平成19年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(全文)
県議会の活動
平成19年9月
和歌山県議会定例会会議録
第2号
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議事日程 第2号
平成19年9月18日(火曜日)
午前10時開議
第1 議案第115号から議案第143号まで(質疑)
第2 一般質問
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会議に付した事件
第1 議案第115号から議案第143号まで(質疑)
第2 一般質問
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出席議員(46人)
1番 泉 正徳
2番 山本茂博
3番 前芝雅嗣
4番 浅井修一郎
5番 吉井和視
6番 向井嘉久藏
7番 門 三佐博
8番 町田 亘
9番 川口文章
10番 平木哲朗
11番 花田健吉
12番 須川倍行
13番 大沢広太郎
14番 谷 洋一
15番 平越孝哉
16番 下川俊樹
17番 岸本 健
18番 山下大輔
19番 尾崎太郎
20番 藤山将材
21番 新島 雄
22番 山下直也
23番 井出益弘
24番 宇治田栄蔵
25番 多田純一
26番 中 拓哉
27番 角田秀樹
28番 江上柳助
29番 山田正彦
30番 坂本 登
31番 尾崎要二
32番 中村裕一
33番 服部 一
34番 片桐章浩
35番 原 日出夫
36番 藤本眞利子
37番 長坂隆司
38番 玉置公良
39番 小川 武
40番 冨安民浩
41番 奥村規子
42番 松坂英樹
43番 藤井健太郎
44番 雑賀光夫
45番 野見山 海
46番 松本貞次
欠席議員(なし)
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説明のため出席した者
知事 仁坂吉伸
副知事 原 邦彰
知事室長 曽根義廣
危機管理監 杉本雅嗣
総務部長 小濱孝夫
企画部長 森 崇
環境生活部長 楠本 隆
福祉保健部長 井畑文男
商工観光労働部長 永井慶一
農林水産部長 下林茂文
県土整備部長 茅野牧夫
会計管理者 小倉正義
教育委員会委員 湯川 力
教育長 山口裕市
公安委員会委員長 大岡淳人
警察本部長 鶴谷明憲
人事委員会委員長 守屋駿二
代表監査委員 垣平高男
選挙管理委員会委員長 山本恒男
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職務のため出席した事務局職員
事務局長 山本庄作
次長 植野博文
議事課長 薮上育男
議事課副課長 土井敏弘
議事班長 吉田政弘
議事課主任 中尾祐一
議事課主査 保田良春
議事課主査 石垣悦二
議事課主査 瀧川泰治
総務課長 下出喜久雄
調査課長 佐本 明
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午前10時1分開議
○議長(中村裕一君) これより本日の会議を開きます。
日程第1、議案第115号から議案第143号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
8番町田 亘君。
〔町田 亘君、登壇〕(拍手)
○町田 亘君 おはようございます。
私たち人間にとって幸せって何だろう。私たち人間にとって本当の幸せって何だろう。お金でもなけりゃ地位でもない。名誉でもない。私は、人の幸せっていうのは、何の憂いもなく死んでいけること、何の心配もなく死んでいけることだと時々思うときがあります。どんな障害であれ、障害の子供を持つ親にとっては、もし自分が死んだらこの子はどうなるんだろう、多くの人に迷惑をかけながらも生きていけるんだろうかということであります。
前にもお話ししたことがあるんですけれども、先日、山下清さんをモデルにした「裸の大将」のビデオを借りてきて見ました。ドラマを見る限り、少し障害があるようだけれども、人情味にあふれ、親切で、絵がうまく、旅から旅と一ところに落ちつかないが、彼が行く先々で大勢の人たちに親しまれ、おにぎりをほおばりながら、笑いと涙で感動の放浪生活を送っております。もしドラマのような人生なら、ドラマのような人生を送れるなら、これほど、ある意味で幸せな人生はなかったと思います。
私は、山下清さんの作品展を見に行ったことがありますが、本当の山下清さんってどんな人だったのか、生い立ちや日常生活について書かれた資料がないかと議会事務局にもお願いして探していたところ、大阪の中之島図書館に、昭和12年に山下清さんについて書いた戸川先生の「特異児童」という本を見つけてくれました。「特異児童」──特別に異なる児童て書いていますが、以下、この本の中から山下清さんについて少し紹介してみたいと思います。
彼は、大正11年、東京の浅草で生まれ、今生きておれば85歳です。昭和46年に49歳の若さで亡くなっています。彼の家庭は悲惨で、実の父は彼が幼いときに死亡、弟が1人いましたが、不良少年で何度も教護院に入れられたそうであります。母は再婚しましたが、養父は大変な酒乱で浪費癖があり、家は貧しさをきわめたために、母は清君を連れて母子寮に入りました。彼は母子寮から小学校に通ったのでありますが、学業は劣等、その上、現在で言ういじめに遭うので友達と一緒に遊ばず、遠回りして家に帰ったり、病的なほどの臆病から発作的に見境なくナイフで傷つけるなど凶暴な面を持つ子供でもあったそうです。彼がいじめれられた原因の1つは、知的能力の低さのほかに、偏屈な性格、そして盗癖があり、まさに手のつけられない子供でもあったからだそうであります。
このような境遇と経歴から、12歳のときに千葉県にある知的障害者のための施設・八幡学園に入所されたのであります。私たち自民党県議団でつくっている福祉議員連盟はこの施設を見学させていただきましたが、彼にとってはこの学園は、それまでのようにいじめもなく、勉強は易しく、第一、張り絵ができる。彼が何よりも好きだった森があり、虫がいる、花がある、チョウ、ハチ、セミがいる。今まで抑えられていた彼の天分は一気に開花し、異常なくらいの進歩で、画家の大家をして「天才」とまで言わしめた作品を多く生み出したのであります。テレビで見る山下清さんからは想像することができない生い立ちであります。彼にとって八幡学園は、まさにオアシスであったそうであります。
私は、数年前まで近くの養護学校の卒業式に招かれ、来賓として祝辞を依頼されたことがありましたが、断り続けました。小学部の卒業生の親は、まだ中学部がある。中学部の卒業生の親は、まだ高等部がある。しかし、高等部の卒業式では、「御卒業おめでとう」と言われても、不安と心配で喜んでいる顔をした親はおりませんでした。いっそ落第させて学校に置いてくれないだろうか、あしたからどうしようと心配で、曇った顔をした保護者ばかりでありました。
そこで、教育長にお尋ねします。
まず、特別支援教育、特別支援学校の目的とそのあり方についてお考えを教えてください。
そして、県内の特別支援学校に通う生徒は何人おられますか。毎年高等部を卒業する生徒は何人おられますか。また、卒業後の進路について調査をしていますか。卒業しても施設にも入れず、また仕事もなく、自宅にいる人はどのくらいいるのか。卒業後の追跡調査を行ったことがありますか。地域によっては寄宿舎がないために通学距離等で特別支援学校に行けず、義務教育の中学校を卒業した子供の進路についてお教えを願います。
本論に入ります。平成17年に実施された障害者自立支援法についてお尋ねします。
私は、この法律の理念は、障害者1人1人の人権尊重の推進により人間的な解放を具現化していくという歴史的な課題に迫る方向を示しており、理念としては正しいものと認識すべきかもしれません。先ほど述べたように、障害者が山下清さんのように社会の中で一緒に生活できることが望ましいことであります。
そこで、福祉保健部長にお尋ねします。
現実には一般就労への移行が難しくなっている障害者自立支援法の弱点を県としてどう補っていくのか。また、精神障害者が地域で安心して生活ができる環境が本当に整っているのだろうか。
今後、特別支援学校を卒業し施設への入所希望者数と、福祉計画にあるように差し引き入所者が103人減少するとありますが、こんなに簡単に割り切れるものなのでしょうか。
施設を出た障害者のためにグループホーム等の整備を促進するとありますが、具体的には空き家の情報の提供と空き家の修理支援だけで、だれがグループホームをつくるのですか。人件費を含めて維持管理等はどうなるのでしょうか。
グループホームに入った後、病気やけがをしたときや仲間とのトラブルなどの対応策など、受け皿は十分機能するようになっておるのでしょうか。
私は、和歌山県障害者福祉計画第1期を見る限り、国から数値目標を与えられ、それに理由をつけただけのようにしか思えてなりません。さらに、私は、今の時点では、まず現状の施設や関係者等の条件整備を行い、施設の経営の安定、職員の待遇の改善等、関係者が障害者のニーズに応じた問題意識の向上と、施設と同様以上の運営費や職員の報酬等を確保しなければ地域移行は進展しないのではないだろうか。
話は変わりますが、私は、近所にある牟婁あゆみ園にはぶらっとよく出かけていきます。昨日も行ってまいりました。そこで、自治会長の上田君や副会長の栃野、田中さんらと、皆さんたちからいろんな相談を受けてきました。道路の段差、岡川への転落防止さくの設置等。また、施設内では1部屋6人の共同生活を送っているために、入居者のプライバシーが確保されているのかという問題があります。耐震性の問題も含め改善する必要があると思いますが、これらの問題への取り組みについて御説明願います。
グループホームに行くたびに思うことは、グループホームの世話人はだれにでもできるというものではなくて、1人1人の心のケアもでき、グループホーム内での利用者の融和等、専門性が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
先日ある新聞に載っていた記事ですが、「知的障害者が地域での生活になじめず、家族も手を差し伸べず、ホームレスとなり、刑務所しか行くところがないと犯罪に手を染める人もいる。福祉が保護すべき人々の受け皿が刑務所しかないとは、まさに福祉の貧困だ」と書かれていました。私は、このような将来を大変恐れているわけであります。
次に、南紀白浜空港関連の質問をさせていただきます。
平成8年に私が県会議長をさせていただいて近畿議長会に出席したときに、三重県の議長が「町田さん、和歌山はうらやましいですよ」とおっしゃるので、「何もしてなく自然がいっぱいだからですか」と聞くと、「何を言うんですか。近畿地方でジェット機の飛び立つ空港は幾つありますか。(当時)関西空港、伊丹空港、白浜空港の3つだけではないですか。私とこの三重県にも、奈良県にも、京都府にも、滋賀県にもないんですよ。すばらしい宝ではないですか」と言われました。まさにそのとおりであります。
このすばらしい宝を残してくれた先輩たちに感謝するとともに、私たちは今後これを発展させ、次の世代に引き継いでいく義務があり、紀南の活性化につなげていかなくてはなりません。
現在、白浜空港の定期便は、日に2から3便の南紀白浜─羽田間の路線のみであります。運賃は片道2万6700円から2万8700円。平均搭乗率は54~55%で推移しているようであります。このような状況が続けば定期便そのものの存続が危ぶまれるということで、仁坂知事を先頭に、奄美空港と白浜空港のみなかった通称「特割7」の適用を日本航空へ強力に働きかけ、本年4月から6月までを試験期間として実施され、10月以降についても引き続き特割7を継続することが決まりました。知事は、「大変喜ばしい。首都圏で南紀をPRし、今後も空港を使ってくれるようお客をふやしたい」とコメントされております。私たち県議会も、高速議員連盟で、ことし11月開通予定のみなべから田辺間の道路を視察した後、白浜空港を利用して東京への陳情を行ってまいりました。
このように、知事初め関係者の皆さんの今日までの御努力に、地元の1人としても心からお礼を申し上げたいと思います。
本来であれば、この質問は、南紀白浜空港のことでありますので、県の組織上、県土整備部にお尋ねすべきことかもしれませんが、私は常々、南紀白浜空港の存続は観光を主体とする活用方法以外にその存続を図るすべはないと思っておりますので、イレギュラーかもしれませんが、あえて商工観光労働部長に幾つかの点をお尋ねさしていただきます。
まず、今回の特割7の導入のためにどのような努力をされたのでしょうか。
また、日本航空が特割7の暫定導入に踏み切るに当たり、同期間と前年同期間を比較して売り上げが下回った場合、仁坂知事が会長に就任されている社団法人和歌山県観光連盟がその減収額の補助を2240万円を上限として計画していたとお聞きしました。観光連盟は利用客数によっては多額の経費を負担しなければならないかもしれないという大きな危険性を持つことになっていたわけでありますが、法人の財政は大丈夫なのかと危惧するところであります。
そこで、減収に対して補助が必要となった場合に備えていた財源についてもお教えください。
そして、19年10月以降、正式導入するとありますが、当然この制度は長く続けられるものと認識してよいのでしょうか。
喜んでばかりいられないことがあります。1つには、1便当たりこの特割7が何席確保されているのでしょうか。例えば1便当たり10席とか20席という設定であれば、利用が限定されるわけであります。また、5月の連休、お盆の時期、年末年始といった繁忙期は適用除外ということはある程度理解できますが、夏休み期間中の7月、8月の2カ月特割7を利用できないのでは、結局は利用が遠のくのではないだろうか。多くの企業、自治体の保養所が閉鎖された白浜近辺の状況では、頼れるのは紀南地方を訪れてくれる観光客のみであります。
そこで、定年を迎えた「サンデー毎日族」と言われる大量の団塊の世代をどう取り込めるのかといった空港を利用した観光での施策展開がぜひとも必要と考えますが、いかがでしょうか。
また、昨年度、台湾からの国際チャーター便が運航されましたが、今後の取り組みについてお教え願います。
また、和歌山県は、豊かな観光資源に加え、温暖な気候に恵まれた自然環境を持っております。これを生かして国内の気候立地条件の異なる地域間、例えば雪国とのチャーター便の誘致もぜひ御検討をお願いしたいと思います。
最初に申し上げましたように、近畿の府県がうらやましがるこの空港の建設には巨額の費用が投じられております。そして、空港では、1日2回か3回の定期便の運航のために、民間、国の職員、県の職員合わせて約150人もの人が働いておられるそうであります。ターミナルビルの管理運営は南紀白浜空港ビル会社が行っておりますが、その社長には仁坂知事が就任されておられます。ビル会社という民間の活力と、そこで働く多くの人を生かした新たな事業展開、例えば航空機の運航・管理という基本的な業務に加え、多くの人が集まる空間としてのターミナルビルの新たな活用方法、旅情あふれるイベントの開催等々、できる限り柔軟な考えでの取り組みが必要になってくると思います。
この白浜空港の活性化は至上命題であり、すべての関係者が知恵を出し合っていかなければならないのは当然であります。利用促進実行委員会が組織され、そこでるる御検討いただいていると思いますが、さらなる空港の発展のため、観光面からのアプローチ、交通手段としてのアプローチ、雇用の場としてのアプローチ、また念願でありました旧空港跡地の活用等々、多元的に県庁を挙げて今後も取り組んでいただきたく、強く要望しておきます。
2日前のテレビ「知事と語る」でもお話しされていましたが、南紀白浜空港の活性化と空港を核とした紀南地方の発展について知事のお考えをお尋ねいたします。
次に、和歌山県が抱える多くの課題を解決し、県民の幸せを実現していくためには、まず県の財政が健全でなければなりません。それが大前提であります。そこで、県の財政見通しについてお尋ねします。
本年2月の議会で、知事は、「基金があと1~2年で枯渇する見通しであり、県の財政は極めて厳しい状況にある」と答弁をされました。また、先日の9月11日の提案説明でも、「中長期の財政収支見通しを早急に示す」とも述べられました。
厳しい財政状況の中、和歌山県の将来の指針となる新長期総合計画の策定に向け議論を進めるためには、まず計画期間中の財政見通しを明確にすることが必要ではありませんか。今議会中に県の財政見通しを取りまとめ、県民と議会に説明することが必要だと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
最後に、昨年秋、前木村知事が起こした前代未聞の事件がありました。全国各地の自治体で発生した官製談合事件は、国民、県民に地方政治への不信感を与えた残念な事件であり、去る9月10日には、木村前知事に懲役3年、執行猶予4年の判決が大阪地方裁判所で下されたところであります。
仁坂知事は、県政に対する信頼が著しく失墜したことに、勇気を持って知事選に立候補されたわけであります。待ち受ける苦難に果敢に立ち向かわれた知事に敬意を表するものであります。
知事当選後、約8カ月余りがたちました。立候補する前の知事像と8カ月たった現在の知事の御感想があればお聞かせ願います。
次に、和歌山県庁改革制度についてお尋ねいたします。
知事は、今後の県発注の公共工事のあり方、談合防止策等の効果的なシステムづくりについて、公共調達検討委員会を立ち上げられ、新たな公共入札制度の構築に御努力されてきたところであります。
さきの6月定例会では、談合に限らず違法行為を防止し、職員の規律を高めるために、本年4月1日から監察査察制度及び職員倫理規則の運用をスタートさせたと説明されたところであります。また、7月1日からは、検察関係者を監察査察監として配置されておられます。
平成19年6月13日の知事記者会見では、「この監察査察監を導入するのは他府県では恐らくないと思う。公の機関では類似の制度は外務省だけだ。地方公共団体は初めてである。外務省と違うのは、知事の犯罪も暴けるような工夫をした」という説明もされておられます。
7月1日には、監察査察監が着任するのにあわせて、和歌山県不正行為等通報処理要領も施行されました。県庁では、9月から、監察査察監が本庁や出先機関に対して県職員の服務などについて職員から事情を聞き意見を求める定期監察査察が行われております。
不正行為等の通報受理・処理状況について、8月9日記者発表された内容のコピーがありますが、その一部を読んでみると、幼稚園の子供が先生に告げ口をしているようで、寂しくなりました。
例えば、発表した通報内容の一部を見てみますと、1つ、振興局の職員が事務用品を不正使用している、応対が悪いとの通報を受け、管理者に事務用品の管理状況を確認したところ問題はなく、接遇の指導を要請した。1つ、実習生に対する指導員の言動に行き過ぎがあるという匿名の通報を受け調査した結果、指導員が実習生を自宅に招いて飲酒していた際、実習生の服装を注意したところ反抗的な態度をとったことから、胸ぐらをつかみ暴言を発するなどの行為が確認されたことから、同人を訓告処分した。県職員と名乗る人物が勤務時間内にチャットをして遊んでいるとの通報を受け調査したが、該当する職員はなかった。1つ、県職員が議員と癒着しているとの通報を受け、本人から聴取したが、昼食をともにしただけだった。
ほかにもありますが、例えば今後、議員がかかわる通報があったときにはどのように処理をされるのですか。我々議員は、県下各地から選ばれております。各地域は、それぞれ問題を抱えております。この問題解決のために、議員と県職員が一杯飲みながら胸を開いて忌憚のない建設的な意見交換をしている姿を通報されると、1回1回職員に理由を聞くのでしょうか。政治家として大人の話し合いもできないのだろうか。取り越し苦労かもしれませんが、人事異動の時期になると、先輩・同僚の中傷が県庁内を飛び交うのではないだろうかと危惧するところであります。
最近、私もインターネットというものを少し習い、暇を見てはいろんな情報をそこから得るようになってきました。インターネットは自宅にいながら多くの情報をいとも簡単に入手できるという大変便利なものであり、IT革命のすばらしさを体験できる反面、多くの情報が瞬時に全国に、あるいは全世界に広がってしまうという危険性も感じるところであります。
なれない手つきでパソコンを操作し、時々あるサイトを見ます。そこに掲載されている県や知事に対する声に驚きを禁じ得ないことが多々あります。
昨年、本県で起こった不幸な事件は、前知事と一部の幹部職員が悪いことをしたのであって、他の職員は悪くはないと私は思っております。この構図は、他県での事件も酷似しているところでもあります。県の職員は、過去の不適切な公金支出により県に十数億円を返済し、その返済代金に充てるために借り入れた金品を管理職が中心となって返済し続けてきて、やっとその返済が終了したと聞いております。職員には、もう二度とこのような不祥事は繰り返したくない、繰り返さないと個々の胸に強く決意したところだと考えます。
この決意がなかったのは、前知事と一部幹部職員だったのではないでしょうか。今後とも法令遵守を厳格に行い、情報の公開を積極的に図っていけば、悲しむべき事件は起こり得ない。職員間での相互抑制、牽制で守るべきルールは徹底できるのではないでしょうか。
規則、要領、制度等で、職員にとって身動きのとりにくい環境をつくり出すことは、県民の幸せの実現に向けて日夜働く県庁職員のフットワークを鈍らせてしまわないだろうか。萎縮させてしまわないだろうか。同僚、周囲の顔色ばかりを気にする職場環境をつくってしまわないだろうか。せっかくの制度が全体として職員のやる気をそぎ落としてしまわないだろうかと危惧するところであります。
知事、県政を明るくすることも、職員の士気を奮い立たせることも、すべて知事の重大な任務であると思うのであります。特別職の公務員としての知事、政治家としての知事の所見をお伺いして、終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(中村裕一君) ただいまの町田亘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 幾つかございました御質問のうち、まず南紀白浜空港の将来像についての私の考えを申し述べさしていただきます。
まず、観光を中心としてこの空港の振興を図るべきだという議員御指摘の点については、全く同感でございます。
実は白浜温泉は、東京から見ると時間的には熱海に次いで近い温泉であります。また、白浜にはパンダが8匹おりまして、もちろん日本一ではございますし、中国を除くと世界一でございます。熊野古道、世界遺産、ラムサールの海、それから日本有数の幾つもの清流など、たくさんの観光資源を和歌山は保持していると思っております。ところが、残念ながらこういうものをうまく紹介してこなかったという嫌いはあるというふうに考えております。
そこで、先ごろ観光振興アクションプログラムとして取りまとめを行いまして、とりわけその中でも、首都圏に向けて計画的かつ戦略的に紀南地方のすばらしさを売り出して首都圏から観光客を招くという取り組みをこれから大いにやっていこうということで、観光立県和歌山、ひいては紀南地方の地域づくりを進めてまいりたいと考えております。まだまだこれからでございますけれども、頑張ってまいりたいと思っております。
その際、その橋頭堡が空港であります。空港を拠点として紀南地域の各地へのネットワークを考えるということが、この際、大変戦略的であり、肝要であると考えております。
私は、白浜空港の差し当たっての戦略のうち、1つは関東圏からの観光客を連れてくると。これが軌道に乗ってまいりますと、ほかの地域──まあ関西はちょっと近過ぎて空港ということではないのかもしれませんが──ほかの地域からの便も期待できるということで、まず関東をねらいにしてやっていくということだろうと思っております。
それから、それに加えて、外国からのチャーター便をぜひ白浜に連れてきたい。年末から年始にかけて少し努力が実りまして、19便、香港から飛んでくることになっておりますけれども、そういう試みをもっともっとふやしてまいりたいというふうに思っております。
それから、自家用機についても、できるだけこの白浜空港を母港にして収容して、いろんな方に白浜を多面的に利用していただくと。それがまた白浜のイメージアップになって、たくさんの人が来てくれる材料になるんではないかと、そんなことも考えております。
一方、高い航空料金の問題とか2次交通の問題等々、さまざまに課題はございます。ただ、関係者の皆様と一つ一つ取り組みまして、こういうことを解決してまいりたいと思っております。
次に、県の財政でございます。
議員御指摘のとおり、住民福祉の向上や和歌山を元気にする施策の推進は、財政の裏づけがあって初めて十分に可能となるものでございます。しかしながら、本県の財政は大変厳しい状況にあります。持続可能な財政構造を確立しておきませんと、将来にわたって安定的に各種施策を行っていくということが不可能になってしまいます。
そこで、私は、提案理由で申し上げましたように、県政の指針となる新長期総合計画を策定するに当たりましては、持続可能な財政構造の実現を図ることを前提とする必要があると考えております。そのために、計画策定に向けた議論を進める上で今後の県の財政見通しを示すことが不可欠であると、先生御指摘のように不可欠であると認識しております。そこで、今議会中に計画期間中の財政見通しを取りまとめ、県民及び議員各位にお示しし、御説明をしてまいりたいと考えております。これは、今議会中に議会に御説明を申し上げる所存でございます。
その次に、立候補前の知事についての考え方、それから現在どうであるかという感想を述べよということでございました。
これにつきましては、昨年末、歴史と伝統を誇る和歌山県が県政史上始まって以来の難局にある中で、県人の1人として和歌山県のために力を惜しんではならないと深く考えました。強い郷土愛とそれから決意を胸に、生み育ててくれた恩人であるふるさとのために、私が培ってきた経験や知識、人脈のすべてを注ぎ込んで、清潔な行政を実現して県政への信頼を回復するとともに、経済の活力を取り戻して和歌山を元気にすることを最大の使命と考えまして立候補さしていただきました。この考えました使命感は、私は現在でも正しかったと、あるいは正しいと思います。
実は、選挙期間中に町田県議から「知事というのは知ることである」というお話をいただきました。「知る事」と書くんだぞ、だから、ちゃんと知ることを主眼にして考えないと、ひとり勝手ではいかんということを教えていただきました。そういうことで、多方面の方々から情報をいただいて、いろんな方とお話をして、各地に出ていって知ることを心がけてまいりました。
ただ、知ることを心がければ心がけるほど、この使命感のもとになった和歌山県の抱える問題というのは大変深刻であるということも、またわかりました。そこで、この使命を達成するために懸命に働かなきゃいかんと、しかも急いで働かなきゃいけないというようなことを考えた次第であります。
はや9カ月たちました。今般の効率的かつ効果的な公共調達制度の構築とか、御指摘にありましたが、監察査察制度の整備などで、まず官製談合等の不祥事が二度と起こらないような清潔で透明な行政の実現が期待できるところまで来たと思っております。
また、そのほかにたくさんの問題がありまして、医療の問題もそうでありますし、それから道路整備の中期計画の中間取りまとめを行った。あるいは、農産物や観光についてのアクションプログラムをつくりました。それから、新長期総合計画の骨子案の取りまとめなど、これからの和歌山県を目指して大急ぎでいろいろな考え方を取りまとめて議論をして、目標を掲げていきたいというふうに考えております。
以上、そういう中で思いますのは、繰り返しになりますけれども、どうもいろんな問題が山積していて、この山積している問題に早く手をつけないと取り返しがつかなくなるという思いがいたします。
例えば、道路について言うと、我が和歌山県にとって近畿自動車道の紀勢線の紀伊半島一周は悲願であります。京奈和の早期開通も悲願であります。ところが、昨今の政治情勢を考えますと、道路特会について非常に暗雲が漂っております。こういうことについて早急に手を打たないと、あっという間に時代から取り残されると。そうなると、泣くのは県民であります。したがって、どうも最近やっておりますことは、急いで仕事をしている、知ることではなくて行うことで行事のような感じになっておるというのが私の現在のところであります。
友人、知人は「そんなに急がなくてもいいんじゃないか」というようなことも言うてきてくれますが、しかし、「あっ、やっぱり早くやらないといけない」ということで頑張っております。
知事というのは県民の代表でありますので、その一挙手一投足に県民の名誉がかかっております。したがって、日ごろから一層の精進をしてまいりまして、我が県の誇るべき歴史的伝統を大切にして、楽しい県民生活、温かみのある県政を実現して頑張っていきたと思っております。
その次に、和歌山県庁改革関連の諸制度についてでございます。
これにつきましては、その県政史上未曾有の不祥事によって失われた県政の信頼を取り戻し、本県の名誉と県民の誇りを回復することが、まず知事として私に与えられた使命であるというふうに考えました。そのための再発防止のシステムを構築してまいりました。そのうちの一部が、県庁に関しましては、倫理規程の問題と、それから監察査察制度であります。この制度を運用することによって透明性を高め、職員の規律を保障していくということをやっていきたいと思っております。
これは、議員御懸念がありましたように、職員のやる気をそぐというものでは私はないと思っております。なぜならば、堂々と仕事をしている職員がこれによって問題が起こるということはむしろなくて、きちんと調べて、中傷を受けたときは、その中傷が中傷であるということをちゃんと明らかにしてくれるというような制度でもあるわけであります。
また、倫理規程については、ルールを守っていればどんな人と──そのルールに従っておつき合いをするということが批判されるということはなくなるわけであります。したがって、むしろこのルールを守りながら積極的にいろんな方とおつき合いをするということが大事で、そういうふうに県庁の職員を私も指導しておりますし、自分もそういうふうにさしていただいております。その上で、そのマイナスのところ、きちんと規律を──マイナスをなくするということだけで県庁がよくなるわけではないと思っております。
私は2つ申し上げておりまして、1つは県民にもっと親しもうということであります。意見を進んで聞きに行こうということで、一例を申し上げますと、産業ごとに担当を決めまして、県庁の諸君みんながいろんな人の話をどんどん進んで聞きに行くというようなことを始めております。
もう1つは、県民のためにその任務でもって物を考えようというようなことを言っております。よくある批判というのは、「私はその権限がないから」とか「私はその予算がないから」ということで、余り県民の意見に耳を傾けない。そうなると、お役所仕事的になってしまいます。したがって、仮に今予算がなくても、その任務から考えて、それがどれだけ必要かということについてはよく耳を傾けてやっていこうじゃないか、それで何か工夫ができないかということをそれぞれ考えていこうじゃないかと、そういうようなことを指導さしていただいているところでございます。引き続き頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○議長(中村裕一君) 福祉保健部長井畑文男君。
〔井畑文男君、登壇〕
○福祉保健部長(井畑文男君) 障害者自立支援法に関連しての何点かの御質問にお答え申し上げます。
まず、就労及び生活環境についてでございますが、障害者自立支援法では、就労支援の抜本的強化が大きな柱となってございます。
県といたしましては、企業等における一定期間の職場体験等の実施を通して就労意欲を促進するとともに、企業等の障害者雇用に対する理解と関心を一層深める取り組みを進め、職域の拡大や就労の促進を図ってまいります。
障害者、特に精神障害者が地域で安心して生活していくためには、県民みんなが障害者のことを正しく理解することが必要であり、そのためには、地域での交流の促進や広報活動を通じて地域社会の理解の促進に努めてまいります。
次に、本県の障害福祉計画についてでございますが、障害福祉計画では、地域の実情に応じて目標数値を設定することとなっており、障害福祉関係団体の方々との意見交換や市町村との調整等十分行いながら努力目標を設定いたしました。
県といたしましては、利用者本人の意向等を最優先しながら地域で安心して生活できるよう、ハード・ソフト両面からさまざまな支援を行い、その結果として目標が達成できるよう進めてまいりたいと考えてございます。
次に、グループホームに関連しての御質問についてお答え申し上げます。
グループホームは社会福祉法人等の法人が設置することとなりますが、県ではグループホームへの転用可能な空き家情報の提供や空き家の改修費補助のほか、敷金、礼金に対する補助や地域で障害者の理解を深めるための啓発を行い、円滑な地域移行を進めることといたしてございます。
グループホーム等の職員の人件費については自立支援給付で賄われる制度となっておりますが、支援に見合った適正な水準であるか現状を十分見きわめながら、必要に応じて国に対しても働きかけてまいりたいと、そのように考えてございます。
障害者が施設から出てグループホーム等に入居後の病気やけが、トラブルにつきましては、まずそのグループホームの世話人等がその支援に当たりながら対応することとなりますが、入居者御本人の意向を十分尊重した上で他のグループホームへ移っていただいたり施設等での支援を受けられるよう、関係機関と連携を図ってまいります。
利用者の心のケア、利用者間の融和、トラブル等の対応等、グループホームの世話人には、議員御指摘のとおり、高い専門性を持って支援していただく必要がございます。そういった意味で、世話人の専門性の向上のための必要な施策について、今後十分研究してまいりたいと考えてございます。
最後に、牟婁あゆみ園に関する御質問でございますが、牟婁あゆみ園につきましては、昭和55年建築の建物であり、平成18年に耐震診断を行いましたが、診断結果は、建物そのものの耐震性には問題はございませんでした。また、居室につきましては、簡易なつい立てやカーテンにより入居者に配慮いたしておりますが、プライバシーの確保のため、今後どういった改善方法があるのか前向きに検討してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(中村裕一君) 商工観光労働部長永井慶一君。
〔永井慶一君、登壇〕
○商工観光労働部長(永井慶一君) 南紀白浜空港関連についてお答えいたします。
特便割引7、いわゆる特割7についてでございますが、県議会の皆様方を初め多くの関係者からの御協力をいただいた結果、本年4月から6月の需要調査期間中の対象搭乗券収入額が昨年実績を大幅に上回り、特割7の10月以降の正式導入が実現したところでございます。
この間、県におきましては、首都圏の東京モノレール等での車内広告、観光物産フェアの開催等によるPRを行う一方、県内向けには、県や市町村の広報紙、マスコミ等を通じ制度の周知を図るとともに、特割7等の利用者に地域商品券を交付するなど、羽田線利用促進のキャンペーンを大いに展開してまいりました。
なお、経費負担に関してでございますが、社団法人和歌山県観光連盟では、平成16年に解散いたしました財団法人新南紀白浜空港周辺整備基金の所掌していた業務、財産のうち、観光客誘致による南紀白浜空港の利用促進に関することを引き続き担当してございまして、今回の特割7の正式導入に向けた取り組みにつきましても、この一環として対応いたしました。
次に、特割7の継続につきましては、基本的には航空会社JALの経営上の判断によるものではございますが、引き続き首都圏からの誘客など積極的に利用促進に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
また、特割7対象座席数、期間の問題につきましても、航空会社の採算性が優先されるところではありますが、県といたしましては、観光振興並びに空港の利用促進の観点から今後ともその拡大につきまして航空会社に強く要望していきたいと考えてございます。
次に、白浜空港を利用した観光での施策展開についてでございますが、首都圏からの誘客につきましては、わかやま喜集館を活動拠点として、紀南の魅力をテレビ、雑誌などマスコミに発信するとともに、中高年層の会員を多く持つ百貨店系の旅行エージェントに対する働きかけや、カルチャーセンターにおける熊野講座の開催などによる団塊世代の取り込みに加え、高校生の修学旅行の誘致などにも取り組んでまいりたいと考えてございます。
次に、チャーター便の誘致につきましては、空港の利用促進、本県の観光振興など紀南の活性化のために、韓国や台湾など東アジアからの誘致に積極的に取り組んできてございます。
今後とも、チャーター便のメリットや支援体制を航空会社や旅行会社にアピールするなど、従来を上回る積極的なプロモーション活動を行ってまいりたいと考えております。
○議長(中村裕一君) 教育長山口裕市君。
〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 特別支援教育の目的並びに特別支援学校のあり方についてお答えいたします。
特別支援教育の目的は、障害のある幼児・児童・生徒1人1人の状況、ニーズを的確に把握し、自立や社会参加を目指してその持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善、克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うことにございます。
県内の特別支援学校に在籍する幼児・児童・生徒の数は平成19年5月1日現在で1180名、また、高等部卒業生はここ数年150名前後で推移している状況にございます。
教育委員会といたしましても、卒業予定者の進路希望や卒業生の就労先等について、毎年の調査の中で、過去3年間の離職並びに転職も含めまして実態把握を行ってございます。卒業後の支援につきましても、自宅で過ごしている生徒も含め、各特別支援学校独自の工夫でその充実を図っているところでございます。また、中学校の特別支援学級卒業生の進路につきましても、特別支援学校の適正配置を進める一方、希望するすべての生徒を特別支援学校高等部に受け入れるなど、教育環境の整備と就学機会の保障に努めてまいりました。
議員御質問の趣旨を踏まえまして、障害のある子供たちの未来が輝くように、今後とも特別支援教育の充実、発展に取り組んでまいりたいと存じます。
以上でございます。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 以上で、町田亘君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
43番藤井健太郎君。
〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問を行わせていただきます。
最初に、前知事の官製談合・汚職事件の判決を受けて知事にお伺いをいたします。
今議会の冒頭、知事は、前知事に対する判決を受けて、「多くの県民の信頼を裏切り、県政史上未曾有の不祥事を引き起こしたことは言語道断であり、県として、判決が確定し、判決理由や証拠書類等が明らかになった段階で十分精査し、県のルールに従って適切に対応していきたい」と、今後の対応について述べられました。再発防止策につきましては、できるところから取り組むとの姿勢で、既に公共調達検討委員会の報告を受けて入札制度の見直しを順次進められ、監察査察監の配置と査察制度の導入、職員倫理規則の制定を行われました。
一方、事件そのものの解明については、県みずからの調査と解明への努力を求めてきたところですが、知事は、事件の解明については捜査機関にゆだね、司法の判決結果を待つという姿勢でした。県としてこの問題のけじめをどのようにつけていくのか。私は、県行政のトップである知事が関与していた事件であり、県としてのきちんとした総括を行い、県民への説明責任を果たすべきだと思っています。
仁坂知事は、これまでも、「判決が確定した後、県のルールで適切に対応する」、このように繰り返し言われています。県庁内部での処理だけで終わらせることはないと思いますが、県政史上未曾有の事件であっただけに、判決を厳粛に真摯に受けとめ、その細部にわたって県としての検証を行い、また判決に触れられていない事項についても、関連する問題を含め、きちんと事件を網羅した総括を行い、文書化し、事件の全容と再発防止策について県民に示していただきたいと思いますが、そのお考えはあるのかどうか、お尋ねをいたします。
次に、新長期総合計画についてお尋ねをいたします。
新長期総合計画の骨子が提示をされました。今回策定を進めている長期総合計画は、コンサルタント依存ではなく、職員でのワーキンググループをつくり、有識者や県内自治体首長を初め、議員、県民からの意見聴取を行うなど、手づくりの長期計画になろうとしています。計画策定の姿勢として、その目的に、「和歌山県が目指す将来像を県民に示し、取り組む施策の方向を明らかにすること、そして県民と共有できる将来像、目標を示すことで県民各人の主体的な活動の指針として活用されることを期待する」としています。
前木村知事は、みずからの選挙公約であるマニフェストを長期計画にかわるものとして行政運営の指針として位置づけ、その実現を目指してきました。どちらかというと、知事主導型の県政運営の指針であったようにも思います。今回の長期計画づくりにも、当然、仁坂知事の公約が盛り込まれることと思いますが、行政と県民が共有する目標を掲げ、それに向かってそれぞれの役割を果たしていく、行政と県民の共同作業として長期計画がつくり上げられ、行政と県民が共有する指針ということになるならば意義あるものになると思います。
また、この10年ということを展望しますと、自治体そのものの形がどうなっていくのか、自治体財政がどのようになっていくのか、行財政運営の基盤そのものが揺らいでいる中で県民に約束できる将来像を描いていくことは極めて困難なように思います。それだけに、しっかりとした理念とそれに基づく長期計画として施策の方向性を示していくことが行政には求められています。骨子が示されて、これから中身の議論となるわけですが、知事、関係部長に基本的な考え方についてお尋ねをいたします。
まず、知事の長期総合計画づくりの基本的考え方、その理念についてお尋ねをいたします。
行政と県民が共有できる目標づくりを掲げられていますが、一口に県民と言いましても、大企業の社長さんから従業員と一緒に汗と脂まみれになり働く経営者、金利・配当所得で生活する資産家から生活保護に頼らざるを得ない人など、県民の置かれている状況、その立場によって県政に対する要望もさまざまなものがあります。
そこで、計画の出発点をどこに置くのか、仁坂県政が取り組もうとする計画づくりに当たって県民生活の現状認識について現状をどのように把握されているのか、お尋ねをいたします。
県内地域経済の特徴、暮らしの指標の動向をどのようにとらえ、決して明るい未来が展望できるものではなく、多くの県民が将来への不安を今抱いているのではないでしょうか。どのような現状認識をお持ちなのか。
地方自治体の目的は、住民の暮らし、健康、福祉を向上させることにあります。目指すべきは県民全体の暮らしの底上げを図ることであって、県政が暮らしの格差、地域の格差をより拡大する役割を果たすようでは困ります。行政と県民が目指すべき方向と課題、解決の方向について、果たして共有できる計画となるのでしょうか。そのためにも、住民の計画づくりへの参画と住民参加のあり方が問題となってきます。また、目標達成に向けての計画の見直し、修正も臨機応変に必要となってくるのではないでしょうか。
長期総合計画は理念重視型なんでしょうか。また、具体的な数値目標を織り込んだ施策重視型となるのでしょうか。県民にわかりやすくしていくためにも、具体的な施策と数値での目標づくりが必要ではないでしょうか。どのような指標を数値化していこうと考えておられるのでしょうか。
また、既に各ジャンルでの基本計画が先行してつくられております。整合性をどのようにとっていくのでしょうか。もちろん、長期総合計画が上位計画となることになるわけですが、それに合わせて各ジャンルでの基本計画は修正されることになるのでしょうか。
以上、知事から答弁をお願いいたします。
次に、今、長期計画づくりの入り口の部分についてお尋ねをしたわけですが、これから幾つかの各論にわたって、将来の目指す姿、それに向けての施策の方向についてどのような考えをお持ちなのか、関係部長にお尋ねをいたします。
まず、中小零細商工業と県民の雇用について、その目指す方向について商工観光労働部長にお尋ねをいたします。
ことし3月に県が発刊した「きのくに産業白書」を見ますと、従業者4人以上の製造業の事業所数は、平成7年から16年までの10年間に約3500から2500へと1000事業所、30%も減少しています。また、同時期の新たな工場立地は71件となっています。従業者数は6万8000人から5万3000人に1万5000人、約23%の減少となっています。
小売業では、平成6年1万6000店舗から平成16年1万4000店舗へと2000店舗、約17%減少。従業者数は、大規模小売店の出店ラッシュもこの時期あり、わずかばかりの伸びとなっていますが、平成14年から見ますと、この3年間では4800人もの減少となっています。
農林水産業を含む民営の全事業所数、従業者数で見ると、平成13年から16年の3年間に5万6400事業所が5万2800事業所へ3600、約6%の減、従業者数では37万2000人から34万3000人へと約3万人、8%の減となっています。
中でも、製造業の規模別事業所数で見ると、4人から19人までの中小事業所が平成16年では製造業全体の77%を占め、従業員数では72%も占めています。まさに県内の中小零細事業所は県民のなりわいの場でもあるし、地域経済を支える重要な担い手でもあります。
ところが、事業所数、従業者数の減少は、これらの中小零細規模の事業所において今顕著にあらわれてきています。和歌山の地場産業でもあった木材、建具、家具や縫製業などが町から姿を消しつつあり、商店街では空き店舗がふえています。あと10年たてばこの町はどうなるのか、そういう不安の声も実によく聞きます。町全体の将来像への展望が描きにくくなってきているのではないでしょうか。
中小零細の事業所、従業者の減少、小売商店の減少をどのように考えておられ、将来の姿をどのように描き出そうとしているのか、県民にどのような方向が示せるのでしょうか、お尋ねをいたします。
あわせて、県民の雇用と所得についてどのような将来像を描き出そうとするのか。高齢者、障害者、母子家庭の雇用の将来をどう描くのか。
県は雇用促進プログラムをつくって、県の実施する施策が雇用にどのように結びつくのか、推計を進めてきました。19年度でそれも終わりますが、その総括と新たな計画づくりの検討も必要となってくるでしょう。また、今日、労働法制の緩和により派遣、請負、パート労働が広がり、雇用形態の流動化が不安定雇用と低所得につながっています。正規雇用の拡大と県民所得の向上に向けての方向をどのように考えておられるのか。
県民のセーフティーネットづくりとその目指す方向は、とりわけ生存権保障のかなめでもある医療保障の問題について福祉保健部長にお尋ねをいたします。
長期計画骨子では、県民が安心して医療サービスが受けられるような環境整備と言われています。この中身は医療の提供体制の充実を指しているものと思われます。初期救急から2次、3次の高度医療までのネットワークづくり、医師、看護師などのマンパワーの拡充が求められていますが、これらは長期的に整備する課題ではなく、緊急の課題でもあります。
平成15年4月に県が策定した和歌山県保健医療計画の中で、県が目指すべき医療保障像が示されています。「『いつでも』、『どこでも』、『等しく』保健や医療についてのサービスを受けられるようにする」とあります。これは、夜間・休日であれども時間を問わず、都市・山村、場所を問わず、お金の負担能力の有無を問わず、県民が必要とする医療保障制度の構築を目指すものと受けとめるものですが、長期計画で目指すべき医療保障像をどのように描かれているのでしょうか。
医療保障は、医療サービスの提供施設と医療従事者について整備すれば足りるものではありません。
今日、国においては、国民医療費の増大に対して医療保険制度の改変が矢継ぎ早に進められています。医療保険制度が県民の医療を受ける権利を保障するものとして機能させていくことが求められています。自立支援医療などの一部自己負担金を伴う公費負担の医療制度、自治体独自の医療費への助成制度、乳幼児、母子、重度心身障害者(児)、老人医療など、必要とする人に保障をされなければなりません。
医療の必要性は、必要とする人の経済的負担能力、お金のあるなしとは無関係にあらわれてきます。被用者以外が加入する国民健康保険では、保険料滞納が保険給付の差しどめとなっており、「負担なくして給付なし」が原則とされています。
保険料滞納者に渡される資格証明書では保険給付を受けることができず、窓口では医療費の全額支払いが求められます。そのため、資格証明書での受診はほとんど見られなくなりました。しかし、これでよしということではないはずです。必要とする医療が受けられずに取り返しのつかない事態になっているとすれば重大な問題です。
医療を受ける必要性があって保険料の支払い困難がわかっているのに資格証明書が渡されていることや、難病や精神などの公費負担医療の受給者にも資格証明書が渡されることのないようにしていかねばなりません。
しかし、残念ながら実情はそのようにはなっていません。生計中心者が入院したことを訴えても、「保険料を払わなければ保険証は渡さない」、このように言われたり、精神の疾患があって自立支援医療の受給者証を持っていても資格証明書が手渡されていたこともあります。
全国の自治体の中には、資格証明書発行の厳密な基準を設け、職員の適切な職権行使となるように、職員の職権の乱用とならないように加入者の医療を受ける権利を保障するよう努めているところもあります。
県民のセーフティーネットづくりは、制度づくりに終わるものではありません。公務員が全体の奉仕者として県民の生存権をいかに保障していくのか、その目と心構えによって支えられていくものです。資格証明書を発行しなくてもいいような将来像が描ければ、それが最良の方向だと考えるところです。
長期計画においても、医療供給体制の整備とともに、それを支える医療保障制度の構築、運用についても明記されてしかるべきものだと考えますが、いかがでしょうか。
震災・災害対策の目指す方向について、危機管理監にお尋ねをいたします。
長期計画の骨子は、防災・減災社会の実現を目指すとして、県民への防災教育・啓発、耐震化などの基盤づくり、災害応急対策と被災者支援、復旧対策の推進を掲げています。今回は、行政側からの課題だけでなく、住民側の課題でもある自主防災組織づくりと、その内容の充実強化についてどのような方向性と将来像を考えているのか、お尋ねをいたします。
台風や大雨などは、気象予報の精度も向上し、注意報や警報の発令、また行政としては避難勧告、避難指示など、住民にとってもある程度準備期間が置けるようになっています。しかし、今日、地震の予知はまだまだ難しく、直前での予報がやっとという状況ではないでしょうか。したがって、いつ起こるかわからない大地震に対して被害を最小限に食いとめるためにも、県民1人1人の暮らしの中で備えが決定的に重要となっています。
県の地震防災対策アクションプログラムの中で、住民による自主防災組織づくりが課題として掲げられております。その目標を100%の地域につくると置いて、既に80%の地域にできているということです。和歌山市でも自主防災組織づくりの取り組みが進められていますが、形だけはできていても中身が伴わない、中身は一体どうなっているのか、このように思えるところも随分あります。
それぞれの取り組みには随分開きが出ています。市内の駅前商店街を中心とするある単位自治会では、大地震が起きたとき、高齢者のひとり暮らし、体に障害のある人など自力脱出できない、援護を必要とする家庭を町内の地図に詳しく書き込み、だれが援護者となるのかを決め、自分たちで相談して決めた一時避難場所への避難訓練を行っています。また、そのときに応急手当て、炊き出しの訓練も行い、そのことによってその町内の住民1人1人の意識も高まり、家具の転倒防止対策の普及も進んでいるということです。
この自治会長は、「この取り組みを地区内すべての自治会にも広げたい」と言われていますが、「呼びかけてもなかなか進まない。それぞれの自治会内で、少なくとも中心になる人が3人は必要だ」と言われていました。このようにしてやっている、こうすればいい、どうすればいいのか、そういうことで悩んでいらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。
こういった先進的と言うのはなんですが、実際に住民参加のもとで行われている自主防災組織の中身、それぞれの地域、さまざまな内容があるだろうと思うんですが、そういったモデル的な取り組みを紹介し普及をする、そして中心となる防災リーダーの養成など自主防災組織づくりへの支援を強化して、形だけではなく、中身のある自主防災組織の100%実現を目指してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
次に、医療改革と後期高齢者医療制度についてお尋ねをいたします。
平成15年3月に、高齢人口がピークとなる将来の医療保険制度の設計が必要として、医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針、いわゆる医療制度改革についての基本方針が閣議決定され、法制化の必要な制度の見直しについて、昨年6月に医療制度改革関連法が成立しました。今回の改革は、昭和36年に国民健康保険制度が整備をされ、国民皆保険が達成されたことと並ぶ最大級の改革とも言われています。医療保険制度に自治体による医療費適正化計画づくりという仕組みの導入と、医療保険制度始まって以来の、年齢で一線を画す高齢者だけの医療制度が創設され、その本格実施が来年4月から始まります。現在、県においてもその準備作業が急ピッチで進められているとのことです。
これまで、国民皆保険の歴史を見ますと、私は3つの時期に区分することができるように思います。
1つは、医療保険制度の内容の充実、つまり保険給付率のアップの時期。窓口負担の軽減が進み、ついには老人医療費の窓口負担無料化の実現にまで至りました。我が国の経済成長が支えてきた時期でもあります。
2つ目は、高度経済成長が終えんし、臨調行革政治によって老人保健法が昭和58年に施行、老人医療費に一部定額の自己負担が導入され、平成13年には原則1割負担となり、15年には老人医療を除きすべての医療保険が窓口3割負担に統一されるまでの時期。基本的には、制度そのものではなく、保険料と医療費の自己負担をふやすことによって医療費に対応してきた時期でもあります。
そして今回、医療給付費の伸びの抑制を図るため、自治体での医療費適正化計画づくりと、とりわけふえ続ける老人医療費に対応するため、県内全市町村による広域連合が運営する後期高齢者医療制度の創設など、地方公共団体が医療費と高齢者医療問題に正面から取り組むこととなりました。来年4月からスタートする後期高齢者医療制度は、県民にとっては全く新たな高齢者向け医療保障制度としてどのような内容のものになるのか、高齢者の暮らしや命と健康にかかわる重要な問題でもあります。
医療制度の運営主体は、県内全市町村が参加する広域連合が担うこととなります。県は広域連合に対して助言と指導をすることとなりますが、高齢者の必要とする医療の提供が阻害されることのないように適切な対応が求められています。
今、知り得る内容として、後期高齢者医療の対象者は75歳以上の人、65歳以上75歳未満で重度障害の認定を受けた人、現在加入している医療保険を脱退し、新たに後期高齢者医療制度に加入し、加入した1人1人に対して保険証が渡されるということ。保険料は2年間を通した計算で、加入者1人1人に対する賦課となり、国保と同じく低所得者に対しては保険料減免制度が設けられます。県内どこの市町村でも保険料は原則として均一料金となり、年金が月額1万5000円以上であって、介護保険料と合算した金額が受給する年金の半額以下であれば年金天引きになるということ。窓口での医療費の自己負担は1割負担、現役並み所得は3割負担となる。これまで、老人保健医療で保険料滞納者に対する資格証明書は発行できませんでした。しかし、今回の後期高齢者医療では資格証明書を発行することとなり、その場合は窓口負担は全額自己負担となります。
後期高齢者医療の財源として、患者の医療費自己負担分を除き、加入者の保険料1割、75歳未満の人の支援金4割、公費は5割、国3分の2、県、市町村6分の1ずつとなっています。75歳未満の人は、みずからの医療保険料と介護保険料、後期高齢者医療への支援金を支払うこととなります。加入者の保険料や受けられる医療の内容については未定であり、年内には明らかにされる見込みということですが、来年4月1日からの実施とされております。すべての内容がわかるのは、直前でないとわからないということでは困ります。
そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
後期高齢者医療制度の県民への徹底した広報はどのように考えているのか。実施直前では県民の意見を反映させることはできないのではないでしょうか。
保険料負担はどうなるのでしょうか。いつ明らかにされるのでしょうか。国保より高くなるのでしょうか。75歳未満の人の後期高齢者医療費への支援金は、限度額が12万円と今言われています。国保加入者の場合であると、今、国保の最高限度額56万円ですが、この後期高齢者医療分を含めると59万円になるという話もあります。
また、市町村国保で独自の保険料減免制度が行われておりましたが、後期高齢者医療に移行すると、この扱いはどうなるのでしょうか。広域連合でも、それぞれの市町村で行われていた保険料の独自減免制度が生かされることになるのでしょうか。
資格証明書の発行をなぜ行うのでしょうか。行うべきではないと考えます。老人保健の場合、高齢者の心身の特性に合わせて、そういうことで資格証明書の発行がされてまいりませんでしたが、今回は発行されることとなりました。なぜ発行されることとなったのか。
医療費適正化計画づくりとあわせて療養病床の削減が進められることとなります。全国で介護型13万床、医療型25万床、合わせて38万床を、2012年までに介護型を全廃することが介護保険法に明記されました。医療型は10万床削減するとし、比較的軽症の医療区分1の患者ベットは全廃、中程度の重症度2の患者ベットは30%削減するとなっています。
来年4月から順次本格実施に移されるわけですが、本県でのベット削減の実施見込みはどうなのか。今、療養病床に入院されている方は、居宅での療養が困難な人が療養病床に入院されているわけですが、そのベットが廃止、削減をされますと、現在入院している人の受け皿をどうつくっていくのか。すべての人に必要とする医療、介護が提供できる見通しなのかどうか、あわせてお答え願います。
最後に、多重債務者問題についてお尋ねをいたします。
昨年の12月、国会において貸金業の規制等に関する法律の一部改正が、国民が抱える多重債務問題解決に向けての総合的施策を推進することを目的に、与野党の全会一致の賛成で成立いたしました。その中で多重債務問題とは何かが定義づけられています。かいつまんで言いますと、貸金業者の貸し付けを原因として返し切れないような多大な債務を負うことにより生活が行き詰まってしまい、社会生活を送る上でも地域社会にとっても重要な問題になっているということです。
これまで、貸金業者の貸し付けの特徴として、高金利での貸し付け、必要以上の過剰な貸し付け、そして過酷な取り立てなどが挙げられており、借金を返すために借金を重ね、そのことによりヤミ金融の横行や途方もない高利での貸し付け業者があらわれるなど、借り手側の責任だけで済ませられる問題ではなくなっていました。多重債務を原因としての離婚、家庭崩壊、虐待、ノイローゼ、果てには自殺にまで追い込まれる事態も生まれました。同時に、税や社会保険料の滞納、さらに住宅家賃、子供の授業料、給食代、保育料の滞納など、地域社会にも深刻な影響を与えました。
昨年の貸金業規制法の改正により、これまでのグレーゾーン金利を廃止し、出資法の上限金利を利息制限法の「15%から20%」にまで引き下げる、借り手の借入残高の総額把握や返済能力を超える貸し付けの禁止、日中の執拗な取り立て行為の禁止、借り手の自殺による保険金支払いができる保険契約締結の禁止などが盛り込まれ、これまでの問題点解決への展望を開くものとして期待が寄せられています。
しかし、この改正ですべての借り手が抱える問題が解決するわけではありません。法律の全面施行は約3年後であり、将来への予防には期待が持てますが、既に多重債務に陥っている人や、この3年間に多重債務に陥ってしまう人まで救済することはできません。
私のところにも、生活に行き詰まっている人からの相談が寄せられますが、よくよく話を聞いてみますと、貸金業者への返済を優先し、生活費を切り詰め、子供の教育費、税や社会保険料を後回しにしている人も少なくはありません。タクシー運転手で、母親の介護をしているため、日中の運転だけでは月10万円足らずの収入にしかならない、貸金業者から生活のため借りたお金が膨れ上がり、その返済に追われ、母親の介護保険の利用料も払えず、家賃も払えなくなったという人。また、重度障害のある子供と糖尿病で入退院を繰り返す妹の世話をしている人で、貸金業者からの膨れ上がった借金返済のためヤミ金に手を出し、その返済を迫られたため、年金を担保にして借り入れた、そのお金を全額ヤミ金に返済してしまって生活に行き詰まったなどなど、これらの問題は、高金利の支払い分を利息制限法に置きかえて再計算したり、違法なヤミ金融資を摘発することで解決に結びつく問題でもあります。
うまく弁護士や司法書士に結びついたところでは、過酷な取り立てもとまり、破産手続の予定が利息制限法による再計算で過払いであることがわかり、任意整理により100万円を超えるお金が手元に戻った事例など数多くあり、ほとんどが解決につながっています。しかし、うまく法律関係者とめぐり会えるのは多重債務者の2割にすぎないと言われています。
多重債務者問題は、きちんと話を聞いて、本人の生活の再建、自立への展望とあわせて取り組めば、ほとんど解決できる問題とも言われています。そういう点で、自治体は、税や社会保険料などの徴収と同時に、各種の生活相談、生活保護を初め社会福祉施策の実施、生活福祉資金など小口の生活資金や事業資金融資、消費者保護など、多面的に住民と結びついています。多重債務者の問題解決の視点から相談体制をつくり、庁内のネットワークが有効に機能すれば、相当大きな成果に結びつくことが期待されます。
既に長野県、岐阜県などでは県としての取り組みが始められ、多重債務問題は個人の問題では済まされない、専門機関に丸投げしない、ゼロ予算事業で対策会議を設置し、多重債務者の現状を知り、困っている住民に手を差し伸べることで地域社会の安全・安心を守るとしています。
鹿児島県奄美市では、多重債務者救済の最終目的は生活の再建である、多重債務状態の放置は社会環境の悪化につながる、病気、離婚、児童虐待、犯罪や自殺、税等の滞納、これまで悪質滞納者と言われていた人を善良な納税者に変えていくやりがいのある仕事、こういう姿勢で熱心に取り組まれ、この4月に開かれた総務省、金融庁後援の日本弁護士連合会主催のシンポジウムでも紹介されておりました。
昨年12月、政府は貸金業規制法の一部改正を受け、内閣官房に多重債務者対策本部を設置し、借り手対策の課題を検討するため有識者会議を設け、そこでの意見取りまとめに基づき、ことしの4月20日に多重債務問題改善プログラムを決定しています。その主な内容は、借り手対策への取り組みが必要であり、自治体は住民への接触機会が多く、多重債務者の掘り起こしや問題解決に機能発揮が期待できるとした上で、自治体に対し必要と思われる課題への取り組みを要請しています。
都道府県には、みずからの相談窓口における相談体制、内容の充実、関係部署、警察、弁護士会、司法書士会及び多重債務者支援団体による多重債務者対策本部または協議会の立ち上げ、市町村ネットワークづくりの支援などが要請されています。また同時に、多重債務問題解決として、セーフティーネット貸し付けの提供の検討、金融経済教育、消費者教育の強化、ヤミ金撲滅に向けた取り締まりの強化などが課題とされています。
そこで、環境生活部長にお尋ねをいたします。
多重債務者問題に対する基本的な姿勢、考え方はどのように持っておられるのでしょうか。
県としての今後の方針はどうなのでしょうか。プログラムで要請されている多重債務者対策協議会の設置とその構成はどうするのか。一刻も早く立ち上げることと、広く住民団体への参加を呼びかけ、多重債務者の声が反映できるような対策協議会にすべきではないでしょうか。
相談窓口の整備強化をどうするのか。担当の専任者を設け、庁内や振興局をつなぐネットワークづくりを進め、多重債務者の掘り起こしと相談員へのつなぎ、県民からの多重債務専用のホットラインの創設も考えられます。市町村への支援や解決までのフォロー体制づくりも必要ではないでしょうか。
セーフティーネット貸し付けについて。現在、社会福祉協議会の生活資金、母子寡婦福祉資金、市町村での小口貸し付けの制度があります。これらは特定の目的での貸し付けとなっていて、多重債務者の解決までの生活つなぎ資金のような位置づけが、今後検討が必要となってくるのではないでしょうか。
県民の金融経済教育、消費者教育の中で、多重債務問題について知識の普及と発生の予防につなげていくことが課題とされています。どのように取り組んでいくのか。
貸金業者への規制が強まることから、ヤミ金など悪徳業者の横行が懸念をされます。取り締まりや被害予防への対策の強化はどのように考えられているのか。この点は警察本部長から御答弁をお願いいたします。
以上で、私の第1問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(中村裕一君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 前知事の官製談合・汚職事件の判決を受けまして、事件の総括と県民への説明に関するお尋ねでございましたが、まず第1に、再発防止策については既に実施の段階にございます。
それから、県といたしましては、これまでも申し上げてきたとおり、判決が確定し、証拠書類等が明らかになった段階で十分精査し、事実関係を把握した上で県のルールに従って責任を問うべきものは問い、また損害賠償請求についても適切に請求していくなど、県の対応について県民の方々の御理解をいただけるよう、きちんと事件のけじめをつけたいと考えております。
次に、新長期総合計画についてでございます。この基本的な考え方についてのお尋ねがございました。
暮らしを取り巻く現状の認識をどう見るかということでございますが、就労と子育てが両立しにくい社会環境などのもとで出生数が減少していること、それから、高齢化率が全国10位で、しかもひとり暮らし高齢者が増大していること、医師が地域的に偏在し、特定診療科での医師が不足していること、また経済面では、1人当たり県民所得が全国33位であり事業所数や従業員数も減少傾向にあることなど、克服すべき課題も少なくないと認識しております。
新長期総合計画は、行政と県民がともに推進することで実現できるものと考えております。このため、策定に当たりましても、有識者や市町村長との議論、広報紙等を活用した県民からの意見募集などを通じ、行政と県民がこれら現状の認識を深め、共同して課題解決に向けての検討を進めることで県民と共有できる計画にしてまいりたいと考えております。
新長期総合計画には、和歌山県が目指す将来像と和歌山の元気の創造に向けて取り組むおよそ10年間の施策の基本方向を盛り込んでいくこととしておりますが、時代の変化が激しく、計画との乖離が大きくなれば改定等をしていくことも必要と考えております。
計画に基づく施策の実施に当たりましては、厳しい財政状況にあることから、年度ごとに事業評価手法を取り入れた施策検討を行い、推進してまいりたいと考えております。また、県民みんなで描く共通の目標設定や県民にわかりやすい計画づくりの視点から、必要な数値目標を掲げることとしております。
なお、各分野の基本計画につきましては、その基本部分を新長期総合計画に盛り込んでまいりたいと考えております。
○議長(中村裕一君) 商工観光労働部長永井慶一君。
〔永井慶一君、登壇〕
○商工観光労働部長(永井慶一君) 新長期総合計画における中小零細商工業と県民の雇用につきましてお答えいたします。
平成18年事業所・企業統計調査によりますと、県内の事業所数の減少率は全国平均を上回り、小規模企業の割合が大変高い中で小規模企業の減少が顕著であり、地域経済、地域社会を支える中小零細企業の存続が大きな課題であると受けとめてございます。
そこで、新長期総合計画では、1、地域産業の経営革新などによる成長力の強化、2、地域資源を活用した新事業、新産業の創出、3、産学官連携などさまざまな機関との連携強化などにより事業活動が継続でき、さらに発展が可能な産業づくりを目指してまいりたいと考えてございます。
具体的な方向といたしましては、経済のグローバル化に伴い競争力が低下している地場産業では、産地の方々と十分協議しながら市場競争力の強化を図るための新商品開発や販路開拓に対する効果的な支援策を検討してまいりたいと考えてございます。
また、商店街振興に関しましては、まちづくりと一体となった取り組みが極めて重要となっていることから、中心市街地の活性化や少子高齢化対策、地域コミュニティーの形成などの地域づくりに取り組む市町村を支援し、地域住民が魅力を感じ得る商店街づくりを目指してまいりたいと考えております。
次に、県民の雇用と所得についてでございますが、本県の将来を担う若者がみずからの可能性に挑戦し、ふるさとで生き生きと働いていける社会づくりを目指してございまして、新長計では、ジョブカフェ・わかやまを拠点とした若者の雇用対策を主要施策に位置づけてまいりたいと考えてございます。
また、障害者など就職を希望しながらその機会に恵まれない方々については、福祉部門との連携のほか、さまざまな取り組みを検討してまいります。
さらに、若者の職業意識の醸成や非正規労働者に対するスキルアップなどの施策と成長性の高い企業づくりの施策が相まって効果を上げることで雇用の安定化につなげられるものと考えてございます。
いずれにいたしましても、まちづくりと一体となって県内に働く場所をふやすことが県民所得の向上、ひいては格差社会の是正につながるものと考えており、雇用の確保を主眼として検討を進めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(中村裕一君) 福祉保健部長井畑文男君。
〔井畑文男君、登壇〕
○福祉保健部長(井畑文男君) 新長期総合計画についての県民のセーフティーネットづくり、特に医療保険制度についてお答え申し上げます。
県民のセーフティーネットづくりにつきましては、県民の皆さんが、いつでも、どこでも、ひとしく保健や医療についてのサービスが受けられることを目指していくものであります。これを支える医療保険制度は、国民皆保険のもと、相互扶助によって成り立っており、被保険者が保険料を出し合い医療を受けられることを保障している制度であります。
運用面では、この保険料の収納確保のために資格証明書があります。資格証明書の発行には除外規定があり、御指摘のありましたように、障害者自立支援法に基づく自立支援医療費や結核予防法に基づく医療費など、国の公費負担医療対象者と災害その他政令で定める特別な事情がある者は資格証明書の交付対象者から除かれてございます。
資格証明書の適切な運用については、市町村に対し徹底を図っているところであり、そういったことも含め、セーフティーネットとしての医療保険制度が今後とも機能していくことを前提として長期総合計画を策定してまいりたいと考えてございます。
次に、医療改革と後期高齢者医療制度についてでございます。
まず、制度の広報と県民の意見の反映でありますが、後期高齢者医療制度の施行は大きな制度変更であり、住民に十分周知することが重要であると考えてございます。
現在、後期高齢者医療広域連合と各市町村が連携を図り、制度周知の広報に取り組んでいるところですが、県といたしましても、県の広報紙やマスメディアを利用して積極的に広報を展開していきたいと考えてございます。また、国におきましても、リーフレット、ポスターの作成及び政府広報の実施が予定されています。
なお、保険料につきましては、県民の代表として、各市町村議会から選出された議員により構成されます広域連合の議会において検討がなされ、本年11月を目途に条例で決定される予定となっておりますので、決定後、周知ができるよう、広域連合、市町村と連携を図りながら取り組んでまいります。
次に、保険料と減免制度についてでありますが、後期高齢者医療制度の保険料は、患者自己負担額を除いた保険財政の1割を負担することになってございます。被保険者の保険料負担能力に応じて賦課される応能分(所得割)と、受益に応じて等しく被保険者に賦課されます応益分(被保険者均等割)から構成され、個人単位で賦課されます。保険料には低所得者の方などへの配慮もなされているところです。
具体的な保険料につきましては、先ほどもお答えいたしましたとおり、後期高齢者医療広域連合が保険料の試算を行った上で、今年11月を目途に広域連合条例で制定する予定となっておりますので、県におきましても、その時点でモデル的な試算を行いたいと考えてございます。
また、保険料の減免につきましては、広域連合の条例で定めることができることになってございます。県といたしましては、来年4月に始まる後期高齢者医療制度について適切な運営が行われるよう、広域連合に助言を行ってまいります。
次に、資格証明書の発行についてでありますが、後期高齢者医療制度では、保険料が徴収され財源を確保すること及び被保険者間の負担の公平を図るという観点から、国民健康保険制度と同様に短期被保険者証及び資格証明書の交付制度が導入されます。資格証明書は、特別な事情がないにもかかわらず保険料を長期間滞納した被保険者に交付されるものであり、短期被保険者証は、納付相談、指導を行うために有効期間の短い被保険者証を交付するものであります。
県といたしましては、必要な医療を受けられないということがないように、広域連合及び市町村に対し、被保険者と十分話し合いを持ち、滞納者の状況を適切に把握しながら納付相談を行うよう助言を行ってまいりたいと、そのように考えてございます。
最後に、療養病床の削減についてでございます。
本年8月1日現在、県内には医療療養病床が1894床、介護療養病床が828床あり、2304人の方々が入院されております。このうち、医療の必要性が低いとされる6割程度につきまして、介護老人保健施設等への転換を進めることとなる見込みでございますが、療養病床再編後の医療療養病床の目標数につきましては、医療費適正化計画において、国の参酌標準を踏まえつつ、県独自の高齢化の進展なども勘案し、設定することとしてございます。
このため、国において、入院患者にできるだけ負担をかけず継続して適切なサービスが提供できるよう、各医療機関の療養病床の円滑な転換を進めるため、医療機能強化型の老人保健施設の創設を初め種々の支援策が講じられているところでございます。
県といたしましても、本年中の策定を予定しております地域ケア体制整備構想において、医療機関の意向等十分協議を行いながら平成23年度末までの転換計画をお示しするとともに、この構想を平成20年度に策定いたします次期介護保険事業支援計画に反映させることとしてございます。
今後とも、介護を必要とする方々の状態に即した適切なサービスが提供されるよう、計画的な体制整備の推進に努めてまいりたいと、そのように考えてございます。
以上です。
○議長(中村裕一君) 危機管理監杉本雅嗣君。
〔杉本雅嗣君、登壇〕
○危機管理監(杉本雅嗣君) 新長期総合計画における震災・災害対策についてお答えいたします。
新長期総合計画における震災・災害対策についてでございますが、予防、応急、復旧のそれぞれの視点を踏まえた総合的な防災対策に取り組み、県民1人1人が自分自身を災害から守ること「自助」、地域社会がお互いを災害から守ること「共助」、国、県、市町村など行政が住民を災害から守ること「公助」、この自助、共助、公助が相互に連携し合う防災協働社会を構築してまいりたいと考えております。
被害を最小限に抑えるためには、県民の皆さん1人1人が取り組む自助と、地域や自主防災組織による共助が大変重要であります。防災講座の開催などを通じ、県民の皆さん1人1人が住宅の耐震化や家具の転倒防止対策などに取り組んでいただけるよう、防災意識の一層の向上に努めてまいります。
また、これまで自主防災組織の育成に取り組んでまいりましたが、今後より一層の活動強化を図るため、中心的な担い手となる地域防災リーダーを養成するとともに、防災のまちづくりに積極的な取り組みを紹介するなど、市町村と連携を図りながら地域防災力の向上に努めてまいります。
○議長(中村裕一君) 環境生活部長楠本 隆君。
〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 多重債務者問題に係る2点の御質問にお答えを申し上げます。
まず、多重債務者問題に対する基本的姿勢についてでございます。
我が国における消費者金融の利用者は、少なくとも約1400万人、そのうち多重債務状態に陥っている人、200万人を上回ると言われております。その陥った原因は個々においてさまざまな事情があるものと思われますが、現在、多重債務問題が深刻な社会問題であると認識をしております。
国におきましては、議員御指摘のとおり、貸金業法の改正によりまして、貸し付けにおける総量規制の導入、あるいは出資法の上限金利の引き下げ等の施策が講じられたところでございますが、今後この問題の解決が健全な社会形成に極めて重要であると考えております。
次に、2点目の今後の方針についてでございます。
今後の取り組みといたしましては、相談窓口の整備強化、あるいは金融経済教育、セーフティーネットの構築、またヤミ金融対策などが重要であると考えております。このため、県におきましては、多重債務者対策協議会の年度内設置に向けた検討を行っているところでございますが、今後、この協議会におきましてさまざまな議論を行っていく予定でございます。多重債務者の方の意見を直接十分反映されるよう努めてまいりたいと考えております。
また、相談体制につきましては、既に県の相談窓口におきまして、弁護士相談などにより債務の任意整理あるいは自己破産などの解決方法を助言しているところでございますが、今後とも庁内ネットワークや市町村との連携を図りながら、さらなる充実に努めてまいりたいと考えております。
また、金融経済教育につきましては、現在、教育委員会と連携して取り組んでいるところでございますが、県民の皆様を対象にした講座などには多重債務に詳しい講師を派遣するなど、多重債務に陥らないような教育、啓発にさらに取り組んでまいりたいと考えております。
また、セーフティーネットの構築につきましては、今後、協議会の中で既存事業の活用などを含めた議論を行ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(中村裕一君) 警察本部長鶴谷明憲君。
〔鶴谷明憲君、登壇〕
○警察本部長(鶴谷明憲君) ヤミ金融対策の強化についてお答えします。
現在、警察では、ヤミ金融事犯に対し警察の総合力を発揮した強力な取り締まりを推進するため、平成15年8月15日付で警察本部生活環境課に、生活安全部長を取締本部長とした和歌山県警察ヤミ金融事犯取締本部を設置し、ヤミ金融事犯の検挙、被害防止のための口座凍結、広報啓発、被害相談等の諸対策を推進中であります。
本年1月20日に罰則が強化され、その結果、検挙人員は、平成18年中は8名であったのが本年は8月末で11名となっており、口座凍結にあっては、平成18年中は11件であったのが本年は8月末で19件と、昨年からことしにかけて検挙人員、口座凍結数ともに増加している現状であります。
議員御指摘のとおり、今後ともヤミ金融の横行が懸念されるところであり、警察としましては、今後も引き続き取締本部を中心に、警察の総合力を発揮した取り締まりや口座凍結等の諸対策を強力に推進するとともに、県商工観光労働総務課と連携を強化して、各種相談等にも積極的に応じていく所存であります。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再質問を許します。
43番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 官製談合・汚職事件の問題ですが、知事からは県民に説明をするという言葉は聞こえてこないんですが、県としてルールに基づいて適切に対応していくと、そして県民の皆さんにも理解を求めていく、県としてのけじめをつけたいということですが、県民としても、この問題についてはけじめをつけたいと思うんですね。一体この事件がどういう事件であったのか、私たちは知る由もないとこもたくさんあるわけです。それをやっぱり全容解明を求めてきたというのは、県民にとってもこの事件は大事な問題であって、再びこういうことが起こらないようにするためには県民としてもどうすればいいのかということはともに考えていきたいと思うんですね。そういう点で、きちんと総括をして、文書化もして、県民にも説明をしてもらいたいということを申し上げたわけですが、いかがなもんでしょうか。同じ答弁になるんでしょうか。
それと、長期総合計画は非常にもう先行きが不透明な中でつくっていかなくてはいけないという大変な状態があるんですが、今、県民の暮らし、中小商工、零細業者をめぐっても、医療を必要とする人をめぐっても、大変な状況にあります。そういう県民の暮らしに心を寄せていただきまして、ぜひそういった暮らしが底上げできるような──これは、制度をつくるだけではだめだと思うんです。申し上げましたように、県の職員の皆さんが本当に公務員として県民の生存権、暮らしをどう支えていくのかということを本気になって考えていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
多重債務の問題で、年度内に設置をしたいということですが、これ、一刻も早く設置をして、県としての相談窓口もきちっと開いて多重債務者に対応できるように。
私は、今まで多重債務問題というのは、借りたほうが悪いと、借りた者の責任で解決しなくてはいけないということを思ってきた時代があるわけですが、しかし、今日の様子を見ますと、それが社会問題、自治体にとっても見過ごせない問題になってきてるという、ここの認識のもとでこれを解決していくということが県民の暮らしにとっても非常に大事な問題になってきているんだという認識のもとで事に当たっていただきたいと思うわけです。
一刻も早く──3年後には新法が施行されるわけですが、その間にも多重債務者はどんどん生まれてきますので。総量規制ということになりますと、多重債務を抱えながら借りかえができないと。じゃどうするのかということで、ヤミ金に走るとか違法金融が横行するということも十分それは考えられますので。そうなりますと、さらに県民が不幸になります。そういうことが起こらないようにしっかりと対応していただきたいと、以上、要望として申し上げておきたいと思います。
以上で終わります。
○議長(中村裕一君) 1問目の、その……(「要望、要望や」と呼ぶ者あり」)──要望ですか。ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前11時58分休憩
────────────────────
午後1時2分再開
○副議長(新島 雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
17番岸本 健君。
〔岸本 健君、登壇〕(拍手)
○岸本 健君 ただいま議長からお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
このたび、県民の皆様に御支持をいただき、多くの先輩議員の皆様方が築いてこられました歴史と伝統ある和歌山県議会に初めて参画させていただきましたこと、また本日、一般質問の機会をいただきましたことに、心より感謝を申し上げます。私自身、微力でありますが、県勢発展のため一生懸命に取り組んでまいる決意でございます。どうか、先輩・同僚議員の皆様はもちろん、仁坂知事を初め県庁の職員の皆様の御指導、御鞭撻を心からお願いを申し上げます。
まず、第2期地方分権改革についてですが、第1期の地方分権改革におきましては、地方分権推進一括法の施行によりまして中央集権の象徴でありました機関委任事務が廃止され、国と地方との関係は上下・主従の関係から対等・協力への関係へと法の上では変わりがありました。
しかしながら、税財政面での分権化は果たされないまま先送りとなりました。そして、第1期改革の置き忘れと言われた財源移譲の壁を突破すべく、小泉内閣により三位一体改革が提唱され、3兆円の税源移譲が行われたのは記憶に新しいところであります。
この三位一体改革による国から地方への税源移譲の実現は画期的なものであり、まさに戦後の自治史において初めてのこととして歴史にさん然と残るはずであったのですが、現実として、地方自治体の間からはこの三位一体改革を評価する声は残念ながら余り聞こえてきません。
それはなぜかといえば、皆様も御承知のことと思いますが、3兆円の税源移譲とともに4兆円の国庫補助負担金の削減、さらに5.1兆円に上る地方交付税の削減が行われたからであります。
補助金の削減、地方交付税の縮小、税の移譲はバランスのとれたものとして行うべきものであったにもかかわらず、地方の財源は結果として6兆円以上の純減という著しくバランスを欠いたものになりました。地方自治体に大きな弊害と不信を残すことになったのは、非常に残念なことであります。三位一体改革がいつの間にか国の財政健全化に置きかえられたという気がいたします。
この交付税の大幅な減は、地方全体を衰退へと向かわせるとともに、税源移譲により税源の偏在が増大したことも重なり、地域間格差という新たな、そして大きな問題を生じさせました。一方で、不交付団体である東京都を中心として大都市圏は、好調な税収増を背景に福祉政策などの充実を図るなど、対照的な光景が見られております。こうした結果は、地方分権とは単に「強い者が勝つ」の世の中をつくっただけという感想を抱いている市町村長さんも多いのではないかと思います。
繰り返しになりますが、三位一体改革の問題点は、大幅な交付税の削減が行われたため単なる地方の切り捨て策となったこと、税源移譲は画期的であったが、都市と地方の格差是正が不十分だったため不公平感だけが残ったのではないかということがあります。
私は、地方分権の推進を決して否定しているものではありません。第2期の地方分権改革においては、今までの反省の上、税財源の格差を生じさせないように税財政を抜本的に見直し、地方交付税の総額確保をした上で自治体の自由度を高め、地域の個性を生かした活性化を図ることにより地域間格差の問題も解決していくべきだと考えております。
そこで、第2期の地方分権改革ですが、重要になってくるのは、権限の移譲とともに、やはり税財源の充実確保ということになってくると思うのですが、そのためには、地方の実情を国にきちっと理解してもらうとともに、国民に地方分権の意義や地方の取り組みを正しく理解していただくことが大事であると思います。
三位一体改革のときは、一部の団体の不祥事を殊さらに大きく取り上げ、地方の無駄遣いがあたかも交付税に原因があるようにマスコミ等で報道されました。交付税削減の国民の合意みたいな流れになってしまいました。今回こそは偏った報道で世論が間違った方向に行かないように、地方のほうも国よりずっと真剣に行革に懸命に取り組んでいるということや、交付税の削減が国民生活に直結するということをもっと効果的にアピールしていくことが必要だと考えます。そして、全国知事会など地方六団体で一致団結して取り組み、地方にとって不利にならないように、真に地方のための地方分権改革となるよう働きかけていくべきだと思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
それから、地方全体の不利にならないように働きかけるのは当然ですが、地方の間にも格差が生じております。今回の税源移譲により都市と地方の財政力格差がさらに増大したと考えられますが、今後、地方税源の偏在度あるいは格差是正に向けて県としてどのように国に働きかけ、また提言を行っていくのか、あわせて知事にお伺いをいたします。
今後は、我々議員も地方の行財政運営に大きな影響が出る国の政策決定に際しては、常に関心を持って意見を述べていかなくてはならないと思います。県の役割として、地方の財政を直撃するような国の政策案件については、地方の実情を無視した間違った方向に行かないようにするのがいかに大事かと感じている次第であります。
こうした中、和歌山地方税財政協議会が設立され、10月1日に講演会を開催する旨の御案内がありました。私もぜひ参加したいと思いますが、税財政の制度や国の動きというものを詳しく知る機会はなかなかないので、こうした講演会を通じて地方の皆さんが共通認識を持ち、これによって提言すべきところは提言していくことが非常に大切なことで、まさにタイムリーな取り組みだと思います。こうした取り組みを通じて、我々1人1人が理解を深めるとともに、連携を深めていきたいと考えております。
次に、財政健全化法についてであります。
地方公共団体の財政の健全化に関する法律が平成19年6月22日に公布されました。従来は、財政状況の悪化した地方公共団体については地方財政再建特別措置法によって財政再建制度が用意されてきたわけですが、これは、御承知のとおり、赤字が生じた団体がみずから申し出て財政再建計画を策定し、総務大臣の同意を得ることにより計画的な財政再建を行う仕組みであります。
再建法によって再建するかしないかは、あくまでも当該地方公共団体の自主性にゆだねられておりますが、標準財政規模に対する赤字の比率が道府県で5%、市町村で20%以上となっているものについては起債の制限がかかることになっております。このような現行制度に比べ、今回の財政健全化法による新しい制度は、夕張市の教訓などを踏まえてつくられたと聞いていますが、どういった特徴、ねらいがあるのでしょうか。
また、最近、和歌山市がこの法律の成立を受けて財政健全化に取り組み出したとの報道がなされていますが、本県については、普通会計以外の会計を連結した指標やその他の指標により財政健全化計画策定の対象となるおそれがあるのでしょうか。あわせて総務部長にお伺いをいたします。
続いて、食育推進についてであります。
和歌山県の基幹産業は農林水産業でありますが、そうであるならば、和歌山県は先進県でなければならないと感じております。そう感じられないのが現状ではないでしょうか。
農業は、食料を安定的に供給することや国土の保全等、国民の生活に直結する重要な役割を担っています。しかし、国内の食料自給率は大幅に低下しているほか、農産物の輸入自由化による国内農産物の生産者価格が低迷、農家の老齢化の進行、後継者不足など、生産者を取り巻く環境は大変厳しいものがあります。それぞれの生産者はもちろんでありますが、和歌山県においても競争力強化、生産性向上、後継者の育成に向けた取り組みをしていかなければなりません。
先日、わかやま食育推進プランを推進するため、県の食育推進会議が行われ、今後、県では、ラジオを使って食育の重要性をPRするほか、地域の農産物や伝統料理を紹介する催しを行うなど、いろいろな推進活動を計画しているということを伺いました。
食育とは、国民1人1人が生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等が図られるよう、みずからの食について考える習慣や食に関するさまざまな知識と食を選択する判断力を楽しく身につけるための学習等の取り組みであります。
「食育」という言葉は、明治31年に石塚左玄という方が「通俗食物養生法」という本の中で、「今日、学童を持つ人は、体育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき」、また明治36年には、「報知新聞」編集長であった村井弦斎が連載してきた人気小説「食道楽」の中で「小児には徳育よりも、智育よりも、体育よりも、食育が先。体育、徳育の根元も食育にある」と記述しております。食育というのは大変古くからのものであると感じております。やはり、食育は子供たちに大変必要であると感じております。
あるハンバーガーの会社の戦略の1つに、子供のときに毎日ハンバーガーを食べた子供は大人になっても毎日ハンバーガーを食べるというのがあります。家庭での食育が原点であると考えますが、学校給食はまさに毎日教育の場で食習慣、食文化を身につけていく場であると考えております。
聞いた話ですが、子供がある日、学校から家へ帰ってきまして、「きょうの給食はカレーとゼリーだった」と。母親は子供の好きなもので、「大変よかったね」と言ったそうです。よくよくその話を聞いておりますと、子供はゼリーはデザートとしてではなくて、おかずのつもりで食べたと言うそうです。どのような味がしたのか少し興味深いですが、献立がどうだったのか、給食指導ができていないのか、家庭での食育ができていないのかと考えさせられる話でありました。
また、食文化の多くは、その地域でとれる農産物を食材として利用することで成り立ってまいりました。その地で生産される農産物は、昔からそこに住む人にとって身体に一番合っていると言われております。これが地産地消の本来の目的であるとも感じております。
まずは、学校給食から地産地消をしていくことが必要ではないでしょうか。学校給食に地場産品を活用することは、新鮮で安全な食材を確保することにより安心・安全であるということ、地元の産業に直接還元される経済効果、また学校教育の中で、総合学習や給食指導などで子供たちが生産者と交流し、食の大切さを知り、地元の産業を学ぶことなどで地域理解や郷土、伝統食文化への関心を深める機会になるのではないでしょうか。
県によっては、学校給食で主食の御飯、それから牛乳はすべて県内産を使用しているところもあります。
学校給食は、市町村の教育委員会の役割であります。給食現場で県外産品や輸入品ではなく地場産品を優先的に使うには、既存の食材流通を変えなくてはなりません。行政が動いて、きちんとした調査のもとで流通計画をつくれば地場産給食が実現するのは可能ではないでしょうか。県内だけでなく、安心・安全、そしておいしい給食のブランド化をし、産地を持たない都市部と契約すれば、自給率はもちろん、和歌山への経済効果も考えられるのではないでしょうか。
そこで、お尋ねをいたします。
県は、わかやま食育推進プランを作成されていますが、これまで食育の推進にどのように取り組んでこられたのか、また今後どのように取り組まれるのか。
全国的な食育運動が展開されるよう毎年6月を食育月間、運動の一定の定着を図るため毎月19日を食育の日とし、また、和歌山県では食育運動の継続性を高めるために毎年10月を和歌山県食育推進月間として運動をするということですが、具体的にどのような運動なのかをお伺いいたします。
和歌山県においても地場産物による学校給食は行われているようですが、今後どのような取り組みをなされていくのか、どのような考えがあるのかをお伺いいたします。
また、学校給食における地場産自給率を調査しているのか、していないのか。しているのであれば、どれくらいの自給率か。また、調査していないのであれば今後する予定はあるのか。お伺いをいたします。
学校給食については、給食費、食材購入費等たくさんの課題があると思われますが、未来を担う子供たちにとって重要でありますし、県がリーダーシップをとって和歌山県民全体で食育、地産地消に取り組むよう、すばらしい取り組みをしていただきたいと思います。
次に、有機農業の推進についてであります。
農産物は、消費者に対して安心・安全でなくてはなりません。また、環境や生態系を考え、化学物質の利用をやめ、旧来のような天然の有機物による肥料などを用いるなど、自然の仕組みに逆らわない有機農業があります。
近年、国内では重要な家畜疾病や集団食中毒の発生、食品表示や農薬にかかわる不祥事など、消費者の信頼を損なう事件・事故が続発し、食の安全・安心の確保は急務となっております。
食の安全への期待から有機農産物に対する消費者のニーズは高く、また、さまざまな場面で環境に対する国民の意識は高まっており、生産性と経済性の向上を追求してきた近代農業とは異なる理念に基づいて、土づくりを十分に行い、自然と調和することによって環境負荷を軽減するように行われています。農業においての生産活動が環境に及ぼす影響は無視できない状態となってきていることから、有機農業を含む環境保全型農業の重要性はさらに高まっているように感じます。
現在、有機農産物を取り扱う業者やデパート、スーパーマーケットがふえ、少し高くても有機農産物を買うという消費者もふえているようです。有機・無農薬野菜、天然魚などのオーガニック食材だけを使うレストランも人気があるようであります。
私の住む紀の川地域は果樹や野菜の栽培が盛んな地帯でありますが、このような消費者の意向を受け、環境に優しい農業への取り組みの機運が高まっております。有機農業の取り組みについては、まだまだ点の広がりしかございませんが、指導員との情報交換を行うとともに、栽培方法の工夫や独自の販路開拓をするなど、頑張っておられる方が大変多くおられます。
こういった方々を支援するため、法律として、昨年の12月15日に超党派の議員立法として国会に上程され、全会一致で採択された有機農業の推進に関する法律が施行され、また、これを受けて国の有機農業の推進に関する基本的な方針がことしの4月27日に公表され、これに対する国の予算も10倍に推移するなど、有機農業の推進は、今や国を挙げた施策として取り組まれるようになりました。
こうした状況の中、以下の点についてお尋ねをいたします。
そもそも有機農業とはいかなる農業であると認識しておられるか。また、それが今日においてかくも重視せられるように至った理由、有機農業が本県内においてどの程度普及しているかについてお伺いをいたします。
先ほどの法律及び国の方針は、有機農業にかかわる技術体系の確立及び普及、新たに有機農業を行おうとする者への支援、有機農業により生産される農産物の流通または販売への支援を初め、地方公共団体における組織内の連携体制の整備とあわせ、有機農業者や民間団体、消費者等の連携体制の構築など、有機農業の普及推進にかかわる多様なプログラムを展開することとしていますが、これらの施策を本県で実施するに際してどのように取り組まれる意向か、お伺いをいたします。
次に、中山間地の果樹園の圃場整備についてであります。
和歌山県の農業では、中山間地域の占める割合が高く、耕地面積では国の42%に対して58%、経営耕地面積では国の39%に対して67%と、さらに高くなっております。中山間地として、和歌山県内では29市町村を中山間地としております。しかしながら、和歌山県の中山間地域では、全国に誇るべき果樹を中心とした農業を展開していることもあり、耕地10アール当たりの生産農業所得は全国平均の倍以上の金額となっております。これにより和歌山県の農業が支えられているとも言えます。
しかし、近年、農家の高齢化、担い手不足等で多くの荒廃農地が見られるようになってまいりました。立地条件の悪い園地が、基盤整備のおくれが課題であり、それを解消しないと規模拡大も利用集積も実現できない。後継者を初めとする受け手も必要であるが、実態は、立地条件が悪い場合や手入れの度合いの違う園地が貸し手から出され、借り手のニーズと合わない状況もあります。反面、圃場整備を行った地区は若い担い手も多くなり、熱心に農業に取り組んでいる地域もあります。
和歌山県は、全国的に見ても圃場整備がおくれております。その中でも、特に中山間果樹地帯の整備がおくれております。原因の1つは、地元負担金と、整備後、永年作物のため水田地域と違いすぐに収益が得られないことが大きな要因となっております。優良農地、担い手の確保、生産性の向上には圃場整備が必要不可欠と考えますが、中山間地果樹園の圃場整備について、整備事業の推進、農家への負担軽減策などのお考えをお伺いいたします。
最後になりましたが、家族経営協定についてお伺いをいたします。
定義として、農業経営の近代化を促進し、魅力ある職業とするためには、農業経営に携わる家族員が経営目標、経営内において各人の地位及び役割を明確化し、収益配分等を話し合い、それぞれの意欲と能力が十分に発揮できる環境づくりをするとされています。特に、女性や若い農業者がそれぞれ個人として尊重され、経営のパートナーとして位置づけられることが重要であり、それを実現するため、家族農業経営における家族相互間のルールを家族みんなで話し合い、取り決めることとあります。
もちろん、この協定によって農業者年金の政策支援や配偶者の農業改良資金借り入れが可能になることなど、制度的なメリットがあるようですが、特段すばらしい制度であるならばかなりの農家が利用すると考えられておりますが、制度開始から現在まで和歌山県において締結した農家にとって効果はあったのか、有効なのか、また個々の農家からどのような声が出ているのかをお伺いいたします。
「これからは地方の時代だ」、そんな言葉を聞いたこともありましたが、実際の地方は大変厳しい状況であります。財政難を乗り切り、特に和歌山は基幹産業である農業に光を当て、未来ある躍動する和歌山の実現に向けて県を挙げて取り組んでいただきたいと要望するものであります。
以上をお尋ねいたしまして、私の質問といたします。御答弁のほど、よろしくお願いを申し上げます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(新島 雄君) ただいまの岸本健君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 第2期地方分権改革についての御質問でございますが、三位一体の改革により削減された補助金に見合うだけの税収が得られない自治体の財源保障機能を果たすべき地方交付税が大幅に削減された結果、全国のどこの地域に暮らしていても日本国民として受けるべき必要最小限の行政サービス──ナショナルミニマムと申し上げますか──の提供ですら支障を来しかねない状況に至っているというのが現状ではないかと思います。
私は、地方分権とは、単に国から地方へ権限や財源を移すことだけではなくて、大事なことは、住民がみずから幸せになるためにさまざまな選択を自分ですることができる社会を実現することだと考えておりますが、このため、全国知事会などと連携をしつつ地方交付税の総額を確保することが県民の皆様の生活を守るためには必要であるということを大いにPRし、どの地域に暮らしていても勇気と希望がもたらされる地方分権改革となるように国に働きかけてまいりたいと思います。
また、地方財源の偏在性あるいは格差是正につきましても、地方がその責務に見合った財源を確保できるよう、地方消費税を拡充していくなど偏在度の小さい基幹税を中心とする地方税体系の構築とともに、財政調整制度を含め一体として議論すべきことなど、本年6月に国へ要望を行っておりますが、全国知事会を通じても提言しているところであります。今後ともこの趣旨に沿って頑張っていきたいと思っております。
○副議長(新島 雄君) 総務部長小濱孝夫君。
〔小濱孝夫君、登壇〕
○総務部長(小濱孝夫君) 財政健全化法についての御質問にお答えいたします。
まず、本年6月に公布された地方公共団体の財政の健全化に関する法律の特徴等についてでございます。
現行の財政再建制度については、一般会計等の実質赤字というフロー指標のみを用いていること、財政悪化を早期に防止する機能がないこと等の問題点が指摘をされておりました。そこで、新法は、現行制度を抜本的に見直し、長期負債などのストック面に着目した新たな指標を整備するとともに、財政悪化に至るまでの早い段階から自主的な財政健全化計画の策定を義務づけており、財政状態の多面的把握と地方の自己規律による財政再建の促進をねらいとしたものと認識しております。
次に、本県が財政健全化計画の策定を義務づけられるおそれがあるかという御質問がございました。
新法では、財政健全化計画の策定を義務づける規定については、平成20年度決算から適用することとされております。また、新たな財政指標の算出方法及び財政健全化計画の策定が義務づけられる水準につきましては、年内に政省令によって示される見込みでございます。したがって、平成20年度決算以降、本県が財政健全化計画の策定を義務づけられることになるおそれがあるかどうかということにつきましては、現段階では明確にお答えすることはできません。
しかしながら、知事の提案説明にもありましたように、早急に今後の財政収支見通しを取りまとめる予定でありますので、財政健全化計画の策定が義務づけられる水準等が示され次第、本県において中長期にわたりその水準をクリアしていけるかどうか検証してまいりたいと考えております。
○副議長(新島 雄君) 農林水産部長下林茂文君。
〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 農業問題に関連して、4点についてお答えをいたしたいと思います。
まず初めに、第1点目の食育の推進状況についてでございますが、食育につきましては、農業振興を図る上でも非常に重要であるというふうに考えてございまして、本県では地産地消を進めるなどの観点から、平成16年に県独自で食育推進協議会を設置いたしまして食育に対する取り組みを始めてまいってございます。
その後、国におきまして食育基本法が制定をされまして、昨年9月には、新たに県条例に基づく県食育推進会議を設置いたしまして、お話ございましたように、本年3月に「食べて元気、わかやま食育推進プラン」を作成してございます。
現在、この計画に基づきまして、関係部局や教育委員会、また各種団体等と連携をしながら、学校給食などさまざまな取り組みを進めてございます。
食育月間につきましては、本県の食材が豊富な時期であり、県民の関心を持ってもらいやすいこと、また国の食生活改善普及運動が既に10月に行われていることなどから、国の食育月間とは別に、県独自で10月を和歌山県食育推進月間と定めてございます。特にこの期間中につきましては、「県民の友」10月号での特集記事の掲載を初めといたしまして、路線バスの中づり広告、あるいはチラシの配布による街頭啓発、またテレビでの特集番組やラジオでのスポット放送など、各種の広報媒体を利用した啓発を行うこととしてございます。
また、多くの民間団体の方々が食育の普及啓発に取り組まれてございますので、今後、これらの方々や市町村との一層の連携を図りまして、幅広い県民運動として食育を推進してまいりたいと考えてございます。
2点目の有機農業の推進についてでございますけれども、県といたしましては、これまでも安全・安心な和歌山の農産物の生産販売ということを基本にいたしまして、化学農薬や化学肥料に過度に頼らない環境保全型農業を積極的に推進してきてございます。こうした中で、現在、減農薬等に取り組む農業者として認定をしてございますエコファーマーが1454人、また有機JAS認証を受けた農家が84戸ということで、近畿各府県の中でも多くの取り組みが見られてございます。
有機農業につきましては、無農薬での栽培の難しさということもございまして不安定な面もございますが、安全な農産物への国民の関心がますます高まる中で今後取り組むべき課題であるというふうに認識をいたしてございます。このため、県では、お話のございましたように、有機農業の推進に関する法律の成立を受けまして、有機農業者を初め有機認証協会など関係団体と県の試験研究機関等による検討会を9月10日に開催をいたしまして、今後この検討会での意見を踏まえながら有機農業の施策に関する推進計画の策定に取り組むなど、関係者が一体となって有機農業の推進に努めてまいりたいと考えてございます。
次に、3点目の中山間地果樹園の整備についてでございますが、御承知のとおり、本県の樹園地は非常に急峻であるということもございまして、お話ございましたように、全国平均よりもその整備率は低位になってございます。こうした中で、県といたしましては、周辺林地も含めました急傾斜既成園の圃場整備など樹園地の再編整備に取り組んできたところでございますが、お話ございましたように、地元負担金の問題、あるいは工事期間中の収益の減少などの課題もございます。
このため、今後、老木園の若返りや優良品種への転換など改植事業との一体的な推進、また建設発生土の有効活用による負担軽減を図るとともに、JAや市町村の協力を得ながら農地流動化対策に取り組みまして、その所得確保に頑張っていきたいというふうに考えております。いわゆるソフト事業とハード事業を組み合わせることによりまして、果樹基盤の整備に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
4点目の家族経営協定についてでございますけれども、国の通達に基づきまして、平成7年度から、経営感覚を取り入れた新しい農業経営への脱皮を図るため、これまでの経営主を主体とした家族経営から構成員の役割を明確にした家族経営協定を推進してきてございます。その結果、現在の締結農家数は約1000戸ということでございまして、全国的に見ても高い水準となってございます。この結果から、農家の方々から理解も得ているのではないかというふうに考えてございます。
このような中、本年3月に家族経営協定実態調査を実施いたしまして、その中での回答でございますが、家族の役割分担が明確になった、あるいは労働意欲が向上し所得の増大につながった、また報酬や休日等を取り入れることにより後継者の確保ができたなどの回答もいただいてございまして、一応成果も上がっているのではないかというふうに考えてございます。
今後とも、家族内での話し合いを基本にいたしまして、家族経営協定を積極的に推進してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(新島 雄君) 教育長山口裕市君。
〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 学校給食における地場産物の活用についてお答えいたします。
学校給食への地場産物の活用は、学校における食育推進の大きな柱と考えてございまして、これまでも積極的な活用を啓発してきたところでございます。
平成17年度の文部科学省による学校給食における地場産物の活用状況調査におきましても、本県の使用率は33.7%となっておりまして、全国平均の23.7%を大きく上回る結果となっております。
また、県内4校の高等学校の農業関係学科等で生産・収穫された農産物を地域の小中学校に供給するなど、地域との連携や学校間の交流も図っております。
「食べて元気、わかやま食育推進プラン」におきましても、学校給食における地場産物を使用する割合を平成23年度までに40%に増加させるという目標を掲げてございます。
今後とも、学校給食を生きた教材としてとらえ、積極的に地場産物を活用し、学校での食育を推進してまいりたいと存じます。
以上でございます。
○副議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(新島 雄君) 再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(新島 雄君) 以上で、岸本健君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
18番山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 皆さん、こんにちは。
一般質問初日、最後の質問者として頑張らせていただきたいと思います。
さて、先般、安倍首相が辞任されましたが、唐突な辞任であって、多くの国民が驚くニュースだったと思います。今、ニュースなどを見ていても明るい話題がとにかく少ないのが気にかかります。最近でちょっと明るい話題と言えば阪神の奇跡の10連勝ぐらいかなというふうに思いますが、政治の話題は特に褒められるものは少なく、国民、県民にとって極めて大事な政治ですが、その信頼を大きく損なっている状況があります。
政治は、国民、地域住民の生命、財産を守るもの、そして未来への希望を与えるものと言われます。しかし、残念ながら現実はほど遠い状況となっています。政治が信頼されず、希望を与えられない。これは大変なことであり、希望のない国、地域に明るい未来はありません。
私自身、これまで8年間、多くの人の力をおかりする中で政治活動を続けさせていただいてまいりました。そんな中、さまざまな集会などを通じて気づいたことがあります。それは、ほとんどの人が今の和歌山の未来に明るい希望を感じることができていないということです。
「和歌山の未来は明るいと思いますか」、「和歌山に希望があると思いますか」、そういったことを質問したときに、胸に手を当てて正直に答えてもらうと、希望があるということで手を挙げてくれる人はほとんどいません。今の和歌山の延長線上に希望の持てる未来を感じている人はほとんどいないというのが現実だと思います。この現実をしっかりと受けとめて、これをやはり変えていかなくてはいけないんだと思っております。
希望がすべての出発点です。希望がないところには夢は育ちません。夢のない町には人が集まりません。人の集まらない町には希望が生まれてこないんだと思います。希望の持てる状況をいかにつくれるか、その思いを強く持って、この議会でも精いっぱい質問、提案をさせていただきたいと思いますので、当局の皆様にはぜひ誠意ある御答弁をよろしくお願いいたします。
それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従って順次質問をさしていただきます。
最初は、景観保護に向けた取り組みについて。
今、景観に関して多くの関心が払われるようになっています。景色、眺めといった意味を持つ景観は、貴重な地域資源といった視点も定着し、社会的にも景観保護の機運が高まっている状況にあります。
そんな中、一昨年には景観に関する法令も整備されるものとなりました。平成16年6月18日、法律第110号として景観法が公布され、同年12月17日に施行されています。これは、私たちの国で初めて制定された景観に係る総合的な法律となっています。この法令の施行も契機として、今後は私たちの地域でも景観を改めて地域の貴重な財産として保護・育成していく取り組みが求められます。
私たちの和歌山県は観光県であり、その恵まれた自然環境から生み出される景観は、とりわけ重要な地域資源となっています。特にその景観を含めた価値が認められた世界遺産を抱えているわけですので、景観保護に係る取り組みには積極的な状況が望まれます。
私たちの高野・熊野世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は2004年に登録されていますが、その登録対象地域となる紀伊山地は、豊かな降水量が深い森林をはぐくむ山岳地帯であり、太古の昔から自然信仰の精神をはぐくんだ地で、神仏習合思想の聖地として信仰を集めてきました。その背景には、深い山々が南の海に迫るという独特の地形や、両者が織りなす対照的な景観構成が大きく影響しています。このような特有の地形及び気候、植生などの自然環境に根差して、吉野・大峯、熊野三山、高野山の3つの霊場が生まれ、そしてそれらを結ぶ参詣道が形成され、世界遺産登録に至っています。
この私たちが誇る世界遺産については、地域の宝として将来の和歌山県民に大切に受け継いでいかなくてはならないもので、そのためにも周辺環境を守り、景観を守っていくことが求められます。
世界遺産には、危機遺産リストといったものがあります。この危機遺産リストというものは、世界遺産としての価値が失われる可能性のある、特に危機的な物件をリストアップして、登録抹消といった事態も視野に入れて警告されるものとなっています。
世界遺産登録は、あくまで、すぐれた自然や文化財をただリストに登録して終わる、そういったものではなくて、それを永遠に保護していくための条約です。そんな中、危機遺産リストに入れられる条件として、近年、景観の視点がクローズアップされるものとなっています。
ことし2007年7月時点で危機遺産リストには30件が登録されているんですが、最近ではドイツのケルン大聖堂が、状況の改善が見られなければ世界遺産から外すと強い勧告を受けるものとなりました。その理由は、私たちにとって重要な示唆を与えるものになっています。
ケルン大聖堂が世界遺産登録されたのは1996年ですが、2004年の中国蘇州における世界遺産委員会で危機遺産リストに入れられることになり、注目を集めました。その注目されたポイントは、景観が問題となっていたことです。それまでの危機遺産リストに入れられる事例の多くは、遺産そのものの価値が損なわれることが問題視されていましたが、ケルン大聖堂の場合は、近隣の高層ビルの建築計画による景観破壊が問題視されていました。遺産そのものの価値は変わらないのに周辺開発による景観破壊の問題を指摘するこの事例は、世界遺産保護に新たな視点を加えるものとなりました。
ケルン大聖堂の件は、勧告を受けたドイツ政府とケルン市が都市計画の一部を見直し、ビルの建築計画を撤回させたことで危機遺産リストから外してもらえることとなりました。
今、世界じゅうで世界遺産を監視し合う体制が強化され、広範な保護策が求められるようになっていて、特に景観問題は世界遺産を保護する上でも非常に重要な視点となっています。
さて、そんな中で、今、我々の世界遺産にも、景観の問題で忍び寄る危機があります。それは、現在急ピッチで進められている風力発電などの建造物による景観破壊です。
現在、風力発電を初めとする自然エネルギーの導入には国も本腰を入れて取り組んでいるところであり、和歌山県にも多くの計画が進められようとしています。この風力発電については、多くの先輩・同僚議員も実際に目にしたことがあると思いますが、とにかく巨大な建造物で、遠くからでも景観に影響を与えるくせ者であり、その立地には注意をしなければ、近隣地域だけでなく広い範囲に思わぬ影響を与えることになります。
現時点で県内に建てられている風力発電は3カ所あって、1つは有田川町の鷲ケ峰風力発電、1つは広川町の広川町風力発電所、そして、もう1つは和歌山市内のノーリツ鋼機が所有しているものです。
先日──これがちょうど広川町の風力発電の写真になります。(写真を示す)現場をちょっと見てきたんですけれども、これは2~3キロ離れたところから撮った写真ですけれども、これだけ大きく見えると。(「きれいや」と呼ぶ者あり)近隣にも、きれいな──写真がうまくきれいに撮れましたんで。ただ、これが全体の風景を壊すということもやっぱり気をつけないかんと。
現在、既に経済産業省で事業認定が採択されている計画として──これから建っていく計画ですよ──広川町と日高川町の境に白馬ウインドファーム事業として20基の建設、また有田川町と海南市の境に有田川風力発電事業として10基、また広川町と由良町の境に広川明神山風力発電事業として16基、また有田市に有田市山地風力発電事業として大型発電機1基が建てられる計画となっています。このほかにも、事業認定を受ける前段階として住民説明会などが行われているものとして、日高町で大平山ウインドシステム事業、これが大型機の20基の建設、また由良町に由良風力発電所事業計画が5基、そして西山風力発電事業として、これも日高町に13基、そして広川町と日高川町にかけて広川・日高川ウインドファームが10基の建設計画を進めている状況があります。
現在の和歌山県には3基の風力発電しかありませんが、ここ数年で一気に87基の巨大な風力発電機が設置される計画が現在進んでおります。これだけたくさんの風力発電機が建設されると、多くの県民も驚くことになると思いますが、しかし、ここで問題なのは、こういった建設について、行政として特に県がそれらを把握し、コントロールする仕組みを持っていないということです。
最初、県の循環型社会推進課さんのほうで風力発電の設置状況について聞いてみたのですが、結果的には、好意で調べてくれましたが、しかし、現在の制度上は、これらの風力発電が建設されるのに県は関知するものではなく、どこにできるのかといった情報すら集約されていない状況にあります。
この風力発電の設置については、今、全国的にも騒音、低周波、景観などさまざまな問題が指摘されていますが、しかし、地権者が了解し、自然公園法などの規制区域でなければどこにでも建てることができるものとなっていて、県としても何らかかわれる状況にはないということです。
そもそも、私自身、この風力発電に係る自然エネルギーの導入については、環境先進県を目指す和歌山県では積極的に推進するべきだと考えていて、決して風力発電の建設自体に反対する立場ではありません。しかし、景観の問題は地域にとって将来にわたり大きな影響を与えるものであり、一定のルールはしっかりとつくって管理監督していくことが必要だと考えます。
例えば、県が監督のもと一定のエリアを限定して集中的に推進するといった方法もあると思いますが、とにかく、現状で世界遺産などへの影響も考えると、県が何もせずほうっておくことはできないものと考えます。あくまで他人事ではなく、何らかの対応を進めるべきだと考えますが、そこでまず、この景観保護全般に関して知事に御所見を賜りたいと思います。
景観に関しては、特にここ10年ぐらいの間にその重要性の認識がますます高まってきていますが、そんな中、風光明媚と評される景観を売りにした多くの観光地を持つ我々和歌山において、それは都市景観のみならず自然景観の保護も重要な取り組みとなると考えますが、知事自身どういった御認識を持たれているのか、お聞かせ願いたいと思います。
また、和歌山の貴重な財産である世界遺産を含めた自然景観の保護に当たっては、明確なルール化を図っていくことも必要だと考えます。これもあわせて知事の御所見を賜りたいと思います。
また、担当部長には具体的な──景観法が施行されてから和歌山県内における市町村において景観保護に向けた取り組みが進められているところではありますが、その取り組み状況、また今後の方針についてもお聞かせ願いたいと思います。
また、現在、国の法令による取り組みでは、主に都市景観にかかわるものが重要視されているところですが、特に和歌山では、都市景観の保護・整備といったこと以上に自然景観の保護に向けた取り組みが重要と考えますが、お考えをお聞かせください。
あわせて、今後は、貴重な景観を保護するために、事前の届け出制など、明確なルールづくりが必要だと考えます。特に世界遺産などでは神経を使うところですが、今後、具体的にどういった取り組みを進めようとされているのか、そのお考えを、これも担当部長からあわせて御答弁をいただきたいと思います。
次に、和歌山発さまざまな観光関連プログラムの旅行商品化に向けた質問並びに提案をさしていただきます。
前回の議会では、和歌山県のすぐれた地域資源である自然環境などを活用して、健康サービス、観光医療など観光ビジネスにかかわる新素材の発掘・開発、そしてその振興策を加速させる提案をさしていただきましたが、今回はもう一歩踏み込んで、これまでの地域資源を生かして開発してきているそれら観光ビジネスの素材となるさまざまなプログラムを旅行商品化していく取り組みを提案させていただきたいと思います。
和歌山県としても、観光のベースとなる魅力ある素材、ほんまもん体験、いやしのプログラムなど数多くあり、その発掘・開発も地道に進めてきてくれていますが、しかし、今後はそれらの素材をばらばらにほうっておくのではなく、一つ一つ丁寧につなぎ合わせて強いブランド力を持った旅行商品に仕上げていくことが求められます。
ことし5月、旅行業法が改正されました。第3種の旅行業者も企画型旅行を催行できるようになります。地域発で旅行商品をつくり、売り出していけるチャンスが訪れています。これまで第1種、第2種の大手・中堅の旅行会社以外では、海外の企画旅行のみならず国内の企画旅行さえもみずから主催することができませんでした。しかし、これからは、第3種に当たる地域に密着した旅行業者の皆さんにも、みずからの手で旅行商品を企画・販売できることになり、大きなチャンスとなります。
また、今、国内旅行自体も大きな変化のときを迎えていて、これまでの大手旅行エージェントによるビジネスモデルも限界となり、旅行消費者の新しいニーズを酌み取った新たな旅行市場が必要とされています。業法の改正から国内旅行の変化、こういったことを和歌山県としても敏感に受けとめ、そのタイミングを逃すことなく、新たな観光振興に向けた積極的な取り組みが期待されます。
これまでの国内観光旅行は、大手旅行エージェントが主催するパックツアーなどによって市場がほとんど独占される状況となっていました。しかし、そのビジネスモデルも曲がり角を迎え、これまでのやり方だけでは通用しない状況が生まれています。
お手元に資料をお配りしておりますが、ちょっとこの表などをごらんいただきたいんですが、国内旅行者数は、1990年代の初頭までは穏やかに増加してきています。その後、現在に至るまで目立った増加は見られず、減少傾向にあります。1990年代後半からは、国内旅行における消費単価も年々減少する傾向にあり、つまりは旅行者数がふえない上に消費単価が下落していく。これによって宿泊を伴う国内旅行の総消費額も下落して、既存の観光事業者は大打撃を受ける状況に陥っています。
さらには、和歌山県が推進してきた海外からの和歌山県への集客数、インバウンド旅行などでも確実に数値を伸ばしているものの、インバウンド旅行の実態は、旅行単価が極端に安く、多くの観光事業者にとっては、国内旅行者数の減少を少しでも補うためのカンフル剤としての役割でしかありません。
こういった状況から見えてくるものは、長期にわたるデフレ傾向、低価格志向が背景にあるとはいえ、旧来からの観光事業者は、残念ながら消費者の求める付加価値の高い商品づくりに失敗しており、消費額の増加をもたらすサービスの提供ができていない実態が浮かび上がってきます。
また、国内旅行の企画商品も低価格化が進んでいます。この一番下の表になりますけれども、特に2001年のテロ事件以降、国内の企画商品も大きく値を下げ、新幹線プラスホテルのセット商品が1万円以下で売り出されるなど、新聞や旅行会社の店頭でも格安ツアーが目につくようになっています。また、大手旅行エージェントから買いたたかれることによって、旅館、運輸サービスなどのダンピング合戦も激しくなり、特に地方の観光事業者にとっては泥沼の状況となっています。しかし、一方で1泊数万円もするという離れを主体とした高級旅館などが半年先まで予約がいっぱいの状況にあるなど、国内旅行でも需要と価格の二極化が進んでいる状況がはっきりとあらわれています。
こういった状況から、今、観光事業者に言えることは、まず1点目として、旅行消費者のニーズに合わせた付加価値の高い、魅力的で個性的な旅行商品の開発を急がなければいけないということ。2点目には、これまでの日本の国内旅行の大きな柱となっていた大量のツアー客を大手旅行エージェントに頼って送客してもらう、いわゆるマスツーリズムのビジネスモデルからの脱却を図らなければならないということです。地域みずからがお客様を獲得するための新たな仕組みづくりを考える、そういった時期に来ているんだと思います。
日本の観光研究で、欧米の先進事例も踏まえてさまざまな視点からそのあり方を提言されてきている東海大学観光文化研究所の宮内順所長も、現在の日本の観光事業について、「ポストパッケージツアーということで、現状ある大手旅行エージェントが主催する発地型のパックツアーは限界に来ている。現在のツアーの原型は1970年前後につくられたものがほとんどだが、そのころのツアー観光と今日のものにはほとんど変わりがない。旅行形態が団体から個人へとシフトしているにもかかわらず、個人旅行への取り組みがおくれ、30年たった今でも同じ商品が売られているのは驚異である。これからの観光事業の1つの可能性は、成熟した旅行需要に対応できる個人ニーズを細かく受けとめられる着地型旅行である」と指摘されています。
今、旅行の形態も変わってきていて、ほとんどが大手に独占されてきたパックツアーの魅力が減少して、特にここ1~2年で着地型旅行という新しい商品づくりが加速し、新たな需要の掘り起しから大きな市場が生まれつつある状況です。
ここで、「発地型旅行」「着地型旅行」と言っていますが、これは耳なれない言葉だと思いますので、ちょっと簡単に説明しますと発地。(パネルを示す)これはもう言葉のとおり、旅行に出発しようとする出発地で企画提案される旅行を指します。これは、大量送迎されるパッケージツアーはほとんどがこのモデルとなり、この形態の問題点は、多くの旅行消費者を抱える東京、大阪など大都市圏の中で大都市圏にある大手旅行会社の企画担当部署において企画されたツアーがほとんどで、そのため目的地、例えば和歌山にお越しいただく際に地域の隠れた情報や地元ならではの魅力をうまく拾い上げることができず、特徴ある個性的なツアーが企画できない状況で、よって、どの旅行会社が主催するパックツアーも同じような内容となり、結果的に価格競争、安売り合戦に陥りがちとなる。
次に、着地型。これが今、和歌山県でも今後取り組んでいくべきと思う着地。これももう読んで字のごとくですが、これは着地である観光地みずから、和歌山の観光地の人たちみずからが主導して旅行商品をつくり出すもので、より深く地域の魅力を引き出し、押しつけでない、旅行者のニーズに合わせたツアーが企画できるのが大きな特徴です。特に、地域の人々が自分たちの手で着地型ツアーを生み出すことで、タイムリーかつ個性的、魅力的なオンリーワンのツアーを生み出すことができ、このことによって、単なる価格競争に陥らない旅行商品づくりが期待されます。
このように、これまでの旅行形態が大きくさま変わりしようとする現在、過去の反省に立つと、今後は大手旅行エージェントが手がける変化の少ない標準ツアーから、地域の魅力をうまく伝える地域発信の着地型旅行への取り組みが急がれることになります。そこでは、まず何よりも地域独自の観光素材、地域の個性あふれるプログラム開発が必要とされますが、この点では和歌山県は、ほんまもんの体験プログラム、また熊野健康村構想のいやしのプログラムなど、全国的に見ても先進の取り組みを進めてきています。あとはそういった観光素材となるプログラムをどのように生かしていくかということです。
国土交通省の観光カリスマ百選にも選ばれ、ほんまもん体験のプログラムを一つ一つ丁寧につくってきてくれている刀根浩志さんは、「今後は、これまでのつくり上げてきたさまざまなプログラムをどのように商品として売り出していけるのか、新たな展開が望まれる。せっかくの魅力ある観光素材を宝の持ち腐れとしないためにも、これまでのやり方にとらわれない新しい観光振興の戦略と、それにかかわる行政を初めとして民間事業者が一体となる体制整備が求められる」と指摘されていました。
そんな中、地元旅行業界の民間事業者の皆さんも、今、意欲を持ち、立ち上がろうとしています。さきに触れた旅行業法の改正もきっかけとなって、自分たちで旅行商品をつくれるという業法の改正から、和歌山の地元旅行業者の集まりである社団法人全国旅行業協会和歌山県支部、その傘下にある協同組合和歌山県旅行業協会の組合員の皆さんの中でも、ぜひ県にも協力してもらって和歌山発、自分たちの手で新たな旅行商品をつくっていきたい、これまでのように大手旅行エージェントに買いたたかれ安売り競争に巻き込まれることなく、オンリーワンのツアーの構築から付加価値の高い商品をつくって旅行商品の利益率を向上させるところから観光事業を立て直していこうという機運が盛り上がっています。こういったタイミングを逃すことなく、ぜひ県庁の関連部署の皆さんにも、もう一歩踏み込んで観光振興に対してお力をおかりしたいと思います。
そこで、担当部長に幾つかの質問並びに提案をさせていただきますが、まず、現在の激安ツアーの増加、ダンピング合戦に陥っている観光事業者の実態についてどのように考えておられるでしょうか。
また、そのようなダンピング、安売りを結果的には主導してしまっている大手旅行エージェントに多くの市場シェアを奪われている和歌山県の観光実態についてどういった評価をされているのか、お聞かせください。
また、こういった状況を私は何とか打破しないといけないと考えていますが、その具体的な方策としては、やはり地元でしかつくれない着地型旅行商品を地元の人間の手でつくり上げることが第一だと考えます。着地でつくられる小ロット、多品種、高付加価値の旅行商品を軸に、和歌山観光の新たなビジネスモデルの構築が急がれると思いますが、御認識をお聞かせ願いたいと思います。
また、法改正も契機として、さきに御紹介した協同組合和歌山県旅行業協会の組合員の皆様もやる気を見せてくれています。これからは、あくまで受け身の観光振興から攻めの観光振興への体制整備が急がれます。そこでは県が主導的な立場で、庁内においては観光振興課を初めとして、ほんまもん体験の観光交流課、熊野健康村を担当されている地域振興課、また、先日新たに観光産業プロジェクトマネジャーとして近藤政幸さんを採用したわかやま産業振興財団などと連携する中で、民間事業者の奮起も促して一緒に知恵を絞って新たな商品づくりに取り組むことが必要だと考えますが、いかがでしょうか。民間事業者も巻き込んだ新たな観光振興に向けての体制整備についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。
最後の質問です。公教育に今求められるもの、その充実策について質問をさせていただきます。
ことし、新たに山口裕市教育長が就任され、和歌山の教育も新しいステージに歩みを進めるものと思います。教育を取り巻く環境は、さまざまな課題を抱え大変だとは思いますが、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
山口教育長は、就任の記者会見の中で、モットーは誠意と気迫であり、現場の先生たちには「子供のことで苦労できるのは幸せなこと。情熱を持って子供たちに接してほしい」と語っておられたようです。また、教育委員会のホームページでは、「今日、社会が急速に変化する中で、社会の形成者としての資質を育成する役割を担う教育は、その重要性が一層増してきている」と指摘されています。確かに、教育にかかわる人の熱意が薄れてきていると指摘される今日、誠意と気迫は重要であり、ぜひお言葉どおり情熱を持って和歌山の教育を前に進めていってもらいたいと思います。
あわせて、社会の形成者としての資質を育成するといった視点は、私も特に重要なことだと思います。つまりは、学校だけのひとりよがりではいけないのであって、学校はあくまで社会に出る準備の期間であり、子供たちが将来社会に出る状況を見通してそのあり方を考えていくといったことが特に大切だと考えます。
今、変化が大きく、非常に厳しい社会環境にあるわけですが、その転機に立つ日本社会の実態に合った教育とはどういったものかを真剣に考える中で、1人でも多くの子供が社会に出てたくましく生き抜けるよう、いま一度教育のあり方を根本から問い直すことが必要だと考えます。
そこで、今回は、私にとって新しい教育長に対しての初めての質問となりますので、特に現在の学校教育に係る基本的な部分について、私なりの提案も含めて幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
さて、現在の学校教育の議論をより建設的なものとしていくためには、さきにも触れたように、あくまで小学校、中学校、高校など学校に通う一時期だけを切り取った議論とするのではなく、社会とのつながりといった点をしっかりと押さえて考えなくてはいけないのだと思います。
今、社会は大きな転換期を迎えていて、日本の社会はその質が大きく変わろうとしています。社会が変われば、求められる人材、必要とされる人間像も変わります。おのずとこれまでの教育、公教育の実質的な中身も変化を求められます。
戦後の日本は、安い労働力を頼りに、重厚長大と例えられた産業構造のもと、高度経済成長を果たしてきました。そんな時代には、公教育が担う役割としては、最低限の読み書き、そろばんを保障して、均質な歯車として働く標準化された人材をどんどん生み出すことが求められていました。
しかし、これからの時代には、このような画一化された教育を惰性で続けることは、結果的に多くの子供たちにとって不幸な状況を生み出す可能性があります。小中学校を出て、学力テストによって単純に高校を振り分けられ、確たる目的意識を持つこともなく入学し、卒業し、そして大学または社会人となっていく、そんなことでは、これからの時代を切り開く本当にたくましい人材は生み出されないんだと思います。
日本の社会、雇用環境、社会システムも、今大きく変わろうとしています。いい学校を出たら、ええ会社に入れる、いい会社に入れれば一生安心といった幻想は確実に終わりを告げようとしています。
先日、ベネッセが主催するキャリア教育の勉強会に参加させていただいてきました。そこで、ソニーの人事センター採用担当部長である杉山潤太さんのお話を伺ったのですが、これは大変興味深いものでした。杉山さんは、「ソニーも含め、今の企業採用の体制としては、とがっていようと生意気であろうと全然構わない。とにかく個性のない人間はだめ。ぶこつでもいいから何か光るものを持っている人材が必要とされる」と言います。「今の時代に求められる人材像としては、変化への対応力の高さ、専門性の高さに尽きる」と話されていました。
企業における採用方法も、ここ数年でさま変わりしています。特徴的なのが、採用試験を行うときに学歴を全く伏せて選考する企業が、杉山さんのソニーを初めとして幾つも出てきているということです。それは、単なる歯車となる社員を必要とするのではなく、自立して考える本当の力を持った、困難を打開する知恵のある人間を求めているほかありません。標準的な教育を受け、いい大学を出て、その看板が企業で通用するといった時代ではありません。今の教育には、多様な価値観をしっかりと子供たちに示せるかどうかが試されているのだと思います。
世の中には、現在の学校では教えられていないような価値観、たくさんの仕事、可能性があるわけで、あくまで受験用の学力などは、人生を生き抜く上で、たかだか1つの物差しでしかありません。本来はそのほかにも子供たちが評価されるべき価値基準はたくさんあるわけで、それぞれの子供に合った生き方、個性の伸ばし方を教え諭していくことが重要だと思います。実際に私の周りでも、学校の成績、学歴ではなく、その人の持つ人格、技術、知恵が大いに生かされ、立派に社会で活躍されている人が、この和歌山県、和歌山市にでもたくさんいらっしゃいます。逆に、学歴があっても社会で通用しない人もたくさんいるのも現実です。
私たちの今の社会は、これまでの成功モデルが崩れていく中で、新たな模索を始めなくてはいけない状況にあります。そこでは、まさに学校教育のあり方そのものが問われているんだと思います。その答えは決してこれまでの延長線上にはなく、また応急処置で取り繕えるものでもありません。今の子供に本当にたくましく人生を生き抜いてもらいたいと望むのであれば、その子の持つ個性、特徴を徹底して伸ばすことのできる学校教育、教育環境を与えてあげることが必要です。個性、特徴を伸ばしてこそ、社会に出て自分の役割をしっかりと見出して、また周りからも必要とされる人間になれるのだと思います。
物をつくるのが得意、手先が人並み以上に器用なのも立派な個性、パソコン大好き、記憶力が抜群、勉強が得意なのも個性、また運動が得意、スポーツ能力が際立って高いのも恵まれた個性です。そういった個性、特徴をしっかりと受けとめてあげて、人と違うところに自信を持たせ、それを伸ばしてあげられる教育が必要だと考えます。
子供のそれぞれの個性を見守り、その特徴を大切に育ててあげられる環境づくり、また、できるだけ早い時期から自分の人生、自分の将来のことについてももっと深く真剣に考えられるよう導いてあげられる教育が今必要とされているのだと思います。
さて、そこで幾つかの質問をさせていただきますが、まず最初に、新たに教育長に就任された山口教育長に対して、改めて現在の公教育に係る取り組みの基本姿勢として、和歌山県の公教育全般についてどういった将来ビジョンを持って、どういった人材をこの和歌山から輩出されようとしているのか、できるだけ具体的にお答えをお聞かせいただきたいと思います。
また、その教育の将来ビジョンの中における併設型中高一貫教育の位置づけについて、その意義、そして今後の方針についてどのように考えておられるのか、お聞かせください。
来年には日高地方で本県で5例目となる新たな中高一貫校が設置されますが、基本的には私自身も、現在和歌山県が進めている中高一貫の取り組みは大きな期待を寄せるものです。それは、あくまで受験用のエリート校をつくるのではなく、公教育の多様性を確保し、子供の個性を伸ばしていくすぐれた取り組みだと考えるからです。そのような視点を持つ中では、今後の取り組みとしては、もっと多様な特色を出した一貫教育を検討する必要があるのだと思います。
例えば、これは前の教育長のときにもお願いしていて、今回また新たに山口教育長にも御所見を賜りたいんですが、現在ある高等学校の特色を生かして、和歌山工業など、物づくり、マイスターの養成校とする中高一貫の実現、また県和商などでは起業家、商売人の養成校、また和歌山北高などではスポーツ強化校となっていますので、その特徴を生かした中高一貫による環境整備など、それぞれに明確な特色を持たせて子供に選択肢を与えていく。そこでは、決して勉強といった一元化された価値基準ではない学校の選択が行われ、その中で胸を張って、自信を持ってそれぞれの学校に入学していく。公教育による、例えば工業専門の中高一貫などは全国にも例のないもので、もし実現すれば和歌山県が新たな中高一貫のあり方を示し、他の先駆けとなって新しい公教育の扉を開くことが期待されます。
こういったことを含め、今後は、教育改革といった大きな視点を持つ中で、既存の小中学校も連動して教育のあり方そのものについて大いに議論を深め、地域全体としての子供の育つ環境の抜本的な改善に取り組んでいただきたいと思います。
また、今後、中高一貫に取り組む県教委にとっては、義務教育、特に市町村で管轄されている小学校への指導も重要になってくると考えます。そこでは、単純に受験への対応といったものではなく、中学校を選択する上において、自分の将来、これからの人生といったことについても主体的に考えられる指導のあり方などが重要になってきますが、このような視点も踏まえて、小学校への対応についてお考えになられているところがございましたらお答えをいただきたいと思います。
あわせて、和歌山教育のグランドデザインといった点について。
今、学校を取り巻く環境は、ゆとり教育の見直しなど大きな変動期にあり、この大きな変化の時代だからこそ、将来を見据えて和歌山独自の教育のグランドデザインをしっかりと描くべきときだと思います。和歌山の公教育の未来について明確に青写真を描き、どのようにして子供の個性、1人1人の能力を最大限に引き出す教育環境をつくり上げ、そして社会に出てもたくましく生き抜いていける人材を育てていくのか。そこでは、ころころ変わる教育方針ではなく一貫した方向性を示し、ぶれなく人材育成に努めるためにも和歌山教育のグランドデザインを策定することを提案いたしますが、教育長の御所見を賜りたいと思います。
以上で、私の1問目の質問を終わらせていただきます。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○副議長(新島 雄君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、景観についてのお答えを申し上げたいと思います。
近年の社会経済の成熟化や価値観の変化に伴って、人々の景観への意識の高まりを背景に景観法が平成16年6月に制定され、良好な景観の保全あるいは形成を行う仕組みが整備されておりますことは、議員御指摘のとおりであります。
本県には、御承知のように、美しい自然景観や高野山、熊野三山、熊野古道などの世界遺産を含む歴史文化資源も数多く残っております。このような景観の保全は、これからの観光の振興を考えても本県の重要な課題であるというふうに認識しておりまして、世界遺産を初めとする和歌山県固有の自然、歴史文化を保全、継承し、地域の個性を生かした景観の形成を図り、後世に伝えることは特に重要であると考えております。
こうした観点から、私は就任以来すぐに景観条例の制定を提唱いたしまして、現在それを2月の県議会に向けて提出するように準備しているところであります。
こうしたことを踏まえまして検討しておりますが、その検討に際しましては、実は、景観法そのものをつくるに当たりまして一番力のあった東京大学の西村先生を座長に、学識経験者、地元関係者に参画いただきまして和歌山県景観条例等検討委員会をつくりまして、ここで意見をいただきながら景観施策を今つくり上げつつあるところでございます。
ただ、風力発電のお話がありましたけれども、私は、地域の特色によって、その景観のあり方、要求される景観のあり方も違ってくると思っております。すべての地域で同じような景観でなければならないということではないと思います。
また、県について全くこれについて関与してなかったというふうにもとれる御発言がありましたが、自然公園法とか、あるいはその条例の見地から十分チェックをしてきたというふうに考えております。
したがいまして、要は、こういう問題も含めまして、その地域地域が持っている景観的価値をどうすれば一番長く保全して、それで多くの人々にアピールできるか、そういう見地から特色のある景観のあり方を考えてまいりたいと思っております。
○副議長(新島 雄君) 県土整備部長茅野牧夫君。
〔茅野牧夫君、登壇〕
○県土整備部長(茅野牧夫君) 和歌山県の景観保護に向けての具体的な取り組みについてお答えいたします。
和歌山県といたしましては、良好な景観を保全・創造し、美しい県土の実現を図ることは大変重要なことと考えており、市町村とも連携を図りながら平成19年5月に和歌山県景観条例等検討委員会を設置し、景観法に基づく景観条例等の検討を進めておるところでございます。
今後、この委員会での協議、検討を行って広く県民の御意見をいただくパブリックコメントなどを実施し、今年度中の景観条例制定を目指して取り組んでまいりたいと考えております。
議員御指摘の届け出制度、それから仕組みづくりなどにつきましては、今後の検討課題であると考えております。
○副議長(新島 雄君) 商工観光労働部長永井慶一君。
〔永井慶一君、登壇〕
○商工観光労働部長(永井慶一君) 和歌山発さまざまな観光関連プログラムのツアー商品化に向けての4点の質問につきまして、一括してお答えさしていただきます。
いわゆる激安ツアーが登場する背景といたしましては、1人当たりの旅行回数の減少や消費単価の低迷など、厳しい状況が続く現状があるものと十分認識してございます。こういったことにより、旅行エージェントなどにおいて話題喚起のため、あるいは経営上の都合により限定的に実施する場合、また、構造的には近年の旅行形態の変化の中で大型団体旅行から個人旅行へのシフト、高級あるいは安価な旅行商品への指向の二極化が急激に進んでおり、こういった変化への対応の1つの顕著な例が激安ツアーであると考えております。
次に、大手旅行エージェントに関してでございますが、団体旅行などの旅行形態につきましては、販売網が充実している大手旅行エージェントの本県への誘客に果たす役割は極めて大きいものがあるものと考えてございます。しかしながら、近年、旅行形態の多様化やインターネットの普及、また、本年5月には旅行業法施行規則が改正され、第3種旅行業者が一定の条件のもと募集型企画旅行を実施できることとなるなど、地域に密着した中小の旅行エージェントが活躍でき得る条件が整ってきたものと考えてございます。
本県では、従来より、ほんまもん体験など着地型の旅行商品を開発し、昨年の体験型観光客は25万9000人を数えるなど一定の成果を上げているところでございますが、引き続き地域の旅行関係者との連携を図り、議員御提言の視点を持ちながら地域の特性を生かした観光振興を進めてまいりたいと考えてございます。
県におきましては、観光振興アクションプログラムを策定したところでございますが、策定の目的には、県が実施する施策の体系を立てることに加え、旅行業者など観光事業者の皆様やNPO、地域で活躍されている方々との協働を呼びかけるメッセージの意味を込めているところがございます。これに基づき、県庁内の関係部局との連携はもちろん、外部からのノウハウの導入、さらには関係事業者の皆様方とともに観光立県和歌山の実現に向け精いっぱい努力してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(新島 雄君) 教育長山口裕市君。
〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 公教育のさらなる充実についてお答えいたします。
本県の公教育を進める上で大切にしたいと考えておりますことは、次の2つのことがございます。まず第1は、児童生徒の不登校ですとか暴力行為、中途退学など、厳しい状況にあるさまざまな教育課題を解決することでございます。第2は、これと同時にすべての子供たちの発達可能性を引き出し、自分と同じように他の人や自然を大切にする豊かな知性や感性を備え、社会の形成者としてよき社会人、職業人として自立し、変化の激しい社会を生き抜いていく資質や能力を育てることでございます。
そして、この2つの願いは、別々の課題ではなく、本県の教育、つまりは子供たちが元気になるために一体として達成していかなければならない課題であるととらえてございます。そのために、すべての学校において、よりきめ細かな指導によって確かな学力を獲得し、自信を持てるようにするとともに、生涯学習の基礎を養い、よき市民、よき市民のリーダーの育成を目指す市民性を高める教育やキャリア教育を発達段階に即して充実させることが重要であると考えます。
また、それには、学校教育と社会教育の連携、融合によりまして、学校と地域、家庭がそれぞれの役割を果たしながら一体となって子供の成長を支える体制の確立ですとか、教職員の研修の一層の充実、よりよい教育環境の整備などが不可欠であると考えます。
次に、中高一貫教育につきましては、6年間の継続した学校生活を有効に活用し、生徒1人1人の個性や創造性を最大限に伸ばすことを目的といたしまして、計画的に設置を進めてまいりました。既に設置いたしました併設型の4校では、総合的な人間力の育成を目指すなど、それぞれに特色のある教育課程のもとで、充実した教科学習や体験活動、クラブ活動などが展開されてございます。
しかしながら、設置以来、何分にもまだ日が浅く、期間をかけてその成果を検証する必要がございますし、教育システム全体の中では乗り越えなければならない課題もございます。したがいまして、職業に関する学科などさまざまな学科での導入につきましては、特色化を進める方法として有効かと存じますけれども、保護者や地域のニーズ、普通教育を旨とする中学校教育課程との関連、小学校卒業段階での進路意識の発達などを考慮しながらじっくりと研究してまいりたいと存じます。
小学校教育につきましては、この時期が子供たちにとりまして、人格形成においても、将来の社会的自立、職業的自立のためにも、その基盤を形成する大切な時期であると認識してございます。そのため、確かな学力と豊かな感性をはぐくむとともに、さまざまな体験活動を通じまして社会性を養い、自己の個性を伸ばし、将来の夢や希望の実現に向けて努力しようとする意欲や態度をはぐくむことが重要であると考えますので、中高一貫教育との関連におきましては、偏った受験競争をあおることのないよう十分に配慮しなければならないと考えてございます。
最後に、和歌山教育のグランドデザインの策定についてでございます。
教育改革が急速に進められる中、本県における中長期的な教育方針や施策の内容等について県民にわかりやすく示すということが大変重要だと認識しております。冒頭にお答え申し上げましたビジョンを実現できるよう、現在、本県で検討が進んでございます新長期総合計画において教育施策の方向性を示すとともに、新教育基本法において規定されました教育振興基本計画の中で、本県における教育の目標とその達成のための基本的な方向を示したいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(新島 雄君) 再質問を許します。
18番山下大輔君。
○山下大輔君 御答弁いただきましたので、再質問させていただきます。
まずは、景観保護について。
知事から御答弁もいただきました。景観施策の積極的な取り組み、ぜひお願いしたいと思います。
知事もおっしゃいましたように、地域ごとに特色あっていいんじゃないかと、全くそのとおりやと思います。風力発電なんかでも、ヨーロッパの例にもありますように、例えば近海でその風力発電の風車を集中して建てさせると。そういうものが逆に観光名所になる可能性もありますので、そういうことも含めて、守るべきものは守ると。逆に、新たな景観をつくり出すということもあり得ると思いますので、ぜひそういう部分でしっかりと管理監督、コントロールをしていっていただければなというふうに思います。
次に、観光振興のツアー商品化について。
ちょっとこれ、ダンピングということについては触れられてなかったんですけれども、そのダンピングというのが旅館、例えば運輸関連の業者さんにとったら、かなりやっぱり厳しい状況になっていると。観光バスの事故なんかでも、ニュースなんかでも記憶に新しいとこですけれども、安く買いたたかれるために就労状況というのもかなり厳しくなって、労務管理もできやんようになってくると。そういう部分では、本当にその安く買いたたかれやん、付加価値の高い、和歌山でしかできやんツアーというのをどうやってつくっていくかというようなことを──ちょうど法改正もありましたんで、これから希望あると思てますんで、ぜひ私自身も一生懸命取り組んで民間事業者の奮起も促しますんで、お力をかりて頑張っていきたいと思います。
最後、教育問題についてですけれども、誠意ある御答弁、ありがとうございました。大方の部分はよく理解できましたんで、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
ただ1点だけ、中高一貫のことですけれども。これは、文科省のいろんな資料を見さしてもらっても、全国の取り組みをいろいろ調べてみても、ほとんど中高一貫について悪い話てないんですね。いいという利点が確かに多いと思うんですけれども、ただ、いいことが多いということで、そしたら全部中高一貫にしてええんかと。そういうもんじゃないです。それ、ちょっと考えていったらね。でも、今は地域1番校をつくってるだけに、普通科だけであったらなってまうん違うか。結局、私学といい生徒を取り合ってるだけ。いいところを、青田買いじゃないですけれど早くとってるんで、結局いい学校になってるという結果的なことになりかねやん。
だから、やっぱりその中高一貫の本質をもう一回考えたときには、専門科ということは必ずこれは将来出てくることやと思いますんで、ぜひそういうことも視野に入れた和歌山なりの中高一貫のあり方というのをぜひ御検討いただきたいと思います。
以上、要望3点で終わらしていただきます。
○副議長(新島 雄君) ただいまの再質問は要望でありますので、以上で山下大輔君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
本日は、これをもって散会いたします。
午後2時37分散会