平成20年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(服部 一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 32番服部 一君。
  〔服部 一君、登壇〕(拍手)
○服部 一君 おはようございます。早朝より大勢の皆さん傍聴にお越しいただきまして御苦労さんでございます。
 ただいま議長から一般質問の許可をいただきました。通告に従って質問をさしていただきたいと思います。
 先ほど、坂本議員のほうから農政問題について質問されましたけれども、私も、今回、農業振興1本に絞らしていただいて質問をさしていただきます。答弁は、ダブるかもわからないと思いますので、省いていただいて結構でございます。質問は簡潔にさしていただきますので、十分時間があると思いますので、ゆっくりと丁寧にお答えをいただけたらと思います。
 まず、仁坂知事さんに考え方をお聞きしたいと思います。
 元気な和歌山を目指して、仁坂知事さんも大変頑張ってくださっております。10年後を目指して長期総合計画も立て、提案をされました。和歌山の人口が年々減少していく中で、10年後は97万5000人を推定して、全体から見て県民1人当たりの所得を400万を目指そうとしております。長い道中でありますので、社会、経済の変化によって見直しも余儀なくされると思いますが、まずは議会も県民もその気になって取り組まなければならないと思います。
 私は、この長期計画を立てるに当たっては、コンサルや専門家によって原案を作成して検討していく自治体も多くあると思いますが、今回は、仁坂知事みずからが和歌山を思い、和歌山の将来を考えて、時間をかけて真剣に取り組まれ、また議会も長計の特別委員会が設置されまして、細部にわたって検討された姿に敬意を表するとともに、私もその特別委員会を傍聴さしていただきまして、1つの考えを持ったのであります。
 和歌山県は半島というハンデもありますが、気候、風土に恵まれて歴史も古く、名所旧跡の多い観光立県であり、農業立県であります。長計を見直しながらもこれをすべてやるとするならば、すばらしい我が和歌山県になるでしょう。福祉はもちろんでありますが、仁坂知事は観光立県、農業立県に力を注がれています。私は、やり方によっては条件がそろっていると思います。
 実は、私は今も農業現役であります。農家の長男の宿命もありまして、小さいころから手伝い、経営をしてまいりました。まあ自慢やないけど、「農業にかけては任しといて」と言いたいぐらいです。
 約半世紀、よかったこともありましたけども、苦しかったこともあり、しかし、農業なればこそということもたくさんありました。しかし、今はどうでしょう。後継者不足になり、農業収入だけではやっていけない農家がたくさんあるでしょう。
 なぜ日本の農業が担い手を欠き、行き詰まっているのでしょう。私は、大きく2つあると考えます。
 まず1つは、経済発展による農外雇用の拡大で、貧しかった時代の自作農の若者が大量に農外に流出した。若者をとどめる農業の新しい発展、構造改革が大きく立ちおくれたことにあると思います。80年代から、自作農は上層規模の専業農家ほど苦しくなり、中核農家や主業農家、専業農家が消えていったと考えられます。
 2つ目は、経済発展は新しい仕組みの農業経営を生み出しましたが、行き過ぎた農産物輸入自由化と上からの農政手法がこれらの自主的発展を抑えたことにあります。惰性的なばらまき支援は日本農業の仕組みがえによる発展を妨げると言われています。国において、もっともっと農政に力を入れてもらいたいと思いますが、仁坂知事さんのトップセールスを筆頭にして、我が和歌山県独特の農業振興をやっていこうではありませんか。
 和歌山県は何でもつくれるメリットもありますが、これと絞って一本化した産地づくり、特産物ブランドづくりが難しい面もあると思います。しかし、皆が本当にその気になってアタックすれば、やれないことがないと思います。それぞれの地域の特性、特徴を生かせるような指導とバックアップだと考えます。
 そこで、知事さんに農業振興の基本的な考えをお聞かせください。
 また、私が9月の定例議会の一般質問で、かき・もも研究所を主に、試験場、センター、研究所の問題を取り上げました。知事さんは、全体を見る中で検討し、また、せっかくの提案であるので一度現地視察もしてみますということでした。大変お忙しい状況でありますが、できるだけ早い時期に御視察いただけますよう要望しておきます。
 次から、一つ一つ個別の問題については農林水産部長にお尋ねをいたします。
 まず、農業後継者の確保についてお尋ねします。
 長計では、新規就農者を年間200人を目指すということでありますが、ここ1~2年の新規就農者、Uターン、Iターンの状況はどうですか。また、農業後継者は、子弟だけでなく、農業をやっていない人、企業も含むという考えでありますが、特に企業を含むということについてはどうお考えですか。
 次に、優良農地の確保についてお尋ねします。
 農業振興をしていく上で、今後、優良農地の確保に、荒廃地、遊休農地をどのような考え方や手段で対応していくのか、お答えください。
 次に、ため池の保全と利活用についてお尋ねいたします。
 ため池と言いますと、江上先生から「ため池先生」と言われておりますが、これには私の考え方も入れてお尋ねをしたいと思います。
 規模拡大や近代的農業を目指したい人、新規就農者、Uターン、Iターンを歓迎する中で、資金もさることながら、まず土地の問題があります。さきの質問で、どのような形で優良農地をつくり出すのか聞いていますが、経営規模も問題であります。
 そこで、私は、老朽、危険、活用していないため池を圃場整備できないものかと考えるのです。もちろん持ち主や水利権者もあり、県がどうする、こうすると言うことはできないでしょうが、以下、お尋ねしてまいります。
 まず、ため池等整備事業の本来の性質と過去2年間の進捗状況、事業費はどのぐらいになっていますか。
 次に、県下にはたくさんのため池があると思いますが、県下のため池の数はどのぐらいありますか、お教えください。
 今、私、ここに池の分布図を持ってまいりました。全県下の分布図をつくるということは大変でありますので、旧粉河町と紀の川市の池の分布図をこしらえました。これは旧粉河町の池の分布図なんです。(図面を示す)経費節約の上で後ろのほうが大変見にくいと思いますが、内容は大変充実をしております。これも見にくいと思いますが、これが紀の川市全域の分布図なんです。余り、見えにくいとこにも意義があるのでございます。これも、市の職員さんや県の職員さんにつくっていただきました。大変見えにくいので失礼をいたしましたけれども、これを見る限り、いかに池の水利を中心にして農業が盛んになったかということがよくわかります。また、官地、団体、個人持ちと、この分布図で色分けもしてあります。
 そこで、この池についての質問をさしていただきます。
 平成17年3月末で終わりました国よりの里道水路の払い下げの中で、池について市町村に払い下げられた状況はどうなっていますか。
 古い昔、水利のために人力で池をつくり、相当な労力、資金を投じていると思います。今や地球温暖化が叫ばれる中、緑や水は最も大切であり、むやみやたらにつぶすというのではありません。活用していない老朽、危険なため池を修理するにしても、負担金を払えない池、市町村に払い下げられたこのような池について、圃場整備へと指導できないものか。
 もう1つ、紀の川用水との関係であります。
 ギブ・アンド・テークの考えで、ため池への補給など、紀の川用水の活用に対する方策はないですか。今回の補正でも、紀の川用水への貸付金10億7500万円が計上されました。私も委員会で賛成をしましたが、県が大きな借金があるのに他に金を貸すという考え方に私も考えを持つわけなんですけども、5~6年前に終了したと思いますが、紀の川用水受益者負担軽減ということで、県の指導もあって、沿線自治体が10年間負担をした経緯もありますが、現状を教えてください。
 最後に、ため池の安全・安心についてお尋ねします。
 東南海地震が予測される中で、特に津波対策については随分と綿密な対策も講じられてきています。しかし、ため池についても、淡路大震災のときを思えばおろそかにできないと思います。分布図でもわかるように、池は水利を考えて、水をまかせるように上から下へと考えてつくられています。そういう地域が多いのです。上が決壊すればドミノ倒しのようになり、下が大変な被害となるでしょう。
 当初予算に上げている農地防災事業費の中で、ため池関係で5億210万円計上されております。池に対する対応というのが大変だと思います。ため池調査費で2625万円が計上されていますが、池についてはどのような調査をされるのか、お尋ねします。また、紀の川市の調査はどのようになっているか、状況をお教えください。
 また、危機管理面からも見て、地域住民にももっともっと関心を持たせる必要があると思いますが、今後どうしますか。そして、ため池台帳とともに、一目でわかるような分布図もつくっておけばとアドバイスをして、私の一般質問を終わります。
 持ち時間、まだたくさん残っておりますので、ひとつゆっくりと詳しく御答弁をいただきたいと思います。(拍手)
○議長(中村裕一君) ただいまの服部一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 農業振興の基本的な考え方についてでございます。
 経済発展に伴い、農業構造も大きく変化していることは十分承知しておりまして、議員お話しの担い手の減少を初め、農業所得の減少・不安定化、あるいは耕作放棄地の増加といった現実を厳しく受けとめております。
 ただ、農業を世界的に見ますと、世界的には石油代替燃料としてバイオエタノール需要の拡大に伴う原料のトウモロコシや小麦の価格が高騰したり、あるいは国連が発表した世界人口の増加予測の中で、今後、食料の世界的な争奪戦が厳しくなるなど、農業が国際的な交渉を進める上での戦略の1つになっているということも事実ではないかと思います。
 そういう意味では、世界的に見ますと、農業は決して衰退産業でも、あるいはつけ足しでも残りでも全くありません。また、人々の需要も高度化すると思います。栄養の補給という観点は、どんどん相対的に小さくなって、むしろ健康あるいは安全などのほか、おいしさを求める、そういう消費者がふえてくると思います。そして、イメージと満足感、これで買うものを決めるというような傾向も強まっていると思います。
 そこで、本県の農業を見てみますと、本県は果樹王国であります。温州ミカン、柿、梅、桃などの果樹栽培を中心に、地域経済を支える重要な産業となっております。そういう意味では、まさにこれからの消費者の需要に合わせて、そういうものを我が物としていくチャンスがあるものと考えております。しかしながら、こういうチャンスはじっとしていては回ってはまいりません。チャンスを生かして収益性の高い農業を実現させることが重要であると認識しております。
 このような考え方のもとに、知事就任以来、生産振興に加えまして、農産物の販売促進に特に力を入れまして、販売促進アクションプログラムの作成を初め、全国の大消費地でのトップセールスや輸出も含めた新たな販路開拓、食品産業と連携した新たな商品開発に取り組んできたところでございます。
 今後、新長期総合計画や来年度の新施策として発表いたしました農林水産物の販売促進と農業王国和歌山の創造に基づきまして、国内外への販売促進の強化はもちろんでありますけれども、生産面でも担い手の育成・確保や働きやすい農地づくり、それから地域の特性を生かした高品質な農産物の生産対策や、あるいは皆さんお困りの鳥獣害防止対策にも積極的に取り組みまして農業の活性化を図ってまいりたいと考えております。
○議長(中村裕一君) 農林水産部長下林茂文君。
  〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 農業振興の問題につきまして、4点お答えをさしていただきたいと思います。
 まず、第1点目の農業後継者の確保についてでございますが、平成18年度の新規就農者は138名ということでございまして、前年度に比べて5名増加をいたしております。その内訳につきましては、新規学卒が38名、Uターンが69名、Iターンが19名、それから農業生産法人等への就農が12名ということになってございます。
 新しい長期総合計画におきまして、年間200名、これを目標にいたしてございまして、農業の就業者が減少して、また農業後継者のみではなかなかその地域農業を維持できない状況にあるということの中で、農外からの新規参入も積極的に確保をしていくことが重要というふうに考えてございます。そのため、農家子弟の方、また新規就農者を対象といたしまして、農業大学校での養成や就農支援センターでの就農研修などに加えまして、平成20年度から新たに就農特待制度、また就農安定資金の貸し付けを行う新農業人あんしん自立支援事業を展開することといたしてございまして、意欲ある担い手の確保により一層取り組んでまいりたいと考えてございます。
 また、お話ございました企業の農業参入につきましては、多様な担い手の1つと考えてございますが、市町村におきまして、農業経営基盤強化促進法がございます、これに基づいて参入区域が設定をされてございます。その中で、また地域における活動報告等が義務づけられてもございますので、今後、参入に当たりましては、こうしたことを踏まえまして地元関係者の意向を十分酌み、地域と一体となった産地づくりができるよう努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、優良農地の確保についてでございますが、将来的な産地の維持発展ということから必要不可欠なことであるというふうに考えてございます。このため、県では、傾斜地や、また形の悪い不整形園が多い条件不利地域におきまして、地元関係者の意向を踏まえながら耕作放棄地を取り込むなど、地域の実態に応じた新しい整備手法等によりまして優良農地の確保に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
 また、耕作放棄されている優良農地を対象にいたしまして、市町村の解消計画に基づいて、農業生産などに再利用する担い手等への復旧経費の支援、また6年以上の長期の貸借への誘導など、新たな対策に取り組むと。さらにまた、果樹産地におきましては、JA、農協選果場等を単位といたしまして、農地の流動化や労働力の調整機能を持った新しい組織づくり、これも進めてまいりたいと考えてございます。こうした施策によりまして担い手への優良農地の集積を図ってまいりたいというふうに考えてございます。
 次に、ため池の保全と利活用についてでございますが、ため池等整備事業につきましては、農業用水の安定供給と被害の未然防止を図るという考え方のもとに、関係市町村と協議を行いながら計画的に改修整備を進めてきてございます。
 お話のように、過去2年間の事業の進捗状況につきましては、平成18年度において新規3地区を含む6地区、事業費で3億2970万円、平成19年度は新規3地区を含む8地区の事業費で3億8955万により県営事業として実施をしてございます。
 次に、ため池は県内に5566カ所ございまして、このうち国有財産である1226カ所のため池につきましては、平成17年3月31日までに市町村に移管がえされたものと承知をしてございますが、その後、ため池等につきましては廃止等もございますので、現在、市町村のデータと照合を行っているところでございます。
 次に、ため池の改修方策につきましては、議員お話しの数カ所のため池の統廃合や、また周辺農地との一体的な圃場整備につきましては、ため池の有効な活用方策の1つであるというふうに考えてございまして、今後、地元の要望を踏まえ、関係市町村と協議をしてまいりたいと思ってございます。
 また、ため池の統廃合などに伴う紀の川用水の活用についてでございますが、平成13年度から実施をしております国営農業用水再編対策事業、これでは、紀の川用水だけでなく、既存のため池とあわせて、橋本から和歌山市内の1900ヘクタールの農地をかんがいするということになってございます。このため、またため池への補給等につきましては、受益地全体の農業用水の需要を見ながら、個別具体的に紀の川用水土地改良区と協議をしてまいりたいと思ってございます。
 なお、紀の川用水土地改良区への貸付金につきましては、平成13年度をピークに毎年減少しておりまして、今後も順次減少していく計画となってございます。
 最後に、ため池の安全・安心につきましては、和歌山県地域防災計画に位置づけているため池も含めまして420カ所を対象に、平成16年度より耐震性などの安全性について現地調査、また土質調査を実施しております。このうち、紀の川市分につきましては78カ所の調査を実施してございます。この調査結果につきましては、関係市町村、また関係水利組合等に周知をいたしまして、ため池整備の推進を図っているところでございます。
 また、平成20年度からハザードマップ作成の指導も含めまして、地域住民の防災意識の向上を図るために新たに啓発資料を作成するとともに、ため池の適正な維持管理が地域ぐるみでの保全活動として定着できるよう取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再質問を許します。
 32番服部 一君。
○服部 一君 答弁、ありがとうございました。1点だけお聞きしたいと思います。
 紀の川用水については、また個別に勉強さしていただきますけども、貸付金について、13年度から減少しているということでありますが、最終年度はどのぐらいになるか、お示しいただけますか。
○議長(中村裕一君) 以上の再質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長下林茂文君。
  〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 紀の川用水土地改良区の経営状況等の問題もございますが、試算の方法もいろいろとあるかと思いますが、現在の試算では、まだ20年から30年ぐらいかかるというふうに思ってございます。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 以上で、服部一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時22分休憩
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