平成19年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午前十時二分開議
○議長(向井嘉久藏君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、議案第四号から議案第十九号まで、議案第三十四号から議案第五十二号まで、議案第五十四号から議案第七十七号まで、及び議案第七十九号から議案第九十一号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
四十二番雑賀光夫君。
〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 おはようございます。
議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
第一の柱は、企業誘致と内発型の地域発展の問題について知事にお伺いいたします。
仁坂知事の最大のセールスポイントは、人脈を生かしての企業誘致ということのように思われます。私も、企業誘致ということは大事なことだと思います。そのためには一定の優遇措置もあってもいい、しかし、それには限度とバランスというものがあると申し上げてきました。ここ数年の間に最大の補助を受けた誘致企業は、カゴメなどが出資した加太菜園であります。これを誘致するに当たって、県は土地開発公社が持っているコスモパーク加太の土地を借り上げました。一平米五百六十六円でした。そこに菜園のハウスを建てられるように土地整備をいたしました。費用は二十億円であります。それを加太菜園に貸した地代は一平米百円でした。それに加えて、設備投資や雇用に応じた助成金が出るわけです。このことを地域小集会で報告しますと、皆さん、あっけにとられます。それを限度とバランスを欠いた誘致大企業への優遇措置だと私は批判してきたわけでございます。その後、和歌山県は百億円を限度にした誘致企業への助成を打ち出しています。人脈という売りはありますが、仁坂知事の企業誘致は前知事の路線をそのまま継承したものではないのでしょうか。
今、全国の自治体で補助金を積み上げた企業誘致競争が行われています。その輝かしい成功例として報道されているのが三重県のシャープ亀山工場です。ところで、その実態はどうでしょうか。三重県は、当初、一万二千人の雇用創出を目標に九十億円の補助金を支出しました。地元亀山市も、四十五億円を限度に固定資産税の九割を毎年交付するということにしました。実際の雇用は、亀山工場の雇用は四千人、下請二社で千五百人から千六百人。雇用は見込みの半分です。そして、その多くは外国人労働者、派遣労働者で、その人たちのためのワンルームマンションはふえたが、住民登録はふえないと言います。そして、地元採用は二百二十五人ということであります。
本県の加太菜園について見れば、これだけの補助金を積んで雇用は正規職員たったの七名、準社員三十一名、あと百十五名は一日五時間勤務で十カ月で雇用が切れる協力社員という状況です。さらに、需要が販売計画に達していないので二つ目のハウスの建設は延期というではありませんか。
知事にお伺いいたします。
第一に、企業誘致への補助金の費用対効果の問題をどう考えておられるのか。その一つとしてカゴメ菜園への助成──前知事が行った施策ですが──どういう評価をしておられるのでしょうか。
第二に、百億円の企業誘致助成について、私には加太菜園への誘致の延長線上にあるように思われますが、知事はどうお考えなのでしょうか。
第三に、私はこれまでも地域のいいものを見つけて元気にする内発型の発展ということを申し上げてきました。これまで和歌山県が行った事業でも、海南市孟子で行ったワークショップ、地域のいいところを見つける企画は大変いいものだと申し上げました。ところが、いいところを見つけて、例えば国産大豆を栽培するなどの案が出されても、それを発展させる補助金がたったの六十万円しかないなどについて苦情を申し上げ、大企業誘致補助とのバランスを欠くと申し上げたわけです。知事も、地域産業の育成ということを言っておられます。大企業への補助とのバランスを崩さない補助が必要だし、軸足は内発型の発展に置くべきだと思います。この点について知事の見解をお伺いいたします。
第二の柱は、看護師確保と野上厚生総合病院に設置される看護専門学校についてであります。
私は、昨年の九月県議会で福祉医療の問題を取り上げました。海南・海草地方でお産のできる産科病院が一つしかないことを申し上げ、改善を要望いたしました。その後、野上厚生病院に産科が復活いたしました。常勤の産科医は一人だけですが、曜日を決めて和医大から非常勤の応援をいただくそうです。さらに充実を要望しながら、関係者の皆様にお礼を申し上げたいと思います。
先日、この病院の看護師の皆さんが開いた医療問題の学習会に参加させていただきました。地域の皆さんが参加をして保健福祉センターの会場がいっぱいです。主催者も予想以上の参加だったようです。地域の医療に果たしているこの病院の役割、住民との結びつきが感じられる学習会でございました。
この野上厚生病院附属看護専門学校が四月からスタートいたします。和歌山県内の看護学校は、和医大保健看護学部、県立高等看護学院、医師会が設立した看護学校、日赤病院の看護学校などがありますが、小さい自治体病院が看護学校を立ち上げるというのは異例のことです。野上厚生病院は、準看護師の養成施設を持っていたのですが、これからは正看護師養成の一角を担うことになりました。看護師不足が言われ、昨年九月には医療関係団体が看護師不足対策を求める九千筆の署名を提出しています。県として、新しい看護学校を設立する、看護師の離職対策などの看護師確保計画をお伺いしたいと思います。
また、このたびのように野上厚生病院が看護学校を設立するに当たっては、県としても手厚い支援をしても当然ではないかと思いますが、どういう支援を考えておられるのか。以上を福祉保健部長からお聞かせいただきたいと思います。
第三の柱として、福祉施設の問題を申し上げます。
和歌山市内に虎伏学園という福祉施設があります。建物の上に小中学校の分校である虎伏分校があります。私は、県議会での最初の質問で虎伏分校の話をいたしました。病虚弱で家庭崩壊という二重のハンディキャップを持つ子供たちにこそ行政は光を当てなくてはならない。それなのに、この現実はどうなのか。私は、象徴的な一つの事実を申し上げました。それは、虎伏分校の教室のことです。普通、教室には出口が二つありますが、その教室には一つしか出口がありません。その出口を出ても、そこは廊下ではなくて、別の教室に入るわけです。こんな穴蔵のような教室で体の悪い子供たちが押し込められて勉強している。火事があったらどうなるのか。こういう問題を提起して改善を求めたわけでございます。
私と虎伏学園、虎伏分校とのかかわりには歴史がございます。今から十二年前に私は教職員組合の役員をしておりましたが、虎伏分校の組合員からひどい状態だから見に来てほしいという要請を受けて職場訪問をしたことがあります。その後も何回か行かせていただきましたが、そのときから気になっていたことを取り上げたわけでございました。
昨年暮れに、県会議員になって初めて和歌山市の市会議員の方と一緒に虎伏分校を訪問させていただきました。福祉施設である虎伏学園に入るのは初めてでした。分校、学園の皆さんがひどい施設の中で子供たちを守って頑張っておられる姿に感動いたしました。しかし、全く変わらないのは施設設備の状況でした。さすがに穴蔵のような教室は普通教室として使用せず、パソコンを置く部屋にしておりました。しかし、学園の屋上に置かれたプレハブを教室に使っているのも、十二年前と変わりません。夏になれば気温は三十五度を超すでしょう。福祉施設である学園には初めて案内していただいたのですが、一つの部屋に七人もの児童生徒が寝起きして暮らしています。息の詰まるような話です。この状態をどう考えていらっしゃるのでしょうか。
お聞きしますと、学園としては施設の建てかえを計画していると言われます。ほっとしました。このたび、この施設の改築については予算が提案されています。大変うれしいことです。どういう支援を行われるのか、福祉保健部長からお答えいただきたいと思います。
第四の柱は、地方税回収機構にかかわってであります。
和歌山県地方税回収機構が発足しました。「県民の友」十二月号では、税金の回収率が向上したと報告されています。しかし、県民の中ではとんでもないことが起こっています。
海南市の共産党議員団に相談が寄せられました。土地を持っているんですが、現金収入は年金だけです。区画整理の関係で土地の固定資産税が大幅に上がったので払えなくなりました。海南市の担当者には現物で取ってもらってもいいと言っていました。この方は、税金を払わないというのではなくて、現物納付でも払いたいと言っていたのです。海南市は、この案件を税回収機構に回しました。そうすると、税回収機構は、年金が入り、水道料金や電気料金を引き落とす普通預金の通帳を差し押さえました。次の電気料金が引き落としできなかったというわけです。
税回収機構が発足したとき、藤井議員の質問に答えて福祉保健部長は、「その選定に当たっては、悪質でやむを得ないケースのみが市町村から移管されるものと考えてございます」という説明をしています。ところが、機構が発足してみるとひとり歩きをして、今申し上げたようなことが起こっています。
副知事にお伺いいたします。回収機構で私が申し上げたようなことが起こっていることを御存じでしょうか。この現実は回収機構の本来のあり方なのでしょうか。地方税回収機構の対象は悪質滞納者に限るべきだと考えますが、いかがでしょうか。
また、このことに対比して、もう一つの滞納についてお伺いいたします。
かつての同和行政の負の遺産である中小企業高度化資金などの貸し付けの滞納問題が百億円を超しています。その多くが同和貸し付けです。どこの企業に貸し付けが行われているのか明らかにされませんが、貸し付け先が倒産して初めて明らかになります。
その一つを紹介しますと、倒産した一つ、プラスパーフーズというのは豆腐をつくる組合でした。五人の方が立ち上げました。最初の年に、土地を買うんだと言って十億円を借りました。二年目に、機械を入れると言って十三億円を借りました。ところが、本格的な生産が始まる前にこの組合は倒産しました。返済は一%でした。本当に生産する気があったのか。担当者にお聞きすると、水が合わなかったようですと教えてくださった方もありました。
さらに、幾つかの法人に対しては時効中断の措置がとられていなかったので時効が成立し、借金回収できなかったというのです。庶民への税金の取り立てに比べて余りにも甘く、ずさんではないでしょうか。中小企業高度化資金の滞納の実態と返済をどう求めていくのか。商工労働部長からお答えいただきたいと思います。
最後の第五の柱として、教育長にお伺いいたします。
十二月県議会でいじめの実態をどう把握しているのかという趣旨の質問がありました。その質問への教育長の答弁を聞いてびっくりしました。千人に対して〇・七件という答弁があったからです。実はこの数字は、文部科学省の調査に和歌山県から報告された数字をもとにしているんだろうと思います。その調査では、和歌山県の小学校にあったいじめは、その年は九件となっています。県下には小学校が三百校ほどあると思います。一つの学校でも九件ぐらいのいじめがあるかもしれない。大きい学校なら一つの学年でもそのくらいあるかもしれません。それなのに、現実と離れた数字をそのまま教育長が県議会本会議で答弁に使ったのを聞いてびっくりしたわけです。文教委員会でも少し議論したんですが、改めてこの場でいじめの実態をどう考えていらっしゃるのか、どう対応されるのかをお伺いしたいと思います。
また、この議会で教育長は、「和歌山県で先生が対応する生徒の数が全国で少ない方から数えて六番目ぐらいだ」ということを挙げて、「学校環境そのものがいじめが発生しにくいような面がある」とも述べられました。私はこの教育長の答弁には共感するものであります。
ところで、和歌山県で先生当たりの生徒の数が少ないというのは、小中学校で小規模校が多いから結果として先生あたりの生徒数が少ないということになるわけです。私は何も、学校規模は小さければ小さいほどいいとは思っていません。しかし、大規模校よりも中小規模校の方が子供の思いをじっくりと聞いてやることができると思っています。教育長の答弁もそういう意味でしょう。その一方で、県教育委員会が諮問した教育ニュービジョン研究会という報告がございますが、その報告では、適正規模は中学校では一学年三学級以上、小学校では二学級以上であるとして、それ以下の小中学校は統合を提言しています。私は何も、統合には何でも反対というわけではありません。小規模校のよさもあれば、一定規模を持った方がいい面があること、さらに通学距離はどうかなどを総合的に考えてその学校にかかわる保護者、教職員が合意すればいいというのが私の考えでございます。
このたび、いじめ問題にかかわって小規模校のよさに教育長が言及されたことで、私が申し上げてきたこととの大きな接点が生まれているのではないかと思って喜んでおります。教育長のお考えをお聞きしたいと思います。
教育問題の第三番目として、学校現場での荒れと研究指定校にかかわってお伺いいたします。
先日、海南市の小中学校の先生方と懇談をする機会がありました。最近の学校は忙しくなっていること、子供の様子が変わってきていることもさることながら、教育委員会への報告書類がふえている、研究発表会をすると指導案の書き方に注文がつく、もっと教員が子供に向き合うことを大事にする学校と教育行政が求められているのではないかなど、考えました。
その中で、他都市のある学校で年間二百回の公開授業研究をしているというお話を聞きました。公開授業というのは、その先生がする授業をいろいろな先生が見に来る、そういう授業でございます。公開授業、研究授業というのは現場の先生方にとっては相当のプレッシャーがあります。それが年間二百回というのは、学校現場を知っている者から言えば異常な回数です。しかも、その上にその学校が突出して荒れているというお話を聞いたわけです。皆さんのお話を聞いて、これはほうっておけないと感じ始めたわけです。
たまたま半年前にいただいていたその学校の研究会の資料を持っていたものですから、引っ張り出して詳しく読み直してみました。話題になっていた研究発表会の指導案であります。多いものは、十三ページの丁重な、丁寧な指導案がつけられています。さらに私は、「研究報告書」という冊子を読み始めました。研究経過の日程が書かれています。十二月にこの研究発表会がやられるんですが、その前の七月には外部指導者──これは教育委員会の指導主事とかいろんな方を外部指導者として登録していますが──外部指導者を交えた校内研究授業が七月の一カ月の間に八日間をかけて十五学級で実施されています。授業担当者のプレッシャーは大変です。七月の一カ月は恐らく研究授業以外には考えられない状況になるということは、教育現場を知っている者ならわかります。さらに、同じ研究授業が研究発表会前の十一月にも行われているんです。熱心に取り組んで、それで子供たちにとって楽しい学校になっていればいいんですが、ところが、この学校は大変荒れている学校だというではありませんか。
私は、この学校の研究体制にも目を向けました。県教育委員会の課長、指導主事、九人もいろいろな形でこの研究発表会にかかわっていらっしゃる。教育委員会はこの学校の実情をよくつかんでおられるに違いありません。その学校で華やかな研究発表会が行われる半面で、本当に先生がじっくりと子供に目を向けるような余裕のある教育がやられているんだろうか、私は大変心配しています。
研究指定校と研究発表会という華やかな舞台の裏でこんなことが起こっているということがあるのでしょうか。突出した学校の荒れということが起こったとすれば、教育委員会もそういうところにかかわっておられるわけですから、もう対外的な発表会ならいいからじっくり子供に向き合おうじゃないか、こういうことで外見的なことはやめてもいいという、そういう指導をなさってもいいと思うんですが、いかがでしょうか。
以上で、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 加太菜園への助成についてお答えいたします。
コスモパーク加太への加太菜園の誘致につきましては、県財政に大きな影響を与えかねない県土地開発公社の経営再建及びコスモパーク加太の土地の利活用という大きな取り組みの中の一環として進めてきたというふうに聞いております。県議会でのコスモパーク加太対策検討委員会の御提言も踏まえまして、経済波及効果などを勘案して県の費用負担を決めたものという認識でございます。その結果として、現況においても五ヘクタールの温室が整備され、地元を中心として当初計画を上回る数の方々が従事されていることなどからも、一定の成果はあったものと考えております。
次に、企業誘致でございます。
企業誘致に関しては、経営安定性や設備投資計画等について一定の水準以上の企業を誘致対象とすることとしております。また、進出計画につきましても、正社員の新規雇用数や設備投資規模、事業規模の妥当性、経済波及効果等を多角的に判断した上で誘致決定することとしております。
補助金制度につきましては、私は、経済政策に従事したものとしては、これだけで企業が誘致できるとは毛頭思っておりません。しかしながら、地域経済や県民生活の向上に貢献する有効な資金投資となるように、この制度をぜひ活用させていただいて企業誘致に努めてまいりたいと思っております。
それから、県内企業の発展の促進であります。
企業誘致がうまくいくかどうかということは、私は就任早々あるいは就任前からずっと言っておりますように、現に和歌山で操業している、あるいはこれから伸びようとしている企業がどうなっているかということが企業誘致について大事だと思っております。企業を敵対視するような風土では企業は誘致できません。したがって、地域産業・企業の自立的、継続的な成長を支援することが、一方ではまた最重要課題であると考えております。そのためには各業界のニーズを的確に把握し、県の施策はもちろんのことでありますが、それに対応する国の施策の積極的な活用を図ったり、あるいは新技術、新商品の開発、国内外での販路開拓、後継者育成等、産地みずからが企画提案力と情報発信力を伸ばそうとするようなそんな取り組みに対しまして、全力を挙げて支援してまいりたいと思っております。
○議長(向井嘉久藏君) 副知事原 邦彰君。
〔原 邦彰君、登壇〕
○副知事(原 邦彰君) 和歌山地方税回収機構での滞納処分についてのお尋ねがございました。
一般論といたしまして、滞納処分の対象となる財産については、滞納者の選択ではなくて、徴収権限を持つ地方団体が徴収上必要となる財産について差し押さえを行うこととなっております。また、地方税法上、御質問にもございました相続税であるような物納は認められておりません。
市町村から回収機構への移管につきましては、市町村の判断で行われることになりますが、その選定に当たっては、一般的には財産があるのに納付がなされないような事案や不動産の公売が必要であるといった徴収困難な事案が想定されており、その引き継ぎに際しては市町村と回収機構で十分に協議していただくものと考えております。
以上でございます。
○議長(向井嘉久藏君) 福祉保健部長小濱孝夫君。
〔小濱孝夫君、登壇〕
○福祉保健部長(小濱孝夫君) 看護師確保と野上厚生総合病院の看護専門学校支援についてお答えいたします。
看護師不足につきましては、議員御指摘のとおり、第六次看護職員需給見通しにおいて平成二十二年には七百十一人の不足が予想されており、看護師確保対策が本県の緊急課題となっております。
看護師不足の要因といたしましては、第一に高い離職率が挙げられることから、離職防止を最重要施策として、看護職員の不安やストレスの軽減を図るためのナース相談窓口を開設したところであります。さらに、病院内保育所の設置促進を図るため、看護師の児童に医師の児童を加えて二人以上の小規模保育所にまで補助対象を拡大するなど、安心して働ける環境づくりを積極的に推進してまいります。県といたしましては、こうした離職防止対策を初め、養成力の確保、就業促進、資質向上を四本柱として、今後とも量、質の両面にわたり看護職員確保対策に取り組んでまいります。
次に、国保野上厚生総合病院附属看護専門学校への支援についてですが、当該養成所は、昨年末、国の認可承認を受け、本年四月に一学年四十人の定員で開校を予定しており、看護職員の確保及び質の向上に大きな役割を果たすことが期待されます。県といたしましては、開校に当たり、看護教員の確保や県立養成所での教員研修の受け入れなど支援を行ってきたところでありますが、今後とも円滑な運営ができるよう引き続き支援してまいります。
次に、虎伏学園、虎伏分校についてでございますが、虎伏学園は、昭和三十七年六月、身体の虚弱な子供によい環境を与え、心身の健康増進を図る虚弱児施設として行政主導で開園されました。昭和五十年四月には施設内に小中学校の分校が設置され、以来、主として地域の学校に通うことが困難な子供たちのための施設としてその役割を果たしてまいりました。平成十年の児童福祉法の改正により、本学園は児童養護施設として現在六十人の子供が生活しております。しかし、施設建物につきましては、築後四十四年と老朽化し、子供たちの生活・学習環境としては劣悪なものとなっております。県といたしましても、建てかえ等の抜本的対策を早急に講じる必要があると認識しております。
その虎伏学園の改築につきましては、現在、設置主体である社会福祉法人が建設資金の寄附を募るなど精力的に活動を行っているところでございまして、県といたしましても、県教育委員会、和歌山市と連携し、平成二十年度中の供用開始に向け支援を行っていくこととしており、平成十九年度予算案において施設整備費に係る補助金を計上しているところであります。
なお、計画施設は、より家庭に近い小ユニット形式の児童養護施設、児童の心のケアを専門的に行う児童心理療育施設及び地域住民の子育て相談に応じる児童家庭支援センターの三施設から成る県内初の複合型施設となっております。
以上です。
○議長(向井嘉久藏君) 商工労働部長下 宏君。
〔下 宏君、登壇〕
○商工労働部長(下 宏君) 中小企業高度化資金の回収についての御質問にお答えをいたします。
平成十七年度末現在、貸付先合計五十法人のうち、約定どおりに返済している法人は十五法人、延滞している法人は三十五法人で、延滞額は約百七億円となっています。なお、破綻法人については、三十五法人のうち六法人となっております。また、延滞している法人のうち地域改善対策に係る法人は二十四法人で、延滞額は約九十二億円となっています。
破綻六法人については、資産の競売等法的処理を行うとともに、連帯保証人に徴求をしているところです。それ以外の延滞している法人については、経営状況の把握や従業員の雇用の安定等も踏まえ、未償還金の回収に取り組んでいるところであります。いずれにいたしましても、未償還金の回収は急務であり、全力を挙げて取り組んでまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育問題三点についてお答えいたします。
まず、いじめ問題とその対応の件でございます。これは昨日の新田議員の御質問への回答とほぼ同様のものになりますが、改めて答弁申し上げます。
平成十七年度の調査では、小・中・高等学校で、本県では八十六件のいじめの報告がありました。教育委員会としましては、教員向けに指導の手引を作成するとともに、二十四時間相談電話の開設、子供と親の相談員やスクールカウンセラーの拡充配置などによりいじめの早期発見、早期対応に努めているところです。
次に、本県は教職員一人当たりの児童生徒数が全国的に見ても少ない方であり、教職員の目が行き届きやすいという環境にあり、そのことがいじめ等を未然に防ぐ上で一定の役割を果たしているというふうに考えております。
昨年六月、最近急速に進んでおります学校の小規模化に対応するため、義務教育ニュービジョン会議の提言に基づいて策定した小中学校の適正規模化についての指針においては、人間関係力の育成、学習活動の活性化、課外活動の充実、こうした事柄を多面的に考えた上で策定されたものであり、人間関係に起因した、例えばいじめの問題のような課題にも対応できるものであると考えております。
今後とも、市町村における適正規模化への取り組みを、市町村の自主的な動きを尊重しながら県としても積極的に支援してまいりたいと考えております。
最後に、学校の研究指定については、本県教育の充実、発展に大きな役割を果たすものであり、多くの教育課題の解決に向けた極めて重要な施策であり、各学校の取り組みであると考えております。指定校においては教職員が一丸となって取り組んでおり、その熱心な取り組みの結果、どの学校においても豊かな成果があり、子供たちの変容や成長を目の当たりにして教師としての喜びを実感したとの声を多数聞いております。先ほど議員が指摘された事例は、正確な事実把握に基づくものなのか、疑問に感じております。研究指定とそれに伴う取り組みは大いに学校力の向上に寄与するものであると認識しており、今後とも実践研究の充実に向けた支援を行ってまいります。
以上でございます。
○議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 御答弁、ありがとうございました。幾つか要望意見と、それから再質問をしたいと思います。
まず、企業誘致についての加太菜園については、一般的な企業誘致とは別と考えられているようですが、県民の側から見ると、誘致企業への助成をするわけですから、同じことなんですね。特に気になるのは、これだけ県民の税金を投入しながら雇用がふえていないという問題があります。特に正規雇用の問題。コスモパーク加太の土地の利活用の取り組みの一環と言われていますが、それにしても、一平米年間百円というのは異常に安い値段。年間ですから。工業団地の場合には、西浜工業団地で月二百四円、雑賀崎で月百八十四円ですから、二十分の一以下の破格の優遇です。それだけの助成をするわけですから、例えばもっと雇用面で実が上がるようにならないんだろうか。八時間勤務の準社員の方、これは八時間勤務ですが、一年間で雇用が切れるということになっている。三十一人いらっしゃる。もしその皆さんが正規雇用を希望するのだったら、正規社員にするような努力を企業に求めていくようなことがあってもいいのではないか。こんなことを考えるわけですが、知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。これが一点目の再質問です。
そして、その後の企業誘致では、コールセンターの問題などもこの議会で問題になって、正規雇用ということが重視されています。その点は前進ですが、昨年の予算委員会で、私は、大きな奨励金を受けた企業が勝手に撤退しないように協定などは要らないのかという質問をして、商工労働部長からはその必要がないというお話がありましたが、新しい知事のもとで撤退企業が出た場合の県の対処についてまた議論をしていただきたいと思います。これは要望にしておきます。
次に、看護師確保の問題では、県として四つの柱で取り組むと言われましたが、看護師養成施設をふやすという施策がないことについては不満です。
それはさておき、野上厚生病院が看護学校をつくる場合、県としても一定の財政支援があってもしかるべきじゃないか。これは、採算の計画を見ますと、やはり一年目、二年目は多少の赤字を覚悟で、三年目でやっとこの採算がとれるという非常に厳しい中でこの病院をつくっていくわけです。この看護学校がうまくいけば、他の病院でも、それならうちでもつくろうかという機運も生まれるかもしれません。その点を要望意見として申し上げておきたいと思います。
次に、虎伏分校の問題です。二年後になりますが、新しい施設に移れる。今まで一部屋で七人が寝起きしていたという話をしましたが、これがただいまの答弁でより家庭に近いユニット形式というようなことも言われて、それなら個人のプライバシーも守られることになるだろう。本当にうれしいことでございます。それにしても、子供にとって二年間というのは大変長いものです。年をとるとだんだん年がたつのが早くなりますが、子供にとって二年間は長い。その二年間、子供たちが少しでも過ごしやすいように、例えば暑い教室に、小さいから家庭用のクーラーでも大体間に合うと思いますが、そういうものをつけるというふうな、少しでもこの二年間、子供たちが大事にされるような施策を関係者の皆さんで協力をいただけたらと思いまして、お願いいたします。これも要望であります。
それから、地方税回収機構につきましては、副知事は、市町村と回収機構で十分協議がなされているものと考えておりますとお答えになりました。「考えております」というのは、協議がなされているはずだとお考えなんでしょう。はずと考えるだけでなくて、実情をつかんでいただきたいと思います。
なお、その後も私は回収機構に足を運んでおりますが、回収機構の皆さんは、派遣された職員の皆さんはいろいろ苦労して、私どもが提起した問題についても考えて、苦労していらっしゃる。その苦労は大変わかるということもつけ加えておきたいと思います。
最後、教育の問題でございます。
いじめに対応する小規模校のよさについては、これは答弁になっていないんですね。一つはいじめに対応する小規模校のよさという問題を説明して、次に今度は適正規模というその方針を説明して、別々に説明したけども、いじめに対応する教育のよさということを教育長も言われたんだから、やはり適正規模という中にはやはりそういう要素も踏まえて総合的に考えるべきではないかという私の質問にはお答えになっておられないんですが、そうした、教育長が言われた、せっかくこの学校環境そのものはいじめが発生しにくい面があるという大変大事な論点が示されたわけですから、適正規模を考える上でもそうした側面も一つの要素として考えるべきではないかという私の提案は教育長のお考えとは余り変わりがないんではないかと私は思っているんですが、大分違うんでしょうか。これは再答弁願います。
なお、行政の上に立つ皆さんは、例えばいじめが小学校で九件だ──今、教育長がこの小・中・高合計で数を言われましたが、その中で小学校で言うと九件になるわけですが、本当にそうなのかと現場の実情をつかまなくてはならないと思います。研究指定校の実態にしても、そうです。
小関教育長が教育長になったころのことを思い出すんですが、よく飛び込みで学校現場を訪問されたものでした。校長さんなどは、突然飛び込んでくるんでかなわんと言って笑っておりました。かなわんと言って笑っているからいいんですね。かなわんと言うて顔をしかめられたら、これはどうしようもない。これが、点検に来ると思ったら、もう顔をしかめますね。しかし、教育長が来てくれていろいろ苦労しているのを聞いてくれると思ったら、かなわんと言いながらも笑っているわけですね。私は、この小関教育長がそういうふうに飛び込みで学校に行かれたのは大変いいなあと思って見ておりました。
単にこの数字を見てこうなんだというふうに思い込むんではなくて、思ってなくても議会答弁だからそう答えざるを得ないんかもしれませんが、そういうことではなくて、やはり学校現場の実情をつかむ。税回収機構だって同じことです。やはりそこで、現場で何が起こっているのかを、行政の上にいる者は下からの単なる報告を待っているんではなくて、つかむということが大変大事だというふうに思っています。学校で言うと、今その文書での報告がむやみに多くなるという話、最近は息が詰まるようだという話があります。きょう、この質問が始まる前に、傍聴に来ておられる先輩の先生方の話なんですが、「私らがいたころの学校はよかったな」、こんな話が出るわけですね。もっともっと子供の問題も大変難しくなっている中で、学校現場と教育行政の風通しがもっともっとよくならないかと、血の通った関係ができないものかというふうに強く願っています。そういうことも申し上げまして、二回目の発言を終わりにします。
○議長(向井嘉久藏君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事仁坂吉伸君。
〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 加太菜園の問題でございます。
現在は当初計画を超える雇用状況にありますけれども、当然、県といたしましてはさらなる正社員の雇用拡大を望んでおりまして、そのような話もしております。しかしながら、和歌山県の一般的な雇用状況や、あるいは加太菜園の現場の実情、あるいはその事業の進捗をかんがみますと、正社員という形態にだけとらわれるのでなくて、幅広く雇用の数の維持や拡大も求めざるを得ないというのが現状ではないかと考えております。
○議長(向井嘉久藏君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 再質問にお答えいたします。
答弁になっていないとは思っておりません。よく聞いていただけたら、学校の規模の問題といじめの問題は関連があると、それを含めて申し上げております。ただ、先ほど議員が御質問の冒頭でもおっしゃっていた限度とバランスということはあろうと思います。学校の規模が小さければ小さいほどいいということにはならない。いじめをする相手すらいないような学校になってしまったらどうしようもないわけです。おのずと適正規模というものがあると、その中で温かい人間関係なり学習環境がつくられていくということが大事だということを申し上げているわけで、「人間関係力」という言葉を使いました。人間関係を構築するというのは、コミュニケーション、さまざまな面で今子供たちに欠けていることでありますから、これをつくり上げていく上でも適正規模という考え方は必要ですと、その際にいじめ等にあらわされるような人間関係上のさまざまな摩擦やトラブルの問題も解決していける端緒がありますということを先ほど申し上げておりますので、答弁になっていないと私は思っておりません。
それから、適正規模の問題は、やはりこの現状をつぶさに見た場合、ほっておけないというのが正直な気持ちでありまして、何も県教委が先走ってやってるつもりでもさらさらありません。逆に市町村教育委員会、さらにその市町村教育委員会に対する地域の保護者の皆様方からの要望が極めて強いという背景を考えて、今回、十九年度予算に新規事業四千何百万かをお願いしているわけでありまして、一つの学校に子供の数が一けたしかいないような学校がふえてくる、二十人、三十人という学校が子供たちにとって望ましい学習環境とはとても言えないという、まさに限度に近づいているという中から適正規模というバランスを考えましょうということを申し上げているわけで、いじめ問題の解決と全く矛盾していないと私は思っております。
それから、先ほどの再質問の中で、教育長はもっと現場を知れという意味の御忠告をいただきました。九年間、私、教育長をやらせてもらっております。一年間に四十校から五十校学校訪問をするということは一貫して変わっておりません。特に十一月に、四年前からになりますか、学校開放週間ないし月間、小中学校にもどんどん一県民の立場でお邪魔をしております。私が訪問した学校の校長さんなり教職員の皆さん方が顔をしかめているか笑っておられるかは、それはわかりませんが、私なりにそれは一貫して学校の実情をつかんだ上で物事を考えていこうという姿勢は貫いているつもりでございますので、念のために申し上げたいと思っております。
それから、いじめの数字が議会用の何か形式的な答弁だというふうな意味のこともおっしゃいましたけれども、これは公式な統計の結果がそうなっているわけでありますから、それを違う数字を私がここで申し上げるわけにはいかない。ただ、それとさまざまな問題があるということとの間には若干乖離があるのも承知しております。
前回の文教委員会でも申し上げたとおり、暴力行為の数が東京都と和歌山県で同じなんてことはあり得ないという統計上の問題もあるわけです。いじめについても、定義や把握の仕方は文部科学省そのものが混乱しております。数字だけで判断しにくい、報告する場合の仕方にも問題がある、わかった上で──しかし、今わかっている、判明している数字はこれだから申し上げるべき根拠はそれしかないということを言っているわけでありまして、御理解願いたいと思います。
○議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 ありがとうございました。もう余り時間ありませんから長い話はしませんが。
企業誘致の問題は、せっかく県民の税金を使うわけですから、これは知事も当然お考えと思いますが、そのことが雇用の拡大や有効に働くように努力をしていただきたいと思います。大きなところではいろいろな意見の違いがありますが、その点は申し上げておきます。
教育長から御答弁がありまして、答弁になってないことはないということでございます。これはもう一回、私もこの答弁をよく読み直してみたいと思いますけれども。ただ、私も、この適正規模の問題では、何も小さければ小さいほどいいと言うてるわけではない。統廃合の問題は、やはり小さい学校は小さい学校のよさがあるし、あるいは一定の規模の学校の方が教育をしやすいという面があるし、もう一方では通学距離の問題もあるし、そういう問題を総合的に判断したらいいというふうに言っているわけです。
ただ、こういう議論があるとき、すぐに議論の、すりかえと言ったらまた悪いんですが、何も──例えば一学年一けたのクラスがある、だからという話がありますけれども、しかし、適正規模というふうに提言しているのは、そんな話で統合を言うているわけじゃないでしょう。小学校では二学級、中学校では三学級以下は適正規模でないんだということでやられているので、余り機械的にやらない方がいいというふうに言うているだけの話なんだということも重ねて申し上げたいと思います。
以上で、私の発言を終わります。
○議長(向井嘉久藏君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。