平成22年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(藤井健太郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後1時0分再開
○議長(冨安民浩君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 43番藤井健太郎君。
  〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 議長のお許しをいただきましたので、通告に基づきまして一般質問を行います。
 まず、地域主権改革についてお尋ねをいたします。
 昨年11月17日、国は、これまで地方分権について審議をしていた地方分権改革推進委員会にかわって地域主権戦略会議を設置いたしました。
 戦略会議は、地域主権改革とは、住民の身近な行政は地方自治体が担うようにし、住民の判断と責任において取り組むことができるようにする改革であると定義、明治以来の中央集権体質から脱却し、この国のあり方を大きく転換させるとしています。
 昨年12月の第1回会合において、法令による施設の設置基準や計画策定などについての義務づけ、枠づけの見直しをする地方分権改革推進計画を決定、同時に地域主権改革工程表(原口プラン)というものを了承しました。
 工程表を見ますと、少しずれ込むとのけさの報道もありましたが、ことしの夏までに戦略大綱を、2013年夏までには地域主権推進大綱を策定するとして、今後4年間に、規制関連では、法令による自治体施設の義務づけ、枠づけの見直しを順次進め、自治体への権限移譲、予算関連では、補助金を廃止し、一括交付金化と地方の自主財源の強化、国直轄事業負担金の廃止などを、法制度では、自治体間連携の自発的な形成と国の出先機関の改革とあわせ、人員の地方移管の検討を進め、地方政府基本法の制定を目指すとなっています。
 この4年間を1つの区切りとして、地方分権に関する施策をこれまでにはない速さで進めていくという意気込みが感じられますが、一方では、国民的な議論を必要とする問題も多く含まれているように思います。
 既に、プランに基づいて、参議院では、地域主権改革推進一括法(1次分)と国と地方の協議の場に関する法律が先議をされ、与党の賛成多数で可決、衆議院に法案が送られています。
 今回の地域主権改革推進一括法は、41法律を一括改正するもので、これまで国の政省令で定めていた施設の設置や管理運営に係る基準を県の条例で規定すること、自治体の事務について国との協議や同意、国の許認可などを原則廃止すること、自治体が定めることとする基本構想などの計画策定義務の廃止などとなっています。特に、施設の設置、運営基準については、保育所などの児童福祉施設、特別養護老人ホームなどの高齢者介護施設、障害児者施設、公営住宅など、住民生活に直接かかわるものが多くあり、これまで国が定めていた基準について基本的に参酌すべきものとして、自治体の判断にゆだねるという内容になっています。
 これまでのような国が施設ごとに定めた基準をなくし、施設ごとの補助金、負担金も一括交付金化することによって地方自治体の裁量権が拡大されるという側面もありますが、知事の政治姿勢と財源のありようによっては地域格差がさらに広がることが懸念をされます。
 政府の第1回戦略会議の場で、原口総務相は、「地域主権を進めれば、地域格差はかえって広がっていくという主張もあるが、ある意味ではそのとおりである。間違ったリーダーを選べば、そのリーダーを選んだツケは選んだ人に来る。この当たり前のことが行われる」と発言をしています。
 リーダーの政治姿勢がどちらを向いているか問われることはもちろんのことですが、結果として、福祉が悪くなったのは住民が間違った選択をしたからという住民への責任転嫁が強調され、憲法が定める生存権などの人権保障に対する国の責任が免罪されることにもなりかねません。
 今般の一括法では、福祉施設の職員の定数、利用者1人当たりの居室面積など、人権に直結する基準は国が示すガイドラインを地方が従うべき基準にするとしていますが、地方が従うべき国の基準がどう示されるのか、現在と同等なのか、引き上がるのか、それとも引き下がるのか、またその財源は国がどの程度まで保障してくれるのか、参議院の審議では明確にされませんでした。
 一方、厚労省が、ことしに入って、認可保育所の定員を超す受け入れの上限の撤廃や、特別養護老人ホームの居室面積基準を引き下げる動きをしています。保育所などの児童福祉施設の最低基準は昭和23年に決められ、最低基準を超えて設備、運営を向上させていくことや、超えている施設は設備や運営を後退させてはならないと定めていますが、今回の受け入れ定数上限の撤廃は、昭和23年策定の最低基準に限りなく近づけていくことを容認するものとなっています。
 戦略会議が示す地域主権改革の無批判的な推進は、福祉施設などの基準を引き下げた上で財政責任もあいまいにする結果となるのではないか、大いに危惧をするところです。
 全国知事会は衆議院での一括法の早期成立を求めていますが、国の示す基準の引き上げや財源保障の明確な手だてこそ強く求めていくべきであると思います。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 1点目、住民や自治体にとっての地域主権とは何か。地域主権改革とはどういうことでしょうか。住民の生活や住民福祉の向上を目的とする自治体の運営は、どのようになっていくと考えておられるのか。今、国が進めようとしている権限移譲と一括交付金化は、かつての三位一体改革のように、仕事量はふえるが、財源は減らされ、地方負担がふえるという結果にならないか。ひいては、工程表では自発的な自治体間連携を進めるなどと言われていますが、財源の厳しい自治体にとっては、さらなる自治体合併や広域行政を強いられることになりはしないか。
 2点目、国と自治体の役割についてですが、国が負うべき国民の権利保障への責任をどのように考え、国の最低基準のあり方、財政責任のあり方をどう考えておられますか。国には、憲法が要請している国民生活のナショナルミニマムを示し、絶えず向上を目指すことと、その実現にふさわしい財源保障を行うことが求められています。自治体には、国施策の上乗せ、横出しなど、国施策の拡充をしたり、国の施策の補完や、また、地域独自の住民要望にこたえる事業を進めていく役割が求められているのではないでしょうか。
 3点目、条例化への対応について。一括法では、国の示す基準を参酌して、都道府県が条例で施設の設備や運営に係る規定をすることとなっています。条例を策定すると、県が責任の主体となってきます。条例化についての基本的な考え方、国の基準よりも充実させていくという立場に立って臨もうとされるのでしょうか。
 4点目、国への基準引き上げと明確な財源確保の要望について。国に基準の引き上げや住民にも内容のわかる財源保障の手だてを求めていくべきではないでしょうか。地方交付税に算定されているという一般財源化や一括交付金でくくられては、国からどのぐらい財源が来てるのか住民にはわかりません。交付税措置されているから、一括交付金に含まれているからというだけでは国、県の財政責任の所在が明確にはされないと思います。
 次に、地場産業、中小企業振興についてお尋ねをいたします。
 内閣府が5月に発表した月例経済報告の景気の今後の見通しについて、景気は着実に持ち直してきているが、失業率が高水準にあるなど雇用状況には厳しいものがある、先行きについては景気の持ち直し傾向が続くことが期待されるとなっています。
 県発表による5月の県内経済動向では、鉱工業生産指数が4カ月連続で上回り、回復傾向にある、消費動向は、新車登録台数が10カ月連続で、新築住宅着工数は2カ月ぶりに前年を上回ったものの、小売店販売額は、大型店で16カ月連続、全店では24カ月連続で前年を下回ったとされています。雇用面では、有効求人倍率は0.54倍で、前月から0.01ポイント改善したものの、前年同月と同じ水準。
 社会経済研究所は、県内景況感、見通しともに不安要因はあるものの、改善の方向であるとしています。雇用面や消費面での厳しさはあるが、景気はおおむね回復の兆しを見せているという評価になっています。果たして県内の地場産業、中小企業をめぐる状況は、改善の方向と見ていいのでしょうか。
 5月に入って、染色・繊維関係や建具、ふすまなどの木工加工の製造業を中心に、市内の一定規模の事業所について訪問をしてまいりました。「国産品づくりで頑張っているけど、売り上げが大幅に落ちてきて、給料支払いがきつく、とうとう雇用調整助成金を活用した」、「売り上げが3分の1に減り、機械のリース料支払いに困っている」、「周りの建具屋が減ってきてるので仕事は回ってくるようになったが、安くて割に合わない」、「自分で3代目になるが、同年代の若い職人がいない。定着しない。いつまで続けられるか不安」など、ついいい話を聞くことはできませんでした。
 訪問した中には、1年以上の赤字続きで従業員にもやめてもらった、仕事はあるときだけにしていて既に廃業を決めているといった事業者が2軒あって、いずれも話を聞きますと、事業を継いだ方々で、30代、50代という働き盛りの経営者でもありました。静まり返った広い工場の中で、動かない機械を前に廃業という話を聞かされると、大変つらいものがありました。
 県がまとめた産業白書によると、平成18年の県内の農林漁業を除く民間の事業所数は5万2345事業所で、従業員数は35万6149人となっています。平成13年との比較では、5年間で3918事業所、従業員1万4381人の減となっています。
 その中でも、一定の事業所数があって減少率が大きい産業として製造業があります。平成18年4483事業所で、この5年間で787事業所、15%の減少となっています。同じ時期での建設業6%の減、卸小売業12%、飲食・宿泊13%の減と比較しても大きいものがあります。
 製造業の中でも、特に繊維・衣服の30%減、皮革22%減、木材・木工加工16%減が大きいものとなっています。これらは、いずれも地場産業と呼ばれる事業所です。
 地場産業は、明治以降、地元資本をベースとする中小企業が一定の地域に集積し、地域内の特産物を主原料として、地域内で技術、労働力、資本を蓄え、県内外に広く販路を目指してきたものとされています。100年以上の歴史を持つ企業もあります。
 地場産業24業種は、和歌山を代表する産業とも言えます。県工業に占める地場産業の割合は、事業所数で5割、従業者数で4割と大きな比率を占めており、地域の経済と雇用だけではなく、地域の文化やまちづくりにも貢献し、自治体財政も支えています。
 ところが、県の製造業振興に直接かかわる条例を見ますと、平成21年、昨年10月施行の新技術の研究開発、実用化を目的にした新技術創出推進条例のみという状況です。
 新技術創出推進条例は、先駆的産業分野において卓越した新技術の創出と実用化を図る研究開発に支援を行うというもので、支援の対象を、ロボットなどの加工組み立て技術、化学や分子・原子の大きさで製品加工するナノテクノロジー、医療福祉、遺伝子操作などのバイオテクノロジー・食品加工、エネルギー環境の分野と限定しています。今後伸びていくであろうと言われる産業分野への支援であり、支援を受けられる事業者は、資金の調達や人材が確保でき、市場で既に競争力を持ち得ている事業者でもあろうかと思います。それをさらに伸ばそうという支援になっています。
 また、県は、22年度の中小企業者向け主な支援策として、国の施策も交えて、経営支援、技術開発支援、新事業創出支援、融資による資金支援、雇用支援の5つを柱として、45の施策を複数の部局にわたってメニュー化しています。商工観光労働部では、重点個別施策34事業が予算化されています。
 支援策のメニュー化はふえつつあり、中小事業者への支援を着実に進めていこうという姿勢はよくわかりますが、これまでにも中小の事業所を訪問して感じていたことですが、自治体行政の施策については、融資制度以外ほとんど知られていないし、利用してみようかという話も余り聞きません。県の施策についても同じことが言えます。
 県は、「県民の友」5月号に産業振興特集を組んだり、産業別の担当者を決めて訪問を重ねたり、事業所を訪問してカルテづくりを進めるなど、支援の手を伸ばしていこうとされています。それがどこまでの事業者に行き渡って、どのぐらいの事業者が利用できるものとなっていて、内容は事業者のニーズにこたえることができるものとなっているのでしょうか。
 知事は、新たな技術開発とすぐれた製品の販路開拓を進め、ものづくり王国「和歌山」を国内外に発信していくと言われました。和歌山も、かつて各産地でそれぞれの地場産業が栄え、工業県としてものづくり王国を誇る時代もありました。知事の言うものづくり王国「和歌山」とは、どのような構想を持っておられるのでしょうか。一部の既に競争力のある事業所だけの話になってしまうのではないでしょうか。まさに知事の言う「だれも見捨てないぞ」という立場で、全事業所を視野に入れた施策体系を望みたいと思います。
 中小企業対策は、国の施策に負うところが大きいですが、地方自治体の責務としても施策の策定と実施が求められております。地域の実態と諸条件に応じての中小企業振興に係るタイムリーな施策が求められています。それは、特定の産業、特定の事業者だけを対象にするものであってはならないと思います。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 1点目、地場産業の置かれている状況と今後の見通しをどのように持っておられますか。県内地場産業全体としての底上げが図られ、減少傾向にある事業所数がふえていくという展望はあるのでしょうか。
 2点目、製造業振興に係る県の役割と利用実績について。
 製造業は、すべての産業の富の源泉でもあります。物づくり、製造業振興における県の役割は何だと考えておられるのでしょうか。また、県の製造業振興に直接かかわる支援策の利用実績はどうなっているのでしょうか。制度融資を除いて、どのぐらいの事業者が利用できたのか。どのぐらいの事業者への支援につなげたいと考えておられるのでしょうか。また、新技術創出推進条例では、支援対象の優先分野が設けられ、募集が始まっていますが、県内に支援対象となる事業者がどのぐらいあって、実際にどのぐらいの事業者への支援につなげたいと考えておられるのでしょうか。
 3点目、この際、地場産業振興条例もしくは中小企業振興条例の制定を考えてはいかがでしょうか。
 本県は、全事業所に占める中小零細事業者の割合が全国一だとも言われております。条例制定は、県の地場産業・中小企業振興に取り組む立場、方針を県の責務として明らかにすることができます。
 条例では、全事業所を視野に入れた中小企業振興に係る理念、基本方針、県の責務、後継者・人材育成や販路開拓も含めた施策体系、中小企業振興を進める市町村への支援など、明確にしてもらいたいと思います。
 1999年、中小企業基本法が改定をされました。その第6条では、地方自治体の責務として、「国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」とあります。施策の策定から実施まで責任を負うこととなっております。旧法では国の施策に準じて施策を講じるように努めなければならないとなっていて、中小企業支援は国のメニューの範囲内で施策を実施してきました。地方自治体の中小企業振興にかかわる役割が拡大され、努力義務から実施義務へと、より明確にされたわけです。
 最後に、職業訓練についてお尋ねをいたします。
 厚労省は、全国に83カ所ある地域職業訓練センターを今年度末で廃止し、建物を希望する自治体に譲渡するという方針を示しました。県内では、新宮市、田辺市、日高町の3カ所に該当する施設があります。
 地域職業訓練センターの設置目的は、機構によりますと、地方産業都市を中心とする地域において中小企業に雇用される労働者に対し各種職業訓練を行う事業主、団体、地方自治体などに施設を提供し、地域における労働者の職業生涯を通じた訓練体制を確立するとともに、地域経済社会への発展に寄与することとしています。
 設置は、都道府県からの設置要望に基づき、国が設置決定し、現在の独立行政法人雇用・能力開発機構が設置者となり、土地は県または市から有償で借り受け、建物は雇用・能力開発機構が建設をしています。運営は、雇用・能力開発機構が地元県・市を通じて職業訓練法人に運営を委託しております。
 事業内容は、教育訓練の実施、教育訓練を実施する団体への施設の提供、各種講座の開催または施設の提供となっていて、昨年度の利用者と利用率は、新宮地域職業訓練センターで延べ5万8500人、利用率72%、田辺地域職業訓練センターで延べ3万4500人、利用率65%、御坊市から日高町に移された中紀地域職業訓練センターでは延べ1万9600人、利用率44%となっていて、それぞれに地域差はありますが、利用者が少なくて廃止してもいいような施設はないように思います。
 国の外郭団体である雇用・能力開発機構という組織の廃止に伴い、公共職業訓練の集約化を図るというものですが、国の行政として、地方都市に対する職業訓練からの撤退・縮小となっています。今日の経済状況、雇用状況から見れば、国や自治体による公共職業訓練を行う意義は決して薄れてきてはいないと思います。
 完全失業率が改善しないなど、雇用情勢の悪化が長期化し、特に若年層ほど失業率が高い状況が続いています。ことし4月の総務省発表の労働力調査では、完全失業率は全国で5.1%、2カ月連続で悪化。若年層の完全失業率は、15歳から24歳の男性で10.1%、女性で9.2%、25歳から34歳の男性では6.5%、女性で6.2%、15歳から34歳の完全失業者数は140万人、失業者全体の4割を占めているということです。
 若者に安定した雇用を確保していくことは働く権利を保障していくことでもありますが、少子化対策にとっての大きな課題であることや、税、社会保険料負担など、地域社会を維持していく上でも重要な社会問題でもあります。
 公共職業訓練の位置づけの重要性は薄れるものではなく、現に働いている労働者が働きながら安心して能力開発に取り組めるような仕組みや、失業している人のニーズに見合った教育訓練の提供など、より一層の充実強化が求められているのではないでしょうか。
 そこで、商工観光労働部長にお尋ねをいたします。
 公共職業訓練についての県の基本的な考え方はどのようなものなのか。また、今後の方針をどのように持っているか。国が設置した地域職業訓練センターは、県の要望に基づいて設置された施設ということですが、国の廃止をするという方針への対応をどうされるのでしょうか。県として存続させていくという方針は持たれているのでしょうか。
 以上、お尋ねいたしまして、私の第1問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(冨安民浩君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、地域主権改革について、一括してお答え申し上げたいと思います。
 地域主権改革とは、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる地域社会をつくっていくことだと思っておりまして、私もそういう社会をつくっていきたいと考えております。
 そのためには、国と地方の役割分担を明確にいたしまして、国が行うべき役割は国の財源で、地方が担うべき役割は地方の財源で行うようにできるようにすることが必要でございます。
 一方、何でもかんでも地方に移せというのもどうかなあという気もいたします。国の形を規定するものは、国でしっかり責任をとってもらわないといけない。まして、財政負担が大変だから、この際、地方に移してしまえというようなことは、これは本末転倒であります。例えば、高速道路ネットワークの整備とか、義務教育とか福祉とか、そういうものは、私は、この国の形をきちんと規定するようなものとして国が責任を持つべきだというふうに思います。
 その際、大切なことは、どんな地域に住んでいても、日本国民として受けることのできる必要最小限の行政サービスであるナショナルミニマムが保障されるような制度とすべきであり、必要な財源は、そういう意味で国の責任において明確に確保すべきであるというふうに考えます。
 それでは、何がナショナルミニマムであるかといった、そういうことについてきちんとした議論をしないといけないというわけでありますが、そういう議論がなく、地域主権改革という名のもとにナショナルミニマムと思われるようなものまで地方に移されてしまわないかなということについては注意をしなきゃいけないと思います。その結果、財政力の弱い地方公共団体ではサービス水準が実際に下がってしまうのではないか、そういう懸念もありまして、本県としては十分注意してまいりたいと考えております。
 次に、地方への義務づけ等の見直しは、これは国が定めている基準等の引き下げを目的とするものではありませんで、国が一定の基準を示した上で、議会や地域の住民の御意見をお伺いしながら、地域のことは地域の実情に合わせて自分で決めると、条例で定めることができるということにするものだというふうに理解しております。
 ただし、この機に乗じて地方財源の削減が行われるというようなことはいけませんし、それから、そんなことでなくても、十分な財源の移譲がないと、貧しい地方公共団体については、自分で基準を定めるときにも、残念ながらサービス内容を落として基準を定めないといけないというようなことになると、なかなかこれは大変なことであるということであるかと思います。
 したがって、先ほど申しましたような、きちんとした一定の水準が達成できるような、そういう基準を、仮に自分がつくるとしても、ちゃんとつくれるような、そういう財源の手当て、そういうものが必要であろうと思いまして、この点については、全国知事会とも連携して国に対しても積極的に意見・提案を行ってまいりたいと、そんなふうに考えております。
 次に、地場産業、中小企業振興について一括してお答え申し上げたいと思います。
 まず、現状でございます。あるいは今後の見通しでございますが、本県の地場産業については、経済のグローバル化とか産業構造の変化とか、消費者ニーズの多様化などへの対応のおくれがあるものもあります。それから、下請的要素が強い小規模事業者が多いという特色もあります。それから、長い間不振を続けてきましたので、蓄積が少ないというなかなかつらいところもあります。そういう意味で、全般的に低迷状況からなかなか脱せない状態にある企業が多いというふうに思います。
 一方、厳しいこういう経済の状況の中にあっても、地域資源活用等による新たな商品の開発とか、あるいは積極的な販路開拓の取り組みを進めるような元気な企業も数多く存在し、そういう意味では、一部に明るい動きも出てきておるのも事実であります。
 その次に、製造業振興に係る県の役割と利用実績についてでございますが、私は、産業別担当者制度などを使いまして県内企業の業況把握に努め、それぞれの企業の課題、地域の実情に応じ、すべての中小企業者の皆様を対象にした金融面並びに技術力、販売力等、経営面などをさまざまなメニューで御支援をいたしているところでございます。
 主な支援策、これはたくさんございますが、実績につきまして一端を披露さしていただきますと、最近の3カ年において、例えば、企業に対する専門家の派遣指導事業が約100件、産学官の連携等による研究開発支援、約70件、内外の専門的展示会への販路開拓支援、約50件、地域資源活用や農商工連携による新商品づくり支援、約70件、財団法人わかやま産業振興財団、商工会、商工会議所の経営指導、約500件、これ以外に下請などの各種相談事業等、幅広く取り組んでいるところでございます。
 今後とも、経営革新、販路開拓、新技術創出推進条例を踏まえた技術開発、こういう前向きの支援について、より多くの中小企業の皆様の周知に努めてまいりたいと考えておりますが、同時に私どもの中小企業振興策は、こういう前向きの、これからの未来に向かった力を蓄えていくというだけではなくて、例えばセーフティーネットとか、あるいは現状の経営の相談とか、そういうような中小企業を助けていくような、そういう政策もたくさんございます。そういう意味で、両方をやっていかないといけないということではないかと思います。
 次に、振興条例の制定という御提案でございますけれども、中小企業の振興は、今申し上げましたように産業政策の基本中の基本で、したがって、国の中小企業基本法を中心とするさまざまな法制とか、あるいはそれを受けた私どもの関連の条例とか、それからそのもとでの制度とか、そういうものが、例えば、セーフティーネットあるいは現状の経営の向上、あるいは将来の発展のための振興策等が整備されております。ある意味では、すべて中小企業振興と言っても過言ではないと思います。その中で、特定の重要な要素に着目いたしまして、例えば科学技術振興とか観光立県推進とか、そういう必要に応じた条例化で重点を明示しているということがあろうかと思います。
 というような以上のことから、全般的な振興条例というのはちょっと違うのではないかという気もいたしますが、中小企業を振興しなきゃいけないというような哲学については全く同感でございまして、不況などの状況変化に対し、あるいは機動的な政策を推進し、活力あふれる元気な和歌山経済創造のために中小企業振興に積極的に今まで以上に取り組む、特に具体的に取り組んでまいる所存でございます。
○議長(冨安民浩君) 商工観光労働部長岡本賢司君。
  〔岡本賢司君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本賢司君) 職業訓練についての御質問に一括してお答えさせていただきます。
 公共職業訓練についての基本的な考え方についてでございますが、昨今の経済環境の激変や産業構造が変化し続ける中、完全失業率の悪化など、雇用情勢は大変厳しい状況であります。この厳しい雇用情勢にかんがみ、県や雇用・能力開発機構が行っている公共職業訓練は、大変重要なものであると認識しております。
 現在の公共職業訓練としましては、県立和歌山・田辺産業技術専門学院の2校において、学校卒業者を対象に、各産業分野における人材養成に努めるとともに、雇用・能力開発機構が設置する和歌山職業能力開発促進センターにおいて、離職者を対象とした職業訓練を実施しているところであります。また、県では、昨年度から離職者を対象に、IT関連介護分野等を中心に民間教育機関等への委託訓練を大幅に拡充し、就職につながるよう努めてきたところであります。
 今後も、雇用の安定・拡大に結びつけられるよう内容を充実し、地域ニーズを踏まえた訓練の実施を関係機関と連携をとりながら効果的に進め、各分野における人材育成を図っていきたいと考えております。
 次に、事業主が行う職業訓練の場として設置されました地域職業訓練センターにつきましては、一昨年、雇用・能力開発機構の廃止について閣議決定され、それに伴う見直しにより、昨年12月に、国としては平成22年度末をもって廃止し、建物の譲渡を希望する地方自治体には譲渡するとされました。それを受け、現在、雇用・能力開発機構において譲渡価額の算定が行われているところであります。県としましても、雇用・能力開発機構の動向や地元自治体等の意向を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(冨安民浩君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(冨安民浩君) 再質問を許します。
 43番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 第2問ですが、地域主権の問題で、これは要望ということになると思うんですが、地方行政の主体というのは、もちろん自治体であって、地域住民であるわけなんですが、これまでは国の法令によって事業なり予算なりが統制をされてきて、国会が決めるというような状況が長らく続いてきた中で、3割自治、4割自治と言われるような、事業量は地方自治体のほうがたくさん持ってるけど、その財源の配当が少ないというようなことで長年苦しんできたという歴史があると思うんですね。
 それが、この間、地域主権という言葉ではありますが、主権が地域に移されると解釈していいのかどうかわかりませんが、そういうことでの改革ということがどう進められるのか。特に急テンポで、速いスピード感で進められようとしておりますけど、私は、自治体にとっての一番大きな問題というのは、やっぱり財源の問題だと思うんです。3割自治ではなくて、せめて5割自治、半々でやれるぐらいのところはまず確保しなくては地域主権とは言えないんではないかなと。そのことをまず真っ先に解決をして、議論していくということが大事だというふうに考えています。
 そのことが、今はもう経常経費ということで、人件費を中心とする義務的経費がかなりの財源の部分を占めておって、政策的経費、投資的経費に回せないという状況がありますので、まずその改善を真っ先に進めていただきたいということを言っておきたいと思うんです。
 地場産業、中小企業振興について、知事から利用実績の数、3年間でこれだけという数ありましたけど、やっぱり県が実施する振興策ですから、すべての事業者を視野に入れて対象にした事業施策体系というのが、私は望ましいというか、あるべきだと思うんですね。
 今のメニュー化では、特定の事業者が幾つものメニューを利用することができるというようなことが起こってきます。現にそうなってます。そのことによって、本来利用すべき事業者が利用できないということがあっても困りますし、もちろん財源の限界というのもあろうかと思いますが、そういうことから、条例という形で県の施策のあり方を示してはどうかということで申し上げました。
 地場産業、中小企業というのは、地域の大事な宝です。産業です。そこで住民が雇用や生活をしてるわけでして、これは県民全体にとっても、地場産業、中小企業振興というのは大事な課題であると思うんですね。県民一丸となって支えていけるということを進める上でも、私は条例化がふさわしいんではないかというふうに思ったわけです。
 この間ずうっと事業所の訪問を、今後も継続していきますけども、この問題もぜひ求めていきたいと思います。
 公共職業訓練は重要というお話がありまして、国のほうが地域職業訓練センターを廃止するという方針なんですが、私は、これはもう廃止の撤回を求めるぐらいのことをしてはどうかなと思うんです。
 自治体が引き受けるにしても、やっぱり施設の提供だけではなくて、その内容充実ということも同時にしていかなくてはいけないし、国に対してもそのことは申し上げていかなくてはいけないと思うんですが、知事は、この地域職業訓練センターの機構からの廃止という方針、これ、国に撤廃せよと、国が引き続いてやれということを求める気はありませんか。そのことだけをお尋ねしたいと思います。
○議長(冨安民浩君) 再質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 職業訓練の重要性というのは、私も、それから県も、それから皆さんも、すべての人が大事だというふうに思ってると思います。
 あとは、どういう形でやるかということでございまして、本県については、ちょっと前からいろんな流れの中で一応の結論は出てるというふうに理解しておりますけども、それが現実にきちんとできないようであれば、それはおっしゃるように、もともとの制度がおかしかったんじゃないかというような提言もしなきゃいけないし、それがうまくいくようであればその必要もないしということで、私の立場としては、具体的にきちんとした訓練が本当になされるかどうか、そういうことについてよく議論をしていきたい、そんなふうに思っております。
○議長(冨安民浩君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「はい、ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(冨安民浩君) 再々質問を許します。
 43番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 よく議論をして、どういう形がいいのかということでやっていきたいということなんですが、もう機構のほうは22年度末をもって地域職業訓練センターは廃止をするということで、地方自治体に譲渡すると。地方自治体が受けなければ、それはそれで廃止というふうになってしまうわけですよね。
 地域職業訓練センターといいますか、職業訓練の場の提供でもあるし、内容をどうしていくかということで、特に今の雇用情勢を見れば、職業訓練の位置づけというのは決して薄れてはいないということで申し上げましたが、ぜひ県民の雇用の場、それから働いてる人の職業訓練を重ねて離職者を生まないというような形での職業訓練も大事だと思いますので、ぜひ力を入れてやっていただきたいということで、要望にしておきます。
○議長(冨安民浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。

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