平成18年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(谷 洋一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十二番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、質問をさせていただきます。
 質問に入る前に、御報告とお礼を申し上げたいと思います。
 私は、昨年六月のこの議会で、JRの安全問題にかかわって、乗降人数が多いJR黒江駅のプラットホームと電車の段差の問題を取り上げました。企画部長からバリアフリー法の活用など前向きの助言と答弁をいただきまして、海南市地元で一気に機運が盛り上がりました。結果としてバリアフリー法にはよらなかったのですが、県から三分の一の補助をいただき、このほどプラットホームのかさ上げ工事が完成し、皆さん、大変喜んでおられます。この場をかりて関係者の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 さて、最初の質問に入ります。
 正直に申し上げておきますが、私は、福祉の問題には詳しくはございません。こうした私ではありますが、昨今の介護医療制度などの改革の中では「これは」と思う問題にぶつかるわけであります。素人の私なりにぶつかって「いかにもではないか」と思われる問題について、福祉保健部長としてどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
 第一点、九月十日に和歌山市民会館で障害者自立支援法フォーラムが開かれました。このフォーラムは、障害者団体十団体が県下で連鎖集会として開いている取り組みの和歌山市、海南市・紀美野町集会でした。市民ホールはいっぱいで、入り切れない方はロビーでテレビを見る状態でした。主催団体を代表して和歌山県手をつなぐ育成会の鈴木俊男理事長が障害者自立支援法を「自立と相反するもの」と批判され、障害者と保護者からの切実な願いが語られました。
 その一つでございます。三人の子供さんを持っているお母さん、一人が障害を持ち、こじか園という知的障害児通所施設に通わせておられます。あとの二人を一般の市立の保育所に通わせている。一般保育所の保育料は第一子で三万円、第二子は半額の一万五千円、第三子は無料だそうです。合計四万五千円となる。ところが、一人が管轄の違うこじか園に通っている関係で約八万五千円になるというお話でございました。これは、制度が改悪されたからやむを得ないということでは済まされません。私は、「制度の谷間」ということをよく言いますが、まさに制度の谷間、欠陥であると思います。こういう制度の欠陥は和歌山市だけのものなのか、全県的に一般にある問題なのか、福祉保健部長はどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
 第二点、地元のかたつむり共同作業所などにお伺いしても出されるのは、「自立支援法で利用者の負担が大変だ。利用者負担が工賃を上回るのでは働く意欲がわかない」という声でございます。こうした中で、施設利用をあきらめる方も出てきているとお聞きします。また、田辺市、白浜町などで補助制度が実現したとお聞きしています。県内で施設利用への影響はどうなっているのでしょうか。県内外で負担軽減の補助の動向はどうでしょうか。県として、こうした共同作業所を利用する皆さんにどういう負担軽減などの支援をされるのでしょうか。
 第三点、介護保険制度改定にかかわってお伺いいたします。
 ことしの四月に介護保険制度の改定があり、介護保険での福祉用具貸与サービスのうち、介護度一以下の方は、車いす、特殊寝台、エアマットなどが九月までの経過措置期間を置いて一部認められなくなりました。ケアマネジャーの方にお伺いしますと、例えば特殊寝台では、脳梗塞などで起き上がりが困難な人や腰痛のために床から立ち上がれない人などは大変困っていると言います。また、電動車いすでは、自力歩行で移動が困難な人なども、買い物に行けないなど支障が出ると心配されています。車いすというのは、日常的に歩行が困難だから使っているわけです。また、特殊寝台を利用している方も、それを利用して精いっぱい生活しているのであります。特殊寝台を頼りにし過ぎるのはよくないという言い方もありますが、その方の状況が一番よくわかっているのはケアマネジャーなどかかわっている皆さんだと思います。
 この問題について、県へはどういう通達があり、県から市町村へはどのような内容で指導されているのでしょうか。
 第四点、産婦人科医がなくなっていく問題です。
 医師不足が言われていますが、中でも産科の医師不足は深刻であります。海南・海草地方では、公立病院である市民病院にも野上厚生病院にも産科がなくなりました。民間病院からも産科がなくなり、産科の病院はたった一つであります。少子化対策と言われるとき、これでいいんだろうか。全県的な産科病院の状況と対策についてお伺いいたします。
 第五点、「心臓が悪くて長い間入院していた高齢の姉が、退院してほしいと言われているんです」という相談を受けました。私もよく知っている民間病院なので、事務長さんにお会いいたしました。事務長さんは、言いにくそうに言われます。「実は、院長の奥さんも――この奥さんもお医者さんなんですが――『長いおつき合いのこの患者さんに出てくれと言えるの』とおっしゃるんです。でも、今の医療制度のもとでは、退院してもらわないとうちの病院は倒産するしかないんです」、こういうお話です。
 今、療養病床を大幅に削減する方向が出され、それに合わせて診療報酬の改定が行われた結果でしょう。私も相談者も、それ以上の無理をお願いすることができず、相談者の方はアパートの二階の狭い自分の一室にお姉さんを引き取っておられます。療養病床から出されても老人介護施設の受け皿がない、その実態をどう把握しておられるのか、どうすればいいのか。
 以上の点、福祉保健部長の見解をお伺いしたいと思います。
 第二の柱として、イノシシ鳥獣被害対策についてお伺いいたします。
 最近、海南・海草地方は、どこへ行ってもイノシシ、イノブタの被害の話ばかりです。タヌキやアライグマもあります。イノシシなのかイノブタなのかは両論ありますから、ここではイノシシと呼んでおきたいと思います。
 ここ数年の鳥獣被害問題を振り返ってみますと、四年ほど前にはタイワンザルが大問題になっていました。海南市では、北野上小学校あたりの通学路に猿が出没し、民家の屋根などに猿の群れがいるのが見られました。県の方では、県外から専門業者を呼んで専門的な対策をされました。それは最後には大きな成果を上げ、今ではこうした猿の群れは海南市では見られません。
 ところが、そのころから問題になっていたのがイノシシ被害でありました。三年ほど前に、北野上の高津という地域では、特産品の桃を守るために、農家の皆さんが総出で山のふもとを防護さくで囲んでイノシシを山に封じ込めるのに成功しました。その後、隣の孟子という地域でも、農家の皆さんは力を合わせて農地を防護さくで囲むような形でイノシシを締め出しました。この二つの地域では、イノシシ対策は一定の成果を上げていると言えます。
 昨年からイノシシ被害が大きくなってきたというのは、海南市南部の中山間地であります。前回の議会で紹介した富夢想野というレストランがある別所という地域、三年前ぐらいから始まったイノシシ被害がことしはひどくなっています。藤白山のふもと、冷水地域でもひどい。藤白山を越えて、下津でも被害が出始めました。また、大きな農地もない市街地に近いところにもイノシシの出没をお聞きします。
 私は、今、イノシシ被害対策のために専門的な検討が必要だと思います。
 第一に、イノシシがふえているのか、そうでないのに山にすめなくなって田畑を荒らすのか、こうしたことを専門家の力をかりて調査する必要があると考えます。
 第二に、個体がふえているなら、本格的な個体を減らす方策を考えるべきです。猟友会の皆さんの協力を得るんですが、一般に皆さん、高齢化されている。大変御苦労です。狩猟できる方をふやす施策、おりをふやすことなど、積極的な施策が必要です。
 そして第三に、差し当たりの対応としての防護さくですが、海南・海草地方では県の補助制度をよく活用させていただいています。さきに紹介した高津、孟子では成功しています。しかし、別所という地域では、山の中に畑が飛び飛びに散在している。この地域全体を防護さくで囲もうとするんですが、地域の皆さんは、「さくの中にイノシシを飼っているようなもんだ」、こういうふうにおっしゃいます。有効な防護さくの活用が必要だと思います。
 そこで、関係部長にお伺いいたします。
 第一は、イノシシ、アライグマなどの被害の実態をどう把握されているのか。また、どういう対策をなさっておられるんでしょうか。
 第二に、イノシシの個体数、生態研究の専門的知識を踏まえて対応が必要だと思います。県として、個体数の把握や生態研究など、どこまでできているのでしょうか。
 第三に、イノシシの個体を減らす狩猟、おりへの公的助成などについて、お考えはいかがでしょうか。被害対策についてどういう指導をなさるのでしょうか。
 以上は、農林水産部長と環境生活部長への質問でございます。
 第三の柱は、住友金属での労働災害にかかわる問題でございます。
 最近、地域で産業格差を含みながらも景気が上向いている一つのあらわれとして、住友金属が増産に転じて収益も上がっているということは明るいニュースとして報じられています。私も、和歌山県の活性化や雇用の改善の引き金になれば大変うれしいと考えておりました。しかし、その陰の部分として労働災害、死亡災害がふえていることについては大変残念なことです。
 最近、私のところに各所から情報が入ってくるようになりました。実は私は、以前は労働組合に関係していまして、県地評の事務局長などとして民間の労働組合の皆さんとかかわっていたことがございます。
 その一九九一年、もう大分前のことですが、住友金属では一年間に七名の死亡災害という異常事態が起こったことがあります。私たちが収集したデータでは、その年に死亡災害以外に二十一件の休業災害があるはずでした。しかし、国会議員が立ち入りした調査でも、会社は「十四件です」と言い切ります。そこで私は労働基準監督署に出向いて、私たちがつかんだ事案について一件一件について突き合わせをし、どの事案が報告されているのか、されていないのか突き詰めました。すると、報告されていない事案の二件は、住金和歌山製鉄所の構内で起こっているんですが、尼崎の会社から派遣されている労働者だからというので、尼崎の労働基準監督署に報告されているということがわかりました。さらに、三件は極微災害、休養しなくてもいい災害だということであります。その話を下請労働者の皆さんが集まった場でお話ししました。その実態を下請労働者の一人の方が教えてくれました。「○○さんなら毎日会社に来ているよ。下請会社の専務が車で送り迎えして事務所に座らせておくんだよ」。こういう追及の中で、二十一件中一件だけを残して、つじつまが合うところまで労災隠しを含めて明らかにしたことがございます。そのときのまとめがこのパンフレットでございますが、私が労働組合運動をやったことで言うと、一つの記念碑的なパンフレットでございます。
 その後、住金での重大災害が少なくなったのは、会社や現場労働者の皆さんの努力によるものですが、私たちの追及も大きな力になったと自負しています。それだけに、災害がその後少なくなったことを喜んでおりました。ところが、ことし七月に入って重大災害が続いています。
 七月十八日、和歌山製鉄所で六十三歳の下請労働者の方がパイプの束に挟まれて亡くなりました。「北署の調べでは」と新聞報道されていますから、警察署としても発表されたのでしょう。
 ところが、住金海南工場で七月二日に紀美野町にお住まいの五十五歳の住金社員の方が亡くなっています。私たちが調べて「しんぶん赤旗」七月十九日に報道するまで、どこにも報道されていないように思います。
 この事故について調べているうちに、次のようなことがわかってきました。その一年前、この工場の今回の事故があった同じラインの近くで同じような事故が起こっている。そのとき、事故が起こったこの現場では、さく内に入れば自動的にラインが停止するような対策が打たれた。しかし、その隣の現場には安全対策がなされなかった。だから今回の事故が起こったと言うのです。事故には、もちろん本人の不注意やルール違反があるかもしれません。しかし、人間には間違いがあることを前提にして、さきに起こった事故を教訓にして安全対策をしなければならないと思います。
 こうした調査をしているさなか、さらに八月二十四日、新たな事故が起こりました。「本日、住金スチールにて休業災害発生(新人十九歳)」という表題がついています。「安全靴の先端の金具ごと挟まれたため、相当の重症という情報」として、「管理監督者及び指導員にお願い」として「新人に対して、初作業など一人作業をさせないこと」など、注意を喚起しています。現場の皆さんが事故防止に真剣になって取り組まれていることが手にとるようにわかります。
 しかし、先日、労働基準局に行ってみて、この災害についてお聞きしました。何と会社は、この災害を不休災害――休まなくともいい軽微な災害として処理しようとしていることが判明したわけであります。
 私は、この間、遺族や被災して苦しんでいる労働者を訪問し、現場の労働者の方からも、「労働災害隠しはやめさせてほしい」、「人をふやして、被災しても助けを求められない一人作業はなくしてほしい」、「老朽設備を改善してほしい」という声を聞きました。また、労働基準監督署を訪問した折、「八月一日から総合安全衛生管理指定事業所に指定しました。年度途中で指定するというのは異例のことです」とお聞きしました。これは、事故が多い要注意事業所という意味だそうです。「住金は、事故防止を労働者の注意に頼り過ぎるのではないか」とも漏らされました。
 今、住友金属は大きな利益を上げておられます。二〇〇四年三月期には六百八十七億円だった利益が、二〇〇五年三月期には一千七百三十二億円で、史上最高を記録しました。二〇〇六年三月期は、さらに大きく上回る二千八百七億円であります。この利益を安全対策にも振り向けてほしいと思います。
 住友金属は、和歌山にとっては大事な企業です。恥ずかしくない企業として県民と共存共栄してほしいと私は思っています。重大災害や事故隠しの問題について、木村知事の所見をお伺いいたします。
 次に、商工労働部長にお伺いいたします。
 担当課に労働災害問題についてお伺いすると、「労働災害については労働局の担当なので、私たちは新聞報道で見るしかないんです」という答えが返ってくるわけですが、県民の安全にかかわる問題に県政として無関心でいてはならないと思います。労働局と連携しながら、住金の問題に限らず、働く者の権利や安全を図る施策を進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、県は特定企業対策連絡協議会を開いて住友金属との話し合いをしてきたという経緯がございます。労働災害の問題も含めて協議する必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、事故防止の安全教育についても問題があります。
 昨年、JR福知山線の重大事故があり、あのとき、日勤教育という懲罰的な教育が問題になりました。事故防止の教育という趣旨ではありますが、事故を起こした労働者への懲罰的な教育が「列車をおくれさせてはならない」というプレッシャーをかけ、結果としてああいう大きな事故につながったのではないかという指摘がありました。
 住友金属の場合も同様なことがやられています。安全担当の方は安全、事故防止という意図からなのでしょうが、結果として事故隠しにつながる場合がございます。下請会社へのペナルティーというものもその一つです。
 さらに、私の手元に届いた資料に、「特定ルール違反者に対する自己研鑚全社制度」という書類がございます。平成十七年一月十七日、株式会社住金ユナイテッド和歌山安全健康課というふうに署名が入っています。その書類には、違反合計点数により事故始末書を書かせたり、特別作業(一週間)を科すことにしています。「特別作業は、当該課屋内外の共用スペース美化や緑化推進」と書かれています。つまり、ペナルティーとして草むしりをやらせるということであります。これは、JR尼崎事故の後、問題になった日勤教育そのものではないかと思います。
 商工労働部長にお伺いいたします。
 こうした労働者管理が事故を少なくするとお考えでしょうか。和歌山を代表する企業である住友金属が労働者の安全についても全国に誇れるものになってほしいと私は考えていますが、お考えはいかがでしょうか。
 最後に、こうした重大災害が増加し、しかも新聞報道されていないことについて私は問題を感じています。
 七月十八日の事故は発表されているわけですが、七月二日の海南の事故は新聞には発表されていません。届けがあったのでしょうか、なぜ発表されなかったのか、警察本部長にお伺いしたいと思います。
 最後に、第四の柱として、「和歌山県教育史 史料編」についてお伺いしたいと思います。
 大変立派な本になりました。お送りいただいて大変うれしく思いました。というのは、私もこの史料編集作成の一端を担わしていただいたという自負があったからでございます。
 この史料編の戦前部分で大きな地位を占める「紀伊教育」という資料があります。戦前の教育団体が発行したものですが、この教育団体の財産は、私が委員長をしていました和歌山県教職員組合が受け継ぎましたから、「紀伊教育」は和教組の書庫に保管をされておりました。この史料集が計画されたときに担当者が和教組本部においでになり、私も一緒に書庫に入って古い「紀伊教育」のバックナンバーを探したわけであります。そんな経過もあって、特別な思いで史料集に目を通したわけであります。「紀伊教育」がよく活用されているので、協力してよかったなと思いました。
 いろいろな感想はあるんですが、とりあえず「和歌山県教育史 史料編」をどういう観点で編集されたのか、教育史からどういうことを学ぶかなど、教育長からお伺いしたいと思います。
 以上で、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。(拍手)
○副議長(谷 洋一君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 住友金属での重大災害の頻発についてということでございますが、住友金属工業和歌山製鉄所は本県経済の相当なウエートを有しており、最近の好調な業績や今後の大規模な設備投資などにより、地域経済に幅広く大きな波及効果を及ぼすものと期待しております。しかしながら、労働災害については本来起こしてはならないものであり、本年になって住金の構内で二名の方が亡くなられたことは、まことに痛ましいことであると思います。
 今後、再発防止に住金として全力を尽くしていただきたいと県としても考えているところでございます。
○副議長(谷 洋一君) 福祉保健部長小濱孝夫君。
  〔小濱孝夫君、登壇〕
○福祉保健部長(小濱孝夫君) 医療、福祉問題についての五点の御質問にお答えいたします。
 まず、知的障害児通園施設と保育所通園の費用負担についてでございますが、知的障害児通園施設は障害のある幼児に対し療育訓練を通して発達を促すことを目的とし、一方、保育所は保育に欠ける乳幼児を保育することを目的とするもので、施設の役割や保護者負担などの制度の相違がございます。このため、両者を統合した軽減措置はございませんが、保育所徴収金につきましては、国に対し軽減措置を講ずるよう、近畿府県とともに要望しているところでございます。また、障害のある子供を持つ御家庭の負担を軽くするため、特別児童扶養手当や税の減免措置などの支援制度もあります。
 なお、障害者自立支援法の施行に伴い、十月からは障害児通園施設の利用に見合った負担や食費の実費負担をいただくことになっておりますが、過大な負担とならないよう、また保育所の負担との均衡が図られるよう、低所得の方への減免措置や食費負担の軽減措置がなされております。
 次に、障害者自立支援法施行に当たっての作業所通所等の問題についてでございますが、本県の知的障害者通所授産施設の利用者の状況につきましては、六月時点で、調査回答施設の定員八百二十七人中、利用者負担を理由として退所された方が八人――これは一・〇%に当たります――利用回数を控えている方は十人、一・二%となっております。
 障害者自立支援法では、利用者負担につきましては国が全国一律のルールを定めておりますが、サービス提供は市町村が一元的に行うこととなっていることから、県内市町村においても地域の実情に応じて独自の軽減措置を行うところがあると聞いております。県といたしましても、利用者の就労意欲の促進が図られるよう、経営コンサルタント等専門家の派遣等を通して、利用者が受け取る工賃水準が改善されるよう支援してまいります。今後とも、利用者が安心して必要な障害福祉サービスを受けられるよう引き続き注視し、その上で必要があれば国に働きかけてまいりたいと考えております。
 次に福祉用具の貸与問題ですが、要支援、要介護一のいわゆる軽度者に対する福祉用具の貸与については、その状態像から見て利用が想定しにくい車いす、特殊寝台等の品目が介護保険の給付の対象とされなくなりました。ただし、軽度者であっても一定の条件に該当する場合は保険給付の対象とされており、その該当性につきましては、原則として要介護認定における基本調査の結果を活用して判定することとされております。その際、車いすについては、基本調査結果による以外に、「日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者」に該当するか否かについて、適切なケアマネジメントを通じて指定介護予防支援事業者及び指定居宅介護支援事業者が判断することができるとされております。これらのことは、これまでも福祉用具貸与事業者を初めとする関係事業者や市町村に対し説明を行ってきたところでありますが、先般の厚生労働省の通知を受けて、改めて通知を図ったところであります。
 また、現在、国が示した事由以外で特殊寝台等が必要と考えられるケースがあるのかどうか市町村に照会しております。速やかに把握し、その実態を国へ伝えてまいりたいと考えております。
 産婦人科医不足についてお答えいたします。
 苛酷な勤務や訴訟の増加などから、新たに産婦人科医を希望する医師が減少するとともに、分娩を取り扱わない産婦人科医がふえるなど、全国的に産婦人科の医師不足は深刻な状況になっております。
 平成十六年末の国の調査では、本県における人口十万人当たりの産婦人科医師数は九・二人で、全国平均八・三人を上回っているものの、和歌山医療圏に集中し、地域的に偏在している状況です。こうしたことから、議員御指摘のとおり、海南・海草地域においては産婦人科医が非常に少ない状況にあります。
 県といたしましては、わかやまドクターバンク制度に加え、今年度から、産科を初め小児科、麻酔科の医師を確保するため、医学生や臨床研修医等に対する修学資金制度や医師求人情報ホームページの開設を行ったほか、診療体制の維持が困難となった中核的医療機関への医師供給等を行う地域医療支援事業の創設を考えており、今後とも産科医療を含む地域医療体制の確保・充実に努めてまいります。
 次に、療養病床削減と介護施設不足の問題についてでございますが、療養病床を有する病院の意向や入院患者のサービスニーズ等を把握するため、本年十月一日時点で調査を行った上で、来年秋ごろを目途にケア体制の計画的な整備を図る地域ケア整備構想を策定することとしてございます。この構想を平成十九年度に策定する医療計画や次期介護保険事業支援計画に反映させ、療養病床の介護老人保健施設への円滑な転換など、計画的な体制整備に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(谷 洋一君) 農林水産部長西岡俊雄君。
  〔西岡俊雄君、登壇〕
○農林水産部長(西岡俊雄君) イノシシを初めとする鳥獣被害対策の一点目、鳥獣被害の実態と対策についてお尋ねがございました。
 平成十七度における本県の農作物の鳥獣による被害金額につきましては、約三億円と把握をしてございます。内訳といたしましては、イノシシによるものが全体の約四〇%に当たる一億二千万円と最も多く、次いで猿、シカ、アライグマの順となってございます。
 農林水産部におきましては、従来からの電気さくや、また議員のお話にございました防護さく、こういったものの設置に加えまして、近年増加傾向にございますアライグマの捕獲おりに対する助成を新設いたしまして、環境生活部と連携をして取り組んでいるところでございます。
 さらに、農作物鳥獣害対策アドバイザー認定制度を創設いたしまして、イノシシを初めとする有害鳥獣からの被害防止を図るため、三年間で二十名の地域リーダーを育成することとしてございまして、現在既に七名が認定研修を受講中でございます。
 今後とも、こうしたマンパワーの充実をも図りながら、農作物の被害防止に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(谷 洋一君) 環境生活部長楠本 隆君。
  〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 鳥獣被害対策に関する二点の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、イノシシの生態把握についてでございますが、イノシシは個体数の変動が激しく、目撃が困難である上、他の動物に比較して繁殖力が高く、行動範囲が広いことなどから、有効な個体数の調査方法は現時点では確立されておりません。
 しかしながら、農業被害がここ数年一億円を超える水準で推移していることや、平成十七年度の有害鳥獣捕獲数が約千六百頭、狩猟による捕獲数が約五千二百頭、合計で六千八百頭に上り、五年前と比較いたしまして、有害鳥獣捕獲では五倍、狩猟による捕獲でも二倍と飛躍的に増加しておりますことから、かなりの個体数が県下全域に生息していると考えております。したがいまして、農業被害を軽減するためにも、急激に増加した個体数を削減することが急務であると考えております。
 次に、イノシシの個体数を減らす狩猟、おりへの公的施策についてでございます。
 中山間地域におけるイノシシによる農作物被害が問題になっておりますことから、今年度、イノシシ保護管理計画検討会を立ち上げまして、イノシシに係る特定鳥獣保護管理計画を策定し、狩猟期間を延長するなど対策の検討を始めたところでございます。
 その対策の一つといたしまして、狩猟免許所持者の確保に関しまして、特に被害を受けている農業者みずからがイノシシを捕獲するための狩猟免許を取得するよう啓発を行い、狩猟免許所持者数の増加も図ってまいりたいと考えております。
 今後は、この検討会の検討結果を踏まえまして、特定鳥獣保護管理計画の策定作業を迅速に進めてまいりたいと考えております。
 また、これとは別に、市町村が行っておりますイノシシの有害捕獲に対しまして、捕獲に要する経費や捕獲用おりの購入に対する経費に対し補助を行っているところでございますが、今後ともこれらの施策を中心とし、市町村、関係団体と連携を図りながらその捕獲を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(谷 洋一君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 住友金属での労働災害についての御質問にお答えをします。
 労働災害については、労働安全衛生法に基づき国が所管する事項ではありますが、死亡事故が発生していることはまことに残念なことであり、住友金属には、安全について十分配慮するよう申し入れをしているところであります。
 八月には、住友金属は和歌山労働基準監督署から総合安全衛生管理指定事業所の指定を受け、監督署からの指導のもと、安全管理の取り組みを進めていると聞いております。
 今後、和歌山労働局に対し、企業内での効果的な再発防止策や安全思想の普及啓発、さらに労働者に配慮した安全教育についても要請を行ってまいりたいと考えております。
 なお、お話の特定企業対策連絡協議会については、特定企業の経営動向が地域経済に及ぼす影響に対応するために開催するものであり、労働安全に関しては本協議会になじまないものと考えております。
○副議長(谷 洋一君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 「和歌山県教育史 史料編」についてお答えいたします。
 県教育委員会では、本県教育の歴史を振り返るとともに、新しい時代にふさわしい教育のあり方を考える基本資料とするため、「和歌山県教育史」全三巻の編さんに取り組んでおります。その第一冊目としてこのたび刊行した「和歌山県教育史 史料編」には、江戸時代から現代に至るまでの歴史史料七百七十二点を収録しました。
 編さんに当たっては、幅広い分野の多くの方々から史料の御提供をいただき、和歌山県教育会が発行した雑誌「紀伊教育」を含め、貴重な史料を多数掲載することができました。
 現在は、明治五年の近代教育制度の創設及び戦後の諸改革に並ぶ大きな教育改革の時期であると言われております。こうしたときに、本書におさめられた史料の数々を通して我が県の教育の歴史をたどることによって先人の営みを再認識し、次の時代の人々に正しく伝えていくことは大変重要で意義深いことであると考えております。
 今後は、本史料編などをもとにしながら、戦前編、戦後編で構成する通史編二巻を作成し、本県教育の姿をより明らかなものにしたいと考えております。その中で、県内の学校等に残された写真や旧制中等学校の校歌の合唱CDを作成するなど、県民の皆様に親しまれるものにしてまいりたいと考えております。
○副議長(谷 洋一君) 警察本部長辻 義之君。
  〔辻 義之君、登壇〕
○警察本部長(辻 義之君) お答えいたします。
 お尋ねの七月二日に海南鋼管で発生いたしました事故につきましては、発生当日に海南警察署に届け出がございましたけれども、警察広報はいたしておりません。
 警察広報につきましては、発生した事案の性質や公益性の有無、人権の保護、捜査上の支障等を総合的に検討し、発表すべきかどうかの判断をいたしております。
 労災事故の場合、過失の所在等も考慮し、発表の要否を慎重に判断しているところでございます。その点、御理解のほど、よろしくお願いいたします。
○副議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。――再質問を許します。
 四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 御答弁、ありがとうございました。
 要望と再質問を申し上げたいと思います。
 まず、医療福祉の問題で、私はあえて「私は詳しくない。素人だ」と申し上げて、素人だからできるような問題の羅列をいたしました。
 県民の皆さんにとっては、本当につらい問題がたくさんあります。障害者の作業所から退所された方が一%、八人と言われましたが、これを一%だけかと見てはなりません。八人の一人一人が大変な思いで退所を余儀なくされたのでしょうし、どうするのか悩んでいらっしゃる。今後ふえることが心配されるわけであります。
 実は、けさになって知ったんですが、滋賀県が今度この問題で補正予算を組んだそうです。その説明に、「なぜ稼ぎよりも多い利用料を負担しなければならないのかという根源的な疑問にこたえ、負担軽減の予算を組んだ」というふうに説明されています。この、だれでも考えるような、こういう素朴な、おかしいじゃないかというのを県当局として「根源的な疑問にこたえ」というふうに言って、そしてそれに対する予算を組まれた、この姿勢については大いに和歌山県も参考にしなければならないんではないか。そして、私の申し上げたような極めて素人っぽい素朴な疑問、その疑問が実は根源的な問題なんではないかという、私の質問に自信も強めたようなぐあいでございます。
 本来、弱者のためのものであるべき福祉が弱者に厳しいものになっている中で、地方自治体は「国がやることだから仕方ない」で済ますんではなくて、県民が困っている実態を国に突きつけていっていただきたいと思います。
 そして、介護保険改定に伴う福祉用具の貸与の問題では、最近、生活保護申請などで全国的に問題になっていますが、そういう国の制度が悪くなると担当者が自粛をして、どうしても萎縮をするということがよく起こってまいります。そういうことにならないように――実はそういう声が多いから今度厚生労働省が改めて通知したんだと思うんですが、そういうことにならないように市町村を指導していただきたいということも申し上げておきたいと思います。
 イノシシ被害の問題も少し申し上げようと思ったんですが、余り時間がありませんので、次に住友金属の労働災害の問題について少し申し上げます。
 警察本部長から新聞発表の問題について御答弁いただきましたが、現に人が亡くなっているわけです。病気で亡くなったんじゃなくて、機械に巻き込まれて亡くなったわけです。過失致死というような立件の対象かどうかということは別にして、労働安全への警鐘を鳴らすという意味で発表された方がいいのではないかという思いもいたしますので、意見として申し上げて、ひとつ検討をお願いしたいと思います。
 そして、労働災害と安全教育の問題なんですが、私も住友金属が労働災害を軽視しているとは決して思っていません。私の友人の中にも、この話をしますと、「今の会社は生産優先よりも安全優先と言ってるよ」と言う人もいます。また、地域を回って「住友金属へ行ってるんです」という話で奥さんに聞くと、「事務所勤務だったのが、八月からパトロールで現場を回ることになった。いつまで続くのか」というお話を聞きました。事故防止に一生懸命になっておられるようです。
 私はここに、手元にSUW――住金ユナイテッド和歌山だそうですね――「労働安全かわら版」六月号という壁新聞があるんですが、それに四月十六日、機械に小指を挟まれた労働者の反省決意文が掲載されています。実はこういうやり方、労働安全対策に、労働者の注意にだけ頼るところに問題があるんだろうと私は思います。事故に遭いたいと思っている労働者はいないんです。不幸にして事故が起こったとき、労働者や下請企業を事故隠しに追い込むようなペナルティーや見せしめ的反省文や懲戒的研修でなくて、本当の安全対策、生産に見合う人員や老朽設備に投資されることを望んでおきたいと思います。
 答弁では、国の所管事項だからと言うので、なかなか県には権限がないと言うので、ちょっとまどろっこしい答弁なんですが、労働局としっかり連携し、知事としても積極的に発言していただきたい。
 そこで、私はこの問題で労働基準監督署に出向いて、大きな災害でも不休災害扱いをしたり伏せたりしているという指摘をしたのが今月の十一日のことであります。それを受けて、労働基準監督署は住友金属に改めて指導に入ってくれたようです。すると、十五日に──十五日と私は聞いているんですが、戸崎住金副社長が現場においでになって、そして事故をなくさなくてはいけないんだという指導をし、労働災害を隠すようなことはするなというふうに指導されたという情報が私のところに入ってきました。
 私のような一県会議員が情報をつかんで動いただけでも、やはり会社は対応してくれてるんです。権限があるかないかというような、そんな問題ではない。やはり知事は県民の代表として、県民の命を守る立場で頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 最後に、和歌山の教育史の問題ですが、いろいろ興味深い話もあって、時間があったらもっとゆっくり聞きたいんですが、時間がございません。
 ただ、私が少し気になったのは、戦後和歌山の教育史で、立場はどうであっても、大問題だった勤務評定反対闘争などはどうなっているんだろうかという疑問も興味を持って見たわけです。すると、一九五八年に勤務評定の条例制定があって、それから十九年後に教育委員会と教職員組合がその勤評闘争の処分などを和解したというその和解文書があって、この二つの文書が入ってるわけですね。私は絵のない額縁みたいだという気はあるんですが、初めと終わりだけがあって中身の勤評闘争そのものがないというんで、担当者に申し上げたら「この六倍ぐらいの資料から涙をのんで削ったんです」というお話ですから、そういう苦労をなさったので、とやかくここでどうこうということは言いませんが、そういう感じを持ったということを申し上げるのと、それから、最近の時期になると教育委員会が打ち出した施策がずうっと並べられているんですが、こんなのは年表さえあったらいいので、そんなに一ページをとって史料として要るのかなという気もいたしました。
 教育委員会が中心になってつくる史料ですから、自分が打ち出した施策を載せたくなるのは人情なんですが、教育の歴史はいろいろな方でつくるものですから、もっと民間教育運動というものの視点があってもいいんではないかという気がいたします。通史編が出されるときに私の心配が取り越し苦労に終わることを期待いたします。
 また、歴史的評価が定まらない最近の時期については、余り評価を確定して書かない方がいいんではないかということも申し上げておきたいと思います。
 一つ教育長にお伺いするんですが、「和歌山県教育史」で、年表の巻は出るんだろうか。年表で広く、今私が申し上げたような民間の教育運動にかかわるものなども拾っていただきたいなと思いながらお伺いいたします。
○副議長(谷 洋一君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 「和歌山県教育史」に関して、史料編についてのいろいろな御感想なり見解を今聞かせていただきました。
 これは、最終的に千ページの予定が千百ページにぎりぎりふやしたという経緯もあるぐらいで、最大限可能な限り史料は収録したものでございます。限りなくたくさんある中からの選択であったということを御理解いただきたいということと、年表については、これは全体の流れが理解できるという点で非常に有効なものでありますので、今後刊行する戦前編、戦後編の二巻の通史の中で十分工夫を凝らした年表を掲載するように編集に当たっていきたいというふうに思っております。
○副議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。――再々質問を許します。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○副議長(谷 洋一君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。

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