平成19年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(野見山 海議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午後一時三分再開
○副議長(谷 洋一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
三十番野見山 海君。
〔野見山 海君、登壇〕(拍手)
○野見山 海君 しばらくの間、おつき合いを願いたいと思います。
私は田辺市に住んで四十五年になりますが、その間、県会議員として四期十六年を務めることができました。これも県民の皆さんから今日まで変わらぬ御支援をいただいたたまものと、厚くお礼を申し上げる次第であります。
私は、常に「謙虚さと初心を忘れず、おごることなく」をモットーに、自分に言い聞かせながら今日まで努めてまいりました。県民の皆さん、地域住民の皆さんが安心・安全で暮らせる地域づくりのために、微力ながら地域を回り、地域住民の皆さんの生の声を聞き、いろんな課題に取り組んでまいりました。私なりに幾つかの要望の解決ができたと思っています。もちろん、それは行政職員の理解があってのことだと感謝申し上げます。今回の質問も、自分なりに地域を回った結果であり、地域の生の声を代弁するものであります。
それでは、通告に従いまして質問をさせていただきます。
最初に、南北格差是正について質問いたします。
昨年は、前知事が官製談合で逮捕されるという県政史上前代未聞の出来事がありました。私も微力ながら知事選挙で前知事を支援してまいりましたが、こうした事件を起こしたことに対する激しい怒りを感じます。県民の皆さん方に大変申しわけなく思っておる一人であります。
遅くなりましたが、過日の知事選挙で見事当選されました仁坂知事、まことにおめでとうございます。今後、県民は、しがらみのない県政のかじ取りを願っており、各地域住民の声を生かした元気ある和歌山、活力ある和歌山づくりを期待しているものと思います。
仁坂知事は、選挙を通じて和歌山県内各地を回ってこられたと思いますが、すぐには全体を把握し切れないだろうと思います。私が住む紀南地域の県民の切実な願いを知事に伝えたいと思います。
それは、和歌山全体にとっての大きな課題の一つである南北格差の、あるいは都市と農村部の格差の問題であります。何をもって南北格差というのか、さまざまな基準があります。複雑でありますが、私は、所得格差のみならず人口増減などもその指数となり得ると思います。つまり、地域が活性化しているところは人口はふえ、逆に停滞すれば人口は減るという形であらわれ、人口の増減は地域活性化のバロメーターになり得ると思っております。
そこで、人口の資料を使いながら、少し南北格差問題について考えたいと思います。知事の南北格差是正についての御所見を伺いたいと思います。
経済的停滞を続けている和歌山県では、全体としても人口減少を余儀なくされていますが、特に私が住む紀南の人口減少は著しいものがあります。平成十二年から平成十七年の人口減少は、実は県平均がマイナス三・二%ですが、西牟婁郡が平均より少ないマイナス二・九%なのを除き、田辺市がマイナス三・七%、新宮市がマイナス三・九%、東牟婁郡に至ってはマイナス六・九%、軒並み県平均を上回る減少率でございます。
人口減少には、社会的人口減少と出生率の低下による自然的人口減少が考えられます。これといった産業のない紀南では、若者の働く場所がなく、若年層の流出に歯どめがかからず、社会的人口減少が出生率の減少を生み、さらに地域の高齢化人口比率を高めてしまったと考えられます。
ちなみに、平成十八年三月現在の高齢人口比率は、県平均が二三・八%に対し、田辺市が二五%、新宮市が二七・八%、西牟婁郡が二六・三%、東牟婁郡が三三・一%と、極めて高いものになっています。このことは、地方自治体にとりましても、税収の減少とは逆に、高齢者負担増となって地方財政を苦しめる結果となっております。
平成十八年度の「和歌山県のすがた」という統計資料の人口一人当たりの市町村民税の市町村別ランキング表を見ましても、紀南のほとんどの市町村では県平均を下回っています。税収の低下は財政力指数にも影響を与え、紀南の多くの市町村の財政力指数は低位にあると思います。
地方交付税削減の中、今後ますます紀南地方の自治体の財政は苦しくなると予想されます。地方自治体の困窮化は、当然、地域住民サービスの低下につながり、住みにくい町につながると思います。高齢人口比率の高まりとともに、田辺市では、ひとり暮らしの老人の数が増加しております。平成十四年から平成十八年にかけて、ひとり暮らしの老人は千三百八十二人もふえ、この間の増加率は四一・二%になっております。
新田辺市になって、私は山間部の町村をくまなく歩いて、お年寄りの声を聞く機会を得ました。特に、山間部でのひとり暮らしのお年寄りの悩みには深刻なものがあります。多くの老人が、病気になったときや災害時にどうしたらよいのかという不安を抱えております。息子さんが都会に住むある老人は、「将来、息子と同居するというのも選択肢ですが、私としたら、住みなれたこの地で生涯を終えたい。一番よいのは息子が帰ってくることだが、働く場所がないのでどうしようもない」と嘆いておられました。
今、紀南で進行している地域の衰退、若年層の流出、税収の低下、行政サービスの低下と続く流れがさらなる地域の衰退化を生むというマイナスの悪循環をどこかで断ち切る必要があります。そして反対に、地域の活性化、若者の定着、税収の増加、行政サービスの向上というプラスの流れをつくり、紀南に光を当てていく必要があろうかと思います。
知事自身は、紀南の再生に向けて、紀南に光を当てるためにどういう手順で何をどうするのか、知事の考えをお伺いいたしたいと思います。
幸い、熊野古道の世界遺産登録や高速道路の南下が進み、紀南の町づくりに幾つかの条件が整いつつあります。働く場所の確保には、紀南の自然や文化を生かした教育文化施設や企業の誘致、地場産業の育成が大切であります。しかし、国家の財政難の中、これまでの国の補助金や地方交付税頼みの企業誘致の基盤整備事業、いわゆる中央依存型の地域振興策には限界があります。
そこで、地方財政難の中で、これからは自前の地域づくり、地域振興策が必要になってくると思います。これまでの、行政だけがすべての公共サービスを担い住民は単なるお客様という仕組みを見直し、住民と行政がともに町づくり、村づくりにかかわるという行政と地域の関係を見直す必要があろうかと思います。
高知県では、「自らの力で歩む高知」を理念に、県職員の中に縦割り組織にとらわれない地域元気応援団長やその下に地域支援企画員をつくり、市町村と協力しながら具体的な地域振興策に取り組んでいると伺っております。
こうした職員は、これまでの前例踏襲型の発想ではやっていけず、当然失敗も予想されるでしょうが、リスクを恐れない勇気と、しかも高い政策立案能力や行財政経営能力が求められると思います。つまり、職員は仕掛け人であり、演出家であり、調整役であり、高いコスト意識が求められていると思います。こうした職員の行政能力は町づくり、村づくりの中で鍛えられ、身につけるより方法はありませんが、こうした能力が今後ますます住民から求められることになると思います。
こうした高知県のようなシステムは地方分権時代の広域自治体職員の一つのあり方を示していると考えますが、いかがでしょうか。副知事にお伺いしたいと思います。
次に、防災拠点についてお伺いいたします。
各地でことしも最高気温を記録するなど、異常な状況ではないでしょうか。気象予報士の話では、北極の寒気が日本に南下しないため高い気温をもたらしており、また南から暖気が入りやすくなり暖冬の大きな原因になっているとのことであります。さらに、地球温暖化も進み、近い将来、日本も食糧不足、水不足が起こり、既に西日本でも暑過ぎて米がとれない時代になってきており、日本列島の農産物生産形態も大きく変わってくると言われております。
今、地球温暖化で世界各地で大きな災害が起こっていますが、本県でもいつ起こるかもしれません。先日完成した県庁南別館の中に設置される防災センターが県民の安心・安全のために生かされることを願う一人であります。
さて、県は、昨年五月末に東海・東南海・南海地震の被害想定調査を発表しました。次いで昨年末には県地震防災対策アクションプログラムを発表して、最大で約五千人を上回るという死者数を今後十年間で半減させる姿勢を示されました。私は、県の防災への積極的な姿勢を評価するとともに、今後さらに体系的かつ有効な防災対策を進めていただくことを強く要望するものであります。
私は、アクションプログラムで取り上げられておりますが、広域防災拠点についてさきの九月の県議会でも取り上げ、被害想定の最も多い田辺市にこそ防災拠点を持ってくるべきだと提案し、前知事から、田辺市の南紀スポーツセンター付近の土地が有力な防災拠点の候補地になり得るという答弁をいただいております。仁坂知事も、これまで積み上げてきた防災計画をどのように踏襲して来年度以降の計画に反映されるのか、また紀南地方での防災拠点をどのようにお考えになっておられるのか、知事にお伺いいたします。
次に、交通量の増加に伴う道路の線形改良について質問いたします。
知事は、去る一月二十六日に大阪市内で開催された関西プレスクラブで「元気な和歌山づくり」をテーマに講演され、報道陣に対して、県内沿岸の高速道路整備のおくれを補うために平成十九年度から内陸道路の国道百六十八号、三百十一号、四百二十四号及び四百二十五号の整備を重点的に行う考えを明らかにされました。
そこで、改めてまず道路整備全体に対する知事の考えをお伺いいたします。
平成十六年に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録された以降、熊野を訪れる観光客は大きくふえております。例えば本宮町では、登録された平成十六年には日帰り、宿泊客合わせて百十五万一千の観光客が訪れていますが、これは平成十年を一〇〇とすると二倍以上の二一七に上る数字だと言われております。特に、ことしも熊野本宮大社への初もうで客がふえ、昨年末から本年初めにかけて二十五万七千六百人の人々が本宮町を訪れたと聞いております。
こうした観光客の増加につれて熊野への交通量も増加しており、残念ながら、同時に交通事故も増加傾向にあります。先日も国道三百十一号の逢坂トンネルで二重衝突があり、二名が死亡するという痛ましい事故が発生しましたが、この道路、国道三百十一号で起こる事故が後を絶ちません。しかも、事故発生場所が、ある地域に偏って起こる傾向にあります。
特に、上富田町下鮎川の加茂から田辺市鮎川下附にかけての場所はカーブが多く、見通しの悪い場所であります。ここで、平成十四年十二月から平成十八年十二月の間に十件の交通事故が発生しております。今後、地元の交通事情がわからない県外からのドライバーがふえることも考えれば、このままではますます事故がふえるものと危惧されます。早急にドライバーに対する注意喚起や交通事故多発の看板をつくるなどの安全対策が求められていると思います。
さらに、道路の構造的な欠陥も指摘されています。見通しをよくするように道路改修を進めて交通安全対策を進めるとともに、世界遺産登録後の観光客の増加や高速道路南下に伴う交通量の増加にどう対応し、線形改良にどのように取り組むのか、県土整備部長にお伺いいたします。
以上をもって質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(谷 洋一君) ただいまの野見山海君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 南北格差、特に紀南の再生について私の考え方を申し述べさせていただきます。
県政の重要課題であります紀南地域の再生には、鉱工業の成長や、あるいは企業誘致に加えまして、地域の強みである豊富な農林水産物と観光資源の付加価値を高め、広くこれを売り出すということが有効な方法であると考えております。このため、関係者や市町村の意見をお聞きしながら農産物や紀州材の販売促進策や新たな加工法を検討するとともに、観光についても地域の特性に応じたプロモーション戦略の検討を行っているところであります。また、企業誘致についても市町村と一体となって積極的に取り組む必要があると考えております。同時に、高速道路の紀南延伸、県内の道路ネットワーク整備を重点的に進めまして、県北部はもとより、関西の大都市圏との時間距離を短縮することにより紀南地域の再生を図りたいと考えております。
防災計画につきまして、とりわけ防災拠点につきまして御質問がございました。
防災計画につきましては、議員お話しのとおり、昨年公表いたしました地震被害想定結果や、あるいは国の地震防災戦略などをもとに、地震等大災害による被害軽減の具体的な目標を定めた県地震防災対策アクションプログラムを改定しているところであります。今後も、引き続き本プログラムに基づいた防災対策をより効果的に進めてまいりたいと考えております。
次に防災拠点につきましては、東南海・南海地震等の発生により大きな被害が想定される本県にとりまして、災害応急対策を早急に実施するため広域防災拠点を整備しておくことは重要なことであると考えております。現在、平成十九年度末を目途に基本構想の策定を進めているところでありますが、甚大な被害が想定される紀南地方におきましてもその整備が必要であるというふうに考えております。
続きまして、道路整備全体についての考えでございます。
道路整備につきましては、元気な和歌山を実現するための交流ネットワークの整備として、まず、県にとって背骨となる高速道路である近畿自動車道紀勢線、京奈和自動車道、大阪府との交流を促進する府県間道路及び骨格となるネットワーク関連道路を最重点に整備したいと考えております。これらの道路網は、今後発生が予測される東南海・南海地震に備えた防災面や緊急医療、さらには企業誘致、物流、あるいは観光振興などの観点からも早急に整備をする必要があると考えております。
特に高速道路の整備に努力をしてまいりますけれども、完成に至るまでには時間がかかります。したがいまして、内陸部の橋本、田辺、新宮などの主要都市と高速国道をつなぐ三けたの国道をネットワーク関連道路として、おおむね五年を目標に整備してまいりたいと考えております。
○副議長(谷 洋一君) 副知事原 邦彰君。
〔原 邦彰君、登壇〕
○副知事(原 邦彰君) 地方分権時代における職員のあり方についてのお尋ねがございました。
議員御指摘のとおり、今後の地方自治体は、すべての公共サービスを行政だけが担うのではなく、個々の地域にふさわしい公共サービスに行政と地域住民がともにかかわっていく必要があると考えております。そのため、県では、職員が県民の皆様のもとへ出張して施策を説明する「出張!県政おはなし講座」を実施するほか、複雑多様化する行政需要に迅速かつ弾力的に即応する機動的組織として平成十七年度からプロジェクトチーム制度を設け、その中においても町づくりなどの分野で市町村や地域住民の協力を得ながら地域振興に寄与する活動も展開しております。
今後とも、これらの活動を積極的に推進していくとともに、職員の資質向上に努めてまいります。
○副議長(谷 洋一君) 県土整備部長宮地淳夫君。
〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 国道三百十一号の線形改良についてお尋ねがありました。
国道三百十一号は、県内陸部の交通を受け持ち、観光の振興や高速道路の開通に伴い交通量の増加が見込まれる重要な路線であります。その中で、議員御指摘の区間は、二車線改良は済んでいるものの、比較的長い直線区間に続いて小さなカーブが連続する区間であり、スピードの出し過ぎや町道交差点付近における前方車両の視認のおくれ等が原因と思われる事故が発生しております。このため、公安委員会と連携し、平成十九年度に運転者に減速を促し注意を喚起する標識や路面標示等の交通安全対策を実施いたします。また、線形改良につきましては、十九年度に実施する交通安全対策の効果を見きわめながら検討してまいります。
○副議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
三十番野見山 海君。
○野見山 海君 御答弁、ありがとうございました。三つほど要望させていただきたいと思います。
一つは南北格差是正についてでございますが、県内の市町村では平成の第一次合併が一段落し、第二次合併が進められようとしておりますが、しかし地域住民からは、「合併による効果を期待していたが、期待外れだ」という批判の声が聞こえてきます。「年金は減るし、介護保険は高くなった」というあきらめの声を少しでも和らげるため、地域住民の皆さんが安心して暮らせるような地域づくりをしていただきたいと思います。さらに、雇用の場を確保するために、県内外の企業を誘致するとともに地域産業を活性化させ、老人も若者もともに住める元気な和歌山、活力ある和歌山を目指していただきたいと思います。そのためには、県職員にはもっと地域に積極的に足を運んでいただき、地域住民の中に溶け込んでいただき、地域の思いをしっかり受けとめて県行政の中で生かしていただくことを強く要望しておきたいと思います。
もう一つは防災拠点についてでございますが、「災害は忘れたころにやってくる」と言われます。今、世界各地で地球温暖化が原因とされる異常気象による災害が起きています。紀南地方にもいつ地震が、津波が襲ってくるかもわかりません。特に紀南地方では海岸沿いに民家が多くあるだけに、災害時の迅速な対応が急務だと思われます。一日も早い防災拠点整備を強く要望しておきたいと思います。
三つ目は交通量の増加に伴う道路の線形改良でございますが、本県の道路は約七六%が整備されていると伺っておりますが、さらなる道路整備をお願いするところであります。今回私が指摘しました国道三百十一号は、平成十一年の南紀熊野体験博の開催に合わせほとんどが整備されましたが、私の知る限りでは未整備箇所があと三カ所ほど残っていると思います。
この国道三百十一号線は、地域の物流、観光、生活道路でもあり、新宮市からの利用者も増加傾向にあります。特に、指摘しております田辺市鮎川から上富田町下鮎川にかけた区間約百五十メートルぐらいですか、曲がりくねった箇所があり、交通事故が多発しております。警察に届けない事故も多いと周辺の住民の話もございます。
私は、知事が去る一月二十六日に大阪で開催された関西プレスクラブで報道陣に対して、国道三百十一号は曲がりくねった箇所があり早急に整備したいと発言された記事を見ましたんで、「ああ、中身よく知ってくれてるな」と喜んでる一人であります。死亡事故防止のためにもぜひ線形改良に取り組んでいただくことを強く要望いたします。
また、二月の十一日、二月二十四日にも交通事故が発生したことを報告して、要望といたします。ありがとうございました。
○副議長(谷 洋一君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で野見山海君の質問が終了いたしました。