございます。国内の市場が成熟する中で県内企業が成長していくためには、こうした中国市場の成長力を積極的に取り込んでいくことが非常に重要であると考えています。
本県では、これまでも商社OBや上海在住の中国人コーディネーターによる企業支援活動、海外展示会への出展支援、ジェトロなど関係機関との連携などにより県内企業の中国進出を支援してまいりましたが、今後とも県内企業が大連を初め中国市場を獲得できるよう積極的に支援してまいります。
○議長(谷 洋一君) 農林水産部長阪中栄一君。
〔阪中栄一君、登壇〕
○農林水産部長(阪中栄一君) 有害鳥獣の食肉加工販売についてお答えいたします。
有害鳥獣による農作物被害の軽減を図るには、狩猟者の方々に積極的に捕獲していただくことが必要であり、その上で捕獲後のイノシシやシカを有効に活用することが重要であると考えております。
本県では、ジビエの処理施設の整備を推進するとともに、衛生管理ガイドラインを策定し、狩猟者を対象とした食肉の安全管理に関する講習会を開催し、安全で安心なジビエ肉の供給に努めております。また、ジビエの取扱店舗の拡大やホテル、レストランでの利用、さらには加工品の開発や観光資源としての利用を促進するなど、さまざまな流通販売対策を実施しているところであります。
今後、狩猟者の方々により一層捕獲していただけるよう、こうした取り組みを推進するとともに、議員御提案の学校や企業での活用についても働きかけを行うなど、「わかやまジビエ」の事業拡大に取り組んでまいります。
以上でございます。
○議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 以上で、井出益弘君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
32番中村裕一君。
〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 まず、さきの知事選挙に際し、県民の大きな支持を得て見事に再選された仁坂知事に対し、心からお祝いを申し上げます。どうか、今後4年間、県勢浮揚のため大いに御活躍されますよう御期待を申し上げます。そして、この際、次の2点について特に御尽力を賜りますようお願いをしておきたいと思います。
第1は、経済の発展です。
県民が仁坂知事に期待する点は元気な和歌山を取り戻すことで、なかんずく高度成長期以降、長期低落傾向にある県経済を再生し、もう一度成長させることであります。理想的な親子の住まい環境を表現する言葉に「スープの冷めない距離」というのがあります。これは現在の団塊世代でも約8割から支持されていますが、今の和歌山では、残念ながらかないません。志を抱いて一躍雄飛する人は別にして、地元へ就職したい子供たちの希望をかなえてあげることが県民の最大の願いであり、人口100万人復活への始発点であると考えます。
第2は、遠い和歌山の解消であります。
先日、九州新幹線の開通を記念してJR西日本が大阪─鹿児島間の試乗を募集したところ、800人の定員に対し3万人余の応募があったと報道がありました。私が驚いたのはその多さではなく、来春の開通により大阪と鹿児島の間が最速で、何と3時間45分で結ばれるのです。皆さん、3時間45分という時間に聞き覚えはありませんか。実は、新大阪─新宮間が3時間48分であります。時間距離で言えば、和歌山は大阪の隣にあるのに実は鹿児島と同じぐらい遠いところにあるということであります。
古来より熊野は都から遠くにあるよみの国への入り口で、その畏怖の念が信仰の中心であると言われていますが、我が国も独力で宇宙衛星を飛ばす今日にあっても、依然、和歌山は遠いのであります。
いよいよ関西広域連合が始まり、「関西は1つ」などと言われますが、関西のみんなも遠い和歌山の解消に協力してくれるような一体感の醸成を望みます。どうか、こういった視点で県民や我が党との公約実現において御努力いただくことをお願い申し上げます。
以下、通告に従い、順次一般質問を行います。
最初は、入札制度について伺います。
知事の逮捕という不祥事を受け、4年前に就任された仁坂知事は、郷原弁護士など当代の専門家を集めて公共調達検討委員会を組織し、建設業界などの意見も聞きながら、半年余りの審議を経て「和歌山県公共調達検討委員会報告書」をまとめました。それを受けて、執行猶予の後、だれもが談合できないといううたい文句で条件つき一般競争入札や総合評価方式などが導入されました。しかし、新制度は導入直後からさまざまな矛盾が発生し、知事は、必要があればいつでも見直すとの姿勢で、これまで2度にわたり改善が図られてきました。
しかし、多くの利害を調整する合理的な手段として長い間行われてきたものをいきなりやめて、国が考えた制度を地方に持ち込んできてもうまくいきません。とりわけ、総合評価方式は業者評価方式でランクづけをしておきながら、個別の入札で不合理な評価点で落札を決める不公平な制度であります。三ツ星のレストランのシェフに、きのうオムレツを焼いた人はきょうも焼いてもらうが、きのう焼かなかった人は実績がないから能力もないとしてオムレツを焼かせないのは明らかな矛盾であります。
自民党県議団では、制度導入以来、それぞれの地元でいろいろな御意見を聞いてきましたが、それらを集約して10月初旬に知事に、公平の確保、過当競争排除の観点から8項目にわたり申し入れを行ったところであります。知事も、選挙を通じて県内各地でさまざまな意見を直接聞き、空気を肌で感じられたと思いますが、改めて県議団の申し出について知事の御見解を伺います。
2番目に、環太平洋パートナーシップ、TPPについて伺います。
TPPについては、私たち国民からすれば突然飛び出してきたような印象が強く、なぜこんな重要問題を十分な準備もなく、国民の理解を得ることもなく持ち出してきたのか。まさに消費税10%のときと同様に、提案はするけど何も決まらず、いたずらに混乱させるだけのお騒がせではないでしょうか。また、6日から始まった交渉会合にはオブザーバー参加ができず、参加国との2国間の交渉も設定できなかったと報道されています。全く政府の無策ぶりには目を覆うばかりです。
しかし、参加した場合の影響については大変深刻で、農業など1次産業だけではなく、建設業やサービス業、看護、介護の分野にも関係すると言われています。事態の大きさにこの議会でも各派から質問がありましたが、改めて県内の影響について伺います。また、同時に知事のTPPに対する御認識を伺うものであります。
3番目は、有田─御坊間の4車線化について伺います。
9月定例会でも有田─田辺間の4車線化並びに有田─御坊間の都市計画決定に向けての知事のお考えを伺いましたが、11月24日の都市計画決定を受けて、現在は、マージャンでいうところのテンパイの状態にあります。あとは国の出番を待つだけとなりました。
政権交代後、民主党政権は言いがかりをつけ、御坊─田辺間4車線化のための745億円を取り消し、その理由として、有田─御坊間の4車線化を優先するとの明確な表明が当時の国土交通大臣や民主党の国会議員からありました。しかし、知事選の応援に御坊入りした現国土交通大臣は恐らく週末の渋滞に巻き込まれたものと想像しますが、高速道路のことには一言も触れずに去っていきました。まさかこの期に及んで政府は有田─御坊間の優先は忘れたとは言わないと思いますが、県当局の4車線化への取り組みについて県土整備部長に伺います。
最後に、企業誘致について伺います。
企業誘致は経済活性化のためすぐに効果が期待できる重要施策で、仁坂知事は4年間に80社の企業誘致を成功させました。私の地元の御坊工業団地も、造成以来、長い間1社進出しただけでしたが、この数年で立て続けに3社が進出し、残り1区画となりました。この間の知事初め県職員の皆さんの御尽力に感謝を申し上げます。
さて、世界の先進国や中国がいち早くリーマンショックから立ち直る中、我が国の経済はひとり蚊帳の外で、民主党の政策不況とも相まって展望が開けません。しかし、景気のよしあしにかかわらず企業誘致の可能性は常にあり、気を抜かずに努力しておくことは必要であると思います。
かつて、バブル崩壊後に製造業が海外へシフトする中で、誘致の対象を情報系企業にも拡大した時期がありましたが、一定の効果はあったものの、景気回復の後は製造業の立地ダッシュに乗りおくれた苦い経験があります。そこで、今後の県の企業立地動向をどのように見ておられるのか伺います。
次に、御坊工業団地は残り1区画となりましたが、日高港の企業用地は臨海部の立地環境からおのずと限界があり、内陸の御坊工業団地熊野地区の造成が必要であると考えますが、知事の御見解を伺います。
以上で、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(谷 洋一君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、入札制度についてでございますけれども、去る10月1日に自由民主党県議団から、公平性の確保、過当競争の排除等の観点から入札制度改革の申し入れをいただいたところであります。私もその御趣旨は十分理解できますし、これまでもそういった観点から御要望いただいたことや、入札の実施状況を踏まえ、たびたび大きな見直しを行ってまいりました。
今回、改めて自由民主党県議団からの申し入れを初め、多くの建設事業者の方々からも御意見をいただきました。また、こういうまじめな御意見に加えて、選挙期間中は、選挙の戦略でありましょうか、あるいは苦境にあるがゆえのうっぷん晴らしが、事実と違うことが声高に語られたことも、また認識しております。
例えば、県外の企業を利するような制度になっておるとか、あるいは和歌山市の大手が郡部の中小の仕事を奪っているというようなことは制度的に考えられませんで、そういうことについてもいろんなことを言われたことも事実であります。
ただ、実際に自由民主党の御議論にありますように、例えば実績、これについては反省をしてやめたのでありますけれども、まだ技術者の雇用ということを念頭に置いた制度の中に少しその要素が入っているということも事実でありまして、これをどう評価するかとか、あるいはいつまでも受注できない企業をどう考えるかとか、そういうようなまだまだこれから考えていかなきゃいけない課題がたくさんあると実感しております。
このため、現在、見直し案として、例えば技術者の工事成績で評価する配点をやめることにしたらどうかとか、あるいはそれを軽減するようなやり方はないかとか、あるいは一定期間工事を受注していない事業者向けの特別枠の設置をつくったらどうかとか、あるいは工事箇所の近くにある事業者は市町村界を越えても同一市町村の事業者として評価することはどうかとか、さまざまな検討を進めているところでございます。
今後、今回の申し入れの趣旨を十分踏まえ、県としての見直し案を早急に取りまとめまして、まず県議会の方に御相談をし、各地域の事業者等の御意見も幅広くお聞きするようにしたいと考えております。それによって業界の中でもよく議論をしていただいた上で、よりよい制度となるように取り組んでまいりたい、そんなふうに考えております。
次に、TPPに関する御質問でございます。
国内産業に非常な影響を与えるこの問題について、国において事前の十分な準備が足りないまま突然出てきたのではないかという御意見については、私も全く同感であります。
さきの質問でもお答えいたしましたように、この問題には、参加しないことで国際競争上不利になり、日本経済が破綻しないかという問題と、参加することで壊滅的な打撃を受ける産業が出てくるのではないかという2つの側面があると考えております。これらについては、影響を産業ごとに的確に把握し、それぞれの産業ごとにどのような対策が必要であるかということを見きわめていくべきであると考えております。
県内への影響については、商工業分野では関係業界や企業等への聞き取り調査を行っているところでありますが、関税の障壁が残っている業界あるいは輸出産業の関連企業などもあり、慎重な対応が必要であると思います。
さらに、もっと重要でありますが、農林水産業については、現政権は生産性の向上や、あるいは競争力の強化のための予算を60%もカットしておきながら、いきなりTPPに入るというようなことを議論し始めたわけで、これは本当に常軌を逸していると感じているところであります。建設業やサービス業、看護や介護の分野への影響についても考えておかないといけません。これは、現時点では予想が極めて難しいので、今後、情報収集に努めてまいりたいと考えております。
こうしたことから、先日立ち上げました庁内プロジェクトチームで、農林水産業を初め県内の産業にどんな影響があって、どんな対策が必要か十分に検討・分析した上で国に対してきちんとした対応を要求していきたいと考えております。
次に、企業誘致につきましてでございますが、これは、積極的な誘致活動を展開し、急激な景気後退の中にあってなかなかつらかったんですが、着実な実績を上げているところで、今年度は昨年度を上回るペースで進出が決まっております。厳しい経営環境の中ではありますが、食品加工業等の地域資源活用型産業や新エネルギー関連産業など投資意欲の強い業種もまだまだありますので、情報収集能力を高めて企業動向の把握に努めて、それでチャンスを逸することがないように頑張っていきたいと考えております。
その上で、これまで同様、私と職員が一丸となって積極的に企業訪問を実施するとともに、インフラなどの環境整備や企業ニーズに合った用地の確保等を図ることにより、あらゆる機会をとらえ、さらに企業誘致に邁進してまいりたいと考えております。
次に、議員御指摘の御坊工業団地熊野地区につきましては、採算性が実は非常に厳しいところでございます。今後の社会情勢、経済情勢の動向を注視しながら、造成につきましても検討していきたいと考えております。
○議長(谷 洋一君) 県土整備部長原 広之君。
〔原 広之君、登壇〕
○県土整備部長(原 広之君) 近畿自動車道紀勢線有田─御坊間の4車線化につきましては、平成18年の仁坂知事就任後、直ちにその必要性を国に働きかけ、事業主体や整備手法が未定の中、県が主体となって環境影響評価や都市計画手続を進めてきました。その結果、本年11月に都市計画決定することができました。このことにより県としての事業化に向けた準備は整ったこととなり、今後は国において事業主体や整備手法を決定し、事業化を進めていただくこととなります。
しかしながら、一方で今後も国の道路予算は依然厳しいことが予想され、加えて高速自動車国道法改正案が廃案になったことや、今後の高速道路整備のあり方についての検討も現時点では明らかでないことなど、今後の高速道路整備の動向は非常に不透明な状況となっております。
県といたしましては、こうした厳しい状況ではありますが、今後、事業主体、整備手法などを国に早急に決定していただき、事業着手が見合わされたままである御坊─田辺間も含め、可能なところから着手し、県民の悲願である有田─田辺間の4車線化が早期に実現されるよう、引き続き国、関係機関に対して強く働きかけてまいります。
以上でございます。
○議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。
お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
議案第134号及び議案第143号から議案第178号までは、お手元に配付しております議案付託表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
次に日程第4、請願の付託について申し上げます。
今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
なお、常任委員会の会場はお手元に配付しておりますので、御了承願います。
お諮りいたします。12月14日及び15日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 御異議なしと認めます。よって、12月14日及び15日は休会とすることに決定いたしました。
次会は、12月16日定刻より会議を開きます。
本日は、これをもって散会いたします。
午後1時55分散会