平成18年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)
県議会の活動
平成十八年二月 和歌山県議会定例会会議録 第六号
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議事日程 第六号
平成十八年三月八日(水曜日)午前十時開議
第一 議案第一号から議案第十八号まで、議案第三十六号から議案第九十号まで、議案第九十二号から議案第九十五号まで、及び議案第九十七号から議案第百九号まで(質疑)
第二 一般質問
会議に付した事件
一 議案第一号から議案第十八号まで、議案第三十六号から議案第九十号まで、議案第九十二号から議案第九十五号まで、及び議案第九十七号から議案第百九号まで(質疑)
二 一般質問
出席議員(四十四人)
一 番 須 川 倍 行
二 番 尾 崎 太 郎
三 番 新 島 雄
四 番 山 下 直 也
五 番 小 川 武
六 番 吉 井 和 視
七 番 門 三 佐 博
八 番 町 田 亘
十 番 浅 井 修 一 郎
十一 番 山 田 正 彦
十二 番 坂 本 登
十三 番 向 井 嘉 久 藏
十四 番 大 沢 広 太 郎
十五 番 平 越 孝 哉
十六 番 下 川 俊 樹
十七 番 花 田 健 吉
十八 番 藤 山 将 材
十九 番 小 原 泰
二十 番 前 芝 雅 嗣
二十一番 飯 田 敬 文
二十二番 谷 洋 一
二十三番 井 出 益 弘
二十四番 宇 治 田 栄 蔵
二十五番 東 幸 司
二十六番 山 下 大 輔
二十八番 原 日 出 夫
二十九番 冨 安 民 浩
三十 番 野 見 山 海
三十一番 尾 崎 要 二
三十二番 中 村 裕 一
三十三番 浦 口 高 典
三十四番 角 田 秀 樹
三十五番 玉 置 公 良
三十六番 江 上 柳 助
三十七番 森 正 樹
三十八番 長 坂 隆 司
三十九番 阪 部 菊 雄
四十 番 新 田 和 弘
四十一番 松 坂 英 樹
四十二番 雑 賀 光 夫
四十三番 藤 井 健 太 郎
四十四番 村 岡 キ ミ 子
四十五番 松 本 貞 次
四十六番 和 田 正 人
欠席議員(なし)
〔備考〕
九 番欠員
二十七番欠員
説明のため出席した者
知事 木 村 良 樹
副知事 小 佐 田 昌 計
出納長 水 谷 聡 明
知事公室長 野 添 勝
危機管理監 石 橋 秀 彦
総務部長 原 邦 彰
企画部長 高 嶋 洋 子
環境生活部長 楠 本 隆
福祉保健部長 嶋 田 正 巳
商工労働部長 下 宏
農林水産部長 西 岡 俊 雄
県土整備部長 宮 地 淳 夫
教育委員会委員長 樫 畑 直 尚
教育長 小 関 洋 治
公安委員会委員 高 垣 博 明
警察本部長 辻 義 之
人事委員会委員長 西 浦 昭 人
代表監査委員 垣 平 高 男
選挙管理委員会委員長 山 本 恒 男
医科大学学長 南 條 輝 志 男
職務のため出席した事務局職員
事務局長 小 住 博 章
次長 土 井 陽 義
議事課長 下 出 喜 久 雄
議事課副課長 薮 上 育 男
議事班長 山 本 保 誠
議事課主査 湯 葉 努
議事課主査 楠 見 直 博
総務課長 島 光 正
調査課長 辻 和 良
(速記担当者)
議事課主査 中 尾 祐 一
議事課主査 保 田 良 春
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午前十時二分開議
○議長(吉井和視君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、議案第一号から議案第十八号まで、議案第三十六号から議案第九十号まで、議案第九十二号から議案第九十五号まで及び議案第九十七号から議案第百九号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
二番尾崎太郎君。
〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 おはようございます。議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
昨年末に、藤原正彦先生の「国家の品格」を読みました。大変な名著であります。うれしいことに版を重ねているようで、お読みになった方も多いでしょうが、我が国が直面していますさまざまな問題を解決するヒントに満ちておりますので、御紹介したいと思います。
この本の真髄は、数学者という論理のエキスパートである著者が、人間というものは論理だけではやってはいけないと主張するところにあります。何と、数学のように論理だけで構築されているような分野であっても、論理ですべてに決着をつけることはできないそうであります。
正しいか誤りかを論理的に判定できないことが、完全無欠と思われていた数学においてさえあるということを、一九三一年にオーストリアの数学者ゲーデルが証明しました。不完全性定理と呼ばれています。論理は世界をカバーしないのです。そして、著者はさらに、人間にとって最も重要なことの多くは論理的には説明できないと説くのです。
私は、早くに母を亡くしまして、母方の祖母に育ててもらいました。きかん坊だった私は、生意気な口をたたいてはおばあちゃんに「理屈を言うな」と怒られ、おやじの知るところとなると、「おばあちゃんに何という口をたたくのだ」と、問答無用で大目玉をもらったものです。おかげさまで何とか人並みにはしていただきました。最近は、教師も親も、論理的に口答えをする子供を説得しようとしているようですが、成果が出ていないことは明白であります。子育てに論理は余り有効であるとは言えません。
資本主義の論理を徹底していけば、時間外取引で敵対的企業買収を仕掛けることは、とりたてていけないことではないのかもしれません。森前総理は「こんな若者が出てくるのは今の教育の成果かな」と皮肉っていましたが、なるほど、一昔前なら卑怯者と言われたであろう若者が国民的スターになっていました。しかし、藤原先生によれば、論理は重要なものであるが、どんな論理であれ、論理的に正しいからといってそれを貫徹していくと、人間社会はほぼ必然的に破綻に至るそうであります。
資本主義のチャンピオン・アメリカは、弁護士の数が人口比で日本の二十倍、精神カウンセラーの数は五十倍とのことです。資本主義の論理、競争の論理の貫徹は、よほど精神を病ませるものなのでしょうか。くだんの若者も資本の論理に取りつかれ、精神を病んでしまったのかもしれません。
では、我々はどうすべきなのか。藤原先生は、日本人が古来から持つ情緒を磨き、伝統に由来する形を見直せと言うのです。
ジョン・ロックの「他人の自由と権利を侵害しない限り自由」という論理、すなわち「だれにも迷惑かけてないでしょ」という理屈は、電車の中で化粧する女子中高生や地べたに座り込む若者を生み出し、果ては援助交際と称する売春を行う自己すらも正当化し、彼女らは罪悪感さえ持つこともない。人は平等であるという美しい論理は、先生も生徒も、親も子供も対等であるという不届きな考えを生み出し、学級も家庭も崩壊しつつあります。
こうした現状を別の論理をもって子供たちを説得し、改善しようとしても無理であります。子供たちはまたぞろ自己を正当化するための新しい論理を、おばあちゃんの言葉で言うならば「理屈をこねる」だけのことであります。藤原先生の教えでは、人間は利益のためならいとも簡単に見事な論理をつくり出すものなのですから。
子供たちには、我々が祖先から受け継いできた価値観、作法、慣習を自信を持って押しつけようではありませんか。過去の日本人は今の日本人よりも劣等であると考える人たちはともかくとして、いやしくも歴史・文化を尊重し伝統を重んじるという構えを見せる人であるのならば、祖先が連綿と受け継いできた日本の文化にもっと自信を持ってしかるべきであります。
「伝統を重んじ」という言葉は、何かの行事に参加したときのあいさつのまくら言葉ではないし、いわゆる伝統芸能のようなものだけが伝統でもありません。食事は「いただきます」と言ってから、はしは正しく持つ。食べ物を挟めるのならどんな持ち方でもいいわけではないのです。同じく、鉛筆の持ち方にも正しい形がある。語り継がれる昔話、敬語、礼儀作法、日常の所作の一つ一つが日本人としての根源的な帰属意識を醸成し、情緒を磨き、安定的で品のある社会、国家を形づくっていくのです。
教育における伝統の意義について教育長はどのようにお考えなのか、御所見をお聞かせください。
さて、人間社会は論理だけでは決して解き明かすことはできないという藤原先生の教えを補助線として、我が国の皇統について考えてみたいと思います。
我が国の皇統は、神武天皇から今上陛下に至るまで百二十五代、一代の例外もなく男系により相続されてきました。男系による相続とは、父方の先祖をたどると神武天皇に行き着くということであります。神武天皇は二千六百六十六年前に橿原宮で即位されましたが、高天原から降臨したニニギノミコトのひ孫に当たり、ニニギノミコトはアマテラスオオミカミの孫に当たります。すなわち、我が国では神様の系図はそのまま天皇の系図へとつながり、それが今上陛下にまで続いているのです。
今の日本人はこのことをそれほどありがたがりませんが、英語学の渡部昇一先生によれば、教養ある西洋人にこのことをギリシャ神話に例えて話をするとびっくり仰天して、「日本というのは何てすごい国なのだ」と敬意を払ってくれるというのです。
「トロイの木馬」で知られるトロイ戦争は、スパルタの王妃ヘレネがトロイの王子パリスに誘拐されることが原因ですが、このとき、王妃奪還のためのギリシャ王侯連合軍、総大将がアガメムノンです。アガメムノンはこの世と神話世界のはざまにいるような存在で、系図をたどるとゼウスの神となり、神武天皇をほうふつさせます。例えば、「アガメムノンの直系の子孫が今もギリシャの王であるならば、日本の天皇とはそんなものである」とやるわけです。すると皆、「オーッ」となるというのです。何とも痛快ではありませんか。
ところで、我が国では、明治維新以来、保守主義の哲学は何かおくれたもののように扱われ、教育の現場でもほとんど顧みられることはありませんでした。私の高校時代も、倫理社会の授業に出てきたのはデカルト、ホッブス、ルソー、ベンサム、フーリエ、ミル、マルクスたちで、いずれも保守主義とは対極にある思想家たちばかりであります。これに対して一六二八年の「権利の請願」の起草者であるコークを濫觴とする保守主義は、不朽の名著「フランス革命の省察」を記し保守主義を確立したバーク、ハミルトン、トクヴィル、アクトン、ハイエク等でありますが、残念なことに我が国ではその名は余り知られてはおりません。これら保守主義に通底するのは、人間の理性など、たかだかしれたものであるとする考えであり、現実社会、日常的で身近なもの、慣習、過去を大切にする態度であります。
デカルトは、知らぬ者とてない数学者にして大哲学者ではありますが、悲しいかな、ゲーデルの不完全性定理を知らなかった。知っていれば、「経験はしばしば人を欺くけれども、演繹、すなわち他のものからあるものの純粋な推論は、推理力の最も乏しい悟性でさえも、それを誤ることが決してない」などとは、それこそ決して書かなかったはずです。デカルトによれば、証明された確実なものだけが真理であるのでしょうが、皮肉にも真理とは証明され得ぬものであることが証明されてしまったのです。
思い上がりの哲学とも言うべきデカルトの理性・論理万能主義から演繹的に導かれたホッブス、ルソー、ベンサムらの各思想は、そもそもの前提がおかしいので、現実からどんどん遊離していき、社会を統べている説明のつかない真理や自然的に発生した社会制度、秩序といったものを無視してしまうか、あるいはそれらを破壊せしめる方へと向いていきました。そしてマルクスは、設計主義的合理主義に基づき、国家を設計可能なものであると妄想したのでした。もとより、社会、国家は説明のつかない真理、原理、諸制度によって統べられているのですから、この試みが失敗するのは必然であったと言えましょう。
有識者会議なるものが「我が国の皇統を制度設計する」などと言ったそうですが、制度設計された皇統の断絶が必然であるのは、制度設計された国家・ソ連の崩壊が必然であったかのごとくであります。もし、有識者会議の答申に沿って皇室典範を改正するならば、たとえそれを有識者会議が望んでいないにせよ、皇統は断絶せざるを得ないのです。
保守主義はコークに学び、慣習は法であるとします。法・ローは、議会において立法された法律・レジスレーションとは違います。法を英和辞典で引きますと、おきてや神の教え、慣習といった訳が出ています。議会なるものができるはるか以前から人間社会は存在していたのであり、その社会を統べる人知を超えた真理、原理、それがロー・法であります。したがって、ロー・法は制定されるものではなく、発見されるたぐいのものであります。そして、法の支配とは、祖先から連綿と受け継がれてきた慣習、すなわち法に抵触するような法律は制定してはならないということなのです。
皇室典範を起草した井上毅は、我が国の歴史を貫く男系男子万世一系の原理、ロー・法を皇統史の中に発見したのです。国民も国会も、まことに恐れ多いことではありますが、天皇もまたその支配に服すものであります。
皇室典範は明治天皇のもとで制定されましたが、その注解書である「皇室典範義解」には、皇室典範は「君主の任意に制作する所に非ず」とあり、皇統に関し、天皇の意志は祖宗の遺意の下位にあるとしたのです。「さだめたる 国のおきては いにしえの 聖のきみの み声なりけり」、「さだめたる 国のおきては いにしえの 聖のきみの み声なりけり」──この歌は明治天皇の御製であります。
繰り返しになりますが、井上毅は皇室典範を起草はしましたが、それは皇統を貫く原理、法を発見し、明文化したにすぎないのであり、決してみずからの思想信条などで創作したものではありません。
女系天皇と女性天皇の違いについては、皇室典範の改正が話題になって以来、さまざまなメディアで取り上げられてきましたので御理解なさっていることだとは思いますが、過去八人、十代の女帝が存在していました。いずれも男系の女帝であります。
愛子内親王殿下がもし御即位なさっても、男系の女性天皇であり女系ではないので、愛子天皇については問題はなしとする言説が、ゆゆしきことに保守派の中からも出てきています。もっとも、小泉総理は「愛子天皇のお子さまが男の子でも反対するのか」と言ったそうでありますから、果たして男系継承ということをわかっておられるのか、不安になってきます。
それはともかくとして、過去に女帝が即位したのは、今日我々が直面している皇位継承者の不在という理由からでは断じてありません。いずれの場合も皇位継承者はかなりいたのですが、適当な皇子に継承させるべく、政治的配慮から一時的に女性天皇が即位したのであり、あくまでも中継ぎでありました。であればこそ、八人の女性天皇はだれ一人として子供を産んではいないのです。
今回の質問に際して、皇室典範に関する有識者会議の議事次第に目を通してみました。第七回に拓殖大学客員教授の高森明勅先生からのヒアリングがあったのですが、高森先生は、「元明天皇と草壁皇子が御結婚されまして生まれました、氷高内親王。この方は草壁皇子のお子様という位置づけであれば、氷高女王でなければならないわけですけれども、内親王とされておるわけで、この方が皇位を継承されまして、元正天皇ということで、女帝の子が過去に皇位を継承した実例をここに一つ指摘することができるわけでございます」などと述べておられます。しかし、元正天皇の母は阿閇皇女であり、阿閇皇女は氷高内親王を草壁皇子の皇女として産んだ後に元明天皇として即位しているのであって、女帝元明天皇が産んだ子が天皇になったわけでは無論ありません。高森先生ほどの人がこのような事実を知らないはずはなく、何か作為的なものを感じざるを得ません。
我が国の皇統には、女系の男子も女系の女子も存在してはおりません。元正、孝謙、明正、後桜町の四方は独身で即位し、そのうちの三天皇は即位した後も生涯独身を通しました。孝謙天皇だけは後の称徳天皇として重祚しますが、独身のまま天皇として崩御しています。あとの四方、推古、皇極、持統、元明天皇は、即位のときは未亡人であり、その後は独身を通しております。女性天皇は、中継ぎとして例外的に存在することはあるが子供は産まない、あるいは子供を産まないことを絶対条件として中継ぎにはなることができる、このこともまた皇統史を貫く法であります。
したがって、この法によれば、万が一、愛子内親王殿下が天皇に御即位なさった場合、生涯独身を通されなければならず、そうされたところで皇統の断絶を一世代おくらせることにしかならないわけです。また、愛子内親王殿下が女性皇太子に立たれるとするならば、前例は、孝謙・称徳天皇となった阿倍皇太子の一例のみであります。称徳天皇と僧・道鏡との関係はよく知られるところですが、和気清麻呂なかりせばと、想像するだに恐ろしいことであります。
第八回有識者会議では、「男系を重視する立場の人達は、『男系主義の歴史的重みを重視すべき』、『男系主義というものは歴史上確立された原理である』と主張するが、なぜ男系であるのかということの理由は必ずしもはっきりしない。現実に続いてきたことが大事だということはあるにしても、なぜ男系が大事かということについては、歴史的にも説明されていないのではないか」という意見が述べられています。
この種の意見に対して高崎経済大学の八木秀次先生は、男系継承の意味をY染色体の継承に求めておられます。「Y染色体は男性にだけあるので、初代の男性のY染色体はどんなに直系から血が遠くなっても男系の男子には必ず継承されている。したがって、男系男子による皇統は初代神武天皇の染色体を引き継ぐが、女系男子ではこの限りではない」とするものです。進化生物学の専門家、同志社大学の蔵琢也先生は、「今上陛下や皇太子殿下は、父親をずっとたどっていけば古代の天皇たちにつながり、したがって、伝説の神武天皇やヤマトタケルノミコトとほぼ全く同じ染色体を持たれるのである」と述べられ、それを「Y染色体の刻印」と表現されておられます。
八木先生によれば、天皇、皇族の正当性の根拠は純粋な男系継承によるY染色体の刻印なのであり、純粋な男系以外、天皇、皇族にはなり得ないのです。実は、純粋な男系以外のすべてが女系であり、女系の子孫が一般国民であるとするのです。
八木先生や蔵先生の説は非常に説得力があり、万世一系の皇統の重みというより、その悠久のロマンはすごみすら感じさせるものであります。しかし、あえてここでは藤原流で有識者会議に反論をしておきます。
なぜ、男系でなければならないのか。それは、論証不可能な大きな価値の前に我々は謙虚にひざまずくべきだからであります。論理を超えた日本文明の深層に流れる何かを感じ、畏怖するからであります。
縄文杉と呼ばれる杉があります。杉と言えばただの杉でありますが、太古の昔から数千年にわたって命をつなげてきたその杉の前に立つとき、日本人であれば自然と手を合わせるのではないでしょうか。なぜなのか。論理で説明することはできません。しかし、その杉の前で自然に手を合わせることに我々は大いなる価値を見出してきたのです。縄文杉は理屈抜きで保守すべきものであるはずです。縄文杉でなくとも、例えば庭に生えている一本の木を切ろうとしたところ、実はその木には自分が生まれた記念に祖父が植えたといういわれがあったとわかったとしても、その木を何のためらいもなく切れるでしょうか。木は木にすぎないとまゆ一つ動かさないでおのを振るえる人ばかりになれば、もはや日本文明の終えんは避けることはできないでしょう。
皇統を考えるとき、今を生きる我々だけの世論調査など、私には特に意味があるとは思えませんが、女性・女系天皇についての世論調査をするのならば、せめて我が国皇統の最低限のいわれを国民に伝えてからにしてほしいものです。
日本でもベストセラーとなった「文明の衝突」の中でハンチントンは、日本文明を世界の八大文明の一つに数えています。しかも、「世界のすべての文明には二カ国ないしそれ以上の国々が含まれている。日本がユニークなのは、日本国と日本文明が一致しているからである」と述べています。灯台もと暗し、我々は日本に住んでいるので、この日本文明の独自性に無自覚でありました。なぜ日本国と日本文明は一致するのか。それは、日本国とは天皇をいただく国のことであり、日本文明とは皇統そのものにほかならないからであります。
皇統二千六百年にわたり我が国の中心に屹立した大樹、その種子からすべての日本的なるもの、文化が生み出されてきたのです。日本的なるものを憎悪する者か日本人としての情緒が欠落した者以外に、この大樹におのを振るうことなど夢想だにできないはずであります。
ちなみに、手段を選ばず自社の株価をつり上げようとした若者は、「憲法が天皇は日本の象徴であるというところから始まるのは違和感がある」と述べています。彼のように、そもそも皇室なんて要らないとする意見もあるでしょう。別になくても困らないからというのがその主な理由でしょうが、確かに皇室がなくとも人間はこの列島に生存していくことでしょう。しかし、生存するだけなら文化も世界遺産も別に要らないではないですか。記者会見にTシャツで臨むことや寛仁親王殿下の御見識を「どうということはない」と切って捨てることは、少なくとも品があるとは言えますまい。高貴なるものを感じ取れる情緒なくして、とても品格ある国家は築き得ないのです。
すぐれた情緒を伴った真の知性には我が国の皇統がどのように映っていたのかを御紹介しましょう。
「近代日本の発展ほど世界を驚かせたものはない。一系の天皇を戴いていることが、今日の日本をあらしめたのである。私にはこのような尊い国が世界に一箇所ぐらいなくてはならないと考えていた。世界の未来は進むだけ進み、その間、幾度か争いは繰り返されて、最後の戦いに疲れるときが来る。そのとき人類は、まことの平和を求めて、世界的盟主をあげなければならない。この世界の盟主なるものは、武力や金力ではなく、あらゆる国の歴史を抜きこえた最も古くてまた尊い家柄でなくてはならぬ。世界の文化はアジアに始まって、アジアに帰る。それには、アジアの高峰、日本に立ち戻らねばならない。我々は神に感謝する。我々に日本という尊い国をつくっておいてくれたことを」。アルバート・アインシュタイン。
我が国の皇統は、本県における高野・熊野がそうであるように、我々だけのものでも、我々の世代だけのものでもなく、また日本だけのものでもありません。日本が誇る世界人類共通の至宝なのです。
七世紀のチャイナの史書「隋書倭国伝」には「日本人はとても物静かで、争いごとも少なく、盗みも少ない。性質は、素直で雅風がある。気候は温暖で、草木は青く、土地は肥えていて美しい」とあり、十六世紀にフランシスコ・ザビエルは「日本人は慎み深く、才能があり、知識欲が旺盛で、道理に従い、すぐれた素質がある。盗みの悪習を大変憎む」と記しています。さらに十九世紀には、ペリーは「日本人は大変清潔好きで、勤勉にしてよく働く。そして礼儀正しく、親切だ」と本国に手紙を書きました。二十世紀にはアインシュタインが、「以前に日本人が持っていた生活の芸術家、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静かな心、それらのすべてを純粋に保って忘れずにいてほしい」と述べています。
どうでしょうか。我々の祖先は日本の美風をしっかりと受け継ぎ、後世へと伝えてきてくれたのです。我が国の美風、それは皇統にほかならないのであり、我々の世代もまたこれを受け継ぎ、伝えていかなければなりません。相続の義務を果たさねばならないのです。
小さいころ私は父に、「天皇陛下って何の仕事をしているの」と質問しました。父は、「天皇陛下のお仕事は日本国民の幸せをお祈りすることだ」と教えてくれました。幼心に、私は妙に納得したのを覚えております。父となった私は、息子が私と同じ質問をし、自分が父に教えてもらったように息子に答える日が来ることを楽しみにしているのです。
日本国民の相続の義務を果たすべく設置されたはずの有識者会議は、「皇室典範を国民の平均的な考え方で議論する」とし、「歴史観や国家観でこの案をつくったのではない」と言い放ち、報告書を提出しました。彼らの頭の中にある「国民の平均的な考え方」とはどのようなものなのか。国民とは当然日本国民のことですから、いかなる考え方であっても、その根底には歴史観や国家観があるはずです。それらをしんしゃくしないということですから、彼らの言う「国民の平均的な考え方」なるものは、恐らく歴史観や国家観とは遊離した無国籍な彼ら自身の理性のことなのでしょう。
無国籍な理性による皇室典範に関する会議、藤原流に言うならば情緒なき理性による皇室典範に関する会議、バーク流ならネイキッド・リーズン、裸の理性による皇室典範に関する会議、そこから導き出される結論は、彼らの知能が高いがゆえに、げに恐ろしきものになってしまったのです。すなわち、女系天皇の容認、皇位継承順位における長子優先であります。このような結論に沿って法改正が行われるならば、皇統の断絶は一〇〇%確実であります。実は、男系継承の法こそは万世一系のための唯一の手段だと言えるのです。
「文藝春秋」の今月号に驚愕すべき話が載っています。有識者会議のある委員は、「このような報告書が皇室の流動化、もしくは崩壊につながるとしても、それでも報告書に異論はないか」との問いに、何と「ありません」と答えているのです。論理、理性の暴走、ここにきわまれりであります。
では、我々は断絶の危機に瀕する皇統を何をよりどころとすれば護持し得るのでありましょうか。
「中世の秋」を書いたホイジンハは、「衰亡と夜の気配を感じるとき、いつの世でも高貴な精神は祖父の知恵を保守し、これを行動の規範として後世の子孫に伝えようとした」と教えてくれています。父祖の知恵によれば、我々が皇統護持のためになすべきことは明白であります。すなわち、臣籍降下された旧皇族の皇籍復帰であります。有識者会議の報告書には「これらの方々を広く国民が皇族として受け入れることができるか懸念される」とありますが、全くの杞憂であります。
あってはならぬことですが、有識者会議の報告書に沿って、愛子天皇が御即位なさったとして、その皇婿にどこのだれともわからない者がなる可能性の方がよほど日本国民として受け入れることができません。私のような取るに足らない者の息子でさえ、理屈としては皇婿陛下と呼ばれる可能性がないとは言えないのです。臣尾崎が皇族となる、天地がひっくり返るとはこのことであります。これは、皇統の断絶そのものではないですか。そんなばかげた話を良識ある日本国民のだれが受け入れるというのでしょうか。
元皇族の竹田恒泰氏は、ことし出版された「語られなかった皇族たちの真実」という著書の中で、「皇室の尊厳と存在意義を守り抜くために旧皇族の男系男子は責任を感じなくてはならない」と述べ、皇籍復帰への決意を表明されました。この本もよく売れているようですが、竹田氏の決意に対する賛意こそ聞け、非難の声は聞いたことがありません。早急に旧皇族の方々の皇籍復帰の法整備を進めるべきであります。
昨年の十一月に有識者会議の報告書が出て以来、皇統の断絶がいよいよ現実のものとなりつつありました。私は名もなき一地方議員にすぎませんが、日本国民として皇統の護持のため、いかなる努力も惜しまぬ覚悟で微力を傾注してまいりました。しかし、今国会の小泉首相の施政方針演説を聞いて思わずくじけそうになったことは恥じ入るばかりであります。もうだめかと思ったそのとき、皇祖皇宗、神霊の御加護でありましょうか、秋篠宮妃紀子殿下御懐妊との報がありました。我が国を覆っていた暗雲が一掃され、国じゅうが歓喜の声に沸き立ちました。日本国民として心からお祝いを申し上げ、願わくは玉のような男児の御誕生をお祈り申し上げます。
今回、我が国国体の変容をもたらしかねないほどの影響力を持ってしまった有識者会議の委員が、これが首相の私的諮問機関だったとしても、どのようにして選任されたのかは今後明らかにされなければならない課題であります。
本県におきましても、法令、条例に設置根拠を持たない各種審議会の委員はどのようにして選ばれているのか。無論、最終的な任命は知事であるにしても、選任事務はどのようになっているのか。また、そのような各種審議会はどのようなものであるべきなのかを総務部長にお尋ねいたします。
また、我が国の皇統は、日本文明、文化、日本的なるものの源泉あるいはそのものと言うべきであり、その本質は論理では説明し得ないことは、るる述べてきたとおりであります。
本県の男女共同参画推進条例第三条の二は、「男女共同参画の推進に当たっては、社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担意識を反映して、男女の社会における主体的で自由な活動の選択を制約することのないよう配慮されること」となっています。この条文における配慮する主体はだれなのか。県なのか。県であるとしたら、どのようにして当該制度や慣習が男女の社会における主体的で自由な活動の選択を制約しているのかを判断し得るのか。
次に、森山眞弓官房長官が、かつて大相撲の優勝力士に総理大臣杯を授与したいと発言し、土俵に女性は上がってはいけないということをめぐってさまざまな意見が交わされました。日本相撲協会は「土俵は男子のみのものという決まりであります。伝統なのですから、守ります」と敢然と主張し、これを拒否しました。このようなことについて、男女共同参画の観点からどのように考えるか。
以上、環境生活部長にお尋ねして、質問といたします。
○議長(吉井和視君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
総務部長原 邦彰君。
〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 審議会についてのお尋ねがありました。
まず審議会の委員の選任についてですが、それぞれの審議会の設置目的やその趣旨等を踏まえ、所管する部局においてその分野の専門的知識を有する方や関係団体等の中から適切な人材を候補者として幅広く選んだ上、関係部局と協議しながら最終的に適任者を選任しているものと認識しております。
次に審議会の設置目的ですが、さまざまな分野の専門家の方の意見聴取のために設置するものであり、専門的知識の導入、公正の確保等が主な目的であります。
なお、職員の活用等、ほかの方法により所期の目的を達することのできる場合については、いたずらに審議会を設置しないよう指導を行ってまいります。
以上でございます。
○議長(吉井和視君) 環境生活部長楠本 隆君。
〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 男女共同参画の理念に関する御質問にお答えを申し上げます。
平成十四年度に実施した男女共同参画に関する県民意識調査によりますと、「男は仕事、女は家庭」といった固定的な男女の役割分担意識に否定的な方の割合が約半数を占め、また男女平等の意識につきましても、約三分の二の方が家庭生活や社会通念、慣習、しきたりなど社会全体で男性の優遇を感じているという結果となっております。
しかしながら、我が国には古来連綿と受け継がれてきたよき伝統や文化が数多くあり、これらを尊重することは重要な意義を持つものと考えております。しかしながら一方、新たな価値観を持って生きていこうとされる方がおられることも事実でございます。男女共同参画は、こうした多様な価値観を互いに認め合いながら男女の人権が尊重され、豊かで活力ある社会を実現するため推進するものでございます。
県といたしましては、条例を制定し、県や県民、事業者の皆様方を含め、あらゆる主体が家庭、職場、地域、学校あるいは事業活動などあらゆる場におきまして、性別にかかわらず一人一人が個性と能力を発揮できる社会の実現を目指すものでございます。
大相撲の問題につきましては、平成十六年三月、日本相撲協会が実施したアンケートによりますと、「伝統は守るべきだ」と答えた方が全体の約七〇%になったと聞いております。
いずれにいたしましても、多様な価値観を互いに認め合いながら男女の人権が尊重される社会の実現を目指すことが肝要であると認識しております。
○議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育における伝統の意義についてお答えいたします。
長い年月にわたり形成され受け継がれてきた価値観や物の考え方、さまざまな様式など、時代を超えて脈々と息づいている伝統には、人々の生活や心のよりどころとして、また一人一人の行動を律し豊かな人間関係を結ぶ支えとして重要な意義を持つものが少なくないと思っております。
教育においてそうしたよき伝統に対する尊敬の念と自覚を促しそれを継承させる営みは、子供たちを人間としてより大きく成長させる上で、またみずからのアイデンティティーを確立させていく上で、極めて大きな役割を果たすものであると考えております。
現在進められている教育の基本的な考え方の一つに、我が国の文化と伝統を理解し、それを尊重する態度を育成することが重視されております。国際化が進んでいるだけに、なおさら日本人としての自覚を持って主体的に生き、未来を開いていく上で自国や郷土の伝統、文化の価値を子供たちが深く理解することは極めて重要であります。そのことを通して他国の文化や伝統を尊重する態度もまたはぐくまれるものであると思っております。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
二番尾崎太郎君。
○尾崎太郎君 教育長の答弁のとおりであると思うんですが、教育において伝統、慣習を重んじるということの教育効果というのは非常に高いものがあると思うんです。一方、男女共同参画の理念の中には、非常にいいものもあるんですけれども、しかし、例えばその慣習がどうして日本の社会に悪をなすものであるのかどうかということを判断し得るのか。それは単に、今に生きている我々が、余り賢くない頭でそれは害になるんじゃないかなと判断しても、よくよく考えてみればそれが大事な習慣であったということは、よくあることなのであります。
したがって、明確に男女雇用や法的な側面、公的な救済措置を講じなければならないほどの悪癖、悪習があったとするならば、それは個別の立法をもって縛るべきであって、このような一般的な理念を制定したとしても、余計に私はこれは害になるんではないかなと思うんです。
民主主義というような非常にだれも疑いのないと思っているような価値でも、ワイマール憲法という当時としては一番民主的な憲法のもとでヒトラーという独裁者が出てきました。これは、国民の平均的な考え方どころか、圧倒的な国民の支持の中でヒトラーというものが生まれてきた。
一つの理念を絶対視して、その理念が果たして正しいかどうかというのはわからないにもかかわらず、その理念から演繹していろんな政策を進めていくということは非常に危険であるわけであります。だからこそ、長い間続いてきた慣習、伝統、制度というものを尊重するということであります。
しかし、その中には、もしかすれば明確に、あるいは明白に女性の人権を阻害するものがないとは言えないのかもしれません。私は余りないと思いますけれども、しかし、それは私の判断でありますから、ないとは言えないのかもしれません。しかし、その場合は、そのようなものが明白であるならば立法措置を講じればいいわけであります。それは、一つにはいわゆるDV法。家庭内における暴力というようなものが明確に社会問題となるのであれば個別の立法で対処していくべきだということを意見として申し上げさしていただきまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で尾崎太郎君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
四十三番藤井健太郎君。
〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
まず、格差社会の認識と県の基本姿勢についてお尋ねをいたします。
知事は、所信で「日本は格差社会になりつつあると言われております」と、えんきょく的な言い回しをされているわけです。昨日もこの場で議論がされたところでありますが、最近になって格差社会、縦並び社会とも言われ、マスコミも特集を組むようになってきました。雇用をめぐる地域間の格差、労働条件の正規、非正規との格差、大都市と地方都市など都市間の格差や所得による社会的な格差の開きなど、さまざまな格差の広がりが社会問題として指摘をされてきております。その中で、今回は県民の中での所得間格差の開きの拡大を中心に、知事並びに県当局の見解と対応についてお尋ねをいたします。
本来国民の所得間格差を是正する役割を持つ所得税や各種の社会保障制度が所得の再分配機能として有効に働かず、比較的所得の低い人が一層の税負担、社会保障負担を強いられ、社会的な格差がさらに拡大しているのではないかという問題であります。
今般の国の税制改正を見てみましても、六十五歳以上の公的年金所得者の最低控除額の引き下げ、老年者控除の廃止、住民税非課税措置の廃止など、高齢者への課税強化が実施をされ、年金額は減るのに所得はふえたこととなって非課税から課税へ、それがさらに国保税、介護保険料にはね返ってくることとなります。課税ラインが引き下がり、それにより社会保障負担がふえるということは、相対的に所得の低い人の負担率がふえることとなります。さらに、社会保障構造改革によって介護、医療、障害者福祉の制度そのものの保険料や利用料負担の増が重なって、つまり二重の負担増となってきます。国の政策そのものが国民の可処分所得の格差拡大をもたらし、県民の暮らしの圧迫や社会保障、福祉の制度を受けにくいものにしてきているのではないか、そういうもとでの地方自治体のあり方が問われているのではないかと思うところです。
県政が県民の暮らしや福祉をしっかりと守ってくれる、そういう県政であることを願って知事にお尋ねをいたします。
国の税制や社会保障制度の改正によって、比較的所得の低い高齢者、障害者など社会的弱者と言われる人の負担がふえ、そのことが一層県民の暮らしを圧迫し、格差社会の拡大につながってきているのではないかと考えますが、知事は、格差社会と言われ出したそもそもの要因は何だと考えられているのか。昨日、答弁でさまざまな要因があるというふうに答えられていましたが、政治のあり方そのものに主たる要因があるのではないでしょうか。また、県民の所得格差の拡大や暮らしの実情、変化についてどのように認識をされているのでしょうか。
また、知事は所信で、「社会的に厳しい状況に置かれている方々に対するセーフティーネットとしての行政の役割が重要になってくる。そのような方々に温かい心配りをする施策を進めていく」とも言われております。国民の暮らしのセーフティーネットは、第一義的には国の責任でナショナルミニマムとして整備していくのが当然のことであります。しかし、今、格差社会が広がりつつある現状のもとで、知事はこれまでにも議会答弁で「県として弱者に優しい県政に少しでも配慮していきたい」と言われてきました。
セーフティーネットとしての行政の役割が重要と言われていますが、県政が担うべきセーフティーネットの役割については果たせているのでしょうか。県政における県民のセーフティーネットの基本的な考え方はどうなのか、新年度予算では何をセーフティーネットの対象として予算にどのように反映されているのか、お尋ねいたします。
次に、社会保障、福祉施策についてであります。
最初に、国民健康保険をめぐる問題です。
国民健康保険は、御承知のように、自営業者、高齢者、パート労働など被用者以外の人が加入する医療保険で、収入の不安定な人、非課税世帯など所得の低い人の加入が多く、その上、保険料賦課のあり方が世帯当たり、一人当たりという応益割と収入、資産に応じた所得割の合計となっていて、住民税などと違いまして扶養家族がふえるほど保険料負担がかさむ、所得割額も所得の一割を超えるなど、被用者保険に比べると保険料負担が割高になっているという特徴があります。一定の所得以下の人には保険料の減額制度が設けられていますが、前年度所得に賦課されるため、病気、倒産、失業など、年度途中での収入減による現年度対応が不十分な点もあって、保険料滞納へとつながる人もあります。
保険料滞納世帯に対しては、保険者から被保険者証のかわりに国保の資格を証明する資格証明書が発行されています。資格証明書で医療機関を受診すると医療費の十割の支払いを求められ、一たん医療費の十割を支払って後日保険料の一部を支払うと、保険から七割分が返還されることになっています。しかし、ほとんどの保険者は──市町村ですが──滞納保険料の未払い分の補てんに充てるとしています。資格証明書を持つ人が救急車で搬送され即日入院となっても、後日保険料の支払いができなければ保険給付が受けられません。滞納保険料の一部を払って七割償還を受けても未払い保険料の補てんに充てられ、医療機関での三割窓口負担金の支払いが困難となった人もあります。
医療保険証はまさに県民の命綱であり、国民皆保険制度を維持する上でも、支払い能力に応じた保険料設定と経済的理由などによる保険料、自己負担金の減額制度が有効に機能することが県民の命と健康のセーフティーネットとして重要なことだと思うところです。
そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
国民健康保険料の滞納による資格証明書、短期被保険者証の発行はどのような基準でなされているのか。また、最近の推移はどのようになってきているのでしょうか。
四月に設立されます和歌山地方税回収機構、ここでは国保税や国保料の滞納処分も取り扱うことになっているようですが、県民の生存権が損なわれるようなことにはならないのでしょうか。
医療機関窓口での自己負担金についても、国保法では減額できる規定がありますが、県内の自治体では適用されているのでしょうか。されていないとしたら、適用していくようにするべきではないのでしょうか。どのような考え方を持っておられるのか。
二番目に、改正介護保険法による施設入所者への影響についてお尋ねいたします。
昨年十月より介護保険三施設、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設での入所者の居住費と食費が全額自己負担となり、年金収入で年間八十万円を超えると月々の利用料が標準で一万五千円から三万円の負担増、ユニット型に入所している人はそれ以上の負担がふえています。
九月議会で福祉保健部長は、入所者の居住費、食費の負担増については低所得者への軽減措置がとられており、適正な実施について支援を行うと答弁されていました。そこで、福祉保健部長に、軽減措置がうまく機能しているのか、どのような支援を行ってきたのか、お尋ねいたします。
県内での施設や施設入所者への影響をどのように把握をされているのでしょうか。
世帯全員非課税の場合は、市町村へ申請をして負担限度額認定証の交付を受ける必要があります。市町村ではすべて把握されているはずで、申請を待たずにできるはずでもあります。該当者にはすべて交付されているのでしょうか。
社会福祉法人と自治体が負担し合って利用料の負担軽減をする、いわゆる社会福祉法人軽減制度の適用はどのぐらいあるのか。すべての社会福祉法人で実施されているのでしょうか。
高齢者夫婦二人暮らしで一方が個室に入った場合に、残された配偶者の年収が八十万円以下、預貯金四百五十万円以下の世帯での軽減制度、こういう制度がありますが、利用はどのぐらいあるのでしょうか。残された配偶者の年収が八十万円以下の場合というのでは生活が大変です。余りに低過ぎるのではないかと思うところですが、これでは必要があるのに個室に入ることもできなくなります。実態をどのように把握されているでしょうか。
新年度税制改正によって、収入はふえなくても非課税から課税世帯となって税負担と利用料負担がふえた上に、さらに一段階以上は利用料負担が引き上がることになりますが、県として対応は何か考えておられるのでしょうか。
三番目に、障害者自立支援法での利用者負担増大への対応についてです。
先月、ある更生施設に入所している人の父親から──この人も重度障害を持たれていますが──相談がありました。子供が療育手帳B1、身体障害者手帳三級の障害があって、収入は、障害基礎年金と施設での工賃を含め、月々八万円から九万円になるそうです。現在、施設への支払いは月三万四百円、手元に五万円ほど残るわけですが、この方は、手足のけいれんなどが常時あって医者通いは欠かせず、入退院を繰り返しているそうです。通院では医療費助成の対象とならず、入院したときの経費などの負担もあって、手元には余り残らない状態だと言います。このたび施設長から、四月から法が変わることによって食費と光熱水費が全額自己負担となるので、今まで月三万四百円だったが、月六万円程度の自己負担になると言われたそうです。そうなりますと、月々二万円から三万円ほどしか手元に残らず、医療費や、ことしからこの方、介護保険料の支払いが入ってくるわけですが、やっていけるだろうかと不安に思っているということでした。親として親亡き後の行く末のことを考えてわずかばかりの貯蓄をしてやっているけども、それには手をつけたくないということも話されていました。
自立支援法は、居宅施設での障害福祉サービスや更正医療、育成医療、精神通院医療を利用したときに、費用の原則一割を支払う仕組みとなっています。低所得者への負担軽減策として、所得が四段階に区分され、負担上限額が定められていますが、この人の場合は、住民税非課税世帯で年収八十万円以上に区分される低所得二に該当し、月二万四千六百円の負担上限額に食費、光熱水費が全額自己負担となって、月六万円程度の負担ということです。
福祉サービスを受ける場合、低所得者の負担上限額が生活保護、住民税非課税世帯で年収八十万円以下と八十万円以上、住民税課税世帯という四つの区分しかなく、それに食費、光熱水費、国保や介護保険などの保険料負担、医療費の自己負担を考えれば、障害基礎年金を主たる収入とする入所者にとっては、安心して入所を続けられるのかどうか不安になってまいります。
そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
県は国に対して負担の上限額を定める所得区分段階を四段階からさらに細分化することを求めておりますが、県として実施をする考えはないのでしょうか。
施設入所者で重度心身障害児(者)医療費助成の対象とならない軽度の人が受ける医療費の負担を現在の三割から自立支援医療の負担と同じように一割負担に軽減することなど、負担の緩和策が必要ではないでしょうか。
四番目に、重度心身障害児(者)医療費助成制度の改定についてお尋ねをいたします。
ことしの八月一日から、六十五歳以上で新たに重度心身障害者になった人を制度の対象から除くというものです。八月一日以前からこの制度の対象となり受給者証を持つ人は、引き続き医療費の助成が受けられるとしております。六十五歳以上で重度心身障害者の手帳を取得した人は国の老人保健医療で対応していくこととなり、医療費の一割が自己負担となってきます。
そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
今回の重度心身障害児(者)医療の年齢による助成の制限、これは県の姿勢として制度の後退になるのではないでしょうか。もともと心身障害児者の医療費助成制度は、重度障害を持つことにより生活基盤が不安定となることから、医療費の自己負担分を助成して障害者福祉の向上に資するものとして実施をされてまいりました。六十五歳以上だから生活基盤が安定しているとは限りません。
国民生活基礎調査で見ても、高齢者世帯の四〇%は所得二百万円まで、一四%が所得百万円までの世帯となっていて、全世帯の所得区分での分布と比較すれば、高齢者は低い所得層での分布割合が多くなっています。その上に、病気や事故で重度障害を負った場合、生活に不安を感じるのは同じことだと思うわけですが、高齢になって障害を持った人の生活実態を勘案した上での改定なのか、疑問が残るところであります。
昨年の九月議会で福祉保健部長は、社会保障負担については生活実態を見きわめたきめ細かな配慮が必要であると認識しているという答弁をされておりましたが、今回の改定についても、六十五歳以上で重度障害を持つこととなる高齢者の生活実態を見きわめた上での提案なのかどうか、お尋ねいたします。
次に、経済、雇用問題についてお尋ねをいたします。
全国的には国内総生産、鉱工業生産指数とも伸びを示し、雇用指数でもある有効求人倍率は、地域間格差はあるものの伸びが見られる一方で、実質賃金指数や常用雇用指数は低迷状況にあります。
知事は、本県での経済活性化への取り組みとして地域経済への波及効果を見据えた産業振興を掲げられ、産業イノベーション構想の推進、中小企業制度融資の充実、企業誘致のための破格とも言える奨励制度、若年者雇用の推進策としてジョブカフェの充実などの施策を打ち出されています。
最近の工業統計、商業統計を見てみますと、本県の事業所数、従業者数とも減少を続け、景気動向調査では、原油や原材料価格の高騰が販売価格に転嫁できず経営を圧迫していることや資金調達も悪化の傾向にあると報告されております。事業所企業統計の雇用をめぐる環境では、民営事業所での雇用者総数は減少する一方で、雇用者に占める非正社員、臨時雇用者の割合はふえ、雇用者総数の三九%にもなっています。有効求人倍率が改善されたとはいえ、近畿では最低の状況にあり、県民意識調査でも雇用の確保を望む声がトップに来ており、雇用環境の改善は県政の重要課題でもあります。
そこで、商工労働部長にお尋ねをいたします。
県経済の現状と課題をどのようにとらえ、目標をどのように設定して新年度予算に反映させているのでしょうか。とりわけ、本県において雇用の多くの部分を担っているのが、事業所数で八割を占める従業員十九人までの小規模零細事業所です。そういう意味でも中小の零細企業の経営が存続できるような施策を重視する必要があると思われますが、新年度、これだという重点施策としてどのようなものがあるのでしょうか。
また、和歌山の地域産業を支えてきた地場産業と言われる木材・木工、建具、家具、繊維、皮革などの製造業の分野、また中心市街地商店街や駅前商店街を核とした町づくりを含めての商業振興策の重点施策にはどのようなものがあるのでしょうか。
二番目に、住友金属和歌山製鉄所の雇用、地域経済への貢献についてお尋ねいたします。
ことしの社長年頭あいさつで、「十七度連結決算で経常利益二千五百億円、当期純利益で千九百億円という過去最高の収益が見通せることになった。九千名を超える出向先への移籍、構造改革とコストダウンを着実に実行してきた成果」と言われています。和歌山でも多くの出向労働者が移籍し、下請単価の大幅カットなどに見られるように、県民の雇用や地域経済にも大きな影響をもたらしてきました。
昨年六月に住友金属和歌山製鉄所は、外需の拡大や高収益が見込まれるもとで上工程更新プランを発表しました。高炉の更新と環境対策を備えた新コークス炉の建設を行い、生産量を三百八十万トンから四百三十万トンへと増産し、新鋭中規模製鉄所として将来にわたる存立基盤を強化するということです。
住友金属和歌山製鉄所の動向が和歌山の地域経済や雇用、県民生活に及ぼす影響は極めて大きく、自治体行政としても、県民の暮らしと雇用を守る立場から、これまでの経緯を踏まえると受け身であってはならないと思います。
そこで、商工労働部長に、今回の住友金属和歌山製鉄所の事業計画をどのように受けとめ、県民の雇用確保と下請単価改善や地域経済への貢献をどのように働きかけていくのか、お尋ねいたします。
三番目に、県内基幹産業でのリストラ問題と地域経済への影響についてです。
ことしの一月二十四日、日本ハムが生産拠点再編の方針を決定し、和歌山工場の六月末での閉鎖を発表しました。工場を訪れて経緯や今後の方針などを工場長に伺ってまいりましたが、工場跡地にグループ内の食品工場を建設し、五、六十名の希望者受け入れは想定しているとのことでした。和歌山工場の閉鎖によって、二百六十人を超す従業員や原材料の納入業者、専属の保冷車での運送を一〇〇%近く担っている業者など関係業者約二十社と、そこで働く従業員の仕事がなくなることになります。また二月八日には、ノーリツ鋼機が「高コスト体制からの脱却を目指して」と称する構造改革に取り組むことを発表しました。本社で、ことし三月二十日までを募集期間として四百人の希望退職者を募るとしています。
そこで、商工労働部長にお尋ねをいたします。
日本ハム和歌山工場の閉鎖やノーリツ鋼機のリストラ計画による雇用と県経済への影響をどのように考えているのか。
県として、雇用の確保や関係業者の経営破綻を招かないようにどう対応していくのか。当該事業所への要請も含めて、県として積極的な対応を進めてもらいたいところであります。
最後に、地震防災対策についてお尋ねをいたします。
昨年三月の中央防災会議で、大規模地震に関する人的被害、経済被害の軽減について、達成時期を含め具体的目標をまとめた地震防災戦略が策定され、それに基づく地域目標の策定を地方公共団体にも要請するとしました。
昨年の九月二十七日には、中央防災会議決定として建築物の耐震化緊急対策方針が出され、地方公共団体が目標や方針を定め、計画的に耐震改修を促進する仕組みの構築など、耐震化に取り組む環境の整備や制度の見直しへの取り組みが言われております。その中で、住宅の耐震化促進として、住宅の耐震化率を今後十年間で九〇%まで引き上げるとし、住宅の耐震化に関する意識啓発を徹底して実施するとしています。住宅の耐震化は、阪神・淡路大震災での犠牲者の約八割が建物の倒壊によるものということからも最大の教訓であります。県内では約十五万戸が昭和五十六年五月以前の建築で、震度六弱の揺れに対して倒壊、大破するおそれがあると言われています。
そこで、県土整備部長にお尋ねをいたします。
住宅の耐震化を急ぐ必要があるわけですが、中央防災会議の地震防災戦略で言う住宅の耐震化について、どういう見解を持って今後臨んでいこうとされているのか。
二番目に、きのくに木造住宅耐震化促進事業について。
平成十六年度から二十年度までの五年間に耐震改修の目標を三千戸と定め、耐震診断の結果、総合評点が〇・七未満であり、耐震改修工事後の評点が一・〇以上となる住宅を対象とし、改修費用の県、市町村それぞれ三分の一ずつ合計六十万円を限度に補助を行うという事業が現在実施をされております。新年度は三年目となり、計画期間五年目の折り返し点です。これまでの成果とその評価、新年度予算を含め、計画達成に向けてどのように臨むのか。
三番目に、耐震改修制度の多様化についてであります。
住宅の耐震改修や倒壊防止を進めるには、県民の皆さんの耐震化への意識を高めていくことが重要な課題でもあります。より積極的に耐震改修を進めるためにも、より利用しやすい多様な制度であることが求められているのではないでしょうか。
そういう点で、神戸方式は一つの参考になるのではないかと思います。神戸市では、本県が実施しているきのくに木造耐震化促進事業と同じ内容の事業が実施されていますが、それに加えて、瞬時に倒壊に至らない、そういう程度の小規模の耐震工事であっても耐震診断と耐震化計画の策定、耐震改修に対する補助制度をことしに入って始めました。さらに、住宅密集地での住宅の解体・撤去する費用への補助制度を設け、その上、高齢者、障害者世帯を対象にしてではありますが、たんすや食器棚、家電製品など、家具の転倒を未然に防止するための金具による家具固定促進事業として費用の一部を補助し始めています。より実用的で利用しやすい耐震制度への多様化、このことが県民の耐震化についての意識を高めることにもつながってくると思うわけですが、県土整備部長の所見をお尋ねいたしまして私の第一問といたします。
御清聴ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 格差社会への認識ということでございますが、けさの新聞にも出てましたけれども、この十数年、日本の国は、能力のある者が能力を発揮して思い切りやってくる、規制はいろいろ緩和して自由にいろんなことしていくというふうなことの中で経済が復興してきたということも、一つは否めない事実だろうと思うわけですが、ただやっぱり、そういう中で努力してもなかなかその成果の出ない人、そしてまた努力をしても構造的にそういう恩恵に浴せない地域というふうなものがあるのも、これまた事実でございます。
行政というのは、やはりそういう部分に目配りをしていくということが非常に大事だろうというふうに思っており、これは個人についてもそうですし、そしてまた地域ということについてもそうです。三位一体の改革というのを私も一生懸命、ある意味では進めてきたわけですが、これが地方へ交付税がどんどん行くというふうなことがむだだというふうなことに今何となくなりつつあるということに非常な懸念と憂いを持っているところなんで、これからそういうふうなことにならないように、日本の国が、都市ももちろんですが、地方もやはり元気よく皆が暮らしていけるということが日本の国の健全な発展にとって大事だというふうな観点から、いろいろな主張とか施策を行っていきたいと思っております。
そして、そういう中で、県としてはとりあえずセーフティーネットとしてどういうふうなことを考えたのかということです。これは、なかなか財源的な問題もあって、いろんなことができるというわけではないわけですが、例えば、悪徳商法にお年寄りがひっかからないようないろいろな対応措置をつくったり、そしてまた小規模作業所、皆さんいろいろ頑張っているんだけども、なかなか物が売れない、やっぱりいい物をつくっていかなければならないというようなところに対して、それがステップアップするための助成であるとか、それから児童養護施設等、ちょっとしたお金があれば皆さんが物すごく暮らしやすくなるのにというふうな部分、しかしそのちょっとしたお金がないというふうなことで問題があるというふうなところにもう全額補助を県の方として、これは異例なことなんですが、やっていくということとか、そしてまた就学前の子供さんが病院へかかった場合の費用を無料化していくというふうなこと、いろいろそういうふうなことに気を配りながら施策を進めていきたいと、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 社会保障、福祉施策についての四項目の御質問にお答え申し上げます。
まず、国民健康保険の資格証明書及び短期被保険者証の交付基準でございますけれども、資格証明書は、特別の事情がないにもかかわらず保険料を一年以上滞納した場合に、被保険者証にかえて発行するものでございます。また短期被保険者証は、納付相談や納付指導を行うため、三カ月や六カ月など有効期間の短い被保険者証を交付するものでございます。
最近二カ年の交付状況は、本年一月末現在、国民健康保険の全加入世帯数約二十三万七千世帯のうち、資格証明書が四千七百十世帯、短期被保険者証が九千三百四十一世帯に交付されており、前年の同期に比べますと、資格証明書が三百十七世帯減少し、短期被保険者証が百九十二世帯増加をしております。
次に、和歌山地方税回収機構で国保税の滞納処分を取り扱うことについてでございますけれども、国民健康保険税は市町村が徴収しており、同機構への移管についても市町村の判断で行われることになります。その選定に当たっては、悪質でやむを得ないケースのみが市町村から移管されるものと考えてございます。
次に、国民健康保険一部負担金の減免でございます。
県内の市町村ではこれまで一部負担金の減免を実施した実績はございませんが、法の規定では、災害その他の特別な理由がある被保険者については一部負担金を減免することができる旨を定めており、今後、県としましては市町村においてこれが適切に行われるよう助言をしてまいります。
次に、改正介護保険法による施設入所者への影響についてでございます。
平成十七年十月の介護保険施設等における居住費、食費、いわゆるホテルコストの導入を受けまして、その実態を把握するため、県独自に県内のすべての介護保険三施設及び通所介護サービス事業所に対しまして導入後の施設利用者数や料金設定に関する調査を実施し、現在、調査票の集計並びに分析作業を行っているところでございます。
次に、世帯非課税の場合の負担限度額認定証の交付につきましては、市町村、施設事業者と連携を図りながら制度の周知徹底を図ってございまして、該当者全員に交付されたものと思っております。
三点目の施設利用料に対する社会福祉法人軽減の適用につきましては、現在、県内で対象となる七十事業所のうちの六十事業所で実施をされております。県としましては、市町村及び施設事業者に対し社会福祉法人軽減制度の活用について引き続き要請するとともに、制度適用のための経費を十八年度当初予算において大幅に増額をしているところでございます。
四点目の特例減額措置の適用につきましては、現在のところ県内に適用者はないと聞いております。今後とも、対象となる方について的確な把握に努めるよう市町村に助言をしてまいります。
五点目の平成十七年度税制改正による施設利用料への影響につきましては、施設の利用料は入所者の所得によって負担の区分がなされていることから、議員御指摘のとおり、今回の税制改正によりまして、場合によっては利用者負担区分が二段階以上上がる可能性がございます。しかしながら、そういった場合でも利用者負担区分を一段階の上昇にとどめる激変緩和措置が二年間講じられます。
いずれにいたしましても、施設利用者の方々がこの先も安心して入所いただけるよう、引き続き国、市町村、介護保険施設等との連携を図りながら、低所得者対策や社会福祉法人軽減などの適正な実施について必要な支援を行うとともに、介護サービスの質の確保、向上に努めてまいります。
次に、障害者自立支援法での利用者の方々の負担の増大への対応についてでございます。
国におきましては、低所得者に対して個別減免や社会福祉法人減免等、きめ細やかな負担軽減措置がなされているところであり、過大な負担にはならないものと理解しております。
現在、市町村等に対してこれら軽減措置が利用者に適切に利用されるよう積極的に指導しているところでございまして、県独自の負担区分の細分化や医療費の緩和措置につきましては、給付と負担の均衡など総合的に判断して、難しいものと考えております。
なお、新法による各種のサービスがこれからスタートしようとしているところでございまして、県としましては、実施主体である市町村の実施状況や利用者の利用状況を踏まえ、障害者の方々が必要なサービスを適切に安心して受けられるよう努めるとともに、制度に不都合があると思われるときは国に対して要望してまいりたいと考えてございます。
次に、四点目の重度心身障害(児)者医療助成制度の改定についてでございます。
今回の改正は六十五歳以上で新たに重度心身障害者になった方を除くものでありますが、本制度は、若年期から重度心身障害児者である方は生活基盤が脆弱な場合が多く、こうした方々が安心して医療が受けられるようにとの趣旨のものでございまして、六十五歳以降に新たに重度心身障害者になった方とは異なるとの観点から改正するものでございます。
また、六十五歳以降に新たに重度障害等になった方につきましては、老人保健法により医療費の自己負担を一割とする特別措置があり、また、生活実態に配慮し、低所得者に対しましては自己負担限度額の措置が講じられているところでございます。
以上でございます。
○議長(吉井和視君) 商工労働部長下 宏君。
〔下 宏君、登壇〕
○商工労働部長(下 宏君) 経済、雇用問題についての三点の御質問に一括して答弁させていただきます。
一点目の県経済と産業振興策についてですが、本県の経済は鉄鋼、石油、化学等の基幹産業が好調であり、全体としては緩やかな回復基調にあるものの、中小企業においては、最近の原材料の高騰による経営環境悪化など、業種、業態、規模などにより業況はまだら模様の状況となっており、さらに一部大手企業では事業の再構築などが発表されるなど、一進一退の状況であると考えてございます。
県としましては、こうした景気回復の流れを確実なものとし、さらに将来の持続的な発展が可能となる足腰の強い産業構造を構築していくことを目指し、県内産業のイノベーションの推進のため、県のSOHO施設入居者等のアドバイザーの設置や、これまでの産学官連携に大企業、金融機関を加えた新たな共同研究グループへの支援など、県内中小企業や起業家の業績向上につながる事業を推進していくとともに、平成十八年度、十九年度の二年間に千社以上の企業訪問を実施するなど、積極的に企業誘致を進めることとしています。
さらに、中小零細企業等への対応といたしましては、ニーズの高い元気わかやま資金や小企業応援資金の融資枠の拡大を図るとともに、引き続きわかやま産業振興財団と各種経済団体とが一体となって小規模事業者の幅広い経営支援などを推進し、すそ野の広い景気回復となるよう取り組んでまいります。
次に、地域経済を支える重要な産業である本県の地場産業につきましては、産地の方々の意見を十分お聞きした上で、その活性化の取り組みに対して各種振興策を講じているところでございます。具体的には、国内外での競争力を高めるために最終消費者を意識した企画提案型の新商品開発への取り組みや、新たな販路開拓のための首都圏や海外での展示会の出展等の取り組みなどに対し、支援を行ってまいります。
また、中心市街地、商店街の活性化につきましては、商店街振興組合等が市町村と一体となって実施するハード、ソフト事業に対して補助を行ってまいります。さらに、活性化への取り組みの機運の盛り上げやまちづくり三法の改正の動向を見ながら、中心市街地活性化法に基づく新たな基本計画の策定等への地域の取り組みに参画してまいりたいと考えております。
二点目の住友金属和歌山製鉄所の雇用、地域経済への貢献についてでございますが、住友金属工業和歌山製鉄所の一千億円以上とも言われる高炉更新プランと職員採用計画が昨年六月に発表されましたが、本県の経済にとりまして住友金属工業は大きなウエートを占める非常にすそ野の広い会社であることから、最近の住友金属工業の好調は、安定的な雇用の確保や取引業者の企業体質の強化などを初め、地域経済に幅広い波及効果を及ぼすものと大きな期待を持って受けとめているところでございます。
県としましては、住友金属工業和歌山製鉄所や協力会社との情報交換の場を設け、下請単価が改善されてきている状況などをお聞きしておりますが、今後ともこうした情報交換を行うとともに、やる気のある県内企業が住友金属工業と取引をできるような必要な支援を行っていきたいと考えています。
最後に、三点目の県内基幹産業でのリストラ問題と地域経済への影響についてですが、最近発表されましたノーリツ鋼機と日本ハム和歌山工場の構造改革は、短期的には雇用の場が減少することとなり、残念な事態であると考えております。ノーリツ鋼機は将来に向けた構造改革であり、日本ハムは全国規模での生産拠点の再編成ではありますが、県としましては、当該企業に対し、従業員の雇用の場の確保や下請関係企業への配慮など地域経済に与える影響を軽減するよう要請するとともに、今回の変革期を乗り越え、企業体質が強化され、本県において新たな事業展開をしていただけるよう、要請や必要な協力を行ってまいりたいと考えております。
また、従業員の円滑な雇用の確保を促進するため、ハローワーク等と連携するとともに、中小企業制度融資やわかやま産業振興財団の相談機能、下請取引あっせん支援事業などを活用し、関係業者の資金繰り支援等の経営安定化を図っていきたいと考えています。
以上でございます。
○議長(吉井和視君) 県土整備部長宮地淳夫君。
〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 地震防災対策について三点お尋ねがありました。
まず、地震防災戦略における住宅の耐震化につきましては、中央防災会議で決定された建築物の耐震化緊急対策方針で住宅の耐震化率を九〇%に引き上げることとされており、この目標値は大変厳しいものではありますが、今後見直しを行う地域防災計画と耐震改修促進法に基づく国の基本方針を踏まえ、できる限り達成できるよう促進計画を策定してまいります。
次に、きのくに木造住宅耐震化促進事業につきましては、平成十六年度から実施しております。平成十七年度二月現在の申し込み受け付け状況は、耐震診断一千八百五十四戸、耐震改修六十七戸となっております。平成十六年度、十七年度の耐震診断を実施した結果、総合評点の低い住宅の耐震改修が進まない現状を踏まえ、その要因の把握のため意識調査を実施しているところであり、県民に耐震化促進の重要性を認識していただけるよう、さらに相談窓口や情報提供の充実を進め、事業促進に努めてまいります。
また、本県においては高齢化が進んでいることや、古い木造住宅が多く改修に多額の費用を要するなど改修上の課題があり、地域の実情に合った耐震化等を推進する観点から、先進地事例も参考にし、事業実施市町村と連携を図り、耐震改修制度の多様化について検討してまいります。
以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 知事にお尋ねをしたいと思うんですが、今回の私の質問は、格差社会の拡大ということを一つのテーマにして、社会保障分野、雇用の分野、防災対策の分野ということでお尋ねをいたしました。
さまざまなセーフティーネットの役割というのがあるだろうと思うんですね。知事がおっしゃいました、高齢者の方が被害に遭わないように防止のための手だてとか、小規模作業所が自立支援法で法人化していくための手助けとか、三位一体改革で一般財源投入できるということでの児童養護施設の対応とか、あるだろうと思うんですが、やっぱり、私、問題にしていたのは、税制改正とか社会保障負担がふえることによって所得間格差が一層拡大していくのではないかと。そのことに対して、県としてどういうセーフティーネットの役割を果たしていくのかと。
社会的弱者の方に優しい、温かい配慮をしていかなくてはいけないということを言われておりますので、そういったことに対しても、介護なり障害なりで利用料負担がふえることによって、収入はふえないんだけども、利用料負担がふえることによって可処分所得が減ると。一層生活が苦しくなってくると。
先ほど、福祉保健部長は、過大な負担ではないというようなお話があって、県独自の措置というのは難しいというお話がありましたが、しかし私は、そういうのも、軽減措置を県独自でつくっていくというのも一つのセーフティーネットの有効な手段ではないか、そういう選択肢もあり得るのではないかと。そのために財源をどうするのだという話はありますが、それは県の姿勢として、そういうセーフティーネットが必要であってつくっていくんだという方向で財源捻出も考えていくということも、これはできるだろうと思うんですね。
そういう点で、知事に対して、県政が県民の暮らしを下支えしていく、格差がこれ以上広がらないように、社会保障制度の機能を有効に働かして利用料負担金等の軽減措置なども考えていくというようなことも県政のセーフティーネットの役割ではないかと思うんですが、その点についての知事の見解をお尋ねしたいと思うんです。
あと、雇用が破壊される問題であるとか、地震に対して住宅を耐震化していく問題とか、重要な問題がたくさんあります。住宅の耐震化については、多様化については検討していくというお話でありまして、あと、日本ハム、ノーリツ鋼機等については雇用の確保、地域経済への影響を極力少なくしていくというんですか、配慮してもらいたいという要請もしていくということでありますので、それをどういうふうに検討されて、どういうふうに推移していったのかと、またの機会にお尋ねをしたいと思うんですが、知事に対して最初申し上げましたその点について答弁をお願いいたします。
○議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 答えがちょっと足らなくて申しわけなかったんですけども、社会保障制度自身は、大きく国全体の中でどういうふうにしていくか、負担の適正化の問題も含めて今考えているところだと思うんです。そして、当然のことながら、そういう中でこういうふうな格差社会が言われているというところで、その厳しい状況に置かれている人にできるだけしわ寄せがいかないようにというふうなことは、私は県としても声を大にして言っていかないといかんと思っています。
ただ、大きな制度設計の中でその部分を和歌山県だけが特にこういうふうな形でやっていくということになると、これはもう、今言いましたように打ち出の小づちがあるわけじゃないんで、何もかもできるというわけにはやっぱりいかないというふうなことで、県の方としては今の限られた財源とかいろんなことの見合いの中で、できるだけそういうふうな厳しい状況に置かれた方が暮らしやすいような形でいろんなことを考えていくというふうなことに努めているということですので、それで御理解いただきたいと、このように思います。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 今、知事から打ち出の小づちというお話がありましたけど、確かに、限られた財源の中で、どういう政策をとって、どこにどれだけ予算を張りつけていくのかということは考えなくてはいけない問題だと思うんです。
ただ、今の格差社会、所得間格差が開いて、社会保障制度が所得再分配の機能の役割を十分に果たしてなくて──昨日も知事はジニ係数というのを出されていましたが、〇・五ということで。これ、十年前は〇・三ちょっとぐらいだったと思うんですね。だから、要するにこの数字が大きくなれば一層不平等社会が広がってきているということになるわけですから、その分を、地方自治体でありますから、やっぱり住民の福祉や生活、これをきっちりと見て安定させ向上させていくという役割があるわけですから、そういうところへの直接的な給付──今度、乳幼児医療制度が拡大をされるということで、それは歓迎するものでありますが、そういった点も十分に目配りをして、予算配分のあり方なんかもぜひ検討していってもらいたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時三十五分休憩
────────────────────
午後一時三分再開
○副議長(大沢広太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
三十八番長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 議長のお許しをいただきましたので、以下四点、一般質問を順次、通告に従いまして行わせていただきます。
一番目に、科学技術振興についてであります。
国は、科学技術を一層発展させ、その成果を絶えざる技術革新につなげていくことによって経済回復を確実なものとし、持続的な発展を実現しようと科学技術の戦略的重点化を目指しております。
平成十五年度に科学技術振興機構から採択を受け、年間約二億五千万円の予算で平成十六年一月から平成二十年までの五年間、産学官連携による研究開発事業を実施しているのが和歌山県地域結集型共同研究事業であります。重点研究領域は、平成十三年三月三十日に閣議決定された第二期科学技術基本計画における国が目指すべき科学技術分野に基づいており、地域が目指す研究開発と合致している課題に対し、地域の研究機関、大学、企業の結集のもと、世界レベルの共同研究を行って成果を出していくものであります。
和歌山県も、豊富な農林・水産資源を有効に活用して、和歌山バイオ戦略のもと、バイオテクノロジーの研究開発拠点を重点的に整備するとともに、微生物活性化技術、機能性食品開発技術、生体反応装置関連技術等の研究開発に重点的、戦略的に取り組むという意気込みに大いに期待をするものであります。
大学としては、近畿大学生物理工学部、和歌山大学システム工学部、県としては農林水産総合技術センターや環境衛生研究センターも参加、十社以上の企業にも協力を仰いでいるということですが、採択から約二年半を経過して、そろそろ具体的な技術開発、将来の地域貢献への方向性、またバイオ戦略の核となるバイオテクノロジー研究開発拠点である仮称・和歌山バイオ研究センターの概要も出てきたのではないかと思います。
折しも、二月二十二日付の産経新聞の「『地域再生』最前線」の記事で、山形県鶴岡市という豪雪地帯の人口約十四万人の都市における細胞の代謝物質メタボロームの研究開発拠点の取り組みが掲載されておりました。五年近く前から慶応大学先端生命科学研究所の施設が開設され、山形大学農学部とともに、市が「バイオを生かしたまちづくり」を目指し、去年より中外製薬や味の素といった有力企業とともに共同研究を進めているそうです。まさに、鶴岡市はスピーディーな最先端技術の集積化に真剣に取り組んでいるのであります。
先日、工科系の県立大学で、日本で一番就職率の高い富山県立大学の生物工学研究センターを今春立ち上げる浅野泰久教授が、和歌山ビッグ愛にて「大学でのバイオの取り組みと地域貢献について」と題して示唆に富んだ講演をされました。「富山県は三百年余りの薬の伝統があり、古くから酒、みそ、しょうゆといった発酵の分野があり、富山バイオバレー構想のもと、バイオベンチャーをつくろうと県外の大学や県内外の多数の企業が参加しています。富山県に比べると、和歌山県は多くの資源を持っています。地域に根差したスタッフを持って人材も育成すれば十分バイオ立県できます」と言っておられました。
また、石川県立大学では農業短大から四年制大学へ拡大して生物資源環境学部をつくり、生物資源工学研究所を設置、県立広島大学では生物生産システム研究科で前向きなバイオ戦略を進行中であります。滋賀県では、宝酒造が参画した半官半民の長浜バイオ大学があります。日本でも指折りの農林水産物資源の宝庫・和歌山県でも、バイオ研究の核となるような機関があれば、きっと他府県に負けない取り組み、目に見えた地域産業振興と新たな雇用の創出ができるはずであります。だからこそ、この和歌山県地域結集型共同研究事業、これには地域産業の起爆剤として大いに期待をするわけであります。
そこで質問に入りますが、一つ目、和歌山県地域結集型共同研究事業の進捗状況を以下三点に分けて、企画部長、お聞かせください。
企業の参加状況とバイオにおける企業誘致の可能性について。地域産業の活性化につながりそうか。和歌山バイオ研究センター整備計画の進捗はどうか。
二点目に、地域結集型共同研究事業とともに、知の創造とその活用により個性を重視した都市エリアにおける産学官連携基盤技術整備の推進を図るものとして、文部科学省の都市エリア産学官連携促進事業が和歌山市エリアにおいて平成十五年度に採択されております。和歌山市は、有機化学発祥の地と言われ、有機合成化学企業の集積されたエリアであります。この事業の進捗状況と、将来的に地域産業として実利をもたらしてくれるのか、期待できる商品を生み出してくれるのか、見通しを企画部長、お答えください。
三番目、和歌山県のバイオ研究を推進するためには、核となる研究機関とともに、やはり理解のある教官と人材育成が必要であります。バイオ系の公立大学をつくるのはベストでありますが、残念ながら現状ではかなわぬことであります。平成二十年に終了する地域結集型共同研究事業の成果を実益を伴うものとして継承発展させていくためにも、せめて既設の大学と県の研究機関との連携のもと、広く全国から公募して官民問わず教官を募り、バイオ研究の人材を養成する仕掛けづくりを行っていかなければならないのではないでしょうか。知事の御所見をお聞かせください。
二番目に、防災と公務についてであります。
ことし一月二十六日から二十七日にかけて、中村裕一委員長のもと、災等対策特別委員会の県外調査で東京へ参りましたときに、平成十六年十月二十三日夕刻に起こった新潟県中越地震という村の原形をとどめないような大地震で被災された旧山古志村の元村長で現在は衆議院議員の長島忠美さんが、当時大変御苦労をしながらも村のリーダーとして、指揮者として大活躍をなされたときの貴重な講話を聞かせていただいて感動を覚えた次第です。その際、長島議員が、「私どもの避難所に和歌山県の腕章を巻いた保健師の方々が多数おいでいただいて、それこそ二十四時間、私どもの避難した人たちの健康管理、心のケアに相談に乗っていただき、地震の後、一回だけ和歌山県で保健所のシンポジウムがございまして、そこに寄せていただいたことがございましたが、今でも来てくださった人の顔は私は覚えているつもりでございますし、感謝にたえないところです」とおっしゃっておられたことを御報告しておきます。
地震発生後、大混乱の中で、携帯電話すら通じない、役場の防災無線も機能していないといった情報から孤立された中で、絶対に緑の村を取り戻すんだという村民との約束を果たすまでは私は死ねないという意思を持って、寝ないで住民と向き合った日々の活動のお話でありました。
印象に残ったのは、村の指揮者としては、迷わない、間違えないこと、どんなつらいときでも「ありがとうございます」と言葉を返すこと、そして、当初「我慢して」「頑張って」と言ったことが一番の失敗だったということ、リーダーたる者は目標を示さないまま「頑張れ」という言葉を言うと逆効果であるなど、含蓄のあるお話で、大変勉強させていただきました。
その中で考えさせられたのは、大災害時における公務員の活動であります。公務員の皆様も、自分の家があります。自分の家族があります。大災害時には率先して災害応急対策に当たり、公務員としての務めを果たすことになります。大変なことであります。日常、近畿あるいは県の各種防災訓練の実施、そして庁内での指揮系統の徹底、与えられた職務の自覚と、いざ有事の際の準備、心構えは徹底されていることと思います。公助というより公義、すなわち公人としての義務という意識が絶えず要求されることでありましょう。
一方、一県民として公務員の日ごろの防災活動も非常に重要であります。常日ごろは、自分の居住する市町村での防災訓練、そして自分の住まいのある自治会、地域での研修、訓練への積極的参加、それに自主防災組織の中での公人としての自分の立場をさらに御認識いただいて公人としての役割を果たしていただきたいと期待するものであります。
そこで質問に移りますが、一つ目、大災害時における総司令官としての知事の心構えと、いつやって来るかもしれない大災害に備え、県民の一員としての県職員の役割について、知事の御見解を賜りたいと思います。
二つ目、また昨年十月には、和歌山県で開催されました近畿府県合同防災訓練におきまして、東南海・南海地震を想定した全国で初めてという大規模な図上訓練が実施されました。県、市、消防、警察、自衛隊、そして他府県等が大同連携のもと、緊張感たっぷりに真剣に地図を広げての打ち合わせや会議などで刻々と変化する状況に対応しておられたのが印象的でした。この訓練の結果を踏まえ、今後、県として防災訓練にどう取り組もうとされているのかについて、危機管理監の御答弁をお願いいたします。
三つ目に、地域医療についてであります。
一番目、和歌山県立医科大学は、各医局から県内の基幹病院へ医師を派遣されており、地域医療に大きな貢献をされております。それも、決して豊富に人材があるわけではなく、ぎりぎりの状況で派遣を調整されているようです。一方で、地域医療も大事だが、全国に通じる医師の育成も重要という考えもあります。この観点から、県外への長期出向を推奨している教授もいらっしゃると聞いております。そのような県外への出向医師が多くなりますと、たちまち医大附属病院も地域の基幹病院も困るわけであります。病院において残った医師でやりくりしようとしても、患者そのものは決して減らないわけで、残された基幹病院の医師は過重労働を強いられ、結局、医大をやめてしまって開業医になるケースもあるということであります。そうなると、地方の基幹病院への医師の派遣がかなわなくなり、おのずと診察も減らさざるを得ません。
医学教育のレベルアップを目指すことも大事でしょうが、同時に、先生方は医師として県内の医療を担う大きな使命もあるのではないでしょうか。このままでは地域医療がつぶれてしまわないかと憂慮する次第です。本来ならば、県内外へ派遣されたならば、その分を補充、埋め合わせしてしかるべきではないでしょうか。一つの科が手薄になると他の科で埋め合わせすることになってしまい、他の科も立ち行かなくなります。
独立法人化も控えております。地域医療を守り、充実させていくためには、今のままでは大きな危機に陥りかねません。実際、まさに危機的状況の地域の病院もあるのではないでしょうか。学長に医師の県外、県内派遣についてお伺いいたします。
二番目、昨年、教授の東京でのアルバイト問題が新聞で報じられました。ことし県立医科大学が法人化され、教員が非公務員になると、このような兼業がより容易になるのではないかと危惧しております。この点について、学長にお伺いします。
三番、いよいよ四月には公立大学法人和歌山県立医科大学が新たに誕生いたします。私たち県民も、県民の目線に立った和歌山県の医療、医学教育、そして病院経営のますますの発展と充実に対し、大きな期待を持ってそのときをお待ちいたしております。極めて御多忙な毎日をお過ごしと存じますが、独立法人化を直前に控えて、学長の意気込みをいま一度お聞かせください。
四番目に、全国的に医科大学、医学部において、小児科、産婦人科、そして麻酔科の医師数が少なくなっているようです。最近、新聞等でもその専門医不足が取り上げられています。県当局も、特に小児科、麻酔科医の確保に御尽力いただいているとお聞きしておりますので、今回は産婦人科に絞って質問いたします。
日本産科婦人科学会の調査によれば、全国の病院の約三割で産婦人科医師が定員割れしており、多くの病院では産婦人科医が三日に一回の割合で当直勤務をしていると見られ、他科に比べて一番多くなっています。しかるに、国家試験合格者のうち産婦人科を目指すのは、多くて約五%であります。
とりわけ、人材不足が深刻なのは産科分野であります。人気のない理由は、深夜の出産など緊急呼び出しも多く、拘束時間も長くて医師の肉体的、精神的負担が大きいという苛酷な労働環境、それに出産時の医療事故に伴う訴訟の増加、また血液による接触感染の危険性が多いことも挙げられております。
産婦人科医のうち、経験五年未満の若手医師の半数以上を女性が占めており、女性医師は結婚や出産などを契機に勤務先病院を一たん辞職してその後復帰する場合、勤務の比較的楽な婦人科クリニックや開業を選択するケースが少なくないということです。和歌山県でも、特に産科の場合、夜間の産科医が少ないために夜の分娩に対応し切れない状況が起こらないか、山間部で急なお産が必要なとき対処できるのか、憂慮いたします。
全国的に、産科を閉じてしまう基幹病院も多いと聞きます。少子化の影響は産科医不足、小児科医不足という事態を招いております。和歌山県の産婦人科、特に産科の現状と産科医の確保について、福祉保健部長にお伺いいたします。
最後に、スポーツ振興についてであります。
一つ目に、県スポーツ賞について。
トリノオリンピック──結果はともかくとして、この寒い冬、テレビ観戦する我々日本国民のハートだけは熱くしてくれました。マスコミが、そして評論家各氏が大会前に取り上げた際の楽観論は、全くもって打ちのめされた結果でありました。勝敗がすべてではないのですが、日本国民であるという意識、そしてふるさとを愛する気持ちを鼓吹してくれる世界のスポーツの祭典です。今後、冷静な現状分析と中長期にわたった、さらに綿密な計画に基づいた選手の養成が急務であります。
元オリンピックスピードスケート銅メダリストの橋本聖子氏も、次のように述べています。「トリノ五輪は日本勢は不振だったが、一部の選手だけを強化する集中強化方式では限界があった。中長期的に底辺を広げて草の根の人たちも楽しめるような普及、そして、かけ声だけでメダルを取れ、勝てと唱えるのではなく、ちゃんと過程を踏みながら育成強化を図っていかなければならない」と。この現象は、まさに我が愛すべき和歌山県の姿にも反映されているわけであります。第五十六回国体総合成績二十九位、第五十七回四十一位、第五十八回四十三位と来て、第五十九回最下位の四十七位、昨年の第六十回は四十三位という厳しい和歌山県の現実があります。
県教育委員会も新年度を迎えるに当たりスポーツ競技力向上のため大きな強化を図りたいという、並々ならぬ意気込みを感じさせていただいております。トップアスリートを目指すためには、やはり幼少のころからの取り組みは大事であります。和歌山県における二巡目国体も、あと九年後であります。
各種ジュニア、特に小学生の普及と育成、選手の養成については、各市町村のスポーツ少年団や地域の経験者による個人指導に依存していることがほとんどであります。まず、指導者は、練習会場を確保するのに自分の時間を割いて奔走し、練習は仕事後の夜間とか土日といった休みの日であったりで、自分の家庭をも犠牲にしながらも、子供たちが選手として強く大きくなれるようにとの思いで頑張っておられます。特に、大会や強化のための遠征費用などは自己の持ち出し、自己負担になっていることも多く、それでも一生懸命取り組んでいる指導者の皆様の実態があり、この小学生時からの指導、育成があればこそ中学、高校生の強化にもつながっているわけであります。子供たちは、雨にも負けず、風にも負けず、暑さにもめげず、寒さにもひるまず、懸命に今も練習に励んでいます。
各種大会にはさまざまなケースがありますが、全国規模の大会というのは、厳しい県予選を勝ち抜き、さらに分厚い壁の近畿大会で全国大会出場枠を確保して初めて出場資格を得る、極めて厳しいものであります。県のスポーツ賞をそういった全国大会、一部近畿・関西ブロック大会上位入賞者に与えていただく、これが子供心に、また指導者の心に、この上ない喜びと今後のやる気、向上心を起こさせるかけがえのない栄誉であります。
しかるに、平成十七年度より県スポーツ賞の選考基準のハードルは一気に上がってしまいました。国際大会、日本選手権大会、国体で大体一位から三位まで、ほかの各種全国大会は一位のみ、近畿・関西大会はスポーツ奨励賞もなくなりました。これは、いろんな競技において大きな反響を呼んでおります。近畿大会以上の上位入賞というのは、汗と涙の美しき結晶のたまものであります。そんな宝物のような喜びをたたえるスポーツ賞表彰の可能性が一気に無に等しくなったとき、特に子供たちにおいては、選手としての競技への向上意欲がなくなったり、指導者も指導意欲がうせたり、保護者の協力体勢にも大きく影響してくるでしょう。中学・高校進学の際も、県外へせっかくの逸材を流出せしめ、新しい芽が本県に育たなくなり、何よりも郷土意識も希薄になってしまうことになりかねません。子供という宝は、スポーツによっても大切に育ててほしいのです。
もちろん、各種スポーツ競技においていろんな細分化された全国レベルの大会はふえてきております。スポーツ賞の表彰の経費捻出だって、決して楽なものではないと思っております。厳しい財政状況も理解できます。でも、せっかく新年度に低年齢の子供からの競技力向上強化を図る積極的な取り組みを行おうとしている中で、スポーツ賞のハードルはちと高過ぎやしないでしょうか。生涯スポーツの振興によって元気な高齢者がふえ、かかる医療費も少なくなってきているようです。その余剰分を青少年のスポーツ振興、県スポーツ賞に回していただきたいくらいであります。
当局におかれましては、各種大会の選別も難しいことと思いますが、スポーツ賞の幅をもとに戻してとは申しませんが、改めて各種競技のそれぞれの大会のプライオリティーをきめ細かにチェックいただいて、子供たちを心身ともにたくましくするためにも県スポーツ賞に優しさを加味いただきたい。いま一度基準の見直しを検討いただきたいと思いますが、いかがですか。教育長にお尋ねします。
二つ目に、武道の振興であります。
かつて、和歌山県武道振興会というものがありました。武道を愛する有志の方で平成四年に発足して以来、宇治田先輩も新島先輩も会長を務められ、武道での心身の錬磨を通しての青少年の健全育成、日本の伝統文化の継承に御尽力をなさってこられました。当時、県立の武道館が欲しいという武道愛好家の共通の目標も確かにありました。しかし、経済環境、我が県の財政状況の厳しさから、その実現も、現状からは望み薄であります。さらに、県内の武道十一団体が毎年一回行ってきた武道振興大会も、平成十二年度より中止されてしまいました。武道振興会の運営や大会の開催のための予算もないという理由でした。でも、それで終わってしまってよいのでしょうか。
私も、たまにではありますが、胴着を着て帯を締めて少林寺拳法の道院に立つことがあります。おのずと気分が引き締まります。子供たちに大きな気合いの声を出させて、突き、けり、わざだけでなく、礼儀も教える。そして、覚えたわざを大人を交えた拳士たちの前で、子供自身がリーダーとなって指導者の立場を経験してみる。日本ならではの社会教育であります。
「説文解字」という後漢時代の文字の起源と意義を解説した書物の中に、「武は撫なり──この「撫」はなでる、いたわるの「撫」です──止なり──この「止」は争いをとめることです──禍乱を鎮撫するなり、禍乱を平定して人道の本に復せしめ、敵を愛撫統一することが武の本義なり」と説いています。ゆえに、武の本義は、人と人との争いをやめ、平和と文化に貢献する和協の道をあらわした道徳的内容を持つものであり、いたずらに敵を殺し、争いを求め、敵に勝つことのみが目的ではないのであって、武道というのは、その武の本義に従い、その目的を達するための道を言っていると言えましょう。
少林寺拳法開祖・宗道臣氏によれば、「真の武道というものは、争いを求め、相手を倒し、自己の名誉や自身の幸福のみを追求する道ではなく、人を生かして我も生き、人を立て我も立てられるという自他共栄を理想とする道を言っているのであり、人づくりの大道でなければならない」と言われております。
世の中の常識が常識でなくなり、道徳意識の低下が著しい昨今、青少年にかかわる犯罪や事件が後を絶たない状況であります。子供たちの体力の低下、しつけ不足、我慢強さの欠如等、憂慮すべき問題が山積しております。武道は、長い歴史の中で多くの先人たちが培ってきた日本ならではの伝統文化であります。今の青少年の教育、健全育成、そして護身の術に極めて有意義なものではないでしょうか。
どの武道に限らず、武道というものは、心身の鍛錬を通じた人間形成、社会教育、そして次代を担う指導者、リーダーづくりを行うための絶好の修行であります。そして、日ごろの修練によって、自分の身は自分で守れるのだという自信に基づいた強さがあるからこそ人に優しくなれる要素を持っています。
和歌山県は、合気道の創始者・植芝盛平翁を生み、古くは初代紀州藩主・徳川頼宣公が和歌山城の紅葉渓庭園で剣道の鍛錬を大いに奨励し、紅葉渓の決闘という史実もある伝統ある武道県であります。来年には、学生の全国規模の武道の大会が和歌山県において開催されると聞いております。だからこそ、ますます県教育委員会としても武道振興への強力な取り組みをぜひお願いいたしたいと思います。教育長の武道振興における御所見と教育行政の中での武道に対するお取り組みを具体的にお聞かせください。
三点目に、中高連携のスポーツ活動の強化についてであります。
例えば、和歌山北高校の体育科は一〇〇%の推薦枠で八十名を選抜し、トップアスリート養成を目指して御尽力いただいておりますが、中学生時からの競技力向上を目指してスポーツにおける中高一貫体制をとってみるのも一つの方法だと思います。できれば併設型が望ましいでしょうが、それも体育施設、運動場の関係もあって急には難しいでしょう。それならば、例えば比較的近い中学校と連携するといった連携型の中高一貫教育の中で競技力の向上を目指したらいかがでしょうか。その中で中学校、高校と一貫したトップアスリートづくりを行っても、大いに効果が上がるのではないでしょうか。スポーツに身も心も打ち込んでいる生徒は、いつしか礼儀も身について、勉学に取り組む意欲もわいてくるもので、まさに文武両道の望ましい形があらわれてくるのではないでしょうか。
また、先ほど少年スポーツの振興に触れさせていただきましたが、スポーツ少年団等でトップクラスの選手を目指して指導してくださる民間の方々の力もおかりして、学校教育の中で、指導者不足のために高校にはあるが中学校にはクラブもなく引率もままならない競技についても、一般の社会人が中学校の中で、学校行事に参加できないという制約はあるかもしれませんが、社会教育と学校教育を結びつける、まさに点と点とを結びつける方法を検討いただいてスポーツの中高一貫を図ってもいいのではないでしょうか。中高一貫のスポーツ教育について、教育長に可能性を問わせていただきます。
以上四点、第一回目の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、バイオに関する人材の育成についての御質問ですが、三年前に地域結集型の共同研究、これを和歌山へ導入するというふうなことでうまくいって、その後いろいろな研究がなされているわけでございます。この研究には、もちろん地元の和歌山大学も入っておりますけども、全国各地からいろいろな研究機関とかの方を集めて行われておりますので、この研究を継承発展させる意味でも、この地域結集型の共同研究というものを基礎にして、和歌山県でこれからもバイオテクノロジーのプロジェクトを継続していくような仕組みを考えていく必要がありますし、その中で、この研究の中で培われたいろいろな人間関係、そしてまた人材育成の手法というふうなものを生かした和歌山らしいバイオテクノロジーの発展方策というものを考えていかなければならないと、このように思っております。
次に、防災時の心構えということでございますが、和歌山県の場合、東南海・南海地震の可能性が非常に高いということで、今、防災センター、大分でき上がってまいりましたけども、いろいろハードの施設等についての整備を進めたり、そしてまた「稲むらの火」の顕彰でありますとか、いろんな形でこの防災問題の県民への意識の定着ということを進めているわけですが、しかしながら、例えば私個人をとってみて、本当にいろいろ日ごろこのことを意識しようという気持ちでいるものの、本当にずっとできているかと言うと、なかなかやっぱりそれは難しいというふうな面があります。
そういう中で、今お話のありました、今議員になられている長島村長さん、目標を示さないで「頑張れ、頑張れ」というふうなことは逆効果でよくないとかというふうなことも非常に示唆に富むことだろうと思いますし、私自身も、やはり防災のときの中心的な立場をとる人間として、自分でロールプレーイング的な意識を常に持ち続ける必要があると思います。
それからまた、最近いろいろな災害が起こっていて、そのときに、例えば知事はどうしたか、市長はどうしたか、そして、それがうまくいったか、こういうことはうまくいかなかったかというようなことについては、いろいろな例があると思いますので、そういうことをやっぱり日ごろからちゃんと目を通して拳々服膺して、和歌山でそういうことが起こったときにむだのない行動が、的確な行動がとれるような努力をしていきたいと思いますし、そしてまた、これは職員の人にとっても全く同じことだと思いますので、そういう方向のやり方を少し勉強してみたいなと、このように思っております。
○副議長(大沢広太郎君) 企画部長高嶋洋子君。
〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 科学技術振興についての御質問でございました。
まず、地域結集型共同研究事業における企業の参加状況についてでございますが、近畿大学のベンチャー企業でありますジーンコントロール株式会社や県農業協同組合連合会の植物バイオセンターなど、十一機関が共同研究に参加をしております。
また、企業誘致につきましては、現時点では具体的なものはございませんが、研究成果の事業化を図る活動の中で、特許等の移転を希望する県外企業には共同研究施設等の利用を促してまいりたいというふうに考えております。
次に、地域産業の活性化につきましては、これまで十六件の特許出願を行っておりますが、このうちの幾つかが事業化に結びつきつつあります。例えば、高温域での病気への耐性が強いアコヤガイを開発しておりますが、これは共同研究者の漁業生産組合で生産を始めております。また、既存製品より生体への適合性が高いという特性を有する人工歯根の製造技術につきましても、その技術移転を県内企業に打診をしているところでございます。
今後とも、特許の活用や技術移転など、共同研究成果を県内産業へ広げてまいりたいというふうに考えております。
さて、次の和歌山バイオ研究センター構想についてでございますが、現在、県工業技術センター内にコア研究室を設け、最新鋭のたんぱく質等の解析装置やアグリバイオ情報のデータベースシステムなどを整備しております。
今後とも、県の研究開発推進基金や国等の競争的資金の導入により当コア研究室の機能を充実し、産学官の共同研究プロジェクトを継続的に実施することによりバイオ研究センターの機能を担ってまいりたいというふうに考えております。
続きまして、都市エリア産学官連携促進事業につきましては、これまで二十件以上の特許出願が見込まれておりまして、このうちの幾つかにつきましては参画企業への技術移転や事業化が進められているほか、県外の電機メーカーへのサンプル提供を開始するなど、一定の成果を上げてきております。
当事業は今年度が最終年度となっておりますが、研究成果をさらに発展させ、事業化に結びつけるための制度が文部科学省において設けられておりまして、県といたしましては引き続きこの制度に応募することで県産業の活性化に寄与してまいりたいというふうに考えております。
○副議長(大沢広太郎君) 危機管理監石橋秀彦君。
〔石橋秀彦君、登壇〕
○危機管理監(石橋秀彦君) 今後の防災訓練についてお答え申し上げます。
議員お話しのとおり、昨年実施したロールプレーイング方式の図上訓練は、従来から実施されている展示型とは異なり、訓練参加者みずから疑似的な災害状況下での意思決定を訓練する内容となっております。職員の防災能力を高める上で、非常に有意義であったと考えております。
県としましては、これらの成果を踏まえ、平成十八年度、大規模図上訓練を県内一カ所で、また、県防災総合訓練については伊都振興局管内において実施する予定でございます。今後とも、こうした訓練を通じ、災害発生時の職員の意識づけや関係機関との連携を図ってまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 本県の産科の現状と産科医の確保についてお答えを申し上げます。
県内の産科医療につきましては、地域の基幹的な公的病院を中心として、民間の診療所においても提供されているところでございます。人口十万人当たり産婦人科医師数は八・四人で、全国平均の八・〇人を上回ってはいるものの、地域的に偏在している状況にあると認識してございます。
議員御指摘のとおり、出産などにより勤務を離れる女性医師が増加する一方、新たに産婦人科を志望する医師は減少しております。県内の産婦人科医師数は、平成十六年の調査では九十六人と平成十四年より十三名減少しており、今後の産科医療体制の確保について懸念をしているところでございます。
県としましては、産婦人科医師を確保するため、不足の著しい小児科や麻酔科とあわせて医学部学生や大学院生に対する修学資金制度を新たに創設するとともに、県内の産科医療体制の重点化、効率化を図るため、周産期医療ネットワークづくりを推進してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 医科大学学長南條輝志男君。
〔南條輝志男君、登壇〕
○医科大学学長(南條輝志男君) 地域医療についてのうち、医師の県外・県内派遣について、教員の兼業について、独立法人化を直前に控えた学長の決意と意気込みについてお答えいたします。
地域医療への貢献という観点から、地域への医師の供給と全国に通じる医師の育成はいずれも重要でありますが、その両者のバランスを図ることが極めて重要であると認識いたしております。
地域への医師の供給につきましては、全国的な傾向として、医師の開業や都会志向が高まる中、深刻な医師不足に陥っており、そのため本学といたしましては、卒後研修医や卒後三年目以降の後期研修医の確保を図るなど、地域医療を担う医師の養成に努めております。今後とも、行政と連携しながら地域医療の充実に貢献してまいりたいと考えております。
次に、法人化後の医師の兼業につきましては、引き続き、より厳格な審査を行うとともに、県内の医療機関での兼業を優先するよう配慮してまいりたいと考えております。
最後に、法人化を控えての、特に地域医療についての決意でございますが、きのうお答えいたしましたとおり、法人化になりましても地域社会貢献、とりわけ地域医療の充実は本学の大きな使命であります。法人化後も県民の皆様に高度で良質な医療が提供できるよう、全力を尽くしたいと考えております。
○副議長(大沢広太郎君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) スポーツ振興の三点についてお答えいたします。
和歌山県スポーツ賞につきましては、スポーツ水準の向上とスポーツの振興に貢献し、その功績著しい者または団体に対し表彰を行うという趣旨のもとで行ってきております。本年度は三月二十日に、第四十四回目となる表彰式を行うこととしております。
近年、種々の全国大会や近畿大会が数多く開催されるようになり、従来の基準のままでは比較的容易に県スポーツ賞の受賞が可能な状況になってまいりました。こうしたことから、多くの選考委員から、受賞者が栄誉と思い、長く記憶に残るよう選考基準の見直しを行うことが望ましいとの意見が出されてきておりました。このため、二年間をかけて、学校教育や競技団体などの関係者から成る選考委員会において、他府県の基準も参考にしながら大会の規模や内容を精査するなど協議を重ね、本年度選考基準の見直しを行ったところであります。
今後とも、全国的な大会のレベルなどに留意しながら、選考基準について引き続き研究してまいります。
次に、武道振興についてでございます。
武道は、礼節を重んじ、みずからの心とわざの錬磨の上にその道をきわめる大変厳しいスポーツであります。教育委員会では、中学校及び高等学校の体育教員を対象に技能や心及び指導方法についての研修会を毎年開催しており、学校における武道指導の充実に取り組んでおります。今後も、学校体育はもとより、幅広く関連の団体と連携しながら武道の振興に努めてまいりたいと考えております。
三点目の、中高連携によるスポーツ活動の強化についてお答えいたします。
現在、例えば和歌山北高校では、体操やフェンシング等で小中学生との合同練習を行っており、また箕島高校では、箕島中学校との間で協定を結んで相撲や空手などで指導者や練習場の不足をカバーし合いながら成果を上げております。
こうした運動部の活動を助けるため、高等学校では運動部活動外部指導者活用事業として二十八の学校の三十五クラブに、また中学校ではスポーツエキスパート活用事業として四十校に専門的な指導者を派遣して、運動部活動と社会体育との連携によるスポーツ活動の強化に努めております。
議員御指摘のとおり、こうした連携によるスポーツ活動は本県のスポーツ振興のためにも重要であることから、今後とも積極的に取り組んでまいります。
○副議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
三十八番長坂隆司君。
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
科学技術振興の二つの事業については、実際の実用化のめども幾つかつき始めているとお話を伺って、人材育成のできる核となる研究機関の立ち上げとともに、新年度の大きな企業誘致施策とタイアップしていただいて、バイオ、とりわけ和歌山県ではアグリバイオ関連企業の誘致の可能性も追求いただきたいと思います。
防災ですが、県民は、そして市町村は県知事を初め県職員の皆さんの背中をよく見ておりますし、頼りにしているということであります。ぜひ、知事、公人としての県職員のリーダーとして、県民の総司令官として、有事の際にはどうかよろしくお願いいたします。
大学病院、地域の基幹病院の医師と開業医とは所得や労働環境に大きな開きがありがちな中、県当局と医大におかれましては、県民の生命、健康を守るという公的使命を帯びた医師の働きがい、生きがいの持てるもろもろの労働条件の改善、そして人材の育成にさらに御尽力いただきまして、今後とも、良好なパートナーシップのもと、県の地域医療を引っ張っていっていただきたいと思います。
中高一貫のスポーツ教育というのは、特色ある学校づくりにも、学校のアピールにも大いに効果のあるものだと思います。定員割れする学校の中でも取り入れてみてはおもしろいのではないかと思います。九年後の国体も見据えたスポーツ競技力の強化のためにも、定員割れした学校に明るい活力をもたらすためにも、また文武バランスのとれた人間教育のためにも、民間の手弁当で頑張っている指導者にさらにやる気を持っていただくべく協力を求めながらスポーツの振興に力点を置いた中等教育、御推進いただきたいと思います。
以上、要望させていただいて、質問を終わらせていただきます。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
二十六番山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 皆さん、こんにちは。
今議会でも、すばらしい和歌山を何としてでもつくっていきたい、そういった強い思いで一般質問をさしていただきたいと思います。
さて、今、和歌山の未来を展望すると、やはり期待と不安が入りまじるものだと感じます。知事も議会冒頭の所信で触れられたように、地方の実情、まだまだ厳しい環境にあり、また本格的な競争環境もどんどん厳しくなろうという中において、そこでは和歌山がどのように競争優位に立っていくことができるのか、地域力、自治力を高めるための本当の知恵が試されるんだと思います。
先日、求人倍率に関するニュースで、全国平均の有効求人倍率がやっと一倍を回復したと報道されていました。厚生労働省の発表によると、二〇〇五年十二月の有効求人倍率はちょうど一・〇〇倍となり、実にバブル崩壊後、一九九二年九月以降、百五十九カ月、十三年と三カ月ぶりに一倍台を回復し、全国的にも明るい兆しが見えてきたということでありました。
全国の景気動向は上向きで、確かに日本経済の再生も目に見えるものとなってきているようです。しかし、あくまで地方ではまだまだ厳しい状況には変わりなく、特に私たちの和歌山では一層の努力が求められます。これからの時代には、横並びでよくなる、横並びで悪くなるといったものではなくて、よくなる地域と一向に状況が改善されない地域が出てくるものと予測されています。
さきに触れた有効求人倍率などを見てみても、少し気になったので調べてみたのですが、やはり地域間の格差は大きくなる傾向が見てとれます。お手元にちょっとグラフをお配りしているんですけれども、このグラフは一九九五年から二〇〇五年までの十年間で有効求人倍率の推移を見たものですけれども、景気の回復とともに有効求人倍率も改善されてきている状況があります。しかしながら、地域間の格差が大きくなっていることを見逃すことはできません。
九五年当時は、最高値と最低値──ちょうどこの一九九五年、お手元の資料で御確認いただきたいんですけれども、ここの最高値と最低値の差というのは〇・一六ポイントでありました。それが二〇〇五年、この十年の間に〇・八八ポイントと、その格差が約五倍以上に広がっているという状況がございます。都道府県別に見てみても、東京都一・五四倍、愛知県一・六一倍、大阪府は一・〇九倍と、やはり大都市部における回復傾向は顕著であります。しかしながら、他の地方都市では、滋賀県は一・二倍と頑張っておるんですけれども、奈良県で〇・七九倍、残念ながら和歌山県は〇・七三倍となっています。今後はますます地域間の格差は大きくなると言われる中で、和歌山県にとっては厳しい現実があります。
ただ、和歌山県が取り組んでいる方向は決して間違っていないのだと思います。地域の特性を伸ばし、独自の魅力を磨いていく地域の再建といったものは、あくまで長い目で見ていかなくてはいけない部分も多分にあるんだと思います。
ここで言いたいことは、全国がよくなった、和歌山も明るいムードが出てきているということに流されることなく、やはり厳しい状況にあることをしっかりと認識して、抜本的な改革、改善路線、これは木村知事が今一生懸命進めてくれていますけれども、さらに加速させていただきたいということであります。
我々は、今、今後の地域のあり方をこの議会でも議論する中で、目先の話だけに振り回されることなく、じっくりと腹をくくって、少しの辛抱はしつつも新しい和歌山の可能性にかけていく、そういった取り組みが求められているのだと思います。
知事はよく「和歌山モデル」といったことを口にされますが、本当にそれは重要なことであり、今まさに日本という国自体のあり方が問われている時代には、地方においても新たな和歌山県の姿、将来の望むべき理想の姿をしっかりと見詰めつつ、さまざまな布石を打つことが今必要とされているのだと思います。
今回は、そのような視点を持つ中で、新しい和歌山の地域づくりとして都市計画にかかわる話と、和歌山をどのように全国に発信していくのかということについて、さまざまなPR活動に係る幾つかの質問、提案をさせていただこうと思っています。
それでは、議長のお許しをいただきましたので質問に移ります。
まずは和歌山県が行うPRに関する活動全般について、まず広報室の取り組みについてお尋ねいたします。
先日、参議院議員の世耕弘成氏が「プロフェッショナル 広報戦略」といった本を出版されています。(資料を示す)これがその本になりますけれども、昨年の夏の郵政解散を受けて行われた衆議院選挙の舞台裏を描いた、ある種ドキュメント作品であり、かつ世耕氏がボストン大学で学ばれた広報研究から広報の効果、また広報の重要性、技術的な面まで踏み込んだ解説も加えられているという、さまざまなエッセンスが含まれている著書となっています。これは、特に政治、行政の分野で政治側からアプローチして広報をとらえた著書としては非常に珍しいものであり、今後も貴重な資料として残っていくものと思います。この本には、県の広報活動、その取り組みの方向性についても数多くのヒントが含まれていると私は感じました。
書かれている内容としては、私も昨年、広報の重要性について企業広報を例示しつつ提案させていただきましたが、そのときに調査に伺った双日ホールディングスを初めとして、株式会社電通、日本広報協会など、それぞれにまさに同じ視点で広報の重要性が指摘されています。特に、広報を組織の内外を問わずコミュニケーション部局としてとらえる姿勢は、世耕氏の話も含めて、どことも共通した認識だと思われます。
私は、前回の質問の中で、コミュニケーション力の強化といった視点から広報部門に関しての五つの提案を行っています。一つは、組織内に広報戦略会議などを設けて広報戦略並びに広報計画を検討していく、二つ目に、広報の効果測定の取り組みからより実効性の高い広報の実現、三つ目に、広聴・マーケティング作業の強化、四つ目として、戦略的広報活動から地域のブランド化に向けた取り組み、そして五つ目に、組織内部のコミュニケーション活動の充実といったものでありました。これを受けて、県の広報室では、外部の有識者を集めて和歌山県広報研究会というものを立ち上げて、広報力強化調査といった取り組みを進められています。
先ごろ、その報告書ができ上がってきたのですが、これがその報告書ですけれども(資料を示す)、この報告書を読ましていただく中では、数々の非常に有意義だと思われるような指摘がなされておりました。その内容を読ませていただくと、短期間によく調査し、ポイントを押さえた提言がされています。今回、研究会を立ち上げ、外部から広報の専門家を集めて取り組まれた意義は非常に大きいと感じますが、ただ、今回提言されたものを単に調査報告を受けたといったことで眠らせてしまうのではなく、どれだけ実行していくのかが問われるものになっているんだと思います。
そこで、今回は、新年度を目前にした重要な時期でありますので、その報告書の中身に触れながら、ぜひ実現していってもらいたい広報活動について、改めて幾つかの提案と質問をさせていただきたいと思います。
まず、今回提案されている報告書について率直な印象からお聞かせ願いたいのですが、この報告書についての感想と、あわせて今後この報告書で提言されている内容についてどのように進めていこうとされているのか、公室長のお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。
また、今回の報告書では、県政推進に当たって喫緊の課題は広報機能の位置づけを全庁的に見直すことであるといった指摘がされています。これは、広報活動の重要性を全庁的、各部局にもっと強く意識づけを行い、その上で、縦割りでない県庁組織全般にわたる情報の総合調整システムをつくるといった提言であると思われますけれども、これを受けてどういった具体的な取り組みを進めようとされているのか、お考えを、あわせてこれも公室長からお聞かせいただきたいと思います。
あわせまして、広報の基本的な役割として、当然のことですが、広報は県行政の目指す方向を正確に把握している、特に知事の考えについてはしっかりと理解しておく必要があるのだと思います。そのための具体的な対応としては、県庁内における重要な会議には広報担当者も必ず出席しておくようにする。特に庁内の重要な会議として、予算などの知事査定を初め重要決定事項を諮る場面、県の各分野における政策の方向性を決める議論をする会議などには、仕組みとして広報室のメンバーが必ず出席する体制づくりが求められると思います。
また、あわせて組織体制の充実では、外部からの能力ある人材を受け入れるといったことも重要なことだと考えます。現状では任期つき採用といった制度もあるわけで、広報のスペシャリストである人材を民間から招聘する。全国に公募をかけて、広報の専門知識、経験豊富な能力の高い人材を採用するといった取り組みも有効なものと考えますが、あわせて公室長から御答弁をいただきたいと思います。
また、報告書の中で、県庁の広報室が単独で県域全体をカバーして質の高い広報活動を進めるのは難しいといった指摘がされています。そこで提案ですが、今後は県と各市町村の広報をもっと連携させる体制整備を考える、それぞれに定期的に情報交換を行う広報連絡会議のようなものを設けることも一案だと思います。市町村行政にも一定の責任を担う県の立場を自覚した上で、県下全域の広報についてもある面では統括するリーダーシップを発揮して効率的、効果的な広報体制を整備する。そうすれば、県内の情報集約がこれまで以上に容易となり、また、外部からの取材活動などへの協力などでも県下市町村の力をかりて省力化が図れるものとなります。
さらに、効率化といった面では、すぐには無理でも、例えば「県民の友」と県下市町村が出している広報紙の連携についても検討すべきだと考えます。将来的には、各市町村が持っている広報紙を「県民の友」に集約して、その中の一部をそれぞれの地域ごとに市町村が受け持っていくといったことも有効な取り組みとなります。県民にとっては、県のサービス、市町村のサービスなど、行政が提供するサービスには変わりないわけですから、一緒に提供する方が情報として受けとめやすいものになります。また、これは市町村における広報費用を考えても大きなコスト削減の効果が期待できると考えますが、あわせまして公室長に御答弁をいただきたいと思います。
続きまして、映画制作への取り組みとフィルムコミッションの立ち上げを含めた観光局の体制強化について、PR活動の二点目としてお尋ねいたします。
新年度の企画部の予算で、「シネマで元気・地域力向上モデル」として六百万円の予算がつけられています。これは、地元の南紀田辺世界遺産フィルムコミッションの立ち上げに百万円、あわせて映画の制作を県として協力するということで五百万円がつけられることとなっています。映画の制作を手伝う、フィルムコミッションを立ち上げる、そういったことには全く異論はなく、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと私自身思っているところでありますが、しかし、映画制作の協力に関する予算のとり方として、果たしてこういったものでよかったのか疑問を持つものです。
この映画制作の話は、新聞等でも報道されていましたが、昨年秋ごろから相談されていたようです。私どものところにも、年が明け、一月二十四日に正式に劇場用映画「幸福のスイッチ」制作決定といった知らせが資料提供されました。クランクインは二月六日、映画のフィルムを取り上げるのが三月上旬といったことですので、そろそろ映画撮影も終わるころです。
そういった中で、新年度予算として今私たちは映画協力に関する予算の審議を行っているわけですが、これはやはり順番としては逆だと思います。あくまで先に予算の裏づけをとって協力する約束をすべきであったのではないでしょうか。今回の件で、私自身は決して映画への協力を否定するものではなく、こういった映画で和歌山県をPRしていただくのは大いに結構だと考えます。しかし、予算のつけ方としては今後はもっと工夫すべきだと思います。
新年度からは、県としても正式にフィルムコミッションを立ち上げて、これまで以上に和歌山を舞台とした映画制作、ドラマ制作などを誘致するためにさまざまな交渉を行っていってくれることと思います。そういった交渉過程においては、制作への協力、特に費用面での協力要請も出てくる可能性があります。そこでは、しっかりと事前の準備をしておくことが必要だと考えます。事前に映画、ドラマの制作に協力するためのガイドラインをつくっておき、透明性を確保した選考基準、選考方法なども検討しておいた上で、あわせて予算も確保しておく。交渉をまとめるためには、時にはスピードも必要で、のんびりしていてはチャンスを失う事態もあるかもしれません。だからこそ、特に予算措置には工夫をしておくことが必要だと考えますが、これは商工労働部長から御答弁をいただきたいと思います。
また、あわせて、フィルムコミッションの立ち上げとその体制について。今回のフィルムコミッションは、特別に事務所を構えてといったものではないようにお聞きしています。どういった体制で進められようとしているのか。これも商工労働部長に御答弁をいただきたいと思います。
あわせて、観光局の人員体制について。今後、フィルムコミッションの運営を含め、観光局が取り組む事業については大きな期待が寄せられるものとなっています。新年度予算の資料の中でも、重点施策とされる新規の事業だけで、観光振興事業五つに観光交流事業が二つ、計七つの新規事業が立ち上げられ、予算としても約二億円計上されるものとなっています。
私も、確かに、今の時代、今のこのタイミングで観光事業は非常に大切なものであり、思い切った予算措置のその取り組みということは非常に必要なものだと考えます。ただ、あわせて人員体制の充実も欠かせません。実際問題、現状の体制のままで質の高い仕事をするのは少し無理があるのではないかと心配するところです。新年度を目前として組織改正を控えるこの時期ですので、改めて商工労働部長から観光局の体制強化についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。
次に、安全・安心まちづくり条例の啓発について。
これも大きな意味で、和歌山県のPRといったくくりの中で提案させていただきたいと思います。
さきの議会でも取り上げました安全・安心のまちづくり条例については、この当初議会で条例案が提出されることとなっていますが、これは地域にとって非常に重要なものだと思います。地域の安全・安心を守るのは、決して警察任せ、行政任せではなく、地域住民の皆さんにも御理解、御協力を得て一緒によりよい地域をつくっていく。そこでは、県行政が率先してその機運を盛り上げていくことが望まれます。ここでも広報力が問われることとなり、どこまで県民の皆さんに声が届き、しっかりと受けとめてもらうことができるのかが重要なポイントとなります。
さて、そういったことを考える中で、他の自治体の取り組みとして非常に印象に残った啓発活動の事例があります。これも皆様のお手元に資料をお配りしておりますけれども、それは東京都が行った「心の東京革命」推進運動といったものです。お手元の資料を御確認ください。これが心の東京革命というものですけれども、これを東京都が、子供たちに教え伝えていくべき社会の基本的な心構えとして「心の東京ルール」といったものを提案しています。
石原慎太郎知事が就任されて間もなくのころだったと思うんですけれども、心の東京ルール七つの呼びかけとして、「毎日きちんとあいさつをさせよう」「他人の子どもでも叱ろう」「子どもに手伝いをさせよう」「ねだる子どもに我慢をさせよう」「先人や目上の人を敬う心を育てよう」「体験の中で子どもをきたえよう」「子どもにその日のことを話させよう」。
最初、この啓発活動を知ったとき、非常に新鮮な驚きがありました。単純な呼びかけではありますけれども、あいさつをさせよう、他人の子供でもしかろう、そういった当たり前の、しかし実際にはなかなかできないことについて、地域全体のコンセンサスをとれるように東京都が率先して考え方を示して、あわせて地域の大人が責任ある行動をとることを求める。当時、この取り組みを勉強するために東京都にお邪魔して話を伺ってきたのですが、この事業を進めるに当たって特徴的なことは、いろいろな機会をとらえて石原都知事自身が先頭に立って都民に対して直接訴えかけを行っていったということでした。東京に住む友人に話を聞くと、この取り組みが発表されたとき、東京都が製作するテレビ番組などを初めとして、さまざまな媒体を使って石原都知事が何度も何度も繰り返し都民に訴えかけを行い、それはかなりのインパクトがあったそうです。
今回の和歌山県の取り組みも、ある意味同じようなメッセージ性の強い取り組みだと思います。そこでは県民の皆さんにどのように伝えるのかが大切で、単に条例の構成などを書いて、よくあるようにパンフレット作成を行い地域に配布するといったものでは県民の皆さんの心には響かないように思います。
今回、和歌山県が制定しようとしているこの安全・安心条例については、その中身を見ても非常によく考えられていて、特に地域全体で旅行者までも含めて安全・安心を確保しようとするのは和歌山の独創的なものであり、和歌山県という地域の考え方が明確に出ている、メッセージ性の強いものとなっています。これは伝え方によっては非常に宣伝効果も高いものとなり、例えば安全・安心和歌山アピールといったような感じでまとめて、条例の構成を示す内容についても、最初にわかりやすくシンプルに幾つかの項目をまとめて提示する、そして発表時には、できるだけ知事が直接県民に語りかける、そういった演出を少し考えることで大きく効果は変わってくるように思います。
ぜひ、今回の条例の広報啓発活動においては知恵を絞り、インパクトのある打ち出し方を考えていただきたいと思いますが、これは知事の御所見を賜りたいと思います。
最後に、まちづくり三法の改正とコンパクトシティーについて。
昨年の十二月二十四日、日経新聞で次のような社説が掲載されていました。「自治体のまちづくりに対する自覚さえあればこんなことになるはずはなかった」、「言われるまでもなく地方都市の荒廃は放置できない状態になっている。郊外地域が無秩序に開発された結果、お年寄りには住みにくく景観上も醜い街になってしまった」、しかし、「この惨状を招いた本当の原因は、自治体を筆頭に住民、さらには商店主たち自身がまちづくりや自治への自覚を欠いていたことなのである。 今回の『まちづくり三法』改正の柱は都市計画法の改正である。にもかかわらず、そこでは日本の都市計画への反省や将来ビジョン、住民参加や情報開示のあり方など原点に戻った議論は全く行われず、中小商店街団体の政治要求だけが目立った」、このままの「大型店規制に頼る見せかけだけの都市計画では中心市街地の復活が望めないばかりか、地方都市全体が衰えていくおそれも極めて大きい」。これは、すぐれた見識だと思います。今回、私は、町づくりの基本に立ち返って、そのビジョンについて議論させてもらいたいと思っています。
政府は、先月二月六日の閣議で、まちづくり三法のうち都市計画法改正案と中心市街地活性化法改正案を決定しました。今国会に提出され、二〇〇七年度にも施行される予定となっています。
まちづくり三法とは大規模小売店舗立地法と中心市街地活性化法、都市計画法の三つを指しますが、その中で、今国会の政府の対応としては都市計画法と中心市街地活性化法の二法を改正の対象としております。今回の見直し議論の中では、都市計画法の見直しに伴う商業施設の規制に関する議論が盛んになっていますけれども、私はあくまで、町づくり、将来の地域の姿を根本から見直すことが主眼となるべきであり、そこではこれまでの経済成長、人口増加に支えられた地域づくりの抜本的な見直しが迫られているものと考えます。そういった視点から、今後の県の取り組みについて幾つかの質問、提案をさせていただきたいと思います。
ポイントは、人口がふえ続けることを想定した町づくりから、人口減少社会に合わせた町づくりへの政策転換です。その参考になる事例として、先日、県下の市町村が今後進める都市計画、地域づくりのモデルとなるものと期待してコンパクトシティーを基本理念として持つ青森に行き、現地を見てまいりました。
青森市は、平成十一年に都市計画マスタープランを策定する中で、その基本をコンパクトシティーの形成と定めて、土地利用の用途制限、助成制度などにおいて先進の取り組みを行っています。今回の国におけるまちづくり三法の見直しも、その根底にはコンパクトシティーを一つの理想とする都市計画の転換があると言われています。
そもそも、コンパクトシティーの概念については、一九九〇年以降、欧米先進諸国において持続可能な都市のあり方として活発な議論が展開されてきています。一九九二年には、リオデジャネイロで行われた世界環境会議の中で、コンパクトシティーの考え方をもとに資源や環境を守りながらどのように都市は整備されるべきかといったことが問題提起され、世界じゅうに大きな影響を及ぼしています。イギリスでもサッチャー政権時に、シティーチャレンジとして新たな都市計画策定の働きかけを強める中でも重要視されてきました。
「コンパクトシティー」という言葉自体は、アメリカの都市計画建築家の専門家であったダンツィクとサアティが一九七三年に記した共著で初めて用いられています。(資料を示す)これがその原書の翻訳本ですけれども、もう絶版本になっていて、なかなか手に入れられないところを県立図書館でちゃんと所蔵してくれていまして、今回やっと見つけることができました。
その翻訳本については、「コンパクト・シティ 豊かな生活空間 四次元都市の青写真」といった論文が現在のコンパクトシティー論のルーツと言われています。これを読んでみると、単に学術的な記述に終始することなく、挿絵もたくさん挿入されていて、ある面では、近未来の人間の生活様式を言い当てようとするSF小説的なおもしろさもあるものです。そこではさまざまなコストを抑える最大効率化された一つのモデル都市が描かれていて、かつゾーニングの徹底から自然との調和も重視した、人間が人間らしく生活するための理想郷が描かれています。
現在は、日本でもコンパクトシティーの発想は活発に議論されるものとなっていて、その考え方は、都市の拡大により住宅地をふやし続け、人口を増大させる方策をとってきた従来の都市政策とは正反対の発想となっています。
今、多くの地方都市では、かつて活気にあふれていた中心市街地の面影がなくなり、車社会の進展、人口の郊外流出、大型商業施設の郊外への出店に加えて、病院、学校といった公共施設までもが郊外に出ていくようになった結果として中心市街地のにぎわいを奪い、地域の衰退を招いたとして、改めて中心市街地再生に向けた機運が高まる中でコンパクトシティーによる新たな町づくりが議論されています。
さて、そういった中で青森市の状況についてですが、青森市は郊外開発を進めてきた従来の都市政策の反省に立って、コンパクトシティーづくりとして、商業、職場、住宅、学校、病院など、さまざまな機能を都市の中心部にコンパクトに集中させることで都市の活力を取り戻そうとしています。青森市の試算によると、一九七〇年から二〇〇〇年まで、この三十年間に市街地の中心部から郊外に人が流出している。これは一万三千人流出しているんですけれども、その一万三千人を受け入れるために、道路や下水道などのインフラ整備により約三百五十億もの行政コストをかけてきた。また、青森市の場合は、日本有数の豪雪地域でありますので、市街地が郊外へと拡大し、道路延長が増加した結果、毎年除雪費にも大きなコストがかかり、昨年は約三十億円の費用がかかったということです。
そこで、このように増大する行政コストの削減、郊外のスプロール化や中心市街地の空洞化を食いとめるために、大きくは、無秩序な市街地の拡大抑制と、もう一つが町中の再生という二つの視点に立ってコンパクトシティーを実現するための諸施策を立案しているということでありました。
具体的に、青森市が進めるコンパクトシティーとは、これもお手元の資料を御確認いただきたいのですが、(パネルを示す)これが青森市の都市の全体を計画している様子を示しているものでありますけれども、このコンパクトシティーとは、市内をインナー、ミッド、アウターというふうに三つに分類して、各ゾーンごとに交通体系の整備方針を定め、町づくりを進めている。これ、上が海になるんですけれども、この赤い部分がインナーと言われる地域で、これは昭和四十五年ごろに市街地となっていたエリアで、町並みの老朽化が進む密集地を含む地域であり、都市整備を重点的に行って市街地の再構築などを進めるエリアとして指定しています。
次に、真ん中の緑の部分、これはミッドと呼んでいるらしいんですけれども、インナーとアウターの中間の地域で、多くが低層の住宅地となっていて、一部を今後の住宅需要などに応じて良質な住宅の供給を行うストックエリアとしています。
アウター、この下の部分の白いところですけれども、アウターは外環状線から外側の地域を指して、都市化を抑制し、自然環境の保全に努め、特にこの青い点線から外の開発については原則として認めないということにしているそうです。
また、同時に青森市では中心市街地の活性化にも力を入れていて、平成十三年一月に青森駅前再開発によって地下一階、地上九階建ての「AUGA」という商業施設をオープンさせています。これもここに写真を載せているものですけれども、写真が、ちょうどこの真ん中が中央商店街、中心市街地の商店街になって、右側にあるところがAUGAという建物なんですけれども、これは地下一階、地上九階建てのビルで、地下に生鮮市場──これ、地下にあるんです。これ、ビルの中にこの中央市場──よく和歌山でもありますけれども、そういう市場が地下一階に実は配置されていまして、私も行って驚いたんですけれども、これがすごく実は全国的にも有名になっていまして、そういった生鮮市場、上層階には市の図書館、中間階には商業施設や公共施設が入居して、中心市街地ににぎわいが戻ってくるきっかけとなっているそうです。また、駅前の再開発地区にはケアつきの高齢者対応マンションが完成するなど、ここ数年で中心市街地のマンション建設が急増して中心地のにぎわいが徐々に戻ってきているということでした。確かに、私も昼夜とその商店街の周辺を歩いてきたんですけれども、地方の中心市街地には珍しく非常に活気にあふれる状況があるなというふうに率直に感じました。
今、大きな岐路に立つ地方都市においては、その拡大路線を転換して実績を残している青森市の取り組みは、新たな町づくりの方向性を確実に示していると思います。実際に青森市では、市内中心部において二〇〇六年末までの五年間に分譲マンションが十二棟建つ見通しとなっている、中心市街地の二〇〇五年の人口は、二〇〇〇年と比較して五年間に四・八%ふえるものとなっているという説明を受けました。
このような調査を進めてくる中で、私自身は、今後、少子高齢化の進展、人口減少などを前提とする社会の到来が現実となる地方都市において、これまでの町づくりの手法を見直す一つの回答としてコンパクトシティーがあると強く感じています。我々は、これまでの高度経済成長、人口増加時代における右肩上がりの都市計画の発想、そういった頭を根本的に切りかえなくてはならない時期に来ている。今こそ、地域の未来に責任を負って県政運営の現場で新たな町づくりにチャレンジすることが期待されているんだと思います。
そこで、幾つか質問さしていただきます。
今後、県内各自治体においてもコンパクトシティーといった概念に沿った町づくりは非常に有効なものになると考えます。また、これは環境先進県を目指す和歌山県にとっても、省エネルギー、効率化といった視点で、エコシティーといった概念にも結びつくものであります。そこでは、県がリーダーシップをとる中で、県下の市町村と連携してコンパクトシティーといった理想を掲げた共通のシナリオを考えていくことは和歌山県全体としても地域の価値を高めることにもつながるものと思いますが、まずこのコンパクトシティーの有効性について知事の御所見を賜りたいと思います。
また、今回のまちづくり三法の改正により、各都道府県でもさまざまな動きが出ています。今月に入って、この三日の日に北海道議会で高橋はるみ知事は、道独自のガイドラインを策定する方針を明らかにしています。福島県では、郊外の大型店の出店を規制する条例を定め、また富山県なども県独自のルール化に向け、検討に入っているようです。土地利用の新たなルールづくりなど、全国の都道府県でもさまざまな動きが出てきている状況にありますが、ガイドラインの作成、条例化といった動きについて和歌山県の取り組みの見通しを、これは商工労働部長からお考えをお聞かせ願いたいと思います。
また、今回のまちづくり三法の改正について、私は最初も少し触れましたが、これはあくまで経済規制の側面からの視点ではなくて町づくりの転換といった視点から大いに評価するものですが、和歌山県として今回の法改正の動きをどのように見ているのか、県土整備部長にそのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
あわせて、今後は県下各市町村においても、新たな人口減少時代に即した都市計画を早急に整備し直す必要があります。二十年、三十年前に策定された都市計画、計画決定の打たれた道路を今も一日千秋の思いでつくり続けている──これは笑い話となってしまいます。私の選出されている和歌山市においても、市街地の拡大といった部分では笑えない話がたくさんあります。
今、そういった取り組みをほうっておけないといった認識から、今回、国としても法改正を進めているわけですが、そこで県としてのリーダーシップも今後問われるものとなります。今回のまちづくり三法の改正をきっかけとして、新たに市町村が取り組む都市計画の策定などについては、県が主導的な立場で県下全域の取り組みにも積極的にかかわり、新たに描き直される都市計画の中にコンパクトシティーの理念を浸透させた、それでありながら和歌山独自の和歌山モデルといったものを打ち出すこともできるのではないかと私は考えていますが、これも県土整備部長からお考えをお聞かせ願いたいと思います。
最後に、今回のまちづくり三法の見直しの中では、中心市街地の活性化に意欲的に取り組む自治体を政府が認定し、重点的に支援するとしています。これは、ある意味、国による選択と集中を強化する取り組みであり、あくまで意欲のある自治体だけを優先的に支援していくとしています。ただ、認定取得に向けては、それぞれの市町村単独ではなかなか大変な作業になると思われる中で、そういった県下の自治体が取り組む作業を県が先導する役割も期待されますが、どのような対応を考えておられるのか。これもあわせまして、県土整備部長の御認識をお伺いしたいと思います。
以上で、私の一問目を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 安全・安心のまちづくり条例についてインパクトのある打ち出しをということですが、この安全・安心のまちづくり条例については、今非常に大事なことということで今議会に提案しているということで、これは審議会なんかを通して非常にいい内容になっていると思います。
御質問にもありましたように、例えば、和歌山は観光ということを非常に大事な要素として打ち出しているわけだけど、旅行者の安全・安心というふうなことまで入っているということで、これは非常に特色あるわけですが、そういうふうなものができても、この手の条例はできたことすら知らない人がほとんどというふうなことになりかねないということがあろうかと思います。
どういうふうな具体的な打ち出しの仕方をするかはこれからの対応になると思いますけども、できるだけインパクトの強い打ち出しを行って、県民の人によくわかってもらうようにしていきたいと思います。
それにしても、この「心の東京ルール」というのを私は初めて見ましたが、なかなかいいことばっかり書いてあるんで、これ、本当に「心の和歌山ルール」というようなことで、これは教育委員会のあれになるかもしれませんけど、打ち出していったらいいなというようなことも思いました。
それから、コンパクトシティーへの取り組みということです。
今、まちづくり三法の関係では賛否いろいろあって非常に大きな問題になっていますけども、今のままではよくないというふうなことがコンセンサスになりつつあるんだろうと思います。
そういう中で、コンパクトシティーというのは私も初めて聞いたんですけども、和歌山県、特に和歌山市でも中心市街地の疲弊ということが非常に長く問題になってきていて、これはもう和歌山市だけじゃなくて、地方都市へ行くと本当にシャッターのおりたところがこれでもかというほど、ここまで来ているかというぐらい多くなってきています。
ただ、そういうふうな中で一つ最近の新しいいい方向だなと思うのは、今までは郊外へ郊外へとマンションとか住宅とかそういうものが展開していたのが、都会でもそうですし、地方中核都市なんかでもそうだと思うんだけど、町の真ん中にマンションをつくって、そこで住みやすい町をつくっていこうという動きが出てきていること。それからもう一つは、例えば電気屋さんなんかでも、大きな郊外の量販店、これもう非常に栄えているわけですけど、一方では町の電気屋さんも、今までお客さんがなくなっていたようなところへお客さんが戻り出していると。これはどういうことかというと、値段はちょっと高いけども、後、故障したり使い方──デジタルデバイドと言いますけど、使い方がわからなくなったときに巡回してきたりしてくれて非常に頼りになると。特にお年寄りが多くなってくると、むしろ値段よりもそういうサービスの方がいいというふうなことで、またお客がやり方によって戻ってきているというふうなことがあるということを聞いています。
こういうことが合わさってそのコンパクトシティーになっていくんだろうと思うんですけども、こういうことも、ただ単にそういうふうな現象が起こっているということを後追いしているだけではやはりよくないんで、そういうふうな先進地の事例なんかもよく見ながら、そういうものがどういうふうに和歌山県の中で取り入れていけるか、そしてまた、このまちづくり三法の動きとあわせてどういうふうに対応したらいいか、これを和歌山市なんかともよく相談しながら前向きに対応していきたいと、このように思っています。
○副議長(大沢広太郎君) 知事公室長野添 勝君。
〔野添 勝君、登壇〕
○知事公室長(野添 勝君) 県の広報についての御質問四点についてお答えいたします。
まず、広報への取り組みについてでございます。
県内においては県民の皆さんの御理解と御協力を得るために、また外に向かっては激化する地域間競争の中で本県がぬきんでるために、広報の果たす役割は非常に大きいものと考えており、そのためにさまざまな創意工夫を行っているところでございます。
さらに新たな取り組みを進めるために、議員の御提案も踏まえ、和歌山県広報研究会をつくり、行政広報に詳しい大学教授や出版、宣伝、映像などの専門家五名を委員として、県広報のあり方やイメージメディア戦略などの提言、さらに県が製作している広報紙や広報番組などについての意見をいただきました。
この内容は広範で示唆に富むのですが、行政広報のとらえ方や本県の広報への評価など、委員それぞれ違っており、行政広報の難しさを改めて実感したというのが率直な感想でございます。しかし、その中で、早速「県民の友」や番組づくりにおいて、知事のトップメッセージを多用したり各媒体間で同一テーマを取り上げて相乗効果をねらったりと、可能な限り意見を取り入れ、実践をしております。
さらに、県外への広報につきましては、今後も東京事務所を活用した首都圏などでのパブリシティー体制の強化を行い、県外企業が本県立地に魅力を感じるような広報、観光を初め交流人口の増加につながるような広報など、一層多様なメディアを活用して広報力の強化に努めてまいります。
次に、広報機能の位置づけの見直しと情報の総合調整システムの構築につきましては、全庁的な広報意識やバブリシティー向上のため、各部の広報担当代表者で構成する広報連絡会議を毎月開催しており、現在、平成十八年度の重点広報テーマの選定を行っているところでございます。月刊誌や新聞などの掲載実績も増加している中、今後も広報効果を上げるために広報連絡会議の強化と部局を超えたワーキング等も開催し、より横断的、戦略的な広報に努めてまいります。
次に、県の重要会議への広報の参画についてですが、県政の方針を見据えた広報を推進することは大切なことでございますので、必要な協議の場に積極的にかかわってまいります。
また、民間の広報スペシャリストの採用につきましては、行政広報はさまざまな分野にわたり、またその対象も幅広く多岐にわたるために民間企業の広報とは同一にはできない部分もございますが、有効な民間ノウハウの活用法について、議員御提案の公募も含めて研究してまいります。
最後に、市町村広報との連携についてですが、現在、県と市町村の広報担当者で構成する県広報協会において情報交換や広報力向上のための研修会などを実施しておりますが、今後、この会の中で県と市町村の広報の連携のあり方について意見交換を行ってまいります。
○副議長(大沢広太郎君) 商工労働部長下 宏君。
〔下 宏君、登壇〕
○商工労働部長(下 宏君) 映画制作への取り組みとフィルムコミッションを含めた観光局の体制強化ということで三点の質問がございましたが、初めにフィルムコミッションについてでございます。
フィルムコミッションにつきましては、去る二月二十六日に県観光連盟内に設立をいたしました。観光連盟内に設立をした理由は、当連盟には過去に取材協力や撮影支援を行ってきた実績があり、また常時、市町村や市町村観光協会などと意思の疎通を図っておりまして、今後のフィルムコミッション事業を最もスムーズに展開していけると判断したためでございます。
事務局の職員体制につきましては、担当者に加え、連盟職員全員が誘致担当者との意識を持って取り組む所存でございます。
ロケを積極的に誘致するための経済的支援につきましては、地域のPRや人材育成、さらには観光客の誘致に及ぼす効果等を勘案し、地域振興施策や観光施策として支援する場合もあり得ると考えております。また、その際には、議員御発言のとおり、時期を逃さない対応が必要であり、そのための前提条件を今後検討してまいります。
来年度の観光局の体制についてでございますが、首都圏や近畿圏からの誘客、さらには映画等の撮影や各種大会の誘致に一層積極的に取り組むため、東京における観光連盟の体制強化や市町村との連携強化に向け、所要の人員確保に努めてまいります。
次に、まちづくり三法の改正に伴うガイドラインの作成、条例化の見通しについてでございます。
大規模小売店舗の立地につきましては、立地が住民の生活環境や周辺環境、経済事情に大きな影響を与えるのと同様に、規制についても各方面にさまざまな影響を与えることから、慎重に対応すべきであると考えてございます。
他府県では、大規模小売店舗の郊外立地に歯どめをかけるための条例やガイドラインを策定している例もありますが、今回の法改正は、現行三法の課題やそうした地方公共団体の動きも踏まえた上でのものでありまして、県としましては、法改正の趣旨に沿って中心市街地の活性化方策を検討してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 県土整備部長宮地淳夫君。
〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) まちづくり三法関連の御質問に一括してお答えをいたします。
今回のまちづくり三法の法改正につきましては、中心市街地が衰退する傾向にある中で、都道府県の広域的な調整機能や大規模集客施設の立地等に着目したものとなっております。
特に大規模集客施設の立地につきましては、原則、商業系用途に立地を限定し、それ以外の地域に立地する場合は都市計画決定の手続をとることとし、規制誘導の面を強化したものと認識をしております。
次に、コンパクトシティーといった理念を共有する新たな都市計画の策定をリードすべきではないかという御指摘につきましては、コンパクトシティーの趣旨である中心市街地活性化等の観点から、都市計画行政の中で市町を指導してまいりたいと考えております。
次に、国による中心市街地活性化基本計画の認定に当たりましては、市町が計画を策定する際に県が窓口となる事業が計画に位置づけされることが重要であると考えておりまして、適切に指導してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○副議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
二十六番山下大輔君。
○山下大輔君 御答弁いただきまして、ありがとうございました。
まず、ちょっと広報の部門なんですけれども、広報の重要性は、公室長のお答えからももう重々認識していただいていると。やっぱり今、県庁内でも各部局でそれぞれにみんなが頑張って広報しようと。悪く言えば、ばらばらにやっぱりなっていると。実はその中でも、情報の受け手の立場に立った本当にいい情報発信と情報の受け手の立場に立たないものがある。
その中で、いいものとして一つ御紹介したいのが和歌山の東京事務所が出しているメールマガジン、「TOKYO KEY STATION」というんですけど、私も自宅のパソコンで登録していまして、いつも送ってもらっている。県政の動きがすごくよくまとまっていまして、内容的にもおもしろいものになっています。
特にこの六十三号というのが実はおもしろかったんでちょっと持ってきたんですけれども、県政の動きとしては、「木村知事と南部代表(パソナグループ)が対談」とか、「祝『環境賞』受賞」──地球環境大賞に和歌山県が選ばれましたとか、本当にうまく情報を整理して、しかも、そこからすぐに中身の内容にも飛べるようなリンクが張られていると。すごくおもしろい内容です。
しかも、この編集後記の部分が実は物すごくおもしろかったんですけれども、六十三号の編集後記で「今回のトリノ五輪。最大の見せ場は、何といっても、フィギュアスケート女子! クールビューティ・荒川静香選手の華麗なフリー演技、金メダルは感動でした。気が付くと、オペラ『トゥーランドット』のメロディーを自然と口ずさんでいるなどいまだに余韻が醒めやらぬ今日この頃です。 そんな中、妙に頭に残るCMが・・・(私だけでしょうか?)。 荒川選手を起用した『金の芽が出る金芽米』こと、トーヨーライス『金芽米』。(中略)トーヨーライスは、和歌山市に本社をおく『東洋精米機製作所』の関連会社・・・。 やはり、元気な和歌山県の企業に出会うと、自然と、うれしい気持ちになってきます。 今後、ますます、和歌山県内から、多くの元気な企業が出ることを祈念して、第六十三号メルマガを終わらせていただきます」と。
実は、こういうことが、本当に和歌山を好きで和歌山をみんなに知ってもらいたいということがすごく出ているメールマガジンだと僕は思い、毎回感心して読ましてもらっているんですけれども、こういったものが県のホームページと全然リンクしてないと。連携できてない。やっぱりこういう部分を総合的に、お互いに相乗効果を生むような広報活動をしっかりと進めていってもらいたいと思います。
最後、都市計画の部分ですけれども、青森をまねしろということじゃ決してないです。ただ、これ、実は県の都市計画なんかでも読ましていただいても、この都市計画の最初のところに、序章とかで考え方というのは普通の文章で書いてるんですけれども、この最初にやっぱり理念というものが僕は必要やと。今回、コンパクトシティーというのも、人口増加、経済成長といった社会から今大きく転換されている時代に和歌山県としてどういう地域づくりを進めるかという部分において、やっぱりその理念をしっかりと和歌山県で掲げてもらいたいと。そこから地域の再生というのが進んでいくもんやと思いますので、ぜひそういうことをお願いして私の再質問を終わらしていただきます。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で山下大輔君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
本日は、これをもって散会いたします。
午後二時五十分散会