平成18年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(江上柳助議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
質疑及び一般質問を続行いたします。
三十六番江上柳助君。
〔江上柳助君、登壇〕(拍手)
○江上柳助君 おはようございます。
ただいま議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさしていただきます。
最初に、格差社会への対応についてお尋ねいたします。
「勝ち組」「負け組」との言葉にあらわれているように、改革の進行に伴って競争至上主義の社会へと押し流され、社会の二極化、すなわち格差が広がっているのではないかと言われております。生活保護世帯数や貯蓄残高ゼロ世帯数の増加などにもあらわれているように、私たちが現場で感ずる生活実感として、都市と地方、大企業と中小企業、中高齢者と若年者などの間では格差は確実に広がっています。
本県においても、人口減少率ワースト二位。昨年十二月の有効求人倍率は〇・七三倍で、近畿圏ワースト。ちなみに、愛知県一・六一倍、東京都一・五四倍、大阪府一・〇九倍となっており、都市部では一倍台を十三年三カ月ぶりに回復。雇用が改善されていない県に共通している点は、公共事業への依存度が高いというところであります。一方、本県においても、生活保護人員も一九九六年度を境に急速に増加しております。
皆様御承知のように、「下流社会」「希望格差社会」というタイトルの本が今話題になっております。「下流社会」の本の中で、「『下流』とは、単に所得が低いということではない。コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。その結果として所得が上がらず、未婚のままである確率も高い。そして彼らの中には、だらだら歩き、だらだら生きている者も少なくない。その方が楽だからだ」。これは、下流社会の「はじめに」の記述であります。下流社会とは具体的にどんな社会で、若い世代の価値観、生活、消費は今どう変わりつつあるのかを著者が豊富なデータをもとに書き上げたものであります。
一方、「希望格差社会」という本の内容は、職業、家庭、教育、そのすべてが不安定化しているリスク社会日本で勝ち組と負け組の格差がいや応なく拡大する中で、努力は報われないと感じた人々から希望が消滅していく、将来に希望が持てる人と将来に絶望している人の分裂、これが希望格差社会であるとしております。
格差は、経済格差だけではなく意識の変化にも及び始めているとの見方もあります。格差が大きくなれば、社会の活力は低下し、安定も損なわれてしまいます。新時代の日本を築くため今後も改革は必要であり、改革に痛みが伴うことが避けられないのであれば、私たちは格差の縮小、解消に努力するとともに、敗者復活が容易な社会に、そしてセーフティーネットを盛り込んだ改革の遂行に、これまで以上に力を入れて取り組んでいかなければならないと思うわけであります。
そこで、知事にお尋ねいたします。
格差社会に対する知事の認識とその対応策について、御見解を承りたいと思います。
次に、雇用対策についてお尋ねいたします。
内閣府の国民生活世論調査では、あなたの生活程度は世間一般と比べてどのくらいですかとの問いに、上中下とありまして、中の中と答える人が一九九六年では五七・四%でありました。これが、二〇〇四年は五二・八%に減っております。いわゆる中の中と答えた人が減ってきている。逆に、中の下は二三・〇%から二七・一%にふえております。上中下の、そのまま下流という下の分ですけれども、下は五・二%から六・五%に微増しており、中の下と下を合わせますと、二八・二%から三三・六%にふえたことになります。特に、団塊ジュニアと言われる三十歳から三十四歳の男性の下が三九・八%であります。「下流社会」の著者、三浦展氏の調査によりますと、団塊ジュニアの世代の男性は四八%が下流社会としております。一九九六年を境として、確実に社会の二極化が進んでいることがうかがえます。
団塊ジュニアや若年層において下流階層が増加することは、勤労意欲や生活能力の低い人がふえることになります。そのことは、未婚のままでいる確率が高くなる一方、婚姻世帯の出生数にも影響を及ぼし、少子化に拍車をかけることになります。ちなみに、本県の婚姻率は全国三十八位、出生率は四十四位、離婚率は七位となっております。
そこで、若年者が将来に希望を持ち、子供を産み育てやすい環境を整えることが重要であると思います。将来に、また生活に希望を持って生きていくためには、まず職業につくことであります。県内には、仕事探しや就職に関する相談など役立つ情報を提供してくれる施設は、ジョブカフェ・わかやまを初め、NPO法人などの就職支援施設があるわけであります。
一方、ニートやフリーターなどの若年雇用への国の積極的な取り組みが始まり、国及び関係機関にはさまざまな支援策が用意されております。例えば、厚生労働省の若者自立塾であります。若者自立塾とは、就労することができないでいる若年者に対し、合宿形式による集団生活の中での生活訓練、労働体験などを通じて社会人、職業人として必要な基本的能力の獲得、勤労観の醸成を図るとともに、働くことについての自信と意欲を付与することにより就労等へと導くことを目的としています。平成十七年十一月段階で、全国に二十カ所設けられています。厚生労働省は、平成十八年度、今審議されております予算案で、全国でさらに二十五カ所、十億円の予算を組んでおります。塾の設置、運営者は、広く民間事業者やNPO等から募ることになっております。
職を求める人たちの中には、自分の力だけでは職業につけない人がいます。そのためには、求職者への公共的支援が必要になってまいります。ジョブカフェ・わかやまの充実強化とあわせ、知事の御所見をお伺いいたします。
若年雇用問題には、ニートやフリーターだけでなく、パートや派遣労働者も含まれます。ここを少しでも正規雇用、安定雇用へと結びつけるような施策を講じていかなければならないと思うわけであります。これらの施策は、国において、パートに対しての最低賃金の設定であるとか社会保障の設定であるとか、さまざまなことがあると思いますが、これから対策が講じていかれることと存じます。
ニートやフリーター問題は、若年雇用が不安定化することによって生み出される社会問題であります。若者は、社会にとって希少な資源であります。彼らが社会に貢献できる場が与えられないことほど、若者自身にとっても、また社会にとっても不幸なことはありません。そこで、ニートやフリーター対策に積極的に取り組まなければならないと思います。本県におけるニートやフリーターの実態とその対策について、商工労働部長にお伺いいたします。
「希望格差社会」の本の著者、山田昌弘氏は、「自分の能力に比べて過大な夢を持っているために、職業につけない人々への対策をとらなければならない。過大な期待をクールダウンさせる『職業カウンセリング』をシステム化する必要がある。これは、フリーターに対してだけではなく、学校教育での導入が望まれる。アメリカでは、学校教育から職業レベルまで、カウンセリングやコンサルティング制度が充実しているので、『努力をなるべくむだにしないよう』過大な期待をあきらめさせ、能力に合った職につくように誘導している。その効果もあって、ニューエコノミーによる職の二極化が生じても、夢見るフリーターの大量発生といった問題が起きないのだ」と述べております。
教育は、本来、理想を求めていくものであります。当然、若者が安定した職業、仕事につけるための努力を惜しんではならないと思うわけでございます。一方、社会の現実を見きわめて、直視し、理解することも大事であります。したがって、学校教育の中での職業カウンセリングは重要な課題だと考えます。教育現場での職業カウンセリングの取り組みについて、教育長にお伺いいたします。
次に、和歌山県市町村合併推進構想についてお尋ねいたします。
市町村の合併の特例に関する法律、旧法において、本県では、昭和三十九年、田辺市が牟婁町を編入して以来、五十市町村であったのが、関係者の御理解と御尽力によりまして、本年三月一日をもちまして八市二十一町一村の三十市町村となり、市町村合併が大きく進展をいたしました。
合併に至るまでには、さまざまな困難もあったことと推察申し上げます。地域住民が、本当に合併してよかった、この町に住んでよかった、福祉が向上した、地域の活力が生まれたと言えるような施策を実行するまでには、しばらくの時間が必要であると思うわけであります。
県は、昨年四月に施行されました市町村の合併の特例等に関する法律に基づいて、このたび、和歌山県市町村合併推進構想をまとめ上げられました。県は、従来にも増して重要な役割を担うこととなったわけであります。合併推進に関する基本的な事項について、県は新法下においても自主的な合併を推進していく必要があるとしながらも、県の役割が強化されたこととなります。
そこで、知事並びに総務部長にお尋ねいたします。
知事は、今回の平成の大合併、第一次合併で五十市町村から三十市町村になったことについて、どのような御感想を持っておられるのか。また、新たな合併に向けての決意を承りたいと思います。
また、第二次の合併に向けた取り組みで、人口一万一千六百四十一人の紀美野町、一万一千三百五人の日高川町、一万四千二百人のみなべ町は、合併推進構想の合併対象の組み合わせから外されています。その合理的理由は何か、総務部長にお伺いいたします。
一方、今回の構想が示した枠組み以外で市町村合併の動きが出た場合は、県が合併構想を変更しない限り財政支援が行われないこととなっております。県は新たな合併の動きに柔軟に対応する用意があるのか、総務部長にお伺いいたします。
次に、保健医療体制の充実についてお尋ねいたします。
まず、県立医科大学の公立大学法人への取り組みについてお尋ねいたします。
県立医科大学は、本年四月から公立大学法人となるわけであります。今日まで医科大学は、教育、研究、医療機関として県民医療、特に都市部との医療偏差を解消するための地域医療に大きく貢献してまいりました。皆様御承知のように、医科大学のシンボルマークはマンダラゲであります。世界で初めてマンダラゲを主成分とした全身麻酔薬を発明した医聖・華岡青洲の遺志を継承すべく、教授陣を初めとする医療に携わる人々の努力によって医療水準の向上に取り組んでこられました。
今では、全国的に見て高い医療水準とともに、本県においては日赤和歌山医療センターと並ぶ中核的な高度医療機関として、その地位を確かなものにされました。その背景には、県議会の先輩、また同僚議員や知事を初めとする県当局の皆様の御理解と御協力、県民の皆様の医科大学を立派にしようとの思いやりがあったことを忘れてはならないと思うわけであります。
大学の法人化は、厳しい経済社会状況の中、県民の財産である公共的資源をいかに有効かつ効率的に活用し、一つ、特色ある教育・研究、二つ、地域医療への貢献、三つ、責任ある大学運営を図り県民への医療サービスの充実と向上を図ることにあると思います。この点を踏まえ、医科大学が新たな高度医療を展開していくためには財源が必要であることは言うに及びません。
設置者である県は業務運営の目標であります六年間の中期目標を作成し、法人はこれに基づいて中期計画を定めることが義務づけられています。その中期計画によって、中期的視点に立った計画的な大学運営が可能となるわけであります。中期目標は大変重要なものであります。県はどのような中期目標を策定するお考えか。中期目標の基本的な方向性について、知事にお伺いいたします。
また、医科大学長は、県民医療、地域医療に貢献する魅力ある大学改革にどのように取り組むお考えか。その決意をお聞かせください。また、学長がこのような形で本会議出席は、この二月定例議会で最後になります。県当局等に対する要望等があれば、あわせてお聞かせください。
次に、在宅緩和ケア医療システムの構築についてお尋ねいたします。
このテーマについては、昨年の六月定例議会一般質問でも取り上げさしていただきました。福祉保健部長は、「患者が在宅緩和ケアを希望する傾向が高まりつつある中、現在、県立医科大学において積極的な取り組みが考えられておりますけれども、今後このような取り組みをモデルとして、地域特性に応じた緩和ケアの推進体制について検討してまいりたいと考えております」と答弁いただきました。
このたび、新年度予算案で在宅緩和ケアの重要な役割を担う、全国的にも不足をいたしております、本県においても不足いたしております麻酔科医確保対策が、小児科医確保対策とあわせ盛り込まれているところであります。
本年の一月七日、八日にわたりまして、NHK報道スペシャル、「日本のがん医療を問う」が報道されておりました。その内容は、イギリスにおける緩和ケアの状況と日本の実態でありました。以前、イギリスでは、ホスピスは終末期の患者しか受け入れられていませんでした。今は、がん患者であればだれでも利用できる施設となっています。患者が自宅で暮らすための支援を行う地域の拠点として生まれ変わったのであります。がんになっても普通の暮らしを続けたい──行き届いた緩和ケアが患者の生活を支えております。患者の症状やニーズに合わせて、病院、地域にあるホスピス、自宅で緩和ケアが受けられる体制がイギリスでは充実され、患者を中心とした医療を実現するために幾重にも患者を支える体制がつくられています。総合病院には緩和ケアの専門医と看護師のチームがあり、地域にはかかりつけ医師がいて、緩和ケアセンターがあります。デイホスピスや訪問看護師が、自宅で過ごすがん患者のケアに当たっているのであります。診断したときから継続した緩和ケア、まさにWHO(世界保健機構)方式の疼痛コントロールが実施されているのであります。
日本では、入院患者を対象として早い段階から緩和ケアを行われるよう、四年前から緩和ケアチームがつくられました。緩和ケアを担当する医師、看護師、精神科医が専従でいることが求められます。本県においては、全国に先駆けまして、県立医科大学病院や南和歌山医療センター、紀和病院に緩和ケア病棟が設置されております。これは、あくまでも入院患者を対象としたものであります。
日本でも、イギリスのように、がんの苦痛から解放されて安心して暮らせる医療が欲しい、そうした願いを込めて、広島県では十四万人の署名を集めました。そして、広島県立病院の中に緩和ケア支援センターがつくられ、イギリスと同じようにデイホスピスが設けられ、専門のスタッフががん患者の心のケアや生活の支援をしています。一方、デイホスピスには緩和ケアの専門外来も設置されております。
広島県では、七つのエリアに分け、それぞれの地域にデイホスピスと専門外来を併設した施設をつくる緩和ケアプロジェクト構想が策定され、各地域で今進められているところであります。がん患者は、痛みが強いときは緩和ケア病棟に入院し、集中的に治療を受ける。退院した後は、地元の病院やかかりつけ医、訪問看護師が連携して、地域で緩和ケアを担っております。さらに、デイホスピスの運営や悩みの相談には、ボランティアの力を活用しているのであります。
本県は、がんによる死亡者が年間三千人を超えております。全国的に見ても高い──第七位ということであります──がん死亡者があるわけでございます。がんの苦痛から解放されて安心して暮らせる医療が欲しい、がんになっても普通の暮らしを続けたいと願うのは、がん患者や家族、すべての人の願いでもあります。がん患者や、また家族の不安を、また苦痛を解消するために、イギリスや広島県のような在宅緩和医療を充実させるべきであると考えます。知事の御所見を承りたいと思います。
最後に、農林漁業体験民宿についてお尋ねいたします。
本県においては、新年度予算案に人口減少対策として、団塊の世代を中心に都会からの定住者を呼び込み、若い世代の和歌山離れを食いとめ、農業をやってみようプログラムの推進や企業と連携した農村研修の施策が盛り込まれているところであります。
内閣府は、先月十八日、都市と農山漁村の共生に関する世論調査の結果を発表しました。それによりますと、都市部の住民で週末は田舎で過ごしたいと考える人の割合は、二〇〇七年、来年から定年を迎える団塊世代を含む五十代で最も高く、半数近くに上っております。また、五十歳代のうち三割は定住を望んでいることもわかりました。
本県那智勝浦町色川地区ではIターンの取り組みが評価され、毎日・地方自治大賞奨励賞に輝いております。過疎、高齢化が進む地域でIターンの取り組みについて応募し、評価されたものであります。一九九五年から現在までに、都会からの転入者は七十五世帯、二百九人で、地域人口の約三割を占めています。また新宮市では、有機栽培農家が体験農業希望者を受け入れるウーフの活動が始まっております。訪れた人は三カ月で十人に上っています。
そこで、必要になってまいりますのは、受け皿となります農林漁業体験民宿であると思うわけであります。農林漁業体験民宿は、農山漁村の豊かな自然環境の中で、宿泊しながら田植えや稲刈り、山菜とりや魚とりのほか工芸品づくり等さまざまな体験を行い、訪れた方々に物をつくり育てていくことの大切さや収穫の喜び等を実際に味わっていただくためのものであります。また、宿泊客には、とれたばかりの新鮮な野菜や魚、山菜等を食材にして自慢の郷土料理を提供したり、これらを活用した加工品等を直接販売も行っております。
農山漁村は、食べ物を生産し、魚をとるだけの場ではなく、地元の人や美しい景観、伝統文化との楽しい触れ合い等、ゆとり、安らぎの空間でもあります。このような都市と農山漁村の交流の窓口として農林漁業体験民宿は、本県への交流人口をふやすとともに、人、自然、文化等との触れ合いによって都会からの定住を促進することになると思うわけであります。
しかしながら、農林漁業体験民宿を始めるには、さまざまな課題があります。今までは、消防法の問題とか、あといろんな、浄化槽を二つつくれとか、一つ大きな課題になっていますのは公衆衛生上の規制でありまして、調理場を二つつくれということになっております。これは、公衆衛生法上、やはり食中毒等起きたらいけないわけで、当然あるわけですけれども、別につくれというのは非常に負担になっているということで、厚生労働省は都道府県に対して、既存の家屋で農家民宿を行う場合には、一回に提供する食事数、それから講習会の受講、そして施設基準の緩和が可能であるところから、県に対して条例の改正、弾力的な運用についての通達を出しております。県はどのように対応されようとするのか、環境生活部長にお伺いいたします。
また、田畑のオーナー制度や体験学習などを活用して農山漁村に来て宿泊していただき、都市との交流を通して地域の活性化を図り、定住を促すための農林漁業体験民宿への積極的な取り組みについて農林水産部長にお伺いをいたしまして、私の第一回目の質問といたします。御清聴ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの江上柳助君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、最近よく話題にされる格差社会に対する認識という話ですが、日本は戦後ずっと社会主義的資本主義というような感じで、平等社会という形でずっと来たわけで、非常に中産階級意識というものが強かったわけですが、最近の規制緩和でありますとか高齢化でありますとか、それから雇用形態の変化でありますとか、さまざまな要因が考えられるんですけれども、どうもアメリカ型の弱肉強食社会というか、そういうふうな格差社会になってきたのではないかというふうな認識がいろいろなところで示されているわけで、そしてまた、ジニ係数というような、こういうふうな係数でも、もう既にアメリカを超えているというふうなことも言われているわけでございます。
そして、この格差社会というふうなこと、これはやっぱり社会にいろいろなひずみをもたらすものであるというふうなことから、この見直しということが喫緊の課題とされているわけでありまして、和歌山県でも、御質問にもありましたように、生活保護率が高まってきたりしているということもあります。行政の役割は、こういうふうな弱者──と言ったら言葉は悪いですが──などというような立場の人に優しい手を差し伸べていくというふうなことが非常に大事だという観点から、新年度予算でもそういうところに重点を置いて考えておりますし、それからもう一つは、これは人の中の格差だけじゃなくて、都市と地方の格差というのも、もう構造的に非常に大きなものが出てきているというふうなことの認識がありますので、何とかそういうことが是正されていくようなことをいろいろな形で国の方へも働きかけていきたいと思います。
さらには、そういうふうな働きかけだけの話じゃなくて、和歌山県で、そういうような新しい社会形態の中で、人が尊厳を持って生きていけるような自立型の生き方の提供ができないかというふうなことで、例えば熊野健康村構想でありますとか、いろいろ和歌山の打ち出せるものというふうなものを出していって、逆にこの格差社会を逆手にとって和歌山県のよさということを広めていくというふうなことも考えられるし、やっていかなければならないと思っております。
次に、ジョブカフェ・わかやまなどを中心としたフリーターとかニートの人たちに対する対応の必要性ということですが、ジョブカフェ・わかやまは非常に好評だったので、これを今度本町の方に移転して、ハローワークの一部と併設することによってもっともっとジョブカフェ・わかやまの機能を高めてフリーターやニートの人たちが職につきやすいような努力を重ねていきたいと思っておりますし、それから、今まで以上にNPOでありますとかいろいろな組織、団体と協力しながら多面的にこういうふうな若年雇用、そしてまたミスマッチの問題等に対応していきたい、このように思っております。
第三番目に、今回の市町村合併の感想ということですが、和歌山県でも五十あった市町村が関係者の方の努力によって三十の市町村になったということで、これ全国大体平均ということですけども、大きな合併が行われてきたわけでございます。こういうふうなところは、先日も申しましたように、今、合併後のいろんなことで苦しんでいる面もあると思いますが、将来的に必ずいい効果が出てくるというふうなことをこちらとしても期待しておりますし、また住民の方も合併を受け入れたということの中にはそういう希望があったということだろうと思いますので、県としてもいろいろな形で合併した団体に対しての支援ということを行っていきたいと思います。
そしてまた、第二次合併については、先日構想を策定したところで、この構想に従って、各地域ではいろいろ今検討を始めているところだと思います。なかなか一朝一夕に、すぐにこうだという結論は出てこないと思うんですけれども、この二次合併については、県の役割ということもより法律上重くなっておりますので、そういうことも踏まえながら県としても積極的な対応をしていきたい、このように考えております。
次に、県立医大の中期目標の策定に当たってどういうふうに考えるかということですが、法人化したということは、今まで以上にこの運営を効果的、そしてまた効率的に行うことによって、県民医療、そしてまた医学教育というものについて成果を上げていくというふうなことを期待しているわけでございます。
そしてまた、和歌山県では特に今、医師不足の問題等による地域医療のさらなる確立ということが喫緊の課題となっておりますので、こういうことも踏まえて、自律性を高めた法人によって、医大が今まで以上に県民のための組織として成果を上げていくような方向で中期目標を制定していきたいというふうに思っております。
それから、在宅緩和医療システムを和歌山でもどんどん進めるべきだというお話でございます。
がん、末期がん等について、人間の尊厳を確保しながら痛みをとめ、そしてよりよい状況をつくっていくというのが緩和医療ということだろうと思います。そして、その中で、施設でだけの治療じゃなくて、在宅というか、家へ帰ってそういうふうな状況を受けられるようにということが在宅緩和医療ということだろうと思います。
イギリスなどでは、このような地域、家へ帰っての看護というふうな仕組みも非常に発達しているというふうに聞いておりますし、近年はこの重要性にかんがみて、広島県等でも非常にこの研究が進んでいるというふうに聞いているところでございます。和歌山県でも、県立医大等と協力しながら、この在宅医療緩和システムのあり方について前向きに検討を行っていきたいと、このように考えているところでございます。
○議長(吉井和視君) 商工労働部長下 宏君。
〔下 宏君、登壇〕
○商工労働部長(下 宏君) ニート、フリーターの問題についてお答えをします。
県内のニート、フリーターの状況ですが、昨年度実施したアンケート結果などから、ニートについては約五千七百人、フリーターは約一万四千人と推定をしているところです。
ニート対策としましては、本年度からNPOと協働でニートに関する講演会を開催したほか、ニート本人や保護者を対象とした臨床心理士によるこころのリフレッシュ相談に取り組んでいるところです。
また、教育委員会においては、中学生の段階からの職場体験等で健全な職業意識の醸成に努めております。さらに、青少年対策として、今年度から、社会的引きこもりの若者を対象に、ボランティアなどの社会体験に取り組む青少年の自立支援事業を実施中であり、今後とも全庁的に取り組んでまいりたいと考えております。
フリーター対策としましては、求職者のスキルアップを図るための各種セミナーやジョブカフェの充実による支援強化に加え、来年度より、フリーターの正規雇用化に主眼を置いたフリーター卒業講座を開設することとしています。
また、現在、国においてもフリーター二十万人常用雇用化プランを推進中であり、今後とも和歌山労働局など関係機関と連携を図りながら若者の就業を支援してまいります。
○議長(吉井和視君) 総務部長原 邦彰君。
〔原 邦彰君、登壇〕
○総務部長(原 邦彰君) 市町村合併についての二点のお尋ねがありました。
まず、構想対象市町村の組み合わせについてですが、市町村合併審議会においても三つの観点が示されたところであります。
一つ目が原則として広域市町村圏単位で検討するというもの、二つ目が原則として旧法のもとで未合併の市町村を対象とする、ただし、地元の意向、旧法下での合併協議の経緯等を考慮し、地域によっては既合併市町村も対象とするというもの、三つ目が一部事務組合等の広域行政の実施状況を考慮する、この三点であります。
二つ目の原則で申し上げましたとおり、旧法律のもとで未合併の市町村を主な対象としたということでありますので、御指摘の団体については組み合わせには含まれなかったところであります。
次に、構想と異なる枠組みでの動きについてであります。
今回の構想は、ただいま申し上げた三つの観点を考慮して、県として望ましい姿を示したものであります。仮に、議員御指摘のような、これと異なる動きが出てまいりました場合は、その段階で検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(吉井和視君) 環境生活部長楠本 隆君。
〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) 農林漁業体験民宿のうち、厚生労働省の通達への対応についてお答えを申し上げます。
飲食店営業における施設基準につきましては、食品衛生法において都道府県が公衆衛生の見地から必要な基準を定めることとされており、県条例において基準を定め、食の安全確保に努めているところでございます。
今般、厚生労働省通知を受け、グリーンツーリズムの推進との協働を図ることとし、関係部局と調整を行ってまいりました。議員の御質問にもございましたように、交流人口の増加や都会からの定住促進などの一環として当該事業を推進する場合には、農林漁業者が既存の家屋で農林漁業体験希望者を対象とした体験民宿での飲食をさせる場合に限り、公衆衛生上、支障のない範囲内で弾力的な運用を図ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(吉井和視君) 農林水産部長西岡俊雄君。
〔西岡俊雄君、登壇〕
○農林水産部長(西岡俊雄君) 農林漁業体験民宿への取り組みについてでございますが、議員御指摘のとおり、都市住民が和歌山の自然や人情に触れて農山漁村での生活に親しみを感じていただくための手段といたしまして、体験民宿の果たす役割は大変重要であると考えているところでございます。
和歌山に来て、泊まって、暮らして、そして定住へ結びつけていくという観点から、農家等が体験民宿に取り組むための研修会を開催し、また資金融資や補助制度についての情報提供を行うなどの支援を行っているところでございます。
また、都市部に住む団塊の世代や若者をターゲットにいたしまして、和歌山での田舎暮らしを提案し、都会からの人口の逆流動により農山漁村に新しい住民を受け入れ、地域の活性化を図るためのわかやま田舎暮らし支援施策、こういった施策を積極的に推進する上においても、農山漁村において滞在し宿泊できる施設がこれからますます必要であると考えているところでございます。
今後とも関係部局と連携しながら、施設や設備の内容についての手引書、またリーフレット、こういったものを作成し、開設を希望されている農家等に積極的に働きかけるなど、都会から和歌山に来訪された方々が農山漁村での生活を快適に体験していただけるよう、さまざまに取り組みを進めてまいります。
以上でございます。
○議長(吉井和視君) 医科大学学長南條輝志男君。
〔南條輝志男君、登壇〕
○医科大学学長(南條輝志男君) 大学改革への決意についてお答えいたします。
法人化に移行する日、四月一日が目前に迫ってまいりました。本学は創立以来六十年の歴史を積み重ねてまいりましたが、法人化は、本学創立以来、最大の制度的な改革であると考えております。
これまで和歌山県立医科大学は、優秀な医療人を輩出するとともに、県民の皆様に高度で良質な医療を提供すること、また、県の医学、医療の中核として健康の維持、増進に寄与することを最大の使命として活動してまいりました。法人になりましても、県民の負託にこたえ、その使命をより一層果たす決意を新たにしているところであります。
今後、県から示される中期目標を達成するための中期計画を策定し、法人が一丸となって着実に実施することにより、県民の皆様の期待にこたえることができる個性輝く魅力あふれる大学にしてまいりたいと考えております。
皆様方におかれましては、これまで以上の御支援、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
○議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育現場での職業カウンセリングについてお答えいたします。
職業の選択、決定に当たっては、生徒の目標や希望を大切にしながらも、自己の適性と社会の現実をしっかりと理解させ、それらをすり合わせる中で適切に指導していくことが重要であると考えております。
現在、県立高等学校では、年間約二千八百名の生徒が企業等でさまざまな内容の就業体験を行っており、また、職業及び職種等についての調べ学習などの活動を展開しております。
今後とも、こうしたことを通して働くことへの確かな意欲や態度を育成し、職業生活の実際への認識を高めるとともに、キャリアコーディネーターやハイスクールサポートカウンセラーの活用を初め、学校の相談活動の充実に努めてまいります。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
三十六番江上柳助君。
○江上柳助君 知事並びに関係部長から御答弁いただきました。ありがとうございました。
実は、最近、小説で「県庁の星」というのが出ておりまして、これ映画化されておりまして、今話題になっております。私もこれを読ませていただきましたが、野村聡という主人公なんですけど、部下に工藤というのがいまして──この野村聡という方、係長なんです──部下がいろんな文書をつくるのに相談に行くわけですね。そこで、文書例を示すわけですね。こういうのがありました。「くだんの件、まことに遺憾に存じます。よって、前向きに検討してまいります」と、こうあるんですね。「前向きに検討する」と書いてますから、部下が「こんなん検討してええんですか。すぐやらんなんですよ」と。「いいんだ。検討するということは、何もやらないということなんだ」と。これ、正確に記述どおり申し上げました。
本県においては、「検討」というのは何もやらないことだということではないというふうに、私は信じております。答弁、前向きな、積極的な御答弁をいただいてありがとうございました。中には、やっぱり「検討」とありましたね。総務部長、やはりこれからの合併の組み合わせ、これからそれを見ないといけんという意味だと思いますし、知事も「在宅緩和ケアも検討していきます」とありましたね。私は、和歌山県庁はそういう何もしないことなんだというふうにはとらえておりません。本当に熱心に職員さん頑張っていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
次に格差社会への対応ですけれども、都市から地方への人口の逆流動を進めていくと。その前提には、都市と地方というのは格差があるのは当然なんです。その格差が開いてきているというとこが問題なんですね。
私、生活保護のことをちょっと例に挙げまして、生活保護世帯の名誉のためにも申し上げたいと思うんですけれども、仕事がどうしても病気でできないとか、やむにやまれず生活保護になっている方がいらっしゃるんですね。それが、一九九六年が大体七千六百人でありましたけれども、今、一万三百人と一万一千近くなってきておりますね。これが急激にこの十年間でふえてきたところに問題がある。
しかしながら、本県の生活保護者、人員というのは、昭和五十年代で大体一万五千人おられました。それが、十年前のときは、平成八年では七千六百に減ってきているんですね。だから、私は、ある意味では非常に一生懸命働く、勤勉な県民であるということもこの際申し添えておきたいと思います。
それで、逆流動を進めるということでありますけれども、那智勝浦町の色川地区の件も、ちょっといろいろと尋ねてみました。やっぱりPRをして、そして住宅を町で用意して、そして呼んだと。口コミでも言ったということで、自然が豊かだ、生活しやすい、環境がいいということで、お見えになっていると。「どんな生活をされているんですか」と。そうしましたら、インターネットで商売されているとか、パンを焼いているとか、あと、ちょっとした町の会社へ勤めているとかいうことでございました。
ここで、私、一番必要になってくるのは、一昨日も新聞に出ていましたけれども、いわゆるブロードバンド、高速大容量通信ですね。かつてアメリカの経済学者ガルブレイスが、情報はお金であると。情報伝達の最大は、やっぱり会って対話をすること。そのために鉄道があり、また道路がつくられ、飛行機ができ、今はまさにブロードバンドの世界だと思うんです。
したがって、この整備をしっかり進めていただきたい。その構想は出ていますけど、順番があろうと思いますけど、デジタルデバイド──かつてから私も、三、四年前からずっと言い続けておりましたけれども、この点をぜひお願いしたい。
そして、都市から地方に来ていただくには、東京県人会、大阪県人会にもどんどん顔を出していただいて、和歌山も今こんないろんないい施策を実行してますよということでアピールをしていただきたい。ぜひ知事にも大阪県人会にも御出席いただき、お忙しいと思いますけれども、日程が合えばそのようにしていただきたいと思います。
それから、ニート、フリーター対策ですけれども、和歌山市内、ぶらくり商店街では大変喜んでおられました。あの丸正から入って四、五軒先のとこですね。本当に火が消えたようにシャッターがおりている中で県の関係施設に来ていただくということで、大変喜んでおられました。ぜひ、待ちの姿勢ではなくて、やっぱり攻める、PRするということが非常に大事だと思います。例えばインターネットでしたら、今、四、五千円のカメラ一個つければいながらにして家庭とやりとりできて、おうちの中でのニートとかフリーターの方とも会話ができるんですね。映像、顔を見ながら。そういうことも一つの方法かなと思っております。
それから、在宅緩和ケアシステムにつきましては、どうぞ医科大学長におかれましては、今後これが進んでいきますと、どうしても医大のお力をいただくことになります。緩和ケア支援センターを設置ということになりますので、御協力をお願いしたい。
それから、私、今回、農業体験民宿、何でやろうとお思いになったと思いますけれども、実は私もかつては、田植えもやりましたし、稲刈りもやりましたし、また草取りも、いろんなことをやった小さいころの経験がございます。
それはそれといたしまして、実はこの「ダイヤモンド」に和歌山県の緑の雇用が出てるんです。これ、びっくりしたんは、団塊世代のいわゆる定住の施策として、全国に二十ある中の一つとして緑の雇用がここで掲載されております。よく考えると、緑の雇用は枝打ち、間伐で、重労働ですよね。団塊世代は六十をお超えになっていると。大変厳しいかなと思っても、やはり知事が今から五年前、平成十三年の八月二十一日のあの投稿、新聞記事から緑の雇用への対策が始まりまして、知事初め皆さんの御尽力によりまして今では国家的事業になりましたけれど。
そこで、定住を進めるということについて、何が必要なんだと。私、これ、ずっと読んでいく中で気になったんです。やっぱり奥さんの力が要る。どうしても、田舎へ行ったら蛇は出るわ、虫は出るわ。やっぱり奥さんを説得せんといかん。それで、書いてました。ただ単に助成金があるとか土地が安いとか生活費が安いとか、お金、助成金があるといった問題じゃないと。そういうことであれば、すぐ飽きてしまう。要するに、人情に触れていく、その地域に来て、そのよさを本当に実感していただくという中から、私は団塊世代の定住が始まっていくんではないかというふうにとらえたんです。
実は、このことについては、和歌山大学の小田学長もおっしゃっていました。やはりホテルというのはリスクを背負うと。夏場とかシーズンのときはお客さんが来ますけれども、シーズンオフはお客さんは来ない。しかし、あれだけの建物と従業員を面倒見なきゃいけない。コストがかかる。やはりシーズン、シーズンできちっとした形で民宿をやっていくことが非常にこれから重要になっていくんではないかというふうにおっしゃってました。
また、中津村に農業体験で田植えに来たと。観光バスに乗って、その後は白浜温泉へ行ったと。別に悪いとは言っていません。地下足袋履いて、長靴履いて、白浜温泉かなというふうにも思いました。そういうところに民宿を幾つもつくれば、そこに泊まっていただける。これは、観光ツーリズムということでやられているからこうなっていると思うんです。
それともう一つは、中山間村のいわゆる収入源にもなると。私、知事の五年前の記事を読ませていただきました。一番心配しているのは、やはり和歌山に移ってきて生活できるだろうか、収入があるだろうかということなんだと。収入の地域の活性化、収入の確保にもなっていくわけですね。
ですから、ぜひひとつ民宿を進めていただきたい。当然、一問でも申し上げましたように、公衆衛生上というのが、これは忘れてはならないというんか、食中毒が発生したら大変ですから、その点はきちっと講習を受けるなり何人という人数を決めるなりして、きちっと担保していただくということで積極的な取り組みをひとつ強くお願いいたしまして、質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で江上柳助君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時三十七分休憩
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