平成16年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(花田健吉議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(向井嘉久藏君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十七番花田健吉君。
  〔花田健吉君、登壇〕(拍手)
○花田健吉君 ただいま議長よりお許しを得ましたので、通告に従い一般質問に入らせていただきたいと思いますが、その前に、ことしは例年になく猛暑続きで、しかも台風が観測史上最多の七回も日本に上陸し、各地にその猛威を振るい、生命や財産を奪い、農林水産物を初め、あらゆる分野に甚大な被害をもたらしました。各地でお亡くなりになった方々に心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、いろんな被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。
 さて、木村知事におかれましては、その猛暑の中、二期目の県政を担うべく熱い選挙戦となりましたが、県内各地を精力的にめぐられ、県民の目線で県民の声を直接お聞きいただき、県民の熱い期待を肌で感じられたのではないかと思います。今後その県民の声を県政にどう生かしていただけるのか、心から御期待を申し上げ、質問に入らせていただきます。
 最初に、難病患者に対する身体障害者手帳の交付基準についてお伺いいたします。
 難病とは、発病の原因が不明で、治療方法はいまだ未確立で、国や県で特定疾患に指定された病気であり、これらの病魔に取りつかれた患者はさまざまな深刻な状況に直面しておられます。周囲の人に難病のことを打ち明けられず、それゆえに就労条件や就労環境において理解を得られず、時として誤解を与え、仕事が続けられないなど問題も生じているとお伺いいたしました。長期にわたる治療は、本人や家族にとって経済的または精神的に重く負担がのしかかり、将来の生活設計やかさむ治療費などの経費に対して強い不安を感じておられます。もちろん公費負担制度があり、国・県の特定疾患に認定されれば治療費の自己負担の軽減が受けられます。しかし、特定疾患の認定を受けても、身体障害者福祉法に基づく障害者手帳が交付されるわけではありません。
 私の友人の御子息にクローン病という国指定の特定疾患を患っておられる方や、またその方のお知り合いに同じ病気にかかって苦しんでおられる方がおられます。クローン病とは、消化管に炎症を伴う病的な変化が起こり、潰瘍ができたり粘膜がはれたり、内腔が狭まったりする病気であります。米国のクローン医師らによって回腸末端の病気として報告され、彼の名前をとり「クローン病」と名づけられました。その後、研究で口から肛門までの消化管のすべての部分で起こることがわかってまいりました。
 この病気は、原因不明なので治療方法も確立していません。症状は下痢、腹痛、発熱、体重減少、肛門の痛みなどがひどくなると切開手術を行い、小腸や肛門などを切除しなくてはなりません。彼は現在、和医大に入院しておりますが、以下、彼からの手紙を抜粋して御紹介したいと思います。
 「私は、中学校三年の夏、突然夜中腹痛に襲われ、近くの病院で診察をしていただきましたが、そのときはクローン病とはわからず、四歳のときの虫垂炎の跡が癒着しているんではないかと診断され、高校三年の冬まで何度も激しい痛みに襲われましたが、医師の診断は変わらず、入退院を繰り返しながら治療に当たっていました。平成七年に別の病院で症状を回復させるため手術を受け、クローン病であると診断されました。当時大変珍しい病気であったため担当医師もよくわからず、病状はすぐに回復するであろうとの診断でした。その四カ月後、進学先の大阪で大量下血し入院。その後、入退院を繰り返し、平成十年、和医大にて二度の開腹手術を経験いたしました。術後、医師の勧めにより食事を一切口にせず、昼間は栄養剤を飲み、夜間は鼻からチューブを入れ、栄養剤を注入していました。特定疾患のため国から助成していただきましたが、チューブでの注入の際用いるポンプ等約十六万円を自己負担で購入いたしました。東京女子医大にも行き、薬も栄養療法も受けました。できることはすべてしてきたつもりですが、病気は繰り返すばかりです。最近、自分で調べて知ったのですが、鼻からチューブを通す状態は明らかに身体障害者四級の規定に入るのではないかとのことですが、当時保健所から教えてもらえず、知りませんでした。実に二年間、毎晩夜間のチューブを続けました。その間、保健所に何度か足を運びましたが、手帳の交付については何の話もありませんでした。学校卒業後、いろいろな仕事につきましたが体調が定まらず、すぐに解雇されます。健常者でもなく身体障害者でもない私にとって社会復帰は難しく、病気の治療のための出費はかさむ一方です。また、病院や地域によって障害者の規定が違うようで、戸惑っております。手術を何度も繰り返し、食事も口にできず、また夜間のチューブでの栄養摂取を再開しました。胆石症や痔ろう等の合併症も引き起こしている自分が健常者に戻れる可能性は、もうありません。もちろん自分だけでなく、世の中のあらゆる難病と闘っている人々に社会的保障と地位を確立してほしいのです」と訴えておられます。
 当時の保健所の対応等については、お互いの言い分もあったのではないかと思いますので、ここでは問いません。国・県指定特定疾患のうち公費負担の特定疾患が四十五指定され、県も特定疾患に五疾患を指定していますが、このうち身体障害者手帳の交付の基準はどうなっているのでしょうか。今回のケースのように国の特定疾患に認定され、大手術を三度も受けられ、現在栄養剤をチューブにおいて摂取しなくてはならないこのような方に身体障害者手帳がなぜ交付できないのでしょうか。
 私は身体障害者三級の手帳を交付していただいておりますが、私のように外疾患の場合は症状固定の確認が容易であり、比較的身体障害者手帳は交付されやすく、内疾患の場合は交付されにくいと一般に思われていますが、症状によっては内疾患の方がつらい状況にある場合も考えられますが、いかがですか。いま一度、あらゆる難病と闘っておられる患者さんに対する身体障害者手帳の交付の認定基準のあり方と、症状に見合った対応を求めたいと思います。
 そこで、福祉保健部長にお伺いいたします。
 この身体障害者手帳の交付基準は、いつごろ、どのようにつくられたものなのでしょうか。時代に応じて改定されているのでしょうか。最近新しく認定された疾患に対して対応はできているのでしょうか。今後も適時見直しが行われるのか等もあわせてお答えいただきたいと思います。
 特定疾患を患っている方にとって、病院に通う交通費の軽減や就職に際し不利益をこうむらないようにと、身体障害者手帳に対する思いは健常者にはかり知れない思い入れがあります。木村知事も二期目の就任のごあいさつの中で述べられておられますが、中央集権型行政システムから、自己決定、自己責任を基本理念として住民本位の新しい行政システムに転換していく必要があると申されておられます。また、全国に先駆けた和歌山モデルの構築も提唱されておられます。他府県の事例に足並みをそろえるというのではなく、先ほどの手紙の中で訴えている難病をお抱えの方々の将来への不安ややりきれない切実な思いを御理解いただき、弱者の立場に立って誠意ある御答弁を心からお願い申し上げます。
 次に、木村知事は、先般、選挙中、いろいろなところで農業政策について熱い思いを訴えられておられました。そこで、和歌山県のこれからの農業の可能性と後継者の育成についてお尋ねいたしたいと思います。
 戦後、我が国は物づくりで経済大国の名を一時期世界じゅうにとどろかせ、工業製品の生産力が国家としての豊かさと国力のバロメーターとして論じられ、当然和歌山県もその社会現象に引きずられ、農村から若い労働力は都会へと移動し、過疎・過密という大きな政治的課題を生み、現在においては環境問題や核家族問題、希薄な地域社会における犯罪の多発化、少子高齢化問題まで波及し、今まさに国家のあり方が問われているような気がしてなりません。
 戦後、資源も少ない小さな国土に一億もの人口が住み、国民の生活向上のため懸命に働き、現在の豊かな日本を築いていただいた先人の御尽力には改めて頭の下がる思いでありますが、その間、我が国の農業は、たびたびの経済摩擦の駆け引きの対象となり、農産物の自給率をどんどん下げ、現在は約四〇%にすぎず、危機的状況ではないかと考えます。
 我が国は、江戸時代、鎖国制度のもととはいえ、世界有数の最先端農業国家であり、ほとんど国内で自給自足の生活が実現され、まさしく循環型社会を形成していました。しかし、国家の近代化の変貌の中で、先進国に追いつくため、農林水産業から商工業へと主力産業が移行してまいりました。その間、一次産業の従事者の比率がどんどん減少し、特に戦後、高度経済成長時代にその傾向は顕著となり、現在に至っています。
 しかし、昨今、食糧をすべて海外に頼っていいのかどうか、我が国の大きな重要課題として問題提起されております。外国からの輸入品には、アメリカのBSE問題にしても、東南アジアでの鳥インフルエンザにしても、また中国からの基準値をはるかに超える残留農薬野菜の問題にしても、食の安全、安心からすればほど遠く、食糧を外国に頼る危険性と食糧の安定確保の不安定性を図らずも露呈してしまいました。
 私も消費者の一人として、本当に海外からの輸入農産物は安全なのか、どのようにして安全チェックがなされているのか、それは一つ一つの輸入品についてできているのかと不安になります。安全基準や検査体制をもう少し充実させると安かろう悪かろうという海外の農産物は入ってこないし、それらの条件をクリアしようとすれば海外の生産コストもそれなりにかかり、国内産との価格差も縮まるのではないかと思いますが、いずれにしても日本の国民の食糧の安全性を海外に求めるのは不可能ではないかと考えます。
 そこで、我が県、和歌山県のような一次産業に力を注いでいる県にとっては、いま一度農業政策のあり方について見直す時期が訪れたのではないでしょうか。特に若い世代の専業農家の育成に対し、もっと力を注いでいただきたいと思います。
 ことしは台風の当たり年になってしまい、和歌山県においては台風六号が梅や桃などの果実に大きな被害をもたらし、またハウス栽培の施設や作物にも多くの被害が及びました。まだ償却の済んでいないハウスなどが倒壊の被害に遭うと借金だけが残り、茫然自失の状況になり、農業を続けていくこと自体放棄したくなると私の友人が申しておりました。
 もちろん、県当局においては速やかに被害状況を把握し、迅速な対応をしていただいたことに対して、私は高く評価するものであります。しかし、農業の現場の声は、もっと農業をやろうという意欲に沸く政策を望んでいます。今までの農業政策のあり方の是非は問いませんが、それこそ和歌山発の緑の雇用事業・農業版を唱える木村知事なのですから、普通の農家の感覚、常識に合わせた政策を国に対しても御提言いただき、ややもすれば土木予算偏重になりがちな農業政策から、後継者育成に重点を置いた農家の生の声が反映される農業政策に転換していただけるように御提言していただきたいと考えます。
 三十年前、当時、日本もドイツも食糧の自給率が六〇%を切ろうとしたときがありました。そのときドイツは国を挙げて国内の農業を保護し、農民の生活を保障する政策を推し進め、現在は自給率ほぼ一〇〇%を達成しているそうです。また、農業の自給率や国民の食糧の安全確保は大変大きな問題であり、最重要課題でありますが、最近は地球の環境を守る上でも農業や林業の効果が論じられ、環境維持のためのコストに換算すると圧倒的な効果があります。
 また、小泉改革の中で農業特区を認められた地域では他の法人のもとで農業を行っている会社もありますが、今後、時代の変化を取り入れた柔軟な対応をすれば農業はきっと魅力ある産業としてよみがえり、ひいては地方に活気が戻り、国土の人口バランスもとれ、今日我が国が抱える就労、教育、文化の継承、防犯等さまざまな問題の解決の糸口になるのではないか、それこそまさしく木村県政の目指すところではないかと考えますが、知事のお考えを承りたく思います。
 さらに、知事の所信表明の中にも、中国市場の大市場をターゲットにした県産品のマーケティング戦略の強化、販路の拡大などにお取り組みいただける旨述べられておられますが、私も同感であります。和歌山県の農林水産物の中には輸出品目になり得るすばらしいものがたくさんあるのではないかと、前々から思っておりました。
 もちろん、すべて農林水産物に可能性があるとは申しませんが、今回は特に農産物に焦点を絞り、中でも果実に対して、価格差を超越して和歌山産の方がおいしいと評価していただき、購入したいと考える海外の裕福な消費者もおられるのではないかと思います。現に中国の上海などの都市に住む裕福な家庭では、日本の米、野菜、果物などを逆輸入しているそうです。私も海外に出張したときに出会う現地の果物と和歌山の果物をつい比較してしまうのですが、同じ果物でもはるかに味覚においてまさっているように思います。
 また、このたび世界遺産登録により、海外のお客様にも和歌山に御来県の際、地元の果物を食べていただく機会が多々あると思います。そこで今後、和歌山産の果実など農産物を海外へ輸出できる可能性と県特産品の海外へのPRの方法について知事のお考えをお伺いいたしたいと思います。
 また、農林水産部長にお伺いいたします。現在の農業者への補助金のあり方についても、年齢別や専業・兼業の区別、その他の事項を踏まえながらも、やはり後継者を育てるという観点からすべての議論が始まるように見直さなくてはならないと私は考えますが、いかがですか。
 例えば、私のお知り合いの方が二年前、ハウスを建てようとしたのですが、ハウス業者に見積もりを依頼すると四百万円の見積もりだったそうです。当時、減価償却を容易にするため低コスト耐候性ハウスが推奨され、全体的に価格が抑えられていた当時でも、補助金をもらうため国の規格に合わせて見積もりをとったところ、一千万円だったそうです。とても五〇%の補助金をいただいても自己負担額がさらに大きくなり、採算が合わないということでハウス業者にお願いしたそうです。四百万円の五〇%を補助してくれるのであれば本当に助かるのになあと申されておりました。それでは、そのハウスとどこが違うのかと比較すれば、上部のパイプやビニールの材質等は耐候性でほとんど差異がなく、風速五十メートルの風に耐えられる基礎工事の予算が割り増しになっていたそうです。そんな大きな基礎工事は必要ないのではと思いましたので、結局その制度を利用せず、安価なハウス業者に依頼し、ことしの台風にも耐え、立派にそのハウスは機能を果たしております。
 今日、農家は施設費の返済に大変苦しんでおります。農家は個人経営の企業なのですから、投資と採算をもっと重視した政策にならないものかと考えます。耐用年数から見ても、十年で償却する返済計画を立てなければ借金しか残らないそうです。このたびの台風で壊されたハウスを新たにつくろうとしている友人にお伺いすると、やはり前記の理由で補助金をもらわず、ハウス業者に依頼するそうです。台風に強い、台風が来るたびにビニールを上げなくてもよいハウスをつくるため、もう少し基準を考えてもらったら利用ができるのにと申されておりました。そうすればことしは野菜も高値で出せたのにと、県内の農家の声が聞こえてきます。
 和歌山の農業をより強く、他府県はもとより海外の競争にも打ち勝てる和歌山独自の政策を立案し、強い農家を育て、さらに後継者育成のための柔軟な対応が求められていると考えますが、和歌山県の基幹産業である農業に対し県当局のさらなるお取り組みを期待して、次の質問に移ります。
 先般九月五日、先ほど来、先輩議員からもいろいろお話がありましたが、七時七分と午後十一時五十五分ごろ紀伊半島沖で相次いで発生した地震は近畿地方を中心に最大震度五弱を記録し、「あっ、南海地震が来たんではないか。津波は」と、だれしも一瞬頭をよぎったのではないでしょうか。
 気象庁によると、一回目の震源地は紀伊半島沖でマグニチュード六・九、震源の深さ三十九キロ、二回目の地震の震源地は東海道沖で、震源の深さは四十四キロ、規模はマグニチュード七・四と推定されました。さらに七日の朝、またしても大きな揺れがありましたが、専門家によると、マグニチュードも震度も小さくなっているので終息に向かう余震ではないかと報道されておりました。揺れたその瞬間、当然津波の発生も予測され、沿岸各地では速やかな避難活動が行われ、結果的には大きな津波は発生せず、人的被害はありませんでしたが、漁船が転覆する等、改めて津波の破壊力を認識いたしました。
 しかし、テレビ報道では津波の情報がおくれ、どこが震源地なのか、しばらくわかりませんでした。県当局を初め各自治体においては二度目の地震に際し警報を発し、比較的住民の皆さんも所定の場所に混乱なく避難できたことは、木村知事が大地震の到来を予期し、国に提唱され、直ちに関係者の御協力を得て東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法を制定されるなど、昨今県民の間で地震に対する関心が高かったことが何よりの要因であったと改めて感じたところであります。
 しかし、気象庁や専門家は、紀伊半島沖や東海道沖でマグニチュード七前後の地震は全く予想もしていない新型の地震で、今後研究の対象になると戸惑いの声も産経新聞に掲載されておりました。今回の地震はフィリピン海プレートの断層で起こったものと推定され、この地震が東南海・南海地震と直接関係があるとは考えられないとのコメントでしたが、依然として私たちは大地震の備えを怠ってはならないと思います。
 過去の例を見ますと、百年の周期の間に十数回、今回のような地震が近畿の各地で起こり、まさしく大地震が近づいてきている予感がひしひしと感じられます。今回は、各沿岸自治体において有線放送などにより津波警報が発せられ、海岸地域にお住まいの皆さんも比較的落ちついた対応ができたことは大変有意義な体験となりました。しかし、気象庁の津波情報が発せられたとき既に津波の第一波は紀南に届いていたということで、びっくりするとともに不安も残りました。
 さて、今回たまたま地震が起こったのですが、私はかねてより、大地震の際、防災ネットワークの一つとして和歌山県漁業無線に注目をしていました。無線局は、五十五漁協単位にて二十七局余りの無線局で運営されているとお聞きしています。無線局の運営はそれぞれの漁業組合が行っており、二十四時間体制が望まれるのですが、現在はコスト面からいっても各局において難しい財政状況にあるとお聞きしています。
 本来、漁業従事者の命綱でもある漁業無線の現状を考えるとき、それぞれの漁業組合だけで運営し、今後維持・継続させていくことができるのか。漁業従事者の高齢化や後継者の激減という大きな問題に直面している現在、心配でなりません。漁業従事者の生活の安定と命の安全、御家族の安心を確保する漁業無線は二十四時間体制を堅持することが望ましいということは言うまでもありませんが、コストの削減や通信所のあり方など難題も抱え、十年後、その存続すら不安であります。
 現在、当局は直接漁業無線に関与していないので農林水産部長に答弁を求めませんが、そういった現状を踏まえ、私はこのたび、漁業無線を防災無線としてネットワーク化し活用することの可能性について取り上げたいと思います。
 県当局は、来るべき南海地震に対応するため防災センターを設け、各市町村と衛星により連携し、防災ネットワークの構築に取り組んでおられます。それはそれで大変重要な施策と評価いたしますが、現在機能している漁業無線などもそのネットワークに組み込んではいかがかと思いますが、どうでしょうか。
 と申しますのは、阪神大震災の際、最初に機能したのは海上輸送の支援でありました。高速道路も地震後は点検等ですぐにはその機能を発揮せず、また一般道は言うに及ばず大変な混乱・渋滞を引き起こし、救急車や消防車も現地には容易に入れなかったことは私たちの記憶に鮮明に刻まれ、今後の教訓として残してくれました。私も当時、二階俊博代議士のもと、食糧支援のため神戸を目指しましたが、到着までに一日半かかりました。私の記憶では、震災直後に日高町の比井崎漁協の皆さんには、いち早く水の補給のため船で大量の飲料水を神戸に運んでいただきました。当時、漁船の機能性は目をみはるものがあり、私の脳裏に焼きついております。
 昨年、県や串本町、串本海上保安署など十機関、約百人が参加して、初めて漁港、漁船などを活用した震災時の緊急物資の輸送訓練を行いました。大津波が紀南を強襲し、国道四十二号線は寸断され、田辺以南が孤立状態となったと想定しての訓練で、大変スムーズに海上輸送や医薬品の搬入が果たされ、効果的であったと報告されております。課題はすさみで無線の空白地帯が見つかったことぐらいと、海上での緊急物資の運搬については何の問題もなく、評価も高かったと新聞に発表されておられました。
 私たちの和歌山県は海洋県であり、要所には耐震岸壁の港湾も整備され、また漁港もたくさんあります。いざというときにこれらの港湾、漁港施設や漁船は、緊急物資の搬入や救急医療の体制の確立はもとより、負傷者の救急病院への搬出等に海上輸送を利用することは大変有効であるとの証明でもあり、大いに期待しております。そして、ここで注目されるのがこれら海上の漁船をつなぐ漁業無線であり、そのとき大変重要な役割を果たすということであります。
 そこで、さらに私がこのたび注目したのは勝浦海岸局であります。当無線局は海抜八十メートルに位置し、東南海・南海地震の広域災害の海岸沿いの中心に位置するという地理的条件を備えています。県防災基地を主局とし、勝浦海岸局を従局に組み込み、紀南の災害前線基地としての活用はできないのでしょうか。大地震や大津波が到来したとき、海岸沿いの各市町村の防災ネットワークが寸断される可能性も想定されますが、そんなときのために幾つかのネットワークを組み込んでおくことも必要ではないかと考えますが、いかがですか。
 当無線局を私も視察いたしましたが、高台に位置し、自家発電機能も完備し、さらに、借地ではありますが、かなりの敷地を所有していました。機器類は少し古いと申されておられましたが、立派に機能し、県の委託を受け、現在も二十四時間体制で遠洋漁業の通信を行っておりました。
 そこでまず、農林水産部長に勝浦海岸局の現状についてお伺いをいたします。
 こうした基地に県下三十局余りをネットワーク化し、これも来るべき大震災の補完通信機能として県の防災システムに組み込んではいかがかと考えます。先ほど申しましたように、一方で漁業従事者の生活の安定、命の安全に寄与し、また御家族の安心を守るため必要不可欠の漁業無線でありますが、現状を維持していくことは、漁業を取り巻く厳しい状況からすれば、これから先どうなるのでしょうか。漁業無線と防災無線は農林水産部、総務部と管轄は違いますが、お互い発展的研究の余地はないのか。技術的に、予算的にも大変厳しい状況であるということを承知の上で、震災等緊急時の漁船の活用も含め、総括して危機管理監に御見解をお伺いいたします。
 次に、和歌山県の陸・海・空の高速交通体系の整備促進についてお伺いいたします。
 ことしは和歌山県にとって大変意義深い年となりました。それは、言うまでもなく、知事初め関係各位の御尽力により紀伊山地の霊場と参詣道がユネスコの世界遺産に登録され、国内外に和歌山をPRできたことであります。それに伴い、たくさんの観光客も御来県いただいたとお聞きしておりますが、本当にうれしい限りであります。
 しかし、私たちの和歌山県は、その半島という地理的条件により、他府県からすると高速交通体系の整備がおくれていることも事実であります。他府県はもとより他国のお客様にもっと快適に安心してお越しいただくには、さらなる交通体系の整備が急務であると考えます。 ようやく高速道路紀勢線も、紀南一周まではかなり時間が要するとはいえ、昨年南部まで開通し、現在田辺までの区間が工事中であり、また白浜─すさみ間は国の直轄方式で行うことが決定し、紀南にお住まいの方々にも少し明かりが見えてまいりました。京奈和自動車道も昨年に比べさらに予算がふえ、急ピッチで工事が進められ、一日も早い全面開通が待たれるところであります。
 また、空においては、白浜空港も二千メートルの滑走路延長をし、ジェット機も離着陸できるようになり、一応の整備にめどがついた感がいたします。
 鉄道については、けさほど中村議員から御質問がありましたので、フリーゲージトレインなども省略させていただきますが、当局のさらなる前向きなお取り組みをお願いいたします。
 そこで私は、近ごろ少し話題から遠のいているテクノスーパーライナーについてお伺いいたします。
 和歌山県は、下津港湾、ことし暫定開港した日高港湾、そして建設中の新宮港湾と、海洋県にふさわしい重要港湾がバランスよく県内に配置され、いよいよ海路復権の予感で胸躍る思いであります。そして、以前から研究されていたテクノスーパーライナーも実験段階を終え、実用に向かって進んでいるとお聞きしていますが、その現状はどうなっているのでしょうか。
 東南アジアを二十四時間で結ぶ全天候型TSLは、日本の物流の未来を切り開く切り札と言っても過言ではありません。我が県は太平洋に突き出た半島であり、また行き交う船の多い瀬戸内海や大阪湾のような海域には超高速船であるTSLの運航は適さないのではないかと推察すると、和歌山県が海路の関西の玄関口になるのではと期待も膨らんできます。先ほど述べた高速道路の整備が進む中、海路復活を願う我が県はTSLの就航について無関心ではいられません。
 そこで、このTSLの将来性をどのように考えているのか、知事にお伺いいたします。また、現況と今後どのように対応していくのか企画部長にお尋ねいたしまして、私の第一回目の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○副議長(向井嘉久藏君) ただいまの花田健吉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、農業の可能性ということでございますけれども、今、私も農業関係のいろんなものを読んだりしているんですが、やはり日本の農業というのは一番大きな曲がり角に来ていると思います。ただ、その曲がり角というのが、今まではともすれば輸入品に押されて日本の農業はだめになっていくというふうなことでの曲がり角という話ばかりだったんですけども、今の曲がり角というのは、そういう面も一方で大きくあるんだけども、例えば農業の運営形態を変えていくというふうなことで一つ方向性を見出すというような方向も出てきていますし、それから担い手として、例えば土木建設業に従事している会社なんかがそういうふうな農業の法人みたいなのをつくって請負をするというふうな方向に向かっているところも出てきておりますし、それからもう一つは、IターンとかUターンの人たちが新規に就農するというふうな動きも出てきております。そういうふうな意味で、ある意味では非常に明るい未来を展望できるようなところになってきているということも言えると思います。
 それからもう一つは、食糧自給率ということも非常に大事なことだというふうに国民に認識されるようになってきましたし、それから安全性の問題、環境に対するその効果の大きさということも、また今までにないほど大きな効用として見られるようになってきていると。そういうふうな中で、和歌山県は環境のよさと、それからこういうふうな歴史性とかいうようなことで売り出していっているわけですけども、それと農業というのは非常にぴったりくると。しかも、果樹中心の農業であるというふうなことから特殊性もあるというふうなことで、何とか今の新しい時代の方向性に合ったような形で、和歌山からこの第一次産業を生かしていくというふうな方法を考えていきたいと思います。
 その中で、やっぱり一番大事なのは、後継者というか、これをつくっていくというふうな形ですので、今、農業をやってみようプログラムなんていうのを始めてやっていますけども、これはただ単に外から人を呼ぶということだけじゃなくて、それも含めて、今農業をやっている人の後継ぎの人なんかも思い切りやれるような仕組み、そしてまた異業種からの転換というふうなこと、こういうふうなことについても、何か農業に従事している人が希望が持てるような方向で新しいものを打ち出すべく、今、関係部局と一緒に研究をしているところです。
 それから、当然のことながら果実の輸出ということに私は本当に大きな希望を持っています。例えば中国なんかとかへ行ったときに、よそのものが別に悪いというわけじゃないんですけども、桃とか──カキなんかは余り食べたことはありませんけれども、やっぱり日本の、特に和歌山の果実なんかはすばらしいなという感じが物すごくするわけです。
 それで、非常にあちらの方も所得水準が上がってきていますので、うまくやれば、これは大きな将来性のある分野になってくると思っています。検疫の問題なんかがあって、非常にそういう面は難しい問題があるんですけども、これも乗り越えられないことではないと思いますので、これからまた、こういうことを願っている他の県とも連携をとりながら対応していきたいというふうに思っています。
 それからテクノスーパーライナーですが、これは以前、非常に大きな話題になったんですけども、ずっと着実な研究というかが進められておりまして、ようやく小笠原と東京間で運行するというふうな形になってきました。
 私も以前、半島振興室長をしたときにこれの導入なんかでいろいろ考えたことがあったんですけども、特に和歌山の場合は瀬戸内海の入り口になっているんで、テクノスーパーライナーは高速だから一回スピードを落として、湾の中で余り効果は発揮しないので和歌山なんかには非常に大きな関係のあるような乗り物というか輸送手段になってくると思いますので、これについてもますます関心を持って対応していきたいと、このように思います。
○副議長(向井嘉久藏君) 福祉保健部長嶋田正巳君。
  〔嶋田正巳君、登壇〕
○福祉保健部長(嶋田正巳君) 難病患者の方に対する身体障害者手帳の交付についてお答えをいたします。
 身体障害者手帳の交付基準につきましては、昭和二十五年に施行されました身体障害者福祉法に定められておりまして、その障害の範囲は法別表に規定する障害で、永続するものとされております。永続する障害とは、その障害が将来とも回復する可能性が極めて少ないものであることとされております。したがいまして、手帳の交付に当たりましては障害の原因に対する制限はなく、難病であっても、結果的に視覚、聴覚、音声、言語、肢体、内臓機能などの障害で、その障害が永続する方が交付の対象となります。
 議員御質問の交付基準の見直しにつきましては、例えば身体障害者障害程度等級表にヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害、いわゆるエイズによる機能障害でございますが、平成十年四月に追加されておりますし、また身体障害認定基準が平成十五年四月に改正されるなど、厚生労働省において適宜見直されているところでございます。しかしながら、議員御指摘のとおり、現行の身体障害認定基準では障害と認定できない難病患者がおられ、経済的に、また精神的にも大変な御苦労があることは十分認識しているところでございます。
 こうしたことから、県といたしましては、医学の進歩や社会情勢の変化等を踏まえ、公平性、妥当性に配慮しながら適時適切に見直し等を検討していく必要があると考え、特に難病特有の障害に着目した身体障害認定基準を設ける必要があるなど、手帳交付対象の拡大を国に強く要望しているところでございます。
 以上でございます。
○副議長(向井嘉久藏君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) まず、農業における補助金や交付金のあり方の再検討についてでございますが、補助事業につきましては、政策誘導のためのモデルを育成する観点から、先進的な地域や組織などに対し実施しているところでございます。また、低コスト耐候性ハウスにつきましては、議員お話しのとおり約一千万円程度の費用が必要であるため、今後さらにコストを抑える方策がないか研究してまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、後継者が夢を持てるような農業振興に取り組んでまいります。
 次に勝浦海岸局の現状についてでございますが、漁業無線局には漁業用海岸局と公共業務用無線局があります。御質問の無線局は、和歌山県無線漁業協同組合が両局の機能を持ち、会員である沿岸・沖合・遠洋漁船の漁業通信基地として昭和四十四年に那智勝浦町下里に開設したものであります。
 同局については、県が昭和五十九年に公共業務用の県営田辺無線局を廃止した際、県が実施すべき漁業用監督通信に係る無線業務を同局に委託し、現在に至っております。県からの委託費は、運営経費のうち、漁業用指導監督通信に係る漁業無線業務を実施する部分についてであり、応分の負担をしております。
 本無線局を運営する無線漁業協同組合は、会員の減少による無線利用料の減少、施設及び無線機の老朽化等により厳しい運営状況が続いておりますので、県といたしましても適正な運営について引き続き指導してまいりたいと考えております。
○副議長(向井嘉久藏君) 危機管理監白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○危機管理監(白原勝文君) 震災等に対応した漁業無線についてお答えいたします。
 まず、震災等緊急時の漁船の活用と無線についてでございますが、議員御質問のとおり、東南海・南海地震など大規模災害が発生した場合、緊急物資等の大量輸送手段として船舶を活用した海上輸送は大変重要なものと考えております。このため、県では昨年十一月に東南海・南海地震を想定した緊急物資等の輸送の実験を行うなど、関係機関との連携についての具体的な検証作業を進めているところでございます。
 次に漁業無線の防災ネットワークとしての活用についてでございますが、漁業無線を防災ネットワークとして活用するためには、現状では技術的にも財政的にも多くの問題と課題があります。いずれにいたしましても、大規模災害発生時における漁船等船舶の活用について関係課と研究してまいりたいと考えております。
○副議長(向井嘉久藏君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) テクノスーパーライナーの現況と今後の対応についてお答えいたします。
 テクノスーパーライナーの現況についてでございますが、平成十四年六月に日本政策投資銀行などの出資により、テクノスーパーライナーの保有管理を行う組織として株式会社テクノ・シーウェイズが設立されたところでございます。テクノスーパーライナーの実用化第一船が実際に就航するのは東京港と小笠原父島港を結ぶ小笠原航路となっており、貨客船として来年夏ごろに運航が始まる予定でございます。
 運航に当たっては輸送コストの低減や輸送貨物の確保などの課題が残されておりますが、実用運航等の中で改善されていくものと期待しております。県としましては、今後、地理的優位性を生かし、テクノスーパーライナーの寄港地として、物流拠点の形成を視野に入れてしっかり対応してまいりたいと考えております。
○副議長(向井嘉久藏君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(向井嘉久藏君) 以上で、花田健吉君の一般質問が終了いたしました。

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