平成19年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(花田健吉議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前10時2分開議
○議長(中村裕一君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第95号から議案第113号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 11番花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕(拍手)
○花田健吉君 おはようございます。
 ただいま中村議長のお許しをいただきましたので、早速一般質問に入らせていただきたいと思いますが、私も、今春の統一地方選挙におきまして再び県政壇上にお送りをいただいた県民の皆様に厚く御礼を申し上げますとともに、心を新たに全力で精進してまいりますことをお誓い申し上げまして、一般質問に移らせていただきます。
 さて、私は、4月24日、須川倍行議員と藤山将材議員とともに岡山理大専門学校を訪問いたしました。それは、当専門学校の山本俊政アクアリウム学科長の指導のもと、トラフグ、ヒラメ、マダイの淡水での養殖に成功したとのお話をお聞きしたからであります。
 私は、この専門学校の研究の成果に大変興味を覚え、早速、当局に資料をそろえていただきました。その資料の中で山本学科長のコメントが出ておりまして、学科長は「この研究開発の大きな目的は、養殖に伴う環境問題と過疎対策に寄与したい」とのコメントを発表されていました。ラムサール条約に認定されるほどきれいな和歌山の海ですが、近年の海岸線の環境悪化について心配しているところであり、環境を保全するという意味からも大変好感が持てました。
 また、過疎化が進む中、若者の定住政策の一助になればとのお考えにも共感を覚え、当局にお願いして御同行いただき、岡山理大専門学校を地元養殖経験者や有志による視察団を形成して訪問する運びとなりました。
 岡山理大専門学校を訪ねると、圓堂稔校長先生や山本学科長にお出迎えをいただき、早速、施設の案内と研究の成果について御説明をいただきました。
 魚好きの日本人は、四季折々500種類もの魚を食べ、動物たんぱく質の約4割以上を魚で摂取しているそうであります。しかし、昨今、世界じゅうで魚志向が高まり、漁獲高はこの50年で6倍以上に激増しています。
 2006年、アメリカの科学誌「サイエンス」が、「このままでは、およそ40年後にはすべての天然の魚が絶滅するおそれがある」と衝撃的な予測を発表いたしました。和歌山県でも、漁獲高の減少により、漁業に携わる漁師の皆さんの御苦労は御承知のとおりであります。
 漁業を取り巻く現況は、高齢化が進み、後継者が育たないという深刻な悩みを抱えていますが、究極の問題は漁獲高の減少にあると、私がかつて一般質問したときの当時の農林水産部長の御答弁でありました。
 我が県も「とる漁業からつくる漁業」という政策を掲げ、養殖業の推進に力を入れてきました。昭和50年代はブリの養殖が盛んで、その後、平成に入ってからはタイ類の養殖に移行してまいりました。
 しかし、海面養殖は、赤潮による被害や台風や洪水による濁流被害等、大変な被害を受けることもあり、厳しい面もあるとお聞きをいたしました。また、海水をくみ上げて陸上での養殖は、その施設投資費や運営経費がかさみます。
 このような養殖業を取り巻く状況の中、今回の淡水で海水魚を養殖するという試みは、コスト面においても、風水害の被害を受けないという点においても、また病原菌やウイルスの心配も要らず、えさの残滓による環境問題等も解決できる新しい可能性を秘めた新技術であると思います。
 山本学科長の御説明によりますと、海水魚と淡水魚は正反対の浸透圧の調整を行っているので一緒に暮らすことができませんが、進化をさかのぼると、どちらも先祖は太古の海で生きていたはずと考えられたそうです。今ほど塩辛くなく単純な成分だったために、当時の魚類は浸透圧の調整も必要なかったと考えられ、そこに注目して研究を始められたそうです。
 海水に含まれる約60種類の元素のうち、魚にとって本当に必要な成分はカリウム、ナトリウムその他数種類の成分だけと研究の結果判明し、近くの旭川の水を原料に、「好適環境水」と名づけた魔法の水を開発いたしました。
 地球の約60%は海であり、その海水は酸素、水素、塩素、ナトリウム、硫黄の5元素で99.78%を占めています。塩分濃度は3.5%、ほかにも豊富なミネラルが含まれています。
 海水魚は、体液の電解質濃度は海水より低いため浸透圧によって体内の水分が自然と出ていくため、ナトリウムイオンやカリウムイオンを含んだ海水を飲み、腸から体内にとり込み、えらから余分な電解質を排出するようにできています。しかし、淡水にはこうしたイオンがほとんど含まれていないため、淡水魚は必要なイオンを補給するため体液の塩分濃度を調整しなくてはならないそうです。
 そこで、好適環境水の水槽を見学させていただきましたが、ヒラメやタイ、熱帯魚とランチュウが同棲する水槽を見たとき、青天のへきれきと申しますが、我々の常識では考えられない光景でした。
 この好適環境水を養殖業に取り入れるに際し、さきに述べましたが、利点として、まず、従来の人工海水により海水魚を養殖すると水1トン当たり約1万4000円かかるそうですが、好適環境水の製造コストが安いので約60分の1に削減でき、実用化する段階でも初期投資が少なく、そして浸透圧の影響が少ないので速く成長し、資金の回収も早いと、二重の意味で製造コストを抑えることができるということで、投資リスクが少なくて済むという経済的な利点を挙げられていました。
 実験では、2005年6月から養殖を始め、6カ月で体重は、ヒラメが20グラムから約520グラムに、トラフグが30グラムから約250グラムに成長したと聞き、同行した養殖経験者もその成長の速さに驚いていました。
 次の利点は、自然界では病原体は海水型と淡水型のどちらかに分かれており、海水で生存している病原菌はもともと好適環境水──淡水なんですが──の中では存在せず、さらに外部から侵入したとしても、病原菌そのものが淡水では生きていけないので、投薬をしないで安全な養殖が可能となります。この実験中に病気になった魚はいませんと報告されています。
 次に、風水害や赤潮等、自然現象の影響をほとんど受けない点であります。せっかく成長した成魚が出荷前に被害に遭うことも、かつてはありましたが、そういったことがなくなり、計画的に出荷できる利点があります。
 さらに、私たちの和歌山県は、串本地域がラムサール条約に認定されるほどきれいな海を持っていますが、この環境保全にも一役買うことになります。
 そして、私が一番注目しているのが、沿岸地域でなくても養殖技術があれば、地価の比較的安い、むしろきれいな川の水のある山間部のほうが大規模な海水魚の養殖を可能にするという利点であります。地方の最も大きな政治課題の1つであります中山間地域で働きたい若者たちの雇用の場を確保するということに、大いに期待をいたしております。
 最後に、やはり気になるのが、味はどうかということでありますが、昨年の暮れ、この好適環境水で育てたヒラメ、マダイ、トラフグを岡山市内の料亭で、それぞれ有名店の料理長を初め多くのマスコミ関係者を招いて試食会を催したそうです。ヒラメ、トラフグはプロの皆さんにも好評だったそうですが、まだ実験段階で水槽が小さいためか、マダイは身が締まっていないと指摘を受けたと申されていました。
 また、全国各地から企業や団体の視察の申し込みが後を絶たず、今までにもう500社・団体以上見学に来られ、また海外からの申し込みもあり、その中には中国の2番目に大きな養殖企業も大変興味を示されてお帰りになられたと申されていました。
 山本先生は、この養殖方法で育った魚の健康状態や味に問題がなければ、すぐに実用化する見通しだと言っておられました。ちなみに、特許ももう既に取得されたようです。
 また、昨年の養殖ヒラメは、海水でふ化し、稚魚を好適環境水で育てましたが、今回のヒラメは好適環境水の中でふ化させ、海水には全く無縁の環境で育てたので、海水を知らないヒラメだそうです。
 そこで、仁坂知事にお伺いをいたします。
 我が県の養殖業もこうした新しい技術を取り入れることに対して積極的に検討していくべきと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 農林水産部長にお伺いをいたします。
 今、和歌山県の海面養殖業の現状とその見通しについてお考えをお聞かせください。
 次に、去る3月6日のきのくに志学館において紀の国先人展があり、当時、私は総務委員会委員長を仰せつかっておりましたので、出席をさせていただきました。仁坂知事もお越しになっておられましたが、我がふるさと和歌山県が輩出した、学術的に大変評価の高い功績のあった偉人を紹介するコーナーの開展式に出席させていただきました。
 先人展は2005年から始まり、同年は文化・スポーツの分野での功績のあった方を、そして2006年は社会・経済分野、ことしは学術分野で展示されていました。そのコーナーは円形型で大変清潔感があり、コンパクトではありますが、大変好感の持てる工夫されたものでありました。
 紀の国先人ゆかりマップのコーナーでは、先人たちの出身地や県内ゆかりの地を紹介しています。また、先人紹介コーナーでは、ことしの学術をテーマにした先人たち1人1人のプロフィールと、その業績や筆記道具など展示物を同時に紹介しています。さらに、先人シアターでは先人たちを映像で紹介する等、楽しく閲覧できる工夫を凝らしています。
 しかし、この施設のすばらしさもさることながら、これだけの偉人が和歌山県から輩出されていることに対し、率直な驚きと感動を覚えました。私たちが日ごろ知らず知らずのうちにその功績の恩恵を受けていたり、また世界に通じる研究や大きな功績をおさめられた郷土の先人に、改めて敬意を表したいと思います。
 資料を配付させていただいておりますが、少し御紹介を申し上げますと、文化・スポーツ分野では、名投手・嶋清一投手、作家の有吉佐和子さん、合気道の創始者・植芝盛平氏、童謡「鳩ぽっぽ」の作詞者・東くめさん、社会・経済分野では、申すまでもなく私たち和歌山県議会の初代議長でもあり、「稲村の火」で知られる浜口梧陵先生、パナソニック松下電器産業の松下幸之助氏、世界で初めて全身麻酔手術に成功した華岡清洲先生、博物学において世界的に注目を浴びた南方熊楠先生、詩人・佐藤春夫氏、学術の分野では、世界的数学者・岡潔先生初めビタミンAを抽出した農芸科学者・高橋克己先生、脚気の原因を突きとめた島薗順次郎先生等、すべての方を御紹介させていただきたいところですが、資料を配付させていただいたので、ごらんください。
 本当にさまざまな分野で活躍された方ばかりですし、皆さんの地域の先輩もいらっしゃるのではないかと思います。改めて和歌山県の先人の皆様に対し、その数々の御功績に心から敬意を表するものであります。
 そして、私は、これほどの郷土の偉人をただこの先人展で紹介しているだけではもったいないような気がいたしました。このような本当に身近な方々を子供たちの教育の現場で紹介し、できれば学習の中で生かすことはできないのだろうかと、そのとき思いました。
 私も、小・中学校時代、日本または海外の偉人の伝記物を図書室で借り、家に持って帰って一心不乱に読んだ記憶があります。私は、普通、読書というと目が重くなる方ですが、偉人の伝記というと、少しも眠くなく、その偉人の生涯に思いをはせ、小さいときのエピソードや苦労話に引き込まれ、いつか自分も世の中のために何かできるのではないかと思ったこともありました。
 多感な小・中学校時代に身近な郷土の偉人に触れることは貴重な体験であり、そして何よりも、同じ町から世界に通じる偉人が出ていることを認識することは子供たちの情操教育においても大きな効果があるのではないかと思います。安倍内閣も、このたび、「美しい国づくり」の最重要法案として教育基本法を戦後初めて改正いたしました。
 昨今、我が国の青少年を取り巻く生活環境は著しく変化し、大人のモラルの低下やはんらんする情報により、ややもすれば自分自身を見失い、犯罪に巻き込まれたり、最悪の場合、犯罪を起こしてしまうケースもしばしば見受けられ、大変憂慮されます。
 郷土を愛する心が希薄になりつつあると言われる現代社会で地域の連帯感や家族愛や友達を思う心をはぐくむことは、とても大切なことであります。そして、もっと大切なのは、自分自身の人生を大切にすることを教えていかなければならないのではないでしょうか。
 私たちの身近なところから輩出した先人の功績に触れることにより、向上心を養い、人生の目標を見詰めることのきっかけになれば、本当にすばらしい教材になると考えます。
 今の教育現場において必要なものは、当然、学力を高めることが大事なことではありますが、徳育も大変重要な教育であることは御承知のとおりであります。
 そこで、教育長にお伺いをいたします。
 和歌山県教育委員会も「ふるさと わかやまの心」という道徳教育郷土資料を発行されておりますし、海南市教育委員会のように一部地域では既に教育の現場で扱っているところもあると聞いておりますが、このように和歌山県の先人を道徳教育や総合学習の中で紹介し、この功績を教材として取り上げ勉強することはとても有意義なことであると考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
 もう1点、昨年度の高校入試制度についてお尋ねいたします。
 一昨年まで、高校入試は推薦入試と本試験の2回に分けて行われておりました。しかし、昨年度からは、前期選抜試験、後期選抜試験及び追募集に制度変更され、中学校や保護者の中で少し混乱したところもあるとお聞きをいたしております。
 当然、教育委員会も御承知のことと思いますが、その制度の変更により、後期選抜試験において定数を大幅に超えたところもあれば、また逆に定員を割り込み、今まで追募集した経験がない高校が追募集するという事態になってしまいました。
 進学する生徒たちに入試の機会を均等に与えるということにおいては理解できますし、むしろ私は賛成の立場でありますが、昨年は最初の試みでしたので、入試に際し、少し混乱したこともいたし方ないと思います。しかし、ことしは昨年度の高校入試の現状を、教職員や保護者等から情報も入っていると思いますので分析し、それを踏まえて今年度の高校入試に臨まれると思いますが、教育委員会としてどのような対応策を考えておられるのか、お答えをください。
 私は、この制度自体は悪くないと思いますが、前期選抜試験の定数が少し少ないような気がいたします。普通科は前期選抜試験で定員の30%ですが、募集定員を定めた普通科コースや単位制の普通科もしくは総合学科が50%の定員であり、専門学科は定員の100%、前期選抜で採ることができます。なぜ学科によってこのように差をつけたのか、その根拠はどこにあるのでしょうか。
 前期試験で不合格になった生徒や保護者は、いろいろな面で精神的なプレッシャーを受けます。本来行きたかった学校を後期選抜試験で受験することができず、学校によっては定員のオーバーや定員割れに影響したのではないかと考えます。そして、その結果、昨年度は高校浪人した生徒もいると聞きましたが、高校に入るとき1年浪人するということは、その子供にとって、その後の人生に大きな影響を及ぼすと考えます。私は、本年度の高校入試においては、前期試験の定員枠をもう少し広げるべきだと考えますが、いかがですか。
 以上、教育長にお答えをお願いします。
 続きまして、地方財源の偏在の是正について幾つか申し上げたいことがあります。
 今議会において既に先輩・同僚議員からも御質問がありましたが、私は、この税制論議において、今まで常に都市の主張ばかりマスコミ等で取り上げられ地方の言い分が黙殺されてきましたが、ぜひこの議論を深めていく中で現在の地方の現状を都市に住んでいる地方出身者の心に届くよう盛り上げていただきたいと思い、知事に質問させていただきたいと思います。
 先般、安倍内閣は、ふるさと納税構想の検討を総務省に指示したと大きくマスコミに取り上げられました。久々に地方の言い分が中央政界で取り上げられ、胸のすく思いでありました。
 「地方の時代」と言われながら、今まで過疎問題を解決できないまま、どんどん地方から人口が流出いたしました。その間、過疎対策措置法や半島振興法等、確かに地方振興策も打ち出され、それは一定の効果があったと思います。しかし、高度経済成長期からバブルの崩壊を経て一転デフレ経済に入ると、政府は、今までの成長経済のときのような税収が見込めないので、無理、無駄を省き小さな政府にすることを政治使命と位置づけ、構造改革を推し進めてまいりました。さらに政府は、もう一方で地方に対しても自主・独立することを求め、地方分権法が成立し、その受け皿として市町村合併が行われてきました。さらに、小泉内閣は構造改革を進める一方で、三位一体改革による地方の自主財源化も進めてきました。
 しかし、その過程で地方は大変財政的に厳しい状況になり、全国の各地方自治体は財源の確保に四苦八苦しています。当然、和歌山県もその例外ではありません。そして、都市と地方の関係がぎくしゃくしてまいりました。
 高速道路問題1つとっても、「人口や交通量の少ない地域にはもう高速道路は必要ないのではないか」と、都会の政治家たちが新聞やテレビに出てきて得意顔で話しています。確かに地方は人口が少なくなりましたが、私たち地方に住む者は、日本国の発展のために少し後回しになっても我慢しようと都市優先の政策にも理解を示し、懸命に支え、耐えてきました。その結果、都市と地方の間で交通格差が生まれ、過疎と過密の問題を引き起こし、その延長線上に経済格差や生活格差、賃金格差が生まれました。そして、働く場所を求め、たくさんの若者たちがふるさと和歌山を後にし、大都会で暮らさなくてはならない状況になりました。
 その方たちは、今、お盆と正月に帰省するぐらいで、ほとんどふるさとに帰ってくることはありませんが、その帰省の際の高速道路や新幹線、飛行機等の交通機関の混雑状況を見ると、本当に地方からたくさんの人が都会に出ていって生活してるんだなと、つくづく思います。それはそれで仕方のないことと思いながらも、どこか納得がいかないなと私はいつも思っていました。
 私たちは、生まれた地域にいろいろな面で育てられます。例えば幼稚園や小中学校は主に市町村の税金で運営されています。高校は、そのほとんどが県立高校であり、貴重な県の税金によって運営されています。そして、やがて都会の大学進学ともなりますと、学費を納め、マンションを借り与え、生活費も仕送りしなくてはなりません。
 地方の親たちは、自分の子供とはいえ、一人前にするのにどれだけの投資をしてきたのでしょうか。卒業し、やっと就職が決まり安心できると思えば、都会は生活費が高いので、しばらくは家賃や生活費を仕送っているのが現状です。結婚すると言えば挙式の心配をし、家を建てると言えば頭金の足しにと借金を重ね、それでも子供たちの幸せを願い、年老いた体にむち打って頑張っておられる地方の両親のけなげな姿を思うとき、万感胸に迫ります。気がついたら、年老いた我が身と、子供たちと離れ離れに暮らさなくてはならないという寂しい現実だけが残されました。
 子供たちの中にも、本当は地方に働くところがあれば帰ってきたいと思っている人もかなり多くいると思いますが、現状では現実的ではありません。
 一時期盛んに提唱された「均衡ある国土発展」などという言葉は、口に出せば出すほどむなしい気持ちになるほど、この小さな国土の我が国において都市と地方の格差が広がってしまいました。
 もう地方もこのままの状況で緩やかな衰退をたどっていくしかないのかなあと思っていたとき、ようやく安倍内閣により、ふるさと納税構想という、日本列島改造論やふるさと創生事業以来の地方の言い分が政策として打ち出されました。
 しかし、ふるさと納税構想が打ち出されると、すぐに東京都知事や大阪府知事初め都会の政治家たちがこの税制に一斉に反発をしている様子をマスコミで大きく取り上げていました。彼らの主張を聞いていると、過去の私たちの投資のことは一切言わず、一方的で、本当に腹立たしさと悔しい気持ちでいっぱいになります。彼らの理屈を聞いていると、気分が悪くなってきます。
 私たちは、地方出身者の住民税の半分を地方によこせなどと厚かましいことを言ってるわけではありません。ほんの少し、1割程度、お父さんやお母さんの住んでいる出身地の県や市町村に仕送りしていただけませんかと申し上げているだけなのに、血も涙もない無慈悲な政治家が口角泡を飛ばして批判している姿を見ると、本当に同じ日本の政治家なのかと疑いたくなります。
 そこで、知事に、和歌山を含む全国の地方の言い分を全国知事会やマスコミ等にも積極的にアピールをしていただき、了見の狭い都会の政治家たちを諭していただきたいと思います。また、特に法人2税と言われる法人都道府県民税及び法人事業税についても、その偏在の是正について強く主張していただきますようお願いいたします。
 この法人2税の偏在は和歌山県と東京との間では4.7倍もの格差があります。
 私たちを含め、全国各地に住んでいる人たちは、毎日いろいろな生活必需品を初め商品を購入いたします。その購入した商品の発売元や本社を注意深く見ると、そのほとんどが東京都もしくは大阪や名古屋のような大都市に集中しています。
 私たちが商品を買い消費すればするほど企業は業績が上がりますが、得た利益にかかる法人2税の納付先は企業の所在地の都会に入るという仕組みになっています。当然、私たちの住む和歌山県のような地方には法人が少ないので、同じように物を消費しても、その税の納付に格差が生じてしまいます。この仕組みにより戦後最長の好景気だと政府やマスコミが連日報じますが、都市は公共投資や民間活力で好景気になりますが、地方はそれほど好況感がないという現在の状況が生じることになります。
 東京都は、もともとこの法人事業税が最も入る都市なのですが、最近の好景気によりさらに税収がふえ、1兆2000億もの税金をかけて東京オリンピックを再度誘致でもしないと使い切れないのではないかと、去る東京都知事選挙戦でやゆされるほどであります。
 富める都会と貧しい地方との格差がこれ以上広がると、感情的に対立が深まるばかりでなく、将来の日本にとって好ましくない現象が起きてくるのではないかと危惧をいたします。都会は人口過密になり、排出されるごみの処分にも困り、隣の人口の少ない市町村に処理してもらわなくてはならない都市も出てくるでしょう。地方はと言えば、人口が少ないために、いまだ下水道の整備もできず、河川や海を汚染し、また公共交通機関が少ないので車での移動を余儀なくされ、二酸化炭素を排出するという皮肉な現象も起こってまいります。
 ことしは空梅雨が予想され、渇水が心配されていますが、大都市圏の生活水を確保するため、また都市を洪水から守るために山間部にダムを建設してきましたが、どれほどの方が住みなれたふるさとを後にしたか。その結果、人口の1割以上が一度に流出したところもあります。
 京都議定書を発効するに当たり、議長国である日本は、地球温暖化対策である二酸化炭素の削減目標数値を達成しなくてはならない立場でありますし、先頭に立ってアメリカやヨーロッパ諸国を説得し、また中国や途上国に対しても理解を求めなくてはなりません。
 先般、サミットでは環境問題が大きく取り上げられましたが、安倍首相も各国に強く訴え、一定の成果を得たところでありますが、国内において都市の政治家たちは森林地帯の環境保全をどのように認識しているのでしょうか。甚だ疑問に思います。山を放置すれば必ず荒廃いたしますし、今まさに崩壊の危機に直面していると言っても過言ではありません。
 また、都市の経済活動を支え、私たちの生活に不可欠な電気は、どこでどのようにして生産されているのでしょうか。過去、原子力発電や火力発電の建設の是非をめぐって地域住民が賛成、反対で町を二分し争い、そして苦しみを経て都市に豊かな電力を安定的に供給していることを御承知ないのではないかと疑いたくなります。
 私たち地方は、長い間、日本の発展のために寄与してきたではありませんか。格差社会で問題提起される昨今、強者の理論で押し通そうとする都市の政治家の心ない発言がきずなの薄い地域社会を助成し、昨今起こる理不尽な犯罪や悲惨な事件事故を起こす遠因になっているのではないかと憂慮いたします。
 知事も、先般、東京都知事や大阪府知事の発言に対し、地方紙に「無慈悲なことを」と返され、都市の政治家をいさめるコメントを出されました。
 今の日本は、知事が申されたように、強い立場にある者に慈悲の心が欠如しているために起こるさまざまな摩擦や現象が私たちの社会全体をむしばんでいるような気がいたします。両親が幼い子供を虐待して殺してしまう、また逆に、子供が大きくなると親を殺してしまう、お年寄りをだましてお金を奪い取るなど、数え上げれば切りがありません。都市と地方がいがみ合うのではなく、お互いの立場を理解し合い、助け合うことが大切なときであります。
 しかし、今まで余りにも都市優先の政治が行われた結果、都市に富や人口、法人や情報等が集中し、一方、地方では過疎化や高齢化が進み、もう森を守ることができない、森を守る人がいないという現実に直面しています。全国各地の中山間地域が消滅してしまうことも、そう遠い話ではありません。知事も和歌山の山間部を選挙で回られて、決して大げさな話ではないということを肌で感じられたと思います。
 そこで、仁坂知事にお伺いをいたします。
 先ほど述べた税制の不公平の是正について、都市の政治家たちの主張に負けないよう、和歌山県民の代表者として、また全国の地方の代弁者として、地方の言い分を、マスコミはもとより、まだふるさとのことを忘れないでいてくれる都会に住む地方出身者の皆さんに対し、熱い、強いメッセージを発信していただきたいと思いますが、いかがですか。
 また、知事は独自に2地域居住税制の創設を提唱されています。先般、議員の答弁にもお答えになっておられましたが、もう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
 仁坂知事もかつては東京にお住まいでしたが、今は私たち和歌山県民の代表者であり、地方の代弁者であると心から信頼をしておりますので、地方の言い分を強く発信していただくことを再度お願いを申し上げ、第1問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(中村裕一君) ただいまの花田健吉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、花田議員の御質問に関して、養殖業の問題、とりわけ新技術への取り組みについて申し上げたいと思います。
 水産業を取り巻く状況は、議員御指摘のように、漁獲量の減少、魚価の低迷あるいは漁業就業者の高齢化など、まことに厳しいものがありますが、養殖業は海面漁業生産額の約25%を占める重要な漁業としてだんだんと重要性を増しているものと思っております。
 和歌山県の漁業においても、今後、これについてはもっともっと大事になってくるんじゃないか、特に安定した雇用を漁村の方々に保障するという点では非常に重要なものになってくるんではないかと思っております。
 その際に、技術の問題というのがございました。先生御指摘の技術のほかに、和歌山県には、とりわけ、県の水産センターはもちろんですが、近畿大学の幾つかの研究所もあります。この間、それを見学してまいりましたけれども、和歌山県の例えば近畿大学で卵からふ化する、そして小さい魚になるというところまでやって、それを全国の養殖場に卸しているものが大変多いということを聞いて、全国の養殖漁業は和歌山が支えておるんだなというようなことを聞いて、大変誇らしく思った次第であります。
 また、マグロの完全養殖について、技術的なめども立ってだんだんと商業化しようとしているということもお聞きしておりまして、これなどは和歌山が誇る技術だというふうに考えております。
 議員お話しの好適環境水の完全閉鎖方式による陸上養殖につきましては、今までにない新技術でありまして、過疎対策として貴重な御意見、御提言と考えております。
 今後、より一層アンテナを高くし、関心を持って技術革新等の情報収集に努め、地域の活性化に生かせるように取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、地方税源あるいは地方税収の偏在、これの是正の問題がございました。
 これについては、現税制の不公平についての所感というようなことでございましたけれども、まず第1に、議員御指摘のように、日本という国が成り立っていくためには、地方は大変重要な役割を果たしております。しかし、税源が大都市に偏在し、一方、地方はその仕事に見合った税収を確保できず、いろんな格差が生じて社会にひずみを発生させている現状にございます。
 私は、就任以来、何としてもこれを是正し、どこに住んでいても最低限必要な行政サービスは全国民に公平に保障され、それに必要な税源がそれぞれの自治体にちゃんと確保されるべきだというふうに主張してまいりました。
 真に地方を理解し、これからの地方あるいは国をどうしていくべきかを考えるならば、今の税制の改革が必要であるということは論をまたないところであると思います。すなわち、国全体の税収配分のあり方、具体的には、国と地方での税配分の枠組みとか、あるいは地方自治体の税収格差の見直しをすべきだというふうに思っておりまして、そう主張しているところでございますし、現在、国にそれを要望しているところでございます。
 この過程において、私としては、地方の意見が十分反映されるように、またそれで和歌山県が少しでも有益な結果を得られるように、さまざまな機会を通じて税収の格差是正を主張してまいる所存でございます。
 次に、2地域居住税制というお言葉がございました。議員御指摘では、これは私の提言ということになっておりますが、そこは必ずしもそうではございませんで、実は総務省の研究会で、今、そういう考えを導入してはどうかというようなことを考えているアイデアでございます。
 私は、都市に本拠を置きつつ一定期間地方に行く、和歌山でもそういうような方々が少し出始めていますが、そういう方々が住民票のある地域だけに住民税を納めるというのは、応益課税の原則からすると、ひょっとしたら修正を必要とするんじゃないかというふうに思うわけです。したがって、この総務省の研究に大いに期待を寄せておりまして、地域経済が活性化するためには、例えば本県のようなところがこのような税制で2地域居住者を引きつけるときに必要なサービスをそれで支払っていくという制度ができるといいなというふうに思う次第であります。
 いずれにいたしましても、このような制度全部を含めまして、先ほど申し上げましたように、国と地方あるいは地方それぞれのバランスがうまくとれるような制度ができるように、今後とも私も発信し、国に要望し、やっていきたいと考えております。
○議長(中村裕一君) 農林水産部長下林茂文君。
  〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 本県の海面養殖業の現状と見通しについてでございますけれども、平成9年ごろには、マダイを主にいたしまして100億円以上の生産額で安定いたしておりましたけれども、その後、全国的に養殖マダイの需給バランスが崩れまして魚価が急落いたしてございます。その結果、17年には生産額が約52億円と、半額ぐらいになってございます。また一方、この10年間ぐらいで養殖の漁家につきましても3割程度減少するという厳しい状況にございます。
 こうした厳しい状況に対応していくために、県といたしましては、持続する漁業を目指しまして、今後、種苗放流、それから小型魚種の保護、魚礁の設置などの施策を進めまして沿岸漁業の振興に努めるということと、一方、この恵まれた海面を生かした養殖業というのを大きな柱といたしまして積極的に推進することといたしてございます。
 現在、水産試験場におきまして、高級魚種のクエの増養殖技術の研究開発中でございます。また、クロマグロも今後期待される養殖魚種でございまして、地域の活性化の観点からも推進してまいりたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 教育問題についてお答えをいたします。
 まず、県の先人の功績等を教育で取り上げることについてでございますが、本県は、議員から御紹介がございましたように、文化や地域の発展に尽くした先人を多数輩出しております。これら郷土の先人について積極的に学習を進めることは、改正された教育基本法でも強調されておりますように、郷土に対する愛情や誇りを培い、確かな人生観の育成に寄与するものと考えてございます。
 県内の小中学校では、社会科や道徳、総合的な学習の時間等において、地域の先人の功績や生き方を取り上げた副読本、あるいは県教育委員会が作成いたしました資料集「わかやまDE発見!」という資料がございますけれども、こういったものを活用いたしまして学習を進めております。
 県教育委員会のホームページにも「紀の国が生んだ先人たち」を紹介しておりまして、先般、新たにスポーツに貢献した人材についても掲載をしたところでございます。
 今後、これらの資料をCD化して各学校に配布することも検討いたしまして、地域のより身近な先人を教材とした学習や、郷土の自然、歴史、文化を積極的に取り入れた和歌山らしい学びを推進してまいりたいと存じます。
 次に、この春実施いたしました平成19年度県立高等学校入学者選抜につきましては、中学校長会、県立高等学校長会を初め、広く関係者から御意見をいただきながら分析・検討を行いました。大きく制度が変わった初年度でもあり、受検生や保護者に若干の戸惑いはあったものの、受検機会の複数化などの改善の趣旨はおおむね達成できたのではないかというふうに校長会から聞いてございます。
 平成20年度からは、すべての県立高等学校で前期選抜も県の統一問題を使用すること及び一部の学力検査の時間を延長することとし、過日、変更点について発表を行ったところでございます。
 前期選抜の定員枠の設定につきましては、従前の推薦入学の定員枠を基本とし、中学校最終学年における授業の大切さを踏まえるとともに、普通科や総合学科、専門学科それぞれの特色を考慮して上限を設定してございます。
 今後とも、各方面からの御意見もいただき、必要な改善を加えながら新しい制度の定着を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再質問を許します。
 11番花田健吉君。
○花田健吉君 質問ではなく要望なんですけども、教育長に。
 御説明いただきました。わかりました、内容はね。でも、ただ、文科省にしても教育委員会にしても、制度を変えるときに、やはり一番戸惑うのは生徒たちで、常に生徒たちの観点で、組織の上から見た改革ではなくて、実際受検であれば受検する生徒、またその保護者、それに携わる進路指導の先生、そういう方の意見も十分反映されるような形で実施していただきたい。
 昨年度、この3月の入試は、日高郡は特に少し混乱した状況がありました。ことしは、当地域、日高地域のほうも特に教育委員会でもいろんな情報を集められて去年のようなことのないように、30人近くも定員をオーバーするというようなことのないように、よろしくお願いをいたします。
 以上で終わります。
○議長(中村裕一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で花田健吉君の質問が終了いたしました。

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