平成18年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時三分再開
○副議長(大沢広太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十八番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 議長のお許しをいただきましたので、以下四点、一般質問を順次、通告に従いまして行わせていただきます。
 一番目に、科学技術振興についてであります。
 国は、科学技術を一層発展させ、その成果を絶えざる技術革新につなげていくことによって経済回復を確実なものとし、持続的な発展を実現しようと科学技術の戦略的重点化を目指しております。
 平成十五年度に科学技術振興機構から採択を受け、年間約二億五千万円の予算で平成十六年一月から平成二十年までの五年間、産学官連携による研究開発事業を実施しているのが和歌山県地域結集型共同研究事業であります。重点研究領域は、平成十三年三月三十日に閣議決定された第二期科学技術基本計画における国が目指すべき科学技術分野に基づいており、地域が目指す研究開発と合致している課題に対し、地域の研究機関、大学、企業の結集のもと、世界レベルの共同研究を行って成果を出していくものであります。
 和歌山県も、豊富な農林・水産資源を有効に活用して、和歌山バイオ戦略のもと、バイオテクノロジーの研究開発拠点を重点的に整備するとともに、微生物活性化技術、機能性食品開発技術、生体反応装置関連技術等の研究開発に重点的、戦略的に取り組むという意気込みに大いに期待をするものであります。
 大学としては、近畿大学生物理工学部、和歌山大学システム工学部、県としては農林水産総合技術センターや環境衛生研究センターも参加、十社以上の企業にも協力を仰いでいるということですが、採択から約二年半を経過して、そろそろ具体的な技術開発、将来の地域貢献への方向性、またバイオ戦略の核となるバイオテクノロジー研究開発拠点である仮称・和歌山バイオ研究センターの概要も出てきたのではないかと思います。
 折しも、二月二十二日付の産経新聞の「『地域再生』最前線」の記事で、山形県鶴岡市という豪雪地帯の人口約十四万人の都市における細胞の代謝物質メタボロームの研究開発拠点の取り組みが掲載されておりました。五年近く前から慶応大学先端生命科学研究所の施設が開設され、山形大学農学部とともに、市が「バイオを生かしたまちづくり」を目指し、去年より中外製薬や味の素といった有力企業とともに共同研究を進めているそうです。まさに、鶴岡市はスピーディーな最先端技術の集積化に真剣に取り組んでいるのであります。
 先日、工科系の県立大学で、日本で一番就職率の高い富山県立大学の生物工学研究センターを今春立ち上げる浅野泰久教授が、和歌山ビッグ愛にて「大学でのバイオの取り組みと地域貢献について」と題して示唆に富んだ講演をされました。「富山県は三百年余りの薬の伝統があり、古くから酒、みそ、しょうゆといった発酵の分野があり、富山バイオバレー構想のもと、バイオベンチャーをつくろうと県外の大学や県内外の多数の企業が参加しています。富山県に比べると、和歌山県は多くの資源を持っています。地域に根差したスタッフを持って人材も育成すれば十分バイオ立県できます」と言っておられました。
 また、石川県立大学では農業短大から四年制大学へ拡大して生物資源環境学部をつくり、生物資源工学研究所を設置、県立広島大学では生物生産システム研究科で前向きなバイオ戦略を進行中であります。滋賀県では、宝酒造が参画した半官半民の長浜バイオ大学があります。日本でも指折りの農林水産物資源の宝庫・和歌山県でも、バイオ研究の核となるような機関があれば、きっと他府県に負けない取り組み、目に見えた地域産業振興と新たな雇用の創出ができるはずであります。だからこそ、この和歌山県地域結集型共同研究事業、これには地域産業の起爆剤として大いに期待をするわけであります。
 そこで質問に入りますが、一つ目、和歌山県地域結集型共同研究事業の進捗状況を以下三点に分けて、企画部長、お聞かせください。
 企業の参加状況とバイオにおける企業誘致の可能性について。地域産業の活性化につながりそうか。和歌山バイオ研究センター整備計画の進捗はどうか。
 二点目に、地域結集型共同研究事業とともに、知の創造とその活用により個性を重視した都市エリアにおける産学官連携基盤技術整備の推進を図るものとして、文部科学省の都市エリア産学官連携促進事業が和歌山市エリアにおいて平成十五年度に採択されております。和歌山市は、有機化学発祥の地と言われ、有機合成化学企業の集積されたエリアであります。この事業の進捗状況と、将来的に地域産業として実利をもたらしてくれるのか、期待できる商品を生み出してくれるのか、見通しを企画部長、お答えください。
 三番目、和歌山県のバイオ研究を推進するためには、核となる研究機関とともに、やはり理解のある教官と人材育成が必要であります。バイオ系の公立大学をつくるのはベストでありますが、残念ながら現状ではかなわぬことであります。平成二十年に終了する地域結集型共同研究事業の成果を実益を伴うものとして継承発展させていくためにも、せめて既設の大学と県の研究機関との連携のもと、広く全国から公募して官民問わず教官を募り、バイオ研究の人材を養成する仕掛けづくりを行っていかなければならないのではないでしょうか。知事の御所見をお聞かせください。
 二番目に、防災と公務についてであります。
 ことし一月二十六日から二十七日にかけて、中村裕一委員長のもと、災等対策特別委員会の県外調査で東京へ参りましたときに、平成十六年十月二十三日夕刻に起こった新潟県中越地震という村の原形をとどめないような大地震で被災された旧山古志村の元村長で現在は衆議院議員の長島忠美さんが、当時大変御苦労をしながらも村のリーダーとして、指揮者として大活躍をなされたときの貴重な講話を聞かせていただいて感動を覚えた次第です。その際、長島議員が、「私どもの避難所に和歌山県の腕章を巻いた保健師の方々が多数おいでいただいて、それこそ二十四時間、私どもの避難した人たちの健康管理、心のケアに相談に乗っていただき、地震の後、一回だけ和歌山県で保健所のシンポジウムがございまして、そこに寄せていただいたことがございましたが、今でも来てくださった人の顔は私は覚えているつもりでございますし、感謝にたえないところです」とおっしゃっておられたことを御報告しておきます。
 地震発生後、大混乱の中で、携帯電話すら通じない、役場の防災無線も機能していないといった情報から孤立された中で、絶対に緑の村を取り戻すんだという村民との約束を果たすまでは私は死ねないという意思を持って、寝ないで住民と向き合った日々の活動のお話でありました。
 印象に残ったのは、村の指揮者としては、迷わない、間違えないこと、どんなつらいときでも「ありがとうございます」と言葉を返すこと、そして、当初「我慢して」「頑張って」と言ったことが一番の失敗だったということ、リーダーたる者は目標を示さないまま「頑張れ」という言葉を言うと逆効果であるなど、含蓄のあるお話で、大変勉強させていただきました。
 その中で考えさせられたのは、大災害時における公務員の活動であります。公務員の皆様も、自分の家があります。自分の家族があります。大災害時には率先して災害応急対策に当たり、公務員としての務めを果たすことになります。大変なことであります。日常、近畿あるいは県の各種防災訓練の実施、そして庁内での指揮系統の徹底、与えられた職務の自覚と、いざ有事の際の準備、心構えは徹底されていることと思います。公助というより公義、すなわち公人としての義務という意識が絶えず要求されることでありましょう。
 一方、一県民として公務員の日ごろの防災活動も非常に重要であります。常日ごろは、自分の居住する市町村での防災訓練、そして自分の住まいのある自治会、地域での研修、訓練への積極的参加、それに自主防災組織の中での公人としての自分の立場をさらに御認識いただいて公人としての役割を果たしていただきたいと期待するものであります。
 そこで質問に移りますが、一つ目、大災害時における総司令官としての知事の心構えと、いつやって来るかもしれない大災害に備え、県民の一員としての県職員の役割について、知事の御見解を賜りたいと思います。
 二つ目、また昨年十月には、和歌山県で開催されました近畿府県合同防災訓練におきまして、東南海・南海地震を想定した全国で初めてという大規模な図上訓練が実施されました。県、市、消防、警察、自衛隊、そして他府県等が大同連携のもと、緊張感たっぷりに真剣に地図を広げての打ち合わせや会議などで刻々と変化する状況に対応しておられたのが印象的でした。この訓練の結果を踏まえ、今後、県として防災訓練にどう取り組もうとされているのかについて、危機管理監の御答弁をお願いいたします。
 三つ目に、地域医療についてであります。
 一番目、和歌山県立医科大学は、各医局から県内の基幹病院へ医師を派遣されており、地域医療に大きな貢献をされております。それも、決して豊富に人材があるわけではなく、ぎりぎりの状況で派遣を調整されているようです。一方で、地域医療も大事だが、全国に通じる医師の育成も重要という考えもあります。この観点から、県外への長期出向を推奨している教授もいらっしゃると聞いております。そのような県外への出向医師が多くなりますと、たちまち医大附属病院も地域の基幹病院も困るわけであります。病院において残った医師でやりくりしようとしても、患者そのものは決して減らないわけで、残された基幹病院の医師は過重労働を強いられ、結局、医大をやめてしまって開業医になるケースもあるということであります。そうなると、地方の基幹病院への医師の派遣がかなわなくなり、おのずと診察も減らさざるを得ません。
 医学教育のレベルアップを目指すことも大事でしょうが、同時に、先生方は医師として県内の医療を担う大きな使命もあるのではないでしょうか。このままでは地域医療がつぶれてしまわないかと憂慮する次第です。本来ならば、県内外へ派遣されたならば、その分を補充、埋め合わせしてしかるべきではないでしょうか。一つの科が手薄になると他の科で埋め合わせすることになってしまい、他の科も立ち行かなくなります。
 独立法人化も控えております。地域医療を守り、充実させていくためには、今のままでは大きな危機に陥りかねません。実際、まさに危機的状況の地域の病院もあるのではないでしょうか。学長に医師の県外、県内派遣についてお伺いいたします。
 二番目、昨年、教授の東京でのアルバイト問題が新聞で報じられました。ことし県立医科大学が法人化され、教員が非公務員になると、このような兼業がより容易になるのではないかと危惧しております。この点について、学長にお伺いします。
 三番、いよいよ四月には公立大学法人和歌山県立医科大学が新たに誕生いたします。私たち県民も、県民の目線に立った和歌山県の医療、医学教育、そして病院経営のますますの発展と充実に対し、大きな期待を持ってそのときをお待ちいたしております。極めて御多忙な毎日をお過ごしと存じますが、独立法人化を直前に控えて、学長の意気込みをいま一度お聞かせください。
 四番目に、全国的に医科大学、医学部において、小児科、産婦人科、そして麻酔科の医師数が少なくなっているようです。最近、新聞等でもその専門医不足が取り上げられています。県当局も、特に小児科、麻酔科医の確保に御尽力いただいているとお聞きしておりますので、今回は産婦人科に絞って質問いたします。
 日本産科婦人科学会の調査によれば、全国の病院の約三割で産婦人科医師が定員割れしており、多くの病院では産婦人科医が三日に一回の割合で当直勤務をしていると見られ、他科に比べて一番多くなっています。しかるに、国家試験合格者のうち産婦人科を目指すのは、多くて約五%であります。
 とりわけ、人材不足が深刻なのは産科分野であります。人気のない理由は、深夜の出産など緊急呼び出しも多く、拘束時間も長くて医師の肉体的、精神的負担が大きいという苛酷な労働環境、それに出産時の医療事故に伴う訴訟の増加、また血液による接触感染の危険性が多いことも挙げられております。
 産婦人科医のうち、経験五年未満の若手医師の半数以上を女性が占めており、女性医師は結婚や出産などを契機に勤務先病院を一たん辞職してその後復帰する場合、勤務の比較的楽な婦人科クリニックや開業を選択するケースが少なくないということです。和歌山県でも、特に産科の場合、夜間の産科医が少ないために夜の分娩に対応し切れない状況が起こらないか、山間部で急なお産が必要なとき対処できるのか、憂慮いたします。
 全国的に、産科を閉じてしまう基幹病院も多いと聞きます。少子化の影響は産科医不足、小児科医不足という事態を招いております。和歌山県の産婦人科、特に産科の現状と産科医の確保について、福祉保健部長にお伺いいたします。
 最後に、スポーツ振興についてであります。
 一つ目に、県スポーツ賞について。
 トリノオリンピック──結果はともかくとして、この寒い冬、テレビ観戦する我々日本国民のハートだけは熱くしてくれました。マスコミが、そして評論家各氏が大会前に取り上げた際の楽観論は、全くもって打ちのめされた結果でありました。勝敗がすべてではないのですが、日本国民であるという意識、そしてふるさとを愛する気持ちを鼓吹してくれる世界のスポーツの祭典です。今後、冷静な現状分析と中長期にわたった、さらに綿密な計画に基づいた選手の養成が急務であります。
 元オリンピックスピードスケート銅メダリストの橋本聖子氏も、次のように述べています。「トリノ五輪は日本勢は不振だったが、一部の選手だけを強化する集中強化方式では限界があった。中長期的に底辺を広げて草の根の人たちも楽しめるような普及、そして、かけ声だけでメダルを取れ、勝てと唱えるのではなく、ちゃんと過程を踏みながら育成強化を図っていかなければならない」と。この現象は、まさに我が愛すべき和歌山県の姿にも反映されているわけであります。第五十六回国体総合成績二十九位、第五十七回四十一位、第五十八回四十三位と来て、第五十九回最下位の四十七位、昨年の第六十回は四十三位という厳しい和歌山県の現実があります。
 県教育委員会も新年度を迎えるに当たりスポーツ競技力向上のため大きな強化を図りたいという、並々ならぬ意気込みを感じさせていただいております。トップアスリートを目指すためには、やはり幼少のころからの取り組みは大事であります。和歌山県における二巡目国体も、あと九年後であります。
 各種ジュニア、特に小学生の普及と育成、選手の養成については、各市町村のスポーツ少年団や地域の経験者による個人指導に依存していることがほとんどであります。まず、指導者は、練習会場を確保するのに自分の時間を割いて奔走し、練習は仕事後の夜間とか土日といった休みの日であったりで、自分の家庭をも犠牲にしながらも、子供たちが選手として強く大きくなれるようにとの思いで頑張っておられます。特に、大会や強化のための遠征費用などは自己の持ち出し、自己負担になっていることも多く、それでも一生懸命取り組んでいる指導者の皆様の実態があり、この小学生時からの指導、育成があればこそ中学、高校生の強化にもつながっているわけであります。子供たちは、雨にも負けず、風にも負けず、暑さにもめげず、寒さにもひるまず、懸命に今も練習に励んでいます。
 各種大会にはさまざまなケースがありますが、全国規模の大会というのは、厳しい県予選を勝ち抜き、さらに分厚い壁の近畿大会で全国大会出場枠を確保して初めて出場資格を得る、極めて厳しいものであります。県のスポーツ賞をそういった全国大会、一部近畿・関西ブロック大会上位入賞者に与えていただく、これが子供心に、また指導者の心に、この上ない喜びと今後のやる気、向上心を起こさせるかけがえのない栄誉であります。
 しかるに、平成十七年度より県スポーツ賞の選考基準のハードルは一気に上がってしまいました。国際大会、日本選手権大会、国体で大体一位から三位まで、ほかの各種全国大会は一位のみ、近畿・関西大会はスポーツ奨励賞もなくなりました。これは、いろんな競技において大きな反響を呼んでおります。近畿大会以上の上位入賞というのは、汗と涙の美しき結晶のたまものであります。そんな宝物のような喜びをたたえるスポーツ賞表彰の可能性が一気に無に等しくなったとき、特に子供たちにおいては、選手としての競技への向上意欲がなくなったり、指導者も指導意欲がうせたり、保護者の協力体勢にも大きく影響してくるでしょう。中学・高校進学の際も、県外へせっかくの逸材を流出せしめ、新しい芽が本県に育たなくなり、何よりも郷土意識も希薄になってしまうことになりかねません。子供という宝は、スポーツによっても大切に育ててほしいのです。
 もちろん、各種スポーツ競技においていろんな細分化された全国レベルの大会はふえてきております。スポーツ賞の表彰の経費捻出だって、決して楽なものではないと思っております。厳しい財政状況も理解できます。でも、せっかく新年度に低年齢の子供からの競技力向上強化を図る積極的な取り組みを行おうとしている中で、スポーツ賞のハードルはちと高過ぎやしないでしょうか。生涯スポーツの振興によって元気な高齢者がふえ、かかる医療費も少なくなってきているようです。その余剰分を青少年のスポーツ振興、県スポーツ賞に回していただきたいくらいであります。
 当局におかれましては、各種大会の選別も難しいことと思いますが、スポーツ賞の幅をもとに戻してとは申しませんが、改めて各種競技のそれぞれの大会のプライオリティーをきめ細かにチェックいただいて、子供たちを心身ともにたくましくするためにも県スポーツ賞に優しさを加味いただきたい。いま一度基準の見直しを検討いただきたいと思いますが、いかがですか。教育長にお尋ねします。
 二つ目に、武道の振興であります。
 かつて、和歌山県武道振興会というものがありました。武道を愛する有志の方で平成四年に発足して以来、宇治田先輩も新島先輩も会長を務められ、武道での心身の錬磨を通しての青少年の健全育成、日本の伝統文化の継承に御尽力をなさってこられました。当時、県立の武道館が欲しいという武道愛好家の共通の目標も確かにありました。しかし、経済環境、我が県の財政状況の厳しさから、その実現も、現状からは望み薄であります。さらに、県内の武道十一団体が毎年一回行ってきた武道振興大会も、平成十二年度より中止されてしまいました。武道振興会の運営や大会の開催のための予算もないという理由でした。でも、それで終わってしまってよいのでしょうか。
 私も、たまにではありますが、胴着を着て帯を締めて少林寺拳法の道院に立つことがあります。おのずと気分が引き締まります。子供たちに大きな気合いの声を出させて、突き、けり、わざだけでなく、礼儀も教える。そして、覚えたわざを大人を交えた拳士たちの前で、子供自身がリーダーとなって指導者の立場を経験してみる。日本ならではの社会教育であります。
 「説文解字」という後漢時代の文字の起源と意義を解説した書物の中に、「武は撫なり──この「撫」はなでる、いたわるの「撫」です──止なり──この「止」は争いをとめることです──禍乱を鎮撫するなり、禍乱を平定して人道の本に復せしめ、敵を愛撫統一することが武の本義なり」と説いています。ゆえに、武の本義は、人と人との争いをやめ、平和と文化に貢献する和協の道をあらわした道徳的内容を持つものであり、いたずらに敵を殺し、争いを求め、敵に勝つことのみが目的ではないのであって、武道というのは、その武の本義に従い、その目的を達するための道を言っていると言えましょう。
 少林寺拳法開祖・宗道臣氏によれば、「真の武道というものは、争いを求め、相手を倒し、自己の名誉や自身の幸福のみを追求する道ではなく、人を生かして我も生き、人を立て我も立てられるという自他共栄を理想とする道を言っているのであり、人づくりの大道でなければならない」と言われております。
 世の中の常識が常識でなくなり、道徳意識の低下が著しい昨今、青少年にかかわる犯罪や事件が後を絶たない状況であります。子供たちの体力の低下、しつけ不足、我慢強さの欠如等、憂慮すべき問題が山積しております。武道は、長い歴史の中で多くの先人たちが培ってきた日本ならではの伝統文化であります。今の青少年の教育、健全育成、そして護身の術に極めて有意義なものではないでしょうか。
 どの武道に限らず、武道というものは、心身の鍛錬を通じた人間形成、社会教育、そして次代を担う指導者、リーダーづくりを行うための絶好の修行であります。そして、日ごろの修練によって、自分の身は自分で守れるのだという自信に基づいた強さがあるからこそ人に優しくなれる要素を持っています。
 和歌山県は、合気道の創始者・植芝盛平翁を生み、古くは初代紀州藩主・徳川頼宣公が和歌山城の紅葉渓庭園で剣道の鍛錬を大いに奨励し、紅葉渓の決闘という史実もある伝統ある武道県であります。来年には、学生の全国規模の武道の大会が和歌山県において開催されると聞いております。だからこそ、ますます県教育委員会としても武道振興への強力な取り組みをぜひお願いいたしたいと思います。教育長の武道振興における御所見と教育行政の中での武道に対するお取り組みを具体的にお聞かせください。
 三点目に、中高連携のスポーツ活動の強化についてであります。
 例えば、和歌山北高校の体育科は一〇〇%の推薦枠で八十名を選抜し、トップアスリート養成を目指して御尽力いただいておりますが、中学生時からの競技力向上を目指してスポーツにおける中高一貫体制をとってみるのも一つの方法だと思います。できれば併設型が望ましいでしょうが、それも体育施設、運動場の関係もあって急には難しいでしょう。それならば、例えば比較的近い中学校と連携するといった連携型の中高一貫教育の中で競技力の向上を目指したらいかがでしょうか。その中で中学校、高校と一貫したトップアスリートづくりを行っても、大いに効果が上がるのではないでしょうか。スポーツに身も心も打ち込んでいる生徒は、いつしか礼儀も身について、勉学に取り組む意欲もわいてくるもので、まさに文武両道の望ましい形があらわれてくるのではないでしょうか。
 また、先ほど少年スポーツの振興に触れさせていただきましたが、スポーツ少年団等でトップクラスの選手を目指して指導してくださる民間の方々の力もおかりして、学校教育の中で、指導者不足のために高校にはあるが中学校にはクラブもなく引率もままならない競技についても、一般の社会人が中学校の中で、学校行事に参加できないという制約はあるかもしれませんが、社会教育と学校教育を結びつける、まさに点と点とを結びつける方法を検討いただいてスポーツの中高一貫を図ってもいいのではないでしょうか。中高一貫のスポーツ教育について、教育長に可能性を問わせていただきます。
 以上四点、第一回目の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、バイオに関する人材の育成についての御質問ですが、三年前に地域結集型の共同研究、これを和歌山へ導入するというふうなことでうまくいって、その後いろいろな研究がなされているわけでございます。この研究には、もちろん地元の和歌山大学も入っておりますけども、全国各地からいろいろな研究機関とかの方を集めて行われておりますので、この研究を継承発展させる意味でも、この地域結集型の共同研究というものを基礎にして、和歌山県でこれからもバイオテクノロジーのプロジェクトを継続していくような仕組みを考えていく必要がありますし、その中で、この研究の中で培われたいろいろな人間関係、そしてまた人材育成の手法というふうなものを生かした和歌山らしいバイオテクノロジーの発展方策というものを考えていかなければならないと、このように思っております。
 次に、防災時の心構えということでございますが、和歌山県の場合、東南海・南海地震の可能性が非常に高いということで、今、防災センター、大分でき上がってまいりましたけども、いろいろハードの施設等についての整備を進めたり、そしてまた「稲むらの火」の顕彰でありますとか、いろんな形でこの防災問題の県民への意識の定着ということを進めているわけですが、しかしながら、例えば私個人をとってみて、本当にいろいろ日ごろこのことを意識しようという気持ちでいるものの、本当にずっとできているかと言うと、なかなかやっぱりそれは難しいというふうな面があります。
 そういう中で、今お話のありました、今議員になられている長島村長さん、目標を示さないで「頑張れ、頑張れ」というふうなことは逆効果でよくないとかというふうなことも非常に示唆に富むことだろうと思いますし、私自身も、やはり防災のときの中心的な立場をとる人間として、自分でロールプレーイング的な意識を常に持ち続ける必要があると思います。
 それからまた、最近いろいろな災害が起こっていて、そのときに、例えば知事はどうしたか、市長はどうしたか、そして、それがうまくいったか、こういうことはうまくいかなかったかというようなことについては、いろいろな例があると思いますので、そういうことをやっぱり日ごろからちゃんと目を通して拳々服膺して、和歌山でそういうことが起こったときにむだのない行動が、的確な行動がとれるような努力をしていきたいと思いますし、そしてまた、これは職員の人にとっても全く同じことだと思いますので、そういう方向のやり方を少し勉強してみたいなと、このように思っております。
○副議長(大沢広太郎君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 科学技術振興についての御質問でございました。
 まず、地域結集型共同研究事業における企業の参加状況についてでございますが、近畿大学のベンチャー企業でありますジーンコントロール株式会社や県農業協同組合連合会の植物バイオセンターなど、十一機関が共同研究に参加をしております。
 また、企業誘致につきましては、現時点では具体的なものはございませんが、研究成果の事業化を図る活動の中で、特許等の移転を希望する県外企業には共同研究施設等の利用を促してまいりたいというふうに考えております。
 次に、地域産業の活性化につきましては、これまで十六件の特許出願を行っておりますが、このうちの幾つかが事業化に結びつきつつあります。例えば、高温域での病気への耐性が強いアコヤガイを開発しておりますが、これは共同研究者の漁業生産組合で生産を始めております。また、既存製品より生体への適合性が高いという特性を有する人工歯根の製造技術につきましても、その技術移転を県内企業に打診をしているところでございます。
 今後とも、特許の活用や技術移転など、共同研究成果を県内産業へ広げてまいりたいというふうに考えております。
 さて、次の和歌山バイオ研究センター構想についてでございますが、現在、県工業技術センター内にコア研究室を設け、最新鋭のたんぱく質等の解析装置やアグリバイオ情報のデータベースシステムなどを整備しております。
 今後とも、県の研究開発推進基金や国等の競争的資金の導入により当コア研究室の機能を充実し、産学官の共同研究プロジェクトを継続的に実施することによりバイオ研究センターの機能を担ってまいりたいというふうに考えております。
 続きまして、都市エリア産学官連携促進事業につきましては、これまで二十件以上の特許出願が見込まれておりまして、このうちの幾つかにつきましては参画企業への技術移転や事業化が進められているほか、県外の電機メーカーへのサンプル提供を開始するなど、一定の成果を上げてきております。
 当事業は今年度が最終年度となっておりますが、研究成果をさらに発展させ、事業化に結びつけるための制度が文部科学省において設けられておりまして、県といたしましては引き続きこの制度に応募することで県産業の活性化に寄与してまいりたいというふうに考えております。
○副議長(大沢広太郎君) 危機管理監石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○危機管理監(石橋秀彦君) 今後の防災訓練についてお答え申し上げます。
 議員お話しのとおり、昨年実施したロールプレーイング方式の図上訓練は、従来から実施されている展示型とは異なり、訓練参加者みずから疑似的な災害状況下での意思決定を訓練する内容となっております。職員の防災能力を高める上で、非常に有意義であったと考えております。
 県としましては、これらの成果を踏まえ、平成十八年度、大規模図上訓練を県内一カ所で、また、県防災総合訓練については伊都振興局管内において実施する予定でございます。今後とも、こうした訓練を通じ、災害発生時の職員の意識づけや関係機関との連携を図ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 本県の産科の現状と産科医の確保についてお答えを申し上げます。
 県内の産科医療につきましては、地域の基幹的な公的病院を中心として、民間の診療所においても提供されているところでございます。人口十万人当たり産婦人科医師数は八・四人で、全国平均の八・〇人を上回ってはいるものの、地域的に偏在している状況にあると認識してございます。
 議員御指摘のとおり、出産などにより勤務を離れる女性医師が増加する一方、新たに産婦人科を志望する医師は減少しております。県内の産婦人科医師数は、平成十六年の調査では九十六人と平成十四年より十三名減少しており、今後の産科医療体制の確保について懸念をしているところでございます。
 県としましては、産婦人科医師を確保するため、不足の著しい小児科や麻酔科とあわせて医学部学生や大学院生に対する修学資金制度を新たに創設するとともに、県内の産科医療体制の重点化、効率化を図るため、周産期医療ネットワークづくりを推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 医科大学学長南條輝志男君。
  〔南條輝志男君、登壇〕
○医科大学学長(南條輝志男君) 地域医療についてのうち、医師の県外・県内派遣について、教員の兼業について、独立法人化を直前に控えた学長の決意と意気込みについてお答えいたします。
 地域医療への貢献という観点から、地域への医師の供給と全国に通じる医師の育成はいずれも重要でありますが、その両者のバランスを図ることが極めて重要であると認識いたしております。
 地域への医師の供給につきましては、全国的な傾向として、医師の開業や都会志向が高まる中、深刻な医師不足に陥っており、そのため本学といたしましては、卒後研修医や卒後三年目以降の後期研修医の確保を図るなど、地域医療を担う医師の養成に努めております。今後とも、行政と連携しながら地域医療の充実に貢献してまいりたいと考えております。
 次に、法人化後の医師の兼業につきましては、引き続き、より厳格な審査を行うとともに、県内の医療機関での兼業を優先するよう配慮してまいりたいと考えております。
 最後に、法人化を控えての、特に地域医療についての決意でございますが、きのうお答えいたしましたとおり、法人化になりましても地域社会貢献、とりわけ地域医療の充実は本学の大きな使命であります。法人化後も県民の皆様に高度で良質な医療が提供できるよう、全力を尽くしたいと考えております。
○副議長(大沢広太郎君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) スポーツ振興の三点についてお答えいたします。
 和歌山県スポーツ賞につきましては、スポーツ水準の向上とスポーツの振興に貢献し、その功績著しい者または団体に対し表彰を行うという趣旨のもとで行ってきております。本年度は三月二十日に、第四十四回目となる表彰式を行うこととしております。
 近年、種々の全国大会や近畿大会が数多く開催されるようになり、従来の基準のままでは比較的容易に県スポーツ賞の受賞が可能な状況になってまいりました。こうしたことから、多くの選考委員から、受賞者が栄誉と思い、長く記憶に残るよう選考基準の見直しを行うことが望ましいとの意見が出されてきておりました。このため、二年間をかけて、学校教育や競技団体などの関係者から成る選考委員会において、他府県の基準も参考にしながら大会の規模や内容を精査するなど協議を重ね、本年度選考基準の見直しを行ったところであります。
 今後とも、全国的な大会のレベルなどに留意しながら、選考基準について引き続き研究してまいります。
 次に、武道振興についてでございます。
 武道は、礼節を重んじ、みずからの心とわざの錬磨の上にその道をきわめる大変厳しいスポーツであります。教育委員会では、中学校及び高等学校の体育教員を対象に技能や心及び指導方法についての研修会を毎年開催しており、学校における武道指導の充実に取り組んでおります。今後も、学校体育はもとより、幅広く関連の団体と連携しながら武道の振興に努めてまいりたいと考えております。
 三点目の、中高連携によるスポーツ活動の強化についてお答えいたします。
 現在、例えば和歌山北高校では、体操やフェンシング等で小中学生との合同練習を行っており、また箕島高校では、箕島中学校との間で協定を結んで相撲や空手などで指導者や練習場の不足をカバーし合いながら成果を上げております。
 こうした運動部の活動を助けるため、高等学校では運動部活動外部指導者活用事業として二十八の学校の三十五クラブに、また中学校ではスポーツエキスパート活用事業として四十校に専門的な指導者を派遣して、運動部活動と社会体育との連携によるスポーツ活動の強化に努めております。
 議員御指摘のとおり、こうした連携によるスポーツ活動は本県のスポーツ振興のためにも重要であることから、今後とも積極的に取り組んでまいります。
○副議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十八番長坂隆司君。
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 科学技術振興の二つの事業については、実際の実用化のめども幾つかつき始めているとお話を伺って、人材育成のできる核となる研究機関の立ち上げとともに、新年度の大きな企業誘致施策とタイアップしていただいて、バイオ、とりわけ和歌山県ではアグリバイオ関連企業の誘致の可能性も追求いただきたいと思います。
 防災ですが、県民は、そして市町村は県知事を初め県職員の皆さんの背中をよく見ておりますし、頼りにしているということであります。ぜひ、知事、公人としての県職員のリーダーとして、県民の総司令官として、有事の際にはどうかよろしくお願いいたします。
 大学病院、地域の基幹病院の医師と開業医とは所得や労働環境に大きな開きがありがちな中、県当局と医大におかれましては、県民の生命、健康を守るという公的使命を帯びた医師の働きがい、生きがいの持てるもろもろの労働条件の改善、そして人材の育成にさらに御尽力いただきまして、今後とも、良好なパートナーシップのもと、県の地域医療を引っ張っていっていただきたいと思います。
 中高一貫のスポーツ教育というのは、特色ある学校づくりにも、学校のアピールにも大いに効果のあるものだと思います。定員割れする学校の中でも取り入れてみてはおもしろいのではないかと思います。九年後の国体も見据えたスポーツ競技力の強化のためにも、定員割れした学校に明るい活力をもたらすためにも、また文武バランスのとれた人間教育のためにも、民間の手弁当で頑張っている指導者にさらにやる気を持っていただくべく協力を求めながらスポーツの振興に力点を置いた中等教育、御推進いただきたいと思います。
 以上、要望させていただいて、質問を終わらせていただきます。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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