平成19年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(須川倍行議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後1時2分再開
○副議長(新島 雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 12番須川倍行君。
  〔須川倍行君、登壇〕(拍手)
○須川倍行君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 最初に、新宮港について。
 1番、東防波堤の早期完成についてお尋ねいたします。
 県の港湾行政の積極的な推進により新宮港の港湾機能も徐々に整備され、大変喜んでおります。機能的にはまだ完全とは申せませんが、大型岸壁も整備され、国内最大級の豪華客船「飛鳥Ⅱ」や大型チップ船、また国内最大級のボーリング調査船「ちきゅう」の接岸箇所として多様な活用が期待されています。
 物の流れから地域振興を図るため、当初の公有水面埋立申請願書の埋め立て必要理由のとおり、地元企業である紀州製紙の新宮港でのチップ取り扱いがここに来て本格化し、第三セクターの新宮港埠頭株式会社によるチップヤード等荷役施設のインフラが進められ、8月末、新宮港に紀州製紙株式会社のチップ専用船「フォレストキシュー」が初入港しました。第1期の保管施設も既にチップヤードとしてフル活用できるよう準備がされており、いよいよ新宮港建設の目的である物流コストの削減に向けた取り組みが本格化します。
 外国からの輸入貨物の大幅な増加で、国の機関であります大阪税関を初め関係機関の協力を得ながら荷役作業が安全に円滑に進められ、新宮港が地元大手企業の経営基盤の活性化の一助となるよう祈念しているところです。
 最近では、熊野地域が世界遺産登録された効果により、旅行エージェントが「熊野三山クルーズ」と銘打って、豪華客船に大勢の観光客を乗せて新宮港へ寄港していただいております。地元では、その都度、岸壁において最低限のおもてなしでお迎えし、またお見送りのときもセレモニーを行うなど、港観光交流促進計画に沿った熊野のおもてなしや人の優しい触れ合いを通じて観光振興に頑張っております。
 さて、平成15年1月に国、県、地元新宮市、日本港湾協会などで策定した新宮港振興ビジョンには、物の流れと人の流れによる地域振興を図るという具体的なアイデアが示されて、今までにない手づくりとも言うべきすばらしい振興計画が策定されています。その策定に向けての協議の中でも最重要課題として取り上げられましたのは、紀州製紙の新宮港活用を早く進めるべきであるということでした。その振興計画のプログラムの中でも、このことがクイックアクションプログラムの1つとして早急な環境づくりが求められました。その後、関係者が精力的に活動を展開し、先ほど述べたように、18年度にはその努力が結実し、紀州製紙の新宮港活用が本格的に始動したところです。
 このように、物の流れによる地域振興も少しずつプログラムどおりに動き、一方、人の流れもプログラムに沿って世界遺産登録による熊野三山を目指す動きが活発化し、定着しつつあります。
 しかし、このような動きと裏腹な出来事が起こっているのも事実です。県当局もこの件については御承知だと思うのですが、あえて申します。
 今までの経過の中で、「飛鳥Ⅱ」の新宮港接岸に関しましては、8月18日で4回目の入港で、今回は成功しましたので2回接岸して停泊したことになりますが、成功率は半々ということになり、これまで、船主側の今後の客船運航計画や新宮港のポートセールス活動におきましても、信頼度からいえばマイナスイメージを払拭することはできません。
 「飛鳥Ⅱ」は、一度に750人の観光客が乗船可能な船です。これまで2回キャンセルされたことになりますから、1000人強の観光客が熊野の山並みを見ながらも下船できずに、その悔しさははかり知れませんし、地域にとりましても、直前のキャンセルでの痛手も大きいわけですし、結果、経済効果が損なわれたということになります。これら現状の打開策として、県においては、既に東防波堤の進捗にかかわることが原因であると熟知されて、この整備次第でこれら不安は解消されると考えておられると思います。
 第2期には、チップ保管施設を目指して、紀州製紙専用船の大型チップ船も入港しています。また、別ルートからのチップ船の利用も考えられるかもしれません。チップ積み下ろし日数も、1回当たり1週間ほどの停船しての作業とも聞きます。その間、港内の静穏度に問題が出れば船の安全性は保たれませんし、余計経費が高くつくことにつながります。それよりも、「新宮港はセーフティーバースでない」という風評を一番恐れていますし、また、これらのことは企業進出に関してもマイナスイメージになりかねません。
 この東防波堤の早期完成について、知事の御見解をお伺いします。
 次に、水資源を活用した港湾振興について。
 平成7年、新宮市で半世紀以上操業してきた巴川製紙新宮工場が閉鎖となりました。地域はこのニュースに大きなショックを受け、関連する業種を含めた地域の損失ははかり知れないものとなったのであります。折しも、新宮港第2期建設の動きが活発化しようとしたやさきの出来事でもありました。これらのことで、新宮港建設のメリット・デメリットについても議論されたようでありますが、閉鎖後の巴川製紙の企業間買収の問題や地元紀州製紙の新宮港活用などを含め、地域として新宮港建設はぜひ必要であるという認識で進められました。
 そのような中、巴川製紙が操業中に工業用水として使用していた熊野川からの導水管施設や受水槽施設の方向性がクローズアップされ、1つ、何とか地域のために活用できる方法はないだろうか、2つ、壊すには惜しい施設で、このような施設を新たにつくるといえば大変な事業費がかかる、3つ、壊すにはもったいないというような意見があり、この施設の活用が検討されたようです。
 確かに、撤去するにも費用が要りますし、約6キロの施設ですから、撤去して何年かたって新たな導水施設をつくろうと思えば、莫大な費用が必要とされます。すれば、壊す前に何とか活用方法を考えようということで、1つ、巴川製紙受水施設から新宮港岸壁まで導水管でつなぎ、水不足に陥った地域に対し、人道的、国家的な支援として水資源供給を国の権限で新宮港から行う、1つ、那智勝浦方面への上水道としての活用を検討する、1つ、佐野川の環境用水として一部活用し、新宮港内の水質保全と漁業振興に寄与する、など考えられました。
 実は2年前、四国の橘湾に立地する橘火力発電所から、四国阿南地方の水不足により、このままでいくと莫大な経済損失になるので工業用水を分けてほしいと、水運搬船を新宮港に差し向ける話がありました。実行に移す直前に、幸い四国地方の降雨により、この問題は解決されました。しかし、工業の発達には水は欠かせませんし、我々人間生活にも水は欠かせません。常に水不足に陥る地域ではその確保方法をいつも考えられていると思いますが、新宮港に行けばいつでも水はもらえるということであれば、事前準備もできますし、気持ち的にも不安を解消させることができるのではないでしょうか。
 そこで私が言いたいのは、この施設は壊すのに惜しいから、新宮港の港湾機能を生かして、全国各地の水不足になった地域を想定し、新宮港からいつでも水を救援する施策が考えられないだろうかという構想であります。しかし、国の権限がありますので、国がこのような地方の考え方に立って認めなければ、この構想も光を見ることはできません。地元では、このような地域の考えをもって、平成12年より、仮称・水資源供給港と称して、その役割を国家的、人道的に新宮港の水資源が活用できないかと国に要望し、訴えてきたのであります。この考えは、今までの港湾行政の中でも初めての発想だと思います。
 ちょうどそのころ、日本郵船株式会社におきましても、水バッグ方式での水運搬方法や水バッグの航海上での強度を研究しておりまして、当時の市担当者らが日本郵船本社を2度ほど訪問し、水に関する考え方などを意見交換するなど、新宮港の水資源の豊富さを訴え、活用していただきたい旨お願いしてきた経緯を聞いております。
 本年2月、そのポートセールス活動が功を奏したかどうかはわかりませんが、独立行政法人水資源機構と日本郵船の子会社、株式会社MTIが共同で経済産業省の平成18年度工業用代替水資源確保調査の一環で、バッグによる海上輸送試験を全国で初めて新宮港から四国富岡港の間を輸送しました。1回目は、残念ながらバッグの破損箇所から塩分がまじりましたが、全国的にテレビ放映や新聞でも報道され、脚光を浴びました。2回目は、このような塩分がまじらないようにする検討や、潮岬までの航行訓練中であり、水資源機構の了承で再度トライする予定であると聞いています。
 この水バッグ輸送試験はなぜ四国に一番近い和歌山港から行われず、170キロも離れた新宮港と富岡港とを結ぶに至ったか。これには、地形的に新宮港後背地は紀伊半島の4分の1を占める広大な集水地域を控え、その水資源のある熊野川から新宮港近くまで引き込まれた民間企業の導水施設がまだ残っている環境があるということが考慮され、そのような条件を加味して水資源機構も候補地として選択したのではないかと私自身考えるところであります。
 21世紀は世界各地で、また日本国内各地においても水不足が起こり、恒常的な水資源の確保問題がクローズアップされると警鐘している学者もおられます。
 そこで、新宮港での水資源を有効に活用した港湾行政の進め方について、港湾管理者の県として、また経済産業省出身の知事におかれましてはどのような考え方を持っておられるのか、お聞きします。
 次に、「ちきゅう」について。
 本年2月、知事が記者会見し、南海トラフの掘削調査に伴う新鋭地球深部探査船「ちきゅう」の熊野灘での作業期間中、物資補給拠点に新宮港が指定されたと発表されました。新宮市においても、平成13年5月、全国に先駆け資源エネルギー庁に対して、熊野灘沖に眠る国内消費量の100年分と言われるメタンハイドレートの調査船基地として新宮港の活用や、平成16年10月には海底資源、地震調査ボーリングなど海洋調査等にかかわる母港として活用していただきたい旨、新宮港振興会や新宮商工会議所が国に要望してきたと聞いております。
 今回、知事のトップセールスで新宮港が物資の補給拠点となり、国内最大のボーリング調査船「ちきゅう」に寄港してもらってシンポジウムを開催する意向を示されるなど、積極的な運動をされていることに感謝いたしております。
 この調査海域も新宮港の沖合であり、南海トラフのボーリングや地震計の設置など、地震のメカニズムの解明によって地震予知の精度の高まりも期待されます。そのデータは横須賀、横浜方面に一極集中的に送られると言われていますが、海底鉱物資源やメタンハイドレート、地震調査など、調査船も文部科学省や経済産業省、国土交通省など各省庁に及ぶと思います。
 そこで質問ですが、すべての調査項目は新宮港沖合の海底にあります。新宮港内にこれら調査にかかわる国の前線基地的な要素のある総合的な施設が誘致できないものでしょうか。例えば、メタンハイドレートの産官学共同研究施設あるいは海底地震計設置と陸海プレートの移動が把握できるGPS機器の設置、それを監視するセンター施設などでありますが、知事の見解をお尋ねします。
 最後に、ポートラジオ局の開設について。
 新宮港は、地域の産業振興の拠点として、国、県、新宮市が共同して元気印を町なかに発信しています。企業の生産基盤としても、今後、地域が一層の活用に向けて頑張らねばなりません。
 そこで、ポートラジオ局の開設をお願いしたいのですが、これは、地方自治体または港湾管理組合が港湾法第12条に規定する港湾管理業務の円滑な遂行を図ることを目的として開設する海岸局のことを呼んでいます。これが実現いたしますと、プレジャーボート用無線局の開設、コミュニティーFM放送局の開設、高齢者を対象とした24時間通報の受付業務など付随事業が可能となりますし、何よりも地域の防災、復旧活動の拠点としての拡充のためにも、また病人の搬送、救援物資の輸送等に救護艦との通信体制としても必要であります。
 このポートラジオ局は、大阪や四日市の港などで開設されております。新宮港は防災拠点としての機能整備がされつつありますし、紀伊半島南東部の要衝港湾でもありますので、非常事態における救助港湾通信体制のかなめとして新宮港へのポートラジオ局の開設を検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。知事、お答え願います。
 次に、市町村合併と道州制について。
 最初に県の合併推進構想についてですが、平成の大合併により、県下でも、平成16年10月、みなべ町誕生から始まり、18年3月には橋本市が、翌4月には岩出市が誕生し、市の数も7市から9市になるなど、50市町村が30市町村になりました。私どもの新宮広域圏でも、平成17年4月に串本町と古座町が合併して新串本町が誕生し、同年10月には新宮市と熊野川町が合併して新新宮市が誕生しました。他の古座川町、太地町、那智勝浦町、北山村もそれぞれの枠組みでの合併協議会に入り協議されてきましたが、時限立法期限内での合併が見送られました。新法においては、従来に増して県の役割が強化され、市町村合併の推進に積極的な役割を果たすということになっています。
 平成18年2月14日には和歌山県市町村合併推進構想が出され、この中で新宮広域圏では、新宮市から串本町に至る1市4町1村が合併の対象市町村の組み合わせになっています。合併は確かに地方分権を推進し、行財政基盤を強化するための有効な手法であることが言えますし、また県においては財政支援措置や合併後の新しいまちづくりに対する財政支援も行うというもので、県の基本姿勢も理解するところです。
 しかし、1次合併してから日が浅い時期に今、2次合併の話に火がつき、合併してきた新しい自治体の住民には、合併して良否の判断ができない間に次の合併が来たということで戸惑っているのが本音だと思います。県のほうではどのように感じておられますか。総務部長にお尋ねします。
 知事のリーダーシップについてお聞きします。
 合併した場合の住民の危惧するところは、行政サービスの低下だと言われてきました。今までのきめ細やかな行政から、合併後の行政区域の広がりに反して自治体職員数減少は住民サービスが行き届かなくなるという不安は隠しようがありません。
 しかし、今、各自治体がすべて独自の財源で賄える体制にあるかどうか。そのほとんどが財源不足を財政調整基金などで穴埋めし、財政難にあるのが実情です。合併したからといってすぐにこの財政難が解決するものでもなく、むしろ財政健全化を図ろうとするためには、行政と住民も責任を持ち、主体的な形で知恵を出さずにはいられないと思います。納税者である住民が行財政改革にどう積極的にかかわっていくのか。それができなければ今以上に厳しくなり、財政健全化を図ることはできません。
 この合併という機会は、今までの流れを大きく変えようとするわけですから、住民も行政も痛みを伴う自主自立を目指した大改革だと考えています。
 今後、県が示した第2次合併対象市町村の住民と接する場合、このような緊迫した自治体の台所を示しながら合併の意義を伝える役割も果たせられるかもしれませんが、その取り組みの姿勢というか、知事の知事による勧告等のリーダーシップは発揮されるお考えはあるのか、お聞かせください。
 道州制は、市町村合併と同じで、財政再建問題の打開策の1つであります。道州制については、私は推進派でありますが、その財政再建とは別にもう1つの県境を撤廃したいという気持ちがあります。それは、新宮市の置かれてきた時代、歴史的背景から見ましても、新宮藩から新宮県という廃藩置県によるすみ分けがされてきたところです。地形的に見て三重県も含めて一体的な計画をしなければならないことも、行政区域の違いから、その調整に時間がかかり、よい計画であっても半ばあきらめかけて頓挫してしまうことも否定できません。
 もともと同じ経済圏でしたが、熊野川を境界にして行政管理区域が分かれたため、熊野川の1つの問題でも、熊野川架橋の問題につきましても、県も違えば国の管轄も違うという位置づけで、最も時間的に浪費し、精神的苦痛を味わって苦労している人はここに関係した私たち住民であり、首長、関係者でもあります。1つのことをするにも2倍の力がなければ解決することや方向性が見出せないとなれば、この境界は行政がつくった異物としか言いようがありません。
 紀北の方にはちょっとぴんとこないかもしれないんですけども、極端な例で申しわけないんですが、ちょっとイメージしていただきたいんですけど、例えば紀の川がもしも府県間の境界であったらどうだったかと。地域の発展とか活性化に大変な障害を与えてきたんじゃないかなと思うわけであります。私どもの熊野川──私の知る範囲では、川で県境を引かれてるところはここだけだと思います。その住民サービスに努めなければならない行政が住民を苦しめているという構図を早く解消するためにも、私は道州制という編成に期待し、これをきっかけにしたいのであります。
 2006年2月28日、小泉首相の諮問機関である地方制度調査会は道州制の導入が適当とする答申を首相にしましたが、全国知事会での動きはどのようになっていますか。また、仁坂知事は和歌山県としてどのような考え方を持っておられるのか、お聞きします。
 次に、医師不足問題についてです。
 最近の全国的な医師不足問題は、2004年4月から始まった新しい医師の臨床研修制度、大学病院での医師不足による地方からの医師の引き揚げ、医師の開業志向の高まりなど、医師の労働環境問題が引き金となっているようで、これらが起因して地方の中核病院でも深刻な医師不足を招いていると思います。
 救急患者輸送にはドクターヘリの導入などにより地域住民の生命に関したネットワークが整備されつつありますが、日常的な地域医療の充実を求めるには、各自治体が今後、医師が地方に勤務する魅力を高めることに努力する必要性はもちろんのことでありますが、県としましても、地元医学部の入学定員枠の増員、地域枠の新設などの方針を打ち出し、国に対し積極的に働きかけをした結果、このたび入学定員増が認められたと聞いています。
 そこで提案ですが、地域における医師確保に当たっては、地域勤務を条件とした奨学金制度の創設など、地域に医師が定着する対策が必要だと思いますが、この提言に対する福祉保健部長の見解を求めます。
 続きまして、入札制度改革についてです。
 県は、去る6月15日、新しい入札制度改革を発表しました。主な内容は、条件つき一般競争入札の拡大、電子入札の積極導入、地域要件の緩和、業者の評価などとなっています。新しくなる入札制度について3つの問題点を提起したいと思います。
 まず最初に、一般競争入札を実施するに当たっては、そこに参加する者すべてが同じ条件でなければなりません。ところが、今までの県の業者評価には疑問を感じております。
 それはどういうことかと申しますと、一生懸命仕事をしようと社員をふやしたり、機材を購入したり、また事務所を建築したりするまじめな建設業者が損をする仕組みだということです。少しでもいい工事をしようと重機、車両、資材をふやしてきたことが今の制度ではマイナス要因となり、点数が低くなる仕組みとなっているわけです。このような状況が正されないまま、条件つき一般競争入札を全部の工事で実施すれば一体どうなるでしょうか。まじめな建設業者、施工能力のある建設業者が不利になると危惧するわけであります。
 県が9月5日に発表した新しい業者評価制度では、建設業者の工事施工能力がきちんと評価されるのか。少しでもよいものをつくろうと努力を重ねている建設業者の皆さんが報われる制度となっているのか。また、人を雇い、建設機材を所有している建設業者をきちんと評価できるのでしょうか。
 次に、条件つき一般競争入札を拡大する上で、現在建設部単位で発注している工事につきましても複数の建設部にまたがる大きな区域での発注となることについてですが、今まで以上の多数の建設業者による競争によって地域に必要な地元建設業者が生きていくすべがあるのか、非常に心配です。
 昨今、わざわざ遠くの工事現場まで触手を伸ばす建設業者がありますが、それぞれの地域には地元を熟知した建設業者が頑張っており、遠くから来るなじみのない建設業者を必要としていないと考えます。工事現場に近い地元建設業者が施工することで地元に利益を生み、地元に経済効果をもたらすとともに、地元住民も安心して工事を任せられると思います。
 以上のことから、建設部単位での発注を基本とすることが必要であると考えますが、いかがでしょうか。
 最後に、工事等の設計に用いられる単価や設計積算の基準についてですが、県において積算された工事価格は安過ぎることはないでしょうか。また、適正な単価にて工事の積算が行われているのでしょうか。地元の建設業者の方々からこのような疑問をよく耳にします。
 また一方、建設業者が安易に最低制限価格で落札して工事を施工した結果、赤字になるケースというのが多々あると聞いております。このようなことは、請け負った工事の安全性の面からも非常に懸念されるところであります。これらのことにより、県においてはなお一層の単価の精査をお願いしたいと思います。
 以上3点について、県土整備部長の考えをお聞かせください。
 最後に、熊野地域の文化振興拠点の整備について。
 新宮市は文化をまちづくりの根幹に置くとともに、東くめ、佐藤春夫、中上健次など、数多くの文化人を輩出した土壌を持ち、歴史的にも熊野地域の中心地であることからも、熊野文化振興の拠点都市として機能してきました。一方で、市の文化施設の拠点である市民会館は、昨年度に実施した耐震診断の結果、危険性が高いとして建てかえの必要に迫られています。
 そうした中、新宮市では仮称・熊野文化ホールと仮称・熊野学センターの設置を検討しているところではありますが、これらが整備されることになれば、県民文化会館と紀南文化会館と連動することで効率的な文化公演の開催が可能となり、県全体の文化レベルの底上げにつながりますし、すぐれた舞台や音楽などに触れ合う機会がふえ、熊野の次代を担う青少年の豊かな情操教育に寄与します。また、和歌山県世界遺産センター、南方熊楠記念館など、関連施設と連携・連動することで熊野来訪者のニーズにこたえることができ、歴史、自然、文学、芸術など多岐にわたるセミナーや研修が充実し、熊野に関心のある県内外の人が集い、学ぶ場を構築できます。さらには、団塊世代や熊野ファンなど交流人口の増加や定住促進にも寄与すると思います。
 ついては、熊野地域全体の文化の底上げに向け、文化振興のための拠点整備に対する支援を求めますが、いかがですか。知事の見解を求めたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(新島 雄君) ただいまの須川倍行君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、新宮港についてでございます。とりわけ東防波堤の早期完成につきましてお答え申し上げます。
 この防波堤は港内静穏度を向上させ、船舶の安全な入出港、係留を確保するためにぜひ必要であると考えております。
 先般、「ちきゅう」の接岸に際しまして歓迎会に出席してまいりましたけれども、こういうものが例えば接岸できなくなるというようなことになると、とても困るということでございまして、早期にこれは完成さしたいと思って努力しているところでございます。
 今議会に事業費の増額に係る補正予算案をお諮りしているところでございますが、これもこういう考え方でございまして、御審議をいただき、当初計画よりも1年早い平成22年度の完成を目指して整備を推進してまいりたいと思っております。
 次に、水資源についてでございます。
 熊野川を中心に、この地域には水が豊富でございます。これについては、須川議員御指摘のとおりであります。また、新宮港はこの豊富な水資源を活用して水の輸移出の基地として可能性があるということは十分認識しております。また、近隣においても、議員御指摘の民間工場が使用していた構造物があることもわかっております。先般、熊野川の川下りをいたしましたときに、あそこが既に今休んでいる取水口だというようなところが2カ所あることをよく見てまいりました。
 水というのは、最近では企業誘致あるいはいろんなものを考えるときの大きな武器になります。これがなくてなかなかはかどらないということも多く経験しているところでございます。したがって、これを何とか武器にいろんな方策を立てていきたいと、これを有効に活用していろんな手だてを講じていきたいということを考えております。
 また、現在、その一環として新宮港から水バッグ海上輸送実験が行われているということも御指摘のとおりでありまして、その動向にも注意しているところであります。
 今後とも、この豊かな水資源の活用を含め、新宮港の利用を促進してまいりたいと考えております。
 次に、「ちきゅう」につきまして申し上げます。
 今月16日に新宮港に初めて「ちきゅう」は入港いたしまして、ここで歓迎会を、県議会の方々初め関係の方々に御出席いただきまして、あるいは地元の学生さんなんかの参加も得て、にぎやかにやらしていただきました。
 これに先立ち、同船を運航・管理する独立行政法人海洋研究開発機構の平理事をお迎えして、記念講演会も新宮でやらしていただきました。新宮市内の会場は満席となって、地元の皆さんの関心も高まっているというふうに考えます。
 私どもも「ちきゅう」の内部を見せていただきました。大変な高さで、120メーターを超える物すごいやぐらがありまして、すごいものだなというふうに私も思いました。それから、地元の学生さんが中を案内されまして、多分日本でも直接ああいう世界の最先端の技術をじかに見ることのできた子供たちは新宮をおいてほかあんまりないんじゃないかというふうに思いまして、誘致をしてまいったわけですけども、大変喜ばしいことだと思いました。
 今後数年間にわたりまして、南海トラフの掘削期間中、新宮港が物資供給拠点として活用されることになります。それから、地震・津波観測監視のための海底ネットワークシステムにも着手してもらえるというふうに考えております。
 我々も情報収集をしないといけないし、それから、御指摘のように、さらに一段進んで新宮港の利用促進とか、あるいは地域の活性化につながるような対応ができればよいなというふうに思いまして、地元関係機関あるいは例えば海洋研究開発機構のような、そういう日本全体の機関ともよく相談をしながらできるだけのことをしていきたいと思っております。
 それから、ポートラジオ局の開設でございます。
 新宮港におけるポートラジオ局の開設につきましては、私もそれをつくることができたら大変いいなというふうに思うのでありますけれども、大型船舶の現在における入港頻度と、それから開設・運営に要する費用にかんがみますと、現時点ではなかなか開設する状況にならないんじゃないかなという気もいたします。そうした状況は、実はこれは固定されたものでありませんで、新宮港の繁忙度といいますか、込み合い方によってこの状況は変わってくるだろうと思っております。
 まずは、私どもは、より多くの海上輸送に新宮港が利用されるように引き続き地元と一体となってポートセールスに努めてまいりまして、その上で今後の新宮港の利用状況あるいは情報通信技術の進歩等を総合的に勘案して、将来的な検討課題とさしていただきたいと思っております。
 次に、市町村合併と、それから道州制について知事のリーダーシップというお話でございましたが、これについて所見を申し述べさしていただきます。
 市町村合併は地域の将来を大きく左右するような重要な事柄であることから、基本的には地域において自主的に判断されるものでありまして、また、市町村合併についての地域の住民の人々の気持ちというのがまず何よりも大事だというふうに思っております。
 しかしながら、一方では地方分権改革を推進し、自立した個性豊かで元気な地域づくりのためには合併の効果を生かした行財政基盤の強化も有効な手段であると考えます。スケールメリットを生かして高度なサービスを人々の分業によって行っていくということができるようになるというメリットは、無視できないものがあると思っております。
 このため、地域の将来像や行政のあるべき姿について、合併も含め、住民の方々も交えたしっかりとした議論を行うことが必要だと考えております。県もその議論に積極的に参加をいたしまして、情報提供して、地域の方々と一緒になって取り組み、また、そういう機運が盛り上がってきたときは決然と支援を行ってまいりたいというふうに考えております。
 例えば新宮・東牟婁地域におきましては、関係市町村が共同で住民向けの合併パンフレットを作成し、各戸に配布するなどの取り組みが行われております。新合併特例法の法期限を見据えながら、このような地域の取り組みが進展するように私たちも引き続き支援してまいりたいと考えております。
 次に、道州制についてでございます。
 道州制につきましては、全国知事会では、我々知事会の立場を明らかにするとともに、政府などに対し道州制の検討に当たっての課題を提示するために、本年1月18日に基本的な考え方というのを取りまとめました。その中で、道州制は地方分権を推進するものでなければならない、道州は都道府県にかわる広域自治体とすること、あるいは道州の区域については地理的、歴史的、文化的条件や地方の意見を十分勘案して決定しなければならないなどと提言をしております。現在、この基本的な考え方に基づきまして、国と道州の基本的な役割、あるいは税財政制度のあり方、組織・機構のあり方などについて検討を進めているところであります。
 本県も全国知事会と同様の考え方に立っておりますけれども、現時点では、道州制の姿について、国と地方あるいは国民の各層の間でも明確なイメージがどうも共有されていないということも事実であります。道州制のメリットについて十分検討していかなければならないというふうに思います。
 例えば、道州制下における資源配分が和歌山県に居住する住民にとって、現在及び未来において現状より有益なものにならなきゃいけない。そういうものになっていくかどうかということもまた見きわめながら考えていく必要があると思います。
 今後とも、道州制が和歌山県民の利益につながるかという観点から、全国知事会等を通じて、私も積極的に議論に参加してまいりたいと思っております。
 この道州制の問題を超えても熊野川の両岸の結びつきが新宮市周辺の両県の人々の間でいかに強いかということを、私も改めて最近勉強いたしました。また、現実にも実感をするところがありました。そういう点で、それを念頭に置いていろんなことをしなきゃいけないと思っております。
 そこで、こういう制度の検討だけではなくて、とりあえず今ある問題として三重県と特に相談をしながら──特に知事との間ではしょっちゅうそういう議論をしておりまして──例えば熊野古道観光振興の売り出し方を一緒にやろうとか、あるいは病院、特に医師不足に悩むこの地域の病院の一体的な運用とか、あるいは道路、特に橋を含む道路の問題とか、そういうことについて力を合わせてこの地域の一体的な開発をしたいというふうに考えております。
 それから、熊野地域の文化振興拠点の整備についてでございます。
 これにつきましては、まず、熊野文化ホール──これは仮称かもしれませんが──それにつきましては、新宮市において構想策定に向けての取り組みを進められているところでありまして、県としては、具体的な検討はそれをまちたいと考えております。
 また、熊野学センター──これも仮称でありますが──この構想につきましては、本年度、新宮市によるセンター設立計画の調査費用の一部を支援するために予算化をしているところであります。本年4月から県と市で必要性や機能などの実現可能性について詳細な検討を始めたところでありますが、今後さらに協議を進めて考えていきたいというふうに思っております。
○副議長(新島 雄君) 総務部長小濱孝夫君。
  〔小濱孝夫君、登壇〕
○総務部長(小濱孝夫君) 県の合併推進構想についての御質問にお答えいたします。
 合併した市町におきましては、新市、新町のまちづくりや一体感の醸成などに懸命に取り組まれ、その成果も、徐々にではありますが、あらわれてきているものと考えますが、議員御指摘のとおり、合併後間もないこの時期に次の合併を考えるということに戸惑いもあろうかと思います。
 しかし、地方分権改革の推進、少子高齢化の進展、国、地方を通じた厳しい財政状況などの地方を取り巻く現状に対応して自立した個性豊かで元気な地域づくりのためには、住民の方々にとって一番身近な自治体である市町村の行財政基盤の強化が重要であると考えます。このため、昨年2月、新合併特例法下における合併についての議論のきっかけとしていただくために、県の合併推進構想を策定し、その中で地域の状況等を勘案した合併の組み合わせを提示したところであります。
 もとより、市町村合併は地域の将来を大きく左右するような重要な事柄であることから、基本的には地域において自主的に判断されるものでありますが、県といたしましては、本構想をもとに地域の将来像や行政のあり方について住民の方も交えたしっかりとした議論を行っていただきたいと考えております。
 以上です。
○副議長(新島 雄君) 福祉保健部長井畑文男君。
  〔井畑文男君、登壇〕
○福祉保健部長(井畑文男君) 医師不足問題についてお答え申し上げます。
 医師の地域偏在や診療科偏在等による医師不足が大きな課題となる中で、議員御指摘のとおり、地域に医師が定着する対策が重要であると認識してございます。
 県といたしましては、県立医科大学と連携した地域医療支援事業を初め、和歌山ドクターバンク制度や産科、小児科等特定診療科の医師確保のための修学資金制度など、さまざまな医師確保対策に取り組んでいるところでございます。
 県立医科大学の入学定員につきましては、去る8月30日に地域医療に関する関係省庁連絡会議において取りまとめられた緊急医師確保対策の一環として25名の増員が容認されたところであり、僻地医療等地域勤務を条件とした奨学金制度の創設など、医師が地域に定着するための措置等について検討しているところでございます。
 今後、実現に向け、県立医科大学と連携し、国との協議を進めてまいります。
 以上でございます。
○副議長(新島 雄君) 県土整備部長茅野牧夫君。
  〔茅野牧夫君、登壇〕
○県土整備部長(茅野牧夫君) 入札制度改革につきましてお答えいたします。
 まず、業者評価についてでございますが、平成20年6月から条件つき一般競争入札を全面的に導入するに当たりまして、不良不適格業者の排除、工事における品質の確保、県内優良業者の育成、以上3つの観点から地方基準点数を大幅にふやした新業者評価制度案を取りまとめたところでございます。
 具体的な内容といたしましては、すぐれた施工能力を持つ建設業者を高く評価することとし、技術者数や工事成績に対する評価点数を大幅にふやすとともに、著しく工事成績の悪い場合はランクを落とす制度を新たに導入することといたしました。さらに、地域社会の要請にこたえる建設業者を高く評価するために、災害時に役に立つ重機あるいは仮設資材を所有している建設業者、また多くの従業員を雇用している建設業者を評価し、加点する項目も取り入れております。
 これらによりまして、新しい評価制度のもとでは、施工能力が高くて地域社会の要請にこたえることのできる良好な建設業者がより一層報われることとなるものと考えております。
 次に、建設部単位での発注についてでございますけれども、条件つき一般競争入札の拡大に当たりましては競争環境の整備が必要でございまして、そのためには地域要件を緩和するなどの県の実情に即した競争の場の設定が必要であると考えております。しかしながら、災害対策のための地元優良業者の保護や急激な地域間競争の激化による混乱を避けるために、段階的に地域要件を緩和していく必要があるところでございます。このために、予定価格3000万円未満の工事につきましては、従来どおり建設部単位での発注をすることとしております。
 最後に、設計に用いる単価についてでございますけれども、工事の設計価格の積算に当たりまして、標準的な工事価格を算定できるよう、国土交通省が実態調査を行い制定しております積算基準及び県が市場調査を行った資材単価や労務費などをもとに、県が適正に積算を行っているところであります。
 なお、受注者の積算能力向上と安易なくじによる落札者決定を防止するために、今回の入札制度改革におきまして、現在事前公表しております最低制限価格及び低入札調査基準価格を平成20年6月から事後公表することとしております。
 今後とも、単価等の適正な調査に努めるなど、積算精度の向上を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(新島 雄君) 再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(新島 雄君) 以上で、須川倍行君の質問が終了いたしました。

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