平成19年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(多田純一議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午後1時2分再開
○副議長(新島 雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
25番多田純一君。
〔多田純一君、登壇〕(拍手)
○多田純一君 皆さん、こんにちは。
午前中は諸先輩の熱い思いを聞かしていただきましたので、私は、教育問題と、それから若者の雇用を中心に一般質問さしていただきたいと思います。
それでは、議長のお許しをいただきましたので、1問目の新長期総合計画と平成20年度予算編成の方針についてお伺いしたいと思います。
現行の長期総合計画は、西口勇知事の時代に「わかやま21世紀計画」として策定され、「ゆとりと充実 輝く和歌山新時代」を基本目標に置き、平成9年度を初年度とし、平成22年度を目標年度として策定されたものです。人口や経済の枠組み、それぞれの分野の主要な項目の数値目標や基本方向及び達成へ向けて重点的、戦略的に展開する構想を示しておられます。
先日、新長期総合計画の素案をいただきました。現在の長期総合計画策定から10年が経過したとして、このたびの総合計画策定となっています。そして、本計画の期間は2008年(平成20年)度から2017年(平成29年)度までの10年間としています。前回は審議会への諮問と答申というやり方をしていましたが、今回は審議会体制をつくらず策定本部体制主導で、知事みずから本部長として陣頭指揮をとられていることや、前回は2年の歳月をかけたものでしたが、今回はわずか半年でつくり上げていく計画となっております。策定本部長としての知事の思いがこの計画には大きく反映されているものと思われます。
しかし、10年計画だけでは、今の時代、長過ぎると思われます。知事の任期も、早いもので、あと3年ほどしかありません。総合計画とは別に、知事としての3年間の実施計画を県民にお示しする必要があろうかと思いますが、この点についての御見解を知事にお伺いします。
このたびの長期計画の将来像を、「未来に羽ばたく愛着ある郷土 元気な和歌山」にされております。そして、その将来像を6つあらわしています。この6つは、平成20年度の予算方針の中で、新政策として20項目になっています。この事業については積極的に要求を受け付けるとまでしています。この項目のすべてをお聞きすることは避けますが、教育という観点でお聞きをしたいと思います。
1番目に、「未来を拓くひたむきな人間力の育成」とされています。そして、初等・中等における和歌山モデルの確立ということになっております。知事がお考えになるところの和歌山モデルについて、その御見解をお聞かせください。
大きな2点目といたしまして、教育は子供の幸せを最優先に考えるべきです。教育を取り巻く状況が大きく変化する中、国におきましては、教育基本法が改正されるとともに、学校教育法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、教育職員免許法、教育公務員特例法が改正され、平成20年4月より順次施行されます。そして、学校教育の目標と重点、学力の定義、学校の組織運営、教員免許更新制や人事管理の強化、教育委員会の体制の刷新、責任の明確化など、改革の方向と内容が具体的に示されています。
また、中央教育審議会の中間報告が先日発表になり、新指導要領が明らかになってまいりました。このたびの指導要領は、平成21年から試行的に、そして24年には完全実施をうたっております。
戦後、幾度となく指導要領の改訂は行われてきました。平成10年の第6次改訂が平成14年に実施されました。そのときの基本方針が、「ゆとりの中で生きる力をはぐくむ」というものでございました。そして、教育内容の精選、3割削減、総合的な学習の時間が新設され、中学校、高校の必修クラブ活動は廃止され、中学校の外国語、英語を必修としました。ゆとり教育そのものは、高度成長期の高学歴社会と詰め込み教育の反省から、昭和52年の指導要領の改訂の際に「ゆとりと充実」としてうたわれてきたものです。今の長期計画の目指す方向も、ゆとりと充実ということでございます。世の中が、高度成長期の後、余暇やゆとりを求めていた、そういう時代でした。
それが、昭和52年から30年を経て、要するにゆとりがなくなってきた。教育先進国と自負していたのに、経済協力開発機構(OECD)加盟の地域を対象にした学習到達度調査(PISA)の結果や国内のいろんな調査結果の裏づけから、日本の子供たちの課題が鮮明になってきたものだと思われます。このままでは日本の教育が深刻な事態になりかねないとの危機感を抱いたのか、このたびの改訂に踏み切ったようです。
そして、中央審議会は、異例とも言えるゆとり教育の反省をしています。5つの反省として、生きる力について、文部科学省と学校関係者、保護者、社会の間に十分な共通理解がなかった、子供の自主性を尊重する余り指導をちゅうちょする教師がふえた、総合学習は各学校で十分理解されていなかった、必修教科の授業が減少した、家庭や地域の教育力の低下への対応が十分でなかったとしています。
教育現場関係者の責任や理解不足とされても、本当の反省になっていないような気がいたします。これまでその指導要領に沿って教えられてきた子供たちに対してどうしていくのでしょうか。反省に立って補習でも考えていくのでしょうか。地方ごとに全国の説明会を20年ぶりに開催するとしていますので、ぜひこの点についても確認をしてほしいものです。
改訂されると、授業時間は30年ぶりに増加します。小学校の授業時間は6年間で現行より278時間ふえ5645時間、中学校では3年間で105時間ふえ3045時間となります。総合学習の時間も週1~2時間削減、その分、国語、算数、数学など主要教科と体育をふやすことになります。中学校体育では武道が選択から必修となり、施設面の整備だけでなく教師の人事配置にも大きく影響してまいります。
また、組織再編という意味では、改正学校教育法の中で新たな学校組織運営が改正されました。校長、教頭、一般教諭のフラット型から、校長、副校長、主幹、指導教諭、一般教諭のピラミッド型と改編されるとのことです。階層をふやしてそれぞれの責務や負担をふやすだけでは効果は期待できません。
「『ダメな教師』の見分け方」などという本も出版され、「『先生選び』が教育を変える」、「教師を格付けする方法」などとも書かれています。本当にそうでしょうか。教師という仕事を選んだ限り、だれでも児童や生徒と向き合うことや教えることの覚悟を持って臨んでいる、そう思います。その上で、教育改革の柱は校長や教頭だけでなく、子供と一番接している担任の教師が一番大事だし、その教師を中心に据えて子供の幸せを最優先にして考えていくべきだと思います。
以下、教育長にお伺いします。
ゆとり教育の見直しと新指導要領についての御見解、新たな学校組織運営への対応について、また、教科ごとの見直しをした場合、主要教科だけでなく、体育、武道の担当も含め現在の教員体制で臨めるのか、施設や教材、設備面の計画や準備はどのようになさるのか、お答えください。
先日の全国一斉の学力テストの結果を踏まえ、幾つか質問をしたいと思います。
県が独自で行ってる学力診断テストと全国一斉の学力テストとの違い。全国的な調査の結果として、読書や復習をする時間で知識の習得に差が見られるとされております。その点での傾向。この結果を踏まえ、学校や担当の教師、そして教育委員会として今後の生かし方、課題の見られる学校への支援策等、お示しください。
11月は、きのくに学びの月間となっております。この学校開放期間を利用して、県内の小中学校を訪問してまいりました。校長先生の忌憚のない意見をお聞きできましたし、授業中の児童生徒の様子なども拝見できました。問題行動を起こすような生徒も見かけましたが、一時期に比べると落ちついてきているのかなという印象を私なりに持ちました。
県が今年度から実施しています問題行動対策サポート事業は、ほとんどのところで効果を発揮しているようです。担当していただいている方の経験は得がたいものがあり、落ちつきを取り戻してきているようでした。しかし、別な学校では、授業がおもしろくないのか、ついていけないのか、全く下を向いたまま授業を聞いていない生徒もおり、そういう生徒が教室に複数いたりしてもカリキュラムどおり授業は進めていかなければならない厳しい現実も目の当たりにしました。
公明党では、「緊急提言・現場からの教育改革─希望が持てる教育へ─」を取りまとめ、本年発表いたしました。現場から特に要望が強かったのは、いじめ、不登校、親、格差の4項目です。
特に、いじめの問題は深刻化しています。先日、文科省の発表では、前年度の6.2倍、12万5000件、今回の調査では、いじめられた側の調査に定義が変更されたこともありますが、和歌山でも小学校で90件、中学校では116件、高校では59件となっています。
その中で言われてるのは、いじめの中身が変わってきているということです。冷やかし、からかいなどに加えて、インターネットなどを使い陰湿でわかりにくくなっていることだと言われております。例えば、ネット掲示板「学校裏サイト」がいじめの温床につながっているとの指摘もあります。e―ネットキャラバン事務局の山田能弘氏によると、フィルタリング機能を設定し、コミュニケーションや出会いなどの分野を規制すれば、掲示板や出会い系サイトにはアクセスできなくなるそうです。
持たせるのであれば一定の条件を与えるべきだと考えます。そして、子供や保護者、教員など、だれでも安心して相談でき、問題解決に力を発揮する第三者機関のいじめレスキュー隊の設置をするなど、新しい取り組みにも考慮していく必要があります。
不登校対策では、先日、有田市で行われました教育セミナー和歌山2007での講演で、宮崎大学・小野昌彦教授の「不登校ゼロへの挑戦」と題した講演は大変興味深く聞かしてもらいました。いじめ、不登校を一体にしたきめ細やかな視点が不可欠です。講演の中で、不登校への初期対応の指標は欠席3日であるとしています。そして、連続でも断続でも欠席が3日になった時点で要注意とし、本人が動き出すまで待っているのじゃなく、早期に手を差し伸べることの重要性を指摘していました。
担任と学級主任と教頭や校長先生の連携がとれる組織づくりが今こそ必要です。教職を目指す大学生や教員OBのボランティア登録制などを活用して取り組み強化を図られてはどうでしょうか。
親の問題も社会的になってきています。地域関係の希薄化や核家族化の進行で、身近に相談できる相手がいない、子供にどのように接すればいいかわからない、そして学校との信頼が保てなくなっているという側面もあり、問題が生じたときに一気に法律で解決となるケースがふえているとのことです。
今の忙しい親や保護者に学校として接触を持つのは困難な場合が多いようです。学校開放期間や保護者会を設けてもなかなか参加してもらえない現状の中、時間をやりくりして家庭訪問を考えてる校長もおられました。
今の子供の問題は、親が変われば子供も変わると指摘されてるぐらいです。いじめ、不登校、家庭の教育力を高めるという点での親、その対応について教育長にお聞きします。
次に、教員のサポートについてお伺いします。
先日も、県内で事件があったばかりです。経験が乏しい場合や精神的に弱い場合などで、教師がうつ病など精神的な病気で休職してしまうケースもふえているとのことでございます。ちなみに、全国ではわずか5年で1.6倍にふえているとされております。和歌山県での実態について状況をお聞かせください。
子供に接する機会をふやすために、教員業務の整理と教育力の向上におけるサポートという点でお考えをお聞きします。
教育についての質問の最後に、文字・活字文化振興法と学校図書充実の進捗についてお聞きします。
平成17年、文字・活字文化振興法が成立し、施行されています。児童生徒の本離れが深刻な問題となる中、活字文化を振興するための国や地方自治体の責務を定め、学校教育や地域で施策を講じることが定められております。それに伴い、国は2007年度から毎年200億円、5年間で1000億円の図書整備費を地方交付税で配分する新学校図書館図書整備5カ年計画を進めています。
この問題につきましては、公明党議員団の新田議員が平成17年に登壇し、質問も行っています。その後、国語力、読解力の向上をどのように進めてこられたのか、学校図書館への地方交付税は十分生かされているのか。以上、教育長にお尋ねをいたします。
3点目の質問で、若者の雇用対策と自立・就労支援。
1991年のバブル崩壊以降、景気が悪化し、企業が軒並み新規採用を抑制。とりわけ1993年から2003年に就職する新卒が困難な就職活動を強いられ、就職氷河期の始まりとされております。「ロストジェネレーション」とも呼ばれる世代です。この世代は、正社員になれなかった者が多く、「フリーター」や「ニート」と言われる非正規雇用や若年無業者の新語として社会問題化されてます。
平成19年7月現在、高校新卒者の求人・求職者状況を見ますと、全国平均は求人倍率1.29で、昨年の同時期に比べますと0.15ポイントの改善となっています。近畿圏においては、昨年より0.12ポイントの改善が見られます。和歌山県の場合でも、求職者2073名に対し求人数が1358名、求人倍率0.66。昨年と比べると少しはよくなってきてると言えます。一方、1985年に655万人だった非正規雇用者は年々ふえ続け、2007年には2.6倍の1726万人まで膨れ上がっていると総務省は発表しています。今や、若者を中心に雇用者全体の3分の1が非正規社員ということになります。
インターネットカフェに寝泊まりしながら不安定な就労を繰り返すネットカフェ難民が都市近郊を中心に問題になってきています。厚生労働省の調査では、その半数を派遣やアルバイトなど非正規雇用が占めたほか、失業者や無業者も全体の4割に達しているそうです。
24時間対応のネットカフェは、和歌山市内の中心周辺や紀南地方にも数カ所見られます。パック料金なら1000円から2000円程度の費用で済み、深夜の利用者も多く見受けられます。まだネットカフェ難民と呼ばれるその心配は和歌山ではないのでしょうか。
先ほども教育問題のところで触れましたが、和歌山市の平成17年度の不登校生の進路状況について確認してみますと、不登校生210名のうち、全日制29%、定時制32%、通信制5%で、高校進学については139名、66%となっています。また、専門学校と就職は16人で7%となってます。残りは、その他、家事手伝いや調査不明も含めて55名、26%というのが数字として上げられております。つまり、不登校生の4分の1が進学も就職もしていないという実態を考えますと、憂慮すべきものがあると言わざるを得ません。
もちろん、不登校生のうち専門学校や就職し頑張った生徒もいますが、途中で挫折した人も多いと言われております。つまり、それがニートや引きこもりにつながっていることは想像にかたくないと言えます。高校生の卒業者でも、7~8%が就職も各種専門学校や職業訓練施設にも進学しない無業者になっており、つまり、引きこもりかニートになっている可能性が高いと言わざるを得ない状況です。
厚生労働省が平成18年度から新たな施策として始めた地域若者サポートステーションという取り組みがあります。若者の社会的自立を目指し、各若者の状況に応じた個別・継続的な支援を実施していき、地方自治体の主導による各地域の特性に応じた若者支援ネットワークの構築、維持を行います。従来の支援施設が若年求職者の参加から出口(就労)定着までをやっていたことと比較すると、ニート及びニート予備軍の若者を発見し、支援施設に誘導する体制を、地元自治体並びに各種団体、例えばPTAや教育委員会、保護司会、民生委員、社会福祉ケースワーカー等々と連携しながら確立していることです。
さらに、アウトリーチ型の手法を用いた支援、すなわち、ニートの若者がいる家庭を訪問して当事者を掘り起こす作業をしていることも大きな特徴です。生活保護世帯や母子家庭や父子家庭など、単身ひとり親家庭の子弟が自立が難しいということで、そういう御家庭の支援を重点的に行い、一定の成果を出していることもわかりました。
平成18年度、全国25カ所でスタートし、今年度は50カ所にふえてきています。残念ながら、この50カ所に和歌山は入っておりません。教育の深さ、温かさ、そして若者に対する取り組みで未来の日本を決定するし、なかんずく和歌山の将来を決定すると言っても過言ではありません。
若年無業者、いわゆるニート等の実態、若年者就業支援センター・ジョブカフェの取り組み状況、そして今御紹介しました地域若者サポートステーションの設置についての今後のお考えを商工観光労働部長にお聞きし、第1回の質問といたします。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(新島 雄君) ただいまの多田純一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、新長期総合計画についての御質問にお答えしたいと思います。
新長期総合計画には、「未来に羽ばたく愛着ある郷土 元気な和歌山」を目指す将来像として掲げ、その実現に向けて取り組む10年間の施策の基本方向を盛り込んでまいりたいと考えております。
これは10年間の目標ではありますけれども、実施は10年間サボっとってそのときというわけにはまいりません。その実現のためには日常的な努力が必要であると考えております。3年といわず、1年1年が全力投球でございます。したがって、計画に基づく施策の実施に当たりましては、まず毎年毎年進捗状況をチェックいたしまして、和歌山県が次年度に向けてどうしていくべきかという新政策について、これをインプットして全庁的に議論する中で具体的に微調整をしながら検討を行い、推進してまいりたいと考えております。
次に、初等・中等教育における和歌山モデルということでございます。
人づくりは県勢発展の基盤でありまして、また、県行政の要諦であると考えております。現在策定中の新長期総合計画の中においては、将来像を構成する6つの分野の中で、「未来を拓くひたむきな人間力を育てる」ということを1番目に掲げております。
本県における人づくりにつきましては、基礎学力や体力を高めることはもちろん、正義感、親切心、郷土愛といった美徳をはぐくみ、国際性や、あるいは創造性等の社会ニーズに応じた教育を実践しつつ、さまざまな分野で活躍できる人材の育成に取り組んでまいりたいと考えております。そのためには、和歌山が誇る地域の力や、あるいは自然・文化を生かし、家庭や地域の力を結集していくことが重要となっております。
学校を地域に開き、地域の人材、大学、企業など学校外の社会資源の方々と学校が一体となることで、学校の活力と地域の活力をともに高める中で、和歌山が元気になり、和歌山の未来である子供たちが元気になる、そんな和歌山モデルの構築を目指して頑張ってまいりたいと考えております。
○副議長(新島 雄君) 商工観光労働部長永井慶一君。
〔永井慶一君、登壇〕
○商工観光労働部長(永井慶一君) 若者の雇用対策と自立・就労支援につきまして、一括してお答えさしていただきます。
まず、若年無業者等の実態でございますが、平成18年に総務省が実施いたしました労働力調査によれば、全国にフリーターと呼ばれる不安定な就業形態にある若者は187万人、ニートと呼ばれる若年無業者は62万人で、それぞれ減少傾向にはあるものの、依然として高水準となってございます。
また、県内の状況につきましては、平成17年2月に実施いたしました和歌山県若年者雇用実態調査によれば、フリーターは約1万4000人、ニートは約5700人いると推計してございます。
このような状況に対しまして、本県では、不安定な就業形態にある若者に、相談から就労、定着までをワンストップで提供するジョブカフェ・わかやまを、平成15年11月、全国に先駆けて設置し、現在まで約2万1000人の若者に御利用いただいております。また、昨年度のぶらくり丁への移設を契機にハローワークの学生職業相談室を併設し、職業紹介業務を充実させるとともに、今年度は、新たに配置いたしましたジョブナビゲーターが大学や各地域などにおいて巡回相談をきめ細かく実施しているところでございます。
一方、若年無業者に対しましては、職業意識の啓発や社会適応訓練など、個々の状況に応じた包括的な支援を行っていく必要があると考えてございます。そのため、議員御提案のような教育、医療、福祉等の関係機関や民間支援機関などと連携し、社会的、職業的自立を支援する地域若者サポートステーションの設置について鋭意検討を進めさせていただいているところでございます。
なお、インターネットカフェ等を生活拠点とした不安定な就業形態にある若者などに対しましては、現在、国において対策を検討しているところであり、その動向を注視してまいりたいと考えてございます。
今後とも、雇用の場の創出を図るとともに、若者が自立、就労できるよう全力で取り組んでまいりたいと考えてございます。
○副議長(新島 雄君) 教育長山口裕市君。
〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 教育問題6点についてお答えいたします。
いわゆるゆとり教育につきましては、子供たちに家庭や地域で豊かな体験活動が行えるよう授業時間数にゆとりを持たせるとともに、総合的な学習の時間を重視し、生きる力の育成を進めてまいりました。その中で、十分に趣旨が生かされなかった面があることは中央教育審議会の答申でも指摘されておりますが、総合的な学習の時間につきましては、主体的に課題に取り組んだり、地域と連携した体験活動を行うなど、すぐれた成果を上げている実践も少なくありません。
新しい学習指導要領では、生きる力をはぐくむという理念を継承しつつ、確かな学力の定着を図るために必要な授業時間数を確保し、言語活動や体験活動、理数教育などを充実させる方向が示されてございます。
また、我が国固有の伝統と文化により一層触れることができるよう、中学校保健体育科におきまして武道が男女とも必修化されることが提言されております。
今後、教員体制を確保する中で、武道実技指導者講習会の充実や社会人の活用など、武道指導の体制を拡充するとともに、体育館等の計画的な使用、用具の整備等に取り組むことが重要になると考えております。
新たな学校組織運営ですが、副校長、主幹教諭、指導教諭の新しい職の設置につきましては、ますます複雑多様化する今日の教育課題に機敏に対応して教育活動の充実向上を目指すために、学校の組織がより有効かつ円滑に機能する体制を整備することとなってございます。
現在、文部科学省において概算要求中であり、制度的にまだ不明な点もあることから、今後、国の動向を見きわめながら、本県の各学校の実態に合った効果的なあり方を検討してまいりたいと考えます。
次に、学力テストにつきましては、本県独自の学力診断テストが基礎的、基本的事項の定着状況を見る調査であるのに対しまして、国の調査では、基本的事項に加えて、知識や技能を活用する力も見るものとなってございます。国の調査での本県の状況は、知識に関する問題は8割程度できているのに対して、活用に関する問題は6割ないし7割の正答率となっており、課題が見られます。
議員御指摘のように、県学力診断テストなどのこれまでの結果から、子供たちの家庭生活での自立や読書の習慣などが学力と密接に関係していることがわかっております。今後、学習指導の改善とあわせまして、家庭や地域との連携を深め、みずから学ぶ力を育てることが重要であると考えてございます。
なお、現在、県検証改善委員会におきまして詳細な分析を行っているところでありまして、今後、学校や教員が活用できるように、3月にはシンポジウム等で分析結果を報告する計画でございます。
また、課題の見られる学校に対する支援につきましては、本県の調査結果に基づいて非常勤講師の配置や研究指定などさまざまな取り組みを進めてきたところであり、国におきましても必要な支援策が概算要求に盛り込まれてございます。
いじめ、不登校につきましては、何としても解決しなければならない重要課題であると認識をしてございます。平成18年度いじめの件数は、統計上の扱いが変わったこともあって全体に増加しておりますが、本県では全国に比べて低い発生率となっております。今後も、落ちついた学習環境を保持するための問題行動対策サポーター配置事業や早期発見のポイントを示したリーフレットの活用等、いじめの根絶を目指して学校と家庭、地域が連携した、よりきめ細かな取り組みを行ってまいります。
また、携帯電話、インターネット等を使ったいじめや犯罪を防止するため、青少年課や県警察本部少年課とも連携をして、具体的な対策について協議を行っております。さらに、きのくに教育協議会におきましても現実的な指導のあり方を検討していく予定でございます。
不登校につきましては、未然防止や早期発見、早期対応のために子供と親の相談員等の配置やスクールカウンセラーの拡充を行い、教育相談体制の強化に努めているところでございます。
次に、教員へのサポートについてでございますが、本県では、現在、病気休職中の教職員60名の約6割が精神性疾患であり、その背景には、複雑な課題を抱えた児童生徒の指導や多様な価値観を持つ保護者への対応の難しさなど、さまざまな要因があると考えられます。
県教育委員会といたしましては、教職員メンタルヘルス研修会やストレス相談等、教職員への支援を行ってございます。また、教員が子供と接する機会をふやせるよう校務分掌等の見直しを進めるとともに、今後とも、少人数学級編制の実施や非常勤講師等の配置に努めてまいります。
なお、議員御指摘いただきましたいずれの問題につきましても、学校、家庭、地域の枠を超えた協力、協働の取り組みが不可欠になっておりますので、今後、社会教育との連携、融合を図りながら社会全体で子供を育てる体制を構築し、その中で保護者に対する適切な対応も行えるよう指導してまいりたいと存じます。
国語力、読解力につきましては、これまでも、きのくに学びのルネサンスプランや小中連携の国語力向上モデル事業などを実施し、その向上に努めてまいりました。しかしながら、各種調査において多くの課題が見られることや、PISA型読解力向上プランや子どもと本を読もうキャンペーンなど、全校種・教科での読解力向上に向けて取り組んでいるところでございます。
また、文字・活字文化振興法と学校図書充実につきましては、子供の読書離れ、活字離れが指摘されておりますことから国の地方交付税措置がなされており、本県では平成18年度、半数以上の市町村で90%以上の予算措置がなされている状況でございます。
今後、地方交付税措置を適正に活用するよう指導するとともに、文字・活字文化振興法の趣旨も踏まえ、家庭、地域を含めた読書文化の向上に努めてまいりたいと考えます。
以上でございます。
○副議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(新島 雄君) 再質問を許します。
25番多田純一君。
○多田純一君 それぞれ御答弁いただきました。
再質問につきましては、教育に絞ってということでお伺いさしていただきたいと思いますけども──お伺いというよりは要望という形にさしていただきたいと思っております。
先ほど、学力向上につきましてですけども、さまざまな比較、さまざまな各県の分析がされてきておりますけども、今、全国的に秋田県の取り組みが非常に話題になってるんですね。知事も、この学力テストにつきましては記者会見でお述べになったようでございますけども、私も点数を上げればいいというような安易な傾向には賛成をできないという立場でございますけども、秋田県の場合は早くから少人数制を取り入れておりますし、県教委の本当にすばらしい姿ということで、算数と数学の学力向上推進班が各学校を回って個別指導をし、現場の教師の教育力を改善していく、そういう姿が報道もされておりましたし、私も事務局を通じて秋田県から資料を取り寄せさしていただいて、そう思います。
そういう点からすると、先ほどのゆとり教育ではございませんけども、まだまだいろんな意味で学力の向上につきましては取り組みする余地があると思いますので、この行いました学力テストの分析を行った上で平成20年度の学校教育に生かしていただきたいと、こういうふうに要望さしていただきます。
それから、文字・活字文化振興法と学校図書充実につきましてということなんですが、17年度に比べてということなんですけども、県立学校は確かに充実してきておりますけども、市町村の小中学校では、平成17年に比べて、予算ベースですけども、大分19年度は減ってるんですね。だから、これは全体ですから、個別によく見ていただいた上で、この文字・活字文化振興法という法律の意思を尊重していただいて国語力とか読解力の向上にぜひ役立てていただきたいなと思います。
私、学校訪問を幾つかさしていただいたんですけども、先日、文科省から指定を受けた学力向上拠点推進事業をやっておられる新宮市の中学校にお邪魔したんですね。教育長も訪問されたようでございますんでよく御存じだと思いますけども、評判を聞いて行ってまいりました。非常にすばらしいと感じたのは、学校全体で取り組みがされておりまして、非常にまとまってるという感じがいたしました。
その1つに、朝の読書活動というんでしょうかね、8時ぐらいにお邪魔したんですけども、8時20分から、もう子供たちは教室に入って、静かに10分間、毎日、しゃべらない、立たない、歩かないなどという7つのルールを決めて朝の読書運動をやってらっしゃるんですね。特に、学校によっては「やっておきなさい」という形でやるケースが多いんですけども、担任の先生も一緒になって全員が自分の本を静かに読んでおりました。その成果で、子供たちの80%は読書好きになったそうです。1時限目の授業がスムーズに入っていけるということでいうと、学習態度に非常に効果があらわれてるんじゃないかなと、そんな感じをいたしました。教室やちょっとしたコーナーにも本が並べられておりましたし、身近に図書があるという、そういう環境にしてるんですね。各教科の基礎を身につけさせるためにも、ぜひそういう取り組みが必要かなと思います。
それと、もう1つは、この学校では小学校の学力を補習してるんですね。漢字と計算を中心に小学校段階から学び直すと。このリピートをしていただいてるというのが、これが先生の、また学校の努力じゃないかなと思うんです。1、2年生は火曜日6時限目、3年生は放課後に設定して、教科の枠を超えてすべての教員が指導に当たってると。これは非常にすばらしいことだと思いますし、教員の意識が同じ方向に向いて注がれてると、こういう感じをいたしました。
その成果として、ここの学校では、不登校の子供たちが──子供たちって、不登校生が現在は1名か2名という。全体的に和歌山の中学校では平均的に10名前後、不登校がいると言われてますけども、この学校は1名か2名ということですから、非常に不登校の対策でも効果が出てるんじゃないかなと思われます。校長先生いわく、「不登校になったら早期に訪問して解消に努めている」と、こういう話でございました。
それから、もう1つは、保護者会や地域の住民の参加が非常に多くなってきてると。いろんなことをやってるから、やっぱり地域もそこに目を注いできてるという点も効果を生んでる点じゃないかなと思います。また、ある先生は、学級通信というのを毎日発行して、子供に持たして、親にそれをメッセージとして届けてるんですね。これを見たら、親としては、本当にその毎日の先生の努力、また学校の姿がわかるということでいうと、信頼関係がよみがえってくるんじゃないかなと、こんな感じをいたしました。
説明をしていただいた校長先生や教頭先生──この教頭先生は、特に長くこの学校にいた経験から、地域のさまざまな課題を抱えてる中で何回か荒れてきた経験をしてきただけに「まだまだ安心できません」としながらでも、大変熱心にお話を、その取り組みの一端をお聞かせいただきました。2時間があっという間に過ぎてしまいました。
9月下旬に行われました発表会には、暑い体育館で行われたそうですけども、県内外から220名が参加して熱心に聞き入っておられたようでございます。
先ほど紹介しました宮崎大学の小野教授も「学校が変われば不登校は予防されて再発防止はできる」と、そんな話にも符合してまいります。知事からも、先ほど力強い後押しのお話もいただきました。ぜひ総がかりで和歌山らしいモデルをつくっていただきたいし、そして平成20年度予算にその思いを大いに反映していただきたいということを要望し、質問とさしていただきます。
以上でございます。
○副議長(新島 雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で多田純一君の質問が終了いたしました。