平成17年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


県議会の活動

平成十七年九月 和歌山県議会定例会会議録 第四号
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議事日程 第四号
 平成十七年九月二十七日(火曜日)午前十時開議
  第一 議案第二百四号から第二百三十三号まで、並びに報第十四号(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第二百四号から第二百三十三号まで、並びに報第十四号(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十四人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       新   島       雄
     四  番       山   下   直   也
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     九  番       前   川   勝   久
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       花   田   健   吉
     十八 番       藤   山   将   材
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       飯   田   敬   文
     二十二番       谷       洋   一
     二十三番       井   出   益   弘
     二十四番       宇 治 田   栄   蔵
     二十五番       東       幸   司
     二十六番       山   下   大   輔
     二十八番       原       日 出 夫
     二十九番       冨   安   民   浩
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       中   村   裕   一
     三十三番       浦   口   高   典
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       玉   置   公   良
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       阪   部   菊   雄
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(一人)
     十五 番       平   越   孝   哉
 〔備考〕
     二十七番欠員
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        小 佐 田   昌   計
     出納長        水   谷   聡   明
     知事公室長      野   添       勝
     危機管理監      石   橋   秀   彦
     総務部長       原       邦   彰
     企画部長       高   嶋   洋   子
     環境生活部長     楠   本       隆
     福祉保健部長     嶋   田   正   巳
     商工労働部長     下           宏
     農林水産部長     西   岡   俊   雄
     県土整備部長     宮   地   淳   夫
     教育委員会委員長   駒   井   則   彦
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   大   岡   淳   人
     警察本部長      宮   内       勝
     人事委員会委員長   西   浦   昭   人
     代表監査委員     垣   平   高   男
     選挙管理委員会委員長 山   本   恒   男
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       小   住   博   章
     次長         土   井   陽   義
     議事課長       下   出   喜 久 雄
     議事課副課長     薮   上   育   男
     議事班長       山   本   保   誠
     議事課主査      湯   葉       努
     議事課主査      楠   見   直   博
     総務課長       島       光   正
     調査課長       辻       和   良
 (速記担当者)
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
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  午前十時三分開議
○議長(吉井和視君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第二百四号から議案第二百三十三号まで、並びに知事専決処分報告報第十四号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 一番須川倍行君。
  〔須川倍行君、登壇〕(拍手)
○須川倍行君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を通告どおり行います。
 最初は、今後の国際交流のあり方についてであります。
 最近の国際交流の流れの中で、本県では特に中国との交流が盛んになってきていますが、中国は現在、高度経済成長が継続し、日本の最大の貿易国となり、世界経済の中で存在感を増しています。一方、日本の対東アジアとの貿易比率の増加に示されるように、経済の相互依存関係は深まり、東アジア地域内での経済統合が急速に進展しています。
 本県の対中国との貿易は急増するとともに、中国との輸出入や投資など、対中国ビジネスに対する県内企業の関心が高く、中国からの観光客は年々増加しています。これまでも山東省を中心に行政、文化交流や技術協力などを重ねてきましたが、中国の経済発展を受けて、交流の軸を友好交流、経済協力から経済交流に移し、お互いに実のある交流を図ることが重要であります。経済交流は民間の事業者が主体であることは言うまでもありませんが、県としても県産品の販路拡大、企業支援、観光振興、国際化の推進など、いろいろやるべきことはたくさんあると思います。
 本年三月に中国経済交流推進会議が本県に対して提出された提言書の中でも、七つの基本方策を挙げ、「それらを迅速に推進するために幅広い領域においてさまざまな主体と連携し、県においてもトータルで経済交流を推進する組織の設置を検討すること」とあります。
 そこで、現在、各課、各分野の中でばらばらにいろいろとやっている農林水産品や県産品の販路拡大、地場産業や観光の振興、文化、人材の交流、共同研究などを、例えば「国際局」というような名のもとに一本化できないものか。それは組織とするのか、連携の窓口とするのか、その方策はともかくとして検討していただきたいと思いますが、知事公室長の御見解をお尋ねいたします。
 次に、世界遺産関連宝くじの発行についてお尋ねいたします。
 紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産に登録された今、広範囲にわたり散在する各資産の適切な保全が新たな課題となっています。課題の解決にはマンパワーが欠かせない一方で、保全に要する整備資金も不可欠であります。これらのことから、国内で世界遺産を有する他の府県と世界遺産等振興自治宝くじを発行し、収益金を各地の登録資産の保全や文化振興に充てる取り組みを行うことを提案いたします。この提案は、新宮市の平成十八年度の予算編成に向けた和歌山県に対する要望、提案でありますが、なるほどすばらしい提案だと私自身が深く感銘を受け、今この場で改めて一般質問という形で質問させていただくものであります。
 この事業が実現されれば、その効果は、一つ、財政状況が厳しい中、新たな財源の確保につながります、二つ目は、話題が一段落しつつある世界遺産を再びPRすることができます、三つ、県内の金融機関の活用や県民の購入により県内の経済が活性化します、四つ、世界遺産の登録により増加している観光客の地域内消費に寄与します、などであります。もし他の府県との連携が難しいならば、県独自で富くじのような形で発行することができるならば、その効果は一段と大きなものになると思います。この提案に対する知事の御見解をお尋ねいたします。
 次に、熊野川の整備と川舟下りについてであります。
 熊野川は、流域面積二千三百六十キロ平方にも及び、昭和四十五年に一級河川として指定されました。以降、治水事業や環境整備事業などが行われ、平成十六年には川の古道として世界遺産にも登録された本地域の象徴とも言える河川であります。
 私たちはこの神宿る聖なる熊野川を今後守り続け、また地域活性化のために活用していかなければなりません。それには三つのテーマがあります。一つは、世界遺産にふさわしい清流に満ちた熊野川を取り戻すこと、二つ目は、環境整備により河口付近に点在する熊野速玉大社や新宮城跡、阿須賀神社などの歴史、文化遺産の価値をさらに高めること、三つ目は、地域住民が憩える親水性の高い河川環境を整えることであります。それら三つのテーマ実現のためには、平成九年の河川法改正により、治水、利水、環境の総合的な河川整備計画の策定が求められる中、国が昨年度に設立した熊野川懇談会の動きとあわせ、県の管理区間においても早期に河川整備計画を策成していただきたいと思いますが、県土整備部長の答弁を求めます。
 また、今月二十五日よりスタートしました熊野川の川舟下り事業についてですが、熊野川町田長の道の駅下の河原から新宮市の熊野速玉大社裏権現河原までの約十六キロの区間を、約一時間半をかけて一日二回の運航を予定している事業であります。
 私も先般、熊野川のイベントの際、体験させていただく機会がありましたが、とても風情があって、楽しくて、退屈しないし、新しい紀南の観光の核となるのではないかと確信いたしました。知事も大変力を入れている事業でありますし、恐らく私と同様の感想をお持ちになったんじゃないかなと思います。
 そこで、知事はこの川舟下り事業に関しては人一倍強い思い入れがおありでしょうから、今後のこの事業に対する知事の思いというか、決意のほどをお聞かせください。
 続いて、私なりにこの事業に関して感じた問題点なのですが、利用運賃の設定が一人三千九百円は、かなり高い感がいたします。川舟運航協議会にはもちろん県も参画されていると思いますが、観光事業は息の長い取り組みが必要で、当面は軌道に乗るまで、ある程度採算を度外視するぐらいの方針が大切だと思います。その点十分調査・研究し、何もかも事業主体に任せっきりにしないで、県の立場からも深く参画、提言していただきたいと思いますが、商工労働部長の御意見をお聞かせください。
 また、ことしは県の予算で四そうの川舟を作成いたしましたが、現状四そうでは大型観光バス一台分にしか充当できません。事業の方はまだスタートしたばかりの段階ではありますが、少し長い目でこの事業を見守っていただいて、最低三年計画ぐらいで、来年も再来年も川舟作成のための予算を計上していただきたいのですが、あわせて商工労働部長の答弁を求めます。
 次に、観光振興条例の制定についてです。
 高野・熊野が世界遺産登録されてからはや一年が経過いたしましたが、今後より一層の観光立県として新しい和歌山が全国に認知されるようさまざまな取り組みを推進していかなければなりませんが、和歌山大学の観光学部設置も一つの大きなインパクトとなるでしょう。高嶋企画部長を会長とした設置促進協議会もスタートしたことですし、議会もこの件に関しては積極的に取り組んでいるところでありますので今後に期待したいと思いますが、さらにもう一つの大きなインパクトとして、二年前に私が一般質問で提案した県の基本方針や県民、観光事業者や関係団体の役割などを定めた観光振興条例の制定を急いでいただきたいのですが、現時点での対応について商工労働部長にお尋ねいたします。
 最後に、熊野古道ウオーカーの安全対策についてです。
 昨年七月に世界遺産に登録された熊野古道は、現代人の健康といやしという観点から注目を浴び、多くのウオーカーが訪れてにぎわっています。せんだって発表された観光動態調査によると、熊野古道を有する市町村への観光客はかなり増加しており、今後も大いに期待されているところであります。新宮市でも、リュックを担いだ観光客が高野坂や神倉山、王子ケ浜を歩くため、市内を移動している姿をよく見かけます。
 そこで、問題点なのですが、旅行エージェントが募集する熊野古道ウオーキングとか教室や団体が主催するものは余り心配していないんですけど、一人や二人の少人数での古道ウオークは、場所によっては非常に危険を感じるところも多く存在いたします。特に大雲取越えや小雲取越え、滝尻王子から発心門あたりまでの古道は、何かあったら心配です。個人での入山は把握できないので目的地に到着したかどうか確認のすべがなく、万一途中でアクシデントが発生して山中に迷ったり倒れたりしていても見つからない可能性もあると思います。
 そこで、そういった不安を少しでも解消するための対策を考えていただきたいと思います。
 具体的には、一つ、携帯電話の不通区域をなくすか、不通地域に非常を知らせるベルなどを設置する、一つ、ウオーカーの少ない時期に定期的にパトロールを実施する、一つ、救急医療を要するウォーカー対策を立てる、一つ、県が中心になり、関係市町村やNPO、ボランティアなどが、例えば熊野古道安全対策協議会なるものを組織し、安心して歩ける古道づくりを目指すなどであります。そのほか知恵を絞ればいろいろあるでしょうが、熊野古道を歩きましょうとPRする限り最低の安全対策をしていかなければならないと思いますが、知事の見解を求めます。
 以上、大変短くて恐縮ですが、私の一回目の質問といたします。御清聴ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの須川倍行君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔須川倍行君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの御質問、まず第一点の世界遺産関連宝くじの発行ということですが、これは僕は非常におもしろいと思います。
 日本でも世界遺産に登録されたところが大分出てきたんで──宝くじは、全国自治宝くじと、それから近畿宝くじがあって、どちらもほかの団体の協力ということが要るんだけども、和歌山県一つだけだったらなかなかうまくいかないおそれもありますが、相当数が出てきてるので何とか──正直言って非常に買う人の購買層が限られているわけだから難しいことだと思いますけども、積極的に働きかけてみる値打ちはあるというふうな感じを持っております。
 それから、川舟下り。これはこの二十五日に始まったわけで、私はこの成功に大いに期待してるんですが、これから先、例えば食べる物をうまく売っていく仕組みとか、川原家をつくってもっとアミューズメントみたいなことをふやしていくとか、それから今のプロペラ船、北山村のいかだ下り、こういうふうなものとの連携を図るとか、それから三社めぐりと有機的な連携をつけるとか、いろいろやっぱり地元で考えていってもっと膨らましていく方法はあると思います。県も、もうできたからそれでいいということじゃなくて、これから積極的に関与しながら、これが一つの大きな熊野観光の目玉になるように育てていきたいなというふうに思っております。
 それから熊野古道ウオーカーの件ですが、これはもう御指摘のように、今のところ事件が起こっていないので助かってるわけだけども、一たん、やはり何かそういうふうな事件が起こると、この熊野古道全体に対するイメージに非常な打撃が来る可能性があるというふうなことで、現在も緊急電話を等区間に備えつけたり、それから緊急連絡用の標識をつくったり、こういうことをしてるんですが、やっぱり今一番大事なのは、携帯電話を持ってて何かあったときにかけれるというふうな形にしておくということが一番大事だろうと思いますので、これはまあ予算との絡みもあるんですけども、積極的に進めていきたいと、このように思っています。
○議長(吉井和視君) 知事公室長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○知事公室長(野添 勝君) 今後の国際交流のあり方、統一的な推進組織についてお答えいたします。
 国のレベルはもちろんのことでございますが、県のレベルにおきましても、教育、文化といった面だけでなく、観光や貿易など経済の分野でも海外との交流の重要性はますます高まってきております。県としましては、これまでも国際交流事業を円滑に推進するために、知事公室内に事務局を置く国際交流促進連絡会議という庁内組織を通じて連絡調整を行ってまいりましたが、議員御指摘の時代に即した国際交流に関する統一的な施策の展開が大変重要でございます。
 今後、この連絡会議の充実と相互連携の強化を行い、全庁的な政策調整機能を高めて、経済を中心とする多方面での国際交流の活性化に努めてまいります。
○議長(吉井和視君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 熊野川の河川整備計画につきましては、国土交通省が直轄区間の整備計画を策定するため、昨年度、熊野川懇談会を設立し、県もこれに参画をしております。県管理区間につきましても、懇談会の議論を踏まえ、今年度から河川整備計画の策定に向け、準備を進めております。
 今後、流域の現状や住民の皆様の御意見を踏まえ、治水安全度の向上が図られ、河川の自然環境が保全されるよう、議員御指摘の観点も含め、歴史・文化遺産と調和のとれた河川整備計画の早期策定を目指してまいります。
○議長(吉井和視君) 商工労働部長下  宏君。
  〔下  宏君、登壇〕
○商工労働部長(下  宏君) 議員御質問の川舟下りにつきましては、これまで旅行会社、マスメディア、地元の方々を対象にモニターツアーを実施し、その都度、御意見を参考にしながら事業内容に反映をしてまいりました。また、運航に際し重要となる安全面につきましては、船頭に対して、財団法人日本船舶職員養成協会から講師派遣を得て、船舶法規に基づく座学や実技の訓練、試験を実施してきたところです。さらに、おもてなしにつきましては、語り部に対して接遇を初め十分な研修を行ってまいりました。九月二十六日現在、約五百名の乗船申し込みを受け付けており、おおむね順調な滑り出しができたものと考えています。
 県といたしましては、今後とも旅行会社やマスメディアに旅行商品メニューの造成や観光スポットとしての情報発信を積極的に要請をしてまいります。また、予算面につきましても、事業の推移を見きわめながら適切に対処してまいります。
 次に、議員御指摘の観光振興条例の制定についてでございますが、観光はさまざまな産業が融合した総合産業と言われており、本県における基幹産業と考えられるため、県民並びに観光事業者や関係団体の協力が欠かすことができません。
 また、本年七月に施行された和歌山県世界遺産条例や和歌山県観光振興指針の趣旨との整合や、現在進められている和歌山大学観光学部設置構想とも連携をしながら、世界遺産を中心とした和歌山観光の認知度アップとさらなる観光振興を図る必要があると考えております。今後、関係機関と協議し、早期の制定に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 一番須川倍行君。
○須川倍行君 川舟下りについて、要望を一点だけ。
 これはある地方新聞の記事なんですが、ちょっと一節だけ御紹介したいんですが。「「こんな世界があったのか」という驚きの連続だった。川舟から眺める熊野川の景観は、川と並行に走る国道百六十八号からの眺めとは、まったく異なっている」、「二十一世紀の川舟下りは、熊野川の魅力を再認識させ、貴重な自然環境を末永く守る意識を高める役割を担っている。それは熊野川の未来をかけた試みでもある」と、大変絶賛された記事なんですが、ぜひこの川舟下り、当局の皆様、また議員各位の皆様、機会をつくっていただいてぜひ一度体験していただきたいなと切に要望するものであります。やはり乗っていただかないとそのよさを人に伝えるということはなかなかできません。ぜひとも、その点も踏まえまして、これはもう要望というよりもお願いであります。
 以上であります。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で須川倍行君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十一番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 質問通告に基づきまして、早速一般質問に入らせていただきます。
 私は、まずアスベスト対策についてお尋ねをいたします。できるだけ重複を避けた視点からお伺いをいたしますので、当局の答弁も、重なる部分は簡潔に答弁をいただきますようお願いを申し上げます。
 このアスベスト問題は、国の方も甘い基準ながら対策が必要だという位置づけをして、一九七二年にはILOがアスベストによる職業がんを公認するなど、以前から指摘をされてきた問題です。それが急に大騒ぎになってきたのは、この六月に国会でILOのアスベストの使用における安全に関する条約、この批准が審議されるようになってからです。
 このILO条約は今から十九年前にできていたわけですが、国は国内法の整備を怠ってきました。それで批准をしていませんでした。これが今回、国会審議にかかったものですから、これまで決して表に出てこなかったこの被害の実態がクボタやニチアスなどのメーカーみずからの手により公表されるようになりました。また、被害者の運動によりクボタ周辺の被害住民がテレビでも取り上げられるなど、隠し切れなくなってきたということでもあります。政府の責任も重大であり、政府と原因企業による救済措置が強く求められています。
 私ども共産党県議団は、去る七月二十一日に木村知事にアスベストによる健康被害の調査・救済と再発防止についての申し入れを行い、健康被害の正確な情報提供や企業への指導、実態調査と対策、公共施設や学校への対応、国への働きかけなど、六点にわたって対応の強化を求めてきたところであります。
 私は、この間、子供たちが通う小・中・高等学校や民間の事業所さんにも足を運び、実態と御要望をお聞きしてまいりました。
 ある小学校では、講堂の天井への吹きつけ塗料にアスベストが含まれている可能性がある、こういうことで専門業者に調査を依頼するとともに、子供たちの使用や社会教育の貸し出しなどをストップしています。この学校では、県教委の調査と文部科学省の調査の指示に基づいて、夏休み中に町の職員と業者さんが見に来てくれたそうです。音楽室が一番可能性がありということで調べたそうですが、ここは天井も成型品のボードが張ってあり、やれやれ大丈夫やと安心したそうです。「そりゃそうと、講堂の天井を一遍見てくれやんか」と、こういうふうに先生がお願いして講堂へ行ってみると、業者さんが「これは先生、こっちの方が危ないや。吹きつけや。一遍確かめてもらおうか」、こういうことになって、その日は帰ったそうであります。
 この講堂は結構古いものでして、文部科学省は、設計図面で使用製品を確認しなさい、こういうふうにいとも簡単に言ってくれますが、保管期限の切れた地方の古い建物の設計図、これは探すだけでも大変です。現場よりも設計図から入るというのは霞ケ関の発想ですね。結局、設計図が見つかって、含有の可能性あり。このことがわかったのは二学期の始業式の前日の夜だったんですね。教育委員会と校長先生が緊急に話し合って、その結果、飛散をしているということではないけども、安全をとって調査結果が出るまでは使用をとめようという判断をされたそうであります。
 さて、それからが大変でして、始業式もかんかん照りの校庭でしなければならず、校長先生のあいさつも超短くしたそうであります。しかし、雨が降ったら運動場は使えませんし、運動会に向けての練習がメジロ押し。運動会の練習は、校庭とあわせて遠く離れた公立の体育館まで、町のバスで送り迎えをしてもらってやったそうであります。しかし、送り迎えといってもその時間をとられてしまいますし、これから音楽会など学校行事も連続します。校長先生は卒業式ができるのかというところまで心配しているとおっしゃっていました。一日も早い使用再開にこぎつけたい、こういうふうに願っておられました。
 また、別のある小学校では、今度は体育館の壁への吹きつけが設計図面から可能性ありということになって使用中止の措置をとっているということでした。ここは、時間のかかる含有量の調査とは別に浮遊量の調査もやって、浮遊量がゼロだという結果が出たということで胸をなでおろしていました。保護者からも、「可能性がわかった時点ですぐに公表をして、そして浮遊調査の結果も発表してくれた。対応が早くてすぐに知らせてくれたので安心です」と、そういうふうに喜ばれているそうです。
 また、ある中学校は、玄関のエントランス、応接室、会議室などの天井の吹きつけ、それから美術室や図工室の天井裏の鉄骨への吹きつけなど十数カ所が可能性ありということで、専門業者に調査を出していました。案内された美術教室、図工室の天井はボードが張ってあって、おかしいな、普通教室と一緒の成型品やけども、なぜかなというふうに私は思ったんですが、よく聞いてみると、その特別教室は後から増築した建物で、普通校舎のような鉄筋コンクリートではなくて鉄骨の建物だったんですね、見た目にはわからなかったんですが。だから、その天井裏に吹きつけがあったわけです。
 「目視で確認をしてください」とか「図面で確認をしてください」、こういうふうに簡単に言いますけれども、専門家でもない者にとって、特に子供たちを預かる現場の責任者は、大変な責任の重さを感じておられるようでありました。
 また、私は、「県からアスベスト調査の書類を送ってきたんだけども」という小さな民間事業所にも足を運びました。倉庫の二階が事務所になっている、だから耐火構造にしなければならないということで、一階の鉄骨のはりにずうっと綿状の吹きつけがされていました。「ロックウールやから大丈夫やろと皆が言うんだけども、設計図と言われても、わしわからんし、調査するにもどこへ出したらええんや。金もかかるんやろ。それでもしアスベストがまじっているということになったら大ごとや。改造にもえらい金がかかる。これは本来、役所が建築基準か何かで、これ使えと決めておいて、そのとおり使ったら、これは後で、あかん、やりかえよと。そんなこと、皆わしがかぶらんなんのかえ」とおっしゃっていました。ごもっともな話だとお聞きいたしました。
 私、この間、回らせていただいて感じたことは、何を一体どこまで調べていいのかわからない、調査するにも専門業者がない、あっても満杯、あるとわかったらどれだけの対策が必要なのか見通しがつかない、お金もどれだけかかるかわからない、こういうふうにアスベスト対策のガイドラインやマニュアルも監督官庁によって年度もばらばらですし、こういう中で具体的にわかりやすく県民の不安にこたえる必要があるということでした。
 そこで、以下三点について、まずお尋ねをいたします。
 第一に、健康被害の問題など県民への影響と相談窓口での対応状況については福祉保健部長より御答弁を願います。
 次に、学校施設などの調査方法や状況については教育長に御答弁を願います。
 そして第三に、調査マニュアルや関係者へのアドバイスなどアスベスト使用建造物の調査や対策の確かな情報提供が必要だと思いますが、これについては環境生活部長の答弁をお願いいたします。
 次に、今後は老朽化したアスベストの使用建物の解体が予想されていますから対策をとる必要があるわけですが、特に目の前の課題としては、これから公共施設などのアスベストの撤去、回収、これがことしにもすぐにラッシュになってくるんだと思うんですね。大気汚染防止法や労働安全衛生法、廃棄物処理法、建設リサイクル法など、幾つもの関係法令が入り組んでまいります。子供たちを初め、施設利用者の安全や、周辺住民、そして作業員の安全確保にきっちりと取り組まなければなりません。この点では、正確な事前指導がされ、現場や処分地への立入検査ができる用意はできているんでしょうか。アスベスト使用建築物の改修、解体、廃棄に際しての適切な指導や立入調査について、並びに昨日追加提案されましたアスベスト対策の条例改定について、考え方や対応を環境生活部長よりお答えを願います。
 次に、アスベストの除去、回収に当たっての補助制度や支援についてお伺いをいたします。
 「アスベストの含有量調査をするにも一カ所三万円かかる。いや、今は五万円らしい」、こういうふうに言われています。発見されたアスベスト材を撤去する場合にも、場合によっては部屋をビニールで包んで、一台数十万円もするような集じん機を使って宇宙服のような格好で作業をして、着がえをするにも別室のクリーンルームを使ってから出入りをする、そういうことまでしなければならないと聞いております。
 アスベストの調査や除去、その上にもとどおりに使えるようにする改築費用がかかるとなれば、財政難に悩む地方自治体は頭を抱え、不景気であえぐ中小業者にとっては命取りになりかねません。ぜひ国に対して特別の財政支援策を早急に講じるよう要望すべきであります。そして、県としてできることはすぐに始めるべきだと思います。
 島根県では、アスベスト除去等対策資金の創設を決め、この九月十六日から既に受け付けを始めているそうであります。埼玉県では、彩の国環境創造資金制度の活用を発表するとともに、県内民間金融機関にも低利融資の要請をしています。また東京都内では、千代田、中央、新宿、渋谷、品川、港区などが中小企業向けに、アスベスト除去だけでなく、除去後の機能回復工事も対象とした融資制度の拡充をする、また民間企業に向けては、除去工事への融資を初めアスベスト調査や除去費用の二分の一を助成する、こういうところまで踏み込んだところも出てきています。
 和歌山県としても、既存の事業が活用できるもの、また既存の事業の枠を拡大して活用できるもの、新たに加えて支援策を講じるべきもの、これらをタイムリーに打ち出して、また県民に早く知らせ、県民の不安解消と適切な対策工事の実施に力を尽くすべきではないでしょうか。知事並びに教育長から答弁をお願いいたします。
 次に二つ目の柱、土砂埋め立てや残土処理の管理規制についての質問に移らせていただきます。
 今から四年前の十月、湯浅町の山田山において、畑の造成を名目に、残土へ産業廃棄物を混入して投棄したとして廃棄物処理法違反で業者が逮捕される事件がありました。私は以前の質問で、この問題等を示しながら、環境保全のための条例制定を進めるべきだと求めてまいりました。
 混入された廃棄物は掘り起こされましたけれども、それは確認できた分だけであって、二十万立方メートル、十トントラックにして約三万三千台分という膨大な土砂が今も谷間に積み上げられたまま放置されているのが現状であります。そして水質検査をして、今も監視を続けています。環境の面からも、そして災害対策の面からも、こういったことを繰り返させない、そのための行政の対応が求められてきました。
 ところが、この過去に事件のあった問題の土地に、新たな残土搬入の動きが昨年暮れから始まり、現在に至っています。お配りしているこの資料のように、こういった看板が山田川沿いの入り口だけではなくて、切り立った山の上の広川町の町道の側にもつけられていて、建設機械が入って工事を始めました。あっという間にプレハブの小屋が建ち、ダンプの足洗い場ができました。現地に立入調査に入った保健所に対して、現場にいた県外の業者は「近く残土を入れる予定だ」と返事を繰り返しています。
 この看板をごらんください。「湯浅老人ホーム建設予定」「マサ土販売」「良質残土受入」、こういうふうに口上を並べていますが、要は残土を搬入するということですね。よく平気でこんなことが書けるものです。「土佐犬注意」なんてのもあり、まさに威圧的な態度で、文句言うなという態度であります。
 この業者は、伐採届けも出さずに入り口の斜面を切り開き始めましたから、保健所、振興局、湯浅町が連携をとって現場に入り、届け出が必要なことや廃棄物が投棄されないようにすることなどを指導し、連日監視を続けてこられました。おかげで不法投棄やむちゃな工事をされるまでには至っていませんが、決して安心できる状況ではありません。
 湯浅町はこの事態を重く見まして、生活環境の保全と災害の防止を目的とした湯浅町土砂等による土地の埋立て等の規制に関する条例、これを三月議会に提案し、議会が慎重に審議して六月議会で成立、八月から施行をされています。
 私は、この地元区の区長さんにお会いして御要望をお聞きしてまいりました。区長さんからは、この四年前の残土問題のときの苦労が出されました。「区としても、あんなに土砂をたくさんほり込んで大丈夫かと心配をしたけれども、どうにもならなかった。何度も区の会を持った。業者に「やめてくれ」と言っても、「嫌なら山の上の方から土を入れるぞ」と言われて、急な谷の上から土砂を入れられると災害の危険性が余計に高くなると思って、それ以上のことは言えなかった」というんですね。においがひどい、こういうふうに訴えに行くと、「わしら命は欲しくないんや」と逆にすごまれて恐怖を感じたこと。また最後には、エコポリスの手によって不法投棄の証拠が押さえられてこの搬入はとまったわけですが、地元区長さんは、「もう前回の二の舞を絶対踏んではならない。前回詰め切れなかったこと、例えば不法投棄の証拠が出るまで手が出せなかった問題や土地所有者の責任とか、そういう教訓をもとに、こんなことが今後起こらないようにしてほしい」とおっしゃっていました。災害のおそれという点では、区長さん御自身も昭和二十八年の水害を経験されていて、万一大量の土砂が崩壊して山田川をふさぐと、土石流となって下流は大変なことになるのではと心配もされていらっしゃいました。
 この湯浅町山田川における過去の不法投棄現場への新たな土砂や残土搬入計画に対して、県はどう対応してきたのか。また、看板にあるような老人ホームの計画はあるのか、ないのか。環境生活部長、福祉保健部長より答弁を願います。
 さて、この問題とは別に、先日、新宮港にこの間荷揚げされている土砂について住民から相談がありました。村岡県議も現地へ調査に出向いたんですが、その土砂の成分分析によりますと、普通の山や畑の土というのはpH、酸性度が四ぐらいなのに、この土砂はpH一一・七という大変強いアルカリ性であり、専門家の意見としては、建設工事の現場などでやわらかな地盤をかたくするためにセメントなどをまぜたときにできる、まあいわば改良土のようなものが土砂にまじっているのではないか、そういうふうな意見だったということでした。
 私どもがこの新宮港における本年一月から七月の土砂の荷揚げ実績を調べてみると、一月から七月までの全部で十九回の入港のうち八回が大阪から、そして残る十一回が遠く神奈川県の川崎港からのものでありました。これらの土砂は建設資材に使うための、そういった目的のある土砂ではなく、ただ埋め戻しをしているだけだというんですね。私は、はるか遠い神奈川県からなぜわざわざこの和歌山まで土砂を捨てに来なければならないのか、不自然さを感じています。
 そこで、新宮港など県外からの土砂搬入についてお尋ねをいたします。
 県外からの土砂搬入は大阪方面からのトラックの輸送がほとんどだと思いますが、これは、把握できる仕組み、残念ながらまだ我が県にはありません。ただ、船は入港時の記録があると思います。船によって県外から運び込まれている土砂の量はどうか、また新宮港に入港したこの土砂をどう見ているのか、県土整備部長と環境生活部長より答弁を願います。
 私は、こういった土砂の埋め立てに関するルールづくりが全国的にはどう進んでいるのかを調査に千葉県に行ってまいりました。千葉県が全国で初めて土砂の埋め立てに関する条例をつくったのが八年前であります。その先駆的な役割や残されている課題も含めて、県の担当者の方々からお話を伺いました。その中で、首都圏の産業廃棄物や土砂、残土が千葉に大量に運ばれていること、また土砂に関して言えば、県外からのこの土砂搬入の七割が東京と神奈川から持ち込まれているということもデータでいただきました。千葉から良質の山土を販売するために、船で首都圏に運び出すそうです。それで、空で帰ってくるのはもったいないので、建設残土やしゅんせつ土、改良土などが運ばれてきている、こういう実態だそうです。
 全国でも、調べましたところ十四の都道府県、和歌山県内でも十三の市町村がこういった条例を制定して、秩序ある土砂の埋め立てなどのルールの確立を目指しています。条例の整備を図るタイミングとしては決して早くはないし、遅過ぎるぐらいではないでしょうか。
 既に整備された条例を調べてみますと、一定規模以上の土砂を埋め立てたりするときには、どこの土砂をどこへどれだけ持っていったのか、これがきちんと記録されていること、埋め立て全体計画を明らかにすること、環境や災害にかかわって配慮や対策がとられること、地元の同意が得られることなどが大事だ、そういう思いを強くしてまいりました。
 過去の例のように、ダンプで一日何十台も土砂が運び込まれるのに、だれが運んでいるのかも、どこの土かも、どれだけ捨てるのかも、これはだれも正確にわからないし、大雨による土砂災害も心配。それなのに、行政も住民も不安を抱えながら手をくわえて見ているだけしかないというのではだめだと思うんですね。土砂や残土処理を適正に管理・規制する条例整備に踏み出すときだと考えます。
 木村知事にお尋ねをいたします。環境保全、不法投棄未然防止、災害防止の観点から、土砂の埋め立てを条例により管理・規制すべきではないでしょうか。御答弁をお願いいたします。
 さて、最後に、三つ目の柱である広川町津波防災教育センターについての質問に移らせていただきます。
 今議会に提案をされた補正予算案の中で、津波防災教育センターの整備として、本年度予算では約四千万円、債務負担行為として二億一千万円が計上をされています。
 私は、二年前の六月議会、県議会での初質問で、この津波防災教育センターへの県の支援をと提案させていただきました。知事からは積極的な御答弁をいただき、その後、町立とか県立とかにこだわらずに一緒になって事業を進めようと準備を進めていただき、国の補助制度にも第一号として指定され、広川町で三億七千万円、国が二億五千万円、県も二億五千万円をそれぞれ分担して建設が実現されることとなりました。県の二億五千万円は、津波の恐ろしさを体感することができる3D映像のソフト、ハードの整備費用だということです。御尽力いただいた関係者の皆さんに改めてお礼を申し上げます。
 東南海・南海地震への住民への備えとしては、科学的な地震・津波への知識とともに、3Dを駆使した現実のものとしての体験とか、それから「稲むらの火」のような物語、こういった感性と心に訴える、このことも非常に大事だというふうに思います。頭にも心にもずしんと響くそういった施設として、津波から命を守る記念館、津波防災教育センターとしての役割を存分に発揮していただきたいと期待をするものであります。
 また一方で、今回作成する映像ソフトも、この先同じものばかり上映をし続けるわけにもいかなくなると思いますし、企画展の展示なども含めて、新しい内容もつけ加えていく必要も出てくるでしょう。こういったソフト面の更新、ハード面のメンテナンスも必要です。この津波防災教育センターを県と町が共同して整備を進めてきたその積極面がこれからも一層生かされて、そして県の持つこの専門性やネットワークが生かされる、そして地元自治体による地域とぴったりつながった運営、こういうふうにそれぞれの力を出し合い、一層の連携や役割分担についても今後広川町とよく相談して進めていく必要があろうかと思います。
 津波防災教育センターの事業概要と特色について、並びに広川町との連携、役割分担について危機管理監から御答弁をお願いいたしまして、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(吉井和視君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まずアスベストの問題ですが、昨日条例案を追加提案して和歌山県も一躍先進的な県に躍り出たわけですけども、これは条例案だけじゃいけないんで、やっぱり実質的に健康を守るような対策をいろいろとっていかなければなりませんし、それからまた、それの対象の施設を持っている人はお金がかかるということも事実だと思います。現在も制度融資等で対応できる部分はあるんですけども、これはまた他県の状況なんかを見ながら県も積極的に進めていく必要があると思います。それから国の方も、これだけ全国的に大きな話になったんで、今いろいろな制度を検討していると思いますが、県の方も引き続き働きかけを強めていきたい、このように思います。
 次に土砂の埋め立てに関する条例ですが、県内の各市町村が実情に合った誘導や規制を目指して条例化しているわけですけども、県についても、御質問にありましたように、いろんな県がもう既にやっているところもあるわけですから、前向きに検討していきたいと、このように思っております。
○議長(吉井和視君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) アスベスト対策についての中で、県民への影響、相談窓口での対応状況についてでございますけれども、七月の八日、各県立保健所に相談窓口を開設以降、九月十五日現在、百八十八件の相談に応じました。
 その相談内容といたしましては、住宅及び施設に使用されている建材に関する相談が多く、そのほか健康影響不安に関する相談といたしましては、アスベストが原因で発症する病気に対する不安、それから専門医療機関についての問い合わせがございました。
 県としましては、引き続き健康相談に応じますとともに、肺がん検診の受診率向上や精度の向上、正確な情報提供などを図ることにより、関係機関と連携し、県民の健康不安の解消と健康状態の把握に努めてまいりたいと考えております。
 次に、湯浅町の山田山における湯浅老人ホームにつきましては、そのような建設計画を、現在のところ、県としては了知してございません。
○議長(吉井和視君) 環境生活部長楠本 隆君。
  〔楠本 隆君、登壇〕
○環境生活部長(楠本 隆君) アスベストに関する三点と土砂搬入に関する二点の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、アスベスト使用建築物の調査や対策への情報提供についてでございます。
 吹きつけアスベスト等の対処方法についての情報提供といたしまして、既に県のホームページにアスベスト関連情報を掲載し、県民の皆様方への周知・啓発に努めているところでございますが、さらに県民向けのアスベスト取り扱いマニュアル等を新たに作成いたしまして、市町村及び建築関係団体等関係者に配布する予定にしております。
 次に、アスベスト使用建築物の改修、解体、廃棄に対する指導や立入検査についてでございます。
 本年七月に、建築物の解体に当たって飛散防止の徹底を図るために、県建設業協会あるいは県内産業廃棄物処理業者など関係業者に対しまして、大気汚染防止法及び廃棄物処理法などの遵守について指導を行ったところでございます。さらに、八月より随時、非飛散性のアスベスト廃棄物処理事業場に対し、立入調査を実施しているところでございます。
 また、昨日、大気汚染防止法で適用除外となっております小規模な建築物の解体作業に対する規制を徹底するために、県の公害防止条例の一部改正をお願いしているところでございます。
 今後とも引き続き、適正処理について事業者を監視・指導をしてまいる所存でございます。
 次に、今回改正する県公害防止条例の内容についてでございます。
 現行の大気汚染防止法におきましては、延べ床面積五百平方メートルかつ吹きつけ石綿の使用面積が五十平方メートル以上の解体工事につきまして、知事に対し届け出が義務づけられているところでございます。しかしながら、小規模な建築物の解体工事につきましては適用外となっておりますため、これらの解体における飛散防止を徹底するため、面積要件の撤廃等を盛り込んだところでございます。
 次に、湯浅町山田山における土砂・残土搬入計画への対応についてお答えを申し上げます。
 昨年の十二月ごろから過去に不法投棄が行われた現場付近におきまして議員御指摘の開発の動きが見られることから、現在、休日を含めました監視体制を強化しながら、湯浅町、地元警察など関係機関が連絡して注視しているところでございます。
 今後も引き続き廃棄物が不法に投棄されないよう、産業廃棄物適正処理連絡会議等を通じて関係機関がより一層連携を深めまして、関係法令の適用により未然防止に努めてまいりたいと考えております。
 最後に、新宮港における県外からの土砂搬入のうち、廃棄物処理法との関連についてお答えを申し上げます。
 当該土砂が陸揚げ後、三重県内へ搬出をされておりますことから、三重県の廃棄物関係部局とも連絡を密にいたしまして、そのものが産業廃棄物に該当しないかどうかも含めまして現在調査中でございます。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 県土整備部長宮地淳夫君。
  〔宮地淳夫君、登壇〕
○県土整備部長(宮地淳夫君) 港湾への土砂搬入量についてお尋ねがありました。
 本県港湾の公共岸壁において県外から土砂として搬入されているものは、平成十六年度では、和歌山下津港で約二千トン、日高港では約二千八百トン、新宮港においては約二万八千トンとなっております。また平成十七年度におきましては、八月末現在で新宮港において約四万トン搬入されております。
 以上でございます。
○議長(吉井和視君) 危機管理監石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○危機管理監(石橋秀彦君) 広川町の、仮称でありますが津波防災教育センターについてお答え申し上げます。
 まず事業概要と特色ですが、津波防災教育センターは地震や津波に対する備えを教育・啓発することを目的に、広川町と県が共同で建設し、平成十八年度末に完成する予定になってございます。
 本センターは、浜口梧陵記念館と同敷地内に、三階建て、延べ一千二百平方メートルとなっており、災害時には、海に近い周辺の避難住民のうち高齢者等いわゆる要援護者約二百名を収容できる施設にもなります。また、これらの津波避難機能のほか、防災教育機能、備蓄機能を有し、平成十七年度内閣府の地域防災拠点施設整備モデル事業の採択を受けております。
 本施設の特徴は、日本でも初めての地震・津波防災教育に特化した施設であり、最新の技術を駆使した3Dハイビジョン映像により津波の怖さを体験できるほか、「稲むらの火」や浜口梧陵翁の精神を基軸に、防災の重要性を県内の子供、住民のみならず国内外に向け発信する施設となってございます。
 次に広川町との連携、役割分担についてでありますが、県が持っている防災に対する情報やノウハウを施設整備や展示内容等に生かせるよう設計段階から町と共同で進めており、まさしく県と町の施設整備として、他県には類を見ない取り組みを行ってございます。
 また、完成後の管理運営については、同敷地内に整備中の浜口梧陵記念館と一体的に運営を行うことが効率的という考えから広川町に委託したいと考えておりますが、本センターの利活用等につきましても、町並びに関係機関と連携を図りながら進めてまいりたいと考えてございます。
○議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) アスベスト対策についてお答えいたします。
 学校施設の吹きつけアスベスト等の使用については、これまで御質問のありました各議員にお答えいたしましたとおり、児童生徒の安全確保の観点から県独自の第一次調査と文部科学省依頼の調査を実施し、現時点でアスベストを含む吹きつけが判明した学校では、当該箇所について使用禁止を継続しているところです。
 文部科学省調査は、特に有害なアスベストが全面的使用禁止となった平成八年度以前の建物で、学校及び社会教育施設等を対象に行っております。その実施に当たっては、各市町村の担当者に対して対象となる部材や疑問点等が生じた場合の対処方法についても詳細に説明をするなど、調査の徹底と統一を図りながら進めているところであります。
 今後、除去等の対策を講じる場合は現行の国庫補助制度とは別に予算措置をとる必要があるため、新たな補助制度の確立について、全国都道府県教育委員会連合会と連携をとりながら国に対して働きかけてまいりたいと考えております。
○議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 答弁をいただきました。ありがとうございました。答弁を踏まえて何点か要望をさせていただきたいと思います。
 まず初めには土砂埋め立てに関する条例整備についてですが、知事からは、他県の状況も踏まえた上で前向きに検討していくという御答弁をいただきました。ありがとうございました。
 二年前の六月議会で環境の面からこの問題を質問したときには必要性、有効性について研究していきたいという答弁をいただいておりましたから、一歩踏み込んだ前向きな答弁だと思い、歓迎するものであります。これからそのルールづくりに向けて具体的な作業が進むように期待をするものです。
 今回、その答弁の中にも、市町村の条例化の状況について触れられてたわけですけども、今回のようなむちゃな土砂搬入の動きがあって、湯浅町の相談を受けて県は、町で条例をつくったらどうですかというふうに指導をしたわけですね。それで今度は、湯浅が条例ができると広川町側が危ないから、それじゃ広川町にも同様の条例をつくってもらおうかということになってるというんですが、こういうことを続けていると、モグラたたきみたいなことになってうまくないと思うんですね。
 今回、全国的にも、首都圏を初め西日本にもこういう土砂埋め立ての条例ができた、遠いところからわざわざ土砂が県内まで来るようになったと。部長の答弁では、昨年で二万八千トンだったのがことし四万トンだということで、随分ふえているという答弁もありましたけども、県内の町村では、紀の川筋がその条例整備が進んだもんですから、そこではこの問題が一段落して条例整備のできてない南の方にこの問題が移ってきてる、こういうことだと思うんですね。
 ですから、これを解決するには、基本的な土砂の埋め立てのルールは、一定の規模以上は県が担当して、その網をかけると。それ以下の小さな規模のものとか、地域の特性に合わせて規制の厳しさを変えるといったケース・バイ・ケースのことは市町村の判断でどんどんやってもらって、市町村の独自条例をそれに優先させると、こういう体制を早くつくるべきだというふうに思うんですね。知事初め関係部局の今後の具体化への努力を強く要望をしておきたいと思います。
 それから二つ目には、今回取り上げた山田山の個別の件ですけども、この山田山周辺というのは、湯浅町と広川町、吉備町、金屋町とつながっています。特に今回紹介した広川町の町道側というのは、広川インターをおりたら、民家の前をたった一軒しか通らずに即山の中に入れるという道なんですね。ですから、地域住民の監視も届きにくい、そういう道です。この先、金屋町側にも道路が伸びる予定です。
 この地域については、今後とも不法投棄を未然に防止するために監視を強化していただきたいということをお願いしておくとともに、そして過去の不法投棄現場への進入路として山田川の川から入る、そういうかけられている仮橋があるんですけど、占有許可期限が切れたまま放置をされているという状態です。この問題への対応も引き続きお願いをしておきたいと思います。
 それから、アスベスト対策について三点要望をしておきます。
 今回の質問では、アスベストを使用している建物の対策を中心に私の方からはお話をさせてもらいました。健康被害での県民への影響については、調査、救済に向けてぜひ取り組みを強化していただきたいというふうに思ってるんです。
 県内には、アスベストの製造工場、それ自体はわずかでありましたけども、住友金属を初め大規模な工場もたくさんあるわけで、住金の労働者からは、工場内至るところの配管の断熱用にアスベストを長い間使ってきたという下請業者さんの話や、大型クレーンの操作の方からは、アスベストを使用したブレーキライニングの音を聞きながらクレーン操作をするらしいですが、三週間で二十ミリもすり減る、こういった粉じんの舞う中でずっと作業をしてこられた、こういう報告が来ています。
 県内で中皮腫で亡くなった方が九年間で四十九人ということですが、アスベストとの関係は資料からはわからないという担当課のお話でした。しかし、その労働災害の分野は国の仕事だからということで、ちょっとよそごとのような感じもしたわけですね。もっと県民の健康と命にかかわる問題として、今後とも被害者の救済、そして県民の今後の健康対策としっかりと取り組んでいただくよう、これは要望しておきたいと思います。
 それから、アスベスト使用建造物への対応についてですけども、調査や対応について新しいマニュアル、そういうものをつくるという答弁をいただきました。ありがとうございました。この上に立って、撤去や回収に当たっての指導、それから立入調査について、ちょっと要望をしておきたいと思うんです。
 廃棄物関係の立入調査には触れていただいてたんですけども、撤去・回収現場、ここへ指導に入ったり、立入調査に入ったりすることは、もっと構えてかからんといかんと思うんですね。大気汚染防止法に基づく立入調査だと言うんですけども、この間、どれぐらいそういった申請があって実績があるのか僕調べてみたら、九年間でたった二十五件ぐらいだって言うんですね。これまで余りなかった。このことが、今回、条例も規模要件を撤廃するわけですから、一気にこの年内から件数も、それから立ち入りに行かんなんというようなところもふえてくるわけだと思うんですね。そして、何よりもラッシュに、一遍にやってくるというふうに思うんです。ここら辺は対策会議でもよく詰めて、関係機関ともよく協議し、人的体制も含めてしっかりとした対策ができるように、作業員の方の安全や利用者の方、周辺住民の方の安全を確保されるよう強く要望しておきます。
 最後に建物の調査、撤去、改修への支援についてですけども、木村知事の方からは、これについて積極的に対処していくという答弁をいただきました。国への働きかけや県の既存の事業なんかも活用していくという答弁だったと思うんですが、これは、例えば中小企業に対しては振興対策基金、これの環境枠、それとか中小企業応援資金のことをイメージされての答弁だと思います。
 教育長からはまた、今ある補助制度以上のものをしていかないかんということで、六十二年のあのアスベスト対策で使った四百万円以上の工事への補助制度があるけども、それ以上のものが必要だという意味の答弁であったかと思うんです。
 私は、どういう支援制度が現在あって、どういうものが活用できるのか、どういうものをやっぱりこれから求めていかないかんのか、こういうことはアスベストの対策会議では具体的にテーブルにまだのってきてなかったと思うんですね。ですから、こういった支援策が活用できますよ、こういうことを県は考えていますよ、そういう打ち出しといったものもどんどん県民に知らせていただき、そして国の方に対しても、自治体や住宅向けの財政支援も含めて強く要望していただきたい。このことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
○議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十五分休憩
────────────────────
  午後一時二分再開
○副議長(大沢広太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二番尾崎太郎君。
  〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
 教科書の採択作業が終わりました。本県においても、関係各位の御努力により、さしたる混乱もなく採択が行われたことに感謝申し上げる次第であります。結果につきましては、私どもにとりまして決して満足できるものではありませんでしたが、四年後に向け、決意を新たにしているところでございます。
 さて、六月議会におきまして、雑賀議員が扶桑社の歴史教科書に関連して、靖国神社の歴史観の是非を論じられました。議員間の議論が深まることはよいことだと思いますので、本年は戦後六十年の節目の年でもあります、私もこの場をおかりして論じてみたいと思います。
 ことし出版された高橋哲哉氏の「靖国問題」は、この種の本としては珍しく版を重ねているようであります。高橋氏は、靖国神社は感情の錬金術のシステムであり、戦死者の遺族の悲しみを喜びに変えてしまうのが靖国信仰であるとしています。靖国神社は、国民が進んで国家に命をささげるような戦死者を顕彰する施設だったとするのです。さらに、この本の結論は、私なりに要約すれば、そんな一種のトリックである追悼などは新たな戦争につながるからやめましょう、軍事力を持つことも戦争につながるからやめましょうとなるのです。何たる脳天気でありましょうか。戦争や紛争、犯罪は存在するという厳然たる事実を受けとめられずして、何の男子でありましょうや。
 私は以前の一般質問で、警察官や自衛官といった、時には生命を賭して任務に当たらねばならない人々に対しては、感謝と畏敬の念を抱くべきだと主張しました。およそ社会というものは、彼らのような存在なくしては存立し得ないのは自明の理だからであります。
 高橋氏の理屈は、命をかける警察官や自衛官がいなければ犯罪も戦争もなくなるのにと言っているようなものであります。だれでも死にたくはないし、自分をだれよりも愛してくれる親もいれば、自分がだれよりも愛している我が子もいる。妻も、あるいは恋人もいるでしょう。しかし、さまざまな思いに何とか折り合いをつけ、あえて喜んでと運命と任務を引き受けるますらおに我々は涙するのです。それを感情の錬金術のシステムだと言えば言えなくもないでしょうが、高貴なる精神を余りにも冒涜した物言いであります。
 靖国信仰とは、我が国古来の神社崇拝、独特の生死観、習俗に立脚した追悼、顕彰の様式を明治政府が近代国家として引き継いだものであり、決して一朝一夕にできたものではありません。であればこそ、日本人は靖国神社にお参りしたときに英霊の存在を感じることができるのです。
 国立追悼施設というようなものをつくろうとする動きがありますが、全くのナンセンスであります。墓地ですらない施設などという無機質なものにどんな物語があるというのか、そんなところでどうして死者と魂の交流をすることができるというのか、全く理解に苦しみます。そもそも、一体だれのための施設だというのでしょうか。
 英国の保守思想家であるチェスタトンは、縦の民主主義を説きました。これは、先祖であればどう考えるであろうかという見地を入れた民主主義であり、言いかえるならば死者の民主主義であります。そして、それこそが伝統を重んじるということとしました。
 我々の生は我々だけで成り立っているのでもなければ、我々だけのものでもありません。文明の本質は継承であります。我々の都合だけで物事を決め、死者の声なき声に耳を澄ますことができぬようでは、早晩、日本文明は衰亡を余儀なくされるでありましょう。
 靖国神社に参拝することは問題ない、A級戦犯が合祀されていることが問題なのだとする意見があります。しからば、A級戦犯を裁いた極東軍事裁判、いわゆる東京裁判とはいかなる裁判であったのでしょうか。一言で言って東京裁判とは、勝者による敗者に対する復讐劇以外の何物でもありません。
 A級戦犯とは、平和に対する罪という当時の国際法には存在していなかった罪により起訴され、東京裁判で裁かれ有罪とされた方々を、通常の戦争犯罪を犯したとされた方々、いわゆるB・C級戦犯と区別して呼んだものであり、罪の軽重で区別したものではありません。ちなみに、B級戦犯とは捕虜の虐待や民間人の殺害などを命令したとされた方々、C級戦犯は命令を受けて実行したとされる方々であります。
 東京裁判の本質とは、インドのラダ・ビノード・パール判事の次のような言葉がよくあらわしております。「勝者によって今日与えられた犯罪の定義に従っていわゆる裁判を行うことは、敗戦者を即時殺りくした昔と我々の時代との間に横たわるところの数世紀にわたる文明を抹殺するものである。かようにして定められた法律に照らして行われる裁判は、復讐の欲望を満たすために法的手続を踏んでいるかのようなふりをするものにほかならない。それは、いやしくも正義の観念とは全然合致しないものである」。
 昭和二十二年五月十三日開廷、第四日の公判で、日本弁護団副団長清瀬一郎弁護人が提出した裁判所の管轄権──この場合は、平和に対する罪を裁く権限のことですが──をめぐる動議に対しウェッブ裁判長は、その理由は将来に宣告するとし、ついにこれを宣告することはありませんでした。というより、宣告することができなかったと言った方がよいかもしれません。実はウェッブは、裁判長に就任する前、東京裁判について、「国際法に基づく厳密なやり方をあきらめて、特別法廷で蛮行とも言える見せ物的な公開裁判を行うべきではない」と主張していたのです。罪刑法定主義、法の不遡及は法学のイロハ以前であります。
 また、清瀬弁護人は冒頭陳述において、満州事変、支那事変、大東亜戦争の原因は同じではないということを力説し、検察官の主張する一九二八年から一九四五年に一貫して我が国がアジアを侵略して支配下に置くためにA級戦犯たちがなしたとされる共同謀議を否定しました。しかし、この共同謀議史観は、その後、左翼思想家たちのリニューアルにより、十五年戦争史観となって我が国を呪縛し続けています。共同謀議と言いますが、この間、一体どれだけの内閣が入れかわっているのか。高校の歴史教科書でもひもとけばわかりそうなものであります。
 我が国は、今も戦前も立憲君主国であり、憲法の定めるところにより国会は機能していたのであり、東条英機内閣ですら議会の反発により総辞職に追い込まれております。
 A級戦犯とされた方の一人、荒木貞夫陸軍大将は、「軍部は突っ走ると言い、政治家が困ると言い、北だ、南だと国内はがたがたで、おかげでろくに計画もできずに戦争になってしまった。それを共同謀議などとはお恥ずかしいくらいのものだ」と述べています。仮に共同謀議なるものが存在していたならば、我が国ももう少しましな戦争遂行ができたことでありましょう。
 最近、共同謀議、十五年戦争史観を払拭する上で大変重要な本の完訳が出版されました。満州国皇帝となる清朝最後の皇帝、宣統帝溥儀の家庭教師であったレジナルド・ジョンストンが書いた「紫禁城の黄昏」です。大ヒットした「ラストエンペラー」という映画の原作であります。
 東京裁判では、溥儀自身が真実の記録であるとする序文を寄せた本書をアメリカ人弁護人ブレークニー少佐が弁護側資料として提出していますが、理不尽な理由で却下されています。この完訳本の監修者である渡部昇一先生は前書きで、「この本が東京裁判で証拠書類として採用されていたら、あのような裁判は成立しなかったであろう」と書いています。私も一読してみて、その意味がよく分かりました。
 満州族は漢民族とは違った民族であり、清は満州族が中国を征服して建てた王朝で、清朝は漢人が満州に入ることを禁じていました。一方、力の衰えた清は満州を管理できず、日露戦争前には満州はほとんどロシアの影響下にあり、もし日露戦争に日本が勝たなければ満州全土がロシアの一部になっていたということは全く疑う余地はない。日本はロシアからかち取った権益や特権は保持したものの、領土はロシアにもぎ取られた政府の手に返してやったのであり、その政府とは満州王朝の政府である。ところが、いつの間にか満州は中国の領土とされてしまいます。そこでジョンストンは、「遅かれ早かれ、日本が満州の地で二度も戦争をして獲得した莫大な権益を支那の侵略から守るために積極的な行動に出ざるを得なくなる日が必ず訪れると確信する者は大勢いた」と書くのです。要するに、日本が満州を侵略したのではなく、歴史的に見て決して中国の領土ではない、当時、ノーマンズランド、無主の土地と欧米では呼ばれていた満州の地に日本が確立した権益を中国が侵略したと言うのです。目からうろこが落ちるとは、このことであります。さらにジョンストンは、「支那人は、日本人が皇帝を誘拐し、その意思に反して連れ去ったように見せかけようと躍起になっていた。だが、それは真っ赤なうそである」とも書いています。果たして、単純に日本が満州を侵略したと言えるのでしょうか。
 パール判事の判決書の最後の部分は、「時が熱狂と偏見を和らげた暁には、また理性が虚偽からその仮面をはぎ取った暁には、そのときこそ正義の女神はそのはかりを平衡に保ちながら過去の賞罰の多くにそのところを変えることを要求するであろう」という、まさに歴史的名文であります。
 既に、極東軍事裁判所条例という行政命令を出し、東京裁判を根拠づけたマッカーサー自身が、一九五一年、昭和二十六年五月三日、米国上院軍事外交合同委員会において、「Their purpose,therefore,in going to war was largely dictated by security.(したがって、彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障の必要に迫られてのことだったのです)」と証言しています。みずから東京裁判は誤りであったと認めたようなものであります。にもかかわらず、サンフランシスコ講和条約で日本は国際社会に復帰した、その十一条には日本は東京裁判を受け入れると書いてあるとする意見が、残念ながら流布しているようであります。これに対して、この条文は「Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East」であり、日本は「accepts the judgments」、すなわち諸判決を受け入れたにすぎないのであって決して裁判全体を認めたわけではない、「judgments」を「裁判」と訳すのは誤訳である、この条文の趣旨は、日本が独立回復後、刑の執行を勝手に停止して戦犯を釈放してしまわないようにするためのものだとする、非常に説得力のある解釈が出てきております。
 昭和二十七年の独立回復後、四千万人を超える署名を背景に、受刑者の釈放を求める国会決議が何度も可決されております。昭和二十七年十二月九日の衆議院本会議においては、発議に当たり、社会党の古屋貞雄議員は、「敗戦国にのみ戦争犯罪の責任を追究するということは、正義の立場から考えましても、基本的人権尊重の立場から考えましても、公平な観点から考えましても、私は断じて承服できないところであります」「世界人類の中で最も残虐であった広島、長崎の残虐行為をよそにして、これに比較するならば問題にならぬような理由をもって戦犯を処分することは、断じてわが日本国民の承服しないところであります」と主張し、圧倒的多数で可決されております。さらに翌年、昭和二十八年には、A級戦犯も含めてすべての戦死者を国に殉じた戦没者として認め、その遺族には等しく扶助料、恩給を支給することを全会一致で可決しております。これらのことを見れば、当時の我が国議会や国民は、東京裁判の正当性を受け入れたとは到底言えないのではないでしょうか。
 我が国は昭和二十七年十月十一日、A級戦犯十二名を含むすべての戦犯の赦免を条約に基づき関係各国に勧告し、昭和三十三年五月三十日までに全員が釈放されております。A級戦犯とされていた重光葵は鳩山内閣の外務大臣となり、同じく賀屋興宣は池田内閣の法務大臣となりました。彼らはA級戦犯ではなくなりました。当然であります。しかし、処刑された七名は、何ゆえいまだにA級戦犯とされ続けなければならないのか。七名は、それぞれ政府や軍の指導的立場の人たちでありました。したがって、未曾有の惨禍をもたらしたさきの大戦の結果責任を問う声があることは理解できますし、A級戦犯以外の指導的立場にあった人も含めて、それは必要なことでもありましょう。ただ、彼らはその責任を深く自覚していたであろうことは間違いありません。「戦争に敗れたる責任、罪、万死に値す」、これは板垣征四郎が獄中で日記に記した言葉です。また東条英機は、東京裁判の宣誓供述書において、「敗戦の責任については、当時の総理大臣たりし私の責任であります」と明言しております。
 また、B・C級戦犯としては、九百一名がずさんきわまりない裁判の結果、処刑されており、病死、自決などの死者を加えると、B・C級戦犯の死者は実に千五十四名にもなります。A級戦犯の死者十四名と合わせて、このことを我々はどのように受けとめるべきなのでありましょうか。あのような大戦争の後で和平を開くためには、勝者にはこれほどの命をささげなければならなかったのかもしれません。そうであるならば、我が国の人柱となられた方々には靖国にお鎮まりいただき、我々はただただ感謝の誠をささげるのみであります。
 時は過ぎ、熱狂は冷めました。平成十三年には横田空軍基地の将校会や在日米軍太平洋軍司令官が靖国神社を参拝しておりますし、最近ではブッシュ大統領に参拝の意向があったと仄聞しております。今ごろになって、ためにする反日の熱狂に取りつかれている国におもねり、靖国の英霊にこうべを垂れることにちゅうちょする必要は全くないのであります。
 「日本のおかげでアジアの諸国はすべて独立した」、タイ、ククリット・プラモート元首相。「大東亜戦争は私たちアジア人の戦争を日本が代表して敢行したものです」、インドネシア、モハメッド・ナチール元首相。「この快挙によって東洋人でもやれるという気持ちが起きた」、インド、ラダ・クリシュナン大統領。「往時、アジア諸民族の中で日本のみが強力かつ自由であって、アジア諸民族は日本を守護者かつ友邦として仰ぎ見た」、スリランカ、J・R・ジャヤワルダナ大統領。「歴史的に見るならば、日本ほどアジアを白人支配から離脱させることに貢献した国はない」、ビルマ、バー・モウ元首相。
 日本が無謬であったなどとは言いません。当時も、そして今も、無謬であるはずがありません。反省すべき点はあります。それでもなお、帝国主義全盛の時代、アジアの東の端の小国が怒濤のような世界史のダイナミズムに翻弄されながらも懸命にみずからの独立を保とうとした営み、それが我が国の近代史であります。その営みの上に我々の今があることを忘れてはならないのです。ちなみに、ことしの八月十五日には、実に二十万五千人を超える国民が靖国神社に参拝しております。
 以上申し述べましたことから、靖国神社の歴史観は必ずしも誤ったものであるとは言えず、それはそれで尊重すべきものであると考えます。ただし、私が読んだ限りでは、扶桑社の歴史教科書は靖国神社の歴史観とはかなり隔たりがあるように思います。しかし、共通しているものは、祖国日本に対する温かいまなざしではないでしょうか。私は、それこそを大切にしたいと思います。
 さて、冒頭申しましたとおり、教科書の採択作業は終わりました。よりよい採択環境の構築に向けて、県民の皆様から寄せられました声をもとに、幾つかの提言、質問をいたします。
 文部科学省は、新規採択のための検定済み教科書の展示会を各都道府県教育委員会の責任で開催するよう指示いたしております。その際行われておりますアンケートについては、各都道府県教育委員会の自主性に任されているところであります。まず、このアンケートについてお尋ねいたします。
 第一点、本県はいかなる目的でこのアンケートを行っているのか。
 第二点、このアンケートは表題が「教科書展示に関するアンケート」となっております。このアンケートは、単に教科書の展示の仕方に対する意見だけを聞くためにするのでしょうか。せっかく教科書を読み比べていただくわけですから、教科書の内容についての御意見という欄を設けてはどうなのか。
 第三点、回答者のところは一般と教育関係者に分かれ、教育関係者のみさらに五種類に分類されているのはどういう意図からであるのか。
 第四点、より有用なアンケートをふやすため、「無記名でもよい」と明記の上で署名欄を設けてはどうか。
 第五点、アンケートはナンバリングの上、会場名を入れてはどうか。
 第六点、個人情報保護の点からも、アンケート回収箱はかぎつきのものにしてはどうか。
 次に、教科用図書選定資料についてお尋ねします。
 本県では、この資料は採択作業終了まで非公開となっています。しかし、せっかく教科書の展示会を行っているのですから、一般県民の皆様にも教科書を比較検討する上で参考になる教科用図書選定資料を参照していただくことは極めて有意義であると考えます。ちなみに、東京都教育委員会は採択作業前に公開しております。教科用図書選定資料は教科書展示会場に備えるべきだと思うが、いかがか。
 次に、平成十四年八月三十日付文部科学省初等中等教育局長通知の「第二部 教科書採択の改善について」、第三項「その他」は、「保護者や地域住民の教科書に対する関心は、採択によって終わるものでなく、実際に教科書が学校で使用され始めてからも引き続き高いものである。また、教員や児童生徒にとっても、自ら使用している教科書のみでなく、他の種類の教科書や異学年・異学校種の教科書を手に取ることは、教員による教材研究や児童生徒による学習の深化・発展に資するなど、大変意義のあることである。 このため、保護者や教員、児童生徒が、採択の時のみならず、常時、様々な種類の教科書を手に取り得る環境を整備していくことが大切であり、各教育委員会は、今後、各学校の図書館や公立図書館に多数の教科書を整備していくよう努めていくことが必要である」となっておりますが、現実にはなかなか実現に至っておりません。そこで、教育委員の方々に採択作業のために配布されている見本本の有効利用を考えてみてはどうでしょうか。
 そこで、お尋ねします。
 これらの見本本は、検定作業後、どのような取り扱いになっているのか。県教育委員会が音頭をとって各学校の図書館や公立図書館にこれらの見本本を整備できるよう働きかけることはできないものなのか。最後に、展示会場は本県の広さに比して数が少な過ぎたのではないでしょうか。特に合併地区などは旧市町村等へ配慮すべきだと思うが、いかがか。
 以上、教育長にお尋ねして、質問といたします。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 尾崎議員の教科書採択に関連した御質問にお答えします。
 まず、各地の教科書展示会場で実施いたしましたアンケートは、県民の教科書に対する関心にこたえるとともに、教科書の内容等について広く意見をいただくために実施いたしました。今後、教科書採択事務や教科書展示会の運営等に反映させていくため、議員御指摘のアンケートの様式や内容、さらに回収方法のあり方等について検討してまいります。
 次に、教科書を採択するため作成した教科用図書選定資料は、本年度から教科書採択の事務終了後、県情報公開コーナーで閲覧できるよう改善したところであり、より有効な活用についてさらに検討してまいります。
 次に、教科書の見本本は、多くの人たちに見ていただくため、展示期間が終了した後も引き続きほとんどの会場にそのまま置かれており、教員の教材研究などにも利用されている実態がございます。今後、教員や児童生徒、さらに多くの地域住民が学校や図書館でさまざまな種類の教科書を手にとって見ることができるよう、各市町村教育委員会に働きかけてまいります。
 最後に、教科書の展示会場は、本年度は二十カ所──固定会場十七カ所及び移動会場三カ所に設置したところであります。今後、さらにこの会場数をふやすよう努めてまいります。
○副議長(大沢広太郎君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二番尾崎太郎君。
○尾崎太郎君 まず、教科書展示会場におけるアンケートについてでありますけれども、答弁で、このアンケートは教科書の内容等について広く意見をいただくという答弁がございました。もし教科書の内容についていろんな県民の皆様の御意見をいただくという目的であるならば、やはりその目的に合ったアンケートの様式を考えるべきだと提案をさしていただきたいと思います。これは提言であります。
 それから、教科用図書選定資料。これは、専門家でも何も持たずにいろんな種類の教科書を読み比べるということは、現実にはこれはかなりの手間暇がかかりまして、何のガイドブック、指針もなしに教科書を比較するということはなかなかできないわけであります。ですから、一般の県民の皆様にも展示会場に足を運んでいただいたときに、ぜひとも指針となるガイドブックを備えつけていただかなきゃいかん。そのガイドブックとして一番いいのが、せっかく教育委員会がつくっていただいたこの教科用図書選定資料だと思います。それを見ながらいろんな教科書を比較・検討していただく。これをぜひ実行していただきたいと思います。
 それから、見本本の有効活用についてでありますけれども、現在は、今答弁の中にありましたが、教員の教材研究に利用されていると、こういうことでありました。しかし、この有効利用という観点から、本来、文部省の通達にもありましたけれども、児童や一般の方々にいろんな種類の教科書を見ていただく機会を多くせよと、こういう趣旨の通達であったわけですから、教員の皆さんのみならず、できるだけ多くの児童生徒や一般県民の皆様方に教科書を見ていただかなきゃいけない。それは採択の時期云々というんじゃなくて、常にそうあるべきだと思いますので、これはぜひ教育長にお考えいただいて。もったいないですから。この「もったいない」という言葉が最近流行語になるというようなこともありましたけれども、見本本を、採択事業が終わったら見本本としてもういいわと思って置いとくんじゃなくて、それを、検定済みの教科書とほとんど内容は変わらないわけですから、それぞれの学校や図書館や、それから公立の図書館に配置できるように、これはぜひとも教育委員会が音頭をとっていただきたいと思います。
 以上、これ要望を申し上げまして、質問といたします。
○副議長(大沢広太郎君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で尾崎太郎君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時三十六分散会

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