平成17年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
質疑及び一般質問を続行いたします。
四十二番雑賀光夫君。
〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速、質問に入らせていただきます。
まず、お礼を申し上げたいと思います。それは、新年度の予算案に海南市の二つの水門の遠隔操作ができるように一億円の予算が計上されている点です。大変うれしいことです。本県の沿岸部は昭和二十一年の南海地震津波で被害をこうむった箇所が多く発生しましたが、とりわけ海南市では大きな津波被害を経験しております。このたび、「県民の友」三月号に海南市の津波シミュレーションが掲載されました。そこには広範囲な浸水領域が示されており、海南市は津波の被害を警戒すべき地域として県当局も認識いただいているものと考えます。
地震・津波防災につきましては、まだまだ課題がたくさん山積しております。本日は、お礼と引き続く対策を要望するにとどめておきたいと思います。
さて、質問の最初は教育問題であります。
九月の県議会で大成高校募集停止を含めた高校再編計画について多くの皆さんから批判が出され、その後、県教育委員会は募集停止を撤回いたしました。しかし、再編計画そのものは撤回でないとして地域でその理解を求めると説明していますが、到底県民の理解が得られるものではありません。
一月十七日、大成高校を存続させる会が、大成高校育友会初め、保護者、教職員、地元の皆さんによって結成されました。地元の尾崎要二議員、宗正彦前県議が顧問に就任されました。藤山県議と私も参加したところであります。参加者の思いは、大成高校の募集停止を先に延ばすだけでなく、あくまでも大成高校を存続させたいということであります。それは決して無理なことではありません。
第一に、海南・海草では生徒数が減少すると言いますが、中学卒業生は今後十年間はほぼ横ばいです。第二に、海南・海草地方では、地元高校への進学は普通科では四三%にすぎない。高校普通科の定数は少ないわけです。第三に、小規模だから高校としてやっていけないということはない。県教育委員会が主導したきのくに教育協議会の報告でも小規模学校についても否定していませんし、文教委員会でお聞きしたところ、文部科学省でもそういう規制や指導はしていないということです。一方、全国では、三十人学級の導入なども含めて小規模校を存続する努力がなされています。
大成高校を存続させる会には、富山県の高校の教員の方がおいでになって、富山県の経験を話してくれました。その内容は、生徒数減少という条件を生かして少人数学級を導入していること、小規模高校の四校を学校群として連携させ、特色を持たせ、生徒の多様なニーズにこたえるということなど工夫をしているということでした。こうした経験も調査されてしかるべきだろうと思います。
県教育委員会は、自分の立てた計画を何とか押し通そうという立場に立つのではなく、県民の声にこたえる道を探っていただきたい。そのために全国の経験についてどのような調査をなされたのか、そして高校再編計画をどう見直すつもりなのか、教育長にお伺いいたします。
第二番目は、学力問題であります。
今、学力低下が大きくマスコミでも取り上げられ、ゆとりの教育、総合的な学習の時間などの見直しを文部科学省も検討を始めたと伝えられています。学力が低下したといえば、ゆとりと言うから悪いんだ、韓国や中国の子供たちは長時間勉強しているではないかという論調もございます。しかし、もっと問題を多面的に見なくてはならないと思います。
昨年末に発表されたOECDの国際的な学習到達度調査で、日本のランクが科学的リテラシーでは第二位を保ったものの、数学的リテラシーでは一位から六位に、読解力リテラシーでは八位から十四位に低下して、学力低下が言われる一つのデータになっているわけです。この調査では、日本の子供の学力水準もさることながら、日本の子供の学力格差が広がっていること、日本の子供が勉強嫌いになっていることも指摘されています。興味深いのは、この調査でフィンランドがトップの成績を上げたと注目されていることです。問題は順位ではなく、その教育の内容です。二月二十日の朝日新聞が「比較・競争とは無縁」という見出しで、このことを報道しました。競争やコース分けの教育ではないことが注目されているわけです。それに対して、ドイツやスイスなどのコース別エリート教育を進めてきた国々の学力が低下しているのが先進国の特徴です。
日本教育学会会長である東京大学の佐藤学教授は、中国や韓国の高校生が朝早くから夜遅くまで勉強することを紹介しながら、それを追いつき型近代化の東南アジア型の教育と特徴づけ、それが一定の発展段階では破綻するということを指摘しています。こうした指摘も傾聴に値します。
さて、日本の教育ですが、学校教育の時間数や教育内容を文部科学省が定めた文書である学習指導要領は、ほぼ十年に一度改訂されます。あるときは「新幹線授業」と言われるような詰め込みの教育を引き起こして、落ちこぼれが社会問題になったこともありました。あるときは、英語の授業は週三時間でいいんだと言って現場を戸惑わせたこともありました。いろいろなことがあったわけですが、一九八八年の学習指導要領、これは小学校低学年から大変教える内容が多くて、子供も先生も悲鳴を上げました。全国の一千近く、和歌山県内でも三十七の地方議会から白紙撤回、あるいは見直してもらいたい、こういう決議が上げられたわけです。そして、その後に登場したのが今日のゆとりの教育と言われる新しい学習指導要領であります。
この時期、文部省は一九九〇年代に新しい学力観ということを言い出します。それは、子供が読み、書き、算数などの学力をどれだけ身につけたかということ、鉄棒で逆上がりができるようになったかということを問題にするのでなく、子供の関心、意欲、態度を問題にするというものでした。子供が関心と意欲を持ってマットで遊ぶという態度を評価する。前回りがちゃんとできるかどうかが問題ではないというのでしょうか。実際、体育の授業で、一つの同じクラスで、ある子供はボール投げをしている、ある子供は幅跳びをしている、ある子供はマットをやっているというようなそういう授業、それが新しい学力観の立場に立った授業だと言われるようなことになりました。こんな指導のもとで、いわゆるゆとりの教育が導入されたのです。
基礎・基本を厳選するという言葉はいいのですが、例えば、自然科学というものは、それを貫く法則を理解してこそ個々の法則や現象を理解できます。しかし、ばらばらの知識を与えて終わりになってしまうと、現場の先生は悩んでいます。学校現場では、「総合的な学習の時間」という名前はもちろん使いますけれども、その中でも、算数や国語、理科、社会など、これまで教科で指導してきた内容をきちんと踏まえた内容にするなど、子供の学力を低下させないようにいろいろな工夫もされていることと思います。私は、学習指導要領を改めることもさることながら、学校現場が文部科学省の思いつきのような教育政策に振り回されるようなことのないようにしてほしいと思います。
そこで、教育長にお伺いいたします。
第一に、今日の学習指導要領のもとで、ゆとりの教育と学力をめぐって心配の声が上がっている、いろいろな意見がある、私は新学力観というものに大きな問題があったということも申し上げたわけですが、教育長は今この学習指導要領にどういう問題があるというふうにお考えなんでしょうか。
第二に、学力問題では注目されるフィンランドの教育、そして佐藤学教授の指摘などにかかわって、教育長はどういうふうに考えておられるでしょうか。
第三番目に、学校現場が学習指導要領によって振り回されることのないように学校現場の自主性を尊重すべきではないか、それこそが特色ある学校づくりではないかと私は考えるわけですが、教育長、いかがでしょうか。
次に、道路交通問題に入りたいと思います。
十二月の県議会で、私は海南市の都市計画道路・日方大野中藤白線の日方川に沿った部分を例にとって、住民が求める道路を早くつくるということが求められているという問題提起を行いました。私は、この質問をきっかけにして都市計画道路のあり方を考えるようになってまいりました。
さて、海南市でいいますと、都市計画道路の大部分が決定された都市計画審議会は一九八一年に開かれています。和歌山市の都市計画道路などは、さらに前に決定されたものが多いようであります。都市計画道路の中には、工事が進んで喜ばれているものがたくさんあるでしょう。進捗率は海南市でいうと四〇%ぐらいだとお聞きしました。都市計画道路の線引きが行われると、建物の建設に規制がかけられます。それで計画どおりに道路建設が進み、喜ばれるところはそれでいいんですが、その後の社会の情勢の変化もあって、再検討した方がいいのではないかと思われるものもあります。都市計画というものが道路政策の足かせになっている場合があるのではないでしょうか。このことは、道路行政に携わっている多くの皆さんが既に感じておられることだと思います。しかし、都市計画を撤回するとすれば、これまで規制をかけてきたことについての責任はどうなるのかという問題もあります。県がこの問題についてイニシアチブをとってほしいという声が市町村の道路関係者の中にもあります。
二十年、三十年前につくられて時代の変化の中で実情に合わなくなっている都市計画道路を見直すという問題について、知事はどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
第二は、合併する新海南市の道路問題です。
海南市と下津町が四月から合併し、新海南市が誕生いたします。合併まではいろいろ議論もしてきましたけれども、合併が決まった以上、前向きの新しい町づくりをどう進めるかということが問題であります。海南市・下津町の合併で、この二つの町の間の国道四十二号の渋滞が大きな問題です。
その解決策の一つは、バイパスの建設です。海南市、下津町、有田市、有田郡を含め、関係自治体、県会議員の皆さんと超党派で陳情もしてきました。しかし、海南市から有田市までのバイパスを通すことはそう簡単なことではありません。一定の時間がかかるでしょう。一方、海南湯浅道路の料金値下げという社会実験が、国と県の財政負担、道路公団の協力で昨年の五月に行われました。六月県議会で、藤山将材議員の質問に対して県土整備部長は、国、道路公団に早期の低料金化を強く働きかけるという趣旨のお答えをされています。海南市・下津町の合併が決まった今、この問題は早急に実現しなくてはならないと思います。私は、社会実験を行った国、県、道路公団の協力による海南湯浅道路の料金引き下げに加えて、新海南市、そして県も後押しをして、一定の負担をしてでも海南─下津間のさらに上乗せした料金の引き下げ、できれば時間的な無料化があってもいいとさえ考えています。
知事にお伺いいたします。
合併した海南市への支援策という観点も含めて、国道四十二号バイパスが実現するまでの間の臨時的措置としてでもいい、海南湯浅道路を国道渋滞解消に活用するという措置に海南市と協議しながら踏み込んでいろいろ考えていただきたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
また、県土整備部長にお伺いいたします。
第一は、海南─有田間の国道四十二号バイパスは何年ぐらいで実現できると考えておられるのか。一定の幅を持ってでもいいですから、見通しの年限をお答えください。
第二番目に、海南湯浅道路の料金引き下げの問題。社会実験を現実のものにするために国及び道路公団との協議はなされているのか。なされていると言うのならどこまで話が進んできているのか。これも県土整備部長にお伺いいたします。
次に、話は変わりまして、JICAと国際貢献という問題です。
JICA(国際協力機構)というのは、緒方貞子さんを代表とし、発展途上国への経済・技術援助を行っている組織であります。私も最近まで遠くのものだと思っておりました。それを私が身近に感じられましたのは、JICAからシリアに派遣をされて帰ってこられた海南市の技術者の方にお会いしてからです。溶接の仕事をなさってこられた茶山さんという方が、六十歳を過ぎてからシリアに技術指導に行かれました。普通は二年間が任期なのだそうですが、現地からの希望もあって一年間任期を延長し、昨年末お帰りになりました。
今、日本の国際貢献はどうあるべきかということが議論されているとき、こうした国際貢献は大変貴重であると思います。しかし、和歌山からの参加者は決して多い方ではありません。茶山さんは言われます。「ODAで日本はいろいろな援助をしているけれども、ミスマッチもあると思います。いろいろな人が来ているけれども、現場の経験を持った技術者が必要だと思います。それで私も任期を延ばしてお手伝いしてきたんです。私が指導した若い人たちを、できたら日本に呼んで、さらに技術を磨かせたいと思うんです。受け入れる企業でも重荷にならないだけの技術を持った若者たちがいます」、こういうことを言われていたんですが、現地に行って何年も経験を積まれた方の意見というのは貴重であります。
知事公室長にお伺いいたします。
JICAによる国際貢献への参加を和歌山県としてどのように呼びかけ、支援されているのでしょうか。
さらに、JICAの事業にボランティアで参加された皆さんの御意見を今後の施策に生かすようにじっくりとお聞きされたらどうかと思うんですが、いかがでしょうか。既に帰国報告をお聞きでしたら、その報告をどのようにお受け取りになり、どういう課題を受けとめられているのか、お聞かせください。
また、茶山さんが現地の若い技術者を日本に呼びたいとおっしゃった関係で思うんですが、和歌山の県内の企業にも呼びかけ、そういうことがあった場合に受け入れのネットワークのようなものをつくっておいたらどうかと思うんですが、いかがでしょうか。
最後に、「和歌山の部落史」についてであります。
昨年六月の県議会で、「和歌山の部落史」というものが企画されているが、昨年の県予算書にも全く出てこない、これは議会無視ではないかという苦情を申し上げました。当時の企画部長が、調査費だからという苦しい答弁をなさいました。私は六月県議会で、この企画を持ち込んできた運動団体にかかわる研究所での趣意書のようなものを分析し、「大阪の部落史」が参考になると言うが、それは極めて偏ったものだということを申し上げ、偏った部落史になりかねないものに県民の税金を出すことでいいのかと申し上げた。知事の答弁は、同和対策というより学術研究であり、高野山などにある貴重な史料を保存するという意味もあるという説明をなさいました。
さて、今議会前に記者発表資料をお送りいただいてチェックしたのですが、今度も「和歌山の部落史」は出てまいりません。財政課の予算の概要の中でやっと見つけ出した次第であります。
ところで、その中身を見ると、昨年度の二百万円から七百五十五万円に膨れ上がっているわけです。担当課から説明を聞いてみると、十年間で本文編三巻、史料編四巻、計七巻のものを計画している、計画では、田辺市の同和史編さんの経験を持った方を年間九百十万円で十年間和歌山へ来てもらう、その人件費を県と市町村で半々に負担をする、それとは別に、史料収集、編さん、発行に十年間で一億二千百五十万円をかけるという計画になっているという説明を聞きました。しかし、お聞きしてみると、田辺の同和史というのは、通史編一巻、分野編一巻、史料編一巻の計三巻、それに年表がついています。かかった経費は人件費を除いて一億六千万円とお聞きしました。このたび「和歌山の部落史」は計七巻になっています。それで編集発行予算に一億二千万円余り、果たして予算内でできるのでしょうか。
「県同和運動史」というものが出されています。それは二冊のもので、同和運動ですから恐らく近現代史にかかわるものですが、それでも編集には一九九〇年から九七年まで八年間かかっているそうです。今度の場合は古代から現代まで、しかも計七巻でしょう。県史の編さんに携わられた方にこの計画をお見せすると、二十年ぐらいかかるんではないかという感想を漏らされました。専門家の中でも、部落史という特別の歴史を描き出す必要はないという意見もあります。私は、高野山にある貴重な資料を保存するということであれば、県立図書館なり資料館なりの事業として関係寺院の協力をいただいてマイクロフィルム化して、研究者がだれでも閲覧するようにすれば十分だと考えます。何も部落、差別とこだわって史料を選び出す必要もないのではないでしょうか。
こうした問題も含めて、「和歌山の部落史」は本当に必要なのでしょうか。まして将来予算が膨れ上がるなどということはとんでもないことです。本当に予算内でできるのですか。また、市町村にも協力を求めるということですが、苦慮している市町村もあるようです。協力の押しつけはやめていただきたい。以上は企画部長の答弁を求めます。
以上で、私の第一回目の質問を終わります。
○議長(小川 武君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 都市計画決定された道路の見直しということでございます。
私も、御質問にありましたように今世の中がどんどん変わっているというふうな中で、都市計画決定ということを考えたときに、計画的に地域づくりを進めていくということでは非常に重要な意義を有すると一方では考えながら、社会の情勢、人口とか地域の動向とか、そういうものが大きく変化するときに二十年も三十年も前のものがそのままでいいというふうなこと、ある意味ではこういういろんな面での硬直性というふうなものがこれからの日本を滅ぼしていくんじゃないかというふうな危機感を持っているようなところもございます。
都市計画決定の道路等については、昔、計画決定された後にいろいろな権利関係が乗っかっていって、急にそれを変えるというふうなことでは大変な利害関係者の不利益ということを招来する可能性もあるわけですけども、やはりこの時代は本当に変えないといかんものについては勇気を持ってその地域の人にも理解を求めていくというふうなことをしていかなければならない時代だと思っておりますので、県の当局としても、これについては口だけじゃなくて、積極的に真剣にできるものについては取り組んでいこうというふうな気持ちを持って既に進めているところでございます。
次に、海南湯浅道路を四十二号のバイパスにと。これはそういってもなかなかできないだろうから、これに代替的な機能を持たせるような努力というふうなことでございますけども、これについては、我々も今、この海南湯浅道路は高速道路の中で別料金体系になっていて非常に値段が高いというふうなことがありますので、国への要望なんかでも第一のプライオリティーを置いてこの料金引き下げということを要望しているということでございます。
それからもう一つは、料金が下がっても、あそこはいつも観光時期なんかでは渋滞しているということがございますので、早急に車線をふやすという工事が進むような要請というのもあわせて行っていきたいと、このように考えております。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 四十二号のバイパスの見通しと、海南湯浅道路の料金引き下げの見通しについてお答え申し上げます。
まず、海南─有田間の国道四十二号バイパスにつきましては、国交省により二市一町の意見を聞きながら、特に今年度はJR及び海岸近接部の構造検討やアクセス道路などの調査が進められているところでございます。したがいまして、現時点では事業着手時期が未定であり具体的な年限は申し上げられる段階ではございませんが、今後とも国に対し調査を促進し、早期事業化をするよう強く働きかけてまいります。
次に、海南湯浅道路の料金引き下げの関係でございます。
昨年五月の料金引き下げ割引実験で、海南湯浅道路の通行料金の低減により国道四十二号の渋滞緩和に一定の効果があることが確認されました。この実験を行う中で、国及び道路公団と密接な協議を行い、その効果等について互いに確認したところでございます。こうした実験の効果なども踏まえ、国及び道路公団に対し、恒久的な料金値下げを強く申し入れているところでございます。
以上です。
○議長(小川 武君) 知事公室長野添 勝君。
〔野添 勝君、登壇〕
○知事公室長(野添 勝君) JICAと民間の国際貢献についてお答えいたします。
国際協力機構(JICA)は、ODAの一環として、開発途上地域等の経済及び社会の発展に寄与し、国際協力の促進に資することを目的として設立された独立行政法人であり、開発途上国の国づくりを担う人材の育成を中心にさまざまな協力活動を実施されております。
県といたしましては、こういった市民レベルでの国際協力は非常に有意義なことと考えてございまして、JICAが実施する青年海外協力隊、シニア海外ボランティア等の年二回の春・秋の募集説明会や帰国隊員の報告会について、「県民の友」への掲載やテレビ、ラジオなどの広報番組を通じて広く県民に周知するなど、積極的な協力を行ってございます。さらに、和歌山県国際交流協会にはJICAの国際協力推進員が常駐し、県民に対し海外派遣に関する相談や各種情報の提供を行うなどの活動を行ってございます。
議員御指摘のJICA事業へ参加された皆さんからの帰国報告につきましては、ぜひお話をお聞きし、今後の参考にさせていただきたいと考えてございます。
現在、本県出身者で派遣中の方は十四カ国十六名となっており、帰国者も含めてこれまで百五十八名が派遣されております。また、県の国際交流センターにおいては、帰国隊員の実体験の報告会や派遣希望者への個別相談会の実施などを行っております。
今後、JICAの研修受け入れについても、帰国者の皆様や和歌山県国際交流協会と連携を密にして取り組んでまいります。
○議長(小川 武君) 企画部長高嶋洋子君。
〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 「和歌山の部落史」についてでございますが、部落史は、和歌山の各地域における部落差別が、いつから、なぜ発生し、どのような歴史的経過を経て、どうして現在まで残されているか──私は今まだ部落差別はあると認識しておりますが──そういうふうなことにつきまして学術的に研究、解明を行うことにより部落差別の本質を明らかにし、よって効果的な人権教育、人権啓発に結びつけるとともに、差別とこれを解決するための取り組みの歴史を教訓として後世に残そうとするものであり、必要と考えております。
部落史編さんに関する予算につきましては、毎年度十分に精査し、必要・適切な範囲で予算計上し、執行してまいります。また、編さん費の三分の一は、社団法人和歌山人権研究所が負担することとしております。
部落史の史料は各市町村、各地域に散在しておりまして、市町村との連携が必要であります。そのため、市町村の理解をちょうだいしながら、民間とも協働して取り組んでまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
○議長(小川 武君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育問題二点についてお答えします。
まず、県立高等学校再編整備計画案については、実施期間を延長して行ったパブリックコメントの実施後、十一月までに合計十四回にわたって各地方別に説明会を開き、今後の生徒数の減少の見通しや本計画案の趣旨について説明を行ってまいりました。さらにその後、十二月から二月にかけては地域学校協議会を開催して、これまで延べ十三回の協議を重ねてきたところです。今後とも、地元、学校、関係機関と十分に意見交換を行うとともに、他府県でさまざま取り組んでいる状況等も参考にしながら、さらに最終案の作成に向けて慎重に検討してまいります。
次に、学力問題についてであります。
昨年度から実施しております学力診断テストの結果から見て、児童生徒の基礎的、基本的な内容の定着はおおむね達成されておりますが、読解力、表現力や考察力などに課題が見られます。これは、昨年末に公表された国際的な学力調査の結果とほぼ同様な傾向を示しており、この中で成績上位となりましたフィンランドにおいては、児童生徒の間に読書の習慣が極めて浸透しているということが挙げられる、さらに、教職員の資質の点では十数年前から教員資格としては大学院修士課程を卒業することが要件になっているというふうなことも背景として考えられると見られております。
こうしたことから、知識、理解はもとより思考力、表現力、さらには学ぶ意欲など、実生活で生かしていくために必要な幅広い学力の育成を重視する現行の学習指導要領の理念や目標を踏まえながら、今後とも各学校に対して子供たちが十分な学力と深い教養を身につけられるよう指導を徹底するとともに、学校の裁量にゆだねられるところが大きい総合的な学習の時間等の工夫・改善を含めて、自主性のある特色に満ちた学校づくりの推進に努めてまいります。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 御答弁ありがとうございました。再質問と要望を申し上げたいと思います。
先に再質問の項目の方から入った方がいいでしょう。
一つは、企画部長に、「和歌山の部落史」に係る問題での質問ですが、この県の予算書というものを見ると、正式の予算書で出てくるのは、ことしの予算について七百五十五万円というものだけが出てくるわけですね。そして、担当者に問いただしてみると、この七百五十五万円というものは、実は十年間で七巻の部落史をつくるという予定なんだということがはっきりすると。だから、単年度、単年度で精査をしてというふうに答弁をされても、その七百五十五万円というものが、十年間の一億幾らということを積算した上でこの議会に提案されるわけでしょう。私どもはこの提案されたものを、そういう裏づけをもって提案されたものとして、賛成か反対かということを判断するわけでしょう。
ですから、私は「和歌山の部落史」が必要かどうかという議論は別にして、もしもこれを続けるとして、こういう計画でいうと本当に十年でできるのか。あるいは、田辺の部落史は三巻プラス年表だけれども、もちろん今度のページ数は少しそれより少ないということはありますけれども、しかし、よく皆さん集まって本をつくるとなると予定より厚くなることが多いわけですし、原稿を書く学者の先生が原稿がおくれることがあるわけですし、あるいは史料を集めると大変な作業ですし、経験のある人から言うと、あの計画を見ると二十年かかるんじゃないかという、こういう心配もある。
そういうことを踏まえて質問をするんですが、県としては、特に今度は──今まで県史の場合は県がつくっているんです。「和歌山県議会史」の場合は和歌山県議会でつくっているんです。「和歌山県の教育史」の場合は和歌山県の教育委員会がつくっているんです。ところが、今度は県とは別に、県の担当部局がつくるんではなくて、別の機関に出してつくらせるわけです。そういうことでいうと、県の手を離れたところで編集作業が進んでいくとしたら一体この予算が膨れ上がる心配がないのかということを一つの心配として私は申し上げたわけで、そういうことはない、ならないということを、それ以上金を出すつもりはないということをはっきりここで言っていただきたいというふうに思います。あるいは、それが延びた場合はどこに責任があるのかということもお伺いしたいと思います。これが「和歌山の部落史」についての質問であります。
続いて教育の問題では、特に学力問題での教育長からの答弁があったわけですが、今全国的に行われているこの学力の問題というのは、どういう角度から見るかという違いはあっても、文部科学大臣は、テレビなんかで出てくるのを見ますと、「朝令暮改と言われるかもしれませんが」というようなことを前置きしながら、今の学習指導要領、総合的な学習の時間や、いわゆるゆとりの教育の見直しを言い始めているわけですね。私は角度が違います。角度は違って、例えばこの新学力観の問題であるとか、そういう名前で知識や技能を習得することの軽視があったんではないかとか、あるいは画一的な学習指導要領の押しつけが問題なんではないかという角度から、今の学習指導要領についての疑問を呈しているわけです。
教育長の御答弁では、学習指導要領そのものは問題なかったんだというふうにお考えで、まあそれはそれでいいんですが、しかし、例えば文部科学省がまた学習指導要領を変えた場合に「いや、今度の学習指導要領は一番いいんだ」というふうに言い出すのではちょっと困るなというふうに思っているわけでして、その辺の意見を申し上げておきたいと思います。もし考えがあったらお聞かせください。
また、フィンランドの教育や佐藤学教授の意見を紹介いたしました。この問題では、例えばフィンランドでは読書の問題を大事にしている、あるいは教員に高い資格を持たせる。これも一つの側面でしょう。けれども、全体としてよく言われるのは、コース分けエリート教育ということをやってきたスイスやドイツなどが破綻をして、そしてこのフィンランドの教育というのは、今、朝日新聞の見出しで言いましたら、競争の教育でないということが言われている、これが一つの大きな側面だというふうに報じられている。私は、教育の問題というのはさまざまな意見があってもいいと思うんです。だから、この意見が絶対正しいとは言わないということをこの議会に来てからずっと言うていますね。だから、違った意見であっても一たんは受け入れると。
しかし、こういうフィンランドの教育というのはそういうところに教訓があるんだというふうに多くの方が言っておられる。それならそれで、教育委員会もそういう側面からフィンランドの教育というものを考えることも必要なんではないか。今すぐにフィンランドがいいんだと、どうのこうのと言うてくれというふうには言っていません。そうではなくて、そういう側面から言われているんだから、ひとつそういう問題も考えてみる必要があるんではないか。そのことは、やはり今進めている競争率十倍になる中高一貫の教育の複線化というものが本当にいいのかどうかということの検討にもなるわけで、私もここで、フィンランドの教育がいいと、それは間違いでございますということを言うてくれとはいっこも言うてないんです。けれども、そういう問題が提起されたときに、真剣にそういう問題も検討するという柔軟な頭を、教育長は本来持っておられると思っているんですが、やはり持っていただきたいというふうに思います。
この画一的なという問題で言うと、総合的な学習の時間は創意を生かしてもらえるんだというふうに言われますけど、それだけになっている。例えば、今度文部科学省がやろうとしている中学生の職場体験という事業があるんですよ。これは全国的にトライアルウイークという言葉で兵庫が始めたんで注目されている、中学生が職場を体験するという活動で、決して悪いことではないんですけどね。しかし、そういうものが教育委員会の手にかかると、県内すべての中学校に五日間以上実施するという要綱が出されるということになるんですね。
けども、働く意欲、働く労働体験を持たせる教育なんていうのはいろんな形があってもいいでしょう。例えば、ミカンが盛んなところで、ミカンの取り入れの時期に一遍学校を一日休みにして、ミカンとりを手伝うてこいと、自分とこでミカンつくってないところは全部近所のとこへ行ってミカンとりやってみろとやる、例えばそういう教育があってもいいでしょう。それを事業所へ五日間というふうな、そういうことを画一的にやるというのは、やはり私は余りよくないというふうに思います。
フィンランドの教育をめぐっての教育論議を多面的に深めていってはどうか、あるいはこの学校現場の自由な教育活動を保障するという問題で、もう一度教育長のお考えをお聞きしたいと思います。
あと、以下は要望であります。
まず、大成高校と高校再編の問題では、教育委員会もいろいろ今検討していただいているようで、十分地元の意見を聞いてもらいたい。特にことしのような宙ぶらりんのままでは、やはり大成高校としても生徒募集に大変苦労するわけです。まだ二次試験でどれだけの募集があるかわかりませんけども、宙ぶらりんというこの不安定な中でよくあそこまで生徒が集まってくれたなという思いがあるんですが、やはり残せる方向で努力をしてもらいたい。古座高校についても、また他の分校などについても要望、意見が上がってくるようですが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
それから、都市計画道路の問題ですが、これまあ知事からは、私の提言を受け入れていただいてありがとうございました。これはもともと、知事が受け入れたというより、私がこの前の議会のときに、木村知事が一・五車線道路ということを提唱したと、それは非常にいいことだと、この考え方を都市計画道路まで広げたらこういうことになるんではないかというふうに申し上げたことを知事も受け入れていただいたわけで、何も私が初めて言い出した話ではないんですけども。しかし、これは和歌山県の都市計画道路政策の上で非常に大きな転機になる答弁だと思っています。ひとつ地元の皆さんと一緒に、どんな道路が必要なのかということを私ども議論したいというふうに思っています。
四十二号の渋滞解消への海南湯浅道路は、これからいろいろやっていく問題ですが、ひとつよろしくお願いしたい。
あとは、JICAの問題では、公室長からは参加者の意見も聞いてみたいというお話もありましたので、私もこれからしっかりそういう意見も聞きながら、そういう皆さんの支援も一緒にしていきたいと思っています。
以上で、私の第二回目の質問を終わります。
○議長(小川 武君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
企画部長高嶋洋子君。
〔高嶋洋子君、登壇〕
○企画部長(高嶋洋子君) 議員の再質問にお答えを申し上げます。
まず部落史の事業の概要でございますが、作業予定がありまして、作業予定が、十七年度は史料の収集をしましょう、十八年度から二十年度にかけましては史料の収集及び編さん作業をしていく、あるいは二十一年度から二十二年度は史料の収集と編さん作業及び発刊についての準備をしていくというふうなことで、二十六年度には発刊するというふうな作業手順がございまして、それに基づきまして毎年十分に精査をしまして、適切な範囲で予算を計上して執行してまいるというふうなことでございます。
それから、本事業は、民間の研究者とか、あるいは学者の方々の部落史の研究解明を支援するものでありまして、和歌山の部落史研究促進協議会というものを──県と市町村で構成する協議会でございますが、そういうものを設立しまして、そこに人権局が事務局を持ちましてそこでやっていくというふうなことでございます。それから、人権研究所につきましても三分の一を負担するということがございます。ですから、ここで断言と言えるかどうかわかりませんが、十年以内で必ずやりたいというふうには思っております。
以上です。
○議長(小川 武君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 再質問、二点あったかと思います。
まず最初の学習指導要領についての考え方といいますか、これはやはり固定的に画一的に考えるべきものではないということがあろうかと思います。私もかつて文部科学省で前の学習指導要領作成に携わった経験を持っておるわけで、それを作成した後で、教育委員会の立場で教育の第一線でそれをどう実施するかという両方の経験をした中で感じますのは、やはり学習指導要領というのは一つの書かれた文書というか文言であって、それを肉づけし、さまざまに膨らませて各地方の特色に合ったように展開していくのは、やはり地方であり学校であり地域住民の皆様方の協力という側面を抜きにしてはあり得ないわけでございます。その点からすれば、国は国の立場でいろいろな状況判断の中で見直しもなさっていくだろうとは思っておりますけども、その中で内容面でいかにそれを地方に合ったようにより効果的にしていくかというのが我々教育関係者の役割であり、知恵を発揮する場面ではないかというふうには思っているところでございます。
それから、フィンランドに関連して、もっと情報収集なり分析・検討せよという御意見だと思いますが、ごもっともであるわけで、ただ、フィンランドの皆さんからすると、あの結果が出てから日本の各方面からの問い合わせとか来訪者が急にふえて面食らっているというふうな話もあるぐらいで、やっぱり国情の違いというものが背景にあるという中で一概に比較できないところがある中で、日本の反応が少し過剰ではないかというふうな受けとめ方もあるやには聞いております。
ただ、その中で、今回のテストで我が国がいろんな分野で下がっていった大きな要因に、学力や意欲、生活態度の面での二極分化の兆しが見えてきていると。中位から下位層がずっと重くなってきているという、そのことが全体の平均を下げたという指摘があるわけで、特に義務教育ではそういうことは非常に注意しなければいけないことでありますから、その点については和歌山県の教育行政並びに学校の教育活動の中で十分心していかなければいけないということと、国が決めた、右向け右という時代では私はないと思っております。いろいろな大きな枠は示してもらって結構ですけども、具体的なやり方においては県独自の方法なり考え方を生かしていける教育分野の内容面における地方分権というのは、もう流れとしてとまらないというふうに考えておりますので、その趣旨に沿って、和歌山県の子供たちの学力や生活が十分に県民の皆さんに満足してもらえるようなものになっていけるよう、さまざまな今年度、十七年度の新規事業にも幾つか盛り込んでおりますし、具体的に議論から実行の段階に来ているというふうに考えているところでございます。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
四十二番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 教育の問題は、議論をすれば尽きないわけで、いろんな意見でまたこれからも議論していきたいと思っています。
教育長が教育の問題で、国が言うたら右向け右でないというこの言葉、大変私は気に入りました。同時に、教育長が言うたら右向け右ではないので、ひとつ学校現場でも自由な教育活動ができるように、そういうことをしていきたいというふうに思っています。
いろいろ意見もありますが、時間も時間ですから、私の質問はこれで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時四十五分休憩
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