平成16年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)
県議会の活動
平成十六年十二月 和歌山県議会定例会会議録 第三号
─────────────────────
議事日程 第三号
平成十六年十二月九日(木曜日)午前十時開議
第一 議案第百三十四号から議案第百六十九号まで、並びに報第十四号から報第十九号まで(質疑)
第二 一般質問
会議に付した事件
一 議案第百三十四号から議案第百六十九号まで、並びに報第十四号から報第十九号まで(質疑)
二 一般質問
出席議員(四十六人)
一 番 須 川 倍 行
二 番 尾 崎 太 郎
三 番 新 島 雄
四 番 山 下 直 也
五 番 小 川 武
六 番 吉 井 和 視
七 番 門 三 佐 博
八 番 町 田 亘
九 番 東 幸 司
十 番 浅 井 修 一 郎
十一 番 山 田 正 彦
十二 番 坂 本 登
十三 番 向 井 嘉 久 藏
十四 番 大 沢 広 太 郎
十五 番 平 越 孝 哉
十六 番 下 川 俊 樹
十七 番 花 田 健 吉
十八 番 藤 山 将 材
十九 番 小 原 泰
二十 番 前 芝 雅 嗣
二十一番 飯 田 敬 文
二十二番 谷 洋 一
二十三番 井 出 益 弘
二十四番 宇 治 田 栄 蔵
二十五番 前 川 勝 久
二十六番 山 下 大 輔
二十七番 木 下 善 之
二十八番 原 日 出 夫
二十九番 冨 安 民 浩
三十 番 野 見 山 海
三十一番 尾 崎 要 二
三十二番 中 村 裕 一
三十三番 浦 口 高 典
三十四番 角 田 秀 樹
三十五番 玉 置 公 良
三十六番 江 上 柳 助
三十七番 森 正 樹
三十八番 長 坂 隆 司
三十九番 阪 部 菊 雄
四十 番 新 田 和 弘
四十一番 松 坂 英 樹
四十二番 雑 賀 光 夫
四十三番 藤 井 健 太 郎
四十四番 村 岡 キ ミ 子
四十五番 松 本 貞 次
四十六番 和 田 正 人
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
知事 木 村 良 樹
副知事 小 佐 田 昌 計
出納長 水 谷 聡 明
知事公室長 野 添 勝
危機管理監 白 原 勝 文
総務部長 宮 地 毅
企画部長 高 嶋 洋 子
環境生活部長 津 本 清
福祉保健部長 嶋 田 正 巳
商工労働部長 石 橋 秀 彦
農林水産部長 阪 口 裕 之
県土整備部長 酒 井 利 夫
企業局長 西 芳 男
教育委員会委員長 駒 井 則 彦
教育長 小 関 洋 治
公安委員会委員長 大 岡 淳 人
警察本部長 宮 内 勝
人事委員会委員長 西 浦 昭 人
代表監査委員 垣 平 高 男
選挙管理委員会委員長 北 村 亮 三
職務のため出席した事務局職員
事務局長 小 住 博 章
次長 佐 竹 欣 司
議事課長 島 光 正
議事課副課長 藪 上 育 男
議事班長 山 本 保 誠
議事課主任 尾 崎 善 亮
議事課副主査 楠 見 直 博
総務課長 土 井 陽 義
調査課長 宗 野 幸 克
(速記担当者)
議事課主任 吉 川 欽 二
議事課主査 保 田 良 春
─────────────────────
午前十時二分開議
○議長(小川 武君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、議案第百三十四号から議案第百六十九号まで、並びに知事専決処分報告報第十四号から報第十九号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
十番浅井修一郎君。
〔浅井修一郎君、登壇〕(拍手)
○浅井修一郎君 皆さん、おはようございます。
本日、一般質問二日目のトップバッターとして、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問をさせていただきます。
それでは、第一点目の有田川の防災対策の一環としてのしゅんせつについてお伺いいたします。
まず、さきの台風二十三号による大水害や新潟中越地震で被災され、亡くなられた多くの方々に心からお見舞いと哀悼の誠をささげます。
さて、本年は例年に比べて数多くの台風が上陸するといった異常気象に見舞われた一年でもありました。本県にも被害をもたらした六月の台風六号による災害を皮切りに、七月の新潟、福島及び福井における集中豪雨災害、七月末から八月、九月にかけての台風十号、十一号、十五号、十六号、十八号、二十一号と相次ぐ台風の上陸による災害、さらに十月に入っても、台風二十二号、京都、兵庫県の日本海側に甚大な被害をもたらした台風二十三号による災害と、風水害による災害が相次いでいます。台風の日本への上陸回数は十回と、昨年までの最多上陸数六回を大きく更新しています。さらに、十二月五日未明には、台風二十七号の影響を受けた、いわゆる爆弾低気圧による集中豪雨災害も発生しています。特に、私は台風二十三号で大きな被害の出た兵庫県豊岡市の円山川や、その支流の出石川の堤防が決壊し、濁流が住宅街に流れ込んだ模様がテレビのニュースで克明に放映されるといった大変な状況に驚きを覚えた上、私が幼少の昭和二十八年、有田川を初めとする多くの河川が決壊し、死者、行方不明者千四十六名が出た七・一八災害を思い浮かべました。
このような状況の中、和歌山県では一年間に十一回もの水防配備体制が発令され、その都度厳重な警戒態勢がとられました。幸いにも、新潟や兵庫などのような甚大な被害の発生は免れたところですが、平日・休日、早朝・深夜を問わず、河川の警戒監視などの業務に当たられた水防関係者の皆様の御尽力に深く敬意をあらわす次第であります。有田川を管理する有田振興局においても五回の水防配備体制が発令され、十月の台風二十三号では、警戒水位を上回る出水に見舞われ、有田川洪水予報も発令されましたが、幸い破堤等の甚大な被害の発生には至りませんでした。
有田川の防災整備等の対策につきましては、昨年の九月議会でも取り上げ、木村知事、酒井県土整備部長から前向きな答弁をいただきました。その中でも、保田橋周辺の雑木等の伐採を要請したところ、県当局の速やかなる取り組みが功を奏し、さきの大雨の際には、ふるさとの川総合運動公園では大規模な冠水は免れ、被害も以前より少なく済んだと聞いております。しかしながら、有田市を中心とした下流域では年々土砂が堆積してきているとの指摘も市民から数多く寄せられています。
そのような中、今月三日には、私の地元有田市の連合自治会長の児嶋實男氏を初め、役員、それに有田市役所幹部職員ら一行が県の加藤河川局長を訪れ、木村知事あての有田川しゅんせつ工事に関する陳情を行いました。本来なら堤防全体の整備をお願いしたいところでありますが、近年の財政状況をかんがみますと短期間で整備を願うことは無理な要望であるとのことから、河積を広げ流下能力の増加を図り、各堤防への負担を余りかけないための対策の一つの手段として、今回のしゅんせつについての陳情であります。
その内容は、「近年、土砂の堆積によって河床が上昇して河川の対応能力が低下し、各堤防への負担が増加するとともに、周辺地域の排水能力も低下しております。台風二十三号の際には、警戒水位を超える水位の上昇により堤防決壊の危険を身近に感じたところであり、県知事におかれましては、実情を御賢察の上、有田川本来の機能回復に向け、しゅんせつ工事等が早期に実現されますよう、よろしくお取り計らいのほどお願い申し上げます」というものであります。地球の温暖化現象等によって近年異常気象が続き、局地的な集中豪雨が相次ぐ中、有田川沿線の住民は、過去の七・一八水害が脳裏に焼きついていて、今も強い不安を隠し切れずに日々を送っているのが現実であります。
次に、有田川を有効かつ適正に利用推進しようと、河口や下流域にマリーナ整備が計画、検討されています。この計画は県内の河川では初めての事業で、各方面から注目を集めています。現在、有田川河口には百三十から百四十隻のプレジャーボートが不法係留をされており、これらへの対策の解決のみならず、河川の安全な流下、それに、近く起こり得ると言われております東南海・南海地震による津波への対策の観点からも、マリーナ整備計画は大きな役割を果たそうとしております。
それが、ことし一月になって、このマリーナの整備候補地周辺が環境省指定の重要湿地であるとの指摘がなされ、県では当初の計画を見直しているところであります。この重要湿地は湿地の保全を目的に選定されたもので、法的な開発規制はありません。河口には、我が国でも珍しい巻き貝の一つのコゲツノブエやハクセンシオマネキなどの貴重な干潟底生動物が数多く生息していることがことし春の県の調査で改めて確認されたと聞いており、また秋には二回目の調査が行われ、その結果を取りまとめているところであるとのことでありますが、その概要についてもお尋ねをいたします。
人がすばらしいふるさとの風土、環境のもとで魚釣りや潮干狩りなど水と親しくかかわっていくことや、自然環境の保全、自然との共生といった点は大変大切なことであります。しかしながら、そのために河口付近の景観の保全や改善、有田川流域の住民の生命や財産が脅かされては元も子もありません。
そこで、知事にお尋ねいたします。
河川事業の重要性について、どのように認識され、今後どのような対応をされていくおつもりでしょうか。また、有田川のしゅんせつについての取り組みとプレジャーボート対策について、県土整備部長にお尋ねいたします。
次に、名実ともに日本一のミカンを目指して、有田ミカンについて質問させていただきます。
私の地元有田市では、あたり一面山々は黄金色に輝き、文字どおりオレンジ色一色となっています。有田市役所のみかん農政課には「味と歴史は日本一、有田みかん」というスローガンが掲げられています。この有田ミカンを中心とする県内産のミカンの予想収穫量が日本一になると、先般、農水省より発表されました。府県別では、本県が十七万四千トンで、長らく日本一だった愛媛県が台風の影響で十七万一千五百トンと、わずかの差で日本一となるものです。この日本一になったのは愛媛県が災害によって収穫量が減少したもので、今後も和歌山が日本一になるといった裏づけはありません。
そこで、真の日本一になるにはどうしたらよいかであります。関係者に話を聞いたところ、まず販路の開拓であります。愛媛や熊本などの場合は東京を中心とした人口の多い首都圏での販路を開拓している反面、有田ミカンを中心とした本県産は京阪神が主な市場であります。京阪神地方なら輸送等に手間がかからないほか、得意先が身近なところに確保できており、しかも有田ミカンは、日本一の味を誇っている有田ミカンといったブランド力の上にあぐらをかいて長年販売に当たってきたことも事実であります。その間に、愛媛や熊本県では八〇%以上という共選体制を確立させたり、ミカンの糖度や大きさ等を光センサーで選別する最新鋭の自動選別機を本県よりもいち早く導入するなど、首都圏の大型スーパーなどが大量注文をしてきてもすぐに対応できる販売システムを構築しています。
そこで、本県では、ブランド推進局を中心に、イトーヨーカ堂等、大手量販店などに対し積極的な販路拡大をお図りいただいているところでありますが、今後さらに県や農協、地元の生産者とが一体になった共販体制の確立と強化が必要であります。全国のミカン収穫量は、一九七九年のピーク時の三百六十一万トン余りに比べ、近年は三分の一以下に落ち込んでいます。これは、傷物や変形したものなど市場が嫌う傾向にあり、ジュース等の加工に回されているケースもありますが、全体としては大きく落ち込んでいます。四百年の歴史を持つ有田ミカンの関係者らは、今後も品質や収穫量と名実ともに日本一の有田ミカンの復活に向け、さまざまな取り組みを行っています。
そこで、首都圏などの市場での競争に勝つためにはどうしたらよいかであります。これまでは、愛媛産などに対抗するためにコスト削減等を中心に取り組んできた一面もありますが、これから最も大切なのは、消費者のニーズの動向をいかにつかむかであります。ミカンを販売している青果店などに聞きますと、最近は少子高齢化が進み、老夫婦の二人暮らし家庭や核家族化で、従来のような十キロ入りミカンを贈ってもすぐに腐らせてしまうので五キロ入りや三キロ入りのミカンがよく売れる傾向にあることや、光センサーで糖度が表示されていることや、おしゃれな箱に入ったミカンを好む若い世代も多く見られるということであります。また、いいミカンは傷みが早いと言われています。特に、普通温州ミカンに比べてわせ温州ミカンは、皮も薄く袋もやわらかいので出荷してから十日から二週間のうちに食べてもらわないと腐り始めるとされています。
そこで、県におかれましては、さきの消費者のニーズを的確にとらえていただくためにも、農林水産部はもちろんのこと、ブランド推進局、それに県工業技術センターなど関係機関が一体となって、腐りにくいなど工夫を凝らしたミカン箱の開発に取り組まれるなどして他府県との競争に打ち勝ち、首都圏等での販路拡大に当たられてはいかがでしょうか。
このほか、昨年度から県の補助が打ち切られている光センサー方式の選果機や台風対策のための防風ネット設置等、補助事業の見直しやマルチ栽培などの新技術に対する積極支援、それに田口早生やゆら早生など高品質種への改植事業の推進など、日本一に向けてのさまざまな取り組みがあります。
さらに、木村知事は先月下旬、吉備町にある大型で最新鋭の設備を持つJAありだのAQ選果場を訪れ、ミカン農家の担い手の青年らとこれからのミカン農業についてふれあい未来づくりトークを行いました。その中で知事は、和歌山のミカンが日本一になったのを契機に、より積極的な動きを行ってはどうかと話されたと聞いています。私もこれに共感した次第であります。このたびの生産量日本一は、他県の台風被害による収穫量の減少によるものであります。そこで、この日本一をいま一度真摯に受けとめ、この機会を契機に、今後さらに県やJA、生産者が連携を密にし、災害に強い消費者ニーズに合った高品質ミカンを生産し、国内はもとより中国等、海外に向けての販路を広げるべく、より一層の御努力を積み重ねていただきますよう願うものでございます。
そこで、知事に、真の日本一を目指すことについての御感想と抱負をお伺いします。また、消費者ニーズを的確にとらえるための県当局の取り組みについてお尋ねいたします。
次に、地域病院の医師不足について質問をします。
本年四月から新しい医師臨床研修制度が開始されました。四月の毎日新聞に、制度開始に伴い医師不足に拍車がかかっているという記事が掲載されておりました。この医師臨床研修制度とは、昔インターン制度というものがありましたが、それの変化したもので、大学卒業後、国家試験に合格して医師免許を取得した後に、医師としての経験を積むために二年間の臨床研修を受け、患者を診るための経験を積みます。これが臨床研修制度のあらましであります。
医療は日進月歩しています。また、我が国は高齢化社会を迎え、複数の疾患を抱える患者が増加しています。その中で、専門分野にかかわらず、日常よく遭遇する医学・医療の問題にきちんと対応できる医師、また患者と良好な関係を築ける医師が求められています。これまでの臨床研修は、研修医が研修に専念できる環境になく、また研修内容も専門とする診療科中心であることなど、求められる医師の養成に対応できていないと指摘されてきました。こうした状況の中、研修に専念できる体制を整え、プライマリーケアの習得を目的に、内科、外科等の診療科において一定の必要な経験を積む新しい臨床研修制度が開始されたようです。
その一方で、大学病院の医局員の確保や研修医への指導体制充実のため、これまでのように大学から地域の病院に医師が派遣されなくなり、地域の病院で混乱が発生していると記事の中で説明されておりました。私の地元にある有田市立病院においても、内科医師が五月に一名退職し、来年三月にも退職者が出ることになっているようですが、その補充のめどが立っていない状況にあります。そのため、夜間、内科系・外科系二名体制で診療に当たっていたのが一名体制になるなど、大きな影響が出ております。
また、新しい臨床研修制度開始にあわせて研修医が研修病院を自由に選択できるマッチング制度も導入され、全国の研修病院が同じ土俵の上で研修医を確保する競争状況に置かれるようになりました。二回のマッチング結果を見れば、研修医はプライマリーケアの習得に有利で研修実績を有する東京、大阪等の都市部の有名病院に集中し、和歌山などの地方の病院が敬遠されているところであります。将来の和歌山の医療を担う研修医が確保できなければ和歌山の医療が今後どうなっていくのか、大変危惧をしているところであります。医師臨床研修制度そのものはよい制度であるとしても、研修医が都市部へ集中するのを緩和するため、制度の見直しを求めていくことも必要ではないでしょうか。
医師の過不足の状況を示す指数に、人口十万人当たり医師数というものがあります。和歌山県は全国平均を上回る十三番目で、医師不足の状況にないそうです。しかしながら、医師は和歌山市に集中し、そのほかの地域はそうでもないようで、病院協会が実施した県内の公的病院のアンケート調査によれば、多くの病院で有田市立病院と同様に一部医師が不足していると回答しております。こうした公的病院は、従来から関連する大学からの医師派遣に依存してきたところでありますが、医師の専門、都会志向が強くなっていることや新臨床研修制度等の開始等もあって、こういった状況になっているようです。さまざまな制約がある自治体病院では、医師給与を高額にして公募する方法等も困難で、医師確保のため行えることは限られております。どうしても大学からの派遣に依存せざるを得ない状況にあります。
そこで、福祉保健部長に質問いたします。
将来の和歌山の医療を担う臨床研修医をどのように確保していこうとしているのか、また地域の自治体病院の医師不足の状況にどのように対応されようとしているのか、お考えをお聞かせいただきたい。
また、医師不足などの課題を抱えている中で、今後の病院経営と地域医療への貢献という観点から、新たな方向性を見出す必要があると考えております。有田市立病院は、有田保健医療圏域の基幹病院であり、災害拠点病院にも指定されるなど、有田地域の中核的な医療機関としての地位を確立しているところであります。特に、医師不足を補うためには地域の開業医の方々と病床を共同利用する開放病床の整備などが有効であり、そのためにも地域医療支援病院の承認を受けることも一つの方策ではないかと考えますが、その前に、患者紹介率を初めとするさまざまな承認要件が必要になると聞いております。
つきましては、地域の実情に応じた地域医療支援病院の新たな制度がぜひとも必要であり、県当局としても国に対し承認要件の緩和について要望していただきたいと考えます。福祉保健部長の見解を求めます。
次に、中学校に配置されておりますスクールカウンセラーについてお尋ねします。
文部科学省補助事業として、平成十三年度から十七年度にかけて小規模校を除くすべての中学校にスクールカウンセラーを配置することを目標としています。本年六月、長崎県佐世保市の小学校において、六年生女児が同級生女児をカッターナイフで切りつけ死亡させるという痛ましい深刻な事件が発生しました。また先日は、奈良県でも女児の誘拐殺人事件が発生しており、さらに新潟中越地震に被災した子供たちの心を支える学校の取り組みも報道されておりました。
不登校やいじめだけでなく、非行、虐待、キレる子、閉じこもり、家庭内暴力等々、子供に関する問題が後を絶たず、非常に大きな社会的な課題となっている現況であります。スクールカウンセラーは、このような問題に対し、児童生徒へのカウンセリングやカウンセリングに関する教職員及び保護者に対する助言・援助や情報収集・提供を業務とし、問題解決に当たっています。本県における不登校児童生徒数はここ数年減少傾向にあるものの、平成十五年度は小学校で二百八十二名、中学校では千三十一名、計千三百十三名もあり、比率では全国四十七都道府県中ワースト第六位であり、依然として憂慮すべき問題であります。また、いじめに関しても、昨年度は減少しておりますが、ここ数年ほぼ横ばい状況であり、今後もいじめ解消への取り組みを進めていかなければならないと考えています。
こうしたことから、専門的な知識や技能を持つ人材の活用が必要であり、臨床心理士の資格を持つスクールカウンセラーを中学校に数多く配置することは有効な方策であると考えます。しかし、県内の中学校のスクールカウンセラーの配置率は三三・五%と、全国平均と比べても低い状況であり、県内のみならず近県に在住する臨床心理士及びスクールカウンセラーに準ずる者を有効に活用することが重要であると考えます。
そこで、今後スクールカウンセラーの配置についてどのようなお考えか、教育長にお伺いいたします。
また、さきのスクールカウンセラーとともに、学校における教育相談において県教育委員会教育研修センターの心の教育相談事業がありますが、このことについてお尋ねいたします。
現在、本県における学校教育相談は、俗にスーパーバイザー方式と呼ばれ、相談をする中心は学校担任を初めとする学校教職員であるという他県にない方式をとり、他県からは和歌山方式と呼ばれ、注目をされているように聞いております。この和歌山方式は、相談児童生徒やその保護者だけを相談の対象としているのではなく、あくまで学級担任を初めとする学校教職員をその対象としているところが特徴であります。それによって、相談者である学校教職員は、児童生徒の不登校等の改善だけでなく、その相談を通して教職員自身も不登校やいじめについてや子供の心について研修しております。
心の教育が叫ばれている現在、教職員の心の教育について、研究と教職員自身の研修が大変重要であります。このことを考えても、和歌山方式と呼ばれる本県の教育相談事業は、不登校等の解決だけでなく、前段で申し上げました、いつ発生するかわからない事件や事故、災害に対して、児童生徒の心のケアを自校が自力で初期対応ができるといった体制づくりのための教職員の研修の場として大きな役割を果たしてきたと思うのであります。スクールカウンセラーの高設置率とともに、さらなる本県の心の教育相談事業の充実はもとより、本県教育相談事業の中心として直接教職員の相談を受けている教育相談主事とスクールカウンセラーの連携及び教職員の心の教育についてのより一層の研修が重要であると思うのであります。そのことについてどのようにお考えか、教育長にあわせてお伺いいたします。
以上で、第一回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの浅井修一郎君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、水害、治水の重要性、そしてまた有田川のしゅんせつ、堤防の改修等の必要性についての御質問でございます。
今、ともすれば、公共事業不要論というふうなことから、特に治山とか治水とか、こういうふうな事業についていろいろなことが言われている状況でありますけれども、今回の台風、そして集中豪雨、こういうふうなことの被害を目の当たりにしたときに、この治水ということの重要性というふうなことを改めて国民全体が感得したのではないかというふうに私は思っております。私自身も、先般、福井県へ行きまして、集中豪雨で鉄橋が三つ落ちたところの現場を、これは自分で私的に行ったんですけども、見てきました。本当に水の威力というふうなものは想像を絶するものがありますし、そしてまた堤防決壊によって浸水に遭った家というのが、完全に崩壊した家よりもまだ始末に悪いと。要するに、壁とかそういうふうなところが水を吸い込んでしまって、もういっそつぶれてくれた方が簡単に言えば補償とかいろんなものが出るけれども、浸水だったので出ないというふうなちょっと皮肉な話があるほどに、この治水の問題というのは大きな問題だというふうに思っております。
和歌山県でも、この有田川、二十八年の水害という非常に大きな被害があったわけですけれども、確かに今、底が浅くなってきたり、いろいろなことがあって、水害に見舞われる可能性が高まっているという御指摘もありましたので、十分検討して前向きな対応をしていきたいと、このように思っております。
それから、ミカンのお話です。
私、実はこの間、JAありだの選果場へ行ってまいりまして、非常に感心しました。もう光センサーといっても、ただ単に一カ所から光を当てるんじゃなくて六カ所ぐらいから光を当てて、そして、それによって質を見て、ベルトコンベヤーでコンピューター管理で必要な等級のところへ落ちていくと、こういうふうな形。そしてまた、生産者がわかるような、いつ出荷したかというような、トレーサビリティーというか、そういうものが確立された仕組み。やはりこういうふうな形で品質の高いものを出していかないと、なかなか都会の消費者というふうなものにはマッチしないのかなと。そして、またマルチドリップ方式という新しい方式でやっているミカン、これは非常に質が高いわけですけども、こういうものもことしからその選果場へ入って出荷ができるようになったというふうな喜びの声とか聞きました。
県の方も、以前から東京の大手の量販店なんかへ販売を拡大するとか、それから、マルチドリップ方式等の売り方等についていろいろ相談に応じたり支援するとかいうふうなことをやってきたわけですけれども、ここはひとつ、この間の話では三十五年ぶりに日本一だという話だったんだけど、よく聞いてみると三十五年前になっていたのは静岡県で和歌山県が日本一になったのは有史以来初めてということですので、まあ、敵失というか、よその県のある意味では不幸な台風の被害によってということではあるんだけども、これを大きなきっかけとして、和歌山県のミカンの再ブランド化ということに僕は挑戦していきたいと思います。
日本一を滑り落ちた愛媛県では非常に危機感を持っているというふうな話があるんで、これは来年も日本一が続くかどうかわかりませんけども、だけど少なくとも日本一を続けるような気持ちで頑張っていきたいと思うので、私自身も先頭に立って、愛媛なんかでは相当思い切ったトップセールスみたいなことをやっているみたいなんで、こういうふうなこともやっていきたいと思いますし、それから、この日本一が確定した時期に、余りよそを刺激しないような形で日本一祭りのようなものをやっぱりしていかないと、もうひとつミカン和歌山というふうなものが、日本一になった割にはしらっと県全体がさめているというふうな感じもしないでもないので、こういうふうな問題、より積極的に取り組んでいくような方法を考えていきたい、このように考えております。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 有田川のしゅんせつについてでございます。
有田川の堆積土砂の測量調査を実施したところ、堆積と洗掘が入りまじった状態であり、前回の平成十二年度測量調査結果と総量的には大きな変化はありません。しかしながら、局所的に低水流路が蛇行している区間もあることから、今後より安全な洪水の流下が図られるよう、上下流の流下能力バランスや河川環境などに配慮しながら、整備の優先順位や整備の手法も含めた対応について、関係機関とも協議しながら前向きに検討してまいりたいと考えております。
次に、プレジャーボート対策でございます。
河川事業を実施するに際しましては、洪水や地震・津波対策といった自然災害から流域住民の生命、財産を守る防災面での対応が最優先されるのは当然のことですが、整備を進めるに当たっては、動植物の生息、育成を初めとする河川環境面にも可能な限り配慮していくことが重要であると認識しております。
有田川においては、係留施設整備の検討に関連して汽水域における環境調査を実施していますが、当初検討していた有田川左岸の有田大橋から安諦橋間には、コゲツノブエを初め多くの貴重な底生動物が生息していることが確認されており、当該区域における施設整備にはなお慎重な検討が必要であると認識しているところです。
今後、早急に環境調査結果の取りまとめを行うとともに、その結果や地元住民の方、学識者の意見なども踏まえながら、不法係留船対策の進め方について、さらに検討してまいりたいと考えております。
○議長(小川 武君) 農林水産部長阪口裕之君。
〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 消費者のニーズを的確にとらえたミカン対策についてでございますが、議員御指摘のとおり、最近の消費者ニーズは、安全・安心への関心の高まり、少子高齢化や核家族化による購入量の減少など、大きく変化してございます。そのため、県におきましては、多様なニーズの変化に迅速に対応するため、全国百七十二市場で構成する青果物流通消費情報協議会を通じまして、安全・安心を初め、糖度などの食味や品質などに対するより詳細な情報収集に努めるとともに、関係機関に速やかに伝達し、活用いただいているところでございます。
また、消費者の安全・安心志向を踏まえ、生産情報の記録や伝達を行うトレーサビリティーシステムを推進するため、ミカンを初め、主要果実の選果場において情報機器の整備に取り組みつつあります。さらに、規制緩和の中で多様な流通ニーズに対応できるよう、昨年六月に出荷規格に関する県条例の廃止を行い、現在、出荷団体におきましては、容器サイズやデザイン等が工夫され、地域の特性を生かした新たな販売への取り組みが始まってございます。
今後とも関係部局と連携を図りながら、生産者団体と一体となって消費者ニーズに対応した産地づくりを推進するとともに、海外輸出も視野に入れた攻めの農業を積極的に展開し、名実とも日本一のミカン産地を築いてまいりたいと考えてございます。
○議長(小川 武君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 地域病院の医師不足についてお答えを申し上げます。
まず、これからの県内医療を担う臨床研修医の確保につきましては、今年度から始まりました新しい臨床研修制度におきまして県内研修医が募集定員の六割にとどまっていることから、将来の医師の確保にも影響してくることが懸念されます。こうしたことから、県といたしましては、本年三月に県立医大を初めとした県内十二の臨床研修病院、医師会、病院協会と県で和歌山県臨床研修病院連絡協議会を立ち上げまして、全国の医学部学生に対する県内研修病院のPRや魅力ある研修プログラムづくり等に関係者が一体となって取り組んでいるところでございます。また、県立医科大学におきましても、卒業生の県内定着を図るため、研修環境の整備を初めとして、さまざまな取り組みがなされているところでございます。
しかしながら、研修医が都市部の有名病院に集中する傾向にありますので、県といたしましては、引き続き臨床研修の質の向上に努めますとともに、募集定員を地域ごとで設定すること等について国に対しても要望してまいります。
次に公的病院の医師確保についてでございますが、医療を取り巻く環境が大きく変化する中で、地域の公的病院にとって医師の確保が大きな課題になっていると認識をしてございます。県といたしましては、派遣可能な医師の確保を初め、効果的かつ効率的な方策について、県立医大、病院協会等、関係者による協議、検討を進めてまいりたいと思います。
次に地域医療支援病院についてでございますが、県民が身近な医療機関で安心して医療を受けるには、開放病床の共同利用など、病院といわゆるかかりつけ医との密接な連携が必要と考えております。平成九年の医療法の改正によりまして導入された地域医療支援病院は、二次保健医療圏単位で位置づけられた病院類型でございまして、地域のかかりつけ医との適切な役割分担と連携を図ることが求められており、とりわけ高い患者紹介率が要件となってございます。地域医療支援病院の整備につきましては、地域の中核病院となるための病院みずからの経営努力をお願いするとともに、承認要件の緩和について国に対し要望するなど、県としましても県内の各二次保健医療圏における整備を推進してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(小川 武君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育問題、二点についてお答えいたします。
まず、スクールカウンセラーは、不登校を初め心に不安を持つ児童生徒に対するカウンセリングを行い、保護者や教員の相談に応じるなど重要な役割を果たしております。しかし、臨床心理士の資格を持つ者が県内に少ないため、十分な配置は困難な状況にありました。そうした中で、平成十四年度以降、ここ三年間に二十一校、三十五校、五十校と順次配置校を拡充してまいりました。今後も不登校生徒に対する対応やいじめ問題の解消、学校の教育相談能力の向上に果たす役割の重要性を踏まえ、配置校数を大幅に増加させるとともに、幅広い活用のあり方についても検討してまいります。
また、議員お話しのありました和歌山方式の教育相談主事、これとスクールカウンセラーは本県教育相談の両輪であることから、緊密に連絡協議会を開催し、相互の連携強化に努めているところです。
心の教育相談に係る研修については、教職員が相談活動の具体的な技能等を習得できるよう、毎年十日間程度、教育臨床心理学講座を実施しており、本年度は管理職を含め約五百名が参加いたしました。この講座の受講者が校内の教育相談や研修等の中心となって取り組むことにより、それぞれの学校でカウンセリングマインドを生かしたさまざまな教育活動を幅広く展開することとしております。今後もより多くの教職員が児童生徒や保護者の悩みや課題にこたえ、適切に対応できるよう研修講座を一層充実させてまいります。
以上でございます。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
十番浅井修一郎君。
○浅井修一郎君 ただいま、それぞれの質問に対し、知事初め担当部長並びに教育長より御答弁をいただきました。何点かについて再質問をさせていただきます。
まず、有田川の河川整備についてであります。
県土整備部長の答弁は、具体的な取り組みについて余り文言がなく、何か奥歯に物が挟まったような感じで釈然としないわけでありますけれども、しかし、自分には厳しく人には優しくと、私はこれをモットーにしておりまして、これ以上深くは申しませんが、この件につきましては、本日もごらんのとおり傍聴席の方へ市議会や自治会等、多くの皆さんが傍聴に見えられるぐらい関心が高く、地元の熱い期待が寄せられているあかしでもあります。どうか一日も早く具体的な計画を示していただき、着手していただきますよう強く要望いたします。
二点目につきましては、地域病院の医師不足についてであります。
今、地域の病院は、医師不足による痛手を受けまして軽症から重症へと移行している状況でありまして、早急な医師の確保といった手当てをしなければ、今後ますます重体に陥り、死亡するというふうな状況に陥るかもしれません。つまり、自治体病院の健全な運営ができず、存続すら危ぶまれるほど深刻な状況下にあります。どうか地域医療のかなめである各地域の自治体病院等に対し、和歌山県立医大はもとより、全国の医科大学や病院からの医師の確保を図るべく、制度の改正や改革、緩和について、国等への積極的な働きを要望するものでございます。
最後に、教育問題についてでありますが、先ほどの質問の中で、平成十五年度の不登校児童生徒数の比率はワースト六位であると申しましたが、近畿の中学校におけるスクールカウンセラー等の配置率を見ますと、大阪府では、平成十五年度六〇・一八%、平成十六年度九四%、滋賀県では、平成十五年度六六・六七%、平成十六年度では八〇%、本県では、平成十五年度では二三・四%、十六年度では三三・三三%と、配置率の高い大阪府、滋賀県ともに、和歌山県よりか上位の──悪い方の上位で三位タイでございます。この配置率のはるかに低い本県がまだ不登校児童生徒の比率が低いというのは、地域性でも、たまたまでもないと思います。先ほどの県独自の心の教育相談事業、いわゆる和歌山方式の成果であると思うわけであります。
しかしながら、今のままでよいというものではありません。かねてより私自身思っていることでありますが、直接児童生徒や保護者に接する学級担任という立場の重さであります。学級担任となれば、クラス四十人の児童生徒、そして八十人近いその保護者に対しても適切なアドバイスができるよう、カウンセリング等の技術をしっかりと身につけていただきたいと思うところであります。
以上のような観点から、スクールカウンセラーの配置率の向上と本県心の教育相談事業の充実を図り、より一層の教育相談環境の整備拡充を強く要望いたします。
以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で浅井修一郎君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
四十一番松坂英樹君。
〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に沿って一般質問に入らせていただきます。
先ほど浅井議員からも質問がありましたが、まず第一点目に、私からもミカン対策についてお尋ねをいたします。
ことし和歌山県が日本一のミカンの生産県になることが予想されていますが、その中で和歌山県がどう動くのか、これが大事になってくると思います。農産物の生産が経済の大きな柱となる和歌山県において、ミカンの生産は大きな位置を占めます。私たち有田の谷の景気や経済状況にはミカンの値段がそっくりそのまま大きく影響いたします。この間、ミカン農家は安値に泣かされてきました。昨年六月議会で質問させていただいたように、表年も裏年も安値が続くという事態の中、和歌山県が他県に負けないミカン対策に取り組んでほしいという切実な農家の声を紹介してきました。ことしのミカンの価格は幸いにも好調な推移を続けています。しかし、ことしは収穫量が少ない上に、年末の最盛期を前に、先週からの台風並みの暴風雨によってミカンがダメージを受けていることから、その影響も心配されています。そして、何よりもこの数年間の安値によって、多くの農家が貯蓄を取り崩し、融資などに助けられながら農業経営を続けてきていますから、ことしの収益がその穴埋めに終わってしまうことになりかねないわけです。
しかし、それだけに終わってしまっては今後に続く力にならないわけですね。ことしの収益をもとに、来年度、マルチ栽培を広げようとか、高品質ミカンの栽培に取り組もうとか、改植を進めようとか、園地に車が入るように作業道をつくろうとか、そういった生産意欲につながる努力、将来性のある経営努力や後継者対策につながる努力ができるかどうかが今後を占う大きな焦点になると思います。この動きに、これまで以上に県が手を差し伸べる、後押しをする、たとえ片腕でも指一本でもという声もお聞きしましたが、本当にそういう県の姿勢が求められているのではないでしょうか。
また、昨年十二月議会で質問させていただきました学校給食へのミカンの提供と首都圏での販売強化についてですが、給食提供については、食育の観点から今年度の県の取り組みも大きく広げていただきましたし、東京の大田市場にも、昨年まではJAからは一つの選果場からしか出荷をしていなかったんですが、ことしからは、新しくできたAQ選果場を初め四つの選果場から出荷されるようになったと聞いています。長いおつき合いの京阪神市場を大事にするとともに、首都圏にも積極的に勝負をかける、これらの動きは大事だと思います。
以上の点から、日本一のミカン産地にふさわしく、農家が今年度の収益の上に立って、来年度、品質向上、施設整備、後継者対策など意欲的に取り組めるよう、マルチ栽培の補助拡大などタイムリーな支援をしてはどうか。また、食育としてのミカンの学校給食への提供及び首都圏への販売強化の取り組みの現状と今後の方向について、農林水産部長より御答弁を願います。
次に、カゴメによるトマト生産工場誘致にかかわる問題についてお尋ねをいたします。
十月八日に、「アジア最大規模のトマト菜園事業」との打ち出しで、カゴメが七〇%、オリックスが三〇%の出資の現地法人が立ち上がり、十一月十六日には土地の賃貸契約が結ばれました。現地法人には金融業界のオリックスが農業経営への参加を表明したわけですが、このことは県当局も知らされていなかったわけで、私もびっくりいたしました。県内、日本国内の農家が野放しの農産物輸入や価格の低迷で経営が立ち行かずに泣かされて、後継者が育たないこの現状の中、こういうもうかるとにらんだ農業には企業が大手を振って参入できる、こういう仕組みを進めていくというやり方には、大きな疑問と怒りを持つものです。
この間、打田町議会からは、県に対して、県内トマト農家への支援を求める意見書が提出されました。また、農林水産委員会としましても、カゴメの大規模ハウスである長野県の安曇野みさと菜園に視察をしてまいりました。立ち上げ初年度ということもあり、夏の高温による苗の成長がコントロールできず、ハウスの半分の面積に当たるトマトを全部植えかえるようになったとか、苦労話も含めて、この施設や栽培方法など、カゴメ本社の方からも詳しく説明してもらいました。私の実感としましては、この一町歩、一ヘクタール当たりに勘定すると、建設時に五億円の設備投資をし、年間数千万円の経費をかけて一億円の売り上げを目指すという、普通の農家では考えられない莫大な投資と資本力に任せた経営、これに改めて驚かされました。米一町つくって売り上げ百万の世界ですから、けたが二つほど違うわけですね。
私は、この十二月議会の時点において、改めてカゴメトマト誘致による影響調査と県内トマト農家への支援策について、その後、県としてどう検討されているのか、現状と方向性について、農林水産部長の答弁を求めるものであります。
次に、震災・災害対策についてお尋ねをいたします。
さきの九月議会では紀伊半島沖地震を受けた質問をしましたが、十月に発生した新潟中越地震を踏まえて、再度質問をさせていただきます。
御案内のように、大きな被害を出したこの新潟中越地震ですが、私も県民の皆さんからお寄せいただいた募金とミカンをトラックに積んで、みずから運転して新潟に行ってまいりました。地震発生直後には食糧が不足しました。そして、パンとお握りばかりの食事が続き、体調を崩す被災者の方がふえてくる中で、ミカンやバナナなどが求められている、そういう報告を受けたわけです。避難所の生活のように強度のストレスがかかる中では、ビタミンCを普通の数倍必要とされているということで、ナイフなど使わずに手軽にビタミンCを摂取できるミカンは、被災地の皆さんに大変喜ばれました。救援物資を届け、被災家屋の片づけボランティアにも参加をさせていただき、短い時間の中でしたが、現地の様子を目に焼きつけてまいりました。
大都市を襲った阪神大震災では、家屋や建築物の倒壊が大きなショックでした。今回の新潟中越地震では、斜面崩壊や集落の孤立、天然ダムの出現など、和歌山と共通するこの山間部の災害に注目をしました。ボランティアで行った長岡市の被災家屋は、家自体は大丈夫だったんですが、地盤が緩んで家が傾いて、もう取り壊さなければならない、そういう状態でした。その日も震度五の余震が続く中、傾いた家の中でヘルメットとマスクをつけての作業は大変で、被災者の方々の苦労が身にしみました。
私は、先日、神戸市の震災記念館「人と防災未来館」にも勉強に行ってきましたが、もともと川が通っていたところなど堆積層が厚いところや急傾斜地──先日の報道では傾斜の緩いところでも地盤の関係で被害が出ているというふうな報告もされていますが──こういった地盤の引き起こす災害は、阪神大震災の教訓の中からも共通して出されている問題だろうと思います。今回の新潟中越地震を通じて、何を教訓にし、和歌山県の災害対策にどう生かそうとしているのか、急傾斜地や地盤災害、ダムやため池の調査・対策についてどう取り組もうとしているのか、お聞かせください。
同時に、新潟では避難所が危険で使えなかった、そういうところがあったわけですが、避難施設の耐震化の状況と見通しについて、以上二点については危機管理監よりお答えを願います。
また、有田川の二川ダム下流の住民からは、東南海・南海地震が起こったとき、ダムは大丈夫なのか、ダムが決壊した場合どこまで水が来るのか、どこへ逃げたらいいのかなどの不安の声が出ています。周辺地盤などに不安を抱える二川ダムの震災対策についてはどう考えているのか、これは県土整備部長より答弁をお願いいたします。
さて、それでは四つ目の柱の県営水力発電所売却問題についてお尋ねをいたします。
去る十一月三十日、県と関西電力は、県営水力発電所売却に合意する覚書を発表しました。私は九月議会で、この水力発電所の売却計画は住民にとって余りにも突然であり、発電が採算重視で行われることによってダムの水位が上がり危険ではないか、こういう不安が出されていると指摘をいたしました。発電をやめて防災一本のダム運用を求める声もあることから、住民と合意できる方向性を探るべきだ、計画は一たん白紙撤回せよと質問をしました。しかし、知事及び企業局長の答弁は、来年三月の企業局廃止に向けて、採算面での不安がある発電については、民間でできることは民間でという立場で経営判断を優先させたい、そういうことであったかと思います。
私は、九月議会以降、住民、自治体関係者の声を引き続き聞いて回りました。その中では、一様に売却への不安、ダム操作改善への切実な願いが出されました。二川ダム直下の清水町二川地区からは、全住民からの陳情署名が、知事、企業局、そして三人の地元県議のもとに提出をされました。これらの署名には、七・一八水害の記憶、ダム建設時の合意への断腸の思い、また、発電所売却による危機感と不安、できるなら防災ダム一本にしてほしい、こういう願いがつづられています。古座川流域でも署名をされているとお聞きをしています。また、清水町、金屋町、有田市の議会からも、計画撤回とダム操作改善、河川土砂撤去等を求める意見書が次々と県に提出をされました。各地の声がこの新聞なんかにも報道をされています。今週開かれた有田消防議会でも随分意見が出たようであります。
これだけ地元住民が不安を持っているのに、県はこの間、どういう対応をしてきたでしょうか。企業局は、関係者の理解が得られるように引き続き取り組んでいきたいとの九月の議会答弁に沿って説明に回ったようですが、その結果はどうだったでしょうか。企業局は説明し理解を得た、こういうふうに言っているようですが、私はそうは聞いていません。説明に回った先では、不安とダム操作の改善等の要望が出されたのではないでしょうか。関西電力と判こを押す前に事前に相談してくれと言われたのではないでしょうか。説明に回っただけで理解を得たとは余りにも一方的な解釈だと指摘をするものです。
古座川町での説明会の様子が十一月三日の地方紙に掲載をされました。企業局は、計画の理由やダム防災は県が引き続き責任を持つと説明をされたようですが、見出しには「住民、不安ぬぐえず」、こういうふうにあり、記事の中には、「売却計画が住民に相談なく進められたことに対しては「企業としての性質をもち、住民や県議の合意を得なくてもよい部局」と企業局の特性を説明」したと、こういうふうに報道をされています。こんな説明をして、一体住民と心が通うでしょうか。企業局はそんなこと言っていない、そういうふうにおっしゃいますが、私が聞いた複数の参加者は記事のとおりの受けとめであったし、県に対して不信感を持った、そういうふうに感想を述べておられます。
住民からは、ダムや発電所建設時は住民に協力を求めてきた、地元は断腸の思いで協力をした、そこまでした住民に売るときは合意は要らないというのでは話にならない、怒りの声が噴出しています。企業局は、ダムは売らないから大丈夫、こういうふうに簡単に説明をしますが、そのダム操作が大丈夫でない、その上に発電所を売る、こう言うから住民は心配しているんです。その住民の意見を正面から受けとめてないと思うんです。
そこで、企業局長にお尋ねをします。売却覚書締結に向けて、進め方が余りにも一方的でなかったか。ダムや発電所建設時には住民に協力を求めながら、売却時には合意の必要なしと無視をするのか、この点について御答弁を願います。
また、売却予定価格は、財産としての評価、これまでの投資額、全国的な状況から見て妥当と考えているのか、このことについてもあわせて答弁を願います。
次に、この問題と切っても切れない二川ダムの操作改善についてお尋ねをします。
有田川流域住民にとっては、堆積土砂のしゅんせつと、それからダム操作の改善、これは二つの大きな課題であります。ここへ来て、その発電所売却問題が降りかかって、タイミングを外せない問題ですから、私からは、二川ダム水位を下げること、ダム操作改善も含めてデータも具体的にお示しをして、きょうは提案をしたいというふうに思います。
まず、この二、三年、ダムが水をため過ぎて物騒でかなわん、こういう声を以前に紹介をいたしました。私は実際、ここ十年間のダム日報を事務所から提出いただいて、素人なりに分析をしてみました。
お配りをしているこの資料一をごらんいただきたいというふうに思うんです。昨年二〇〇三年のダム水位と過去十年間のダム水位を比べてみたのがこのグラフです。赤い棒グラフが二〇〇三年の水位の平均値です。そして青い棒グラフが過去十年間の平均の水位なんですね。この赤のグラフと青のグラフ、隣り合わせのグラフを見ていただきますと、一目瞭然に赤の水位が高いことがおわかりだと思います。春先や秋口が特に高いが、多いときには約八メートルも水位が高いんですね。このことは地元住民がダムを見れば一目瞭然なんです。ダム上流の清水町遠井のキャンプ場が水没するなんていうことは今までになかったんです。ダムサイトの緑の木々の枝まで泥水がかぶり、今はダム湖の両側の水の中からにょきっと木が生えている、そういう状況なんですね。
ダム事務所に地元自治会や町当局から、今までにない水位で危険だから下げてくれ、こういう申し出があっても、「操作規則どおりの運転ではこうなるんです。発電や下流の水利用に迷惑をかけるので、ダム事務所の判断だけでは下げられません」、こういう答えなんだそうですね。ダム建設当時のままの操作規則をしゃくし定規に当てはめたのでは、実態に合わないんですね。ダム操作の長い経験上、運用してきた水位、十年や三十年の水位に学び、水位を下げた運用をすることはすぐにでも可能なことです。
資料二は、その三十年データなんかも入れておりますので、また後でゆっくりとごらんください。
次に、資料三を見ていただきたいと思います。二川ダムと日高川の椿山ダムを向かい合わせに並べて、その運用方法を比べてみたんです。ダムの高さが違うので、ダムの頭でそろえて並べてみました。図を見ると、はっきりと水のため方の差、水位の差が見てとれるというふうに思うんですね。立地条件や規模の違うものを並べてみたわけで、ちょっと乱暴なんですが、どちらも発電所を持つ多目的ダムということなのに、その差は歴然なんですね。
二川ダムの方は、発電のために水位を日ごろ上げておき、洪水前には洪水調節水位、この赤の水位まで水を抜いて洪水に備える設計です。椿山ダムは、そういう予備放流をしなくてもいいように初めから水位を下げて運用をしている、そういう設計なんですね。ですから、発電の方も余分に水をためるというんじゃなくて、上流から流れてきた水をそのまま下流に流すついでに発電をする、そういう考え方で発電をされているわけです。ところが、二川ダムでは、発電のために洪水調節容量と共同でした分を食って水をためる、その水で発電をするわけですから、このためた分はお金になる水なんですね。ですから、洪水前の予備放流というのは、発電所の側から見れば無効放流なんて呼んで、ただでむだに水を捨てるという放流になることになって、なかなか思い切って捨てられない、こういうことになっているわけです。
この二川ダムの設計は、近年の気象状況の変化や森林、農地の保水力の低下など流域全体の変化を考えるときに、今となっては自然に対して人間が随分思い上がった設計だとも言えるのではないでしょうか。二川ダムに対しては、夏期制限水位を洪水調整水位のこの赤の百八十七・六に、青のところを赤のラインまで下げて運用してほしい、こういう住民の声があります。これはあながち主観的な数字じゃないと思うんですね。図を見ていただくと、椿山ダムの夏期制限水位、これと比べてみていただいても妥当な線だというふうに思うんですね。また、先ほどお示ししたこの一の資料での長年の経験に基づくこのライン、百八十七ぐらいで大体抑えてくれたらええのにな、こういうラインは極めて現実的な線だというふうに思っています。関電とも話し合って合意を目指せる数字だとも思います。ぜひ水位を下げるというところまで具体的に踏み込んでいただきたいというふうに思います。
もう一つ、きょうはダム操作で注文をつけると、ダムが土砂の堆積でだんだん浅くなって容量が減ってきているんですね。堆砂がどれだけ進んでいるかというその測量は毎年毎年きちんと行っているわけですが、それによってダム容量が減ってきている分を計算せずにダムを運用している、このことが今回調べてみてわかりました。びっくりしました。ダム操作に当たっては、ダムの放流量と、刻々と変わる水位の変化を計算しながら流入量というのを計算し、そして微調整を重ねながら放流制御、放流計画を立てるわけですが、例えば、貯水容量が一割減って浅くなっている。それなのに、そのまま計算をすれば、流入量の計算値もそのまま誤差が出たまま計算をやっているというわけですね。私もいただきましたが、四十年前の建設当時の貯水容量データのままで正確な流入量もわからずに運転しているというのでは、これは下流の数万人の命にかかわる問題で、誤差の範囲でございますでは済まされない問題だということを指摘し、改善を要望しておきます。
さて、知事は九月議会の答弁の中で、ダムは県が責任を持って管理をしていく、その際、治水面、人の命が一番大切だということをはっきりと答弁されました。私がこの間、聞いてきた住民の声は、発電所は三月末までに売るが、ダム改善の方はその後でちゃんとやるから安心せよと、この口約束だけでは信用できない、空手形にならないようにきちっとダム操作改善の数字や方法を具体的に示してほしい、関電とも文書で確認を交わしてほしいというものでした。こういう声に県はこたえる必要があるというふうに思うんですね。つまり、来年の出水期までに、五月か六月までに見直す、運用を始めると表明をされている操作規則の改善については、関電との売却が三月末までに予定されているということに合わせて対応すべきだと考えます。
そこで、知事にお尋ねをいたします。
発電所は売っても洪水対策は県が責任を持つ、こう言うのであれば、二川ダムの操作改善については、水利権者との合意が必要な水位を下げて運用することや放流の改善などを具体的に三月末までに示して、県民、地元住民の理解を得るべきではないでしょうか。御答弁をお願いいたします。
最後に、企業局廃止にかかわって、発電事業以外の土地造成事業と駐車場事業についてまとめてお伺いをいたします。
まず、企業局が持っている財産、これは土地という形のあるものもあるし、借金という負の財産もあるわけです。これが公営企業を店じまいして県の仕事に引き継ぎ、県の会計に吸収しようというんですから、その影響は大きなものになります。世間で言う負の財産、隠れ借金、塩漬け土地、こんなふうに呼ばれているものを、県民の負担、県民の税金で処理することにならないのかという指摘があるわけです。
売れ残っている工業用地は帳簿価格で売れば元は取れます、こういうふうに言っているようですが、土地の評価額はどんどん下がっているはずです。銀行に利子も毎年払わなければなりません。借金の期日までに土地が売れなければ、利子を払ってまた借りかえるか、税金で穴埋めを迫られるのではないでしょうか。借り手のない工業用地の流動化を図るために企業誘致の部門に管理を移すというのがこの動機でしょうが、これは従来にない思い切った価格設定などメリットをつけて売却・賃貸に取り組むことになるという反面、これまで企業経営という観点から採算を考えた価格設定をしていたものが、その縛りを外すことにもなるわけです。
コスモパーク加太でのカゴメへの土地賃貸が、一平方メートル当たり百円という破格の設定でした。よその府県ともこれから競争しようとすれば、今後どこもかしこも百円均一セールみたいなことも十分に予想がされるわけです。売れる当てのない土地を残してしまって、だれも責任をとらずに、県民が最後に税金で穴埋めをして責任をとらされるのであれば、これは到底納得のできるものではありません。また、県財政、非常に厳しい局面です。そこへもって、会計処理上、一挙に負の財産を抱え込み、財政全体に影響することになりはしないでしょうか。
以上、企業局廃止に伴う土地造成事業と駐車場事業の債務は将来の県民負担にならないかどうか、また、会計の移行に伴い、県財政全体への影響はどうか、こういう点について企業局長より御答弁を願います。
以上で、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 企業局の所有する水力発電所が関西電力に譲渡された以降においても、ダムの管理運用は河川管理者である和歌山県が責任を持って行うということに変わりはなく、従来どおりのダム運用が行われることは当然のことでございます。このことについては、これまでも住民の方々からの申し入れ等の際には河川管理者として説明してきているところでございます。
さらに、御指摘の二川ダムにつきましては、従来よりもさらに洪水対策を重視したダム運用が行われるよう、現在、ダムの操作規定の見直しを行っているところであり、御質問にありましたが、来年三月末までに必要な検討及び関係部局等との調整を行い、来年の出水期から適用できるよう、現在鋭意作業を進めているところでございます。
いずれにせよ、今般の水力発電所の売却問題に際し、従来どおり治水を最優先したダム運用を行っていくことに何ら変わりがないことについて御理解をいただきたい、このように思っております。
○議長(小川 武君) 農林水産部長阪口裕之君。
〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) まず、ミカン対策についての二点についてお答えをいたします。
一点目につきまして、本年は全国的に自然災害が多い中で、本県産ミカンにつきましては比較的被害が少なかったことから生産量が日本一になると予想されており、このことは喜ばしいことと考えてございます。県といたしましては、これまで高品質ミカンの生産拡大を基本に、農家や関係団体と一体となって、本県オリジナル品種のゆら早生、田口早生や、まるどり栽培に代表されるマルチ栽培の推進、光センサー選果機の導入などに取り組んできたところでございます。その結果、ゆら早生は県下統一ブランド「味一ゆら」として初出荷に至り、まるどりみかんも二年目を迎え生産拡大が進み、ともに好評を得たところでございます。また、JAありだでは、産地体制の整備を図るために光センサー式選果機を備えた最新鋭の選果場としてAQ選果場を整備し、本年度より高品質果実の厳選出荷に取り組んでいるところでございます。このような中で現在の販売価格は比較的堅調に推移しており、これまでの関係者の取り組みが実を結びつつあるものではないかと考えてございます。
今後はこの流れを確固たるものにするため、これまでの取り組みを一層推し進め、安心して後継者育成ができる真の日本一のミカン産地確立に向けて努力してまいりたいと考えてございます。
二点目の食育としてのミカンの学校給食への提供及び首都圏への販売強化の取り組みの現状と今後の方向についてでございますが、食育につきましては、食生活の乱れや生活習慣病が増加する中で、一人一人がみずからの食について考える力を身につけるという食育の推進が大変重要であることから、県におきましても本年二月に和歌山県食育推進協議会を設置し、具体的な取り組みを始めているところでございます。このたび、その一環として、学校関係者を初め生産者団体の全面的な協力により、去る十一月二十九日から十二月七日にかけて、県下のすべての小学校、盲・聾学校、養護学校、合計三百二十三校、六万七千百二十七人に対し、県産ミカンと「みかんのお話」パンフレットを配布し、果物を身近なものとして感じていただく取り組みをしたところでございます。今後とも、地域に密着した食育運動を進めてまいりたいと考えてございます。
次に首都圏への販売強化につきましては、近年、流通事情が大きく変化しており、県といたしましては、従来の京阪神市場に加え、首都圏を視野に入れた取り組みを進めており、その一つとして首都圏をターゲットにミカンの出荷比率を高めるとともに、高級果物店でのまるどりみかんの販売、また大手量販店での販売促進等に努めているところでございます。
今後とも、県内果樹産業の発展と果物の消費拡大を図るため、生産者団体と一体となって、毎日くだもの二百グラム運動を進めるとともに、本県産ミカンの販売強化を図ってまいりたいと考えてございます。
次に、カゴメトマト誘致による影響調査と県内トマト農家への支援策についてでございますが、トマト農家や農業団体において、需要見通しや市場価格の低下などを懸念し、今後の経営に不安を抱いていることは十分承知してございます。県といたしましても、これまであらゆる機会を通じ、農業団体を初め関係機関等に対し、カゴメトマト生産計画等の説明を行ってきてございます。また、トマト農家に対しましても、現在経営の実態や今後の意向を的確に把握するため、アンケート調査を農業団体等の協力もいただきながら実施しているところであります。
今後、この調査結果を踏まえ、トマトについて既存の野菜振興計画での充実を図るとともに、契約栽培を希望する農家やトマト農家の高品質生産に向けどのような支援ができるのか、生産農家の経営安定の観点から検討を加えてまいりたいと存じます。
○議長(小川 武君) 危機管理監白原勝文君。
〔白原勝文君、登壇〕
○危機管理監(白原勝文君) 震災・災害対策についてお答えいたします。
今回の新潟県中越地震では、山間部の至るところで大規模な崩壊や地すべりが発生し、孤立する集落が数多く発生するとともに、土砂崩れダムによる二次災害の危険性なども報告されております。また、通信施設等の損傷により被災状況の把握など情報の収集に支障を来したのを初め、多くの方が避難される中、避難所のあり方など新たな課題や問題が浮き彫りになっております。
本県におきましても、山間部はもとより、近い将来発生が想定される東南海・南海地震に伴う津波により、沿岸部での孤立化も予想されます。新潟県中越地震においても住民同士で助け合うというコミュニティーの力が孤立集落を救ったと言われており、県といたしましては、地域の防災力を高めるため、市町村を通じて自主防災組織の支援などを行ってまいりたいと考えております。
また、本県の地形的条件により、急傾斜地崩壊危険箇所が三千百四十四、地すべり危険箇所五百六十六、山地災害危険箇所五千五百二十四、ため池二百九十五、ダム八カ所などが存在するという実態もある中で、今後国においてなされる詳細な検証も踏まえ、孤立対策など総合的な震災対策を進めてまいります。
次に、避難施設の耐震化の状況と見通しでございます。
避難施設につきましては、市町村において学校など公共施設等を中心に指定されております。現時点では正確には把握しておりませんが、これらの施設の耐震化率につきましては、おおむね四〇%程度であると認識しております。このうち、県立学校につきましては今年度中に耐震診断を終了し、順次、耐震改修を進める計画となっております。小中学校につきましては、現在の耐震診断率は六一%、耐震化率は三八%と低い状況にありますが、教育委員会の指導により市町村ごとに平成十五年度から十七年度までの耐震診断計画を策定し、これに基づき鋭意実施されているところでございます。
今後とも、災害の拠点となる施設や避難施設の耐震化につきましては、市町村等に働きかけるとともに、関係部局とも連携し、計画的に推進してまいりたいと存じます。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 二川ダムの震災対策についてでございますが、ダムの設計・施工に当たっては、耐震性の確保にも十分な配慮を行っております。また、震度四以上の地震を観測した場合などにはその都度点検を行うなど、管理面でも万全を期しているところでございます。去る九月五日に新宮市で震度五弱を観測した地震の際にも、県が管理する四つのダムでそれぞれ点検を実施したところでございますが、特段の問題は確認されませんでした。
以上でございます。
○議長(小川 武君) 企業局長西 芳男君。
〔西 芳男君、登壇〕
○企業局長(西 芳男君) 県営水力発電所の売却に関する御質問でございます。
これまで、発電所とダムについて、関係者の皆様方に折に触れ、できる限りの説明を行ってまいったところでございます。また先般、覚書を取り交わすに先立ちまして、関係する七川ダム、二川ダム及び椿山ダムはこれまでどおり県が管理運営を行うこと、そして、発電を行う関西電力株式会社は、県が定めるダム運用に従い、企業局が行ってきた発電放流に関する運用事項を引き継ぎ遵守することを明記する旨などについて説明を行ってきたところでございます。こうしたことから、県営水力発電所の民間譲渡に関しましては一定の御理解を得られたものと思ってございます。
県営水力発電所は、電力事情が現在ほど十分でなかった昭和三十年代から、地域にとりましては大きな役割を果たしてきております。しかしながら、時代が大きく変化しておりまして、その速度も速まっているものと認識しております。電力の自由化が進展する今日、県営の電気事業の将来を見据えた機動的な判断が必要であるとの考えから、このたびの県営水力発電所譲渡に関しましては、将来的に公営企業としての採算性を保てなくなり税金負担が発生する事態を避けなければならない、時期を失してはならないという思いで、判断に至ったものでございます。
なお、県営水力発電所民間譲渡後も、住民の皆様方が不安にならないよう、おのおののダムの適切な管理運用について、これまで河川管理当局とも協議を重ねてまいっております。
次に売却の予定価格についてでございますが、税金を持ち出してまで電気事業を続けなければならない状況になるまでの間にやめるべきという基本姿勢を持って、関西電力株式会社との交渉に当たりました。借金の残らない価格ということで、四十二億五千万円が適切であると判断をしてございます。なお、水力発電所を売買する事例は少なく、私どもが承知いたしております例は広島県と福島県の二例でございますが、それぞれ設備の規模あるいは能力などが和歌山県の発電所とは異なってございます。そうしたことから、現在までのところ市場価格というようなものは形成されていない状況であると認識しております。
次に、土地造成事業の債務についてでございます。
企業局の土地造成事業は公営企業会計により独立採算で運営しておりますが、企業局を廃止し、知事部局に移管した後も、引き続き公営企業会計で運営を行うことに変わりはないものでございます。しかしながら、昨今の社会経済情勢から独立採算を維持していくことが困難な状況も考えられますので、今後の土地販売方法等について、現在知事部局と協議を行っているところでございます。
次に、駐車場事業の債務につきましては、企業局廃止に伴い諸事業を清算する中で処理を行うことを検討しておりまして、今後の運営方法等を含めまして、これにつきましても知事部局と協議を行っているところでございます。
以上でございます。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 御答弁ありがとうございました。幾つかの点で要望をさせていただき、また再質問をさせていただきたいと思います。
知事からは、二川ダムの操作改善についてお答えをいただきました。三月末までに関係者との調整を行いたいという踏み込んだ御答弁もいただきました。地元へもこれを示しながら、ぜひ理解を得ていただきたいというふうに思っています。
ことしも各地で台風の洪水被害があったわけで、地元の住民からとれば、音を立てて渦巻く泥水というのは本当に怖い。特に七・一八水害を体験した流域住民から見れば、特別の思い入れがあるというふうに思うんです。大切な命を奪われて、身を引きちぎられる思いで災害から立ち直ってきた流域住民にとって、この洪水時のダム湖というのは、きれいな澄んだ水をたたえた湖というんじゃなくて、本当にえも言われない色の泥水が渦巻いているわけですね。それがダムが満タンになるまでためられるわけですから、本当に怖いわけなんです。有田川上流から河口まで流域全体の課題として取り組んでいきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。
操作規則改善の具体的な作業というのは、膨大なデータの整理などで大変かというふうに思うんですけれども、ぜひ担当にもハッパをかけていただいて、県民の願いにこたえていただきたいということをお願いしておきます。
それからミカンの関係ですけれども、御答弁ありがとうございました。これは、うちの小学校の子供が持って帰ってきた小学校の十二月の給食の献立なんですけれども、昨年は十二月だというのにミカンの給食が一回しか出ていないといって、委員会で随分話題になりました。ことしは県の取り組みもいただいて二回にふえました。とりあえず、お礼を申し上げたいというふうに思っています。県の姿勢が本当にこれまでと違うというふうに感じられるような、来年度の積極的なミカン対策に取り組まれるように要望をしておきたいと思います。
トマトの問題です。県内トマト農家への影響調査と支援策については、部長の方からアンケート調査を進めるということ、どのような支援ができるのか検討していきたい、そういう旨の御答弁であったかと思います。これはどちらも、調査は難しいんだ、支援まではとりたててまだ考えていないんだという今までの答弁から比べたら、一歩前進の答弁として歓迎をするものです。ぜひ県内トマト農家の立場に立った支援を重ねてお願いをするものです。
それから三番の震災・災害対策ですけども、震災・災害対策では丁寧な御答弁をいただきました。ありがとうございました。しかし、その避難所の耐震化については正確な状況がつかめていない、まだそういう仕組みになっていないというその現段階も正直にお答えいただきました。今後の対応を早急に期待をするものです。
また、二川ダムの震災対策という点では、簡単明瞭な答弁であったかというふうに思うんですが、ダムをつくった人からすれば、それは絶対大丈夫な設計ですから、大丈夫だと、そんなこと考える必要はないんだというふうになるかもしれませんけども、阪神大震災では絶対に大丈夫と信じられてきた高速道路が倒れ、新潟地震ではトンネルがやられたわけですから、四十年前の設計・施工、これの今日的な調査、検討、被害想定について、今後の宿題ということで、きょうは要望しておくにとどめたいというふうに思います。
それから企業局の関係ですけれども、企業局の会計がどうなるのかという点では、県民の税金を持ち出さないというその判断のもとに発電所は売却したいんだというお話でした。発電所の負債は四十億余りです。土地の関係は百六十億円近くあるわけで、実は土地事業の方が大きな負債を抱えているわけです。これがどうなるかということになるんですが、具体的な議案については当初議会での提案ということになるでしょうから、きょうのところはそこでの議論に譲りたいというふうに思っています。
しかし、一点、企業局長に再質問をさせていただきます。四の一の発電所売却計画の進め方、これにかかわってもう一度質問をさせていただきます。
私の質問は、この進め方が余りにも一方的だ、住民からは不信を招いている、こういう指摘をさせていただいたんですね。ところが局長の答弁は、一定の御理解を得られたと認識している、住民が不安とならないようにやってきた、こういう御答弁だったかと思います。了解を得たといったものから一定の御理解を得たというふうに少しトーンが変わっているわけですが、どうも住民から県が不信を抱かれているということをちゃんととらえられておらないようです。私はそれではだめだと思うんですね。
先ほど例に出した、この説明会での住民の合意は必要がないととられた問題でも、例えは悪いですが、道路をつける計画で説明会を持って住民に用地買収の理解を求めようというときに、のっけから、反対しても最後には強制執行しますよと言うようなものじゃないですか。そんな姿勢ではまとまる話もまとまりません。和歌山は災害県です。水害の問題というのは本当に真剣なんですね。
確かに、ダム操作の放流の仕方、こういったものに対する意見、そういった心配も一緒に企業局が聞かなければならない、そういうこともあるでしょう。私も先日、清水町のある集会で、発電所の話のときに、この間の台風二十三号のときのダム放流の仕方で住民からも御意見をいただいたんです。「台風が来るのわかってあるんやったら、もっと早うから少しずつ放流をやってほしいんや。川の水が少しずつふえる、川の水位がちょっとずつ上がるんやったら、川の魚もカニも川の端っこへ端っこへと逃げていって何とか難を逃れることができるんや。ところが、一遍に台風が近づいてからがばっと出すもんやから皆流されてしまう。台風の後、川へ入って、カニを捕まえて愕然とした。皆足が一本、二本とちぎれてないんや。片方全部ちぎれてないカニもある。転がる石につぶされたんや。皆そんなカニばっかりやった。わしは涙がとまらなかった。人間はこんなことして平気なんや」と、こんなふうに話をされたんですね。
続けて、別の方が、今回の発電所の問題でも「県はわしらのことをカニかカニ以下にしか思ってないん違うか」と、こんなふうにおっしゃったわけですよ。県の姿勢というのを理屈じゃなくて肌でやっぱり感じていると思うんですね。企業局長、企業局のこれまでのやり方に、この地元と住民は不安と怒りを感じているんです。どう思いますか。これまでのような一方的ととられる姿勢は改めるべきではないでしょうか。企業局長の誠意ある答弁をお願いいたします。
以上です。
○議長(小川 武君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
企業局長西 芳男君。
〔西 芳男君、登壇〕
○企業局長(西 芳男君) ただいまの再質問にお答えをいたします。
先ほども申しましたように、企業局といたしましては、誠心誠意、地元の御理解を得る努力をしてまいったつもりでございます。ただ、それが個々の皆さん方すべてに御理解をいただけているかというのは、それは立場もいろいろございますので、そういうところまでは、県の行政すべてそうですけれども、いかないのがそうじゃないかなというところがございます。ただ、今回の話は、市町村長さん方、あるいは地元の方々とお話をさせていただいて非常に感じますのは、やはり県が責任持ってきっちり河川を守れよと、そういうことを言われておった、そのことによるいろんなお話、おしかり、そういったことも聞いてまいりました。我々といたしましては、発電所売却のこの機会にいろんなお話をお伺いしたものだと思ってございます。そのことにつきましては、県土整備部が治水の担当でございますので、十分伝えまして、そのように前を向いてこれから進んでいけるものと思ってございます。
ただ、御理解が十分でなくて一方的であったということで、それはいかがかとお思いの方がいらっしゃるようでしたら、それは遺憾なこともございますので、それはそれで、新聞に記事も出ましたけれども、遺憾の意を表したいと思ってございます。
以上です。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 局長の答弁をいただきました。ぜひ今後は市町村や地元の意見、これは本当に真摯に耳を傾けて対応していただきたい、そのことを重ねて申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
以上です。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。
これで午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時五十分休憩
─────────────────────
午後一時三分再開
○議長(小川 武君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
一番須川倍行君。
〔須川倍行君、登壇〕(拍手)
○須川倍行君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
最初に、地方港湾・新宮港に関しての質問であります。
和歌山県の海岸延長は約六百キロメートルと言われ、その中に十六の港があります。県土を紀北、紀中、紀南の三つの区域に分けるとすれば、紀北では特定重要港湾である和歌山下津港、紀中では重要港湾の日高港、紀南では唯一の外国貿易港として実績を重ねてきている地方港湾である新宮港がうまく配置されていると思います。和歌山県は山間部が県土の大半を占め、その山間部は海岸部近くまで押し迫ってきている地形であるため、逆に港を生かすことでその有利性を考えた港の配置であると言え、均衡ある県土の発展を目指した政策を推進する上で港湾は大きなアイテムであると思います。
まず、港湾事業は、他の公共事業である道路や河川事業の供用開始と波及効果を比べてみましても、供用開始からその効果を発揮するまで相当な助走時間が必要であると私なりに理解しております。しかし、地域経済の活性化を図る手法としては、外からの経済力の刺激も受け、県内の経済力もあわせ高める必要性を感じているが、その場合、港湾は外部からの刺激を受ける手段としては最たるものと考えますし、その過程で地域産業振興を相乗的に活性化させられる基盤を真剣に考えなければならないと思います。
しかし、残念ながら、現在は公共事業の中で港湾事業は全く人気のないむだな公共事業として唱える風潮があり、これはけしからん意見であると私は考えておりまして、このことへの怒りとして、県が反論するだけの考え方を常に意識して持っておいてほしいと思います。
さて、今回、新宮港の質問に当たり、私は、新宮港は紀南の産業振興の拠点としての整備を図り、後世に喜ばれるものにしなければならないと強い決意を持ち続けてきている一人であります。と申しますのも、新宮市においては、新宮市土地開発公社の造成費、県営事業への地元負担金など、国・県とともに三者が多額の投資を行うわけであります。したがって、ぜひとも紀南の産業振興の拠点としなければならないし、公共事業の費用対効果をよく耳にしますので、このことも常に意識しなければなりません。
紀南地方では、新宮港がなければ主要産業である木材業の成り立ちは考えられません。また、公共や民間の建設事業に使用する生コンクリートの原料であるセメントの価格面から見ても、港があるから三重県の松阪周辺や奈良県の十津川村までのエリアに安定供給可能であり、コスト面の高騰も抑えてくれております。直接港とは関係せずとも、新宮港内には、ワイヤーハーネス工場や電子工場など雇用力のある企業が操業されておりますし、また、港があるおかげで、豪華客船のにっぽん丸、ふじ丸、護衛艦、巡視船など海事思想ともかかわるいろいろな港に関したことや船舶の見学が一般の方々にも提供でき、港湾のない自治体には受けられない恩恵も享受でき、このように一般の方々の余り知られない部分で港の貢献度は非常に大きいと思います。港湾の特性とでもいいましょうか、役割等をもう少し県民にも広く知っていただき、県内企業や県外企業にももっと港湾を利活用してもらうよう、ソフト的な施策、工夫が必要であると思います。
新宮港は、県の力添えと国の協力によって、新宮市とともに昭和四十五年当時から新宮港建設に着手し、第一期分が昭和五十四年に供用開始されました。その後、第二期が平成十年より本格的にスタートし、一部埋立地の竣功を見る状況となってきており、地域住民の目もそこに向けられ、企業立地に期待を寄せています。
そのような時期、ちょうど本年七月、高野・熊野地方が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録され、その中で、新宮港は観光面においても熊野の海の玄関口としてその活用が期待され、海の駅のような拠点づくりも必要ではないかというようなこともささやかれてきております。また、新宮地方は久しく陸の孤島と言われておりましたが、県当局の国に対する強い御尽力のおかげで、新宮港の背後アクセスともなる那智勝浦道路や地域高規格道路五條新宮道路も整備されつつあり、一方、熊野川を挟む三重県側でも、勢和多気からの高速道路の新宮方面への南伸や尾鷲熊野道路の着手など、東南海・南海地震対策としても「命の道」と称した道路建設が位置づけられ、新宮港周辺の地域経済圏へのアクセス道路も着々と整備されつつあり、大きな喜びとするところであります。
新宮港は、これらアクセス道路の整備に伴い、名古屋を中心とする東海・中部経済圏域とも交流する環境が整いつつあると言えます。まさに紀伊半島の要衝港湾として、その役割が期待される港と位置づけられると思います。そして、新宮港は現在、特定地域振興重要港湾として国の指定をいただきました。これは全国で十三の港だけと聞いており、その指定後、早速国と県と地元市町の共同製作で新宮港振興ビジョンが策定され、その目標に向けた施策が今から展開していこうとしていると聞いておりますし、この指定された首長らで組織した特定地域振興重要港湾活性化協議会も設立し、意見交換が活発に行われ、予算確保においても積極的に行われると聞いております。
これら目標に向けては、民間団体の新宮港振興会など関係機関でも一致して理解を示し、その上で新宮市といろいろと協議しながら港から町づくりを目指すという意気込みも感じておりますし、新宮港が地域産業の基盤であり、地域へどのような役割を担って貢献しているか、常に問いかけながら官民協調した行動が見受けられます。さらに、港の一部を地域住民に開放しながら交流促進を図り、親しみのある港湾空間を創出しようと、広く港を理解していただける方法も考えながら行動しようとしております。
県においては、そのような地元関係者の動きについて、建設部門であるハード面事業はよく努力していただいていると、そのように理解しておりますが、ソフト面での力添えも積極的に行っていただければと思いますので、港湾の存在と役割などをもう少し広くPRするように要望しておきます。
さて、ここからは各論に入り質問します。
新宮港第二期事業での東防波堤の進捗についてであります。
新宮市土地開発公社の工業用地造成と国の補助事業で県が実施している岸壁や親水緑地の外郭などが形成されるにつれ、港湾内の静穏度問題が新宮市議会では毎回のように取り上げられております。この静穏度問題は、第二期整備基本計画では既に東防波堤計画が盛り込まれており、その計画に向かって一部実施している途中と聞いておりますが、予算確保の関係で現地での進捗率が鈍いことや、現状、少しのうねりでも貨物船や客船などの接岸時の支障が起きていることへの不満があります。また、荒天時には比較的東側からのうねりの侵入が新宮港の静穏度を最悪な状況にしているようで、隣接する三輪崎漁港の係留中の漁船転覆への不安をあおり、当初、第二期港湾計画の説明時になかった現象がここ数回となく生じているものですから、漁業関係者からこの計画への不信感が広がってきている感もあります。さらに、振興会を中心として行われてきているポートセールス活動も、胸を張って新宮港の利活用を呼びかけられないと言っていることなどの不満もあります。
九月五日、新宮市では震度五弱という地震を二回体感し、津波も発生しました。比較的軽度の津波ということでしたが、地域住民は大きな恐怖心と、今後の南海地震の発生と津波対策はどうなるのだろうかと不安を持ちました。津波対策として、すべてこの東防波堤で防ぎ切ることはできませんが、少しは有効に働くことが考えられることから、十月七日に新宮港振興会を中心に上京し、県並びに新宮市が同行する中、二つの漁業協同組合と、三輪崎区・佐野区の代表者の連署で、県選出国会議員と国交省港湾局に対し、東防波堤の早期完成を要望したと聞いております。これまで地域住民の代表らがこのような形で要望活動をしたということはなかったと聞いておりますし、それだけにこの防波堤に期待しつつ地域の切実な思いが込められているということであります。
なかなか国の財政事情厳しい折でありますから、地方港湾予算枠の縮小が求められる中、その苦境をはね返して、南海地震対策措置法においてもこの新宮港の東防波堤を命のとりでとなる防波堤として位置づけるなど、知事が先頭に立っていただいて県の強い姿勢を国に訴え予算獲得していただかないと大きな事業費がかかる防波堤だけに進捗はなかなか進まないと思いますが、現在の東防波堤の進捗状況と今後の見通しについて答弁を求めます。
次に、港湾緑地の工事に関する事項であります。
現在の新宮港の埋め立て規模は、県・市合わせて約三十四・六ヘクタールで、その二五%に当たる八・八ヘクタール、坪換算して約二万七千坪が公共緑地であります。この緑地が完成すれば、工業用地を緑の木々で覆い囲んでしまう緑の港湾にふさわしい港湾空間が創造されます。平成八年当時、吉野熊野国立公園特別地域内での埋め立て計画に関して、環境団体からの反対や海岸で実施されていた盆行事や地元の祭りなど、開発か自然かの選択で地域の将来性について議論が伯仲した時期もありました。最終的には、地元住民にもこの緑地の基本計画が示され、環境庁や住民からの賛意を得た中、新宮市は特別地域内の緑地工事を、県は宇久井側の側面で普通地域内を、港湾緑地としてそれぞれ役割分担して実施することになったと聞いております。
現在、地元の祭りとして続いている祭りのことでありますが、工事期間中にもかかわらず、新宮港の工事中の一部埋立地を使用し、地元区民との協調体制によって、大勢の周辺住民もこの祭りに参加するなど大変なにぎわいであります。今後県が港湾緑地を造成する中、このような住民が利用可能な広場が計画されており、この地元祭りがここに再現されれば地域住民の利活用につながり、開かれた港湾としての意義があると思います。
そこで、このような思いの中、緑地工事がおくれるといううわさというか、工事の進捗に消極的な発言を少し耳にしております。この緑地事業の計画は、新宮港全体の事業促進を図る上で地元住民とはよい意味での接着剤となり、信頼関係を構築し、楽しい意見交換ができる計画ともなっています。この事業の早期完成を大変楽しみにしている周辺住民の気持ちを逆なですることなく工事の早期完成をお願いしたいと思いますが、工事の進捗状況と今後の見通しについて、県土整備部長の答弁を求めます。
また、この港湾緑地は、海岸べりの親水性のある散歩道や港を少し高いところから見る展望台など、防災緑地といった住民が十分憩える大きな広場となったり、一部砂利浜の復元など本当に背後が美しいロケーションであるから、港全体もいつまでも美しくありたい、漁業振興や海の中の観光地もつくらなければという思いもあります。
さて、知事が提唱し実施している緑の雇用事業は、日本初の事業として国に認められて紀伊山地の山々に目を向けられておりますが、片や海の港湾においても、新宮港では既に新宮市の第二期長期計画に基づいて、緑のみなと整備と位置づけられております。緑を多く取り入れて、新宮港内の企業活動が自然いっぱいの中で行われるような環境創出を図るために、前向きな建設を進めようとしています。完成後は、経済活動の起業地を緑の豊かさですっぽりと囲んでしまうという、美しい自然とマッチした港湾空間を目指しておりますが、このことについて知事のお考えをお聞かせください。
次に、港湾管理に関する事項であります。
新宮港第一期は、昭和五十四年に供用を開始いたしました。昭和四十五年当時は、漁業権放棄問題で漁業組合が二分するという大きな出来事になりました。最終的には、新宮港建設に対して条件つきで同意するという形となり、三輪崎漁業協同組合と当時の新宮市長との念書に、漁民の生活権について、雇用など将来にわたる不安を解消するため荷役業務を当漁協に優先させるという条項までうたわれております。それに従って新宮市は三輪崎漁業協同組合の意向を尊重し、地元企業らで荷役会社として新宮港埠頭株式会社を設立し、荷役を中心とした業務を開始し、地域の産業振興を目指した運営がスタートしてからはや二十五年の歳月が過ぎようとしています。
また、新宮港には港湾労働者のための宿泊施設がないため、その必要性を判断して、港湾会館新設やソフト面での管理をする財団法人新宮港湾財団を設立しました。現在、大阪税関の出先機関が設置されておりますが、官公庁舎用地などの造成も、新宮港が地域の核として仕事をしていくためのインフラ整備など、これらに真剣に取り組む新宮市や民間団体の動きは地域振興の大きな原動力となったと言えます。
荷役問題は、市域を二分するほどの大きな政治問題にも発展しました。しかし、今、新宮市が中心となって調整していることや、新宮港の現在の利活用など地域経済に大きく貢献していることを見ましても、何らトラブルなく、関係団体や商社、荷主などとの信頼関係も非常に良好な関係が構築されていると言えます。また、ほかにも新宮港第一期内の企業や民間団体で組織する新宮港振興会の設立など、新宮港の発展を目指した力強い組織も誕生しました。第一期の埠頭用地の一部で新宮市の所有地による管理問題もありますが、県業務に支障のない形で行われてきたことにより、逆に県は経費節減につながっている状況と言えると思います。
そこで、第二期整備事業の一部暫定供用開始を目前に控えて管理問題がクローズアップしてくるわけですが、この際、県が管理する埠頭用地や親水緑地の管理、約十二ヘクタールの土地に及ぶと思いますが、新宮市あるいは第三セクター会社の新宮港埠頭株式会社、財団法人新宮港湾財団に管理業務を任せてはどうでしょうか。荷さばき地の管理及び船舶の出入りについても、指定管理者制度の関係もございましょうが、県がこれを実際にやるとなると多大な経費と人件費が必要でありますし、行財政改革推進に逆行する形となります。新宮市から見ても第一期と同様の形を第二期でも実現可能となるよう要望があったと思いますが、県の台所事情や政治的課題も踏まえて包括的な打診だと思いますが、県はこの件についてどのような考え方をお持ちなのか、お尋ねします。
最後に将来についてですが、新宮港は東に向いて開いた港湾です。中部、東海、関東方面との交流促進を図る港湾です。したがって、中部経済圏域からの産業流入を視野に入れなければなりません。既に第一期内での電子やハーネスなどの企業は、三重県に本社がある企業であります。行政区域は中部と近畿のはざまにある新宮港ですが、企業側から見れば中部経済圏域にある港とも言えるポジションにあるわけです。また、新宮港の海上周辺では、国際海洋法に沿った大陸棚調査や南海地震のデータ収集のための地震計設置、またメタンハイドレート調査など、にぎやかであります。
新宮市や新宮港振興会では、身近なテロ対策や船舶の安全などの対策として海上保安署の設置を要望したり、また、豊富な熊野川の水資源を、パイプラインがある巴川製紙の工業用水施設を活用し、国家危機管理の観点から、新宮港から供給するシステムを水資源救援港の指定という考えで利用したいという今までにない発想を国に求めたり、次世代エネルギーのメタンなどの研究施設や地震計などにも国の調査船が使われることから、新宮港を総合的な基地として積極的な利用を図るよう国にお願いしているようですが、新宮港の活用は紀伊半島全体に波及効果をもたらす可能性があると思いますが、港湾管理者の県としてこれらの動きに対してどのような対応や考え方をお持ちなのかお尋ねしまして、これからも県のお力添えで立派な新宮港を目指していただくことを懇願して、この質問を終えたいと思います。
次に、教育行政についてであります。
学校制度が始まって百年余り、戦後教育でも半世紀以上が過ぎた中で、週五日制という極めて大きな変化を迎えて二年以上が経過したわけですけど、子供たちが学校に縛られる時間が少なくなって、家庭、地域社会あるいは公的機関は、いや応なしに子育てへのかかわり方を考えざるを得なくなってきておりますが、学校教育にも今まさに抜本的改革が求められているのではないでしょうか。
戦後しばらくは受験戦争などで知識の詰め込みが徹底されて、最近は急にゆとり教育と言われ始めたんです。これはバランスを欠いた典型的な例だと思うんですが、児童生徒の個性を育てる自由教育、この必要性は認めます。しかし、その反面、読み、書き、計算など基礎的な知識に関しては、苦痛とも思えるような徹底した繰り返しが必要じゃないかなと思うんです。今の教育論議には強制か自由かという単純な構図が余りにも多くて、自由に偏り過ぎているんじゃないかなと。この両者の適正なバランスを考える議論が必要じゃないかなと思います。もちろん、きめ細かくそういうことをされているんでしょうけど。
また、最近は学校を相手取ったいろいろな訴訟とかがふえてきていまして、教師が萎縮しているんですよね。本気で子供たちに接するほどその危険性は高まっています。子供の人権や権利ばかりが言われる中で、愛情とそれに裏打ちされた厳しさも失ってしまったんじゃないでしょうか。学校の問題は社会情勢や保護者にも原因があります。しかし、教師の復権なくして教育の復権はあり得ないと思うんです。高い指導力と誇りを持つ教師がふえることで、教育現場は必ずよくなると思います。
そこでまず一点目の質問ですが、教師の研修というのは一体どういった内容でいつ行われているのですか、お尋ねします。
次に、ふるさと教育の実践についてです。
現在は、若者による犯罪や自殺が後を絶たないですが、将来の日本を背負っていくのもまた若者であります。町の活性化の第一歩は、まずその町に住む若者が、自分の生まれ育ったふるさとに誇りと愛着を持つことから始まるのではないでしょうか。ですから、今こそふるさと教育の必要性を重視し、その実践に踏み切るべきだと思います。
例えば、今の子供たちの中で、自分の住んでいる町の歌、市歌とか町歌、これを歌える子供が県内で果たして何人いるでしょうか。教えている学校はあるでしょうか。県内すべての学校で私は教えるべきであると思います。また、自分の町の歴史についても学校で詳しく教えていくべきだと思います。ふるさとを詳しく知ることから愛着も生まれてくるのではないですか。
財団法人地域活性化センターというところが発行した「伝えたいふるさとの一〇〇話」という、こういう本があります。それぞれの地域には、ふるさとの発展や復興、安全、住民融和等に貢献した献身的な、あるいは英雄的な行為が語り継がれて、今でも人の心を打つ伝えたい話が数多く残されています。この全国各地の百話の中に、和歌山県橋本市の大畑才蔵氏、那賀町の華岡青洲氏、広川町の浜口梧陵氏の三人が掲載されていますが、私はこの伝えたいふるさとの話の和歌山県版を教育委員会が作成して、発育段階に応じたカリキュラムをつくり、県内の小・中・高の学校教育に使用することを提案します。このことを実践することによって県内の多くの子供たちに知ってもらうことが、ふるさとへの誇りの再生につながり、さらには分権時代における個性豊かな地域づくりに資するものと思われますが、教育長の御見解はいかがですか、お尋ねします。
この項の最後に、高等学校の再編問題にも関連するんですけども、単純に少子化問題とか採算ベースで物事を考えずに、この際、百八十度発想を転換して取り組んでいただきたいと思います。せっかく県立高校の学区撤廃をしているのですから、もっともっと特色ある学科を各学校に置くべきだと思うんです。現在の県立高校にも種々さまざまな学科がありますが、それをさらに一校一学科、今県内の学校のどこにもないような学科、あるいは全国的にもないような学科を置くことを提案いたします。例えば、音楽学科、芸術学科、体育学科、農林水産関係の学科、個性的なところでは観光学科、IT専門学科、介護専門学科などであります。過疎が進んでいる学校ほど、こういった特色ある学科を設置することによって地域以外の生徒が来てくれる、そういった専門的な要素がふえてくるんじゃないでしょうか。むしろ、これを実践することによって全国的にもモデルケースとして発信して、将来の道州制の時代には全国の至るところから生徒がやってこれるような時代になるかもしれません。一度ぜひ御検討いただきたいと思いますが、教育長の見解はいかがですか、お答え願います。
最後に、天然記念物の「浮島の森」の再生と県道の拡幅についてです。
御存じの方もいらっしゃるでしょうが、本年七月に世界遺産登録となった熊野の都・新宮市には、世にも不思議な島があります。何と寒い標高二千メートルに生息するオオミズゴケや南方にしかないテツホシダなどたくさんの寒暖の植物群が入りまじって共存するという、町の真ん中にある珍しい島で、昭和二年に国の天然記念物に指定されていて、「浮島の森」と呼ばれています。知事はここをごらんになったことありますか。
昔、NHKの「ひょっこりひょうたん島」のモデルの島になったとも言われていますが、正式には新宮藺沢浮島植物群落と言います。指定当時は、浮島の周辺に見渡す限り湿原が広範囲にわたって緩衝地帯のように広がっておりました。ですから、天然記念物としての指定範囲が小さかったのだと思います。恐らく、今みたいに激変するとは当時想像すらできなかったのであろうと思います。だから、当時の指定面積が余りにも狭かったことを現在非難することはできませんが、ただ、学術専門家の間では、世界的な第一級の資料である、これほどの価値のあるものをどうして大事にしてこなかったのかなと、今にして思うのであります。現在は、浮島の周辺にすごい勢いで宅地が押し迫り、閉塞状態で身動きができないくらいです。何とか起死回生の手段を講じないと、浮島の生命はなくなるほどの危機状態です。皆様のお手元にお配りしてある写真を見ていただければ、昔と今の違いがよくわかっていただけると思います。
聞くところによると、縄文時代に海が新宮市内まで入ってきていました。これを縄文海進というらしいです。その後、随分たってから海の水が今みたいに引きました。その途中でいろいろな変化が起こり、浮島がぽつんと残ったようです。だから、古代の姿が今に残るタイムカプセルのようなものなのです。
最近、世界遺産の町になってからというもの、たくさんの観光客が訪れるようになり、中には専門的な知識をお持ちの方も多くございます。このままではいけない、早急に昔の写真のように周りの環境を回復すべきだと、いい意味での強い御批判を多数ちょうだいする始末であります。私も常々心を痛めているところであり、これは喫緊の課題であると認識している次第であります。貴重な文化財を本県から消滅させるのは忍びない。事ここに至ってはいささかの猶予もありません。このままでは世界に誇れる遺産を永遠に失いそうです。できることならば、財政逼迫の折、心苦しい面もありますが、県道拡幅という政治的手段を早急に講じていただき、関連的に大胆にこの島を助けてほしいと願うのであります。平安、鎌倉、江戸期、修験者たちの秘所でもあったこの秘めたる浮島、「おいの伝説」を書いた上田秋成の「雨月物語(蛇性の婬)」でも登場する価値あるこの島の再生に格別の御配慮を願いたいと思います。
また、先般、震度五弱の地震が立て続けに二回も起こって、浮島の周辺の住民は激しい揺れに生きた心地がしなかったと言っておりました。それはそうです。もとはといえば沼というか湿原の上に盛り土をして建てた家ですから、とても危険だと思います、豆腐の上に建っているようなものですから。もしも阪神・淡路大震災の大きさだったら、一番先に液状化するだろうと心配されます。防災面から見ても抜本的な対策が必要です。とは申せ、五十軒ほどある住宅をどう移転させるのか、その用地は、その費用はどう捻出するのかと考えたら、とても脆弱な一自治体では不可能です。
実は、世界遺産の町になったおかげで、訪れる観光客が日増しに多くなっています。国道四十二号から裁判所を曲がって、JR新宮駅までの途中にある浮島の森を訪ねてきます。マイカーや観光バスや駅からのタクシーなどが入ってくるため、狭い県道池田港線は大変危険な道路となっております。一日も早い大幅な拡幅が求められています。新宮の地が県政の素早い対応によって県民の交通安全と安住政策が図られるなら、県民のみならず来訪者に好印象を与え、ひいては我が県の誇りとなり、自慢にもなります。大いなる御判断を期待してやみません。浮島の森の再生については教育長に、県道の拡幅については県土整備部長に御見解をお尋ねいたします。
以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの須川倍行君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 新宮港は、吉野熊野国立公園という自然環境の豊かな場所において新たに地域振興のための港湾整備を実施したもので、環境と開発のはざまのまさに接点において周辺の自然環境にも十分配慮した緑地を整備するということは、大変意義深いことであるというふうに認識をいたしております。今後、在来の自然植生を取り入れるなど工夫を図りつつ、地元の方々の御協力を得ながら、世界遺産に登録された熊野地域の自然と調和した緑地として整備を行い、地域振興や観光交流にも生かせるようにしたいと考えております。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) まず、東防波堤の進捗状況と見通しについてでございますが、当該防波堤は平成十四年度より工事着手いたしております。事業の進捗状況につきましては、平成十六年度末には、防波堤全長三百メートルのうち四十五メートルが現場水域に姿をあらわし、事業費で約三〇%の進捗率になる予定でございます。財政状況が非常に厳しい中、平成二十三年度完成を目指し、今後とも予算の確保に努めながら、鋭意進捗を図ってまいりたいと考えております。
次に、港湾緑地工事についてでございます。
これは、平成九年度に工事着手しております。これまでに埋立地、外郭護岸は概成しておりまして、現在、埋め立て用材として建設残土を受け入れるなど、コスト縮減を図りながら着実に埋め立て造成を実施しております。平成十六年度末には、事業費で約七二%の進捗率となる予定でございます。今後とも受け入れ残土の確保に努めながら、平成二十年度の完成を目指し、鋭意進捗を図ってまいりたいと考えております。
次に、港湾の管理についてでございます。
新宮港の港湾管理のあり方につきましては、より高いサービスの提供や行政コストの低減を図るという観点から、新宮市、地元関係者とも協議し、指定管理者制度の導入も含めて検討してまいります。
それから新宮港の将来についてでございますが、これまでも新宮市など地元関係者と連携を図りながら、製紙工場などに対しポートセールス活動を実施してきたところでございます。また、従前から旅客船の誘致活動を進めてきたところ、今般の世界遺産登録を契機として旅客船三隻の寄港が実現いたしました。議員御指摘のとおり、この地域には、熊野川の豊富な水、自然豊かな環境と文化、メタンハイドレートなどの有望な海洋資源があり、新宮港や紀伊半島南部地域が将来飛躍するためのポテンシャルを有しているものと考えております。今後とも、地元関係者や関係部局と連携を図り、地域の資源を十分活用しながら、新宮港のPRや貨物の誘致活動等に積極的に取り組んでまいります。
次に、県道池田港線の拡幅についてでございます。
JR新宮駅から国道四十二号までは、上本町あけぼの線として幅員十六メートルで都市計画決定がされており、国道四十二号とJR新宮駅間の最短ルートであることから、整備が必要であると考えております。このうち、JR新宮駅から都市計画道路下本町梅ノ木線までは既に整備済みでございます。残る国道四十二号までの約五百メートル区間は、近隣商業区域であり人家や商店が密集しているため、中心市街地のより一層の活性化の観点から、例えば沿道区画整理型街路事業など面的整備を取り入れるなど、地元の方々も参画し、さまざまな活性化計画とも整合のとれた効果的な町づくり計画がまず必要であると考えております。その計画を策定するに当たっては県といたしましても協力するとともに、それを踏まえて対応してまいりたいと考えております。
以上です。
○議長(小川 武君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 初めに、教職員の研修については、一人一人の指導力や資質の向上だけでなく、プロとしての自覚と誇りを培うことが大切であると考えております。本年度は、初任者、五年及び十年経験者の全教員を対象とした研修を初め、管理職、教科・領域に関する研修等、合計二百七の講座を開設いたしております。特に、昨年度大きく模様がえしました十年経験者研修は、指導力の強化とともに、地域社会との連携や人間関係能力のスキルアップをねらいとして、夏季休業中を中心に合計四十日間実施しており、みずからの能力、適性を把握し、これからの教育活動の方向性を確固たるものにする大きな役割を果たしているものと考えております。
また、来年四月に開所いたします和歌山県教育センター学びの丘では、一層充実した研修が実施できるよう計画しているところです。
次に、ふるさと教育の実践についてお答えします。
本県には、世界に誇る豊かな自然と文化遺産が至るところにあり、県民歌や市町村民歌等にもふるさとの思いや願いが織り込まれたものが数多くあります。教育委員会では、議員御指摘の伝えたいふるさとの話の和歌山版とも言える和歌山の自然や歴史、先人の偉業を取り上げたふるさと教育副読本「わかやまDE発見!」を作成し、県内すべての小中学校に配布して、総合的な学習の時間等で積極的に活用しております。また、ふるさと教育推進大会やあさもよし紀伊国スクール事業などを実施する中で、児童生徒がふるさとのすばらしさを発見し、郷土を愛し誇りに思う心をはぐくんでまいりました。今後とも各学校に対し、総合的な学習の時間等の中で一層充実したふるさと教育を実施するよう指導してまいります。
特色ある学科の設置については、生徒の個性を最大限に伸ばすことができる多様で柔軟な教育を推し進める観点から、平成元年以降、これまで総合学科を含めて四十を超える学科を新たに設けてまいりました。今後も社会の変化や生徒・保護者のニーズ、卒業後の進路などを踏まえ、多面的に研究、検討してまいります。
また、近年では、学科に比べて科目の設置などに制約の少ないコースや類型のあり方に工夫を凝らし、選択幅を広げながら、一人一人の個性によりきめ細かく対応できる教育課程の編成に努めてまいりたいと考えております。
最後に、天然記念物「浮島の森」の再生についてお答えします。
これまで所有者である新宮市が主体となって、国や県との連携のもとに、下水流入の遮断などさまざまな取り組みを行ってまいりました。その結果、水質については近年相当の改善が見られ、植物生育状況も好転しているところです。さらに、平成十五年度に浮島東側の隣接地の一部が国指定天然記念物に追加指定されたことに伴い、新宮市では、国の助成を得てその土地を買い上げるとともに、本年度から環境復元事業に着手しております。沼沢地の拡大や復元は浮島のより完全な保護にとって好ましいことでありますので、議員御提言の事業と関連した環境復元が実現した場合、教育委員会といたしましても積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(小川 武君) 以上で、須川倍行君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
十七番花田健吉君。
〔花田健吉君、登壇〕(拍手)
○花田健吉君 ただいま議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問を行わせていただきます。
その前に、ことしも余すところ二十日余りとなりました。ことし一年を振り返りますと、異常気象による過去最多の台風の到来や新潟中越地震で多くの方が被災され、また全国各地でさまざまな災害がもたらされた、忘れることのできない年となってしまいました。風水害や地震によってお亡くなりになられた全国各地の犠牲者の皆様や御家族の皆様に衷心よりお悔やみを申し上げますとともに、農林水産物や家屋に甚大な被害に遭われた皆様にも心からお見舞いを申し上げます。
大自然の恐るべき破壊力の前に私たち人類がいかに無力で非力な存在であるかを思い知らされ、地震や風水害に対し、政治、行政において今後どう対応すればいいのか、深く考えさせられた一年でもありました。科学技術万能のおごりはもろくも崩れ去り、私たち一人一人がいかに大自然の脅威を自覚し、認識し、時にはそれを受け入れていかなくてはならないかを問われたのではないかと思うとき、改めて県民の皆様から負託された責務の重さに身の引き締まる思いであります。木村県政におかれましても、こうした災害に対しより強い県土の建設に一層の御尽力を心からお願いを申し上げ、質問に入らせていただきます。
さて、御承知のとおり、我が和歌山県は太平洋に突き出した日本最大の半島に位置し、南北に長い県土を有しております。その県土を紀の川や熊野川のような大河が流れ、また、各郡市を幾つもの河川が太平洋に向かって流れ出ております。そういった地形上、昔の人はそれぞれの川の流れに乗って往来し、また、木材や生活物資等を運搬する輸送手段として河川は重要な役割を兼ねておりました。そういった長い歴史から、それぞれの郡市において河川の河口に地方都市が発展してまいりました。しかし、高度経済成長に伴い自動車が急速に普及し、それとともに各郡市の道路整備の必要性に迫られ、急ピッチで改修されましたが、どうしても河川に沿った国道や県道の改修が優先され、比較すると南北を縦断する路線の整備がややおくれがちであることは一目瞭然であります。
我が県は、長い間、南北最大の大動脈で第一県土軸と位置づけております国道四十二号線一本に頼ってまいりました。昨年、ようやく高速道路がみなべまで南伸しましたが、これまた海岸線よりやや内陸部の山間を縫って通過しております。人や物の流れの容量からすれば海岸線を走るのは当然のことではありますが、近年、木村知事の警鐘により大変注目されております南海大地震の備えという観点から、我が県は県東部の第二県土軸の整備、完成を急がなくてはなりません。
第一県土軸は、穏やかな気象条件のときは風光明媚で大パノラマを楽しんでいただけ、その地形を縫うように南北に走る国道四十二号線沿いの海岸線は、太平洋の荒波がつくり出す大自然の造形に観光客の皆様も一瞬息をのむほど美しくすばらしい観光資源を結ぶ観光道路でもありますが、もちろん農林水産業や商工業の基幹道路でもあります。
しかし、私たちは、いま一度我がふるさとの地理的条件を考え、来るべき地震による津波の防災対策の検討、研究を怠ってはなりません。そして、大地震が起こったとき一番大事な震災直後の救急車、消防車などの緊急車両が通行できる道路や緊急物資の搬入のための大型トラックの輸送道路の整備、さらに、その後、被災地の復旧、復興に必要な道路網を今から位置づけをし、そしてその路線の改修を計画的に行っていかねばならないのではないでしょうか。
昭和五十七年八月三日、集中豪雨により印南町切目地区と南部町岩代間で、大動脈である国道四十二号線と当時国鉄の線路が陥没、四日間全面通行どめになり、紀南地域が陸の孤島となったことを御記憶の方もおられると思います。そのときは仮設道路を緊急設置し、普通車は間もなく通行可能となりましたが、しばらくの間、大型バスは仮設道路の手前で乗り継ぎ、国鉄も乗り継ぎ運転を行っていたように思います。当時、私も他府県に住んでおりましたので詳しく記憶しておりませんが、大型貨物などの一般輸送はどのルートを通ったのか。多分龍神ルートを通ったのではと考えるとき、当時の我が県の交通体系の危うさ、もろさを図らずも露呈してしまった災害でありました。
国道四十二号線は国の直轄道路ですので国にお任せするとして、第二県土軸は県が責任を持って整備しなくてはならないということは言うまでもありません。もちろん現在に至るまで、海岸線を走る国道四十二号線を第一県土軸、内陸山間部を走るルートを第二県土軸と明確に位置づけをし、仮谷、西口両県知事や木村知事を初め県当局、また多くの先輩県議や国会議員の皆様の御尽力により、県内の東部地域を縦断する路線が着々と確実に整備されてまいりました。
新宮から本宮を経由し、西牟婁郡、日高郡を縦断し、有田郡、海南、そして和歌山市へと結んでいく第二県土軸は必要不可欠の路線であり、その重要性は今さら申し上げるまでもありません。平成十一年、熊野博に合わせて整備された国道三百十一号線を経て、西牟婁郡中辺路町栗栖川から日高郡龍神村柳瀬間の県道百九十八号線を整備し、中でも平成五年、二千三百メートル余の県道としては最長の水上栃谷トンネルの完成により、こんなに中辺路町と龍神村が近かったのかと当時感動いたしました。
それをさかのぼること四年前、平成元年には既に椿山ダムが完成し、関連のつけかえ道路も整備されておりました。そのダム湖畔を眺めながら国道四百二十四号線を日高川沿いに下ると、これまた最大の難所であり地域住民の悲願でもありました日高郡と有田郡を結ぶ宇井峠の下を千八百九十二メートルで結んだ白馬トンネルが平成六年に完成するに至り、ようやく第二県土軸の姿が私たち住民にも見えてまいりました。
まさに着々と第二県土軸は進捗してまいりました。現在、当局の御尽力により金屋町修理川工区が急ピッチで改修されており、美山村の浅間─滝頭間に未改修区間が残っておりますが、当初の目的に向かって順調に進んでいると感じている次第であります。これもひとえに関係各位の長年にわたる御尽力のたまものと、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。私たち県南東部に住まいする者にとって、このルートは生活の道であり、和歌山市に向かうための必要かつ最重要道路であります。
ところが、ここまで進めてまいりました第二県土軸が、どうしたことか金屋町から吉備インターチェンジに乗って和歌山市へつなぐことに位置づけをされてしまいました。歴代知事や当局がその時々の政治判断による幾つかの大英断を経て大変な時間と予算を使って現在に至っている第二県土軸のルートが、金屋町まで来ていかにも安易な方法で高速道路につなげてしまったのは、当時のいろいろな状況で仕方がなかったことかもしれません。しかし、私は第二県土軸はあくまでも県土の中央部を貫き、国道四十二号線と高速道路と並行し北上するものだと考えております。
再度申し上げますが、新宮─東牟婁─西牟婁郡─日高─有田─海南─和歌山市までの第二県土軸のルートは、必ずしも現在の位置づけのルートがベストであるとは思いません。金屋町のある地域の住民の方々の中には、貴志川へと抜ける国道四百二十四号線の早期改修を望んでおられる方もおられるとお聞きいたしております。もちろん、この路線の改修も必要であると思います。しかし、それは国道四百二十四号線の整備促進であり、第二県土軸と一線を画して無用な混乱を避けなくてはなりません。金屋町内で綱引きをさせるのではなく、地理的条件や県都和歌山市へ向かう県南部に住まいする住民の目的から考えても、既に当局において主要県道と位置づけをされております県道十八号・海南金屋線が第二県土軸の北へ通ずるルートであると私は確信をいたしておりますが、いかがでしょうか。
しかし、残念ながら、県道の中でも主要路線と位置づけられておりますこの路線の改修は大変おくれております。県当局は、今年度も幾カ所かで改修工事も行っているとお聞きいたしておりますが、さらに御認識を深めていただき、この路線の抜本的改修に御尽力をお願いいたします。
海南市の重根の田津原地区では普通車の対向もままならない箇所が続き、記憶に新しい先般の海南市冷水で起こった木材運搬車の横転事故の際、国道四十二号線が全面通行どめになったときなどは大変な混雑であったと、地元の人からお聞きをいたしました。私も、ことしの五月三日、家族でポルトヨーロッパに行った帰り、高速道路も国道四十二号線も物すごい混雑でしたので県道海南金屋線を通ったのですが、高速道路が海南インターチェンジ付近で混雑したため吉備インターチェンジでおり金屋町を経由して逆方向から北上してくる車の洪水に立ち往生し、峠を越えるのに二時間以上を要しました。裏を返せば、それほど重要な、だれもが認知したルートであります。予想されます南海大地震の際も、きっとこのルートは、生活の道はもとより県南部の命の道として災害時の緊急救援物資の運搬等に役立ってくれるであろうと確信をいたします。
そこで、知事にお伺いをいたします。
県道海南金屋線を第二県土軸の和歌山へ通ずるルートであると新たに御認識をいただきたいと思いますが、いかがですか。紀南の住民の声をお酌み取りいただきまして、早期改修に御尽力をお願い申し上げる次第であります。
また、県土整備部長にお伺いします。
御承知のとおり、県道の海南市重根─金屋町六川間は大変急勾配の峠越えのルートであります。技術的に現在の道路を拡幅、改修するには困難な箇所もあると考えます。そこで、ぜひ金屋町から海南市に通じるトンネルの建設を強く御検討いただきたいと考えますが、いかがですか。私たち和歌山県の南東部に住む者が和歌山市へ行く唯一の道であると御認識をいただき、そこに住まいする者の熱意をお伝えして、重ねて早期改修をお願い申し上げ、次の質問に移ります。
冒頭にも述べましたように、ことしは我が国にとって、台風が観測史上最多の上陸と、大変ありがたくない記録を残した年になってしまいました。我が和歌山県にとっても、台風六号と台風二十三号が特に甚大な被害をもたらしました。台風六号についてはさきの九月議会において農産物の被害を中心に質問させていただきましたが、このたびも台風二十三号の高潮対策と農産物の塩害について、当局の御見解を賜りたいと思います。
まず、高潮対策についてお伺いをいたします。
私は、この質問は昨年の台風十号のときにも取り上げさせていただきました。そのときは、煙樹ケ浜の高潮対策と切目川の河川改修についてお伺いをし、当局の前向きな姿勢と、さらにその後の迅速な対応に感謝をいたしておりました。しかし、今回の台風二十三号は超大型で勢力も強く、長時間暴風圏内にさらされ、満潮時と重なるなど最悪の条件の中、強風による高潮の被害が県内各地の漁港、港湾、海浜の防潮堤や防波堤に被害をもたらしましたのは御承知のとおりであります。そこで、今回はお許しをいただき、地元日高郡の海岸線の被害に対して当局の御見解をお伺いしたいと思います。
日高郡では、その高波にさらわれ、帰らぬ人となられた方もいらっしゃいます。心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、御家族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。この方はふだんから海を熟知されている渡船業をされている方とお聞きし、いかに今回の台風が我々の予想をはるかに超えるものであったのかがうかがい知れると同時に、台風の怖さを再認識いたしたところでございます。
また、今回の台風は、とうとい人命とともに、見るも無残な傷跡を私たちのふるさとの海岸線に残していきました。由良町の名勝白崎海岸の町営施設に甚大な被害を与え、衣奈においても大変な被害でありました。煙樹ケ浜の本ノ脇地区においては、護岸の防潮堤やテトラポットが流され、海岸沿いの店舗等にも波が押し寄せ、運ばれてきた石などによりガラスが割られ、大変な被害に遭われました。後片づけをする若い店主の後ろ姿にかける言葉も見つからないほど、店の中に砂や石やコンクリートのかけらなどが散乱しておりました。地元の方に聞くと、今回の台風でさらに砂浜がやせ随分海が近づいたと申されておりますし、この先とても不安だと申され、ぜひ安心して暮らせるようにとお訴えになられておりました。
別に意図したわけではありませんが、たまたま台風の来る二日前に、県土整備部港湾局に、煙樹ケ浜の高潮対策並びに津波対策について、地元美浜町の入江町長や議長、日高郡選出の県議、地元関係者の皆さんと県当局に陳情にお伺いし、そのときも「今度の台風は心配やな」と話していたやさきの出来事でした。その心配事が的中し、何としても毎年やってくる台風による高潮の被害に対して、煙樹ケ浜の海岸線にお住まいの皆様が安心して暮らせるよう、解決策を見出していただきたいと強く思うものであります。
また、切目川河口の高潮の被害も大きく、国道四十二号線沿いの防潮堤の間にある仕事場や倉庫などの壁が波によって壊されました。この地域は地形上大変特異な地形であり、現地には防潮堤やテトラポットを設置し対策を講じていただいておりますが、地元の方のお話によると、「テトラポットの設置箇所をもっと考慮できないのか。台風が来たときに見ていると、防潮堤のわきに置いてあるテトラポットに当たって海水が上がってくるように思う。海岸から離れた場所に設置してもらった方がより効果的ではないのか」と申されておりました。隣接する漁港の被害も含めて調査し、切目川を含む切目海岸の整備をお願いいたします。
そして、いつか来る南海大地震の津波に対しても対策が必要であります。もちろん、津波となりますとその規模や質も異なりますが、この際あわせて、先ほど申し上げた煙樹ケ浜と切目海岸について、今後の整備改修について、県土整備部長の御見解をお尋ねいたします。
また、切目川河口の高潮で川が逆流するために起こる農作物に対する塩害は今さら申し上げるまでもありませんが、今回の台風二十三号は海水を含んだ潮風が農産物にも大きな被害をもたらしました。この塩害は県下全域にわたるのですが、日高郡においても沿岸地域の花や野菜などの農作物の被害は甚大であります。ある農家の方は、年末に出荷予定だった菊の花がほぼ全滅したとお聞きいたしております。ことしだけのことではないので、台風時、沿岸地域の農作物に及ぼす塩害に対して有効な防護方法はないのでしょうか。
そこで、農林水産部長にお伺いをいたします。
県当局は、この塩害に対し、今後どのように指導し対応していかれるのか、お聞かせいただきたいと思います。台風の去った後すぐに水をかけて洗うということは当然のことでありますが、それでも葉が枯れたり品質が極端に劣化するということであれば、それ以外に何らかの解決方法はないのでしょうか。ぜひ農林水産部で研究をしていただき、またそういう方法があれば、その施設に対し指導するだけでなく、支援の対応も含めて御検討いただきたいと思います。
昨今、海岸に設置されている消波ブロックに当たった波が台風による強風に巻き上げられているのではないかとの指摘もあります。いずれにしても、塩害に苦しむ農家の声をお酌み取りいただき、当局の前向きな対応を強くお願い申し上げます。
続きまして、これも昨年初めての一般質問のときに取り上げました高野龍神スカイラインの冬季通行について質問をさせていただきたいと思います。
昨年の九月議会では、冬季観光資源としてスポットを当て、幻想的な冬の景観を観光資源として生かせないのか、知事の御英断で無料化するのだから、それに伴い、スカイラインが冬季でも凍結問題を克服し通行可能な道路にならないのかということに対して御答弁をいただきました。その後、当スカイラインを取り巻く状況が一変し、無料化したことにより交通量は一気にふえました。昨年末からことしの冬も大変心配したのですが、大きな混乱や事故はなかったと県警本部からことしの四月にお伺いをいたしました。
また二月には、県当局と龍神村の村議会議長や村議会議員の方、また役場の観光課長にも御同行いただき、鳥取県の大山国立公園の中にある道路の融雪施設も視察しました。すばらしい施設でありましたが、費用の面から少し我が高野龍神スカイラインには荷が重いなと思いました。しかし、ことしの七月に念願の世界遺産に「紀伊山地の霊場と参詣道」が登録をされ、高野龍神スカイラインも想像をはるかに超える交通量となっており、そうも言っておれない状況になってきたのではないでしょうか。
世界遺産効果のすごさに驚くと同時に、ことしの冬はどうなるのだろうかと、いささか心配をいたしております。それは二つのことで心配をしておりまして、その一つは、何も知らずにお越しいただいた県外のお客様に、通行時チェーン走行でないと通れないとわかり、旅行日程を大幅に変更していただかなくてはならないなど御迷惑をおかけしないかということであります。もう一点は、スカイラインの積雪状況をだれがどのように把握して知らせるのかということであります。このことは、人の命にかかわることなので真剣にお取り組みをいただきたいと思います。
昨年も、チェーン規制表示が出ているにもかかわらず、スカイラインに入り、あわや遭難しそうになった奈良県の方がいたとのお話もお聞きいたしました。スリップし、雪の道に突っ込み、立ち往生し、たまたま携帯電話の通じるところが近くだったので、龍神村役場に電話連絡をし、助けてもらったとお聞きしました。もし、連絡がつかなかったら、夕方だったそうですが、スカイラインは夜間、マイナス六度まで気温が下がるので、大変危険な状況になっていただろうと話しておられました。ことしは気象庁の発表では暖冬ではないかと言われておりますが、下界は暖冬で暖かく感じるかもしれませんが、標高千三百メートル地帯を走る道路ですので、かえって認識の薄い方が夜間、そんなに冷え込んでいないから大丈夫だろうとスカイラインに入りはしないかを心配しております。
そこで、まず県土整備部長に、高野龍神スカイラインを取り巻く現状の変化に伴い、冬季道路凍結問題に対し道路管理者としてどのような対策をお考えなのかをお伺いいたしたいと思います。また、今後この問題に対しどのように対処していかれるのかもあわせてお伺いをいたします。
融雪については全国各地のいろいろな施設や方法があると思いますが、部長から見て当スカイラインに使えるものがないのか。例えば、小規模水力発電なども電源開発で比較的安価で実用化していると聞き及んでおりますが、このような発電施設を利用して得た電力で融雪できないのか。いろいろ思いつくままに申し上げますが、専門家のお立場でぜひ御検討いただき、さらによい方法があれば研究していただき、少しでも解決の糸口を見つけていただきたいと切に要望しておきたいと思います。海外からの、特に南の国のお客様があのすばらしい雪景色や樹氷などを見ると、きっと感動し、また和歌山にお越しいただけると確信しておりますし、お帰りになってからPRしていただけると思います。
次に交通安全対策について、警察本部長にお伺いをいたします。
昨年からことしの冬季の交通安全対策について万全の策を講じていただき、小さな交通事故が幾つか発生した程度で事なきを得たと伺いましたが、交通量が大幅にふえていることし、当スカイラインの交通安全対策について再度お考えをお聞かせ願いたいと思います。
最後に、知事にぜひことしの冬の高野スカイラインを御視察いただければと思います。
以上をもちまして、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○議長(小川 武君) ただいまの花田健吉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 和歌山から新宮を結ぶルートとして、海岸部を通る近畿自動車道紀勢線や国道四十二号線に加えて内陸部を縦貫する道路を整備することは、世界遺産登録された内陸部の地域振興や東南海・南海地震時の代替路線確保の観点からも非常に重要であると、このように考えております。そのため、現在、海南湯浅道路吉備インターチェンジから金屋町を経由し、国道四百二十四号等内陸部の道路を通り新宮へ至るルートの整備を重点的に促進をしているところでございます。
金屋から海南間につきましては、防災上の観点、路線の位置づけ、整備のあり方をさらに検討することが必要であると、このように考えております。
○議長(小川 武君) 県土整備部長酒井利夫君。
〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) まず、第二県土軸の関係でございます。
金屋から海南間につきましては、議員御指摘のとおり、長峰山脈を通る急勾配の峠越えルートであり、時間短縮効果、冬季の凍結問題等を考慮すると一般的にはトンネル計画が妥当であり、今後、地質調査や投資効果等のさらなる検討を行ってまいります。
次に、台風二十三号による高潮被害についてでございます。
二十三号により高潮被害が発生した煙樹ケ浜につきましては、被災護岸の早期復旧に努めるとともに、背後の土地利用状況を勘案しながら、美浜町を初め地元と連携を図りつつ、必要な区間について防潮壁の新設やかさ上げなどを検討してまいります。
次に、切目漁港海岸につきましては、管理者である印南町が平成十七年度から防潮堤のかさ上げ工事を予定しているところであり、また、今般の台風による災害については復旧事業として消波ブロックの補充を申請しております。県といたしましては、これらの対応について助言を行うなど、町との連携を密に図りながら高潮被害の防止に努めてまいります。
なお、津波対策につきましては、県全体で行っている津波被害想定結果をもとに、関係市町と連携を図り、ソフトとハードの総合的な組み合わせにより安全性の向上が図られるよう検討してまいります。
次に、高野龍神スカイラインの冬季対策でございますが、高野龍神スカイラインは昨年十月に無料化し、本年七月には高野・熊野が世界遺産に登録され、観光道路としてますます重要な道路になってきたと認識しております。昨年来この路線は、特に冬季の期間である十二月十五日から翌年三月二十五日まで、安全性の確保が困難なことから無料化以前と同様に夜間通行どめにし、日中の通行については早朝に巡回をし、融雪剤の散布や積雪時は除雪作業等を行うなど、安全対策に努めております。さらに、安全対策として立て看板の設置やインターネット、メディア等の活用による事前規制の周知の強化をこの冬より実施いたします。さらに、タイムリーな積雪状況や緊急な通行どめ情報等を提供できるシステムについても検討してまいります。
今後とも、公安委員会を初め関係機関と連携を図りながら、交通のさらなる安全確保に努めてまいります。
○議長(小川 武君) 農林水産部長阪口裕之君。
〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 農作物の塩害対策についてでございますが、本年、本県に多くの台風が襲来しましたが、特に台風二十三号は、強風による被害とともに降雨量が少なかったことから、日高地方の海岸部を中心に農作物への塩害が発生してございます。塩害の軽減対策としては、付着した塩分を速やかに水で洗い流す必要があり、従来からスプリンクラー等による散水を指導してきたところでございますが、散水むらや散水時期のおくれ等により十分な効果が得られなかった事例もあったと聞いてございます。
今後、農協や試験研究機関等と連携を図りながら、より効果的な方法を検討してまいりたいと考えております。
○議長(小川 武君) 警察本部長宮内 勝君。
〔宮内 勝君、登壇〕
○警察本部長(宮内 勝君) 高野龍神スカイラインの交通安全対策についてお答えいたします。
本道路における昨年の十二月から本年二月までの人身事故は二件、傷者二名で、事故により亡くなった方はございません。今後、交通量がふえることも予想されますので、積雪、凍結のため通行に危険が生じるおそれがあると認められる場合には、道路管理者との緊密な連携のもと、パトロールの強化、タイヤチェーン装着の指導を図るなど、交通の安全確保に努めてまいります。
○議長(小川 武君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
十七番花田健吉君。
○花田健吉君 質問ではありません。要望です。
一つ、塩害に対して、農林水産部長も水をかける以外の方法はないと。私もそう思いますが、技術は日進月歩でございますので、和歌山発のこの塩害対策の何かいい方法、アイデアがあれば、ぜひ御研究いただきたいと思います。
それと、海南のこのトンネルの問題ですけれども、私、もう約二十年前に、二階代議士の秘書で、海南地域というか有田郡市を担当させていただきました。地域住民の非常に熱心な要望が当時からございました。もうあれから二十年たっております。その間に、ずっとみなべから、先ほど申し上げました西牟婁を通過し、そして白馬トンネルを抜けてきた。あそこでまさか、県当局はもうお疲れになったと私は思いませんけども、私はこの海南─金屋ルートが、多分あそこを越えて和歌山市へ行くルートだろうと、第二軸だろうと、だれしもあの当時は位置づけておったような気がします。それがいつの間にか、疲れたとは言いませんけれども、すっと高速道路へ流してしまって、もうこれでおしまいみたいな形になっているのが僕は現状だと思います。
そこで、再度このトンネルの早期着工と完成に向かって、県土整備部長、またもちろん知事でございますが、よろしくお願いを申し上げまして、要望とさせていただきます。
○議長(小川 武君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で花田健吉君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
本日は、これをもって散会いたします。
午後二時十七分散会