平成22年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

平成22年6月
和歌山県議会定例会会議録
第4号
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議事日程 第4号
 平成22年6月16日(水曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第84号から議案第99号まで並びに報第1号及び報第2号(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第84号から議案第99号まで並びに報第1号及び報第2号(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(43人)
 1番 泉 正徳
 2番 山本茂博
 3番 前芝雅嗣
 4番 浅井修一郎
 5番 吉井和視
 6番 向井嘉久藏
 7番 門 三佐博
 8番 町田 亘
 9番 服部 一
 10番 平木哲朗
 11番 花田健吉
 12番 須川倍行
 13番 大沢広太郎
 14番 谷 洋一
 15番 平越孝哉
 17番 岸本 健
 18番 川口文章
 19番 尾崎太郎
 20番 藤山将材
 21番 新島 雄
 22番 山下直也
 23番 井出益弘
 24番 宇治田栄蔵
 25番 多田純一
 26番 中 拓哉
 27番 角田秀樹
 29番 山田正彦
 30番 坂本 登
 31番 尾崎要二
 32番 中村裕一
 33番 片桐章浩
 34番 原 日出夫
 35番 藤本眞利子
 36番 長坂隆司
 38番 小川 武
 39番 冨安民浩
 40番 奥村規子
 41番 山下大輔
 42番 松坂英樹
 43番 藤井健太郎
 44番 雑賀光夫
 45番 野見山 海
 46番 松本貞次
欠席議員(なし)
〔備考〕
 16番 欠員
 28番 欠員
 37番 欠員
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       曽根義廣
 国体推進監      中村正次
 危機管理監      前硲健作
 総務部長       宮地俊明
 企画部長       柏原康文
 環境生活部長     保田栄一
 福祉保健部長     西上邦雄
 商工観光労働部長   岡本賢司
 農林水産部長     阪中栄一
 県土整備部長     茅野牧夫
 会計管理者      神田泰仁
 教育委員会委員    須崎恵美
 教育長        山口裕市
 公安委員会委員長   大岡淳人
 警察本部長      永松健次
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     楠本 隆
 選挙管理委員会委員長 諸木良介
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       森田実美
 次長         佐本 明
 議事課長       堀 達也
 議事課副課長     吉田政弘
 議事課課長補佐兼班長 田中健司
 議事課主任      中尾祐一
 議事課主査      保田良春
 議事課主査      中村安隆
 議事課主事      的塲健司
 総務課長       上坊 晃
 調査課長       中井祥之
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  午前10時0分開議
○議長(冨安民浩君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。
 監査委員から現金出納検査実施結果の報告がありました。お手元に配付しておりますので、御了承願います。
 日程第1、議案第84号から議案第99号まで並びに知事専決処分報告報第1号及び報第2号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 13番大沢広太郎君。
  〔大沢広太郎君、登壇〕(拍手)
○大沢広太郎君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 まず初めに、去る5月19日から21日まで、日華両国の友好促進をということで、親善を図るために日華親善和歌山県議会議員連盟から尾崎要二会長を初め20名が台湾を訪問する機会を得ましたので、代表してその御報告をさせていただきます。
 御承知のように、パソコンに代表される電気機器は今や台湾メーカーなしには成り立たない状況にあるなど、台湾は工業国家としても世界的に重要な位置にあります。観光面でも、和歌山県観光振興実施行動計画いわゆるアクションプログラムの平成21年のデータを見ても、台湾からの宿泊者の数は約3万2000人であり、1位の香港と僅差で2位となっており、リピーター率も72%と高く、本県にとっても非常に重視すべき関係にあります。
 そんな中、私たち一行はまず、1988年から2000年まで総統をされた李登輝氏を訪ねました。李登輝氏は、現在の京都大学で勉学され、日本で学徒出陣されるなど、まさに日本の一番苦しいときを日本人とともに歩まれ、また、大変な親日家でもあり、日本にも友人が多く、約1時間半にわたりお話を聞くことができましたが、その中で貴重な体験を踏まえた台湾や日本のあるべき姿をお話しされ、日本の古きよき文化の創出を養うとともに、日本にももっと強くなってほしいと何度も激励をしてくださいました。私たち一同、幾多の困難を切り開いてきた大政治家の一言一言に強く心にしみるものがありました。
 翌日、日本の国会に相当する立法院を表敬訪問し、議長に当たる王金平立法院院長にお会いすることができました。この立法院は一院制を採用し、行政院の監督、法案の審議、議決を行うということでありました。
 続いて私たちは、元首である総統の官邸にある総統府において蕭萬長副総統にお会いすることができました。蕭副総統は冒頭のあいさつの中で、和歌山県議会では、台湾人観光客へのビザ免除に関して都道府県で一番初めに政府に対し意見書を提出し働きかけてくれ、最終的にこの優遇措置が恒久化され、その結果、双方の観光客数が増加をし、対日関係の重要な一里塚となったと感激の意をあらわされました。
 そして、台湾と日本は正式な外交関係はないものの、各方面での関係は極めて密接であり、今後は和歌山県と台湾の市町村が姉妹都市の締結することや、修学旅行を通じ若い人たちとの交流も深めることということで、さらに緊密な関係を構築してほしいとのことでありました。
 さらに、和歌山県が積極的にPR活動をすれば台湾から5万人は和歌山県に行く余地があるとも述べられ、これは県として真剣な取り組みに値するのではないかと感じた次第であります。
 その日の午後からは台北市議会を訪問し、最大会派である国民党の秦儷舫会長らと面談し、議場も見学をさせていただきました。お話を聞き、大変活発に活動しているという印象を持ちました。
 さて、今回は、元総統や副総統、国会議長など、通常私たちが面会できない要人との面談が実現したのは、この日華親善和歌山県議会議員連盟の発起人の一人であり、初代会長もされ、現在参議院議員の大江康弘氏の働きかけによるものであり、それだけではなく、本人も御多忙の中、現地に来ていただき、案内までしていただきました。また、国交がないため、対日関係の日本側窓口として財団法人交流協会から今井正台北事務所代表と堤尚広台北事務所総務部長にも現地で大変お世話になりました。大江康弘参議院議員を初め、今回の訪問に御尽力いただきました各位に、この場をおかりして心から厚く御礼を申し上げるものであります。
 現地の気温は34度とかなり暑かったわけでありますが、それ以上に、貴重な時間を割き、私たちに会ってくれた大政治家たちの熱い思いに接することができ、私たち一同、身が引き締まる思いがし、今後の県政に生かしていきたいと強く感じ、大変有意義な訪問であったことをつけ加え、報告といたします。
 それでは、通告に従い質問をさせていただきます。
 和歌山の魚、紀州の魚はうまいと各地では人気を呼び、魚介類だけに引っ張りだこであります。しかし、漁業従事者、漁師さんの高齢化に伴い、漁業従事者人口の減少は御承知のことと思います。
 そこで、この議場におられる知事を初めとする皆さん方、本県でとれる魚の量、すなわち漁獲量は、ピーク時に比べてどれぐらい減っているのか知っておられますか。
 昨年1年間の県内の漁獲量は過去最低の2万7000トンで、ピーク時の昭和60年に比べまして3分の1にまで落ち込んできております。この数字は近畿農政局和歌山農政事務所がまとめたもので、県内での漁獲量は年々減少し、昨年は一昨年よりも約2割も減っています。特に、最も多くとれるサバ類が6307トンで前年比26%減、次いでアジ類で6019トンで前年比28%減、イワシ類で3290トン、前年比17%減となっています。さらに、サバでは人気のマサバが少なく、ゴマサバが多いほか、アジではマルアジが多く、値段の高いヒラアジが少なくなっています。このため、私の住む田辺市を初め紀南地方の漁師さんは、漁に出ても水揚げが少なく、しかも安い魚しかとれず、沖に出ても油代を使うだけだと出漁の回数を減らしたり、操業時間を減らしているのが現状であります。
 これらの中小まき網漁や一本釣りの漁師さんらの年収は200万円にも満たない人がほとんどであります。漁業従事者の高齢化対策が叫ばれておりますが、これは後継者がいないのではなく、漁師をやっていても飯が食えんということから、漁師の子供が漁師になりたくても他の仕事についているという時代が訪れています。
 また、養殖業についても同じであります。景気の低迷からマダイを中心に出荷価格が下がり、出荷量も前年に比べ約3割減少をしています。これらの若者の働く場がなくなっていくことは、本県の人口減にもつながることは必至であります。
 さらに、魚がとれないと重油や軽油業者の売り上げが減少するほか、干物など魚の加工業やそれを保管する倉庫業、さらには水産物を運搬する運送業にも大きな影響が出ています。田辺市の運送業者の中には、これまで水産物専門でトラック輸送を行っておりましたが、魚の水揚げが大幅減となった現在、九州や中国地方にまで営業先を求めてトラックを走らせています。もちろん、他の業者よりも安い値段で運ばないと仕事がとれず、油代を差し引くともうけはほとんどありませんが、仕事がないよりましだと、不眠不休でこの厳しい時代を稼いでいるのであります。
 ある漁師さんは、国などの役人は異常気象や黒潮の流れが悪くなったから漁獲量が減っているのではと他人事のように言っているが、生活がかかっている当事者にとっては死活問題であると、農業者にある所得補償を漁業者にも適用するなど、行政に本格的に救済策を求めています。
 そこで、県当局におかれましては、低迷が続いている本県水産業にさらなる本腰を入れていただきたいと思ってる次第であります。
 県では平成18年に、水産業のさらなる振興をと、それまで田辺と串本にあった水産試験場を串本町に統合整備し、近代的な設備をそろえて研究開発に取り組んでいます。
 先月6日、自民党県議団の有志の皆さんとともに試験場を訪れ、さまざまな説明を丁寧に受けてきました。試験場では、昨年度、海水温上昇に伴う漁業への影響や人工漁礁整備による漁獲量の向上、それに小中学生らに和歌山の海と漁業についてももっと知ってもらおうと、くろしおふれあい講座を県内各地で開催をしたり、セミエビ、ゾウリエビ、それにトビウオといった地域特産魚種の漁獲量アップに向けての研究、紀州のクエの養殖における安定技術開発、梅酢をえさに活用した高値のマダイ養殖など、さまざまな研究課題に取り組んでおられます。
 しかしながら、県財政の緊迫化に伴い、試験場の職員はピーク時に比べて半減し、現在は農林水産総合技術センターの配下に入り、しかも、事業予算も年々減少傾向にあると聞いております。
 そこで、本県の水産業を取り巻く厳しい情勢を踏まえて、さらなる研究開発の前進に向けての取り組みをお願いいたしたいと思います。
 また、かつてあった紀州おさかな応援団のような活動の復活であります。和歌山の魚の消費拡大を推進するために、農林水産部や商工観光労働部、つまり全庁挙げてのプロジェクトチームを設けて、深刻な事態を打開していただくことをお願いいたします。本県の水産業の振興について、それに水産試験場の機能強化などについて、当局の取り組みその他についてお伺いをいたします。
 日本古来の食文化の魚を食べる食習慣を若い世代を中心に復活させることであります。魚は、牛肉や豚肉に比べてヘルシーな健康食品として、さらにメタボ対策の貴重なたんぱく源として、また、青魚に含まれるDHAやEPAが体によいと注目されています。
 さらに、もう1つの問題点を指摘いたしますと、日本食といいますと魚と米であります。この米の消費量も昭和44年をピークに半分に減少しています。このように、日本人は我が国固有の食文化を放棄して、焼き肉やハンバーグ、牛どんといった肉食中心の食生活がなれっこになり、その結果、高血圧や高脂肪といったメタボや成人病に陥っているのが現状であります。また、米の消費拡大を図ることによって、みそや漬物、そして豆腐などの消費拡大にもつながるのは間違いありません。
 この魚や米を中心とした食文化の見直しは本県の問題だけではありません。国の農林水産省や厚生労働省、それに総務省や、黒潮や海流などを調査する気象庁、これらが中心になって、まさに国策として日本人の食文化の見直し、それと地産地消、そして国産の食物の消費拡大の観点からもこの運動を推進するよう、各方面に働きかけすべきであります。これらの取り組みについてお伺いをしたいと思います。
 次に移ります。
 漁獲量の低下におけるもう1つの問題点について指摘いたします。
 それは鯨であります。鯨は、人類、私たち人間が1年間に食べる魚の量1億トンの実に5倍の魚を食べると言われています。IWCの決定により、昭和63年から大型商業捕鯨が全面禁止され、また鯨の国際的な保護運動の動きから、鯨は毎年4%ずつふえ続けています。また、現在の推定数2万5000頭のうち2%の500頭の鯨をとっても、資源には影響は出ないとされています。このままのペースでふえ続けると、人類の6~7倍もの魚を食べることになり、人類が食べる魚介類の捕獲量にも影響が出かねません。
 このほか、鯨を取り巻く環境には厳しいものがあり、日本人固有の鯨を食べるという食文化、食習慣について話を続けます。
 鯨の町、太地町は日本の古代捕鯨の発祥地だと言われ、今から約400年前に組織的な産業活動として成功させたのは太地の漁業者が最初であります。また、鯨は戦後の食糧難の時代に貴重な高たんぱく食品として、我々日本人の食卓を支えてきました。国内での鯨漁は、太地町のほか、宮城や岩手、北海道、千葉でしか行われておらず、宮城、岩手では太地町の7~8倍のイルカや鯨を捕獲しています。
 また、漁法は、沿岸小型捕鯨、追い込み漁業、手投げもりで突く突きん棒漁業の3種類がありますが、太地を除く各地は追い込み漁業は行っていません。この追い込み漁業は、鯨やイルカの群れを複数の漁船で湾内に誘導し、網で仕切ってから水揚げをするものであります。
 ところが、太地町のイルカ漁を隠し撮りして最近マスコミで取り上げられている映画「ザ・コーヴ」でのシーンは、イルカが血だらけになっているシーンだけが強調され、事実を誤認した部分が多く盛り込まれてあるとのことであります。極めて厳しい急峻な地理的な条件の中で、捕鯨やイルカ漁で生活をし、発展してきた町の歴史や文化には全く触れることもなく、イルカを虐待しているようなところだけを誇張した、さらに漁業関係者の生活を脅かすといった行為は断じて許されるものではありません。
 さらに、イルカの追い込み漁は、資源に影響が出ない範囲で、国が決めた捕獲枠内でまじめに操業しているのが現状であります。あたかも太地町が悪い違法なイルカ漁をやっているかのような映画は、一方的な価値観の押しつけであり、大きく間違っていると思います。鯨の町だけに目くじらを立てざるを得ません。
 この映画については、隠し撮りによる制作や漁民の肖像権を侵害しているなど、事実誤認があるとして抗議が殺到。上映が中止される映画館も幾つも出ているということであります。また、捕鯨に反対するアメリカの活動家は、映画のPRなどのために来日し、テレビニュースのインタビューで、上映が中止されるケースについて、「映画を上映してほしい。それが民主主義だ」とコメントしていました。民主主義というのは、その地、その場で働いている人々がまず前提であります。太地町ではまさに漁師さんたちが民主主義であるということは全くわかっていません。
 また、太地町では、先般、鯨やイルカを多く食べている町民にWHOの安全基準を超えた水銀濃度が検出されたと発表され、新聞紙上をにぎわしましたが、水俣病のような水銀中毒症状など、健康への影響は認められなかったということであります。
 この水銀騒ぎなどで、太地町の観光、経済面への打撃には大きなものがあります。先日、私どもが視察に訪れた際、三軒町長や町幹部の皆さんは「県としての指導や支援をとにかくお願いします」と、陳情を受けた次第であります。
 太地町では、鯨の町の復活を目指して、IWCでミンククジラの沿岸での商業捕鯨の再開、それに持続・恒久的な捕鯨を求めて、三軒町長らが今月、モロッコで開かれるIWC総会に出向いて鯨漁の振興促進を訴えるということであります。県当局におかれましては、太地町の捕鯨活動や観光面での支援策など講じていくのに、さらに、低カロリーでコレステロールが少なくヘルシーな鯨の食育の普及について、さらに、仁坂知事におかれましては映画についての感想も含めて、今後の取り組みをお伺いしたいと思います。
 次に移ります。
 来る16日から阪和道の海南─有田間9.8キロが片側2車線化され、かなりの時間短縮が図られ、京阪神や和歌山市方面と紀南地方とはより一層近くなります。この2車線化は南進のみで、北進は下津トンネルの改善など、約1年かかるということであります。紀南地方が近くなり、観光や物流面で経済振興が促進されるということは、まことに喜ばしいことであります。
 しかしながら、民主党政権が誕生して以来、本県を取り巻く高速道、自動車専用道の整備は、道路だけに道半ばであります。
 御坊─南紀田辺間は既に4車線化が決まり、予算が計上されていたものの、政権交代により凍結、着工が見送りとなりました。このため、紀南地方の経済振興には大きな影響、打撃が出る、そして地元の長年の悲願であるとして、先月16日、田辺市では観光や飲食、それに町内会連絡協議会や建設業者など57団体から約1000人が参加をして、4車線化の実現を求める市民会議の決起大会が開かれ、その後、大規模なデモ行進が行われ、早期整備促進をとの訴えが続きました。一方、民主党の国会議員らは、4車線化は必要だが、まず有田─御坊間が先であると表明をしています。
 この4車線化の問題について仁坂知事は、国交省の説明会で、着工の見送りについて「恥を知ってもらいたい」と強く反発したということであります。このような動きは、日本で一番大きな半島の中にある紀南地方や日高地方には4車線化という利便性の高い高速道路を何が何でも絶対に早期整備をとの声を受けてのあらわれであると思います。
 4車線化が図られて便利になり、特に高速1000円と、土日・祝日には京阪神や和歌山市方面から紀南地方に行楽客のマイカーなどがどんどん訪れるのは大変喜ばしいことであります。しかしながら、田辺インターチェンジを越えて県内最大の行楽地、白浜へ入る国道42号では、田鶴交差点周辺で南進、北進とも大渋滞が発生しています。新万方面から県道南紀白浜空港線を通って白浜温泉にたどり着くには、ひどいときには50分近くから20分余り、ふだんの5~6倍の時間がかかっています。
 ある行楽客は、「白浜に行くには行のようなところがある。なぜなら、朝早く大阪を出て、海南の手前で渋滞に巻き込まれ、さらに、やっと白浜やと思ったら、その手前で渋滞。温泉でリフレッシュしていやされて帰路につくと、田鶴の交差点で渋滞。さらに、高速に乗ると有田を先頭に20キロ、30キロの渋滞に巻き込まれるのは、リフレッシュどころか余計にストレスがたまる旅となる。何のための旅行かわからん。しばらくの間は白浜に行きたくない」と本音を話してくれました。この人のように、紀南旅行へのリピーターが大きく減少することは、観光立県推進に取り組む本県にとって大きな問題であります。
 この田鶴交差点近くには国道をまたぐ立体の大きな橋が整備され、一般のドライバーは、あの橋を通ると白浜へスムーズに行けると勘違いしたケースもあるということであります。
 この交差点周辺の整備を図り、国道と県道の一部を拡幅することによって、大きく渋滞は解消されるのは間違いありません。この渋滞により、田辺市の新庄や跡の浦地区、それに神島台や滝内町の住民は、生活道路が確保できないと頭を抱えています。ある住民は、土日に田辺駅前近くにちょっと用事に出かけようとしても、道路が大渋滞。しかも、これらの日には県道での渋滞を避けて私ども住宅地に侵入してきた車両が自転車の子供をはねるといった交通事故を引き起こすケースも生じており、どないかしてほしいと私のところに苦情を寄せています。
 そこで、この田鶴交差点の整備改良や渋滞解消について、県当局の取り組みについてお伺いをいたしたいと思います。
 続きまして、道路整備について質問を続けます。
 紀伊田辺駅や市役所周辺には、もちガツオやエビだんご、そして南蛮焼きといったうまいものを食べさせたり販売する名店が幾つもあります。また、昔、熊野もうでの参拝客が買ったことが古文書にも書き記された「辻の餅」という何百年ものしにせのお菓子店も人気を呼んでいます。しかしながら、和歌山に住む私の友人は、これまで田辺へ行くには道が迷路みたいで狭いし、わかりにくいと話していました。また、銀ちろという活魚やてんぷらが有名な飲食店がありますが、昼間の来客数は駅近くにある本店に比べてはるかに多いということであります。つまり、観光バスも含め、車が駐車しやすいということであります。
 このように、田辺市では道路事情が悪く、商店街には人通りが少なく、シャッター通り商店街となったところもあります。しかし、田辺駅から市役所横への南北へ通じる文里湊線1本ができたことによって人と車の流れが大きく変わり、バスも運行されるようになりました。
 南北の通りは改善されたものの、東西はあと一歩といったところであります。この東西を結ぶ道路、商店街を通る都市計画道路、元町新庄線という総延長2450メーターであります。昭和37年に明洋交差点をスタートし、元町、江川、片町、銀座、海蔵寺と5つの工区を通って湊交差点まで完成し、このたび仁坂知事も出席のもと、めでたく開通の運びとなりました。商店街の人々はもちろんのこと、地元民やこの路線を利用される人々には大変期待される道路として喜んでいただいております。今日まで100億円近い予算をつけていただきましたこと、国、県、市の御努力に対し厚く感謝をしている次第であります。
 ところが、残り460メーターの一部暫定の未整備区間があり、事業費は約30億円がかかると聞いております。また、完成までには7年ぐらいかかると言われておりますが、7年はちょっと長過ぎます。この計算でいきますと、1年間に65メーターしか建設されないことになります。一刻も早い完成を望む次第であります。
 この道路、昭和37年から現在に至るまで半世紀近くも経過をし、その間、バブル崩壊や財政難等の厳しい時代もありました。中には、20年前に完成をしていれば商店街ももっと活気が出ていたなと言われています。それには間違いありません。さらに、旧国道で生じた交通渋滞も大きく解消されていたほか、明洋交差点からつぶり坂まで距離も時間も短くなり、タクシー料金も安くなるなど、利便性が大きく向上されるのは間違いありません。それだけに、この道路、田辺市の中心市街地活性化のためにも単年での整備が不可欠であります。早急に整備できますよう強くお願いし、知事に今後の取り組みと見通しについてお尋ねをいたします。
 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(冨安民浩君) ただいまの大沢広太郎君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、捕鯨活動への支援、それから映画についての感想と今後の取り組みについてお答え申し上げたいと思います。
 議員お尋ねの捕鯨活動への支援につきましては、昭和63年の国際捕鯨委員会の決定により、現在のところ、ミンククジラなどの商業捕鯨が停止されておるということは御指摘のとおりであります。しかしながら、ミンククジラの資源量は近年増加している中で、地元漁業者等の要望がありまして、県といたしましては政府に対して商業捕鯨の再開を繰り返し働きかけているところでございまして、先般も政府要望でそのことを申し上げに参りました。
 また、映画についてでございます。
 「ザ・コーヴ」という映画がございまして、これの感想と今後の取り組みでございますけれども、この映画につきましては、屠殺現場などをセンセーショナルに映し出すとともに、高濃度の水銀が蓄積されているといった内容もあると聞いております。すなわち、事実に反するようなこともあると。しかも、例えば漁の方式については、実は映像に出されたところは、今は少し改善をされているというようなところも、現在まだ行われているような表現で映じられているということを聞いておりまして、こういう一方的な価値観や間違った情報──これはわざとかもしれませんが、情報に基づいてイルカ漁を批判しているものと私は受けとめております。
 太地の方々、太地の漁民の方々も、何も好きこのんで動物の命を奪っているわけではございません。現にそれで生活をしているわけであります。西洋にも、例えばキツネ狩りとか闘牛とか、さまざまなものがございます。それを好きだ、嫌いだという人はたくさんございます。だけど、好き、嫌いというのはいいけれども、それを激しく攻撃したり中傷したりするということはどうなのかなというのは一般的にあると思います。
 世界じゅうには、このようにいろんな職業、あるいはいろんな文化を持っている人々がいて、それに対しての一定の理解を持ちながら世界じゅうの人々が暮らしていくべきだ、そういうふうに私は思います。自分たちの好みに合わぬからといって激しく攻撃していいのかどうか、そういう問題があると考えております。
 それから、批判の方法──それを問題だと言うことは許されているとは思いますけれども、その方法についてもございます。例えば、その屠殺現場を隠し撮りするということについては──例えば牧畜をしている方がいらっしゃいます。牧畜をしている方は大切に大切に自分が飼っておられる家畜を育てておるわけでありまして、きっと愛情を持ってやっておられると思います。しかし、その方々はこれを売らないといけない。でないと生活ができません。それを屠殺場で殺さないといけないというわけであります。そういうところを例えば隠し撮りをされて残酷だと言われたら、その牧畜をやっている方はどういうふうに思うでしょうか、というようなことをこの映画は内包しているというふうに私は思います。
 太地町の漁民の方は、生活を守るためにずっと伝統漁法を続けてまいりました。海の恵みにいつも感謝して、やむを得ず命を絶つ動物には祈りをささげながら、せめてできるだけ多くのところを利用しようということで、ずっと資源を大切にしてきたわけであります。もちろん、地球から、あるいは我が国から、いろんな天然資源がなくなってしまってはいけません。その点でも、イルカは適切な管理のもと、持続的に利用できる有用な資源であると考えておりますし、このため、国や県の管理のもと、一定頭数の捕獲を行っているということでございまして、この点でも何ら批判されるものではないと思います。
 県といたしましては、漁業者の生活を守ることが第一であります。このため、国や町などと連携し、機会あるごとに太地のイルカ漁に対する攻撃の不当性を国内外に強く主張してまいりたいと考えております。
 次に、都市計画道路元町新庄線についてでございます。
 去る3月31日に海蔵寺工区280メーターが供用開始され、4月10日に海蔵寺通りまちづくり協議会が主催する元町新庄線の開通を祝う会に私も御招待していただきまして、参加させていただきました。まちの人々の協力と、それから知恵を出していただいて、みんなで協力をして、国や県も努力をして、それでこの開通が行われた。改装されたこの町並み、これもすばらしいものがあるというふうに私は感動いたしました。
 この区間につきましては、既にこのように整備とあわせて立派なまちづくりができていっているわけでございますけれども、議員御指摘のように、未整備区間460メートルが残っております。昨年度から全区間で事業着手しているとこでございまして、今年度予算につきましてもできるだけ早くやりたいという気持ちから、ことしの作業手順からすると精いっぱいというような予算をつけさせていただいたところでございます。
 今後、田辺市の中心市街地の活性化を図るため、地元の皆様の御協力を得ながら──これは立ち退きなどもありますので──そういう方々の御協力も必要でございます。そういう御協力も得ながら集中的に整備して、一日も早く事業の完成を達成して、それで田辺市の方々が立派なまちづくりをする、そういうお手伝いをしたいと、そういうふうに考えているところでございます。
○議長(冨安民浩君) 農林水産部長阪中栄一君。
  〔阪中栄一君、登壇〕
○農林水産部長(阪中栄一君) 水産振興と水産試験場の活用についての御質問でございますが、議員御指摘のとおり、近年の漁業を取り巻く環境は大変厳しく、漁獲量も全盛時から比べますと著しく減少してございます。その主な要因といたしましては、水温の上昇等海洋環境の変化による影響や藻場、干潟の減少等が考えられるところでございます。
 このため、県では平成20年に水産業活性化アクションプログラムを策定し、漁獲量を上げるための取り組みとして資源回復計画の実施等による主要漁業の構造改革や養殖業等の推進、また、さきの政府提案では地域の実態に合ったいそ根漁場造成事業の創設について要望を行ったところでございます。
 また一方、魚価対策といたしましては、昨年度から新農林水産業戦略プロジェクト推進事業を活用した未利用魚の加工品開発、またヒロメの生産拡大や販路開拓等に取り組んでいるところでございます。
 こうした中、水産試験場では、これまで漁場予測システムの開発や藻場の回復、またクエ等の種苗生産による新たな栽培漁業や養殖技術開発の取り組みを進めてまいりました。今後は、こうした取り組みに加えまして、現在大きな問題となっているいそ焼け対策やタチウオ等の主要魚種の資源回復、ナマコ等要望の高い魚種の種苗生産を重点に、さらに開かれた試験場としての情報発信等にも力を入れてまいりたいと考えてございます。
 また、鯨を含めた魚食等の普及につきましては、伝統的な日本の食文化という観点から、これまでも中学生等を対象にした魚のおろし方や食べ方などの料理講習、漁協等による朝市での啓発、学校給食への導入など、さまざまな取り組みを実施してきてございまして、今後とも関係機関と一層の連携を図りながら、積極的な取り組みに努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(冨安民浩君) 商工観光労働部長岡本賢司君。
  〔岡本賢司君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本賢司君) 太地町観光への支援についてでございますが、議員御指摘のとおり、太地町といえば古代捕鯨発祥の地であり、くじらの博物館に代表されるように、文字どおり最大の観光資源は鯨であります。
 県といたしましては、映画「ザ・コーヴ」が観光面にもたらす影響について、今後とも地元と連絡を密にし、観光客の動向を把握するとともに、鯨を初め海、温泉、グルメなど、太地町が有する大きな魅力をより一層地元と連携して積極的に情報発信し、誘客を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(冨安民浩君) 県土整備部長茅野牧夫君。
  〔茅野牧夫君、登壇〕
○県土整備部長(茅野牧夫君) 国道42号田鶴の交差点についてでございますが、高速道路が田辺まで開通したことに伴い交通量が増加して慢性的な渋滞が発生しており、特に観光シーズンの休日には白浜方面から著しい渋滞になっております。
 このため、これまで国と県が連携して交通量の調査や渋滞の解析などを進め、白浜方面から田辺バイパスに入る車線の拡幅改良などによる対策を検討してまいりました。今後とも引き続きまして、国に対して平成23年度の事業化を働きかけてまいります。
 なお、こうした対策を進めるとともに、抜本的な渋滞対策としては近畿自動車道紀勢線の田辺以南の整備が最も効果を発揮すると考えるため、その整備促進に全力で取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(冨安民浩君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(冨安民浩君) 再質問を許します。
 13番大沢広太郎君。
○大沢広太郎君 ただいま、知事初め部長から答弁をいただきました。特に知事におかれては、今、太地町が大変苦しんでおられる問題を特に御理解をしていただいたなと、そのように思ってございます。今後ともよろしくお願いしたいと、そのように思ってます。
 また、道路でありますが、今、茅野部長からの答弁もいただきましたが、田鶴交差点、そして我々の町なかであります田辺市のこの道路についても、できるだけ早く工事を進めてもらえますように特にお願いをして、要望といたします。
○議長(冨安民浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で大沢広太郎君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 25番多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕(拍手)
○多田純一君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきたいと思います。
 第174回通常国会は、会期延長もせず、本日閉会するとの報道がされております。総理がかわり、内閣がかわったにもかかわらず、予算委員会も開催しない選挙最優先の判断となっています。景気の低迷や財政状況が厳しい中、政策を進めようとしないことに国民は納得できないと思います。そんな民主党政権に危惧を抱いている一人でございます。
 圧倒的な支持率のもと船出した鳩山政権が、わずか8カ月余りで崩壊いたしました。新たな総理には、鳩山政権のもと、副総理兼財務大臣の菅直人氏が就任いたしました。参議院選挙前に看板のかけかえのみが行われたわけであります。期待が高かった分だけ失望も高く、政治への信頼をなくした責任は大きいと言わざるを得ません。その後、小沢前幹事長との距離を置く人事の刷新で支持率はV字回復ということですが、鳩山政権崩壊の原因と言われる政治と金、そして沖縄普天間基地移転問題は何も解決されていない状況です。
 沖縄普天間基地移転問題については、日米合意を踏襲する姿勢を示しただけで、沖縄県民を初め国民が納得できるめどは全く立っておりません。
 政治と金の問題で、我が党が提出した政治資金規正法改正案が衆議院の特別委員会で審議入りしただけで、本気に議論することなく廃案になります。政治家の監督責任の強化、企業団体献金の全面禁止という政治資金規正法の抜本改正を求める要望書、108万人以上の署名に協力していただいた人たちの意向を無視した形となり、小沢前幹事長の政治倫理審査会さえ開かない疑惑隠しといい、根本的な政治への信頼は取り戻せないままであると言わざるを得ません。
 そして、新たな懸念材料として取り上げられておるのが、1つ、開かれた政治、透明な政治運営として標榜した民主党政権が、首相の取材も官房長官の会見も削減し、国民との窓口を閉ざす方向に向いているのではないかという指摘をされております。
 また、新閣僚にも事務所費の問題が発覚。これもどうなるのか。過去の事例とも比べても大きな問題となる可能性があるかもしれません。
 重要法案と位置づけている割には、温暖化基本法や労働者派遣法改正案、郵政改革法関連法案など先送りし、支持率が高いうちにとの思惑で、政策実現より選挙優先となっています。法案成立率は戦後最低となりました。
 昨年の総選挙に勝つためにマニフェストの中で実現もできない項目を並べ、国民を欺いたことへの反省がないままに野党に対し「財政健全化のための与野党協議機関をつくろう」と言うのは、副総理兼財務大臣だった自分の責任をまず語ることが信頼のできる政治家の姿勢ではないでしょうか。そのために、民主党マニフェストの仕分けを行い、できもしない公約をしたことについて国民に対し謝罪をすべきだと考えます。
 小沢前幹事長が、いやしの地、熊野古道を訪れ、自身の退任のタイミングをぎりぎりセーフだったと言及したそうであります。つまり、すべてが目前の選挙目当ての国民の目を欺く姿としか言いようがありません。一時はその疑惑隠し、本質隠しができたとしても、国民の目は欺けません。いずれ暴かれてまいります。
 最近、政治評論家の森田実氏が御自身のブログで指摘しています。その話を引用すると、「民主党は鳩山・小沢体制下で誇大広告的、人気取り的な大盤振る舞い的公約によって選挙に勝った。しかし、この公約の多くは実行できない。結果として国民をだましたのだ。政治において国民をだますことは最も罪深いことである」。また、「国家の実力は地方に存する」、明治の文豪、徳冨蘆花先生は申されました。「地方が栄えて初めて国が栄える。国の力の源泉は地方にある」と。このような政権を相手に地方の政治も待ったなしに進めていかなければならない課題が山積をしております。
 信頼という点で、私は3年前の6月議会で仁坂知事に、県民との対話が必要と申し上げました。県政の経験が未熟な私がとの思いもありましたが、福島、和歌山、宮崎と3つの県で同様の理由で知事が逮捕され、和歌山県はだんご3兄弟ならぬ談合3兄弟とやゆされて大変恥ずかしい思いをしていましたし、当時、県民が県政への信頼をなくしており、県出身の新しい知事を選んだものの、ほとんどが知られていない点や、官僚出身で行政を進めることには高い期待感はあったでしょうが、地域の課題を直接聞き、県民が親しみを感じる県政に携わっていただくには、どうしても知事から地方に出向き、積極的に多くの県民と共有する時間をとっていただきたいとの思いからでありました。
 知事主催の行政報告会は、29市町村38会場、あとは湯浅町を残すだけと伺いました。代々の知事の中でも画期的なことだと評価できると思います。私が出席した会場からも、仁坂県政の2期目を期待する声が上がっておりました。頑張っていただきたいと声援を送らせていただきます。行政報告会を通し、県内の状況を肌で感じ取っていただいたものと思います。
 「地方が栄えて初めて国が栄える」──県政の課題とその取り組みについて、知事に御所見をお伺いします。
 続いて、健全な青少年の育成についてお伺いをします。
 本年4月に子ども・若者育成支援推進法が施行されました。自公政権のときに成立した法律です。この法律の目的は、子供・若者が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであること、そして、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子供・若者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、子供・若者の健やかな育成や社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援その他の取り組みについて、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めております。また、子ども・若者育成支援推進本部を設置すること等により、総合的な子供・若者育成支援のための施策を推進することを目的にしております。
 背景には、有害情報のはんらん等、子供・若者をめぐる環境の悪化、ニート、ひきこもり、不登校、発達障害等の子供・若者の抱える問題の深刻化が挙げられております。推計によると、ニート、ひきこもりともにふえているのではないかと危惧されております。
 国は子ども・若者育成支援推進本部を立ち上げ、支援推進大綱を策定。都道府県、市町村においては努力義務として子ども・若者計画をつくることになっております。その中で、地域における子ども・若者育成支援ネットワークを構成していくことにしております。
 この4月から庁内新組織として、青少年・男女共同参画課に自立支援班を新たに設置していただいております。子供・若者を取り巻く現状の認識と今後の施策について、仁坂知事にお聞きをしたいと思います。
 2点目に、少子化対策のため、国の基本政策として次世代育成支援を進め、家庭や地域社会における子育て機能の再生実現を目標にした次世代育成支援対策推進法と、このたびの子ども・若者育成支援推進法との関連について、環境生活部長にお聞きをしたいと思います。
 健全な青少年の育成についての3点目としてお伺いします。
 平成20年に地域若者サポートステーションわかやまを和歌山市に設置して2年がたちました。この間、関係者の御努力により利用者もふえ、スタッフも充実してまいりました。和歌山市以外は田辺市にも設置、橋本市、紀の川市、海南市、有田市では月1回の出張相談会を開催し、定着してきているそうでございます。
 3年間のふるさと雇用再生特別基金を活用しての事業も行っております。先日もサポステわかやまに行って話をお伺いしました。統括コーディネーター1名とキャリアコンサルタント2名、そして訪問支援員1名でスタートし、昨年7月にはアウトリーチ支援員2名を強化、今年度はさらに1名増員、7名の常勤スタッフ、そして非常勤の臨床心理士の方と事務員の方となっております。最近では、体験ファームなど、ジャガイモの収穫作業や苗の植えつけ、畝の雑草取りなど、農業体験などを通して働くことへの不安を解消することに役立てているそうです。
 ニート、ひきこもり対策は、不登校や高校中退とも深刻な関係が指摘される中、2年や3年で終わらせられるような事業ではないことははっきりしてることと思います。今後の事業展開について、環境生活部長にお聞きをしたいと思います。
 続いて、教育問題についてお尋ねします。
 最初に、教職員人事権の移譲についてお伺いします。
 和歌山県の長期総合計画に基づき、和歌山県教育振興基本計画においても、和歌山県の目指す教育の方向性は「未来を拓くひたむきな人間力を育む和歌山」の実現に向けてとなっています。未来を担う子供をいかに元気に育て、可能性を伸ばしていけるか。和歌山の未来を開くことになります。本県の実態は、多少の改善は見られるものの、ほとんどの問題がワーストランクに上がっております。県内での地域間格差が目立ち、改善を要する喫緊の課題となっています。
 義務教育における県教育委員会の役割は、1つ、教職員の採用、2つ、管理職登用、懲戒、3つ目、学級編制、教職員定数、4つ目、教職員の異動・研修となっています。つまり、教職員の採用や給与の負担という人事の権限を担っているものの、その実、県教育委員会の権限というのは市町村教育委員会に対し指導、助言、援助することにとどまり、管理することにはなっておりません。設置者であるそれぞれの市町村教育委員会の管理のもと、学校長が主体的にカリキュラム教育課程の編成や学校運営を行うことになっています。つまり、児童生徒や保護者が日常的に関心を持つテーマで、県教育委員会がかかわることはほとんどないというのが実情です。
 学校現場での問題が生じた場合、例えばいじめや不登校、非行問題など、子供たちにかかわる課題は県教育委員会ではどのように把握し、対応するのでしょうか。後日、数値的な把握はしても、対応となったら直接にはできません。機に応じた指導や適切な助言を行うことについては限界があるのではないでしょうか。
 また、教員についても、管理監督は当該の学校長となっています。異動に関しては、学校長の内申も参考にしながら、市町村の教育委員会の意向も尊重するとしています。管理監督は学校長となっていますが、懲戒処分などでは、ほとんど記者発表の際も学校長を同席させることなく、県教委独自で行っております。ここ10年間、ほぼ毎年のように飲酒運転での懲戒処分がなされています。服務規律の遵守と綱紀の厳正保持について、再三再四、通達や緊急の教育長会議を招集されたとも伺っております。一方で、県教委人事課だけで県内の教職員すべての人事管理をすることに限界があるのも理解ができます。
 教職員人事権の課題につきましては、これまでも先輩・同僚議員からも御意見がありました。昨年、私も中核市における人事権移譲の問題を取り上げました。昨年、一昨年と2年続けてきた国への要望、地方の実情を無視して教職員の人事権を中核市に移譲しないようにとの項目がことしは外れております。これは、ことし4月の文科省の見解として、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第55条の適用が、法律を改正しなくても、都道府県の解釈で中核市にとどまらず一般市町村にも特例制度として活用できるとしたからであります。
 この人事権移譲の問題につきましては、主な意見として、「市町村が設置し、教職員も身分としては市町村の職員でありながら、給与負担と人事権が県にあるのは制度の不統一であり好ましくない」とか、「県費負担教職員が地域に根差す意識を持ちにくくなっている」とか、「より現場に近いところに権限をおろすべきである」との意見等もある一方、反対に、「小規模市町村にとって人事権行使に伴う負担に耐えられない」や「中核市など抜きで広域の人事異動は考えられない」との意見など、全国でのさまざまな意見を踏まえて、文科省での見解は、教職員の人事権については市町村に移譲する方向で見直す方向性を明らかにしていました。
 そして、当面、すべての中核市に移譲し、その状況を踏まえつつ、特例市など他の市町村への人事権移譲について検討することが適当としていました。その考え方が、都道府県で先ほどの地公行法55条を特例として条例化できるとし、それぞれの判断にゆだねられたわけであります。
 大阪府では、これを受けて進み出しています。地方分権の流れを思うとき、早急な受け皿づくりを検討することも必要になってまいります。加速度的に進むことも考えられます。本県の考え方について教育長にお伺いをいたします。
 最後に、文化・芸術振興の取り組みと今後の対応についてお伺いをしたいと思います。
 文化・芸術は人々に喜びや感動を与え、本物の芸術は心を豊かにし活力を与えます。かつてアメリカは、ニューディール政策による文化・芸術振興で深刻な不況を克服しました。現在のように経済が低迷しているときこそ、文化・芸術を通じて日本を元気にすることが重要と考えます。
 民主党のマニフェストには、芸術文化活動への支援とうたっています。しかし、実際の事業仕分けでは文化・芸術への助成金が大幅に見直しとなりました。特に、芸術家派遣事業は地方への移管と判定をされてしまいました。これに対し、「仕分けのやり方が余りにも乱暴。哲学がない」、「人間の成熟は文化・芸術なくしてあり得ない。人の心を豊かに育てるためには時間がかかる」とすぐ反応したのが日本芸能実演家団体協議会、落語芸術協会等で、すぐさま要望書を提出されました。
 文化・芸術にもっと理解をと大勢の声が上がり、その声に押されて、今年度は名前を変え継続されることになりました。文化・芸術に対する民主党の稚拙な考え方や改めて文化・芸術への重要性が見直されたという点ではよかったかもしれません。
 国において文化芸術振興基本法が平成13年12月に施行され、和歌山県では平成21年3月、文化芸術振興条例を制定、それに基づいて文化芸術振興基本計画がこの4月にまとまりました。平成26年度までの5年間の計画となっています。
 このたびの参議院選挙でも公明党はマニフェストで文化・芸術の振興を掲げています。そして、すべての国民がゆとりと心豊かな生活を実現していく上で必要不可欠なものであり、我が国のこれからの発展を考えるとき、文化・芸術の果たす役割は大きいものとして期待をしております。
 そのために、私は、小学校、中学校でそれぞれ在学中にプロの芸術家による本物の舞台鑑賞ができるようにと願う一人であります。現に、文化芸術創造プランに名前が変わりましたが、子供のための優れた舞台芸術体験事業があります。2001年より実現したものですが、もっと拡充してほしいとの声が多数寄せられ、我が党の浮島とも子参議院議員が尽力し、2004年402校だったものを2010年には1442校まで拡大をしています。
 そこで、教育長にお尋ねします。
 学校教育の中で本物の文化・芸術に触れさせるということに関してどのようにお考えなのか。
 また、本物の舞台芸術体験事業、学校の芸術家派遣事業等、和歌山県の実施状況はどのようになっているのか、お聞きしたいと思います。
 また、今後、文化・芸術の分野における体験学習をより一層推進していただきたいと思いますが、そのことに対するお考えをお聞きしたいと思います。
 以上、お尋ねして1回目の質問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(冨安民浩君) ただいまの多田純一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、「地方が栄えて初めて国が栄える」という徳冨蘆花さんのお言葉に関する県政の課題と取り組みについてでございますけれども、私は、県民の皆様の御意見を聞くということがすべての出発点であると、前回の選挙のときからずっと言い続けてまいりました。その思いでずっとやっております。そういうことでいろいろ工夫をいたしまして、これもやろうということで、県行政報告会というのを御指摘のように開催させていただきまして、県の行政の報告を行うとともに、住民の皆さんから多くの御意見をお伺いしてるということでございます。
 その中で、地域の皆様からいただいた道路や河川の整備、あるいは農林水産、観光などの地域を支える産業の課題や、あるいは過疎、高齢化などの御意見から、皆様が持たれている将来への不安感を直接肌で感じることができた次第です。それを帰ってから具体的に部内で整理をし議論をいたしまして速やかに手を打つように努めております。説明を聞いていただくのも大変有意義だと思いますが、それとともに、私のほうで聞かしていただくというのも大変収穫が多かったというふうに思います。
 一例を挙げますと、中小河川の水害対策につきましては、私も白状いたしますと、この深刻さについては今よりももう少し軽く見ていたというふうに思います。そこで、早速22年度予算からこの予算を伸ばすようにいたしまして、数値で言うと23%伸ばしたけれども、残念ながら国のほうで、その後、補助金という形ですが、20%カットされてしまったんで、せっかくの皆さんの思いが足を引っ張られることになりましたというようなことは、この議会でも申し上げたところでございます。
 御質問にありました徳冨蘆花の「地方が栄えて初めて国が栄える」という言葉は、国が栄えるためには地方が栄えなきゃいかん、地方を支える事業に国が率先して取り組まなければならないということを示したものだと私は思います。和歌山県に関しては、高速道路の4車線化凍結を初め、農業基盤整備の国費としての大幅な削減、あるいは地域科学技術振興施策についての消極化など、その点はなかなか地方を支えるような事業に率先して力を入れるんだというふうにはどうもなってないなというふうに思います。
 その厳しい状況のもとでも、国のせいばかりにして我々が手をこまねいているわけにはいきません。したがって、我々、本県にとって最も重要なテーマであるところの元気な和歌山づくりに取り組まなきゃいけません。そのためには、技術開発や販売促進に着目した県内企業の競争力の強化とか、あるいは企業誘致の推進とか、観光の振興とか、産業の振興とか、新たな雇用創出を図るとともに、地域のすぐれた資源を活用した活力ある地域づくり、さらにはそれを支えるためのインフラの整備、そういうものが必要でございます。
 国の責めに帰すべきインフラの整備というのもありますが、それがおくれていれば、これを県が主導すべきインフラでもってどうやってカバーしていくか、しばらくしのぐか、そういうようなこともまた考えて、本県の活性化につながる諸施策を着実に推進していくこと、これが重要であると考えております。
 続きまして、健全な青少年の育成についてでございます。
 私たちのふるさと和歌山県の将来を担っていくのは、申すまでもなく今の青少年たちであります。青少年には、社会の激しい変化に対応するための生きる力とか、良好で適切な人間関係を築く能力、あるいは道徳心とか規範意識を持ってよりよい社会づくりにかかわろうとするそういう意欲、そういうものを青少年の方にはぐくむ、そういうことが重要になると思います。そして、よき社会人として自立していく資質や能力を身につけ、和歌山県の将来を担っていってほしいと考えております。
 しかしながら、近年は青少年を取り巻く環境は急激に悪化しております。現象的には、ニートとかひきこもりなど、青少年に関する問題が深刻化しておりますし、もう嫌になるような犯罪も起こります。本県においてもニート、ひきこもりのほかにも不登校あるいは高校の中途退学者など、いわゆる社会生活を円滑に営む上で困難を有する青少年、これは私どもの見解では1万人にも及ぶと推計されております。
 これらの問題は長期化すればするほど、こういう方々の社会への復帰が困難となります。放置できない問題と、そういうふうに認識しているところであります。こういう状況を見聞きするにつけ、このままでは和歌山県、ひいては我が国はどうなってしまうのかという強い危機意識を持っております。
 これらの問題の解決に向けて、それぞれの責任者がそれぞれ一生懸命取り組んでいなきゃいけません。県におきましても、各部局でそれぞれ一生懸命、それぞれ用意した諸施策に取り組んでいるとこでありますが、いろいろありまして、どこへ相談に行けばよいのかわからないという若者の声もよく耳にいたします。また、発達段階に応じた支援とか、あるいは切れ目のない支援、ぶつ切りでない、縦割りでない支援を行うためには単一の機関では限界がある、それぞれ別々にやっていては限界があると考えます。
 そこで、私は、行政として早期かつ総合的な青少年の支援体制づくりが不可欠であるという思いから、今年度、青少年・男女共同参画課──これはもともとありますが──ここに支援体制づくりの中心となる自立支援班を新設いたしました。青少年が抱えるさまざまな問題や悩みに対応するために、ここに総合相談窓口を開設するとともに、この人々と、それから公的支援機関、あるいは民間支援機関、こういう方々が密接に連携したネットワークを形成いたしまして、それぞれの専門性を生かした切れ目のない支援を行っていくことによりまして、社会全体で青少年を支える環境を整備し、1人でも多くの青少年を自立へ、困難の克服へと導いてまいりたいと考えております。
 同時に、健全な青少年をより素直にすくすくと伸ばしていくことも非常に重要であると考えまして、青少年自身が主体的に次世代リーダーを養成するリレー式次世代健全育成事業、これは昨年度から実施させていただいております。こういうものを核にした地域における体制づくりにも力を注いでいるところであります。
 今後、これらの施策を両輪として、青少年の健全育成に全力を挙げてまいりたいと考えております。
○議長(冨安民浩君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 引き続きまして、健全な青少年の育成についてお答えを申し上げます。
 まず、次世代育成支援対策推進法と子ども・若者育成支援推進法との関連についてでございますが、厚生労働省が所管する次世代育成支援対策推進法は、安心して子供を産み育てることができる環境づくり、また、次世代を担う子供たち1人1人が健やかに生まれ育つための環境づくりについて規定しております。
 一方、本年4月1日に施行されました子ども・若者育成支援推進法は内閣府が所管するもので、青少年対策の基本的な性格を持ち、社会の構成員としての子供、若者に焦点を当て、その社会的自立のための国や地方公共団体の責務について規定いたしております。
 また、対象につきましても、前者はおおむね18歳まで、後者は子供だけでなく広く30歳代の若者までを視野に入れております。とりわけ、昨今の青少年を取り巻く環境の深刻化やニート、ひきこもりの高年齢化にかんがみ、社会的自立に困難を有する若者の支援に重点が置かれ、今年度から新たに取り組む若者自立支援事業の根拠ともなっているところでございます。
 両法は、このようにその成り立ちや対象とする年齢を異にはしておりますが、健全な青少年をはぐくむという点におきましては、御指摘のように重複する部分も少なくはありません。このため、今後、国の子ども・若者育成推進大綱を受け、和歌山県子ども・若者計画の策定時におきましては、次世代育成支援対策推進法に基づく和歌山県次世代育成支援行動計画との整合性を十分に図ってまいりたいというふうに考えてございます。
 次に、次年度以降の事業計画についてでございますが、若者自立支援事業につきましては、支援を必要とする若者の支援対策事業として、問題や悩みを抱える若者に対応するための総合相談窓口の県庁舎内への開設、ニート等の状態にある若者の職業的自立を中心に支援している地域若者サポートステーションの運営を行います。また、若者の状況に応じ、個別的かつ継続的に支援を行うため、支援機関同士が密接に連携したネットワークづくりを進めているところであります。
 本年度は和歌山県ふるさと雇用再生特別基金を活用し、事業を実施しているところですが、地域若者サポートステーションにおける利用者が増加している現状からかんがみ、今後も若者からのニーズが高まることが予想されるところであり、若者の自立支援に大きな成果が期待できるところであります。
 次年度以降も、若者を取り巻く環境、事業の成果等を勘案しながら事業の実施に努めるとともに、一層の充実を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(冨安民浩君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 教職員人事権移譲についてお答え申し上げます。
 議員御指摘のとおり、文部科学省は本年4月、教職員の適正配置と人事交流の円滑化により教育水準の維持向上を図るという現行制度の趣旨と目的が損なわれることのない範囲においてという条件つきで、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第55条の規定により、条例による特例制度を活用して教職員の任命権を移譲することが可能との見解を示しました。
 しかしながら、本県におきましては小規模な市町村が多く、単純な問題ではないというふうに考えてございます。もし人事権を移譲した場合、人口約37万人の和歌山市においてはスムーズな教員配置ができたとしても、他の市町村におきまして教員の確保が難しくなるなど、さまざまな課題が生じると想定され、一部市町村への人事権移譲にとどまらない課題があると認識をしてございます。
 このため、本県では、政府に対しても、地域間格差が生じないための条件整備が伴わない限り市町村への人事権移譲は適切ではないと要望してきたところでございまして、また、これまでも人事異動に当たりましては、個々の教員の要望や市町村教育委員会の意見を勘案して行ってきたところでございます。
 教員の採用や配置につきましては、どの地域においても一定の教育水準を担保するという子供の教育権にかかわる重要な課題でございますことから、今後とも教育現場や各市町村の声を尊重しながら、全県的な立場に立って行うことが大切であると考えてございます。
 また、昨年9月に御指摘をいただいた後に設けました各地方代表の教育長等による今後の教育システムの在り方に関する協議会におきましても、こうした問題に対しての共通理解を図り、本県として懸念していることについても御理解をいただきたいと考えてございます。
 次に、本物の舞台芸術体験事業、学校への芸術家派遣事業につきましては、本物の文化・芸術に触れる機会の少ない和歌山県の教育現場にとりましては大変効果の高い事業でございまして、本物には子供たちの魂を揺さぶる本物だけが持つ大きな力があり、人間としてのあり方、生き方につながる子供たちの情操を養う上で大変大きな効果があると考えてございます。
 本物の舞台芸術体験事業、学校への芸術家派遣事業の和歌山県での実施状況とその評価でございますが、本物の舞台芸術体験事業につきましては、過去5年間で70校が実施し、今年度も26校が実施する予定となってございます。学校への芸術家派遣事業は、過去5年間で36校が実施、今年度5校が実施する予定でございます。
 また、県が行っております青少年劇場小公演は、過去5年間で68校、今年度が12校で実施する予定でございます。今年度も含め、この6年間での実施学校数は総数207校に及びますけれども、県下の小中学校は約400校ございますので、決して多い回数であるというふうには考えてございません。各校在学中に最低でも1回は本物の芸術に触れる機会を設けられるように、これらの事業の利用も含め、各市町村と協力して、より多くの子供たちが本物の芸術文化に触れる機会をふやすよう努めるとともに、子供たちの生の反響を国等へ届けるなどしてまいりたいと考えてございます。
 以上です。
○議長(冨安民浩君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(冨安民浩君) 再質問を許します。
 25番多田純一君。
○多田純一君 それぞれ御答弁をいただきました。ありがとうございます。
 青少年健全育成についてということですけども、知事並びに当局の積極的な取り組みを伺い、少しは安心をいたしました。
 しかし、子ども・若者総合相談窓口というのを今度開設されるという、こういう御答弁でございましたけども、昨日の向井先輩議員のお話にもありましたように、ひきこもり等を含めまして、やっぱり若者のいろんな、精神的にも、また自立という面でも大変相談が多くなってる。
 こういう現状の中で、新たにお取り組みしていただけるということでございましたら、ぜひ他府県なんかの状況なんかもよく見ていただいて、県庁内ということじゃなくて、ぜひ身近な県民と接してやるような、県民が相談しやすいような、そんなところも考えていただくような、また、その子供、若者に関するセンター機能というんでしょうかね、そういう機能も含めて、そこに相談すれば何でも相談できるんだよという、安心できる、そういう施策をぜひ和歌山県としてもつくっていただきたいと、これは要望とさせていただきたいと思います。
 それから、教職員の人事権移譲について、この問題は昨年、私、質問させていただいて、その質問を受けて協議会の設置ということで進めていただいているようでございますけども、こういう地方分権、また地域主権、そういう部分の流れというのはかなり加速度的に行われると思いますし、県民の関心というんでしょうか、そういうのもやっぱり高いと思いますので、ぜひその協議会を立ち上げたということや、その議論の方向性がより理解できるようにお願いをしたいと、こういうふうに思います。
 それから、もう1点、文化・芸術の振興という点でいうと、今、教育長のお話にもありましたように、各学校でそれぞれ1回ずつと、こういう目標等も御提示いただきました。ぜひその学校の取り組みに温度差がないように、全員が享受できるように機会を図っていただきますようにという要望を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(冨安民浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で多田純一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時33分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(坂本 登君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 33番片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)
○片桐章浩君 こんにちは。議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。どうかよろしくお願いしたいと思います。
 1問目は国の名勝指定の和歌の浦の活用について、これを第1項目とさしていただきます。
 去る5月21日、文化庁文化審議会文化財分科会で国の名勝として答申されたのが、和歌山県の和歌山市においては和歌の浦地域であります。今回答申を受けたのは第1区、和歌の浦干潟、片男波、玉津島神社、塩竈神社、妹背山、そして三断橋を初めとするこの地域となっております。この地域は和歌の浦の中でも景観の中心となる地域で、学術的には価値が高い範囲と答申されているとお聞きしております。
 この機会に和歌の浦について再発見をするため、簡単に和歌の浦の価値の源泉を述べてみたいと思います。
 まず、妹背山であります。妹背山には、徳川家康の側室であった養珠院──お万の方なんですが──家康の33回忌を機に発願した海禅院多宝塔、これが存在しております。ここには1649年に多数の経石が集まったことから、地下室におさめられた海禅院多宝塔が1655年に建立されております。この法華経の題目を石に書写し、全国から集めた事業は、当時の上皇から庶民に至るまで階級を超えたものであり、封建社会の中にあってこのことがなされた事実は、我が国の歴史上ほかに例を見ないものになっております。
 私もこの経石の発掘調査に参加さしてもらったことがありますが、その目的は、養珠院の経石埋納の意義を明らかにし、和歌浦の歴史的景観保存とその活用を図ることにありました。発掘調査は平成16年から翌年にかけて実施されてきましたが、今から思いますと、今回の名勝指定の証拠を探したような調査であり、和歌の浦の歴史的価値を実践して探り当てていた皆さんの活動のすばらしさを思うばかりであります。
 また、妹背山につながる三断橋ですが、和歌山県では最も古い石橋で、橋の原形は4世紀もの間にわたって崩れることなく今日に至っている。ただし、平成16年の3つの台風の影響によって、現在、橋は修復作業を行っている。こういう状況になっております。
 玉津島神社の歴史はもっと古く、724年にさかのぼります。724年に即位した聖武天皇は、和歌浦に行幸されまして、そこで見た和歌浦の景観にひどく感動、この場所を守るため玉津島の霊を祭ることを命じました。玉津島が神の君臨する場所として、また神そのものとして祭られていたとも言われております。この神社は、1585年には紀州を平定した豊臣秀吉が玉津島にもうでていますし、その後、浅野幸長によって社殿の再興が図られております。その後、徳川頼宣によって本社殿の本格的な整備が図られ、現在に伝えられている。
 以上のことから、この場所は和歌浦の中でも歴史的景観の中心とも言える場所、このようになっております。
 今回指定に答申された和歌の浦の歴史を振り返ると、歴史に彩られたすばらしい地域であるということを私たちは思うことができます。
 ここに至るまでの間には、ずっと以前から和歌浦の地元で地域振興、あるいはボランティア、清掃活動、そういったことを実施してきた方々の地道な活動があったこと、これが今回の国の名勝指定につながる基礎をつくったのではないかというふうに思います。問題は、これから指定を受けた後の取り組みをどのように展開さしていくか、こういうことになろうかと思います。
 具体的に申しますと、ことし8月に国の名勝指定を受けようとする第1区地域内の景観や歴史的建造物の保全をどうしていくのか。観光案内板、説明板の設置をどうしていくのか。案内板に関しては、景観を損なわないように周囲に溶け込み、しかも、観光に来られたお客さんのために目立つ存在、これの必要があります。既にモデルとしては和歌浦みちしるべの会が設置している道標が参考になろうかと思います。
 そして、この地区ではもう1つ大きな事業が現在進行されておりまして、妹背山海禅院徳川期伽藍復興事業、これが計画されております。妹背山海禅院は1652年から1658年にかけて建設されたものですが、創建当初は現在ある多宝塔──残ってるのは多宝塔なんですが──その前に唐門、拝殿、瑞門、そして観海閣、こういうふうな配列で設けられておりました。
 今回、平成の復興計画では、これらの諸堂諸門のうち、今は失われてしまっている拝殿、経王堂を初め、唐門、瑞門など、江戸中期の最もよくこの場所が整備された時期の建造物を忠実に復元させ、また、参詣道の整備、参詣者のための休息所の建設など、環境整備を行おうとしております。
 今回の国の名勝指定を契機として、県内からだけではなくて、県外の方にもこの平成の復興事業の歴史的意義を知っていただき、弾みをつけてくれることを願っているところであります。
 また、東照宮や天満宮、そして御手洗池に代表される第2区についても早期に指定されるように作業を進めていただきたいと思いますし、名草山地域の第3区、雑賀崎地域の第4区についても、現在のところさまざまな課題があるとお聞きしておりますが、第1区の標識や観光説明板の設置の際には、第4区までを含めた統一的なデザインと設置場所、これを検討してほしいと思っています。
 これらの問題に関しては、今後は国の名勝指定を受けた後は和歌の浦保存管理計画を策定する、そしてここで進めるということをお聞きしておりますが、ここでは広く地元で活動してきた方々の参画も必要だと思いますので、この点もよろしくお願いしたいと思います。
 それから、少し話題は変わるんですが、この地域内でトイレの問題というのもたびたび指摘をされております。知事の計らいで、「わかやま観光情報」という和歌山県のホームページがあるんですが、このサイト内に「わかやまのトイレマップ」というのが掲載されております。このサイトが開設されたときは、地元の方々で公衆トイレを管理されてる諸団体があるんですが、この皆さんが、知事が我々の活動をわかってくれたとひどく喜んでいた、感謝していたということを思い出させるところなんですが、この妹背山周辺にはトイレがありません。国が価値を認めようとしている観光地としての和歌の浦の玄関口であるこの地区にトイレがない、これは問題だというふうに思います。
 和歌の浦学術調査報告書によると、この地区は和歌の浦の歴史的景観を形づくるものとして極めて重要な史跡である。極めて重要な史跡を訪れた人にとって、この地にトイレがないとは決して思っていないと思います。コアとなる場所にトイレの設置というのは非常に難しい問題かと思いますが、周辺部の適切な場所にきれいなトイレを設置する、こういったことも含めて今後の課題として指摘をしておきたいというふうに思います。
 それからもう1つ、今度は域内ではなくて、観光に来られたお客さんが和歌山市に入ってからの問題であります。高速道路、阪和高速自動車道の和歌山インターチェンジ、それから南海フェリーの和歌山港、これをおり立った自家用車による観光客が道路標識を見ながら和歌浦にたどり着くというのは意外と難しいんではないかなと、いろんな方と意見交換する中でわかりました。
 今回資料をちょっとお手元にお配りさしてもらっておりますが、これが阪和道からおりて和歌浦に至る道、それから南海フェリーの場所から和歌浦に向かうにはどう行ったらいいのかなというのを現場調査をした写真と、少し砕けた表現での解説文を入れておるんですが、実際走ってみますと、なかなか国の名勝指定を受けるであろう観光地にたどり着くのは難しいんではないかなと思いました。本当に観光地と言えるためには、県外の方がスムーズにたどり着ける、こういった道路標識も必要かなと思います。和歌山市の中でも観光地らしい和歌の浦であってほしいものですから、道路案内標識の改善についても検討課題かというふうに思います。
 以上の意見を述べた上で、質問をさしていただきたいと思います。
 まず、知事にお伺いさしてもらいます。
 1つ目、国の名勝指定を受けようとする和歌の浦の価値についてどう考えているのでしょうか。和歌の浦を名勝指定を受けた観光地としての価値をどこに見出しているのでしょうか。
 全国的な視点からすると、この地域が栄えたのは昭和30年代。現代的な観光地、いわゆるリゾート地とは違い、若い女性客や家族連れが訪れるような観光地とは少し趣を異にしているような気がします。国の名勝指定の意義は歴史的価値とすぐれた景観にある、このように思いますから、現在の若い人たちが訪れようと思ってもらうためには、何かここに味つけをしないと比較的地味なテーマになってしまうかもしれない、こういうふうに思っております。
 今回、国が名勝指定しようとしている8月、この機会を逃すようでは今後長きにわたって観光地和歌の浦を売り出す機会というのは失われるんではないかなというふうに思っておりますので、今から売り出すための観光施策を用意しておくべきだと思います。和歌公園そのものに価値があると思いますが、ここにどのような彩りを加えて国の名勝指定和歌の浦を売り出そうと考えているのでしょうか。
 また、妹背山海禅院徳川期伽藍復興事業は、江戸中期の最もよく整備されたそのころの建造物を忠実に復元させるものですが、国の名勝指定を前に、あわせて復興事業をアピールする必要もあると思いますが、知事の意見をお聞かせいただきたいと思います。
 続いては、教育長から答弁をお願いします。
 指定が受けられる見込みの第1区地域内の景観や歴史的建造物の保全をどうしていくのでしょうか。観光に来られたお客さんに名勝和歌の浦の精神を伝えるための説明板の設置についてどのように考えているのか、お答えください。
 また、今後は和歌の浦保存管理計画を策定する、こういうふうに作業は進むと思いますが、委員構成は行政関係者以外の地元活動家の皆さんにも委員として参加してもらう、このようなことも考えられると思います。構成メンバーのうち民間委員の人選についてはどのようになってますでしょうか。特に、和歌の浦地域は地域振興のために活動実績のあるすぐれた団体・組織がたくさんありますから、活動実績のある団体の代表者の方にも入っていただいて意見を聞いてほしい、このように思いますが、いかがでしょうか。
 続いては、商工観光労働部長にお願いいたします。具体的な観光施策に関してであります。
 和歌の浦は中期滞在型の観光資源とはなりにくいのではないかなというふうに思っておりますが、今回、国の名勝指定される地域、そしてマリンスポーツの魅力の地としての観光地としてお客さんを呼び込める、このような地域でありますから、仕分けをした誘客キャンペーンが必要かというふうに思います。名勝指定を受けた後の和歌浦の観光施策についてお聞かせいただきたいと思います。
 この質問の最後は、県土整備部長に答弁をお願いしたいと思います。
 和歌山インターチェンジ、南海フェリーの和歌山港から和歌の浦に至る道路案内板標示に関して、県外から来られるお客さんの視点からの標示のあり方について一度検討を加えて見直していただきたい、あるいは追加していただきたい、このように思いますが、いかがでしょうか。お答えいただけたらと思います。
 続いて、中国人観光客施策について質問をさしていただきます。
 先月、議長のお許しをいただきまして、和歌山県の企業誘致、それから観光誘客について調査するために香港を訪れさしていただきました。香港は初めて行かさしていただいたところなんですが、訪問した先の皆さんとの交流から、エネルギッシュなすばらしい経験をすることができました。国際金融都市香港は、言うまでもなくロンドン、ニューヨークに続く世界3位の金融センターとなっております。
 私のほうからは、和歌山県は関西国際空港から40分の距離にあり、香港、中国企業の進出や投資先としての資質を兼ね備えた地域であることや、海のあるリゾート地としての魅力も兼ね備えている、そういった場所であることを訴えてきました。関西空港を中心として円を描くと、和歌山県、特に和歌山市は近距離で、中国からの観光のお客さんを迎えるのに適した場所であることを理解してくれたように思います。
 訪問した会社の1つでは、年間10便、チャーター便を日本に向けて出発さして運航しておりまして、中国と日本の地方都市を結んでくれていました。和歌山県の場合、白浜空港は滑走路の距離が短い問題から大型のチャーター機の運航は難しい、こういうことだったんですが、関西空港から和歌山県入りするコースの設定、これがあれば検討は可能性もあるよと、そういうことにもお答えをいただいているところであります。特に海と温泉、ゴルフ、これを組み合わせることによって、和歌山県は観光地としての実力を備えている場所であるということも少しは理解してくれたのではないかなというふうに思っております。
 そして、ここで言われたことは、中国南のほう、南部ももちろんそうなんですが、これからは東北三省の経済発展の伸びがすさまじく、経済の重点地区になっていくよと、こういうことも知ることができました。企業の集積ももちろんですが、観光の誘客と日本への観光旅行もこの地域では有望であるそうです。既に東北三省には観光PRのために日本から多くの知事が訪れているということもお聞きしておりますが、仁坂知事は多分まだだったというふうに思いますが、一度その辺も考えていただければどうかなというふうに思います。
 続けて、先方、企業の方に幾つかの施設を案内してもらったわけなんですが、香港市内のショッピングモール、ここも見学をさしていただきました。香港で気づいたことは、低層階がショッピングセンターやレストラン、これを配置しまして、中層階から上はマンション、オフィスビル、このようになっている建築物が非常に多いということです。香港のような大規模なテナントとマンションや事務所棟を組み合わせた建築物は、日本では余り見ることが少ないのではないかなというふうに思いました。
 我が国でも地方都市の空洞化した中心市街地に必要なものは、定住人口と交流人口の増加、この2つの要素が必要と思いますが、この地では2つの要素を実現している事例がたくさんありました。和歌山市に今以上の活力を持たせるためには、投資を呼び込むこと、これが必要で、外国の視点からすると、日本といえば東京とそれ以外、そういうふうな認識がございまして、香港や中国にないものを保有しているまちが投資対象になる可能性があります。我が国の地方都市が活性化しない理由は、外からの、県外からの投資がなかなか呼び込めない、こういうことだと思います。投資を呼び込める地域であることが都市再生のために必要だということをつくづく感じた次第でありますが、ところが、その投資を呼び込むことが非常に難しい問題となっております。
 つき合いとかボランティア、そういったところで、和歌山にじゃあ行くよ、投資するよと言われるほど甘いものではありません。投資した分以上に採算がとれることや地域としての将来性が見込める場所である、これが投資対象、進出対象、あるいは観光に送り込む対象、こういうことになります。その要素というのは、地方自治体が計画してつくり出さなければならない問題だというふうに思います。つまり、投資家が投資案件になる、観光に来てもらえるような場所になる、そういう地域である、それを和歌山県でつくり上げなければならない、このように思います。
 日本への観光客の送り込みに関して、和歌山県との関係についても検討してくれております。リゾート地としての和歌山県に関心を持ってくれた、このように思いますから、これから検討すべき事柄がたくさんあると思います。結構問題は山積しておりますが、苦しみながら楽しい分野がこの観光分野ではないかなというふうにも思います。
 それからもう1つ、日本の企業進出についての問題なんですが、再三聞かれたのが日本の法人税についてです。これはもう何度も何度も、何度も何度もというぐらい、しつこいぐらい質問を受けました。
 日本の法人税は、御存じのように、世界の中では最も高い利率の国の1つとなっております。法人税と住民税、所得税を含めた法定実効税率、これは40%になっておりまして、かなり高い水準だというふうに思います。香港の法人税は約10%から15%程度ですから、日本は投資先としては到底魅力的とは言えないようです。
 つまり、利益の半分近くを税金として持っていかれるわけですから、そのお国柄というのは少し理解しがたいよと、こういうふうな感じすらありました。日本で事業をした場合、投資した資金を回収する時間がかなり長期間になる、それならば自分の国でやったほうが、事業領域を拡大するほうが利益を得られる、こういった理由なんです。
 そこで、我が国が中国とビジネスや観光でつき合うための課題は、日本企業にも当然該当することなんですが、法人税の軽減措置、中国人観光客の所得要件の緩和、滞在期間の延長、こういったことが必要だなというふうに思いました。
 そんな中、さきに先輩議員から質問がございましたように、さきの5月18日、中国人観光客の受け入れ基準の緩和を岡田外務大臣が表明しています。平成22年、つまりことしの7月1日から個人向けのビザの発給対象を中間所得層まで広げるというもので、ビザの発給要件を満たす層は従来の10倍、1600万世帯にも及ぶ、こういう見通しであります。
 緩和されるのは、大手クレジットカード発行のゴールドカードを所有している、官公庁や大手企業に勤めている、年収でいいますと約80万以上の収入がある、こういった方々が対象になるんですが、それよりも、観光にとってのビジネスチャンスはもう1つの点でありまして、ビザの発給窓口、これが現在ある北京、上海、広州、この3カ所から重慶、瀋陽、青島、大連、こういった在外公館にも広がる。先ほど言いました東北三省で言いますと瀋陽、大連が該当しますが、そういったところでもビザの発券が受けられるということで、日本の観光事業としてはチャンスが広がることになっております。和歌山も、もちろんチャンスになります。
 ただ、問題があります。平成20年の実績ですが、日本を訪れた中国人の方の都道府県別の訪問率、上位から言いますと、東京都が76.9%で最も多く、大阪府が47.9%、神奈川県が36.2%、このように続いております。つまり、観光というよりもショッピングが主な目的で来日していると、こういうことが推測できます。観光客の受け入れ基準の緩和要件があったとしても、和歌山県への観光誘客はそれほど簡単ではないと思います。課題は和歌山県が中国からの観光地であり得るか、この点がテーマとなってこようかと思います。
 中国人が望んでいるものは、ショッピング、温泉、おいしい食事、ゴルフ、そしてパンダ、別荘、こういったものだということです。これらが中心的な観光資源になり得ると思います。パンダは意外に思ったんですが、これは北京動物園に行かないと見ることができないので十分に和歌山県の観光資源になるよと、こういうものでありました。
 ただ、もう1つ弱点を言いますと、和歌山県だけを観光地として送り込むというのは少し弱い、こういうことが言われました。つまり、和歌山県に来るのに絡めて大阪、京都、こういったところを絡めて、観光地として売り出す、あるいはプランが必要だというふうなことが指摘されております。
 和歌山県の優位性は温泉と食べ物、ゴルフ場、この辺は大丈夫だと思いますが、問題は大きな誘客要因であるショッピングセンターであります。ショッピングの分野であります。ショッピングといいましても、スーパーブランドや電気製品、こういった取りそろえた場所が必要だと思いますから、ぜひともまちの中に装着したいなというふうに思うんですが、ここでは都市計画というのが必要かというふうに思います。
 つまり、観光地であるためには、普遍的な価値が認められている和歌山県が誇る世界遺産、それから国の名勝指定を受けようとする和歌の浦、こういった観光地に加えて、ショッピングセンターやテーマパーク、そしてゴルフ場などを兼ね備えた都市形成が必要だというふうに思います。対外的には観光キャンペーン、観光施策は講じてくれているところでありますが、同時に、観光に来られるお客さんを受け入れられるだけの都市計画が必要だということも一般質問をする前に各部局の方とかなり議論をさしてもらったんですが、なかなか難しい問題だなということで、今回はこれ以上触れさしていただくことはできないんですが、課題だというふうに思います。
 香港というのは、御存じのように、アヘン戦争の時代である1865年、香港上海銀行が設立されて以来、世界の金融センターとしての機能を持っている。これが、ここに企業や人、観光客を集中させている要因であります。何もない場所に高層ビル、人が集まるはずがありません。都市形成においては原因があり、結果を招いている、このように思っておりますから、和歌山県も都市形成の部分でもぜひ見習いたいものだというふうに感じております。
 以上、報告の中から1点、質問をさしていただきます。
 和歌山県の持つ観光資源のアピール、これも必要なんですが、これだけでは中国人観光客の要件緩和の受け皿になる見込みというのはそんなに大きな要因にはならないと思います。そこにはショッピングゾーンの形成が必要であり、ゴルフ場、温泉を配置するなど、まちとしての魅力づくりが必要だと思います。外国人観光市場は巨大で、本年度は和歌山県では中国を観光市場として重点ですよというふうにとらえてくれているようですから、期待をしているところであります。
 特に、東北三省は観光市場として大きな市場だと考えていますが、東北三省への観光アピールや施策はどのようなことが考えられるのでしょうか。寒い地域の人が観光地としての和歌山県に魅力を感じることは自然の流れでありますから、ぜひとも考えてほしいと思います。この点に関して、商工観光労働部長に答弁をお願いしたいと思います。
 最後に、国内クレジットについて質問をさしていただきます。
 国内クレジットというのは、二酸化炭素排出削減事業、このことを指します。もう少しかみ砕きますと、中小企業が対象になりまして、中小企業が排出権削減事業者となりまして国内クレジット──これは二酸化炭素をこれだけ削減しますよというクレジットを発行します。国内クレジットは主に大企業が引き受けます。そのことによりまして中小企業に資金を循環させる、この制度のことを国内クレジット制度と言います。大企業にとっては自主行動計画の目標達成に国内クレジットは活用できますし、中小企業は資金調達と自社の二酸化炭素排出を削減できる、この2つの効果が期待できるわけであります。
 また、和歌山県にとってありがたいことは、森林部門も森林バイオマスなどによって排出削減事業が可能であり、和歌山県では既に日高川町が木質バイオマス事業によって国内クレジットの認証を受け、年間約15万円の資金が得られる、このような計算になっております。
 そして、この中小企業や農林部門、民生部門の排出事業計画を支援する仕組みというのが国に存在しております。中小企業等の実施する排出削減対策支援事業がそれで、国内クレジット制度の活用が見込まれる中小企業に対して、排出削減事業計画の策定支援と排出削減事業計画の審査費用──これ、審査を通過しなければならないんですが──これの一部支援のソフト支援、この2つの制度があります。
 和歌山県として低炭素社会実現のために国内クレジットを普及さしてほしいと思いますし、このクレジット事業を活用して地域に資金を還流させる、この仕組みを普及さしていただきたいというふうに思っております。多くの県内中小企業の方が参画してくれますと、和歌山県の国内クレジットを全国の大企業が購入してることになりますから、企業にとっても国にとっても、外国から排出枠、排出権を購入している、この資金が少なくて済み、その資金は大企業のある大都市から和歌山県に資金が流れてくる、こういう仕組みがつくれることになります。
 和歌山県としては、そこで得た資金をさらに国内クレジット対象事業に再投資することでさらに資金が得られる、こういう仕組みを構築することも可能であります。環境先進県を目指している和歌山県としては、ぜひとも取り組んでいただきたいテーマの1つだというふうに思います。
 国内クレジット制度を活用すれば、大企業でなくても中小企業や農林業の分野で二酸化炭素排出削減が可能となりますし、資金を得ることもできますから、県内の中小企業者の皆さんにとっても利点がありますし、何よりも京都メカニズムのクレジット購入のために外国に流出している資金を国内に回帰させることができますから、和歌山県としても国益を守る活動、これを行えることになります。
 現在、排出削減の方法は29件あります。主なものを言いますと、ボイラーの更新、バイオマスを燃料とするボイラーの新設、ヒートポンプの導入による熱源機器の更新、空調設備の更新、照明機器の更新など、初期投資が必要なんですが、比較的導入が容易なものもこの中にはあります。
 ところが、平成22年6月現在、国内クレジット制度で認証を得ている、または認証が得られる予定の和歌山県内の中小企業はわずか5件であります。全国の府県としても比較的少ない地域となっております。進まない理由として考えられることは、制度が十分に認知されていないこと、それから、案件化から事業計画策定までの支援体制がわからない、こういったことが考えられようかと思います。中でも、審査費用の支援があること、排出削減事業計画の無料作成の支援の仕組みがあること、この辺を認識していただけたら、参加を希望する中小企業の皆さんも出てこようかというふうに思います。
 今後、環境先進県を目指すのであれば、環境保全と資金を得ることができる、この仕組みである国内クレジット制度にぜひ和歌山県として力を入れていただきたい、このように思っているところでありまして、最後に環境生活部長に答弁をお願いしたいと思います。
 和歌山県として国内クレジット制度の活用をどのように考えているでしょうか。また、国内クレジット制度の認証をこれから推進させるための施策を講じる必要があるかなというふうに思いますが、これからの和歌山県としての展開についてお答えをいただきまして、私の一般質問とさしていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(坂本 登君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 和歌の浦についてでございますけれども、このたび開催されました文化審議会において和歌の浦を名勝に指定するよう答申され、大変喜んでいるところでございまして、これを機に、ぜひとも和歌の浦を積極的に売り出してまいりたいと考えております。
 和歌の浦は、議員お話しのとおり、古くは聖武天皇行幸の際、同行した宮廷歌人山部赤人が「若の浦に潮満ち来れば」と詠んだ、当時の都の人のあこがれの地でありまして、時を経た今も日本を代表する景勝地であると思います。また、紀州東照宮や三断橋、それから海禅院多宝塔など、紀州徳川家ゆかりの建造物が残る歴史文化の地でもあります。
 議員から色をつけるというお話がありましたが、私が思いますに、万葉と徳川かなというふうに思います。いずれも歴史的景観を守り、これをアピールしていくということが観光にもつながると考えます。
 私も、以前、地元の方々に和歌の浦を御案内いただきましたときに、改めてこの身近にあるすばらしい景観、文化遺産的な価値を改めて認識いたしまして、これを守っていく必要性を痛切に感じました。そうした思いを持って、本年3月に文化審議会の審議委員の方々が視察にお見えになったんですけども、私も現場に赴きまして、委員の皆さんに一生懸命説明をさせていただきました。
 また、和歌の浦を愛する地元の方々が、日ごろから清掃や、それからトイレ手入れとか、あるいは美観整備、さらには妹背山徳川期伽藍復興事業に取り組まれておりまして、その活動、御努力に感謝申し上げますとともに、そうした地元の皆さんを初め、和歌山市や関係団体とも十分連携しながら、多くの観光客に訪れていただけるよう、長い歴史に裏づけられた和歌の浦の魅力を積極的に発信していきたいと考えております。
○副議長(坂本 登君) 商工観光労働部長岡本賢司君。
  〔岡本賢司君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本賢司君) 名勝に指定されることとなった和歌の浦の観光振興についてでございますが、県ではこれまでも、和歌の浦を初め県内万葉ゆかりの地を訪ねる紀伊万葉の旅を提案し、ガイドブックやウオークイベント等を通じて誘客に努めてきたところでございます。
 今回の名勝指定は、まさに和歌の浦を売り出す絶好のチャンスととらまえてございまして、地元和歌山市や地域住民の皆さんとも十分連携しながら、紀伊万葉を初め、周辺の東照宮や天満宮、紀三井寺、養翠園等を含めた和歌の浦を風光明媚な歴史文化エリアとして、また、海水浴やヨット、ウインドサーフィンといったマリンレジャーが楽しめるエリアとして、さらにはとれたての新鮮な海の幸を味わうことのできるグルメなエリアとして、マスコミや旅行会社に対しさらに積極的にPRし、和歌の浦の観光振興につなげてまいりたいと考えております。
 次に、中国への観光施策についてでございますが、県では中国を本年の観光振興の重点国としてとらまえており、個人ビザ取得要件の緩和、上海万博への出展、山東省や遼寧省との友好関係を生かしてプロモーション活動を強化することにより、中国からの観光客数の増加を目指してまいります。
 議員からお話のありました東北三省でのプロモーション活動につきましては、今後、関西国際空港との定期直行便を有する遼寧省、黒龍江省、吉林省を主なターゲットとしまして、観光関係事業者とともに、議員御指摘にございました温泉やパンダを初めとして、温暖な気候、豊かな自然など、和歌山の魅力を盛り込んだ旅行商品の造成及び販路開拓に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○副議長(坂本 登君) 県土整備部長茅野牧夫君。
  〔茅野牧夫君、登壇〕
○県土整備部長(茅野牧夫君) 道路案内板についてでございますが、本県では法令等にのっとり、できるだけわかりやすい案内標識や補助標識を設置しております。
 議員御指摘の県外から来られる皆様の視点から、和歌浦への道路案内標示に関しましては、道路標識による方法やほかの方法も含めまして、できるだけわかりやすい案内方法はないかなどについて、関係機関とも協議をしながら検討してまいりたいと思います。
 以上でございます。
○副議長(坂本 登君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 国内クレジットについての御質問でございますが、国内クレジット制度につきましては、議員御指摘のとおり、中小企業等における温室効果ガス排出削減の取り組みを推進するとともに、これまで海外からの京都メカニズムクレジット購入に充てられていた大企業等の資金を地域への投資に振り向ける制度として、とりわけ中小企業比率の高い、また環境先進県を目指す本県にとりましても、非常に意義があるものと考えてございます。
 県内における国内クレジット制度の活用促進につきましては、事業者の皆さんに、制度そのものはもちろん、国が実施している計画作成等に係る支援制度、また審査等に係る経費助成制度などについても広く知っていただくことが重要であります。
 このため、近畿経済産業局や商工会議所等と十分に連携を図りながら制度説明会を開催するほか、産業別担当者制度を活用するなどして、適応事例の掘り起こしなど、国内クレジット制度の普及に努めてまいります。
 以上でございます。
○副議長(坂本 登君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 国の名勝指定和歌の浦の活用のうち、第1区地域内の保全につきましてお答え申し上げます。
 和歌山県教育委員会では、今年度から、幅広い人々の意見を聞きながら保存管理計画を策定することとしてございます。この保存管理計画に沿って、景観や歴史的建造物の保全を行ってまいりたいと考えます。また、説明板の設置につきましても、庁内関係機関と協議してまいります。
 続きまして、策定委員の選定についてでございますが、委員会は学識経験者や地元連合自治会、関係行政機関で構成することになってございまして、また、和歌の浦で活発に活動されている民間団体の方々から幅広く御意見を求めるために、部会組織の設置についても検討しているところでございます。
○副議長(坂本 登君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○副議長(坂本 登君) 再質問を許します。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○副議長(坂本 登君) 以上で、片桐章浩君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕(拍手)
○奥村規子君 議長のお許しを得ましたので、通告に従って一般質問をさせていただきます。
 まず最初に、障害者自立支援法についてお伺いいたします。
 障害者自立支援法は、2006年4月に施行されました。施行の背景には、国は、それまでの障害保健福祉施策では身体・知的・精神障害といった障害種別等によって異なる福祉サービスや公費負担医療の利用の仕組みや内容などを一元的なものとすることや、その利用の増加に対応できるように、制度をより安定的かつ効率的なものとすることが求められてきているということから、2006年10月には全面施行されました。
 支援法の目的は、障害者や障害児がその有する能力と適性に応じ、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスにかかわる給付その他の支援を行うことにより障害者や障害児の福祉の増進を図り、障害の有無にかかわらず、国民が相互に人格と個性を尊重し、安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与するとなっています。
 しかし、現実的には、障害が重ければ重いほど利用者の負担がふえるというものになっています。自立支援法施行前より多くの障害者や関係団体からこの法律の廃案を求める声が上げられていました。施行後も、福祉や医療サービスを受けた障害者に利用料の負担を強いる支援法の抜本的見直しや廃止を求める声が広がり続け、大きな運動に発展してきました。そして、自立支援法の応益負担は法のもとの平等などを定めた憲法に反するとして、2008年10月31日、全国8地裁に一斉提訴され、翌年2009年4月1日には和歌山を含め10地裁、その後も提訴があり、原告71名、14地裁に裁判を起こしました。被告は国及び住んでいる自治体になっています。
 このような中で、厚生労働省は本年1月に、支援法を廃止して2013年8月までに新法を制定することなどについて基本合意を交わしました。基本合意の中身は、憲法13条、14条、25条の理念に基づき、違憲訴訟を提訴した原告らの思いに共感するというものです。そして、自立支援法を障害者の意見を十分に踏まえず施行し応益負担を導入したことにより、多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者への人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らを初めとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するというものでした。
 今後、新たな総合的な福祉制度を制定するに当たっては、障害者の参画のもとで十分な議論を行うと約束しました。私も和歌山地裁に傍聴に行き、そのときの原告の意見陳述を聞きました。
 ここで、皆さんにも聞いていただきたいと思います。原告の意見陳述を御紹介したいと思います。「障害者自立支援法は、支援費制度が始まってすぐ後に国が財政難でお金が足りなくなったと言い出して、障害者の声をほとんど聞かずにつくった法律です。成立前からさまざまな問題点が指摘されていて、僕たちも、これから生活は一体どうなるのだろうという不安でいっぱいでした。法律ができる前から、全国各地の仲間たちが国会や厚生労働省に何度も足を運び、反対の声を上げてきました。中でも応益負担、支給量、施設報酬の日割りの問題などは深刻で、全国の実態を知れば知るほど恐ろしくなりました。 応益負担や支給量では、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた方々も多くいます。自立支援法になり、障害年金だけで生活している人でも、介護を受けると毎月1万5000円とか2万5000円というお金を払わなければならなくなりました。しかも、障害が重ければ重いほど負担が大きくなります。僕の周りにも、自立支援法になってから生活がとても苦しくなり、必要な介護を受けられなくなった方がいます。僕は自立支援センターの代表を務めていて収入があるため、月3万5000円以上も負担していました。これではとても生活が成り立ちませんでした」。
 今の制度では、私は、働いても働いても生活が成り立たないということが改めて裁判の中で明らかになったのではないかと思いました。
 彼はまた、このようにも言っています。「サービス、支給量の問題は地域生活において大きな問題です。支援費制度のころは、今よりは1人1人のニーズに応じて支給量を認めてくれていたと思います。しかし、自立支援法になり、障害者を障害程度区分ごとに機械的に分けられ、サービス、支給量もそれによって決められてしまうようになりました。個人のニーズはどこに行ってしまったのかと疑問だらけでした。どこでだれとどんな生活を送りたいのかという当事者の希望やニーズを無視した法律を許すことはどうしてもできませんでした。そこで、僕はこの裁判に加わることにしました。 和歌山での提訴から丸1年がたちました。全国で一緒に闘っている仲間たちや弁護士の方々、この裁判を応援してくださっているめざす会や関係者の方々の御支援があったおかげで、ここまでやってくることができました。ありがとうございました。その間にも政権が交代し、障害者福祉にも明るい未来が見えてきました。自立支援法を廃止し、4年後には新法をつくるという長妻厚生労働大臣の力強い言葉があり、期待と希望を胸に、仲間たちみんなで喜び合いました。 ことし1月7日には国と基本合意を結ぶことができました。それによって、4月からは低所得の方の利用者負担がゼロになります。この裁判も国や和歌山市と和解できることになりました。今、国では障がい者制度改革推進会議が開かれています。どんな新法になるのか注目し、全国各地からの当事者の声を反映させていきたいです。また、一緒に裁判を闘ってきた全国の原告らと国とで話し合う検証会議に僕も参加して、どんどん意見を述べていきたいです。何より先に、障害者1人1人が夢と希望を持ち、幸せに伸び伸びと自由に暮らせる社会をつくらなければいけません。僕もそのために力を入れていきたいと思います」と結んでいます。これは彼一人だけの気持ちではないことが痛いほどわかりました。
 私の姉も障害がありました。姉が亡くなった後、母は次第にパーキンソン病の症状が進行し、自分では全く身動きできない状態になってしまいました。母は口癖のようにいつも「姉を置いては安心して死ねない」と言っています。心安らぐ日はないと思います。私も、一日も早く、障害があっても普通に安心して暮らせるような法制度の確立を強く願わざるを得ません。
 そこで、知事にお尋ねします。
 知事は障害者自立支援法違憲和歌山訴訟での和解をどのように受けとめられていますか。
 また、現在内閣府に置かれた障がい者制度改革推進会議では、当事者参加のもとで新しい法律づくりや新法制定までの当面の課題など論議が進められていたにもかかわらず、突然そうした動きを全く無視し、与党の民主党は自民、公明両党とともに、根本的には応益負担を残したまま自立支援法改正案を国会に提出、成立させようとしていることに非常に憤りを覚えるものです。関係団体の方も抗議の声を上げています。
 そこで、和歌山県知事としてもぜひ基本合意の内容を生かした新法づくりをするように国に求めていただきたく思いますが、いかがでしょうか。
 また、次の2点については福祉保健部長にお尋ねしたいと思います。
 1点目は自立支援医療についてです。
 障害者医療費公費負担は、育成医療、更生医療、精神通院医療が統合され、対象者は今までの制度に準じたものが自立支援医療に変更されました。自己負担は、1割負担と入院した場合の食費が要ります。国は本年4月から低所得者の福祉施策の利用者負担は無料としましたが、医療施策については自己負担の上限額があるものの、低所得者にとっては厳しい状況です。障害者にとって医療は命綱とも言うべきものであり、本来は無料にすべきではないでしょうか。
 2点目は、地域生活支援事業について福祉保健部長にお尋ねします。
 地域生活支援事業は、地域の特性や利用者の状況に応じて市区町村や都道府県が柔軟に行う事業とされており、内容についても市区町村ごとで決めることになっているものです。特に移動支援への要望が強く聞かれます。幅広く社会活動に参加するためにも、本人の希望に沿って移動の保障をすべきだと考えます。
 2006年12月に採択された国連障害者の権利条約は、障害のある人の基本的人権を促進・保護すること、固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする国際的原則です。その中にも、第20条には個人的な移動を容易にすることとうたわれています。どこに住んでいても十分な支援を受けられることが必要です。特に福祉保健部長に各市町村の移動支援事業の状況についてお尋ねいたします。
 2項目めは介護保険制度についてお尋ねします。4点にわたってお聞きしたいと思います。
 2000年4月に介護保険制度がスタートし、丸10年がたちました。制度が発足した背景は、90年代に入って介護地獄や老老介護など、悲惨な事件が各地で起こり、家族介護の困難さと限界がだれの目にも明らかとなって、介護が社会問題となって本制度が誕生したと思います。この間、介護の社会化が進んだと言えるかどうかです。
 私は、介護が商品化、営利化されていることがますます明らかになってきているように思います。高齢者にかかわる人がふえた点では一定評価することができますが、ホテルコストや自費の領域が拡大し、お金がなければ必要なサービスも利用できず、結果的には家族介護に頼らざるを得ない事態も広がっているように思います。
 3日前の13日、兵庫県で介護心中の記事が載っていました。介護の社会化がまだまだ進んでいないのではないでしょうか。だれもが安心して老後を過ごせるような介護保障になっているかという点で、知事はどのように感じておられるかお聞かせください。
 次に、福祉保健部長にお尋ねします。
 あるケアマネジャーの方は、介護の現場では介護の必要性よりも先に費用負担能力から逆算することが常態化していると言っています。所得の少ない人がサービスを受けられないということでは、安心した老後を送ることができません。保険料の減免を広げ、利用料の減免制度をつくる必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 また、介護保険は当初、サービスを選択できる制度と宣伝されていましたが、現実は保険あって介護なしという状況を目の当たりにします。特に、和歌山県のような山間地の多いところでは、そもそもサービスが提供できないといった地域もあるのではないかと思います。ある地域では、訪問介護や訪問看護も来てもらえず、保険料だけ払っているということになっています。また、別の地域では、介護タクシーを頼めず、1時間以上歩いてやっと医療機関にたどり着き、先生から「よく歩いてきたな。心筋梗塞を起こしている」と言われ、びっくりしたという話を聞きました。このようなことから、サービス提供の地域格差が著しいのではないかと考えますが、現状と自治体の責任をどのようにお考えでしょうか。
 次に、人材確保の問題についてお尋ねします。
 介護現場の人材不足は周知のことですが、この間、県としても対策がとられてきました。根本的には介護労働者の労働条件の改善を進めていくことだと考えますが、現時点での人材確保状況と処遇改善の対策の効果と評価についてお答えください。
 以上は、福祉保健部長にお尋ねいたします。
 次に、3項目めはワクチンの定期接種についてお聞きいたします。
 細菌性髄膜炎に毎年約1000人の子供たちがかかっていると言われています。細菌性髄膜炎の原因となる細菌の60%がヒブで──ヒブというのはヘモフィルスインフルエンザb型のことですが──25%が肺炎球菌と言われています。死亡率は約5%、25%の子供は知的な障害や麻痺などの後遺症に悩まされます。
 世界保健機構は1998年に、すべての国に対して乳幼児へのヒブワクチン接種を勧告しています。4回の接種費用が計約3万円となり、家計を非常に圧迫する値段です。お金がないということで接種せず、命を落とすことがあってはなりません。子供は社会の宝、子供の命を守るのは政治の責任です。医師の立場からも、ワクチンの定期接種化は小児救急医療の現場の負担軽減にも有効だと言われています。
 以前、私の身近なところでも子供が細菌性髄膜炎にかかり、一時危険な状態から一命を取りとめるということがありました。高熱が続き、病気と闘っている幼い子供のそばで生きた心地がしなかったと言われています。私を含め周囲も、そのときは祈ることしかできませんでした。回復したその後も、成長過程の中で何かあれば、病気が原因ではないか、後遺症ではないかと考えてしまうと言います。一刻も早く安心して子育てができるようにしなければならないと思います。
 20代女性では発症率が一番高い子宮頸がんも、ワクチンの接種によりほぼ予防できる病気と聞いています。安心の子育て環境をつくる上でも、ヒブ、肺炎球菌、子宮頸がんの3種のワクチンについて一日も早く定期接種化を望むものです。福祉保健部長、いかがお考えでしょうか、お答えください。
 最後の4項目めは、防災について2点お伺いします。
 昨年11月11日未明、和歌山市を中心に紀北地方に観測史上最大の雨量が記録されたことは記憶に新しいことだと思います。ことしも梅雨の時期に入ってきましたが、被害に遭われた方から不安の声も聞かれます。「集中豪雨で工場の機械がだめになった」、「同じ年に2回も車がつかり、2度目は保険がきかなかった」、「側溝に木の葉や木の枝、ごみが詰まり、お店にも水が入ってきた」など、営業にも随分被害がありました。12月議会でも藤井議員が質問していましたが、再度被災状況をお聞きし、これからも想定外の事態が起こり得るということから、教訓をどのように考えているのか、危機管理監にお尋ねいたします。
 また、災害に備えて、移動の困難な人への支援について福祉保健部長にお伺いいたします。
 移動が困難な人というと、年齢や障害の程度、部位など個々人それぞれさまざまな状態にあり、朝方、昼間、夜間の時間帯や停電時、また災害の種類、強さによっても避難支援の仕方が違ってきます。コミュニケーションがとれずパニックに陥ることも推測できます。ある団体では、阪神大震災をきっかけに「障害者市民防災提言集」をつくり、震災を教訓に、障害者が被災した際の負担軽減について話し合っているということです。県としてはどのような取り組みを考えられていますか、福祉保健部長にお尋ねをして、1回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(坂本 登君) ただいまの奥村規子君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、障害者自立支援法についてでございますが、障害者自立支援法違憲訴訟は、本年1月7日に原告団と国との間で調印された基本合意文書を前提に、和歌山地方裁判所で4月9日に和解が成立するなど、4月までに全国で和解が成立したと聞いております。
 現在、国において自立支援法にかわる新たな障害者福祉制度の検討が進められていますけれども、検討に当たっては基本合意文書の趣旨を尊重し、応益負担から応能負担への変更など、障害のある方の立場に立ったサービスが地域で安定して提供される制度となるように障害のある方の御意見を十分踏まえていただくことが重要であると考えております。
 県といたしましては、国における検討の状況を注視しながら、新しい制度が障害のある方にとってよりよい制度となるように、他の都道府県とも連携し、国に対して働きかけてまいりたいと思います。
 次に、介護保険の制度でございます。
 介護保険法が施行されて10年が経過いたしました。サービスの利用者が大幅に増加していることなどから、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みという形では、かなり定着してきたものと認識しております。一方、今後ますます少子高齢化が進む中で、このまま介護保険制度を維持していけるのか不安を感じているところであります。
 議員御提案の、だれもが安心して老後を過ごせるような介護保険制度を実現するためには、制度を持続可能なものにすることが大きな課題であると考えます。そのためにはしっかりとした財源が必要でございますが、その財源の確保のため、税や保険料を含めた制度全体の構造をどういうふうにするのかということが改めて問われていると認識しております。
 国においては、先月末から社会保障制度審議会介護保険部会において制度見直しの議論が始まったところでありまして、県としてもこの議論を注視するとともに、機会をとらえて必要な要望を行ってまいりたいと考えております。
○副議長(坂本 登君) 福祉保健部長西上邦雄君。
  〔西上邦雄君、登壇〕
○福祉保健部長(西上邦雄君) 自立支援医療の住民税非課税世帯の無料化についてお答えを申し上げます。
 障害者自立支援法違憲訴訟の原告団と国との間で取り交わされました基本合意文書におきまして、自立支援医療に係る利用者負担の措置については、当面の重要な課題とすることとされてございます。この基本合意の際に国にあわせて提出されました要望書におきましては、緊急に非課税世帯での無償化が実施されることとされてございます。
 また、今国会におきましては、自立支援医療の自己負担につきまして、法律上、負担能力に応じた負担、いわゆる応能負担が原則であることを明確化するための規定の見直しをする改正法案が提出されているところでございます。
 県といたしましては、このような状況を踏まえまして、国会の審議の状況を注視し、今後の国の動向を見守ってまいりたいと、このように考えてございます。
 次に、各市町村での地域生活支援事業の移動支援事業についてお答えを申し上げます。
 地域生活支援事業は、障害者自立支援法の施行により実施されている事業でありますが、全国統一の基準ではなく、地域の実情に合わせた柔軟な事業実施によりまして障害者の方々の地域での生活を支援する事業でございます。その事業の実施方法、また利用者負担等は市町村の主体的な判断に任されているところでございます。
 そのうち、議員御質問の移動支援事業につきましては必須事業とされてございまして、県内すべての市町村で事業化をされてございます。また、本年4月からは、市町村民税非課税世帯について介護給付費及び補装具等に係る自己負担額が無料となったことに伴いまして、地域生活支援事業におきましても県内すべての市町村で同様の取り扱いとなってございます。
 また、市町村民税課税世帯につきましても、原則1割負担となっておりますが、無料としている市町村もございまして、これにつきましても各市町村の判断で実施されているところでございます。
 さらに、移動支援事業などの利用者負担額の合計額が介護給付費に係る利用者負担上限月額を超過した場合に、その超過額を補助する県単独補助事業も行っているところでございます。
 今後とも、地域生活支援事業については、障害のある方々が地域で安心して生活することができるよう、市町村の積極的な取り組みを要請してまいりたいというふうに考えてございます。
 次に、介護保険制度施行後10年を経ての3点につきまして、一括してお答え申し上げます。
 まず、保険料減免制度の拡充と利用料の減免制度の創設についてでございますが、介護保険の保険者である市町村が介護保険サービスの支払いのために必要な費用は、国、県、市町村、それに被保険者が法律で定められた割合で負担すること、また65歳以上の被保険者が支払う第1号保険料の金額は保険者である市町村が条例に基づき決めることが介護保険法で定められてございます。
 このため、第1号被保険者の保険料の減免を実施する場合は、保険者である市町村におきまして対象範囲や財源等を検討し、条例等に規定をして実施すべきものであると考えてございます。
 また、利用料減免制度につきましては、市町村民税非課税世帯等の低所得の方々が社会福祉法人や市町村の提供する介護保険サービスを利用した場合、1割負担や食費、居住費が軽減されます社会福祉法人等による利用者負担軽減制度がございます。この制度を実施している社会福祉法人等に対しては市町村が軽減額の一定部分を助成し、市町村が助成した分に対しまして県から補助金を支出するという形になってございます。
 この軽減措置の利用状況につきましては、市町村によりばらつきがあることなどから、市町村に対しまして積極的に実施するよう要請を行ってございまして、あわせまして、一部未実施の社会福祉法人もございますので、直接訪問をして制度実施の依頼を行っているところでございます。
 なお、これまでも低所得の方々に対する保険料負担及び利用者負担軽減措置の充実につきましては、近畿府県民生主管部長会議を通じまして国にも要望しているところでございますが、引き続き要望してまいりたいというふうに考えてございます。
 次に、サービス提供の地域格差の現状と自治体の責任についてでございますが、高齢化が進展し、介護サービスの需要が増大する中で、県内における介護サービス提供事業所の地域格差や中山間地域におけます事業所の不足は重要な課題であると認識をしております。
 そのような中、昨年4月の介護報酬の改定によりまして、中山間地域等における小規模事業所が介護サービスを提供する場合や、事業所が通常の事業の実施地域を超えて中山間地域等に居住する方に介護サービスを提供した場合、新たに介護報酬の加算措置が設けられてございます。
 県としましては、中山間地域等における介護サービス事業所の参入が進むよう、介護報酬の加算措置の周知に努めるとともに、市町村とも連携をいたしまして、地域密着型サービスとの併設や新たな参入などにつきまして、民間の介護サービス事業所や市町村社会福祉協議会などに要請をし、地域格差の解消に努めてまいりたいと考えております。
 最後に、介護現場の人材確保状況と処遇改善の効果と評価についてでございますが、介護サービス分野の人材確保のため、県では新規就業を支援する事業や就職相談会を実施するとともに、介護職員の給与水準の向上など、処遇改善などをあわせて実施することにより介護現場への就業促進と定着に取り組んでございます。実績といたしましては、昨年4月からの1年間で約300人の新規雇用があったところでございます。
 また、介護職員の処遇改善につきましては、昨年4月の介護報酬の引き上げに加えまして、国の経済危機対策による介護職員処遇改善交付金を活用して賃金の引き上げを図るなど、一層の処遇改善に努めているところでございます。
 これらの対策によります介護の人員不足への効果でございますが、介護関係の有効求人倍率が昨年の4月では2.07でありましたが、本年4月には1.47に下がっていることから、一定の効果があらわれてきているものと考えてございます。
 しかしながら、介護関係の有効求人倍率は全産業の有効求人倍率0.54に比べまして依然として高い状況にありますので、引き続き介護職員の人材確保と処遇改善に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、ヒブ、肺炎球菌、子宮頸がんのワクチンの接種についてお答えを申し上げます。
 ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチンにつきましては、いずれも平成19年から21年にかけまして医薬品として国内で承認をされたところでございます。予防接種法の位置づけにつきましては、現在、厚生労働省におきまして専門家を交えて検討をされているところでありますので、去る6月8日、国に対しまして予防接種法への位置づけを進めるよう提案を行ったところでございます。
 県としましては、国の動向等を注視しながら、引き続き接種者への支援のあり方などにつきまして検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、移動の困難な人への支援についてお答えを申し上げます。
 高齢者や障害者など、災害時要援護者対策につきましては、平成19年の国からの通知に基づきまして、市町村において、対象者の範囲、要援護者に関する情報の収集及び共有の方法等について基本的な方針を定める避難支援プラン全体計画の策定を進めているところでございます。本年3月末現在、県内22市町が策定済みとなってございます。
 また、要援護者1人1人に対応する避難支援者や避難場所、また情報伝達の方法等を定める個別計画につきましては、県内19市町で現在策定中となってございます。
 県といたしましては、平成20年6月に和歌山県災害時要援護者支援マニュアルを策定いたしまして、市町村に対する説明や情報提供を行ってきておりますが、全市町村が避難支援プラン全体計画及び個別計画を早期に策定するよう、引き続き働きかけてまいりたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(坂本 登君) 危機管理監前硲健作君。
  〔前硲健作君、登壇〕
○危機管理監(前硲健作君) 防災についての1点目の御質問にお答えいたします。
 昨年11月11日未明から朝にかけて県北部を中心に発生しました集中豪雨では、和歌山市を中心に、死者1名、床上浸水656棟、床下浸水2449棟などの被害がございました。また、道路や河川などの公共土木施設や農業被害などが約7億7000万円に上りました。
 和歌山市では、同日午前3時57分までの1時間雨量が122.5ミリに達する記録的豪雨となりましたが、豪雨の時間が比較的短時間であり、未明の暗い時間帯であったことなどから、避難勧告等は発令されませんでした。このこと自体は、夜間の避難中に死者や行方不明者の発生した兵庫県佐用町の事例からも適切な判断だったと考えておりますが、いずれにいたしましても、災害時の人的被害を最小限に抑えるためには、市町村長による避難勧告等の出し方が重要なポイントになりますので、県では市町村に対し、災害に際しての避難勧告等の適切な発令、そのための具体的な避難判断基準の作成などを要請しているところでございます。
 また、住民の安全確保のためには、気象情報などの防災情報を迅速かつ正確に伝達することが最も肝要と考えており、県では防災わかやまメール配信サービスの周知を図るとともに、今年度、土砂災害危険箇所に立地する要援護者施設への市町村防災行政無線端末の整備支援を行うなどしており、今後も市町村と連携し、台風や集中豪雨などの風水害対策に取り組んでまいります。
○副議長(坂本 登君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○副議長(坂本 登君) 再質問を許します。
 40番奥村規子君。
○奥村規子君 答弁をいただきました。
 知事に、障害者自立支援法についての基本合意ということでは、国との関係で注視していきたいとおっしゃってくださったんですが、この障害のある皆さんが求めてきた応益負担、応能負担という問題について、知事自身はこの基本合意に共感を持ってされてるということなのかどうなのか。そこの点でもう少しわからなかったので再質問をさせていただきます。
 それとあわせて、やはり応能負担、応益負担の根本にかかわってくる、その以前に介護保険制度のほうが障害者自立支援法より前にできてるわけなんですが、そのときに、やはり非常に所得が大変な、年金もない人から年金額が低い人、いろいろございますが、そういった方にとっては非常に負担ではないかというのも当初から思っていました。
 先ほど、制度を維持していくということでは、持続可能ということでおっしゃって、不安なことがあるというようなことも言われたんですが、それは介護保険自身が今のままで財政的に──高齢者もふえるし、サービス量がふえて財政がなかなか大変だと、これ以上保険料も本当に払うのが今精いっぱいになってきてるという状況の中で、制度自体がそういう意味ではもたないんじゃないか、また維持していくのに大変だというふうにおっしゃられたように思うんですが、やはり介護保険そのものに、受けられないサービスを──費用負担が出せなくて受けられない、そういった方々が大勢いらっしゃるわけなんですが、そういう意味では、今、だれ一人泣くことのないようにと言われた知事の政治姿勢のそういった決意とあわせて、どのように理解したら、そういった低所得の人たちもしっかりと介護を受けられるような、そういうものにいろいろと考えられてるということで受けとめたらいいのか。介護保険制度そのものをそういったことも含めて、やはり制度、仕組みを考えていかなければいけないというふうに言われたのか。その点、どうでしょうか。
○副議長(坂本 登君) 再質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、応益と応能の問題でございます。
 私は、これはいろんな制度を考えるときに、全部両方ともの要素を考えないといけないと思います。したがって、応能がよくて応益はあかんと一般論として言うのはいかがなものかと思います。
 この障害者自立支援法について、障害のある方はやっぱりなかなか収入を得ることも難しいし、そういう意味では応能の問題をもっとちゃんと取り上げないと難しいんじゃないかなというようなことは正しい方向じゃないかと思います。
 ただ、一方、じゃあ絶対応能が悪いかというと、障害を持ってる方でも大変な、例えば資産を持っておられるおうちの方とか、そういう方もいらっしゃいます。そういう方をどう考えるかというのは、また別の問題として考えておかないといけないかなということではないかと思います。
 同時に、その応益ということについては、常にそういうことをカウントするということは必要だと思います。ただ、障害者を助けていくときに、その応益というのがちょっと沿わない感じが私はします。というのは、いろんなサービスをする、それはそのサービスを受益する人が応益に負担する、そういうことは一般的に正しいと思うんですけど、障害を持ってる人を社会全体で助けていくということが目的であるとすると、余り応益を大きく出すというのはどうかなというような感じがいたします。
 それから、もう1つは介護の話でございます。
 介護の制度について、私が答弁で申し上げましたのは、議員御指摘の第1の点でございます。第1の点でございますけれども、第2の点につきましても、そんなことは冷たく考えてどうでもいいというわけでは決してないと思います。どうやって、例えば貧しい方がちゃんと介護を受けられるかどうか、そういう制度は、この介護の制度、あるいはその外側にある社会保障全体の制度の問題としてきちんと考えていかなきゃいけないと、そういうふうに思います。
○副議長(坂本 登君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○副議長(坂本 登君) 再々質問を許します。
 40番奥村規子君。
○奥村規子君 答弁ありがとうございました。
 あと要望をさせていただきたいんですが、先ほどの──前の予算委員会のときも申し上げたんですけど、介護保険制度はサービスを希望する人にやはり選択できるというようなことであるんですけど、その選択ができなくて待機しなければいけない。それは特別養護老人ホームの問題なんですけど、そういった点で、やっぱり在宅やそういったところで置かれてる毎日介護が大変な状況、そういうような中で、ぜひとも──待たれてる人はある施設に、ほかの病院に入ってられる人もいると思うんですが、在宅やいろんな状況を抱えていらっしゃるんで、そういったところをぜひ県としても実態をしっかりつかんでいただきたいなというふうに思っています。
 先ほどの利用料の減免制度のお話で、そういった手だてもとられてるということでおっしゃってくださったんですが、こういったことがなかなか徹底とか、利用者さん自体が理解なかなかできてないんじゃないか、それとも、またこの利用がばらつきがあるということでは、やはり社会福祉法人の事業者さんが何か使いにくい状況があるんではないか、そういったことも思いますので、やはりぜひこういうことを、実際予算もとられてることなんで、活用できるように検討なりよろしくお願いしたいなというふうに思っています。
 あとは防災の問題なんですけども、昨年の11.11でということで、国に上げる報告という中で、やはり7億7000万円ですか、被害があってということで。ただ、それはあのときに白菜がとても被害を受けたとかいろんなこと聞いて、農業的な被害の中に入ってるんだろうと思うんですが、営業されてる方たちのやっぱり経済被害状況というのはかなりあったんじゃないかな。そんなところもぜひつかんでいただいて、今後支援──床上のときは5000円のお見舞金とかいうことになってるんですが、そういったことの検討を今されてるということでお聞きしてるので、やっぱり被害の経済状況、いろんなことも含めて把握をできるだけしていただきたいなというふうに思います。
 以上、要望して終わらせていただきます。ありがとうございました。
○副議長(坂本 登君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で奥村規子君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時30分散会

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