平成21年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(原 日出夫議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番原 日出夫君。
  〔原 日出夫君、登壇〕(拍手)
○原 日出夫君 では、議長のお許しを得ましたので、質問をしたいと思います。
 補正予算については、今、小川議員から全体の、内外の経済情勢と、それからそれに伴う大型、和歌山県の補正予算について質問され、そして知事の答弁がありましたので、私はその中で2つの点で、具体的な点で御質問したいと思います。
 1つは、この大規模な補正予算が行財政改革推進プランにどう影響するのかということで、少し質問したいと思います。
 国において経済危機対策に基づく補正予算が成立したことを受けて、県は、2月議会、引き続き今議会6月議会に471億円の補正予算を編成されています。歳入の補正で県債が187億1800万円を発行されますし、県は新行財政改革推進プランでは、推進プランを実施しない場合は21年度収支不足額が135億円、基金は21年度に枯渇することになっています。推進プランを実施したとしても、21年度は不足額67億円、基金から取り崩すことになっています。今回の大型補正予算による県の財政への影響はどうか、推進プランの変更はないのか、総務部長にお尋ねしたいと思います。
 次に、補正予算に伴う臨時特例交付金の運用についてであります。
 1つは、公共事業240億円は県がやらなくてはいけない事業を前倒しにして行うのに大変いいことだと思いますし、問題はないと思いますが、とりわけその次の福祉分野における経済対策としての臨時特例交付金の運用については、例えば介護職員処遇改善対策、障害者自立支援特別対策は23年度までの時限経過措置で、正味2年6カ月の期限つきの施策であります。とりわけ介護職員の処遇改善は、平均1人1カ月1万5000円程度の賃金アップをすることになっています。福祉法人や介護事業所は、介護職員の賃金のベースアップを2年6カ月上げて、その後はもとに戻しますよというわけにはいかない。そういう意味では、これは経済対策というのではなく、むしろこの時点で介護保険制度や障害者自立支援法のあり方そのものの見直しをしてこそ成り立つのではないでしょうか。この対策は現場を混乱させることにはならないでしょうか。また、その賃金のベースアップは正社員に限定されそうで、パート職員との賃金格差がさらに広がることにならないか。臨時特例交付金が終了する平成24年度以降の対応についてお尋ねします。
 また、この対策の各事業所や市町村への説明や申請受付、実施後のチェック等は、市町村でなく、すべて県が担当していくことになっていると聞いております。仕事量が膨大にふえると予測されるが、県としてどう対応されていくのか、福祉保健部長にお尋ねいたします。
 次に、農業・林業関係についてであります。
 今回はそのことすべてでありますが、1つは新農林水産業戦略プロジェクト推進事業の推進体制と関連施策の有機的な連携についてお尋ねします。
 和歌山県の地域経済を支える基幹産業である農・林・水産業を、各地域を基盤にどう振興させていくのか。今回、農林水産部が総合的な振興策として農林水産業戦略プロジェクト推進総合対策を打ち出されました。和歌山県の農業所得平均300万円、農・林・水産を統合すれば200万円を下ると言われております。長期総合計画は1戸当たり550万円と夢のような話ですが、その目標に向かって今、総合的な対策を打ち出し、地域の農・林・水産にかかわる生産者をいかにやる気のあるものにしていくか。そのためには、県の総合対策の方針が地域で理解され、県、地域が一体になるため、地域での戦略プロジェクト組織が確立されなくてはなりません。
 地域で品目ごとに生産加工販売対策を総合的に推進するには、その組織が農・商・工が連携したものではなくてはなりません。農業分野だけでの集合体では地域には力になりにくいと思いますが、県は地域戦略プロジェクトについてどう考えているのか、お尋ねします。
 また、地域では農の事業、林の事業、水産の事業と各セクションの振興策を受け入れてやっています。この戦略プロジェクト対策と各セクションの事業をどう一体化させ、総合対策にしていくのでしょうか。お伺いしたいと思います。
 また、私たちは、国、県が打ち出される施策についても、個々ばらばらにしか理解できません。国、県の施策である例えば農商工連携ファンド、わかやま中小企業ファンド事業、ふるさと雇用再生特別活用事業などを初め、国の地域再生総合プロジェクト施策を含めて総合的にどうとらえていくのか。それは今回の戦略プロジェクトの果たす役割だと考えますが、どうでしょうか。農林水産部長にお尋ねします。
 次に、ことしの梅の市場動向と干ばつ、強風による被害対策についてお尋ねします。
 梅の収穫は今最盛期ですが、和歌山の農業の基幹品目として、梅の市場動向によっては地域の経済に大きな影響を与えます。梅の収穫時期の5月、6月、7月は、地域の商店街、飲食街は閑古鳥が鳴くのを当たり前として受けとめるぐらい農村部へ人が集中すると言っても過言ではありません。それだけに、農業生産者だけでなく地域の3次産業の人たちも、ことしの梅の生産量や価格を含め、市場動向に注目しています。
 ことしの梅の生産量はどうでしょうか。当初予測では、前年比110%と豊作と見ていたのが、現状は、このままいきますと、梅の生産量は前年比90から95%と当初予測110%を大きく下回るようです。品物が少ないと少し値が上向くかと思いきや、少し私のデータは古いですが、前年20年400円近いものがせんだってまでは300円台──今ちょっと400円ぐらいになっていると聞いておりますが──梅の市場動向についてお伺いしたいと思います。
 2点目は、ことしの天候が異常です。雨量の状況を見ますと、白浜のアメダスのデータによれば、5月中旬、平年ですと67ミリに対して、ことしは6.5という1割に満たない、そういう状況であります。5月下旬は、平年72.5ミリに対して10.5ミリという。このように乾燥、干ばつによる被害と、しかも5月28日の強風による被害とダブルパンチで梅の落果がひどく、強風による被害額約4億4000万円、乾燥を含めた被害が予測できませんが、少なくとも生産量110%が90から95%になるとあればおおよそ見当がつくと思われます。ある梅生産農家は、梅園の7割も落果したところもあります。
 そこで、その被害状況はどう把握されているのでしょうか。また、その対策として、共済制度の活用、融資制度とその利子補給等、県当局の被害対策について農林水産部長にお伺いいたします。
 次に3点目ですが、これについては要望としたいと思います。農山村の地域の地域再生計画の策定について要望したいと思います。
 私は、農山村地域の地域再生計画の策定を提案するのは、例えば市の中心市街地やまちづくりと比較して農山村、とりわけ林業を再生するためにその地域をどう再生するかというプランがなかなか難しく、余り確固たるものができ上がっておりません。
 そこで、1つは、国の地域再生法を初め道整備交付金制度を活用した基盤整備と、第2点は、県が21年度予算の中で住みよい山村集落総合対策事業とどう複合化、絡めながらどう地域を再生していくのかを市町村、関係機関と協力してそのプランづくりをしていくことを提言しますので、ぜひともその実現に向かって農林水産部は頑張っていただきたいと要望したいです。
 次に、紀州材生産販売プランを生かす紀州木材利用木造住宅特別融資制度の設置について御提案申し上げたいと思います。
 和歌山県が出している紀州材生産販売プランの中でも、加工販売促進を進めるには、新たな販売開拓として県内の紀州材利用の住宅建設を促進させることが大切です。県下での県産材の年間供給量はどうでしょう。県は、紀州材需要創出事業として乾燥紀州材活用の普及には取り組んでいますが、さらに紀州材利用を拡大するための施策として、設計士、工務店、林業関係者は、1つの考えとして、紀州材利用の木造住宅をもっと広げるには融資制度を設立することによって、不動産業、設計、工務店、金融機関が媒体源として県民へのPRが広がりを見せ、融資制度活用の消費者がふえて木造住宅のよさのPRにもつながるのではないかと訴えられています。県として紀州材販売を促進する意味からも、紀州材利用の融資制度設置を考えてみてはどうでしょうか。
 ちなみに、兵庫県では県内産利用の融資制度は県内に大きなPR作戦となって木造住宅着工戸数がふえていると聞いております。農林水産部長にお尋ねします。
 次に、中津村森林組合の簿外資産問題についてであります。
 県が森林組合の補助及び委託事業費について、年間、請負事業費を除いて約12億2000万、県から補助金または委託事業として25森林組合にされております。そういう意味で、これは請負事業を除いていますから、まださらに大きい事業でありますが、そういった中でむしろ、私は以前から言っているんですが、県のいわゆる委託補助事業または委託事業が森林組合そのものへの丸投げになっている現状は、幾つかの問題点が起こるんではないかということも指摘してまいりました。
 今回、この中津村森林組合の問題を見てみますと──各森林組合の決算書を見ました。しかし、森林組合そのものの決算書は組合員にもわかりにくいし、我々にも全然わからない。事業丸投げで、その中の人件費や内訳が何ら示されてませんから、決算書の中身を見るには到底、私は当局自身もこれを見たってわからないんじゃないかと、そういうような状況であります。そういった点についても、もう少し組合員や一般がわかりやすい収支決算書を示すような指導も必要ではないかというふうに痛感いたしました。
 そこで、質問したいと思います。
 第1点は、このような事態になった要因はどうでしょうか。第2点は、県の指導監督はどうされているのか。第3点は、今回を教訓に今後どのように改善していくのか。農林水産部長にお尋ねします。
 次に6つ目ですが、カンザイシロアリ対策についてであります。
 カンザイシロアリは、アメリカから侵入してきた外来種です。アメリカカンザイシロアリとも言われています。日本のヤマトシロアリは湿気づいた床下に巣をつくって、一部限定したところからスタートしますが、アメリカカンザイシロアリは乾燥したところを好み、年じゅう巣をつくる代物だそうですし、1軒の家にとどまらず、周辺団地全体に広がりを見せるそうです。
 日本では、既に88カ所、1万件に及ぶ状況にあるらしく、よそのことと思っていましたが、最近県内の古座、すさみ地域に被害が発生していることがわかりました。今、関係者はその対応と対策に苦慮しています。県全体に広がるまでにこの対策を県行政としても考えていく必要があると考えます。住民、設計士、工務店、駆除業者も、今、駆除するための対策、研究もしていると聞いていますが、県行政としても、外来種対策、住民の安全・安心の住宅環境という立場から、まず県行政は現況調査へ一歩踏み出してもらうことを求めますが、県土整備部長にお尋ねいたします。
 次に、最後になりますが、紀の国森づくり基金事業についてお尋ねいたします。
 田辺市では、この森づくり基金を活用して、ふるさとの森づくり、災害防止の森づくりを目指してNPOを中心とした市民運動として定着していますし、苗木づくりなどは障害者団体など一緒になって進めています。これは、私たちの尊敬する横浜国立大学名誉教授の宮脇昭教授が示す宮脇方式の植樹を植栽しています。
 今、知事に示しました活動状況を見ますと──時間がありませんが──市民を初め県外からの参加、とりわけその特徴的なところは、目良団地では1200名の参加、県外から400名、新文里港埋め立て1000名、県外から300名、芳養漁協埋め立ては1000名、県外から300名。今、大沢議長もこの3つの特徴的な点にも参加していただいておりますし、当時、環境生活部長であって、今、代表監査の楠本氏も参加していただいております。
 参加者は、小学生、中学生、高校生、自治会、老人会、女性会、市民グループ、白浜・田辺青年会議所、田辺市行政の参加で、紀州「熊楠の森」大植樹祭として大きな成功と成果を上げています。これらはすべてボランティア参加で、豚汁等のサービス、各自治会等はジュース等の飲み物のサービス、道具は各自持参、植樹本数は今までに3万9000本、面積にしては1万2000平米、こういったNPOを中心としたふるさとの森づくりは大きな市民運動として取り組まれています。
 そこで、知事にお尋ねします。
 1つは、NPO、各団体が中心になった市民植樹運動をどう評価していますか。
 2つ目は、県の森づくり、植樹活動の考え方、グランドデザインはどうなっていますか。
 3つ目は、世界的植樹運動の先駆者、横浜国立大学名誉教授、宮脇方式の植樹をどう評価しているでしょうか。宮脇教授は、宮脇方式で国内で手がけた植樹は1500カ所以上、海外でも植樹指導を展開。東南アジア、南アメリカ、アフリカ、とりわけケニア、ナイロビ郊外の世界三大熱帯で植樹し、中国の万里の長城や内モンゴルでも活躍し、既に植樹本数は世界で3000万本以上と言われております。
 そういった中で、次に具体的に農林水産部長にお尋ねします。
 1つは、21年度紀の国森づくり基金活用事業の申請と県の審査結果に対して質問します。
 皆伐されたところへの森林造成事業、4団体の申請に対して、県は保留理由と改善措置事項を示し、指導されました。その保留理由、改善措置の内容に対しては後ほど質問しますが、まず第1点は、宮脇方式のふるさとの森づくりについての考え方をお聞かせください。
 宮脇方式は世界各国、国内においてその実践による実績は高く評価され、植樹運動は大きな広がりを見せています。ふるさとの森は、郷土の潜在自然植生を構成する樹種を用いてつくる自然林に近い森を速やかにつくることができる。紀南地方の自然植生を考え、その樹種を選び、混植・密植することで強く早く育てていく、そういったことをしています。苗木が早く育つので、植えつけ直後の世話、除草等は1~2年で済みます。本来、通常の植樹ですと5年から10年の手間がかる。しかも、自然に近い森は害虫にも強いので、管理はほとんど必要ない。また、杉、ヒノキの皆伐された森への植樹や、公園、のり面等のふるさとの森づくりは、強風、潮風の影響の大きい場所、植栽密度を高め、混植・密植によって自然の森を復活させています。
 宮脇氏は、「自然とは人の顔ほどに違います。多様性こそ最も強い自然の表現力です。したがって、まず現場に出て自分の体を測定器に、目で見て、手で触れ、においをかぎ、なめて、さわって、そして木を植えてもらえばわかります」と説き、「木を植えるとは、命を植えることであり、まさに心に木を植え、あすを植えることです」と強調されております。
 哲学者の梅原猛さんは、「本物の生態学的な宮脇方式で木を植えることは、21世紀の公共事業である」と明言しています。
 私は、宮脇方式を述べた上で県の保留理由と改善措置に対して、具体的に質問します。
 第1点は、4団体の申請に対して、それは1団体に集約するよう指摘されましたが、県の担当課は現場を知らない。活動の実績を見ていない。実際に植栽の労力は多くの人の参加と協力なしにはできません。今回は捻木の森事業として──捻木とは田辺市の市指定天然記念物であります。安珍を追って清姫が田辺の高所から見るのに、低いんで、それをこの木に登って怒ったというか、木をねじったことによってできた木というふうに言ってます。それは熊野古道周辺であります。熊野古道中辺路、潮見峠の熊野古道沿いに捻木があって、そして今度植栽するのは1万5700平米にわたる──いわゆる皆伐された──杉、ヒノキが全部刈られておりますから、1つは、せっかくの熊野古道沿いの山が皆伐されてはげ山になった。これを何とかしなきゃいけないというNPOのその思いで今回提出されたわけでありますが、今回は、その杉、ヒノキが皆伐され、1万5700平米を何とか植栽しようという計画であります。
 この実行は、4つの団体がグループ化し、さらに県内外の市民1000人の参加で植樹しなければ、とてもなかなかできません。また、NPOを中心とした先進的なグループと市民参加でふるさとの森づくりをすることに何の問題があるんでしょう。県はこの意義を理解していないのではないでしょうか。県の今回の保留理由及び指摘事項は理解に苦しむし、本当に森づくりをするという立場に立っているのか疑いたくなりますし、そのことについて県の説明を求めます。
 第2点は、宮脇方式は、植栽方法は本数が多く、多額の予算が必要であるとしています。先ほど述べた宮脇方式は、植樹とその労力はむしろ、数の問題じゃなくて、それそのものを植えるとか維持管理は普通の植栽よりコストが安くつきます。これは、皆さん、NPOが実践した平成18年からの実績を見ますと、それが証明されています。しかも、苗木代は高いですか。市場と比較してください。しかも、みんながドングリを拾い、障害者の皆さんと力を合わせて苗木づくりをした苗木代が高いでしょうか。その地域であったいろんな種類の木を密植することのほうが、植樹から維持管理まで総合的に見ると、コストは安いのではないでしょうか。しかも、全体の申請額の半分近くは鳥獣被害防止のネット代であります。
 第3点は、指摘している改善措置についてであります。
 1つは、県は植林の方法として、宮脇方式が唯一絶対的なものではない、多様な森づくりということを考えて植林の方法を考えていただきたいという指摘がありました。これについては、全く私個人としても納得できるものでありません。このNPOを中心とした4つの団体は、また市民運動は宮脇方式が最高という形の方針でやっていることについて何ら口を挟むことがあるのかということについては、少し疑問を持っているところであります。
 多様な森づくりということでの植林方法を考えよと指摘されました。知事に質問したように、多様な森づくりの植林方法は、私たちは宮脇方式が実践結果から一番よいと考えています。県は、具体的に、じゃ植樹方法を提示、指導しないで宮脇方式を否定するかのごとく、指摘内容については非常に不十分であり、問題があるのではないかと感じますので、私たち宮脇方式は、国内外を初め田辺市の実践活動は今すくすくとその植樹は育っていますし、何が問題なのかお聞かせ願いたいと思います。
 参考までに、ことしの4月24日付「毎日新聞」によれば、林野庁はこの9年度から多様な広葉樹を密集して植える宮脇方式と呼ばれる植林方式を国有林の一部で初めて採用すると言われております。こういった意味で、林野庁は、ことしから広島県の呉市で国有林に6月にもモデル植林を実施する予定だと、こういうふうに言われておりますが、そういう意味では県が今先ほど言いましたいろんな意味での宮脇方式に対する疑問を呈することについて反論をしながらも、今後の考え方についてお聞きしたいと思います。
 これで、質問を終わりにします。ありがとうございました。(拍手)
○議長(大沢広太郎君) ただいまの原日出夫君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御質問のうち、私に対して答えよというお話ございました紀の国森づくり基金活用事業についてお答え申し上げます。
 これにつきましては、平成19年度から公募事業を実施してきたところでございますが、この間、NPOやさまざまな民間団体の活動により、2年間で約2万4000人もの多くの県民に御参加をいただいているところでございます。こうした市民植樹運動は、まさに県民が知る、理解する、参画するという紀の国森づくり基金条例の趣旨からも大変有意義であると考えてございます。
 また、CO2吸収源としての森林や生物多様性への関心が高まる中で、例えば荒廃した森林の整備や貴重な森林を残すための公有林化など、100年、200年先の姿を見据えた森づくりが重要であり、このため、この基金事業を最大限に活用していただければというふうに考えております。
 次に、横浜国立大学、宮脇名誉教授の提唱されているいわゆる宮脇方式の植樹に対する評価についてでございますけれども、お話のとおり、国内や世界各地でこれが実践されております。特に荒廃地や砂漠地など、すなわちもともとの土壌が失われたようなところで、そういう悪条件なところで一気に自然に近い森林の造成に成果を上げるという点では、そういう成果を上げているところであると理解しております。また、本来そこに生育する樹種の苗木を育てて、これを密植してより早く自然林に近い森を育てる方法ということでございますので、もともとあるものを植えていくという点で私は評価をしております。
 ただ、御引用の宮脇さんの言葉にありますように、自然とは人の顔ほど違うと。それから、多様性──多様なものだというようなこともございます。土壌が例えば十分残されているようなところなどさまざまな地域に、あるいは大規模に植林をする、あるいは小規模に植林をする、いろんな条件でさまざまな方式が考えられると思います。したがいまして、植林の唯一無二の方法であって、ほかはだめだというふうに考えるのも、これも宮脇さん自身も望んでおられないことではないかと私は思います。
 したがって、この方式も含め、さまざまな方式をテストしながら、一番いい、その土地に合ったやり方を考えていくということが真のナチュラリストとしての立場であろうと思います。
 御指摘のように、林野庁においてもこれを試験的に一部導入していこうじゃないかと、テストしようということになったと考えております。県内の森林においても、さまざまな場所で、こういうことも含めていろいろ実証して効果を確かめていく必要があろうと私としては考えております。
○議長(大沢広太郎君) 総務部長宮地俊明君。
  〔宮地俊明君、登壇〕
○総務部長(宮地俊明君) 今回の補正予算による新行財政改革推進プランへの影響につきましてお答え申し上げます。
 今回の補正予算の編成に当たりましては、歳入として基金繰入金を約42億円計上いたしております。この内訳を申し上げますと、国の補正予算で措置された交付金等を活用して積み立てを行う各種基金からの繰入金が約34億円となっております。また、差額の約8億円につきましては、財政調整基金からの繰入金であり、これは法人2税の還付金等の増加に伴うものでありますが、取り崩し後の財政調整基金と県債管理基金を合わせました基金残高は、今回の補正後で約144億円程度を見込んでおります。
 一方、新行財政改革推進プランで想定しております平成21年度末の基金残高見込みは84億円となっておりまして、今回の補正予算に伴う基金の取り崩しが本行革推進プランに与える影響はないものと考えております。
○議長(大沢広太郎君) 福祉保健部長北田佳秀君。
  〔北田佳秀君、登壇〕
○福祉保健部長(北田佳秀君) 補正予算に伴う臨時特例交付金の運用の2点についてお答え申し上げます。
 まず、介護職員処遇改善交付金などの臨時特例交付金が終了する平成24年度以降の対応についてでございますが、国においては、介護や障害福祉分野の職員の処遇改善の状況などを見ながら、介護報酬を初めとする介護保険制度や障害者自立支援法のあり方全体を検討する中で対応していく意向であると聞いてございます。
 県といたしましては、介護職員の賃金を維持するためにも、次期介護報酬改定においては、介護労働を適正に評価した報酬とすること、また障害福祉分野におきましても、福祉人材のキャリアと能力に見合った給与体系となるよう自立支援給付費に係る報酬単価の設定を行うことなどにつきまして、近畿ブロック知事会などを通じて国に要望してまいりたいと考えております。
 次に、交付金に係る事務につきましては、申請書や処遇改善計画書の受け付け、交付決定、支払いに必要なシステム改修及び精算事務等が発生してまいりますが、限られた期間の中で事業者等への制度の周知を徹底するとともに、適正な事務処理を行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(大沢広太郎君) 農林水産部長下林茂文君。
  〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 農業・林業関係の5点についてお答えを申し上げます。
 まず、第1点の新農林水産業戦略プロジェクト推進事業についてでございますが、県の長期総合計画に掲げた農林水産業の所得向上を図るために、これまでの手法とは違いまして、地域の自主性をより尊重しながら、それぞれの異なる課題に対応した生産、加工、流通、販売、この対策を総合的に推進する事業といたしまして本年度創設をいたしてございます。
 その推進に当たりましては、市町村、関係者等への説明会を開催するなど、まず周知を図るとともに、随時部内の調整会議を開催いたしまして、この戦略プロジェクトが最大限の効果を発揮できるよう、農・林・水の関連事業との調整を図りながら取り組んでございます。
 また、品目別のプロジェクトチームを設置いたしまして、計画段階から県もコーディネーター役として参画をし、農協等の関係団体や市町村と連携をしながら事業計画の作成について支援をしているところでございます。
 今後とも、この戦略プロジェクトを核に、農商工連携ファンドやふるさと雇用再生特別基金事業等とも連携をしながら農林水産業の活性化に努めてまいりたいと考えてございます。
 2点目の梅の市場動向等についてでございますが、景気の後退による価格低迷を懸念いたしてございましたが、市場取引価格につきましては最近持ち直し傾向にあり、堅調に推移をいたしました昨年とほぼ同様の価格を現在は維持してございます。こうした中ではありますが、去る5月28日に発生をいたしました強風による梅果実の落下などの被害に加えまして、5月の少雨による影響等もございます。そういう中で、梅産地にとりましては厳しいものがあるというふうに認識をしてございます。
 今般の強風等による農家の被害対策についてでございますが、本年産の梅の果樹共済加入率につきましては、主産地の和歌山南部農業共済組合におきまして39.8%となってございまして、今後、県といたしましては、共済金の早期支払いあるいは農林漁業のセーフティネット資金の活用等を働きかけてまいりたいと考えてございます。
 いずれにいたしましても、被害対策につきましては、今後の状況等も踏まえながら適切に対応してまいりたいと考えてございます。
 次に、3点目の紀州材生産販売プランと紀州木材利用木造住宅特別融資制度の設置についてでございますが、紀州材の県内需要の拡大につきましては、木材の最大の需要先であります木造住宅への利用を促進するため、これまで乾燥紀州材を利用した木造住宅建設への定額補助を実施してございまして、実施先といたしまして1364件に助成を行ったところでございまして、本年度におきましても、現在募集を行ってございます。
 いずれにいたしましても、木材需要拡大につきましては、紀州材生産販売プランを進める上で大きな柱でございます。これまでも関係者の意見を聞きながら取り組んできたところでございますが、お話の木造住宅への利用促進につきましては、今後とも建築あるいは設計関係者等の意見も聞きながら、より効果的な方策について検討してまいりたいと考えてございます。
 4点目の中津村森林組合の簿外資産問題についてでございますが、この不正を生んだ要因といたしましては、作業員からの強い要望もあり作業代金の現金支払いが続けられてきたこと、あるいは職員数が少なく権限が1人に集中しがちな体制であったことなどが主な要因と考えてございます。
 次に、県の指導監督についてでございますが、森林組合法の規定では、県は森林組合に対し、必要な報告や資料の提出、また経理についての検査、さらには法令違反があったときには業務の改善を命ずることができるということになってございます。これを踏まえまして、去る6月8日、中津村森林組合に対し5項目にわたる業務改善を命じたところであり、今後、これらの確実な履行が図られるよう厳正に対処していくとともに、すべての森林組合を対象に再点検を行うこととし、既に立入検査に着手してございます。
 県といたしましては、これまで、コンプライアンス意識の徹底を初め、作業代金現金払いの見直しや組合内部におけるチェック体制の整備を指導してきたところでございますが、今回の問題を教訓といたしまして、県下のすべての森林組合に対しさらなる情報開示を求めるなど、組合員の負託にこたえ得る組織となるよう指導の強化に努めてまいりたいと考えてございます。
 最後、5点目でございますが、紀の国森づくり基金の公募事業につきましては、財源が県民税ということでございまして、公平性などの観点から運用に留意をしているところでございます。今回保留となった5団体につきましては、植栽時の経費が一般的な方法よりも高く、協議してきたところでもあり、また手続上の問題等もございまして、保留とさせていただいたものでございます。
 森づくりのコストにつきましては、樹種の選定に始まり、条件がさまざまでございます。一概に比較することはできませんが、お話のように、確かに1~2年で草刈りを終えることができれば植栽後の費用は安価になるというふうに思ってございます。
 県といたしましては、これまでの県内での取り組み状況、また林野庁の積算資料等も見ながらいろんな条件下におけるコストを把握いたしまして、再度ヒアリングの機会を設けていきたいというふうに考えてございます。
 また、県の地域森林計画では、地域に適した樹種を選択いたしまして、例えば広葉樹では、ヘクタール当たり3000から4500本を植栽した後、5年から10年の下刈り、除伐などの手入れを行うという基本的な指針に基づいて取り組んでございますが、その手法は現地の状況によりましてさまざまであると考えてございます。お話の宮脇方式につきましても、県内において既に実践を重ねられており、効果的な森づくりの方法の1つであると考えてございます。
 なお、ヒアリングを含め、協議の過程の中で誤解を招くことのないよう適切に今後も対応してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(大沢広太郎君) 県土整備部長茅野牧夫君。
  〔茅野牧夫君、登壇〕
○県土整備部長(茅野牧夫君) カンザイシロアリの現状と対策についてでございますが、この外来種のシロアリであるカンザイシロアリによります住宅への被害が広がりつつあると言われており、従来の日本の住宅で発生しているシロアリとは異なる習性のために有効な駆除方法が確立しておらず、技術的にも難しいというふうに聞いてございます。
 また、このシロアリに対する専門家、技術者も少ないのが現状であります。今後、関係団体等と連携いたしまして、情報収集に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
  〔「アメリカ行ってこいよ、もう」と呼ぶ者あり〕
○議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(大沢広太郎君) 再質問を許します。
 34番原 日出夫君。
○原 日出夫君 答弁ありがとうございます。
 補正予算について福祉保健部長から言われましたが、近畿知事会でその旨言うていくということですけど、国の予算そのものが緊急経済対策としての政策を打ち出すべき項目かどうかということを基本的に考えれば、これは全く似つかないと僕は思います。今回、公共事業としてやられた220億そのものは引き続き県がやらなければならないことを前倒ししながら、それを早くやるということについてはあり得ても、福祉に対しては法律がある。法律があるのにもかかわらず、特例交付金でそれをやるということについては、いささかこれは国の考え方がおかしい。少なくとも、この時点でやるのであれば、介護保険法を改正したり障害者自立法を改正して、そして前倒しで実はこの10月から実施するという方針を打ち出すのが本来国のすべきことである。できなければ来年度、22年度から新たに法律の議論をした上での法体制をきちっとして、今後の福祉行政のことに対してきちっとやるべきだというのが本来のやり方だと私は考えます。
 そういう意味では、本来は知事に聞きたかったんですが、近畿知事会で意見を述べていただくということですから、その点を踏まえて、よろしくお願いしたいと思います。
 次に中津村の問題ですけど、森林組合の問題については、私自身、本当に素人でありますが、ちょっとプロの人と──担当者から決算書をもらいましたが、中身を見ますと、全くその県からの補助金、委託費が、事業費そのものが丸ごとの収支だけであって、そのことがどう使われたのかという中身の明細が全くわからない。これでは、組合員自身も一般のことはもう全然わからない状況。だから、今後の教訓としてやる場合には、必ずそういう意味での、組合員がわかるような、いわば年度の決算書にやっぱり改めて指導していく必要があるんではないかと。その中で、組合員の意見を聞きながら、組合員とともに森林組合を運営していくという形に戻すべきだと思います。
 先ほど言った、中津村が一部の幹部だけで取り仕切って金の中身を仕切っていくとそういう形態が生まれるということに対して、教訓として今後進めていただきたいと思います。
 次にカンザイシロアリの件ですけど、ちょっとやじで「アメリカへ行ってこい」と言うたけど、それはアメリカの駆除対策はきっちりして、もうわかっています。国のほうでもわかってますし、それはわかってるんですが。ただ、アメリカの場合は、1軒1軒が離れていて、1つそのものを追いかけてやるという駆除方法はもうでき上がってるんです。カリフォルニアではもうそれは10年に1回やらんなんという、そういう状況が生まれてるんですが、我が日本は密集した住宅構成になってますから、アメリカの方策ではやれないというのがあるわけです。だから、日本に合った駆除方法を今後どうしていくかということで言われてますので、その点を、できるだけ現場へ行っていろんな専門家の意見を聞きながら、国もそうですけど、国も含めて今これから検討していくということですから、ぜひともそういう中での1つのこれからの対策としての柱に県としても取り上げていってほしいと。右から左へ流すことなく、それにこたえていってほしいというのが私の要望であります。
 最後ですけど、紀の国森づくり基金活用事業についてです。
 知事が答えられました。私たちは何も、宮脇方式を、それをすべてやれって言ってません。今、知事が言われたように、それぞれの形態で植樹をしていくことによってやったらいいということの考え。ただ、私たちは、宮脇方式に、みんなが声をかければ1000人、1500人て来るというのは、宮脇方式が世界各国で、しかも国内でも非常な成果を上げたことに共鳴して、みんなが、それだけ人が集まるんですね、強制しなくても。だから、それぐらいの方式にみんなが共鳴してるんですから、それはそれとして県は評価していくべきだし。
 県が先ほど言いましたように、県の方針はこれだけの本数で済みますよ、例えば3000本ぐらいで済みますという。それはそれで、僕、やったらいいと思うんです。それは、お互いに森づくりをしていくという方向で、お互いに共同一致すれば、お互いの市民団体、県の方策、いろんな皆さんの団体が違っても目標は一緒です。そういう目標に向かってやることを県が評価しなければ、それを知事が言いましたように、県のやり方に従ってないからこれはだめですって言うてきてるんですからね、現実は。だから、その点を、知事の言われたことを了として今後目標に向かって、お互いの方式についてはお互いに理解し合いながら、1つの目標に向かって共同していくことが大切ではないか。
 しかも、これは森づくりでなくて、地域の地域づくりにおいても、いろんな方策があっても、やっぱりお互いに行政とそういう市民団体、NPOが協働して物事を進展していく時代です。財政が厳しい中で、すべて行政におんぶする時代から市民と一緒になって森づくりや地域づくりをやっていくという本来の哲学の問題ですから、それを改めて認識していただいて今後の活動に生かしていただきたいということをお願いして、終わります。
 ありがとうございました。
○議長(大沢広太郎君) 原議員に確認をいたします。
 ただいまの発言でありますが、答弁を求めますか、要望ですか。
  〔「要望です」と呼ぶ者あり〕
○議長(大沢広太郎君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で原日出夫君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時44分休憩
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