平成18年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午後一時三分再開
○議長(向井嘉久藏君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
四十一番松坂英樹君。
〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に基づきまして、早速、一般質問に入らせていただきます。
私は、まず初めに鳥獣被害への対策についてお伺いをいたします。
実りの秋を迎えましたが、農家の皆さんは年々一層深刻となってきているイノシシ、シカ、猿などによる鳥獣被害に悲鳴を上げておられます。「あした収穫しようと思っていた作物を皆やられてしもた」、「芋でも、こんな細いのまで全部食べられてしもた」など、中山間地で苦労して農業経営を頑張っておられる農地でも、またわずかな年金を頼りに暮らしているお年寄りの家庭菜園まで、もう何もここではつくれない、こういう状況になっているところも珍しくありません。まさに、被害総額幾らという表面立った金額には出てこない大きなダメージを地域は受けています。
先日、有田川町吉原地区の中山間事業のグループの方にお話を伺う機会がありました。山の斜面を開発したパイロット園が広がる農地で、六十二軒の農家でつくっているグループです。続発するイノシシ被害に自分たちの手でも取り組もうと、イノシシの捕獲おりを五つ購入して設置をしたそうです。夏前に設置して以来、既に十一頭のイノシシを捕獲したそうで、おかげで被害はかなり減ってきたというお話でした。
ところが、同時に費用の面などで大変苦労しているという悩みをお聞かせいただきました。「夏場だったので、その捕獲したイノシシの肉がおいしくないというので引き取り手ができず、結局、火葬場に持っていって火葬してもらった」と言うんですね。「イノシシ二匹、大きかったので百キロ近くあったので、一キロ三百円の火葬料金で二万四千円もかかってしまった。大変だった」と言うんですね。私、イノシシを火葬場に持っていったというのは初めて聞きました。もったいない話です。
それに加えてですが、「おりを設置する際には地元区内の狩猟免許を持った方に指導してもらってやってきたが、その方も高齢であるし、自分たちもこれから勉強して免許も持って自分らでやれるようになろらということで、役員三人で狩猟免許を取りに行った。そしたら、免状を取るのに一人二万円近くかかった。それに加えて、狩猟登録をするのにこれから毎年二万円ずつ要るという。こんなに次から次へと費用が要ってはたまらない。何とかならないか」こう言うんですね。
私は、火葬場である有田聖苑事務組合へも出向いて調査したところ、イノシシのほかにも捕獲された猿やアライグマなど持ち込まれているということが明らかになりました。
これまで有害鳥獣の捕獲という点では、猟友会の皆さん、ハンターの皆さんに御協力を願ってきたわけですが、狩猟免許者の減少や高齢化、夏の猛暑の時期の有害対策の困難さにより、今後はこのような農家自身が農地を守る取り組みが広がっていくと思います。そうなると、今回の例は特殊な例ではなくなってくるし、それに向けた対応を今後考えなければならないというふうに思うんです。
こういった点を踏まえてお尋ねをするのですが、県はイノシシ保護管理検討会においてイノシシを特定鳥獣にして対策を検討しようとしていますが、これによってどう対策が強化されるのでしょうか。また、鳥獣被害対策では、農家や住民自身の取り組みへの指導や支援が一層求められてくるんではないでしょうか。
次に、猿の被害という点では、有田川町の岩野河地区を中心に、この前後の有田川中流域に被害が続出をしています。ある岩野河の住民の方は、「一つの大木にたかっている猿を数えたら百十匹まで勘定できた。きっと百五十匹はある」、そんなふうにおっしゃっています。ここの猿被害の深刻な点は、特にタイワンザルとの混血の問題です。しっぽの長いもの、中ぐらいのもの、こういったものが群れの中にまじっているとの報告も数多く出されています。和歌山市から海南市へのタイワンザル対策が一定の効果を上げた今日、生態系への影響の点からも、この地域への調査と対策が急務となっていると考えます。
以上、イノシシの特定鳥獣指定について、鳥獣被害対策への支援強化について、有田川中流部の猿被害対策についての鳥獣被害対策三点について、環境生活部長より御答弁をお願いいたします。
次に、農薬ポジティブリスト制への対応についてお伺いをいたします。
この制度は、食の安全を確保するという点で一歩前進と言えるものです。しかし、農家からは、農薬登録や使用基準の不合理などによる混乱や不安が根強く出されています。有田地方でも、夏場の数少ないかんきつ類として栽培されていたバレンシアオレンジが、一般的な栽培方法ではこの規制をクリアしにくいということで、大部分が伐採をされてしまいました。
さきの六月議会、また午前中の各議員の質問でも、このポジティブリスト制への対応について質問がありました。その中で、農薬の登録拡大の必要性や農薬使用や栽培方法などの農家への指導徹底、農作物への改植への補助がある点などが答弁されてきましたが、新たな設備投資などへの具体的な支援メニューまでは示されてきませんでした。サンショウがあり梅がありといったような中山間地では、地形的条件からの困難さがあるとの声があります。また、このポジティブリスト制に前向きに対応してみずからの農産物の安全性やこだわりを押し出したいという積極的な農家もいます。こういったやる気のある農家から、ドリフト防止ネットなど農薬の飛散を防止する、こういったものを設置するなりの支援が強く要望されています。
この点では、来年度予算編成に向けて、高品質で安心・安全な農産物生産という点からも、支援策をぜひ検討すべきではないでしょうか。農林水産部長の答弁をお願いいたします。
三つ目の質問に入らせていただきます。乳幼児医療費助成制度についてであります。
県は、今年度からこの乳幼児医療費助成制度の対象年齢を拡大し、通院についても小学校入学前までを助成対象とすることにしました。所得制限が新たについたものの、これは長年の県民要求にこたえたものであり、大変積極的なものだと評価をしてまいりました。
この助成制度は、実施主体が市町村であり、十月一日からのスタートに向けて、それぞれの実施要綱が出そろってきたというふうに思います。今回、県が導入した所得制限を設けずに計画をした市町村もかなりあると聞いています。また、和歌山市では、対象年齢を入院については小学校卒業前までに拡大をしたといううれしい知らせも聞いています。
私は、子育て支援という意味で、財政が厳しい中でも、こういった計画を持った自治体を積極的に評価をすべきだというふうに思います。県もこの後押しを受けて、今後、所得制限の廃止や対象年齢の引き上げなど、一層の改善策を検討すべきではないでしょうか。福祉保健部長より、県内の実施状況とあわせて御答弁を願います。
四つ目の柱である郵便局再編の問題に移らせていただきます。
このたび、郵政民営化への準備として、郵政公社は全国的な事業再編に乗り出しました。その一環として、県内でも十七の集配局が廃止をされ、近隣の局にその機能が統合されることになっています。この再編計画で住民へのサービスがどう変わるのかという心配の声が県内各地から上がっています。
私が住む有田地方でも、有田川町の旧金屋町にある金屋郵便局と旧清水町にある押手郵便局が集配局でなくなり、それぞれ湯浅局、それから清水局に業務が統合されます。私は、これによってどう影響が出るのか、お話を伺いに二つの郵便局を訪ねてまいりました。両局の局長さんは「サービスの低下はありません。不在郵便物も、局で預からずに毎日配達に持って出るようになります」、丁寧に説明をしていただきましたが、その地域や配達実態を聞けば聞くほど大変さが実感できました。
例えば、金屋局では外勤職員が九名いらっしゃいます。一日平均三千八百通の郵便物と、それから三百部程度の新聞の朝刊郵送も預かっているそうです。外勤職員の方は、朝九時に局を出てから夕方四時半ごろまでかかって、お昼も局に戻らずに配達や貯金、保険の業務に一軒一軒回るということです。
旧金屋町というのは、谷が手のひらのように放射線状に伸びていて、地形的には大変山間僻地を抱える局です。この外務員さんが、分社化ということで郵便業務と貯金・保険業務が分けられることによって別々の職員になって、それぞれの人が湯浅にある湯浅局の統括センターからバイクで別々に回る、こういうことになるそうです。広範な山間部に点在するその御家庭を回るのに、郵便、貯金、保険の三つの業務を一まとめにして回っていたからこそ効率的だったものが、別々に回ることによってかえって一人一人の職員の受け持ちエリアも広くなって、これまでのようなサービスが維持できるかどうかは甚だ疑問です。
旧清水町の過疎地にある押手郵便局では、三名の外勤職員が地域を回っておられました。ここでは、ひまわりサービスの話が出ました。ひとり暮らしのお宅には、ポストに郵便物を入れるだけではなくて、「おばちゃん、郵便やで。調子どうな」、こう言って一声かけて安否確認をするひまわりサービスというのが旧清水町と協定を結んで行われてきました。これが遠い局から広い地域を担当して回るということになれば、こういったきめ細やかなサービスが続けられるのかも不安になります。
また、この局長室には簡易保険の成績優秀という賞状が所狭しと並んでいたんですけれども、これは職員さんの頑張りとともに、こういう僻地では、民間の保険業者は経費の関係で余り入ってこない、そんな中で、地域からはやはり頼りになる相談相手なんだなという感じを受けました。
今回の再編を民営化、分社化に伴うやむを得ない措置なのだと郵政公社は説明をしますけれども、集配局から外れることにより、地域に働く場がなくなることは事実です。当該局としては集配業務がなくなって仕事が減るわけですから、窓口業務だけでこういった僻地の郵便局の経営がこれから成り立っていくのかどうかは非常に困難であり、民営化後に赤字局の統廃合などということにされるのは目に見えています。国鉄民営化でも同じような道をたどったんではないでしょうか。
今回の集配局再編計画では、県内の対象局は十七局ですが、再編計画の今回の基本というのは、郵便番号仕分け機というような施設を置く統括センターと言われる局、この大きな局への二段階的な集約ということにあるわけで、配達センターを残すというのはその過渡的な措置にすぎないわけです。ですから、先々統括局に統合をされていくことになります。
近畿圏内の各府県のこの統廃合の計画数というのを調べてみますと、大阪は今ある集配局七十七局が統括センター六十八局に集約ということで、九〇%が残るんですね。これに対して、京都は七十四局が二十七局に減って三六%に、兵庫は百四十二局が四十六局で三二%、奈良県は五十九局が十五局で二五%、滋賀は五十三局が十二局で二三%。そして、これらを上回って和歌山県では六十七局が十二局になってしまい、何と一八%にまで減ってしまいます。削減率、近畿でナンバーワンということになります。こういった意味でも、郵政民営化とこの郵便局の再編で和歌山県は近畿で最も大きな影響を受ける県だと言うことができると思うんです。
このまま二段階的統廃合が進めば、郵政民営化法案の審議の中で、特定集配局は地域の中のネットワークの中心であり価値は高い、こういったこととか、過疎地の郵便局は維持される、郵政民営化でサービスはよくなると、こういうふうに平気で答えた竹中大臣や小泉首相の答弁を根底から崩すものとなっています。
私たちは、地元自治体などの反対を押し切って統廃合を強行するなと主張してまいりましたが、県として、この集配局廃止統合と、それから郵政民営化による影響というのをどう見るのか。また、サービス低下や過疎地、地方切り捨てということにならないよう郵政公社や国に対して働きかけるべきではないか、この二点については木村知事より御答弁を願います。
五つ目の水環境条例の問題に移らせていただきます。
私は、これまでの質問で、河川の水質向上、水源の保全、濁水対策などからも水環境条例というのも制定をして、これを契機に和歌山県の豊かな自然環境を守り、はぐくんでいく、そういう取り組みが必要だと訴えてまいりました。
このほど、私ども共産党県議団では、近年、同様の水環境とかかわる条例を整備した岩手県と宮城県に出向いて調査をしてまいりました。この地はリアス式海岸の良好な漁場を持つ地域であり、「山は海の恋人」と、こういうスローガンのもと、漁師が山へ登って植林運動に取り組み、全国に広がっているその運動の発祥の地でもあります。
北海道と秋田、岩手、青森の東北三県は、知事会議の合意事項ということで、知事が相談をして、一道三県が同様の水循環を大切にする、そういう条例を整備しようということになって、岩手県では、ふるさとの森と川と海の保全及び創造に関する条例、こういう名前の条例をつくっています。また、宮城県では、ふるさと宮城の水循環保全条例、こういう名前で、こちらの方は、当局提案でなくて議員提案でできた条例であって、約二年間の議論の上に条例を制定していました。それぞれこの条例に基づいて河川流域ごとの地域の水環境保全計画、これを地方事務所、振興局単位に立てて事業に取り組みを始めていました。
私たちは、県当局からお話を伺うとともに、漁民が声を上げたその現場にも出かけました。その「森は海の恋人」等の多くの著書で有名な畠山重篤さん、この方に、気仙沼のカキの養殖場で直接お会いしてお話を伺う機会を得ました。畠山さんの著書は学校の教科書にも掲載をされていますし、ことしの三月にも、和歌山市で開かれた紀の川流域十二市町村による吉野川・紀の川流域協議会、この水環境に関する講演会にも招かれているので、話をお聞きになった方もいらっしゃるかもしれません。
私は初めて畠山さんのお話を聞かせていただいたんですが、大変感動いたしました。リアス式海岸の「リアス」という言葉は、スペイン語の「川」という語源があって、「川が削った湾」という意味で、川と海は切っても切れない関係だということから始まって、この気仙沼など海の漁業資源が豊かなのは、川の上流の山が鉄分やカルシウムなどを初め豊かな栄養分を運んできてくれているからなんだと。山があり、川があってこそ、プランクトンが育ち、海藻類や魚介類が育つのだということ。
このわかりやすい例として、ほぼ同じ大きさである鹿児島湾と東京湾、これはどちらが漁獲高が大きいかという話になって、鹿児島湾は火山活動によってできた湾だから流れ込む大きな川がなくて真珠の養殖もできないということに対して、東京湾は、水質はよくなくても流れ込む多くの河川からもたらされる山からの豊かな栄養分によって何と三十倍もの多くの魚がとれる、そういう話を聞いて私もびっくりいたしました。
また、三陸と和歌山の不思議なつながりについても教えていただきました。畠山さんたちの気仙沼の漁師が植樹をしている山は室根山という名前の山なんですが、この「ムロ」という名前は和歌山の熊野大社からいただいた名前で、東牟婁、西牟婁の「ムロ」と語源が同じだということや、カツオ漁で漁師同士の交流などもあるというようなことも紹介されました。
また、カキの養殖の勉強で訪れたヨーロッパの話にも飛んで、「世界遺産で和歌山の先輩であるガリシア地方は、スペイン無敵艦隊のあの木造船をつくる材木、これを供給した『湿ったスペイン』と言われる木材王国で、高野・熊野の和歌山と共通点がありますね」と、「自然科学だけでなく、歴史や文化も重ね合わせるとおもしろいですよ」と話をされました。
お話を伺って、山は山、川は川、海は海というふうに自然環境の問題を個々ばらばらにとらえるんじゃなくて、地域や縦割り行政の壁を超えて、森林から河川、そして沿岸へと流域単位で物事を考えないといけない時代だということを改めて痛感をいたしました。
ここで、県内の河川に注目をいたしますと、紀の川や熊野川などの一級河川、国管理の河川では、国が流域委員会を住民参加で設けるなどの試みを始めました。また古座川では、古座川流域委員会が幅広い行政と住民、研究者によって活動をスタートしています。
考えてみると、私どもの有田川など県内の河川は、いずれも流域面積が五百平方キロメートル前後のコンパクトなものであって、地域住民にとっても、その流域全体をイメージしやすい、そしてまた、頑張って取り組んだらその効果も目に見えてあらわれやすい、こういう地理的条件を備えていると思うんです。この和歌山でこそ、山、川、海の豊かな自然環境を統一的に生かしていく施策が必要であるし、そのことがかけがえのない和歌山の自然環境を磨き上げる原動力になると考えます。
私は、環境問題に熱心な県として行政と住民が力を合わせて流域単位で取り組んでいく必要があると考えていますが、現在、県内では、流域単位での環境保全、向上の取り組みはどの程度取り組まれているのか、その状況をお示しいただきたいと思います。環境生活部長より御答弁をお願いいたします。
さて、最後に紀の国森づくり税についてお伺いをいたします。
私は、去る二月議会でもこの森づくり税への県の対応を質問し、この税は、早期導入を求める声もある一方で各界から批判意見が相次いだというこの経過を踏まえ、県民に対する説明会や意見交換会を持って十分に対話と説明を尽くすべきではないかと申し上げてきました。
県としては、この間、各振興局単位に、南から順番に九回の説明会を開いてきました。私も有田振興局の会議室で開かれた説明会に参加し、説明会の様子を聞かせていただきました。しかし、参加者はわずか二十九名でした。資料を取り寄せてみますと、九回の説明会の平均参加者数はわずか二十五名です。和歌山市では、説明会が川南と川北と二カ所持たれましたが、県民文化会館が三十人、紀北家畜保健衛生所では十二人だったそうです。これは結果として大変お粗末だし、これをもって県民に説明をしましたと言われては困ると思うんです。
また内容も、税の仕組みにかかわる、どちらかというと実務的な説明が大部分で、森林の現況とか税の使い道についてはほんのわずかな説明だけでした。有田での会場から出された意見というのは、「使い道もはっきりしないものを県民に押しつけるのは納得できない」と、こういう批判的な意見ばかりでした。
一方、税の使い道について検討している紀の国森づくり基金活用検討会においても、アンケートや説明会の規模、県の取り組みの姿勢について不満の声も数多く出されたと聞いています。私は、これらの状況から、到底来年度から森づくり税の導入ができるような状態ではないと考えています。
そこで、総務部長にお尋ねをいたします。
県内各地の説明会で出された意見の特徴はどうであったか、また説明会を通じて県民合意は進んだと言えるのか、この二点についてお答えをいただきたいというふうに思います。
以上をもって、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 郵便局の再編問題についての御質問でございます。
郵政民営化に伴う郵便局の再編は国民の利便性をしっかり守って行われることとなっておりますが、中山間地域においては郵便局は地域唯一の金融機関として国民生活と密着をしておりますので、特に窓口業務のみを行うこととなる郵便局が所在する地域において住民の利便性が損なわれることがないよう再編後の状況を県としても十分注視していきたいと、このように思っております。
○議長(向井嘉久藏君) 環境生活部長楠本 隆君。
〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 鳥獣被害対策に関する三点の御質問にお答えを申し上げます。
まず、イノシシの特定鳥獣の指定についてでございますが、中山間地域におけるイノシシによる農作物被害の問題につきましては、これまでも県議会におきましてさまざまな御議論を賜っておりましたが、これらを踏まえまして、今年度、イノシシ保護管理計画検討会を立ち上げ、イノシシに係る特定鳥獣保護管理計画を策定し、捕獲を一層促進するため、狩猟期間を延長するなど対策の検討を始めたところでございます。今後は、この検討会の検討結果を踏まえ、特定鳥獣保護管理計画の策定作業を迅速に進めてまいりたいと考えております。
次に、鳥獣被害対策への支援強化についてでございますが、農作物に被害を与える有害鳥獣の捕獲は、市町村が積極的に取り組んでいる重要な被害対策の一つでございます。県といたしましても、その重要性にかんがみまして、捕獲に要する経費や捕獲用おりの購入に要する経費に対し、有害鳥獣捕獲事業等補助金を交付して市町村への支援を行っているところでございます。
また、これとは別に、平成十七年度から、有害捕獲許可を受ける従事者に必要な狩猟経験年数の条件を緩和するとともに、イノシシの捕獲許可日数や一人当たりの捕獲数を拡充するなど、許可基準の見直しを行い、効果的な捕獲の推進に努めているところでございます。最近の鳥獣被害の拡大を踏まえまして、市町村が取り組む有害捕獲に対しまして、今後とも引き続き積極的に支援をしてまいりたいと考えております。
次に、有田川中流部の猿対策についてでございます。
タイワンザルは、もともと日本に生息していたものではなく、人間により持ち込まれた種であるため、タイワンザルの増加によりニホンザルが減少することは本来の生態系に被害を及ぼすという問題が生じております。タイワンザルは一般的にはニホンザルと比較して尾っぽが長いと言われておりますが、それだけでは十分な確認が難しく、タイワンザルとニホンザルを正確に区別するためには適切な調査とそれに基づく分析が必要であり、またそれらに伴う経費と時間も必要になってまいります。
御指摘の有田川中流部の猿につきましては、有田川町を通じまして地元の住民の方々の目撃情報等を収集、分析いたしまして、今後の対応を検討してまいりたいと考えております。
次に、流域単位での環境保全の取り組みについての御質問でございます。
本県は、多くの自然豊かな河川に恵まれております。そして、そのすべての河川においてその清流を守っていくことが県民すべての思いでございます。本県では、恵み豊かな自然環境を守り育て、そして次世代へ引き継ぐことを目指して、環境基本条例に基づき環境基本計画を策定しております。
この中で、環境林整備面積や間伐実施面積、汚水処理人口普及率などに目標値を設定するとともに、例えば企業の森や漁民の森に係る育成支援、特定流域への水質上乗せ基準の適用、下水道等の生活排水処理施設整備、藻場、干潟の保全など、健全な水環境の確保に寄与するために山、川、海に関する環境関連諸施策を関係部局と連携しながら総合的に進めているところでございます。
議員の御指摘にもありましたように、各流域にはそれぞれの地域特性があり、これらを踏まえた取り組みが重要であるものと認識をしておりますので、今後、流域単位での検証につきましても研究を行ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(向井嘉久藏君) 農林水産部長西岡俊雄君。
〔西岡俊雄君、登壇〕
○農林水産部長(西岡俊雄君) ポジティブリスト制への対応につきまして、議員お尋ねのドリフト防止ネット等への支援につきましては、現在、該当する助成制度はございません。しかしながら、防止ネットにつきましては、防除暦でありますとか、あるいは低減ノズルの使用などとともに周辺農作物への農薬の飛散に配慮するというドリフト対策の一つでございますので、産地の特性など、引き続き生産農家の意見も聞きながら技術面また経費等経営の両面からも検討をしてまいりたい、このように考えてございます。
○議長(向井嘉久藏君) 福祉保健部長小濱孝夫君。
〔小濱孝夫君、登壇〕
○福祉保健部長(小濱孝夫君) 乳幼児医療費助成制度について、県内自治体の実施計画状況はどうか、今後、所得制限廃止や対象年齢引き上げなどの改善を検討すべきではないかということについてお答えいたします。
乳幼児医療費助成制度につきましては、乳幼児の疾病の早期発見と治療の促進及び子育て家庭の経済的負担の軽減を図るため、通院医療費の助成対象年齢を三歳未満から義務教育就学前の児童まで拡大し、各市町村において本年十月から実施いたします。
所得制限を設けるのは十四市町村、設けないのは十六市町村で、和歌山市では入院の対象年齢を拡大しているところでございます。
議員御提案の所得制限廃止や対象年齢引き上げにつきましては、本制度は他府県の状況等を踏まえ必要性や効用等を十分勘案したものであり、この十月からスタートするものでありますので、御理解いただきたいと存じます。
○議長(向井嘉久藏君) 総務部長原 邦彰君。
〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 紀の国森づくり税についてのお尋ねがありました。
この税については、「県民の友」などによりPRするとともに、八月二十一日から九月四日の間、県内計九カ所において、税の趣旨の理解を得ることと使い道の御意見をいただくことを目的として説明会を開催したところであります。
その説明会で出された主な意見としては、使い道が明確になっていない、あるいは既存予算で実施すべきといった意見もありましたが、一方では、森林の本来機能を回復させるためには税額をもっと高くすべき、郷土の自然を保護していく観点から親しみやすい税である、里山整備や学校教育などの身近な事業を行ってほしいという前向きな意見もございました。この説明会によるアンケート調査では、出席者の七割近くの方から、この税について理解ができたと回答をなされております。
いずれにしても、今後とも県民の一層の御理解と御協力を得るため、引き続き説明会の随時開催を行ったり、さらには、御指摘にもありました税の使い道の概要が定まった以降、啓発用パンフレットの作成・配布など、周知啓発活動に取り組んでまいります。
○議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 知事並びに関係部長から御答弁をいただきました。二つ要望を申し上げて、一つ再質問をさせていただきたいと思います。
一つ目は、乳幼児の医療費助成制度についてであります。
部長からは、県内三十市町村のうち十六の、半数以上の市町村でこの所得制限なしの制度が、要綱がつくられたという答弁があったと思います。これは大変積極的なことで、歓迎すべきだと思います。
今後のことについて聞いたわけですが、今、制度がスタートしたところなのでという答弁、次をせかすようでなんですが、これ、大事なとこだと思うんですね。有田振興局の管内でも、所得制限を設けなかった自治体が二つ、設けた自治体が二つというふうに半々に分かれました。対象年齢が拡大されたということは本当にどこへ行っても今喜ばれておりまして、胸を張っていい施策だというふうに思うんですが、住民にとっては、所得制限があったりなかったりという点では戸惑いがあるし、市町村としては胸を痛めているとこだと思うんですね。
今回のこの半数を超す自治体が所得制限なしで制度をつくったということや、さらに対象年齢を拡大した和歌山市などを積極的に評価して、今後のさらなる改善に向かっていただくように、重ねてこれは要望をしておきたいというふうに思います。
それから、郵政民営化の関係で要望です。
今回、この問題で私、質問を準備して、担当課から状況を聞こうと思ったら、何と、県の組織にこの問題を担当する組織・課が存在しないということがわかりまして、だれが答弁するのかと大変だったようでありますが、県民、特に過疎地の住民や自治体が心配しているときに、県としてこの問題に心を痛めている部署や職員がいないということに、私ははっとさせられたんですね。
私が指摘をしたかった今回最大の問題は、郵便局再編というのが来年十月の民営化を挟んで段階的に二段階で連続的に行われる予定なんだということで、それは、三月の三十一日付の郵政公社の文書であるとか、昨年十一月の公社の文書なんかでも、そのねらいというか、先行きが明らかにされているわけなんですね。その影響は、過疎地を切り捨てたり地域のネットワークを低下させるという事態を招く。これは本当に大変なことなわけで、県民、市町村とともに、この過疎地や地域のネットワークづくりに心を砕き、そして物申すべきはきちんと申していただくよう、重ねてお願いをしておきたいというふうに思います。
それから最後に、総務部長に森づくり税のことで再質問をさせていただきたいと思います。
答弁の中で、説明会のアンケートによると七割の方が理解できたと回答されているというお話もありました。意見も、こういう意見もあればこういう意見もあるというふうに、並列的に御答弁をされてて、聞いてたら、あれあれというふうに私は思ったんですが、何かこう県民理解が大きく進んでいるかのように聞こえるような答弁であったかと僕は思うんです。これは違うと思うんですね。
部長、どっかの説明会に出席されたのか、アンケートを書いたのを見たのかどうか、私、知らないんですが、私は説明会に参加もさせていただいて、アンケートも書かせてもらいました。それで、このアンケートなんですね。(資料を示す)設問はこんなんなんです。性別や年齢、職業を書く欄があって、その次の第一問に、「本日御説明させていただいた内容について御理解いただけましたか」、「理解できた」、「余り理解できなかった」と。これにすぐ丸をしなさいということで、何か授業を受けた後のテストみたいな、そういう設問なんですね。
税の使途や税負担のあり方などいろんな角度から参加者の意見や思いを聞いた後で、最後に、今回の森づくり税の趣旨に御理解をいただけるでしょうか、御協力いただけるでしょうかと、こういう聞き方なら私もわかるんですけども、今回のアンケートは、この職員の税の仕組みの説明がわかったかわからなかったかみたいな聞き方で、非常にお粗末なものだと私は思っています。
また、説明会で出された意見も、並列的に報告されていましたけども、会場の意見としては導入に批判的な意見が圧倒的に多かったというふうに私は聞いています。
私、再質問で言いたいのは、そのアンケート自身はお粗末なんだけども、アンケートが不十分だということを問題にするんじゃなくて、今回の説明会の参加状況や今回のアンケート結果でもって理解が進んだなんて思われては困る、そんなふうにとれる答弁をされては困るというふうに思っているんです。
税の使途について県民の疑問が多い中で、こういったものにこのぐらいの予算で使う予定にしてるんですというような例示もできない中での説明というのは、やはりおのずと限界があります。説明会での質問に対する職員の受け答えにも、その面での苦労が、私、にじみ出ていたというふうに思うんですね。
今回、九回持ったこの一連の説明会というのは、まず県民への説明の第一歩という位置づけじゃなかったんでしょうか。使い道や導入に向けてのプロセスなども含めて、もっともっと県民の理解と納得を得てこそ県民運動になるというふうに思うんです。
説明会も、それなりに宣伝もしたと。アンケートの感触もよかったと。あとはこの調子でパンフレットとかつくっていけば説明責任は果たせるというような感覚なんでしょうか。もしそうだとすれば、県のとらえ方は甘過ぎると言わざるを得ません。今回の説明会、一体県はどんなふうにとらえていらっしゃるのか、私の質問にもう一度お答え願いたいと思います。
○議長(向井嘉久藏君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
総務部長原 邦彰君。
〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 県民の理解についてのお尋ねでございましたけれども、御答弁申し上げましたとおり、これで十分ということではなくて、引き続き説明会の随時開催ですとか、それから、特に税の使い道について明らかになってないというような御批判もあったようでございますので、特にその点についての検討も進めて、ある程度その概要が明らかになった段階で引き続き周知啓発活動に努めてまいりたいと思っております。
○議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 答弁いただきました。今後、本当にその検討会なんかの答申も受けて、使い道とかいうことについて県民とキャッチボールしていくことになるんだと思うんですが、先ほど水環境で調査に行った岩手でも、使い道をどうするかというのは随分議論をされて、いわゆる啓発のソフトに半分、ハードに半分といったような使い方をしている高知の例とか、いろいろあったんだけども、岩手はもうほぼ全額を森林整備に使って、目に見える効果のある使い道をしなければ県民の理解が得られないというような議論をずうっと重ねる中で事業をしているというようなことも聞かせていただいたんですね。ですから、この県民とのキャッチボールが僕は大事だと思ってるんですね。
だから、この税の成立過程、これ見ましても、県民の理解と納得を得て進めようとしてこなかったし、到底この森づくり税を来年から強行できる状態じゃないということは、私は重ねて申し上げるんですけども、そういった点で、ぜひ県はきちっと真摯な姿勢で説明責任を果たすように、重ねてこれは要望しておいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
以上です。
○議長(向井嘉久藏君) ただいまの発言は要望でございましたので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
本日は、これをもって散会いたします。
午後一時四十九分散会