平成17年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


県議会の活動

平成十七年二月 和歌山県議会定例会会議録 第六号
     ─────────────────────
議事日程 第六号
 平成十七年三月九日(水曜日)午前十時開議
  第一 議案第一号から議案第十九号まで、議案第三十九号から議案第九十一号まで及び議案第九十三号から議案第百三十二号まで、並びに報第三号から報第五号まで及び報第七号(質疑)
  第二 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第一号から議案第十九号まで、議案第三十九号から議案第九十一号まで及び議案第九十三号から議案第百三十二号まで、並びに報第三号から報第五号まで及び報第七号(質疑)
   二 一般質問
出席議員(四十六人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       新   島       雄
     四  番       山   下   直   也
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     九  番       東       幸   司
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       花   田   健   吉
     十八 番       藤   山   将   材
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       飯   田   敬   文
     二十二番       谷       洋   一
     二十三番       井   出   益   弘
     二十四番       宇 治 田   栄   蔵
     二十五番       前   川   勝   久
     二十六番       山   下   大   輔
     二十七番       木   下   善   之
     二十八番       原       日 出 夫
     二十九番       冨   安   民   浩
     三十 番       野 見 山       海
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       中   村   裕   一
     三十三番       浦   口   高   典
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       玉   置   公   良
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       阪   部   菊   雄
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        小 佐 田   昌   計
     出納長        水   谷   聡   明
     知事公室長      野   添       勝
     危機管理監      白   原   勝   文
     総務部長       宮   地       毅
     企画部長       高   嶋   洋   子
     環境生活部長     津   本       清
     福祉保健部長     嶋   田   正   巳
     商工労働部長     石   橋   秀   彦
     農林水産部長     阪   口   裕   之
     県土整備部長     酒   井   利   夫
     企業局長       楠   本       隆
     教育委員会委員長   駒   井   則   彦
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   大   岡   淳   人
     警察本部長      宮   内       勝
     人事委員会委員長   西   浦   昭   人
     代表監査委員     垣   平   高   男
     選挙管理委員会委員  森   本   明   雄
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       小   住   博   章
     次長         佐   竹   欣   司
     議事課長       島       光   正
     議事課副課長     薮   上   育   男
     議事班長       山   本   保   誠
     議事課主任      尾   崎   善   亮
     議事課副主査     楠   見   直   博
     総務課長       土   井   陽   義
     調査課長       宗   野   幸   克
 (速記担当者)
     議事課主任      吉   川   欽   二
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
     ─────────────────────
  午前十時二分開議
○議長(小川 武君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、議案第一号から議案第十九号まで、議案第三十九号から議案第九十一号まで及び議案第九十三号から議案第百三十二号まで、並びに知事専決処分報告報第三号から報第五号まで及び報第七号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十五番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。
 きょうは、世界遺産に次いで地球温暖化防止、さらに水・環境も日本のリーダー県になってほしいと、そういう願いを込めまして四点に絞って質問をしていきたいと思っております。実は、そのそれぞれの関係の方々もきょうは傍聴に見えてくれております。知事を初め御当局の皆さん方の前向いた御答弁をよろしくお願いをしておきたいと思います。
 それでは、早速一般質問を行います。
 質問に入る前にお許しを願いたいと思いますが、私は、世界遺産登録されたことが新しい和歌山県づくりを始めていく根幹をなすものだと思っています。そうした意味において、まずその登録後の結果が気になりますので、御紹介いたします。
 昨年七月に登録されて以降の半年間だけで約百二十五万人増、八%増で、一年間の伸びのほとんどを占めました。特に遺産登録地の一市十町が約百三十万人増、二六%増と、観光客の大幅な増加を含め、いろんな形で効果が出てきています。また、欧米や韓国からの外国人客は約十一万人で、前年より八割の伸びを示しています。そのほか、観光客がふえたという物質的な面だけでなく、世界遺産は私たちに小さな和歌山、日本という中で物事を考えるのではなくて世界的な視野で物事を見るということを教えてくれました。世界遺産がいかに地球にとって貴重なものであるかということを学んでいきたいと思います。さらに、県外、外国からの反響も届いています。
 既に前回も御紹介しましたからおわかりの人もあると思いますが、デンマークの欧州日本人会の中口和己さんから、再度二月に心強いお手紙をいただきました。こういう手紙でありますけども。(手紙を示す)「七月に、関係三十カ国の子供たちが参加をする国際少年少女サッカー大会チボリカップにあわせて現地で世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」展を企画し、ふるさと和歌山の存在を広く世界に知ってもらおうと考えています。ぜひとも県として協力をお願いしてほしい」との内容でございました。私自身も、この四月一日からデンマークに飛び、具体的なPRについての話し合いをしてきたいと考えております。県当局の御支援と御協力をお願いしたいと思いますが、知事、いかがでしょうか。
 このように、いろんな方面からの要請や動きが起こっております。さらに和歌山県の世界遺産が国内外から注目されるためには、水とか空気など、環境面での取り組みが私は気にかかります。これからの世界遺産を守るためにも、これらの四点に絞って当局の考え方をお聞きしたいと思います。
 まず世界遺産についてですが、私たちが活動しています高野熊野世界遺産連絡会に、こんなことを是正した方がよいとのそうした要望とか提言など、いろいろと御意見が出てきています。それは、外国語での語り部がいないということであります。具体的には、先月に韓国客を高野・熊野に呼びツアーを企画しているNPO関係の方々から、実はきょうも傍聴席にお見えですが、私たちの方へ外国語ガイドの用意について相談がありました。調べてみますと、韓国語の専門の通訳でさえ二名しかいない、しかも世界遺産の語り部はできないということ、ボランティアも数人いるが語り部案内はできないということでした。用意をしていないことはまことに残念でしたけども、危惧していたことが本当になりました。語り部があれば、せっかくの外貨を落としてくれるのに。そこで三重県などを調べてみますと、昨年、外国語を話せる人のリストを市町村から提出をしてもらい、対象者に呼びかけて現地研修も入れたガイド養成講座を行い、英語でしゃべれるように三人ほど育ったと言われていました。
 そこで、提案をいたします。
 この和歌山にも、二世、三世の在日韓国人という人たちもいます。その人たちに協力をあおぐことも大事ではないでしょうか。そのほかに、和歌山から外国へ語学留学をし、帰ってくる人にも手を尽くしてみてはどうでしょうか。また、三重県方式のガイド養成講座の検討もしてみてはどうでしょうか。これは商工労働部長の答弁を求めたいと思います。
 話は変わりますが、和歌山県と和歌山市が仲よく手をつなぎ支援をする県外向け世界遺産PR情報誌の発行についてお伺いをしたいと思います。
 失礼ですが、和歌山市を初め、登録地以外のところは余り積極的に取り組めていないという見方をする人が多いと聞きます。そこで、私たちは、やはり強力な二つの行政が世界遺産に対して強烈なパブリシティーのタッグを組んで向かっていけば、世界遺産を初め和歌山観光にとって必ず大きな成果ができると思っております。
 このたび、幸いにもある人の好意によって、和歌山市内のホテル、しかも和歌山城や県庁、市役所にも近いところを貸していただき、大いに和歌山観光をPRしようと取り組んでいます。これに、県や市が積極的に前向きにパブリシティーを展開してもらいたいのです。今既に、私たちでできることをやっています。事務所には、外人の方々も時々来ます。その対応についても、もっとサービスができるように和歌山市内の民間会社と連携をして七カ国語で話せる語り部機器を考案していただき、導入を図ろうとしています。その方もきょうはお見えでございます。パンフレットも、県と市のをいただいていますが、すぐになくなってしまうほど盛況でございます。こうした中で、全国向けの世界遺産PR情報誌を世界遺産条例で定めた世界遺産週間の七月一日から七日にあわせて発行しようと、地方紙にも協力をしていただき、県外十二万部の発行を計画しております。十二万部とは、和歌山県が出しています「紀州浪漫」から出てきた数字であります。できることなら、恒常的に観光PR費用も含めて協力をしていただきたいのです。そして、並行しながらホームページでの発信も行っていく予定でございます。どういうような形でやるかは、県や和歌山市の要請を受け入れてその要望に十分こたえていきたいと考えますが、商工労働部長、いかがでしょうか。
 もう一つ、世界遺産の影響は思わぬところに波及をしています。不況でもって撤退しようとした地元の企業が、実はきょうは傍聴にお見えでございますけども、熊野古道が世界遺産になったことによって本来の仕事から熊野古道と薬草とのかかわり、薬草栽培に目をつけて薬草・漢方構想的なものを始めようとしております。私自身もかかわらせていただいていますが、二十一世紀は経験のしたことのない大病が出てくると言われています。新しい病気は石油で生み出した薬では治りません。切るか、患部を治すには体力がもちません。まず人間の体力をつけて、そして病気を治すということに薬草という意味があると思います。
 空海の教えの中でも、薬草関係で既にいろんな人に説教しています。また、南方熊楠も森に入って、独自の研究で今の漢方薬につながる薬草を次々に発見をしています。こういう医学の曲がり角のときにこそ薬草・漢方薬というものが重要視をされて再認識されるべきものであると私は思います。
 世界的にも、アメリカ、中国等の大国が薬草の争奪戦を繰り広げています。アメリカでは漢方の研究も取り組んでおり、中国も五千年前の昔から薬草に目をつけ、国外に出さないように、まるで秘密兵器を隠しているようにいろんな国の薬草に対して手を出そうとしています。これからの価値は、原生林の中に生えている薬草を見つけられるかが二十一世紀の課題になっていると思います。
 県も、平成六年三月に和歌山県薬用植物振興構想がつくられていますが、それをもとに具体的な取り組みが、私が調査をする限りでは進んでいないと思います。空海も南方熊楠も、薬草というものを永遠に考えていかなければならないという教えがあります。この世界遺産を契機に、熊野古道や高野山に野生をしています薬草に目を向け、人類の新しい薬として生み出されることは大であると思います。「和歌山に行けば薬草のことで健康になれる」という一つの合い言葉になるよう、県として力を入れてほしいと思います。
 ただ、天台烏薬については県工業技術センターの皆さんが中心となり取り組まれていますが、財政的に日の目を見ていません。これらにも積極的な支援をお願いしたいと思いますし、この世界遺産の地で芽生えてきましたこの薬草・漢方構想は大変おもしろいと思います。これに対して、県として今進めています熊野健康村構想とタイアップをしたらどうでしょうか。知事の見解を求めたいと思います。
 話は変わり、二つ目の質問に移ります。
 二月に京都議定書が発効されたことによって、さらなる地球温暖化防止の先陣を切る環境立県和歌山県づくりを目指すことで知事のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 地球温暖化防止、京都議定書が先月十六日に発効されました。国際社会から踏み出した歴史的な第一歩であります。日本は、まず二〇〇八年から十二年の間に一九九〇年比六%の削減が義務づけられています。こうした歴史的な年に、また一つすばらしい動きが出てきました。それは、世界遺産登録地域であります中辺路町高原地区であります。高原地区は観光客もふえていますが、それ以上にすばらしいのは、世界遺産地にふさわしい空気のきれいな、また環境のきれいな、地球温暖化防止に貢献をできる地域づくりをしていこうと目覚めてきていることであります。私も、この一月から既に四回ほど地元へ足を運び、話し合ってきました。かつては思いもつかなかったことが地球温暖化防止の実践として「省エネをやってみたら」という意識の変化も生じてきています。具体的には、高原地区に太陽光発電や風力発電の自然エネルギーを設置し、約四十世帯の家庭の省エネと地球温暖化防止に貢献しようと話し合っております。今年度当初予算で、自然エネルギー導入プラン策定で約一千五百六十一万円が計上されていますが、この高原地域の取り組みも積極的に支援をしていただきたいのですが、いかがでしょうか。
 そして、その結果も出ているのです。実はこの取り組みの中心になっている柏崎さんは、きょうもお見えでございますが、既に自宅の屋根に発電機を設置して家庭で昨年の五月から実践をしており、昨年六月から十二月までの月平均では約四千七十一円ほど関電に売電をしていると、効果の結果も出ています。
 知事も、昨年の九月議会で私の質問に自然エネルギーの積極的な推進を表明していただいていますが、一軒当たり三キロワットの発電機をつけるとすれば約百八十万円の費用がかかり、新エネルギー・産業技術総合開発機構いわゆるNEDOから支援を受けると二分の一の約九十万円の自己負担となります。これらにさらに県や市町村レベル及び企業などの支援があれば地域に元気が出、実現可能になります。和歌山は自然エネルギーの普及は他府県に比べおくれていることからも積極的支援をお願いしたいと思いますが、知事、いかがでしょうか。
 さらに、古座の重畳山というところがありますけども、そこで私ども連絡会が支援をして風力発電のフィールドテスト事業を新エネルギー・産業技術開発機構とNPO法人地球人学校との共同研究事業として昨年から行っております。新聞でも紹介されましたが、順調に進んでおり、これが少し支援をすれば市民風力発電機の設置に期待できそうであります。
 このように、県民が積極的に地球温暖化防止のためのいろいろな取り組みを始めようとしております。県としては、もっときめ細かな御配慮をしていただき、応援をしてほしいと思いますが、知事、いかがでしょうか。
 続いての質問ですが、教育長肝いりの平成十五年度から始まったエコスクールについてであります。
 これは全国に先駆けた取り組みで、高く私は評価をしたいと思っております。平成十五年度実績を見れば、県立学校四十八校でCO2 二百トン、四%を減らしました。つまり、学校一校分を減らしたことになります。また、六%以上削減をしたのが十二校あったと報告をされております。このエコスクールの評価と生徒の意識変化について、教育長、いかがでしょうか。
 また、この和歌山方式が全国的にも評価されるのは、前年度と比べて節約をできた経費の六割を還元し、校内の植樹と物品購入に三割ずつ充ててもらい、さらに削減率が高い努力した学校にボーナスを与えるという、そういった仕組みを取り入れていることが挙げられます。これらの取り組みを県下の小中学校にも広めていくためにも、こうした仕組みというのを取り入れて実施するような指導が必要だと私は考えますけども、教育長、いかがでしょうか。
 一つ提案がございます。今、全国の子供たちは学力低下をしていると言われています。それなのに学校の授業は週休二日制になっています。私は、例えばこの土曜日に和歌山独自の授業を、地球温暖化防止について徹底的に教えていくことが大人になっても身につくということです。大変大事だと思っております。ちょうどいいタイミングで文部科学省は、休みの一日を授業に厚みを持たせることにその時間を使うことを指導しておりますけども、和歌山では初めての地球温暖化防止という独自の教え方をしてみてはどうでしょうか。教育長に答弁を求めたいと思います。
 ところで、話は変わりますが、朝日新聞の二月十三日付に書いてあるのは、意外に厳しいことが指摘をされています。その記事は、四十七都道府県調査を朝日新聞独自でした結果、温室効果ガス対策がほとんど効果を上げていない実態がわかったと発表されています。地方の取り組みのおくれが国の目標達成を左右しかねない実態となっていると報じられています。ちなみに、和歌山県は九〇年比で二〇一〇年度六%の削減目標ですが、実態は七・七%増となっています。報道では、削減が難しい理由の一つに、自治体の担当者らは、取り組みが住民や事業所への省エネの呼びかけなど情報提供や啓発が中心で、最後はそれぞれの自主性に任せざるを得ないということを挙げると指摘されています。NPO法人環境政策研究所の中口所長は、啓発や情報提供だけでなく、インフラ整備や公共事業の対策にも積極的に取り組むべきだと言っています。つまり、県の担当者が情報提供や啓発だけを言い、なかなか進まないということを言っています。つまり、具体的に推進をしていける仕組みづくりというのがまだまだできていないということではないでしょうか。
 今指摘されたようなことを既にクリアをして実績を上げているものが和歌山県にはあるのです。それは、私も議会で提案をし、知事がいち早く取り入れてくれましたストップ温暖化家庭の省エネ事業の実践などは、調査員という指導ヘルパーを家庭に派遣をするということで推進する仕組みづくりをつくり、全国に先駆けた取り組みで、実績も既に出ています。そして、それにかかわった人たちも、きょうのこの議場にも来てくれています。例えば、わかりやすくするために金額で申し上げますと、年間約十二万円の電気代を支払っている家庭で約四万五千八百円の削減ができています。これは二年間の事業でありますけども、そういった家庭が出てきております。すなわち、電気代だけで三八%の削減ができた家庭もあるということであります。環境省が予想した以上の効果が上がっております。こうしたものを具体的に取り組んでいく必要があるんではないでしょうか。地球温暖化防止とは、地球人の自覚と責任・責務として一軒一軒が責任を持って取り組まなければ実績は上がりません。そのためにも啓発や情報提供だけでは進みにくいのであります。
 そこに、くどいようですけども、新しい仕事としての省エネを指導していけるヘルパーの仕組みを入れること、これが大変重要なことと私は思っております。県が中心となって広く県下一円の家庭を継続して指導していくストップ温暖化家庭の省エネ活動を和歌山独自の事業として取り組んでいくことを提言いたしますが、いかがでしょうか。
 そして、これは県の雇用創出プログラムにも残念ながら入っていませんが、大きな新しい雇用対策につながっていくことになり、その人たちは県外へも進出をしていけると思います。地球温暖化防止対策をすれば、環境省の試算では一軒当たりの省エネが年間四万一千円になると言われております。それを県下の三十八万世帯で実施をすると百五十六億円になり、私どもの実験結果ではこれ以上の省エネ金額になっています。これは実験済みなのであります。
 このように、地球温暖化防止対策をすれば、私が三年前から再三本会議、予算委員会で提言しております、省エネで浮いたお金の一部を県民の協力を得ることによって、仮称でありますけども「環境納得基金」として雇用できる財源も生まれ、新しい省エネを指導してくれる人が何千人という、雇用促進にもつながっていくのではないかと思います。また、将来のCO2 排出量取引の動きから見ても、県としてこうしたところに先行投資をすればするほど有利になってくると思います。
 ところが、そうした事業が今年度事業には見当たりません。必要性について、まあ言葉はきついのでありますけども、そこらについて認識していないのではないでしょうか。知事及び担当部長にお伺いをしたいと思います。
 また、環境税についてどのように考えているのでしょうか。私は、家庭での省エネ実践をしている人々を数多く知っています。まず率先して家庭で実践している人が報われるという政策誘導が妥当だと考えますが、いかがでしょうか。
 環境税も、そうした率先して取り組んでいる家庭から取るのではなく、むしろ企業等から環境税を取ったり、反対に努力した家庭に税金の還元をしていくと、そういう考え方が必要ではないでしょうか。それとともに、例えば電力会社にお願いをして、努力する家庭に電気代を翌月安くするとか、そうした政策誘導をしていくことが必要ではないでしょうか。つまり、正直者が得をするということにしないと私は進みにくいと考えますが、知事、いかがでしょうか。
 また、先ほど申し上げました和歌山方式、仮称ですが「環境納得基金」についてどのように考えているのでしょうか。
 知事は、平成十五年二月予算委員会では、「税と言うと公権力によって無理に取られるという感じが強いのに対し、そういうふうなマニュアルを示し、そして前に要った電気代なんかと比べて本当にこれだけ安くなったと、その何十%かをちょっと寄附してもらえませんかという任意の寄附というのは、飲みやすい薬だろうという感じがするんです」、「実践マニュアルをやるんで、それでどんな成果が出てくるか、一回ちょっと見てみたいと思っています」と答弁をいただいておりますが、その後の研究結果はどうなんでしょうか。お伺いをしたいと思います。
 さて、次の質問に移りますが、ひとつぜひ早急につくっていただきたいのが条例であります。知事の決断と担当部局の条例作成作業です。それは、水についてであります。
 昨年、口熊野生馬の地に天然水がわき出ました。口熊野生馬地区には、約一千二百年前、水を求めて村を訪れた空海のその余りにも粗末な身なりに空海とは気づかず追い返し、以降、水に恵まれなかったという伝説がございます。高野・熊野が世界に誇る遺産として登録された年にこの伝説の地に突然噴き出した天然の水は、地元の人たちに、水への感謝を今こそ取り戻すのだという空海のメッセージを伝えてくれているように思います。地元の方々は、水というのは生命の源である、のどが渇いたときに飲むというのではなくて、命を維持し、時には病を治す奇跡を起こすのがここでとれた水である、命と密接に関係のある水であり、信仰に近い水というものを考えてもらうため世界遺産の地へ参詣する人々にだけ差し上げる、そして一杯の水がのどを通るとき水のありがたさをはっきり自覚をし、水を涵養している森の大切さや水に感謝をするという経験をしてもらいたい、そう言っております。ここは、水を売る売らないということは一切存在しないのであります。
 二十一世紀の人類の大きな課題の一つに、水問題があります。現在、六十億人のうち三十億人が水のために生活を脅かされています。この水を通して世界の人々に水の大切さを発信し、今、世界の各地で起こっている水をめぐる争いをできる限りおさめると同時に、水への深い信仰にも似た水の偉大な力を来訪者に水危機や水争いにならないように水の大切さを知ってもらいたいと言っております。だから、水を単なるビジネス化するのではなくて、一杯飲んだそのありがたさを真剣に考えてもらうための発信をしていこうと話し合いをしております。この考え方は、私が三年前の二月議会で提案をいたしました「県民の飲み水を守り、全国初の危機管理条例を」ということに沿った同じ考え方だと思いますが、三年を経過し、地域でもこうした取り組みが始まってきているのですが、知事、いかがでしょうか。
 私自身も、この提案後、県民とともに開いたわかやま水フォーラムを毎年開き、三回の県民の意識啓発を重ねてきました。また、子供からお年寄りまで水の大切さを知ってもらうための漫画を発行し啓発をしたり、平成十五年三月には大阪で開かれた第三回世界水フォーラムでパネリストとして発表したり、平成十四年十一月には地元熊野古道沿いで行政と民間を巻き込んだ熊野水フォーラムを開催実現してきました。さらに、日本とか世界の水事情の先進地を調査研究してまいりました。こうした実践をしてくる中で、条例化をしていくべきだとの確信をさらに深めました。その内容は、皆さん方に配付をしていますのでごらんいただきたいと思います。
 しかし、残念ながら県当局は、いまだに条例化をする動きがございません。聞くところによりますと、平成十五年三月に和歌山社会経済研究所の地下水検討報告書を県の方からいただいたものがありますが、それによると和歌山県の水はピンチではないと非常に楽観的に報告をされておりますが、この報告をもって県はよいのか、私は疑問です。ほとんどのマスコミは、二十一世紀は水危機に遭遇する大変な時代だと言っています。その中心は水だと言っています。昨年のスマトラ沖の大地震津波で二十万人の人々が亡くなりましたが、現地ではやはり最初に必要なものは飲み水でありました。水が汚いということでいろんな病気が蔓延しているとも言われています。
 私の地元では、水のことで危機感を持っている人たちがいます。ちょうど先ほど渡しました資料の中に富田川の瀬切れの写真の資料もございます。御参照ください。また、ほかのところでは、水は公のものとして既に条例を持っているところが実はございました。この条例のおかげでかなりの水の被害が救われたと聞いています。熊本県や神奈川県の秦野市など、私は実際調査をしてまいりました。なぜ違うのか。県庁の中の機構、危機のシステムが生産第一、効率主義という経済浮揚の名残がいまだにあって、これからの新しい水の問題に対処する、そういった適切な組織がつくられていません。熊本県では、平成四年にいろいろ議論をしながら環境部というところに統一をされております。我が和歌山県では、いまだに企業優先を唱えています。企画部がやっているところから見ても、私はおかしいと思います。知事の考え方はどうでしょうか。
 水を、さらに自治体の財政支援をするという水の涵養のための協力金や基金を条例化したり、水を有効に使うという試みを秦野市や熊本県ではやっています。地下水の採取制限や企業の地下水の循環率も八三%までに達しております。水を守らなければ企業活動をできないという、そういった意識改革を実はやっておるんです。そうでなければその企業は支援をされないということです。例えば熊本県では、進出をしてきていますサントリーなどの企業は、条例を通じて水の理解を求めて、企業も積極的にこの趣旨にこたえていくことがこれからの企業のあり方だと認識をしております。このように、県民の飲み水を守るためにきめ細かな条例をつくっています。
 幸い、和歌山県は世界遺産登録地になりまして、世界遺産を守るということと水を守るということは表裏一体となっているのであります。和歌山県も水が豊富だと言われていますが、私が全国を調査したところ、水が豊富なところほど水を守っていくという意識が高いのであります。熊本県などは、この条例をつくるとき、裁判をされても構わないという行政決断があったそうです。つまり、リーダーである政治家、行政の判断が大きなかぎを握っていると思います。そうした意味においても早急に地下水の存在量調査をまず行ってもらい、実態把握をして、そして将来予測をし、総合的な条例づくりをされたいと考えますが、知事、いかがでしょうか。
 ここで最後の質問に入りますが、県は環境対策に力点を入れて取り組んでいます。その中で、県は環境製品として県のリサイクル認定をしています。これは何のためにしているのでしょうか。失礼だけど、何のために認定するのでしょうか。今までの認定はどれくらいあるのでしょうか。それが認定をされれば、つくった業者にとって何が得になるのでしょうか。お隣の三重県では、私自身調査をしましたが、率先をして使っています。実は昨日の山下大輔議員の質問と重複するとこもあると思いますけれども、なるべくそこはもう避けながら。
 三重県の場合は、既に利用の促進条例をまずつくっております。また、リサイクル認定商品の取り扱いについて、県庁庁内部局に公共事業の部署の管理責任者の情報窓口を置いており、概要、見積もりをその担当窓口に送れば周知をされるシステムをつくっております。また、市町村長にも協力体制の通知をしております。工事設計書のチェックリストもつくられており、認定製品の単価は具体的に決めております。さらに、特記仕様書への記載も義務づけております。こうしたことから、平成十五年は七十製品の認定中四十製品を利用して、県事業挙げて約七千九百万円となっており、平成十六年度は約三億円ぐらいになると聞いております。
 そこで、和歌山県でも、市町村も含めて公共事業において認定リサイクル製品を積極的に使っていくにはどうすればいいのか、県土整備部長にお考えをお伺いしたいと思います。
 また、認定をされたら市町村行政に認定の一覧表を送って文書で要請をしていますけども、そのときになぜ「優先して使え」と言えないのでしょうか。いいことに協力することは一企業に肩入れしてもいいと私は思いますが、いかがでしょうか。そうした条例をつくり、具体的に使えるようにすべきだと考えますが、いかがでしょうか。環境生活部長にお伺いします。
 そして、使用実績が上がる環境を良好にするために県が音頭をとってみてはどうでしょうか。例えば、二〇〇八年に世界遺産センターの計画がありますが、これらの認定推薦品を使ってつくるということを提案したいと思いますが、どうでしょうか。企画部長にお伺いします。
 県は、環境をよくするため、県民や業者に対して実行するための励みというのを与えなければならないと私は思います。
 以上、時間も来ましたから、世界遺産に次いで地球温暖化防止、水・環境も日本のリーダー県を目指すことについて、四点の質問をしました。当局の答弁を求めて質問を終わります。御清聴、ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、世界遺産の登録がいろんなところへ波及してきて、そしてまた海外からも世界遺産関連の展覧会をデンマークで開きたいというふうなうれしい手紙が寄せられているというお話でございまして、県の方としましても、こういうふうないろいろな自発的な活動に対して可能な限り支援をしていきたいと、このように考えております。
 それから、第二番目の薬草、そしてまた漢方というふうなもの、和歌山県の中でこれをいろんな面で生かしていこうと、そしてまた起業化していこうというふうな、これもまた非常にうれしい動きですけども、そういうふうなものがあること、そしてまた歴史的にもいろいろ言われている天台烏薬の健康への有用性ということを調べて、これをまた活性化に使っていこうというふうな動きがあること、非常にすばらしいことだというふうに思っております。
 実は和歌山県には川辺町に国立薬草試験場というのがあって、この存続問題が二、三年前に非常に問題になって、そのときに大々的にこれを活用しようということでちょっと一年ほどいろいろな動きをしたんだけども、その後また、どうも僕のところへいろんなことが耳に入らなくなっているというような感じもあるんで、またこういうところとの連携を図りながら、それからもう一つは来年度から熊野健康村構想、すなわち世界遺産登録をただ単にそれに終わらせることなく、この豊かな自然とか森林とかいうふうなものが現代人に健康を回復させる源になるというふうなことから、いろんな形での起業化であるとか地域活力の創生ということを行っていこうということをやって、今度、今週またシンポジウムをやるんですけども、それの中で薬草とか薬草をもとにした健康回復ということはもう本当に僕は大きな位置を占めてくると思うんで、そういうふうな地元の人たちの活動とこういうものが有機的に連携できるよう県の方でも十分検討していきたいと、このように思っております。
 それから、自然エネルギーの活用ということです。
 もう今、化石燃料からクリーンエネルギー、自然エネルギーへの切りかえということは非常に世界的に大事なことになってきていて、和歌山ではそんなには進んでいませんけども、私自身もこの問題の重要性は認識していて、バイオマス発電とかいろんなことを推進してきたんですけれども、なかなか思うに任せないところがあると思っていたところ、高原地区で太陽光とか風力発電を導入して、さらにはもう売電まで行っているというふうな非常に力強いお話を聞いたわけで。どんな形で県がこれにかかわっていけばいいのか、なかなか難しい問題もあると思うんですけども、後ろ向きではなくて前向きに対応をしていきたい、このように考えております。
 さらに、古座の重畳山で風力発電をNPO法人等の方が進めておられるというふうなことです。この問題については、きょうの新聞に関電の風力発電のやつがどうのこうのというのが出てましたけど、なかなか自然景観の保全と環境に優しいエネルギーの両立ということ、非常に難しい問題ではあるんですけども、これはもう両立させていかなければならない話ですので、県の方として本当にいろいろなきめ細かな支援が必要だと思います。いろんなエネルギーがありますので、そういうふうなことについて同じく十分研究をしていきたいというふうに思っております。
 次に、家庭の温暖化防止です。
 これは、議員の御質問が前にあって、それも受けて実践マニュアルをつくってボランティアの方々が家庭を回って、こういうふうな形で家庭の省エネを行いましょうということをやっていただいた結果、非常に効果があらわれてきております。そして、さらにそこから先、これをボランティアじゃなくて雇用の場にしていく、そしてまたそのやったことによって上がったお金を幾らか皆さんから環境納得基金ということで集めてと。これはもう本当に、この京都議定書の問題が出ている中で、僕は近々にそういうふうなことが全国的にも一つの大きな動きになってくると思います。ただ、今、和歌山県内で納得してくれるかどうかということになると、非常に心もとない感じがするんで。いずれにせよ、このマニュアルの普及と、それからボランティアの推進員の方々の努力によって、もう少しこういうふうなことの全県下的な広がりを進めていって、その中から次の新しい展開というものを考えていきたいなというふうに考えております。
 さらに、環境税の問題については、私はマニフェストの中でも新しい形の環境税というものを和歌山でもつくっていきたいというふうなことを言っておりますので、これはもうマニフェストに書いてあることですから、これは議会ともよく相談しながら進めていきたいなというふうに考えているところです。
 最後に水への取り組みの問題ですけれども、この問題、今質問をお聞きしていて三年間余り進んでないと。これも非常に反省するところなんですけれども、それだけなかなか難しい問題ではあるんですけども、和歌山県の場合、この三年の間に高野・熊野が世界遺産に登録されて非常に環境を重視している県だというふうなイメージが定着しつつあるという大きな変化があります。そういうふうな中で、どういうふうなことを条例化していけばいいのか、先進県の例なんかも十分見きわめながら、これはもう後ろ向きじゃなくて前向きに僕は本当に考えていきたいと思います。そしてまたとりあえず、この間水が出たところがあって皆が喜んでいるという、瀬切れのところですか、というような話がありましたけども、和歌山県内の水、水と言っても実態がよくわからないんじゃ仕方がないんで、そういうふうな実態把握をまず行っていきたいと、このように思っております。
○議長(小川 武君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 世界遺産に関しての二項目についてお答え申し上げます。
 まず、外国語による語り部についてでございますが、市町村を通じ現状を把握するとともに、現地での研修会等を実施してきたところでございます。
 近年、外国からの観光客が増加の傾向にあることから、議員御指摘のように、関連団体等も含め対象範囲を広げ、人材の把握に努め、研修、情報提供を実施し、外国語による語り部の充実を図ってまいります。
 次に、全国向け世界遺産PR情報誌の発行と支援についてでありますが、和歌山市を初めとする市町村等との連携を密にし、紀伊山地の霊場と参詣道の魅力を継続的に情報発信していくことは大変重要であると認識しております。さらに県民の皆さんの広い参画のもと実施すれば多彩な情報発信が可能になり、一層効果が上がるものと考えております。
 県といたしましては、素材の提供や配布ルートなどの分野で協力を検討していきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) ストップ温暖化家庭の省エネ事業についてお答えいたします。
 家庭における温暖化対策につきましては、平成十五年度に家庭でできる温暖化対策マニュアルを策定いたしましたが、今年度は二十人の普及調査員によりマニュアルの普及を図るとともに、六百のモニター家庭でマニュアルの検証を行っているところでございます。
 今年度末にまとめられる取り組み効果等の調査分析結果、温暖化対策に関する意識調査などの調査結果を踏まえまして、来年度以降はこのマニュアル等に基づきエコライフの実践を促す地球温暖化防止活動推進員の活用を図り、家庭での温暖化を本格的に推進することといたしております。
 この推進員の活動はボランティアでお願いすることとしており、先月、一期生約六十名の養成を終了したところであり、来年度以降も増員を図ってまいりたいと考えてございます。
 家庭における省エネを進めるため、指導や普及啓発を行う推進員や指導ヘルパーを雇用するという観点での御提案でございますが、雇用の確保やこうした活動で一定の報酬を得るという視点も大事でございまして、今後、その財源確保も含め、検討・研究してまいりたいと考えております。
 次にリサイクル認定製品の積極使用の推進についてでございますが、リサイクル製品の利用促進につきましては、平成十五年四月に和歌山県リサイクル製品利用推進要綱を定め、これまで百七十六製品を認定してきたところでございます。認定製品はグリーン購入方針に組み込み、県が率先して購入することとしております。
 また、昨年末には改めて知事名で各部長、振興局長等に優先利用に努めるよう通達し、また市町村長にも製品の紹介を行うとともに同様のお願いをしたところでございます。
 本制度の発足以来二年が経過し、制度としては定着し、認定製品数もふえてきたところであり、今後は認定製品の一層の利用拡大を図ることが課題であると認識しております。このことから、十七年度には有識者の御提言をいただき、利用拡大について検討することとしております。その中で、議員御提言の条例化につきましても、現制度を一歩進める方向で検討してまいります。
 以上でございます。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) リサイクル認定商品の積極的使用についてでございます。
 公共事業における認定リサイクル製品の積極的使用の推進につきましては、昨日、山下大輔議員にもお答え申し上げましたように、例えばチェックリストの導入や請負業者さんがより積極的に使用するような仕組みの導入など、その活用策の検討を進めてまいります。また、市町村へも積極的に活用するよう必要な要請や助言を行うなど、リサイクル製品や県産品の活用に努めてまいります。
○議長(小川 武君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 議員御提言のとおり、リサイクルをどう世界遺産に生かしていくかを考えることは重要なことと思っております。
 今後、和歌山県世界遺産センターのみならず、古道の休息所やトイレなど施設整備の中でも、例えば紀州間伐材を用いるなど、リサイクル製品の活用について取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○議長(小川 武君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 地球温暖化防止との関連で、環境教育についてお答えします。
 県立学校のエコスクールの取り組みは、学校生活で生徒自身が節電や節水などの具体的な活動を展開し、その結果生み出された経費を当該の学校の緑化や備品購入に充てることとしております。全国にも例を見ないこのような仕組みを取り入れることによって環境保全に向けた活動とその成果が目に見えるものとなり、生徒の意欲や関心が高まり、日ごろの主体的で自覚ある行動につながっていると認識しております。一部は家庭での考え方、行動にもつながっているというふうに聞いております。学校の環境教育全体に与えるインセンティブも相当に大きいものがあったと考えております。
 小中学校においても、例えば野上町では夢づくり事業として、光熱水費の節減によって捻出した経費を次年度の学校予算に反映する仕組みがとられております。このような事例を参考にして、多くの市町村で創意工夫した取り組みが行われるよう指導してまいります。
 また、地球温暖化防止等にかかわる学習については、これまで理科、公民科などの関連教科や総合的な学習の時間、さらには「環境と人間」など学校が独自に設置する科目の中で展開してきているところであり、今後ともこれらの取り組みの充実に努めるとともに、議員御提言の趣旨を生かした科目や授業設定ができないか、研究をしてまいります。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十五番玉置公良君。
○玉置公良君 御答弁、ありがとうございました。
 まず、世界遺産関連の薬草や漢方、また自然エネルギー事業の推進や、さらにはエコスクールを県下の小中学校へ広げていくといったこと、さらにリサイクル認定製品の積極的活用など、条例づくりも含めて大変前向いた答弁をいただきました。きょうは、ここに傍聴に来てくれている方々も、関係者も多いんでありまして、感謝をしておると思います。
 このことについては感謝をしておきたいんですけども、そこで、二つだけ要望と再質問をしたいと思います。
 一つは、水の問題であります。
 これは今、知事さんからも積極的な答弁をいただきました。私も、ぜひともやっぱり早くやる必要があると思っております。例えば、片方で緑の雇用事業とか、さらには漁民が森に植樹をするとか、また企業の森とか、いわゆる水資源の涵養にかなり大きな力を入れてやっていただいておると。片方では地下水は野放しなんですよ。これは、とるなということは私は言いませんけども、それ相応の企業の協力を熊本とか秦野市では求めているわけですよ。ソニーとオムロンとか、熊本で言えばサントリーらもそうであります。そういったことを、片方のことをもう一つ力を入れてやる。そういったことの条例化も含めてお願いをしたい。
 さらに、地震とか災害防災対策をやっておりますんで、そういう危機管理の面から言うても、やっぱり飲み水を確保していくということは大変大事だと思っておりますんで、ぜひとも組織を見直しながらプロジェクトをつくって世界遺産地にふさわしい水条例をつくっていただきたいと思っております。これは要望です。
 一つだけ質問であります、再質問。それは、ストップ温暖化の家庭の省エネ事業での雇用の推進についてであります。
 今、知事さんも、さらには環境生活部長も、残念ながら、このいわゆる調査員とか指導員というのは「ボランティア」という言葉を聞きました、私。これは一遍確認というんですか、三年前に僕も提案さしてもらったときに、こういう地球温暖化防止のためによくしていこう、なかなか「やれやれ」と言うても進まんから、そこに対して指導できるようなヘルパーさん的なものを新しい和歌山方式の仕事としてつくっていこうではないかと。これは、和歌山大学生とかのいろんな意識調査をしても、もっと社会に貢献できるような、お金の金額が少なかってもそういう仕事があればやっていきたいという要望も含めて提案いたしました。そして、それについて知事はこたえてくれました。例えば、この答弁の中で、森林でCO2 を吸収していくことと県民一人一人がCO2 を削減していく運動というのは両輪でやっていくという必要性を言ってくれました。さらに、そういう価値観を変えてきている若者の就職場になってくることは大いに考えられるので、県としてもその点にアンテナを高くして、常に先頭を走れるような形で問題に当たっていきたいと。そしてなおかつ、水とは違いまして、これについては二年間のそういうモデル事業をやってくれました。その評価が実は聞けていません。私は、きょうはお見えの方々に聞きますと、こういうことに少ない金額であってもきちっとした報酬を支払ってもらって和歌山方式の雇用というのを、促進というのをつくっていただければありがたいというのがほとんどの声でありますよ。それを何か、担当部署で「ボランティアでええんだ」というようなことについては、これはもう物すごく今まで議論をしてきたこと、そして実践してきたことと外れていますから、もう一度知事にそこらについて積極的に取り組んでいただきたい。そして、大いに夢のあるようなそういった雇用促進をつくっていきたいと思いますんで、どうかひとつよろしくお願いしたい。
○議長(小川 武君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) たびたびの質問に対して長いこと答えてなかったということをおわび申し上げたわけですけども、このボランティアとフルタイムワーカーとしてそのことで生活していくという間には、僕はいろんな段階があると思うんです。それで、この手の仕事を完全なボランティアでやってもらうということは、ある程度これがシテスマティックに動くようになってくると僕は難しいと思います。ただ逆に、今の日本の状況でこれだけで生活していくというような雇用の場というところまで行くのも、またこれちょっと極端な話で、この間の辺をどのあたりでとっていくのがこういうシステムがうまく無理なく続いていくようなことなのかということについてこれから。だから、ボランティアと言ったのは、もう何でもただで、その人たちの奉仕の精神でやってもらおうというふうなことではないということで御理解いただきたいと思います。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 三十五番玉置公良君。
○玉置公良君 今の知事さんのその答弁でよくわかりました。ただ、やっぱりこの仕事というのは、少ない金額であっても地球が続く限り永久に続く仕事なんですよ、これから。だから、そういった意味では大変先見性のある仕事になってくると思います。だから、そこらについて、今は緑の雇用事業とかで先鞭をつけてもらっておりますけども、ただ緊急雇用対策でお金がなくなったと、そういうだけじゃなしに、県単で二千万でも三千万でも結構であります、そういった報酬を支払って指導がしていけるという、新しい雇用を生み出していくと、そういう視点に立ってよろしくお願いをいたしまして、要望といたします。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二番尾崎太郎君。
  〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
 経済警察委員長に就任いたしましてから、何度か警察学校の入学式や卒業式に参列をいたしました。議長とも御一緒いたしましたが、若者のりりしさ、すがすがしさ、式典の厳かさに圧倒されつつ感動し、いつも帰りの議長車の中で現在の学校教育に欠けているものについて話し合ったものであります。実際、あのような裂帛の気合いを込めた「君が代」の斉唱は聞いたことがなかったですし、鍛えられた若い肉体を包む制服や訓練された動作の様式がいかに若者を美しく見せるかということを再認識したわけであります。なぜ、警察学校は短期間にこれほどの教育効果を上げることができるのか。無論、すぐれた教育プログラムや優秀な教官がいてのことでしょうが、私は警察官という職の特殊性にもその一因があるのではないかと考えております。
 警察官は、時として生の暴力に対峙しなければならない職業であります。「言葉の暴力」、「ペンの暴力」などと言いますが、比喩ではなく、身体的な危害を加える生の暴力に立ち向かうことは、まことに容易ならざることであります。技術的なことはもちろん、確固たる使命感、胆力を養成しなければできることではありません。いささか逆説的になりますが、生命の危機の蓋然性こそが警察官をして立派たらしめているのではないでしょうか。
 「若者を教育するには徴兵へ行かすのが一番だ」などと言われていたことがあります。何も現代の日本で「徴兵制を復活させろ」と言っているのではなく、昔日の我が国の若者は、徴兵に行くことによって確かに見事に鍛えられたのでしょう。当時の人々は、ちょうど私が警察学校で感じたことを徴兵に行った若者に感じたに違いありません。軍においては危機や危機の想定は日常的ですらあるわけですから、その教育効果はすごいものがあったでしょう。
 誤解がないように申し添えておきますが、私は戦争や犯罪を肯定するものでは決してありません。私は、生命が危機に直面するとき、死を見詰めなければならないとき、かえって命が輝くことがあるという事実を申し上げているのです。
 前回の質問でも触れましたが、現代の日本は、大東亜戦争の敗戦により戦前と戦後では我が国固有の慣習、伝統、歴史が分断されたために、よるべき道徳律を見出せておりません。今日の道徳的退廃には、さすがに国民の中にも「これではいけない」との機運が生まれつつあり、最近の武士道ブームなどにつながっているように思います。
 有名な新渡戸稲造の武士道は、当時、新渡戸が、キリスト教のごとき宗教のない日本ではどのようにして子弟に道徳教育を施すのかとの質問に対する答えとして書かれたものです。武士道によって練り上げられたかつての日本人のすごさは、例えば人種差別がごく当たり前のことであった時代の明治四年から一年九カ月をかけて欧米十四カ国を視察した岩倉使節団が、その毅然とした態度、礼儀作法で行く先々の人々の尊敬を集めたことでもわかります。また、この一行には女性も含まれておりましたが、その立ち居振る舞いは称賛の的でありました。当時、世界といえばそれは欧米のことであったのですから、極東の島国で静かに熟成されてきた日本文化は十分世界に通用するものだったと言えるでしょう。
 山本常朝の「葉隠」に「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という有名なフレーズがあるように、武士は死を見詰めることによりおのが心身を錬磨しました。しかし、意外なようですが、武士道は鎌倉時代に萌芽は見られるものの、天下太平の世に練られたものであります。江戸期も島原の乱を過ぎますと、ほとんど戦乱はありません。軍人というより官僚に近い存在となった武士たちは、世界史にもまれな平和の中、戦場の武器としてはほとんど意味をなさなくなっていた刀を武士の魂とし、刀を通して常に死を見詰め、おのれをむなしゅうすることができる道を完成させていったのです。武士たちが完全に既得権をなくすことになるにもかかわらず、大政奉還も廃藩置県もさしたる混乱もなく行われた世界史上の奇跡である明治維新は、武士道なくしてはあり得なかったでありましょう。
 戦後、我が国は、六十年間、何とか平和にやってくることができました。僥倖と言ってよいかと思います。しかし、平和のうちには退廃が胚胎するものであるのは世界史の教えるところであります。この平和、繁栄の毒をいかにして中和していくかにその文明の行く末がかかっていると言ってよいでしょう。国のために倒れた英霊を祭るといういかなる国家、共同体にでもある儀式にまで外国からの干渉を許す我が国の現状を思うとき、生と死のはざまにある神秘的なるものに触れずして我々は果たして日本という国を、文明を後世へとつなげていくことができるのか、暗たんたる思いがいたします。
 靖国については今後また論じる機会もあろうかとは思いますが、我々の先人がつくり上げた世界に誇り得る精神文化である武士道を見直してみることは、平和である現代でこそ意味のあることでありましょう。
 ごらんになった方も多いかと思いますが、少し前に公開された「ラストサムライ」という映画は、我々日本人が見ればややおかしいところがあるにしても、かつての日本人はあれほどまでに美しかったのだということを逆に欧米社会から教えられるものでありました。我々はやはり、殉職ということがあり得る職業、警察官や自衛官、消防士といった方々については感謝と尊敬の念を持つべきであり、ゆめ職務だから当然だなどとは思ってはならないと思います。それがあればこそ、彼らは時に生命の危険を顧みず任務を遂行できるのではないでしょうか。私は、警察学校の入学式や卒業式に武士道の片りんを見たのではないかと思っております。
 そこで、警察本部長にお尋ねします。
 警察学校での警察官の養成はどのような理念に基づいて行われていますか。また、具体的にどのようなシステムで行われているのでしょうか。
 さて、内政の不干渉は、およそ近代国家の外交の大原則であり、国際的なコンセンサスとなっていることは言うまでもありませんが、自国の子弟の教育という、まさに内政そのものに中国や韓国が干渉する余地を根拠づける条項が存在していることを御存じでしょうか。
 「近隣諸国条項」と呼ばれるこの条項は、実に不可解な経緯で制定されました。昭和五十七年六月二十六日に日本のマスコミが起こした教科書誤報事件に端を発します。
 歴史教科書の検定で文部省が「侵略」を「進出」に書きかえさせたという虚偽のマスコミ報道がなされました。中国政府は、この時点では何ら反応せず、「人民日報」も四日おくれの六月三十日に小さく報じただけでありました。中国政府が本格的に日本批判を開始したのは約一カ月後のことであり、七月二十六日、中国外務省の第一アジア局長が教科書検定について申し入れを行いました。このこと自体、中国政府の我が国に対する内政干渉とも言えるものであり、我が国は中国に厳重な抗議をすべきでありました。
 一方、昭和五十七年七月三十日、参議院文教委員会で小川文部大臣は、検定で「侵略」を「進出」に書きかえさせた事実はなかったことを明らかにしています。にもかかわらず、八月二十六日、鈴木内閣の宮沢官房長官は中国・韓国両国に謝罪し、「政府の責任において(教科書の記述を)是正する」、「検定基準を改め、前記の趣旨(アジアの近隣諸国との友好、親善)が十分実現するよう配慮する」との宮沢官房長官談話を発表しました。さすがに、当時の自民党文教部会長だった石橋一弥先生は文教族の重鎮である三塚博先生とともに激しく抗議しており、石橋先生は「「是正」とは何ですか。今までの検定が悪かったと認めるようなものではないか」と迫っております。しかし残念なことに、この談話がもととなり検定基準が見直され、昭和五十七年十一月、いわゆる近隣諸国条項が追加されたわけであります。すなわち、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること」というものであります。これだけですと、よく意味がわかったようなわからないような文言ですが、これをつくった官僚の言いわけ的な解釈をするならば、我が国の教科書がアジア諸国をおとしめることがないように戒めたものぐらいの意味でしょうか。しかし実は、文部省が近隣諸国条項の具体的適用のためにつくった「具体的事項についての検定方針(案)」というものがあり、これは要するに、侵略、南京事件、土地調査事業、三・一独立運動、神社参拝、日本語使用、創氏改名、強制連行、東南アジアへの進出、沖縄戦など、十一項目について検定意見を付さないというものであります。
 では、近隣諸国条項ができる以前と以後では教科書検定のあり方がどのように変質したのでしょうか。
 近隣諸国条項以前の検定のあり方は、中国、韓国の検定批判に対して文部省が昭和五十七年八月九日付で発表した見解が参考になると思います。侵略という記述に対する検定姿勢については、「歴史教育では、史実に立脚して歴史をできるだけ客観的に考察し、判断しようとする態度を育てることが重要であることをかんがみ、教科書検定においては、できるだけ客観的な表現で一貫した記述を行うよう求めている。検定前の教科書の中には、他の戦争に関する記述においては「進出」「侵攻」などの言葉を用いながら、日中戦争の記述では「侵略」という言葉を用いているものがあったので、検定において「進出」「侵攻」などの、より客観的な表現を用いるなど、表現を再考してはどうかとの意見(改善意見)を付した」というものであり、南京事件では、「南京事件については、事実の状況を伝聞ではなく直接的に示す史料に乏しく、特に死傷者の数などは明らかになっていない。したがって検定では、そのような不確実な数値を教科書で断定的に記述することは避けるよう求めている」とするものでした。強制連行についてはどうでしょうか。文部省は、戦時中の朝鮮人労働者の内地移入が時期によって自由募集、官あっせん、国民徴用令と形態が異なるとの理由を挙げ、「これらを一括して「強制連行」と表現することは適当でない」「事実を正確に表現するという観点から意見を付している」と説明しています。
 では、近隣諸国条項以降の検定方針の変質によって教科書の記述は実際にどのように変わっていったのか。
 小山常実氏の「歴史教科書の歴史」によりますと、近隣諸国条項以降の教科書とそれ以前の教科書との最大の違いは満州事変と日華事変に関する記述であり、検定のたびに「侵略」と記述する教科書が確実にふえていき、昭和六十三年度検定までには全八社の教科書が両事変を「侵略」と記述することになります。また、南京事件の記述では、以前は南京事件を記述した教科書は五社だけで、いずれも犠牲者数は記していませんでした。しかし、五十七年度の検定では七社が南京事件を記述するようになり、犠牲者数も「二十万人以上」、「三十万人以上」とするものや、「少なくとも十万人を超える」と記述されるようになり、六十年度検定では六社が犠牲者数を記し、少ない数字を挙げる教科書でも「十数万」としています。さらに、「虐殺」、「南京虐殺事件」、「南京大虐殺」という言葉が使われ始めます。また、朝鮮人強制連行論が登場し、例えばある会社の教科書では、五十四年度の検定では「多数の朝鮮人が日本内地につれてこられ、ひどい条件のもとで鉱山や土木工事などに働かされました」とあったのが、六十年度の検定となると、「約七十万人の朝鮮の人々が強制的に日本内地に連行され」に変化しております。そして、ついに「侵略」という言葉は日清戦争、日露戦争にまで使われ出していきます。「日本の大陸侵略」、「近代日本と中国・朝鮮侵略」、「帝国主義の世界と日本のアジア侵略」などの見出しで日清、日露両戦争について記しています。ここまで来ると、これはもうあからさまな反日教育としか言いようがありません。また、平成七年度検定の教科書には「従軍慰安婦として強制的に戦場に送り出された若い女性もいた」といった、いわゆる従軍慰安婦の記述が全社一斉にあらわれました。
 これほどの惨禍を我が国の教科書にもたらすことになった近隣諸国条項が誤報に基づくものだったとは泣くに泣けないことでありますが、実はいわゆる従軍慰安婦もまた、事実に反する報道がその始まりでありました。
 平成十四年一月十一日の某新聞の一面に「日本軍が慰安婦を強制連行した」という内容の記事が載りました。宮沢総理は、この記事の真偽を確かめることもなく、韓国訪問に際して韓国大統領に、たった一回の会談中、慰安婦について実に六回も謝罪しています。東京基督教大学助教授であった西岡力氏は、宮沢総理の謝罪の理由について外務省北東アジア課に尋ねています。いわく、「慰問婦問題というのは、貧困のために売春婦にさせられた人たちの問題なのか、あるいは、国家意志、権力によって強制的に慰安婦にさせられたことが問題なのか、宮沢総理はどっちを謝ったんだ。もしも前者だとすれば、吉原に売られた女性たちになぜ謝らないんだ」。これに対する外務省北東アジア課担当官の回答は、「それはこれから調査する」という驚くべきものでありました。まず謝罪ありきだったのです。そして、翌年平成五年八月四日の内閣総辞職前日、河野官房長官は、何ら根拠がなかったにもかかわらず、日本軍の慰安婦強制連行を認めてしまったのです。後に、当時の官房副長官であった石原氏はジャーナリストの櫻井よしこさんとのインタビューで、この河野談話が韓国との外交上の取引の結果であったこと、また当時幾ら公文書を調べても強制連行の証拠は全くなかったことを明らかにしています。曲がりなりにも国家の命運を背負い、奮闘した我が軍の名誉を著しく毀損するばかりか、近隣諸国条項のときと同じく、誤報、虚報による根も葉もない話を盾にとった外国の不当な要求に屈してしまうパターンができてしまったことは、痛恨のきわみであります。近い将来、例えば領土問題などで同じような手法が用いられ、我が国がまたもや無用の譲歩をするのではないかと深く懸念するものであります。さすがに現在使われているほとんどの中学歴史教科書からはいわゆる従軍慰安婦は削除されたようですが、高校教科書では依然として慰安婦に関する強制連行説などが取り上げられているようです。
 さて、実は教科書検定基準には「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」、「著作物、史料などを引用する場合には、評価の定まったものや信頼度の高いものを用いていること」といった至極真っ当な条項があります。これらの条項に照らすならば、南京事件は教科書に記載するのは妥当でありましょうか。
 南京事件を論ずるとき必ず取り上げられる有名な書物があります。日本軍の南京占領当時、現地に駐在していたマンチェスター・ガーディアン特派員ティンパーリーの「What War Means:the Japanese Terror in China」でありますが、これは一九四六年の南京の裁判で判決書の文面にも特筆されたものであります。しかし、立命館大学文学部の北村稔教授の著書「「南京事件」の探究」から本文のまま引用いたしますと、「ジャーナリストという第三者的立場から日本軍の南京占領を告発したと思われていたティンパーリーの著作が、実際には国民党中央宣伝部の意を体して発行されていた」のであり、また「ティンパーリーの著作と同様に、第三者の欧米人による中立的立場からの日本軍告発の書物であると考えられてきたスマイスのWar damage in the Nanking area,December,1937 to March,1938.Urban and rural surveys,Shanghai,Mercury Press,1938も、ティンパーリーを経由した国民党国際宣伝処の要請と資金提供のもとで書かれたことが明らかになった」とあるのですが。つまりは、両著作ともプロパガンダのたぐいであったのです。また、スマイスは南京大学の教授であった男ですが、自分の署名入りの文章では被害は非常に少なくなっているにもかかわらず、匿名では極めてひどい残虐行為があったように書いております。北村教授の研究は、南京で大虐殺があったという認識がどのような経緯で出現したかを順序立てて確認したものであり、南京事件の研究に一石を投じるものでありましょう。
 もう一つ、ごく最近出版された東中野修道、小林進、福永慎次郎、各氏の共著による「南京事件「証拠写真」を検証する」という本があります。この本は南京事件の証拠写真とされる百四十三枚を総括的に検証したものであり、証拠として通用する写真は一枚もなかったと結論づけています。私も一読して大変感銘を受けました。例えば、私もよく目にした、軍人が刀を構え、お坊さんのような人を打ち首にしようとしている有名な写真がありますが、この写真を見たとき何とも言えぬ違和感があったのですが、私の抱いていた違和感の正体をこの本は見事に暴いてくれました。ぜひとも一読することをお勧めしておきます。
 また、我が軍の南京突入時、あろうことか、中国軍のかなりの軍人が軍服を脱ぎ、市民に紛れ込んでしまうという考えられない行動に出ました。これらの兵は、ハーグ陸戦法規やジュネーブ傷病者条約に言う保護されるべき交戦者でも法的資格を満たした捕虜でもない、極めて危険な兵隊であるので、残酷なようでも処刑されても国際法上は合法であり、実際に処刑されていますが、虐殺のたぐいでは断じてありません。
 日本海軍の96式陸上攻撃機が南京を爆撃したときには市民を何百人も殺したと言ってアメリカは大騒ぎしておりますが、蒋介石はこのことを国際連盟に訴えております。しかるに南京事件と称される事件が起きたとされる当時、蒋介石は国際連盟にこの大虐殺を訴えてはおりません。南京にはアメリカの外交官を初め世界各国の人々がいましたが、国として正式に日本に抗議した国はありませんでした。
 以上のようなことから、私は一九三七年の十二月から翌年一月にかけての南京において、日本軍が組織的な大量虐殺を行ったとは到底信じられないのです。また、「侵略」という言葉は、「広辞苑」によりますと「他国に侵入してその領土や財物を奪いとること。」とありますが、日本は大陸に略奪しに出ていったのでしょうか。
 北清事変での出兵以来、日本軍は軍規厳正をもって知られ、その行動は多くの外国人の称賛するところでありました。おおむね日本が大陸へ派兵したのは、さまざまな勢力が群雄割拠する不安定な情勢の大陸で、日本居留民を守るためでありました。日華事変については、その発端となった盧溝橋事件は日本軍が仕掛けたものでないことは確かであります。
 いずれにせよ、物言わぬ先人たちのその時代のパラダイムの中での懸命の営みを、人であるがゆえに愚かな行為もあったにせよ、今に生きる我々がすべてを根本的に否定してしまうのはいかがなものでありましょうか。しかも、それが外国からの圧力によるものだとするならば、何とも情けない話であります。自国の歴史は、それを聞く子供たちが目を輝かすようにみずから堂々と語らなければなりません。我が国の歴史教科書を自虐的とする一因となった近隣諸国条項について、教育長の御所見をお伺いいたします。
 次に、三月三日付の産経新聞は、文部科学省は前回の教科書採択の混乱への反省から、中学教科書採択での正常、公正な採択環境確保に向け、制度の改革に乗り出す方針を決めたと報じております。いかに平成十三年度の採択が正常ではなかったかということでありますが、言うまでもなく採択の公正は必ず確保されなければなりません。この点につきまして、本年八月の採択に向けての教育長の意気込みをお聞かせいただきたいと思います。
 また私は、よりよき歴史教科書というのは学習指導要領に示された我が国の歴史に対する愛情を深めることのできる教科書であると考えておりますが、教育長の御見解をお聞かせください。
 次に、前回の質問では中学教科書の採択手続についてただしましたが、今回は高校教科書の採択手続についてお教えください。
 最後に、教育に関心のある方々から非常に好評だと聞いております学校開放週間の実施状況についてお尋ねして、質問といたします。
○議長(小川 武君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育に関する三点の御質問にお答えいたします。
 まず、教科書の作成に当たっては、国際協調の精神は大切にしながらも他国の干渉などに屈することなく、主権国家としての責任と主体性のもとにこれを行うことが重要であると考えております。
 御質問の近隣諸国条項につきましても、こうした基本認識に立って適用すべきであることはもちろん、信頼できる歴史的事象を客観性、公平性等に十分留意して取り扱うことが強く求められると思っております。
 小中学校の教科書採択について、県教育委員会では教科用図書選定審議会を設置し、各採択地区内の市町村教育委員会に対し、検定を経たすべての教科書について、学習指導要領の趣旨及び各教科の目標や内容を踏まえ、十分な調査研究を行うよう指導・助言しているところです。来年度実施される中学校教科用図書採択においても、採択環境が適正に確保され、より一層公正な採択が行われるよう指導してまいります。
 また、県立高等学校の教科書採択は、各学校、生徒の実態等を踏まえて行うことが大切であることから、事務委任規定を設け、教育委員会が定める基本方針と実施要項に基づき、学校長が行うこととしております。各学校では、教諭等を調査員に委任し、専門的な立場から選定に係る資料を作成するとともに、教頭、教諭、保護者等から成る選定委員会を設置して幅広く検討・審議し、校長に推薦するという手続をとって進めております。
 最後に、学校開放週間は、和歌山県内のすべての公立学校が一斉に授業や学校行事等を公開することを通して学校の教育活動に対する保護者や地域の人々の理解と関心を深め、地域ぐるみで児童生徒を育成する機運を高めることを目的として三年前から実施しております。本年度は、去る十一月の第二週を中心に実施し、日ごろの授業の公開や開放講座の開設、「頑張れ母校!先輩が先生」などゲストティーチャーを招いた取り組み等が各学校で行われ、開放期間中の総来校者は十四万五千人を数えました。
 まだ授業の開放の面で不十分な点も見られますので、これを補強しながら、今後とも保護者の方々や地域の皆さんへの学校開放の充実に努めてまいります。
○議長(小川 武君) 警察本部長宮内 勝君。
  〔宮内 勝君、登壇〕
○警察本部長(宮内 勝君) 警察学校の指導理念についてお答えいたします。
 警察学校における新任警察官に対する教養・訓練の理念は、警察官が警察法の精神にのっとり民主警察の本質と警察責務を自覚し、公正・明朗かつ能率的に職務を遂行し得るよう人格を磨き、学術を修め、実力を養うことを目的に実施しております。具体的には、犯人と対峙してもひるむことなく、危険や困難に遭遇しても屈せずに立ち向かう強い精神力と執行力を備え、また人間味豊かな警察官の育成を目指しております。
 次に、警察学校の指導システムについてお答えいたします。
 警察学校の指導システムは、職務執行に必要な基礎法学や犯罪捜査などの基本実務に加え、強靱な体力と旺盛な士気を養うため、柔道・剣道などの術科訓練や警察官としての規律、礼節の根幹となる警察礼式、教練等の訓練を徹底しているところであります。
 また、全寮制のもとで集団訓練を実施し、同期生と寝食をともにする中で互いに切磋琢磨し、人格の陶冶と連帯感の醸成に取り組んでいるところであります。
 こうした訓練に対し入校当初には戸惑いを見せる学生もおりますが、次第に警察官らしいきびきびした行動や体力・気力などが養われてまいっております。引き続き、治安の基盤となる優秀な警察官の育成に努めていく所存であります。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二番尾崎太郎君。
○尾崎太郎君 それぞれに御答弁をいただきました。
 警察官の養成というのは非常に厳しい訓練がそのもとになっているんですけれども、現在の学校教育の中にも、前の質問でも触れましたけれども、厳しさというものを取り入れていく。昨今、文科省の方もようやくゆとり教育の弊害というものに気づき始めまして、これはちょっと見直していかないかんなという機運が生まれてきたことは喜ばしいことでありますけれども、この厳しさとか鍛練というものがやっぱり若者というのをすばらしく鍛えていくんだという現実があるわけですから。まあプロフェッショナルを養成する警察官のシステムをそのまま参考にするというわけにはいきませんけれども、よいところをぜひ学校教育にも取り入れていっていただきたいなと思っております。
 それから、教育長の答弁の中に、「他国の干渉などに屈することなく、主権国家としての責任と主体性のもとに」という大変力強い言葉がありました。本当にそのとおりでありまして、日本の政府はやや腰が引けているところもありますけれども、和歌山県の教育委員会は断固としてこの主権国家としての誇りを忘れることなく、本当に期待したいと思っております。
 ことしは採択の年であります。今の教育長の意気込みがずうっと持続していただけるよう要望いたしまして、質問といたします。ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で尾崎太郎君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時四十一分休憩
     ─────────────────────
  午後一時二分再開
○副議長(向井嘉久藏君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十三番藤井健太郎君。
  〔藤井健太郎君、登壇〕(拍手)
○藤井健太郎君 本日最後の質問者でございますので、ひとつよろしくお願いを申し上げます。
 議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして質問をさせていただきます。
 まず、知事の所信と新年度予算についてお尋ねをいたします。
 新年度予算は、地方六団体と中央省庁の激しいやりとりを経て昨年暮れに合意をされました三位一体改革についての全体像に基づく当初予算となります。合意された内容は、地方自治体側から見ると、決して満足のいく内容ではなかったと思います。地方分権の目指すところは、国の補助事業のフレームではなく、地域の特性に応じた主体的な事業を可能とする権限と税財源の移譲にあったわけですが、改革された中心は、義務教育費や国民健康保険負担金など地方自治体にとっては自主性や裁量性を大きく発揮できる分野ではなく、さらに生活保護や児童扶養手当など義務的経費となる国庫負担金の縮減が予定されていること、国庫補助負担金の廃止・縮減額約四兆円に対して税源移譲はおおむね三兆円規模を目指すとされましたが実際的にはそれ以上の乖離があることや、地方の固有財源でもある地方交付税も縮減を進める方向となっていることなど、決してこれで終わりにしてはならない内容のものとなっています。
 一方、地方交付税の余りにもの削減に対する自治体側の批判もあり、新年度は地方が必要とする一般財源総額は確保するとされました。全国ベースで見ると、税、地方交付税、臨時財政対策債の一般財源額合計は前年度比プラス〇・一%で、昨年大幅削減された水準ではありますが、前年度並みに確保されることとなりました。
 本県の新年度予算を見てみますと、財政規模は五千二百五十八億円で、昨年度比マイナス二・五%、百三十六億円の減額予算となっています。三位一体の関連では、義務教育費の国庫負担金四十六億七千五百万円の減額分については税源移譲予定特例交付金で全額措置されていますが、国民健康保険や公営住宅家賃対策への補助金については所得譲与税で全額措置されてはいないようです。県税、地方交付税、臨時財政対策債の一般財源合計額でも前年度比四十三億円の減額となっており、国の言う一般財源の必要額が確保されていると言えるのかどうか疑問が残るところでもあります。
 歳出では、投資的経費はマイナス六・七%、八十四億円の減、人件費では職員定数や給与の削減、退職手当の見直しで四十八億円の減、市町村や市民団体向けの県単独補助金の廃止・縮減が百八十一件で十三億三千七百万円の減。それでもなお財源不足となる百九億円については県債管理基金からの繰り入れとなっています。
 昨年の十月に策定されました財政改革プログラムどおりの調整額となっているわけですが、プログラムどおりだとすれば十八年度で財政調整に使える基金が枯渇することになります。限りある財源の一層の有効活用が求められているわけですが、新年度の予算とその執行に当たっては重要な年度と言えます。
 また、国の税制や社会保障に対する動向が県経済や県民生活に与える影響も無視できないものがあると思います。そういった動向をしんしゃくして、県民生活や地域産業を支え励ましていく予算であってほしいと願うものです。
 そこで、知事並びに関係部長にお尋ねをいたします。
 一点目は、本県経済の見通しについてです。
 国の新年度予算編成の基本方針が昨年十二月に閣議決定され、十七年度の経済見通しについては、雇用、所得環境の改善により引き続き民間需要中心の穏やかな回復を続けると言われています。なかなか地域では実感しにくいところですが、本県ではどのような見通しとなるのでしょうか。県内総生産、消費動向、事業所数、雇用や県民所得など、経済動向を示す各指標がありますけども、知事としては新年度の経済見通しをどのように持たれているのか。また、提案されております新年度予算が県経済や県民生活に与える影響をどのように考えておられるのかをお尋ねいたします。
 二点目に、国の税制や社会保障に対する政策が家計や県内経済にどう影響してくるのかという問題です。
 ことし二月に、「もらう年金は減っているのに今まで引かれなかった税金が引かれている。間違いではないか」、こういう相談が幾つか寄せられました。ことしの一月から六十五歳以上の年金所得控除の縮小と老年者控除の廃止が行われました。四月には国民年金保険料、雇用保険料の引き上げ、九月には厚生年金保険料の引き上げが既に決められています。衆議院を通過した十七年度の国の予算では、四月から国立大学授業料の値上げ、十月から介護保険施設入所者の自己負担の引き上げ、来年一月からは所得税の定率減税の半減などが盛り込まれており、今後の国会の審議の行方にもよりますが、税や社会保険の国民負担が相次いでふえることになります。生活保護世帯も、高齢者、母子家庭の加算が削減されるなど、すべての階層にわたって国民負担がふえ、生活費の切り下げにつながることとなり、金融・証券会社などの民間シンクタンクでも、家計消費への悪影響がひいては個人消費回復の腰を折りかねないと懸念する声が出ております。
 とりわけ、所得の低い人ほど負担率が高くなり、厳しい状況が予測されるわけですが、知事は県民生活や県経済に与える影響をどのように考えておられるのか。本会議でも弱者に優しい県政を目指すことを県政の一つの柱としていると言われておりましたが、県としての対応を何か考えておられるのか、お尋ねをいたします。
 三点目に、社会保障アクションプランと新年度予算についてお尋ねをいたします。
 昨年十月に策定された財政改革プログラムにおいて、福祉・医療等社会保障関係経費の抑制という項目が設けられています。そこには、社会保障アクションプランの策定を通じ、受益と負担の適正化や重点施策を展開することで経費の増加を抑制し、制度の安定化を図るとされておりますが、知事の所信では、この点については触れられていませんでした。福祉・医療・介護など社会保障に要する費用は、人口の高齢化とともに増大傾向にあります。制度を維持していくためにはそれなりの費用がかかるわけですが、だれがどのようにその費用を負担していくのかが問題です。
 近年、年金・医療・介護・障害者福祉など社会保障制度全般にわたっての見直しが進められ、構造改革の名のもとに自立・自助を基調とする制度へ、受益者負担の名のもとに市民負担の増大へとシフトされてきています。しかし、幾ら自立を叫んでみても、援護を必要とする人が社会にひとり放置されていたのでは自立もできません。
 精神疾患を患い長期の入院生活を余儀なくされていた人で、今では結婚して地域で自立した生活を送っている人から直接体験談を聞く機会がありました。医師や相談員の勧めで地域で共同生活を営む機会を得て、外来通院を続けながら同じ病気を患う仲間や施設のスタッフと就労の場をつくり、今では伴侶とともに社会生活が送れるようになって、自分もできるんだ、こういう自信を持つことができたと話されていました。本人の努力ももちろんのことですが、施設のスタッフを初め、関係者の並々ならぬ努力と熱意、仕事を発注してくれた事業所や近隣住民の協力、それに何といっても行政の財政的支援と社会保障の制度があって可能となったのです。
 常時の介護を必要とする寝たきりや認知症のお年寄りの皆さん、重度の障害がある人に自立を求めることは困難な話です。また、社会保障制度があっても費用負担ができなければ利用できないことや、今ある制度の枠内ではその人の求めに応じられないこともあります。社会保障は、いつでもどこでもだれでもが人間らしく生活するために必要とする人が必要な支援を受けられる、県民の文化的な生存権がきちんと保障される、そういう制度であってほしいと願うものであります。
 そこで、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 一つは、社会保障アクションプランに盛り込もうとする県の社会保障に対する理念はどういうものなのか、お答えをください。
 二つ目に、新年度予算は包括予算制度として部の予算枠の中で編成されていると聞いています。福祉保健部に係る十六年度の当初予算は五百一億一千六百万円でした。十七年度当初は国民健康保険関係の国庫負担分が加わっておりますので、六十億八千万ほどを除きますと四百八十四億三百万円、前年度当初比でマイナス三・五%、十七億円ほど減額予算になっています。予算の総額が縮小されるもとで選択と集中の結果、重点化された事業は何なのか。一方では、縮小または廃止された事業にはどのようなものがあるのか。そして、その理由は何か。特徴的な事業についてお答えを願います。
 四点目に、公共事業と新年度予算についてお尋ねをいたします。
 予算編成方針では、公共事業、県単独投資についてはおおむね六%の削減が掲げられていましたが、予算では投資的経費が前年度当初比マイナス六・七%で八十四億円の減額、補助事業でマイナス一〇%の七十五億円、県の単独事業でマイナス六・九%の二十一億円の減額となっていますが、国の直轄事業負担金では一・一%増、十二億円の増額となっています。これまで公共事業のあり方についての意見として、国直轄事業についても必要性や金額などを精査し国に意見を言っていくこと、県工事の市町村負担金の徴収については、少なくとも県土保全や災害復旧工事などは市町村の地勢が異なることや財政力の違いなどから負担を求めるべきではないと申し上げてきました。また、建設しようとする施設の社会的必要性や投資効果、需要に見合った規模となっているか、過大な投資になってはいないかといった観点からも意見を申し上げてまいりました。リゾート法やバブル経済とその後の経済対策などで起債に頼った公共事業が起債残高を膨らませ、財政の硬直化を招いてきたことは周知のとおりであります。今後は、高齢化社会を迎える中で、福祉や教育、環境、都市基盤整備など、より住民生活に密着した公共事業への転換が求められていると思うところです。また、近年の豪雨・台風災害に備えた河川のしゅんせつ、道路・堤防や砂防設備の修繕、森林環境の保全など、治山治水対策や公共施設の耐震化、維持・補修などがより一層求められてくると思われます。三位一体改革による国庫補助金のスリム化で河川、堰堤、砂防、地すべり防止施設などの修繕費が廃止をされ、地方単独事業とされてきていることから的確な財源確保も必要となってきます。
 そこで、関係部長にお尋ねをいたします。
 一つは、昨年は全国的に台風上陸や集中豪雨などの災害が多発した年でもありました。河川整備の緊急性も明らかとなりました。新年度予算で土砂対策、河川対策、堤防補強や河川の改修・しゅんせつなど、災害予防と対策という点での予算は強化されているのでしょうか。どの程度前進をしているのか、ハード面・ソフト面でどうなっているのか、県土整備部長からお答えをください。
 二つ目は、公共施設の長命化計画についてです。
 戦後の復興期と経済の高度成長時代を通じて建設されました施設が耐用年数を迎えようとしております。施設の老朽化に対する対応と耐震化への対応が同時に求められているわけですが、耐震化改修よりも建てかえた方が経済的という施設もあるのではないかと思われます。今回、公共施設の長命化計画を策定するとされていますが、その目的と内容はどういうものなのか。また、新年度予算では道路構造物長命化として橋梁についての予算が組まれています。震災対策としての落橋防止策も一方では進められていますが、橋梁の長命化計画の内容はどういうものなのか。投資に対してどういう効果が期待できるのか。これも県土整備部長よりお答えをください。
 三つ目に、大規模事業費の抑制についてです。
 予算編成要領で大規模施設整備の抑制が掲げられ、総事業費五億円以上の事業については検証する、着手済みの事業についても先送り、規模の見直し、事業費の縮減を検討する、構想中については新規着工を凍結すると、このように書かれてありましたが、今回の予算編成作業の中でどういう事業がこれに該当し、どのような見直しがされたのでしょうか。総務部長よりお答えを願います。
 四つ目に、南分庁舎の建設規模についてです。
 これは防災センターの整備として、十九年春のオープンを目指して建設されることになりました。延べ床面積一万二千平米中、防災センター部分が四千六百平米、海草振興局、教育委員会、県土整備部が入居する庁舎部分が七千四百平米の予定で、建設費は約四十五億五千万円、十七年度以降二年間の債務負担行為となっております。現在の本館・東別館とも、職場環境としては手狭であります。廊下にはロッカーが並べられ、危険な状況にもあります。確かに分庁舎建設により職場環境の改善が図られることになりますが、それでも適正規模の建設が求められています。建設の規模について、五億円以上の事業については検証する、このようにあるわけですが、どのように検証されてきたのでしょうか。これも総務部長の答弁を願います。
 新年度予算についての最後の質問として、コスモパーク加太用地についてお尋ねをいたします。
 県は、コスモパーク加太の開発公社所有地の一部百八ヘクタールを公社から賃借し、構造改革特別区域計画に基づき整備をする、そしてカゴメの誘致、防災用地、企業立地用地として活用するとされました。県は平成三十六年一月末まで開発公社から賃借し、公社はその後四十五年までに売却して債務返済に充てるということになっています。公社は今後二十年間、県から入る賃借料を原資として金融機関に六十五億円余の元金返済と利子払いをするわけですが、県は今後二十年間で百二十二億三千百万円の賃借料を開発公社に払う──これは債務負担行為として予算化がされております。
 新年度、県が開発公社に支払う賃借料は幾らになるのでしょうか。また、カゴメに転貸している貸し地料収入は幾らになるのでしょうか。百八ヘクタールのうちカゴメに転貸するのは三十七ヘクタールです。道路等の供用部分を除いて有効活用面積がかなり残されております。県が負担をする賃借料から見ても有効活用が求められているところですが、防災用地、企業誘致用地ということで既に位置づけはされておりますが、具体的な活用方針についてはどのように検討されていくのでしょうか。これは企画部長から答弁をお願いいたします。
 次に、県立医科大学の独立行政法人化についてお尋ねをいたします。
 山本学長が、けさ退官をされたそうです。新任の学長はあすから就任されるということですので、法人設立者となる県当局に対しての質問を行います。
 地方独立行政法人法が平成十五年七月に成立し、十六年四月一日に施行されております。地方独立行政法人は、地方自治体の判断で自治体がみずから住民に提供している公的サービス部門を分離し、新たに設立する法人に運営を移譲するものです。法人の定款を議会の議決で定め、県が五〇%以上の出資をして設立し、知事任命の第三者による評価委員会が中期目標に基づく中期計画や年度計画の達成状況をチェックすることになり、知事は設立されました法人の理事長を任命し、法人の運営や予算面で引き続き権限を持つこととなります。独立行政法人に移行された職員の身分は非公務員となり、今の官庁会計から大学、附属病院とも企業会計原則が導入され、県からの財源措置としては運営費交付金が渡し切りで交付されることとなります。
 県は十六年度中に県立医科大学法人化基本計画を策定し、十八年四月一日からの法人化を目指すとしていますが、独立行政法人化によって医科大学と附属病院がどのようになるのか。県内唯一の医科大学とその附属病院であり、医療人養成のための教育、医学医療の研究、病院での臨床医療、また県内の地域医療に果たす役割など、極めて大きいものがありますし、県民や医療関係者の期待も大きいものがあります。しかし一方では、独立行政法人化に向けての論点については広く知らされていないように思いますし、法人化に向けての県民の意見の反映も必要ではないかと思うところです。
 そこで、私なりの思いを述べさしていただきまして、知事並びに関係部長にお尋ねをいたします。
 一点目は、改革すべき問題点とは何かということです。
 今回の県立医大の独立行政法人化は、医科大学の改革を進める手法としての独立行政法人化と説明されています。何が問題点として整理をされていて、何をどのように改革していこうとしているのか。それは独立行政法人化しないと解決されない問題なのでしょうか。
 県民の皆さんからは、県立医大については、医療事故、院内感染問題など医療の安全・安心の問題、小児救急を初め救急医療や感染症への対応、新たな診療科目、専門医の設置、県内で働く医師の養成や県内医療機関への医師派遣、また教授への権限集中による内部組織の不透明さ、医師・看護職員の長時間労働など、こういった問題が解決してほしい問題として意見が寄せられております。このような問題は独立行政法人じゃなくとも解決しなくてはならない、こういう問題だと思うところですが、改革したいとするテーマは何なのか。独立行政法人でないと解決できないのでしょうか。設立者となる知事にお尋ねをいたします。
 二点目に、平成十五年七月に地方独立行政法人法が成立をしておりますが、その際、国会の衆参両院で、法人設立に当たり設立者として配慮すべき問題として附帯決議がされております。法人化に当たっての雇用問題、労働条件への配慮や職員団体との十分な意思疎通を図ること、法人の業務の自主的評価については財政面のみでなく社会的評価の観点からも行うこと、学問の自由、大学の自治を損なうことなく大学の自主性・自律性が最大限発揮できることなど、重要な内容があると思われますが、どのように受けとめて対応されようとしているのか。
 三点目に、議会、住民のチェック機能についてどうなるのか、お尋ねいたします。
 法人の運営については、六年間の中期目標を知事が定め、議会の議決を経るようになっていますが、中期目標に基づく中期計画や年度計画についての審議は知事が任命する評価委員会が行い、評価委員会の評価や意見をつけ公表し、議会には報告することとなっています。これまで、議会ごとに医大の当局者が出席をされて事業報告や予算についての審議がされ、住民サイドからの意見・要望を反映することができました。中期計画、年度計画や事業運営について、議会、住民からの声はどのように反映されることになるのか。法人化されても医大の持つ公共性・公益性、県民の医療や公衆衛生に対する役割を発揮させていくためにも議会や住民の声が随時反映できる仕組みが必要ではないかと思われますが、どのように考えておられるのか。
 四点目に、運営費交付金の基準についてです。
 法人の業務の財源に充てるため、県から運営費交付金が法人に交付をされます。使途は限定されておらず、一般財源として自由に使えることになっていますが、独立行政法人法では交付できるという規定になっています。総務省の見解として、設立団体が必要と認める額を交付するのが基本で、基準も設立団体が考えることとされています。既に先行している国の独立行政法人では経費の一〇%から二〇%の削減が迫られ、国立大学法人についても毎年度削減するとして、東大学長初め大学関係者から批判の声が上がりました。最少の経費で最大の効果を追求するのは行政組織の当然の問題でもありますが、一方的に削減を進めることには問題が生じてきます。
 大学の教育・研究など、学問の自由と自治を保障し、医療・医学研究のすそ野を広げていくことが県の医療・保健衛生の向上にもつながってくると思われます。住民のための病気予防や健康増進などの事業の拡充も求められています。県内唯一の医科大学と附属病院の持つ公共的な責任を果たしていけるような財源措置が必要であると思いますが、運営費交付金の考え方についてお尋ねをいたします。
 五点目は、情報公開についてです。
 現在、医科大学と附属病院は知事部局に属し、情報公開条例の実施機関となっています。それが法人化をされますと、実施機関から外れることになるのではないでしょうか。地方独立行政法人法では、その組織及び運営の状況を住民に明らかにするように努めなければならないと、情報公開については努力規定にとどまっております。法人を県の情報公開条例の実施機関に加えるか、また新たな条例の制定をして独立行政法人となった県立医科大学の運営については透明性を確保する、そういう手だてが必要ではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。
 以上、二点目から五点目までは総務部長からまとめて答弁を願います。
 最後に、県内医療機関への医師派遣問題について福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 新年度にドクターバンクを新規事業として設置する予算、四百五十三万一千円が計上されております。また、従来から無医地区などへの医師確保の手だてとして、自治医科大学への運営費交付金一億二千七百万円も計上されています。県内の公立病院、僻地診療所、医師の確保状況、充足状況は現在どのようになっているのでしょうか。今回のドクターバンク事業の目的、内容は何か、どこまで解決するのかをお尋ねいたします。
 また、医大の独立行政法人化と医師派遣の問題はどのように協議されていくのでしょうか。県立医科大学は県内唯一の医科大学でもあります。県内への医師派遣にも、医師の養成も含めて大きく貢献することが求められているわけですが、独立行政法人化になりますと、医師も非公務員となります。現在、公務員の兼業禁止の原則の中で要綱を定めて県内の要請があった各医療機関には行っておられるわけですが、今まで以上に自由に活動できることになるわけです。医師派遣を希望する自治体関係者は大変な苦労をされて医大の各科教室の教授へ依頼をするという構図が現在あるわけですが、それは今までと変わらないのでしょうか。県当局として県内の医師確保について法人となる医大に対してどのように働きかけをしていくのか、この問題をお尋ねいたしまして私の第一問といたします。
○副議長(向井嘉久藏君) ただいまの藤井健太郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、県経済の見通しと新年度予算についてどういうふうに考えるかということでございます。
 日本の国全体は、いろいろな意見はありますけども、今年度の後半からまた景気がちょっと持ち直してくるというようなことで緩やかな経済成長を続けているということなんですけども、和歌山県についていえば、そういうふうな大きな流れの中にあることは間違いないんですが、やはり光の当たるところと影になっているところがあって、影になっている部分が都会地よりは非常に多いというふうな状況だろうと思っております。
 そういうふうな中で多くの税収が見込めないということがあるわけですが、何とか新年度の予算ではいろいろ行政の合理化──人件費でありますとか定数削減でありますとか、そういうことを行って財源を生み出しつつ元気が出るような施策──中小企業の振興というふうなこと、それからまた先ほど御質問にもありました弱者対策、そういうふうなところに意を用いて予算編成を行ったところでございます。
 また、国の政策動向と県民生活のかかわりということでございますけども、今、国の方も、年金問題にしても、それから国民医療の問題にしても、介護保険の問題にしても、すべて大きな制度的な曲がり角に来ていると。そういうふうな中で、とりあえずびほう策的に税制の改正とか、いろんなことで国民の負担がある程度ふえていくような形が出てきているということだろうと思います。
 一方では、景気を減速させないためにいろんな配慮をしながら──景気が若干回復してきたんで、そういうふうな中で財政の改善ということをねらっているというふうなことだろうと思いますけども、これはこれで、高齢化社会が進んでいく中でやむを得ない選択だろうと思いますけど、そういう中で特に県民の中で弱い立場にある人なんかが厳しい状況に置かれないように県としては弱者に優しい県政といいますか、そういうものに少しでも配慮していきたいと、このように考えている次第です。
 それから、最後に医大の独立行政法人化ということについてどういうふうに考えているのかということですけども、これについては、医大のあり方懇談会というのがありまして、そこで独立行政法人化を進める方がいいというふうな御意見をいただいているところでございます。基本的な考え方としては、やはりこういうふうな時代にはみずからの権限と責任で自主・自律した組織──法人格を別にして行っていくことが県内医療の推進というふうなことにも役に立つ、そしてまた教育内容の向上にも役に立つというふうなことなんですけども、実はこれから大学は、それぞれが大学間競争の時代に現にもう入ってきていると。そういうふうな中で、まだ大きな成果は出ていませんけども、国立大学がいち早く独立行政法人化を果たしたと。公立の大学についても同じ土俵で勝負していくというふうな形にしないと元気が出てこないというふうなことがやっぱり根本にあるわけです。
 そういうふうな中で独立行政法人化をするというふうな形で今進めていっているわけですけども、ただこれは器をつくればいいというふうなもんじゃなくて、本格的にそれぞれが創意工夫によってやっていけるような大学運営が行われるような形のためのものに資する独立行政法人化ということになるように県の方でもいろんな形で努力をしていきたい、このように思っております。
○副議長(向井嘉久藏君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) まず一点目の社会保障アクションプランの理念についてでございますけれども、平成十七年度中に、仮称でございますが、社会保障アクションプランの策定を予定してございます。紀の国障害者プラン、わかやま長寿プランなどの各施策のプランを基盤にした行動計画として、受益と負担の適正化や障害者の自立・社会参加、少子化対策、健康増進・介護予防、医療セーフティーネットなどの分野で重点化した施策の展開を図るため、さまざまな観点で検討を行い、持続可能な制度となるよう再構築を進めてまいりたいと考えてございます。
 これからは、身近な地域社会で住民がともに支え合う福祉社会の実現が重要となると考えてございます。県としましては、地域住民、NPOなどの団体や市町村などと協働することにより、地域密着型で、本当に福祉サービスが必要な人にこたえる社会保障の仕組みづくりが大切であると考えてございます。
 二点目の福祉関連予算の特徴についてでございますけれども、生活保護や介護保険制度施行など福祉関連予算は義務的な事業が多い中で平成十七年度に重点化を図った事業としましては、まずわかやまドクターバンク設置、新生児搬送用ドクターカー整備など、医療セーフティーネットの構築がございます。
 次に、チャレンジド就労サポート、自閉症・発達障害支援センター運営などの、障害者が地域での自立・社会参加するための施策がございます。また、児童虐待防止ネットワーク、子どもメンタルクリニック運営など、次世代を担う子供と家庭への応援、あるいは健康診査機器整備、わかやま型介護予防・地域ケアシステムの普及などによる健康増進、介護予防の推進がございます。
 また、見直し等により縮小した事業といたしましては、国の三位一体改革によりまして市町村に税源移譲された病院群輪番制病院運営費補助、補助金の交付金化によりまして一部について実施主体が市町村に移った老人福祉施設環境改善が主なものでございます。
 また、県単独事業では、経営合理化に伴う県社会福祉施設の運営管理委託費の減少や、多くの方の住宅改造の要望にこたえるため補助上限額の見直しを行った重度身体障害者住宅改造助成などがございます。
 さらに、廃止事業としましては、所期の目的が達成したアニマル・アシステッド普及やヘルパーの資格者を拡大するために県から民間へ移管いたします障害者ホームヘルパー、ガイドヘルパー養成研修などが挙げられます。
 いずれにしましても、厳しい財政状況の中でございますが、平成十七年度につきましても積極的な福祉保健行政の取り組みを図ってまいりたいと考えてございます。
 次に、県内医療機関への医師派遣についてお答えを申し上げます。
 十六年四月から新しい医師臨床研修制度が開始されるなど、医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、地域の公立病院においては医師の確保が大きな課題になってございます。県全体で見れば人口十万人当たり医師数が全国平均を上回る状況にありますが、地域によりまして格差があり、とりわけ紀南・紀中地域などにおいては医師不足が深刻であるため、県としましても独自に医師を確保する仕組みが必要であると考え、新たにわかやまドクターバンク制度を創設することとしているところでございます。
 わかやまドクターバンク制度は、県が五年間の任期つき職員として医師を採用し、支援体制や研修機会を与えるなどの方策を講じた上で過疎地域等の公立病院で医療に従事するもので、不確定な要因もございますが、毎年二名程度採用いたしまして十名程度の医師を確保したいと考えてございます。
 県としましては、これまでの自治医科大学卒業医師の派遣に加えまして、わかやまドクターバンク制度を構築することにより、医師確保が困難な過疎地域の公立病院や僻地診療所において必要な医療の提供につながるものと考えているところです。
 しかしながら、県のこの制度だけでは地域の医師不足を解消できるものではなく、地域の公立病院には魅力ある病院づくりと独自の医師確保に努めていただくとともに、独立行政法人化に伴い、これまで以上に地域医療への貢献が求められる県立医科大学に対しましても医師派遣の中核として地域医療を担う人材の養成・確保に一層努めるよう協議、要請してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 災害対策予算についてでございます。
 豪雨災害などから県民の生命や財産を守る災害予防・災害対策につきましては、大変重要な課題の一つだと認識しているところでございます。このため、河川・砂防事業の平成十七年度予算につきましては、ハードな施設整備とソフト対策が一体となった総合的な対策を推進するため、一般会計予算ベースで対前年度比約五%増としているところでございます。
 具体的な事業内容としましては、近年浸水被害が発生した河川を重点的に整備するとともに、災害時の緊急輸送路を保全するための防災対策、避難路・避難場所を保全するための対策等を重点的に実施してまいります。
 また、地震・津波対策として、洪水時を含めた堤防や樋門等の安全点検を行い、その結果を踏まえて必要に応じて強化対策を実施するとともに、緊急時の確実な施設操作実施のため自動化、遠隔操作化、集中管理化の調査検討を進めてまいります。さらに、沿岸地域における避難場所の創設についても積極的に進めてまいります。
 一方、リアルタイムで河川情報や土砂災害情報を県民に提供するための情報基盤整備や浸水想定区域図の作成、土砂災害警戒区域設定のための調査など、ソフト対策も関係部局と密接な連携を図りながら推進してまいります。
 次に、公共施設の長命化計画でございます。
 多くの橋のかけかえや県営住宅等の建てかえを一気に行うことは財政的に大変難しい状況でございます。公共施設長命化計画は、これら橋梁や県営住宅などの公共的な施設について必要な補修や整備などのリフォームを適時適切に実施することによりその寿命を延ばしたり、時代の変化により必要となる新たな機能を付加するなど、既存の施設をできる限り長期間有効活用して中長期的なライフサイクルコストの縮減を図ろうとするものでございます。
 橋梁を例にとりますと、県が管理しているものは二千三百四十橋ございます。このうち約三五%は昭和二十八年災害や高度成長期に集中的に建設されたものであり、建設後約五十年が経過し、これらがある時期一気に老朽化し、何らかの対策が一時的、集中的に必要となってくるおそれがございます。これらの橋梁につきまして、一つ一つについて建設当時の情報や過去の補修歴などをデータベース化し、いわばカルテのようなものを整理しつつ、必要な補修や整備などのリフォームを効率的・効果的に行うことによりできる限り長生きさせるためのシステムをつくり、かけかえ時期をずらして予算の平準化を図るだけではなく、トータルコストの縮減をも図ろうというものでございます。このために必要な点検調査を含めたシステムづくりに、平成十七年度から二年間、予算五千万円で取り組みたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 総務部長宮地 毅君。
  〔宮地 毅君、登壇〕
○総務部長(宮地 毅君) まず、新年度予算についてお答えを申し上げます。
 平成十七年度予算編成における大規模施設整備の抑制につきましては、事前協議を経ていない新規整備事業の要求そのものがございませんでしたので、結果的に先送りや新規着工凍結の対象になるものはございませんでしたが、計画中の事業につきましては、規模、構造等を見直し、後年度負担にも留意して可能な限り工事費等の抑制に努めてまいりました。その結果、例えば県総合防災情報システム整備事業について、積算手法の見直し等により約十億円の事業費抑制を図ったほか、県分庁舎整備事業について、構造の工夫などにより建設単価を精査し、工事コストの縮減を図ったところでございます。
 今後も、事業を取り巻く環境や状況の変化を見据え、計画が具体化した時点や設計、工事着手など事業進捗の節目をとらえ、費用対効果を検証し、事業費の見直しに努めてまいりたいと考えております。
 次に分庁舎の建設についてでございますが、本県の現在の庁舎におけます職員一人当たりの面積は、平成十五年度現在で約十四平方メートルとなっております。一方、平成十四年の調査の全国都道府県の平均は約二十一平方メートルとなっております。また、庁舎建設に係る地方債申請における面積算定基準では、共有部分を含めた職員一人当たりの面積は約二十二平方メートルとなっておりまして、これらと比較をいたしまして現在の本県の庁舎面積は非常に狭い状況となっております。
 こうしたことから、執務環境の改善を図るため、今回、防災センター建設にあわせ、分庁舎機能を持たせることといたしておりますが、新しい分庁舎は職員一人当たり約十六平方メートルになる予定でございまして、分庁舎完成後の現在の庁舎につきましても、一人当たりの面積は同程度確保できる見込みでございます。このことは、先ほど申し上げました全国的な状況等から見ましても必要最小限の適正な規模であると考えております。
 次に、県立医大の独立行政法人化についてお答えを申し上げます。
 まず、地方独立行政法人法成立時の衆議院及び参議院における附帯決議につきましては、議員御指摘のように、雇用・労働条件への配慮、職員団体との十分な意思疎通や法人の業務評価について財政面のみでなく社会的評価の観点を加味すること、学問の自由や大学の自治を侵すことがないよう大学の自主性・自律性を尊重することなどが盛り込まれておりまして、県立医科大学の地方独立行政法人化の検討をしていく上でも十分配慮していく必要があると考えております。
 次に議会、住民のチェック機能についてでございますが、法人の事業計画は、議員御指摘のように、知事が評価委員会等の意見を聞いた後、議会の議決を経て定める六年間の中期目標に基づき、法人が中期計画を作成し、知事の認可を経て公表するとともに、年度計画を作成して公表する仕組みとなっております。
 法人の運営はこれら中期目標などに沿って実施されることになりますが、評価委員会による毎年度の業務実績の評価は議会へ報告することとなっており、そこで御審議いただくことになります。また、中期目標期間終了時には中期目標に係る事業報告書及び評価委員会の評価結果を議会に報告し、御審議いただくことになります。
 予算につきましては、県が各年度の業務に必要な資金を交付できるとされておりまして、運営費交付金として予算計上し、御審議いただくことになります。
 次に運営費交付金の考え方についてでございますが、運営費交付金につきましては、法人の自主・自律性を生かしつつ、安定した業務実施の財源として交付するものでございますが、その算定に当たりましては、教育・研究・医療活動の向上や経営の改善につながるよう評価委員会による評価結果などを適切に反映していくことや、自己収入拡大のインセンティブが働く仕組みに留意する必要があると考えております。
 運営費交付金の算定のルール化や基準につきましては、法人運営が適切に行えるように、今後、国立大学や他の大学の考え方なども参考にしながら検討してまいりたいと考えております。
 法人の情報公開でございますが、県といたしましては、県立医科大学が地方独立行政法人になりましても、その公共的な性格からその諸活動を県民に説明し、県民の理解と信頼を深められるよう積極的な情報公開に努める必要があると考えられますので、今後、現行と同様の情報公開の制度を確保するよう検討してまいります。
○副議長(向井嘉久藏君) 企画部長高嶋洋子君。
  〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) コスモパーク加太用地についてでございますが、防災対策及び企業誘致の用地などとしまして利活用を図ることとしております。新年度予算で県土地開発公社に対する約四億九千万円の賃料をお願いしております。
 まず、防災対策の用地といたしましては、大規模災害時における応援要員の集結場所や救援物資の集積地として利活用を図ることとしてございます。
 現在、危機管理局におきまして東南海・南海地震等による人的被害や物的被害の想定作業が行われておりまして、こうした作業を踏まえつつ、より充実した防災対策用地としての利活用について協議してまいります。
 次に、企業誘致の用地といたしましては、現在、加太菜園株式会社による施設建設が行われておりまして、本年八月に操業が開始される予定となっております。新年度におきましては、同社の第一期施設敷地分等を対象に約一千百万円の賃料を徴することとしておりまして、今後とも事業用借地権の転貸により、雇用の創出など経済波及効果が期待でき、地域の活性化へつながる企業の誘致を図ってまいります。
 いずれにいたしましても、コスモパーク加太の土地の利活用は本県にとって極めて重要であると認識しておりますので、積極的に取り組んでまいります。
○副議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 答弁をいただきまして、知事に再質問をお願いしたいと思うんですが。
 経済の見通しということで、ことしに入って私も経営者協会とか商工会議所とか経済団体を訪問さしていただきまして、いろんなお話を聞いてきました。大変重たいという印象を持ったわけですが、世界遺産の登録を契機に和歌山市でも少しでも何とか活性化に結びつけていけるような方策がなかろうかと、そういう模索もしているということもありましたが、同時に、さまざまな税とか社会保険の行方によっては県民の消費の動向も気になると、こういうお話でもありました。
 知事は、国の動向についてはやむを得ないという認識があるんですが、一方では弱者対策に少しでも配慮できるようなということで言われているわけです。福祉保健部長に、今どういう事業があるんだというふうに聞いたわけなんですが、ドクターバンクとか新生児の周産期治療とか障害者の自立支援策というような、こういう事業は税や社会保障の動向にかかわりなくやっていかなくてはいけないというんですか、従来から県民からの需要としてあった事業なんですよね、本来やらなければいけない。それが今年度予算措置されたことは結構なことだと思うんですが、ただ私が問題にしているのは、これからの経済動向やさまざまな国の施策も含めて、県としてそういう、生活弱者と言うんですが、より厳しくなる人たちに対するセーフティーネット──例えば障害者の自立支援策とかつくっても、今また障害者の負担も応能負担から応益負担に変えようと、こういう話もされているわけですよね。国保なんかでも資格証明書の方がふえてきているし、国民年金の未払いとか、そういう状況が起こってきているわけなんです。経済の部面では、借りかえ融資というのが非常に有効にきいているわけですね。長期で低利に借りかえをして、それで余剰資金でさらに設備投資をすると。これは非常に県民生活といいますか中小事業者の皆さんの要求にマッチをした、そういうセーフティーネットとして機能して、新年度もプロパー融資についても拡大するという話で。
 ところが、私が問題にしているのは、そういう税や社会保険の負担増によって、今二百万、三百万円で生活している人がさらに厳しい状況に追い込まれるんではないかと、そういった人たちに対するかみ合ったセーフティーネットが必要ではないかということを問題にしているわけなんですよね。知事が言われる弱者への目配り・気配り、弱者に優しい県政というふうに言われておりますが、その意図するところというのは一体どういうものなのか。知事として新年度は具体的にこれがそうだと言える事業がありましたら、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
 以上です。
○副議長(向井嘉久藏君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 弱者対策──今、非常に社会全体が厳しくなってくる中で大変な問題があるんですが、私の基本的な考え方は、自立することができる可能性のある人にはできるだけそういう方向で自立ができるような形での支援を行っていく、それからまあ努力してもなかなか自立が難しいというふうな人には、またそういうふうな面で重点的な支援策を講じていくというふうなことを基本にしてやっているわけです。
 そういう中で、平成十七年度の当初予算で新たな施策を申しますと、例えば障害のある人を対象にした職業能力開発を実施する障害者職業能力開発事業、それから障害者の一般就労への移行というものを促進するためのチャレンジド就労サポート事業、こういうふうなものが自立をできるだけ推進していこうという面での事業です。そしてまた、高齢者の虐待や認知症高齢者の介護の課題に対応するための高齢者地域ケアネットワーク事業でありますとか、自閉症等の発達障害の方々を支援するための自閉症・発達障害支援センターの設置、それから育児不安を抱える親や心のケアが必要な子供を支援するための子どもメンタルクリニック事業でありますとか、母子家庭の母親の人の就業を支援するための就業支援相談員を配置する母子家庭就業・自立支援事業、こういうふうなものを計上するなど、幅広くいろいろな施策を考えているということです。
○副議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十三番藤井健太郎君。
○藤井健太郎君 今、知事からお答えをいただきました。自立を助長していくといいますか、それをサポートするというのも、これはまた大事な話で。母子家庭など、児童扶養手当が削減されていく中で自立就業支援というのは、それはまあ必要なことだと思うんですが、しかし行政としてやっぱり目を向けていかなあかんところというのは、実際に生活困難といいますか、本当に収入が二百万、三百万円、年金数十万というところの人が介護保険制度とか国民健康保険とか年金の給付額の切り下げによって生活費そのものが切り下げられてきているわけですよね。そこに対する行政としてセーフティーネット、支えていくという上では、市町村も含めてなんですが、さまざまな減免制度であるとか、教育の分野においては就学援助の制度の拡充であるとか生活をボトムアップしていけるような、そういう直接的な手だてということもやはり必要ではなかろうかと、そういうふうに思うわけなんですよ。そういった点では、なかなか新年度予算を見ましても直接かみ合った事業というのがどれかよくわからないというようなことなんです。
 今、知事が言われたことも、もちろん必要なことではあろうかと思うんですが、やはり生活にかみ合った形での支援というものをぜひ新年度に検討して進めていっていただきたい。この点は要望にしておきますので、よろしくお願いいたします。
○副議長(向井嘉久藏君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で藤井健太郎君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時零分散会

このページの先頭へ