平成16年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(玉置公良議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十五番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。ただいまから質問に入りたいと思います。
 きょうは、欲張って三つのテーマについてお聞きをしたいと思います。いずれも世界遺産に関連をするものです。
 まず、第一項目の高野・熊野世界遺産と世界EU観光戦略について質問をしてまいります。
 昨年は、ヨーロッパの西側、イタリアを尋ね、今回はこの五月に東欧のハンガリー、オーストリア、チェコ、スロバキア、ドイツを訪れ、EUの国々の人たちの反応、日本への関心、どうすれば日本へ来てくれるか探ってまいりました。特に東欧に対しては日本のエージェントがほとんど入っていませんので、和歌山の高野・熊野世界遺産を知ってもらうためにはどうしたらよいのか、セールスマンのつもりで行ってまいりました。
 なぜEUの東欧なのか。それは、ことしの五月一日からEUに加盟国十カ国ふえて二十五の国となり、観光客を誘致するには日本がまだ手をつけていない魅力的な市場であるということであります。東欧は今までは旧ソビエト圏に入っていて、EUに入ってから積極的に海外に向け旅行をしたい人たちが多くなっているということであります。収入はまだまだ少ないのですが、裕福な貴族の流れをくむ人たちが多いということ、また、高野・熊野は彼らにとって旅行に行きたい好きな場所であるので、日本にとっては将来働きかけられる有望な市場になるのであります。
 そこで、まず肌で感じたことは、観光は縦割り行政ではなく、横のつながり、連絡というものが必要であることがよくわかりました。昨年はイタリア政府観光局と直接会ってPRをできたり、ことしは東欧で直接PRできたり、私にとっては有意義な調査でありました。
 また、ほかの国が観光というものにいかに力を入れているかもわかりました。世界を見ることによって県のよさがわかってきましたし、世界を見ることによって、いかに日本より貧弱な資源の中でも、それを生かそうとしているひたむきな人がいることにも気がつきました。EU二十五カ国の経済はアメリカを抜き大きくなることは必至だと思いました。その中で、アメリカのように軍事力や国益だけではなく、地球人的な環境や平和の考え方で観光というものが大きく動くだろうということ、そして、そのEUの考え方が、登録されようとしています高野・熊野世界遺産の意義にもぴったり合い、これを機にEUが新しい魅力ある観光地の開拓地として生かせると確信を持ったのであります。
 EUは関税をできる限り低くして、四億五千五百万人の人々が自由に行き来し、生活力が旺盛になり、経済も潤い始めています。EUが国境をなくし一つになった実態を目で見て肌で感じてきました。アメリカのように国益にがんじがらめに抑えられた国家主義とは相反するものであります。どちらの政治形態が二十一世紀に好まれるのか、火を見るよりも明らかで、国益第一と考えるアメリカは既に私自身は時代おくれであることは言うまでもないと思いました。EU二十五の国別の利益向上を廃止し、広大な地域の利益と、そして地球人としての義務を遂行しようとするEUの行き方から見て、理に合っていると思いました。
 ところで、話は変わりますが、東欧の人々の日本への旅行に対しての関心は非常に高いと感じました。それに今、EUに新たに十カ国が参加することを契機に、航空会社が安値攻勢で旅行客を誘致しようと必死になっています。それゆえ、それぞれの国民はその過当競争を利用して大いに旅をしています。本当に安いのであります。チェコからロンドン間は、普通の値段でいえば片道九万一千四百円ですが、六千円ぐらいで行けるのであります。
 ほとんどの人は、みんな旅行には関心を持ち、日本にも新たな関心が生まれてきています。ただし、飛行機代など交通費や宿泊は余りにも高いというのであります。EUでは、小さな飛行機で旅客運賃をぎりぎりの線まで値下げをして各社が競争しています。日本は国策として、ビジット・ジャパン・キャンペーンとして、今から二〇一〇年までに外国から日本に来る旅行者五百万人を一千万人にしたいと打ち出しをしています。
 そこで、チェコの在日大使館で聞いたのでありますが、隣の韓国では大韓航空とプラハが五月十五日から週三便の直行便をつくり、EUの発展をにらんだ韓国との観光戦略をいち早く打ち出したと聞かされました。観光の社会資本を早く取り組んだ方が得なのであります。よい例がお隣の国にあるのです。初めは少ない乗客かもしれませんが、だんだんと定着してくる。長い目で見ることと早い投資が先決だと思いますが、いかがでしょうか。
 特に、海に接していないチェコは海にあこがれを持っています。幸い、和歌山南紀の海は観光客を魅了するには十分であります。そのような受け入れのための観光資源は十分あるのに、なぜ各国の積極的な観光政策を見習おうとしないのか、もったいない気がしました。国の政策にかかわることですが、和歌山県独自でも、例えば姉妹道のサンティアゴに定期便を飛ばすとか、今こそ姉妹道提携を活用すべきであります。スペインなどは旅行好きな人が多いのです。これこそよいルートをつくるべきだと思いますが、その点、商工労働部長はどう考えますか、お伺いをしたいと思います。
 そこで、訪日をしてもらうために何かよい方法はないものか、一つの提案を申し上げます。
 スロバキア大使館やチェコ大使館でODAのことを聞くと、EUの加盟で日本の従来のようなODA支援はなくなるそうです。それならば、こうした国の人たちが日本へ安く来れるような新しいODA政策を打ち出したらどうでしょうか。そのことは国策の訪日観光対策にもつながり、未開拓の東欧の人たちの訪日観光戦略に大きなインパクトを与えると私は思います。
 なぜならば、今までの経済は、同時に三つの動きがなければ発展しないと言われました。その一つは物の動き、二つは人の動き、三つは金の動きであります。しかし、世界や日本をバブルなど危機的にしたものは、物と金が主役だったのであります。こうしたことからの教訓は、物の動き、金の動きよりも人の動きが主役になることが健全な経済の発展になると私は思います。日本のODA政策がその反省を物語っています。つまり、日本のODA政策も含めて人の動きに重点を置くことが、日本の、いや世界の経済発展につながると思います。
 その政策の一つは、日本に観光客を呼ぶことであります。高野・熊野という世界遺産登録されたところに呼ぶことは、国策として打ち出した訪日観光を促進させることでもあります。つまり、ODAの費用を訪日観光促進に回すことは一つの案ですが、チェコの大使館でも「日本の政府がもっと出血サービスをしないと日本へ行けない」と言われ、私の提案についても共鳴をしてくれました。ODA政策で日本をPRする観光資源開発費用と思えばよいのであります。奈良・三重の知事にも呼びかけをし、三県の知事が、あるいは十二の世界遺産登録地域の県知事が政府要望として強く働きかけてみてはどうでしょうか。これは要望としておきます。
 もう一つ、こういうことはどうでしょうか。それは、EUで日本向け観光を中心にやっている民間の旅行会社を洗い出し、その活用を図るべきだと思いますが、いかがでしょう。なぜならば、ヨーロッパの国々は政府に対してのPRでは浸透しないのであります。つまり、地方分権国家であり、地方の観光局とタイアップをしたり、地方の民間旅行会社と連携を図るため、草の根のPRが必要だと現地で聞かされました。日本全体の観光戦略は政府関係の国際観光機構などに頼った取り組みが中心だと思いますが、私は、現地で地方の民間旅行会社と連携を図っていますその中心的な役割を担っている旅行業者の関係者とコンタクトをとり、話し合ってきました。そして、ヨーロッパの窓口になってもらうことも要請をしてきました。このことは日本の旅行会社でもやっていません。
 例えば、世界遺産に関係した県職員は、少なくとも空海や熊野の宗教性、精神文化を身につけて、旅行会社と違うスタイルでEUに送り出し、PRをする。その県職員には、一人で何人和歌山に送り出せるか、ノルマと目標数値をかけて地方の民間の旅行会社を洗い出し、EUの人たちを和歌山に送り込んでもらう。二十一世紀のマルコポーロになるぐらいの観光戦略をしていくことが私は大事だと思いますが、いかがでしょうか。商工労働部長にお伺いします。
 来年は、日本におけるドイツ年であるとも聞かされました。ドイツの関連企業等がスポンサーになって、約十億円の予算をつける予定と聞きました。高野・熊野世界遺産登録地をPRする絶好の機会であります。幸い、このことを実現するためにも、今回の政務調査で、ドイツの競歩で元オリンピック金メダリストのガウダー氏を招いて、世界遺産登録記念イベントとしてパワーウオーキング健康と平和フォーラムを来る六月二十七日、熊野古道を中心に、私ども高野熊野世界遺産連絡会などが実行委員会をつくり、開催することを進めています。
 世界平和、環境、健康、観光など地球益のために、ドイツと高野・熊野世界遺産が手を結ぶことを実現するチャンスだと思っています。そして、EUの国々の日本に対しての観光戦略の拠点の一つにドイツがなってもらうよう進めてみてはどうかと考えますが、商工労働部長の答弁を求めます。
 続きまして、高野・熊野世界遺産と県民運動について質問をしてまいります。
 我々和歌山県民の悲願であった高野・熊野の世界遺産登録がいよいよ迫ってきましたが、しかし、実際のところは、登録後を見据えた世界遺産の活用やそれに伴う地域づくりといった課題は、ようやくその道に入ったばかりであります。そしてまた、我々県民の意識についても、世界遺産とは一体どういうものなのか、私たちの生活にどのように関連していくものなのか、その見方がさまざまである実態が出てきています。
 そこで、私自身せっかちの上に多少心配性なので、出しゃばったかもしれませんが、民間の高野熊野世界遺産連絡会を昨年の十二月に立ち上げてシンポジウムを開いてきました。十二月に開いた「世界遺産が生み出す私たちの新しい雇用・環境・ふるさとづくり」では、実に三百五十人もの方々にお越しいただきました。その中から、世界遺産関連のNPOが誕生したり、登録予定地域におけるトイレ、看板などの整備や通訳、語り部の養成等、世界の観光客の受け入れ体制についての提言が多く出されました。
 ことし二月に和歌山市内で開いたシンポジウム「世界遺産から企業は何を学ぶのか」には、二百五十人もの方々に参加をしていただきました。その中で活発な意見が交わされたのですが、少なくともこの数を見る限り、世界遺産を活用してふるさとづくりやビジネスを創出したいという参加者の熱気に私自身もびっくりいたしました。シンポジウムの参加者から、その後の世界遺産地域の危機管理や地球に優しい安全な飼料など、数多くの提案が出されてきています。また、会場から出された意見を受けて、和歌山市内のホテルに泊まり高野山へ行くバス運行が実現をしてきています。
 また、かなり難しいことであると思いますが、私は、高野・熊野世界遺産登録によって、世界から来ていただく人々から入場料的な収入をつくるべきだと考え、幾つかのアイデアを持っています。その入場料の中に、東欧の世界遺産の案内でヒントを得た外国語の入ったインターホンの貸し出しも今検討しています。自分が見たいところに数字を合わせると、その国の言葉で聞けるのです。その予約を国内外の旅行業者やホテル、地元の小売店、インフォメーションセンターにお願いをする、その一部を保全の基金として集めることができるのです。今、スポンサーを探していますが、こうした取り組みについて県としての考え方をお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
 今月の五日には「五感で楽しく歩こう熊野古道」も催しました。昨今の人の命を大切に思わない殺伐とした現代だからこそ、この世界遺産の精神文化である空海の教えを広めなければならないと、歩く中で痛感をいたしました。
 空海は、先日、高野山の霊宝館の方へ行ってきたんですけれども、その副館長から「石であろうが水であろうが、すべてに命がある。周りの命を粗末にしてはいけない。自然の中にあるすべての命が循環をされ、自分の生命が維持できているんだ」と言われました。つまり、現代は知識として教えられていることは多いが、五感で人間の知恵としてわかることが大事だと言われているのであります。それは、高野・熊野の世界遺産の地、大自然の中で精神を研ぎ澄ますことでわかってくるものです。
 こうしたことからも、ただ単に熊野古道を歩くのではなく、五感というものを大事にした熊野古道ウオークというものをもっと広めていくことが必要だと思います。また、それができるのが世界遺産に登録された重要な意味があるのだと私は思います。
 六月の十二日には、NPOなどが主催をする世界遺産と地球温暖化防止フォーラム、サブテーマに「環境王国わかやま空海の里づくり」を後援し、NPOや婦人会、労働組合、行政関係者等、約百五十人の方々に参加をしていただき、活発な意見交換をし、県民啓発を行ってまいりました。一歩一歩ですが着実に、県民みずからが世界遺産の地にふさわしいきれいな空気をつくろうと立ち上がっています。
 十九日には、シンポジウム「空海や南方熊楠が残した食文化の継承わかやま食文化フォーラム」を開催いたします。南方熊楠は、世界遺産に登録をされることで、空海の話をきっかけに、もう一度熊楠の評価をするチャンスがめぐってきたのであります。その南方熊楠は、空海と同時に和歌山県の誇りであります。博物学者として飢餓状態を救うために菌類を研究した人で、日本では知っている人は少ないですが、世界の人々からは日本の熊楠として大変有名であります。
 私たちは何を学び、現代に何を伝えているのかをテーマに、世界遺産登録にふさわしい和歌山の食文化をキーワードに、自然と歴史に満ちた郷土料理を模索したいと思います。具体的には、県民が和歌山の食材を使ったオリジナリティーあふれるメニューを発掘創作し、そして県民のふるさと和歌山に対する意識向上を含め、和歌山から世界に発信できる県民の誇りとなる食文化を推進することを目的としています。
 短い期間の募集でしたが、既に応募作品は五十点近くになっています。その中には、こんなすばらしいものがあります。例えば、日本一のカキ生産地で、捨てていたカキを活用していくために、県の農林水産部が力を入れていただき、工業技術センターや県立医大の協力を得て分析結果が出たものが出品される予定です。カキ酢には、ほかの製品と比べてカリウム濃度が非常に高いレベルにあることがわかりました。これは、高血圧抑制の作用を持つことが知られています。また、ここの地域に住んでいる人々の健康長寿実態も調査をしていく予定と聞いています。例えば、これを「空海のカキ酢」として、そして世界に紹介をするだけでも世界遺産の地で村おこしが実現をしていくことも夢ではありません。ほかにも、このような料理がいろいろ出品されてきています。また、県内のホテルも入賞作品をホテルやレストランで期間限定特別メニューとして商品化をしていただくことになっており、食を通じて一歩一歩広がりを見せています。
 千二百年前から和歌山県のスローフードの原型になるものがあったのであります。それを商品にすることは、物すごく世界に話題になると思います。外国人も、特に日本の食に対してここ十年ぐらいその熱が高まってきており、もっと熱心な研究をしていこうとする時期にスローフードのようなことが論じられることは意義があると思いますが、今回の催しを県が主催でやられているところはないと思います。だからこそ県が主体となって、県内全体で催しをしていくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。農林水産部長にお伺いします。
 そしてまた、二十七日にはドイツから競歩の元金メダリスト、ガウダー氏にお越しをいただき、「パワーウオーキング健康と平和フォーラムin熊野古道」を開催いたします。パワーウオーキングは、ドイツ人のハートヴィッヒ・ガウダー氏が考案したジョギングとウオーキングの中間的なスポーツであります。ガウダー氏自身は、一九八八年、モスクワオリンピック五十キロメートル競歩の金メダリストで、九五年、二度にわたる人工心臓移植の大手術を経て奇跡的に回復の後、ニューヨークマラソン完走をなし遂げ、二〇〇三年には富士山にも登頂された人物であります。
 この夏に「紀伊山地の霊場と参詣道」がユネスコの世界文化遺産に登録をされようとしています。その吉野・高野山・熊野三山などの霊場を相互につなぐ参詣道は古くから栄え、すぐれた自然の中にある精神修養の歴史ある道でありました。そこで、パワーウオーキングが持つ特性を、この私たちの身近にある大自然と歴史ある参詣道で取り入れることは大変意義深いものと考えます。パワーウオーキングは単なる運動ではなく、精神的な質と健康的な質を一致させることに意義を見出しています。
 空海を初め私たち日本人の祖先は、自然と対峙することで精神を鍛練してきました。熊野古道は古来より精神修養の場でした。パワーウオーキングの目指すところに最適な場所であります。それはきっと一人一人が健康への新しい道を発見できるに違いありません。また、このことは、高野・熊野世界遺産の目標である健康と世界平和に貢献をするものであります。それを願ってこのイベントを企画しました。この催しは、高野・熊野世界遺産登録の精神文化を取り入れています。そして、ガウダー氏を通じて、ドイツの世界遺産及び来年の日本におけるドイツ年に向けて高野・熊野世界遺産が立候補し、観光交流を促進させたいと願っています。
 また、パワーウオーキングと熊野古道をドッキングさせ、世界の健康づくりの場所、拠点として発信していければと思います。そして、スポーツは平和のシンボルと言われるように、高野・熊野世界遺産の精神を達成させるためにも世界平和の実現の場所として取り組むことも考えており、当日、平和フォーラムもあわせて開催をいたします。ユネスコ関係者の方からも賛同をいただきました。
 例えば、全県民の健康増進室をつくり、いつの間にかNHKの朝のラジオ体操のように全県民が長い間続け、しかも健康になり、一人一人の体と精神が鍛えられるのであります。そして、観光にもつながるのです。これを県の新しい事業として取り組んでみてはいかがでしょうか。知事公室長の見解を賜りたいと思います。
 以上、理屈ではなしに、実践を通じながら取り組んでまいりました。したがって、行政のように一年前からの計画ではなしに、盛り上がり、タイミング、緊急性の中で実行をしてきたものですから、財政的にはゼロからのスタートで、広く皆様方からの御支援や借金でやりくりもしてきましたが、やはり苦しいのはスタート時の財政であります。
 環境や世界遺産などの予算は、特に先行投資が必要であると思います。また、結果的に早いうちに手を打つことがリスクを小さくし、コストも安く上がり効果も出ます。二月議会予算特別委員会で、世界遺産に関連するNPOなどを支援をする予算が少ないので、来年からの予算に各項目で細かく出してもらう方が使いやすいとの私の質問に、知事も「ある程度予算は抑制的になっている面はありますけども、指定後の状況を見ながら柔軟かつ大胆に対応していきたい」と答えられました。県としても、必ず利益を持って戻ってくる、こうしたNPOや県民の世界遺産登録運動に先行投資をし、財政的に支援できるようにされたいと強く要請をします。
 また、二月の予算特別委員会でも申し上げましたが、施策立案は、今までのような知事と役人でつくるのではなく、民間の知恵を入れ、NPOや現場、民間の声も入れるべきであります。少なくとも環境や世界遺産に関する施策立案はそうすべきであります。
 以上、申し上げてきましたが、知事の御見解を求めたいと思います。
 最後になりますが、高野・熊野世界遺産を世界平和の舞台に活用していくことについてお伺いをしたいと思います。
 高野・熊野は、日本では十二番目の世界遺産登録になります。今までの登録記念行事は、決まり文句のテープカットや式典が多いと思います。私たちは、祖先から引き継いだ世界遺産を大事に、常に祖先に感謝の気持ちを込めながら、これを守り、生かしていかなければならないと思います。
 さて、世界遺産とは何だろうか。だれしもそれぞれの考えを持っているはずですが、私は私なりに、ここに一つの夢の世界かもしれませんが、今世界じゅうに起きている紛争、パレスチナとイスラエルの中東紛争、それから崩壊後のイラクで起きている宗教対立、この宗教対立紛争を、日本独自の、また東洋思想を代表する日本的宗教、つまり空海の教えなど、高野・熊野世界遺産の精神文化によって和解の道を探ることができたら、これほどすばらしいものはないと思うのであります。
 世界遺産登録は、世界紛争の終結への道も模索する第一歩です。また、そうすべきだと思うのです。その信念で、私はこの高野山と熊野古道の世界遺産登録を進めてきた一人であります。アメリカは、一方で軍事力を強化しながら一方では和平を求めるという相矛盾した行き方が、その和平への道を遠ざけてしまっていると思います。特に、去年の同時多発テロ以降、アメリカはテロ対策、イスラエルべったりという世界の風潮が定着をし、これまでのようなイスラエル・パレスチナへの和平工作の音頭をとり、その会談の場所をアメリカ国内で続けることは、もはや不可能な状態にあると思います。その上、パレスチナ・イスラエルの紛争は日に日にエスカレートをし、もはや紛争というより本格的な戦争に至っている状態に世界は一刻も猶予なく、やめさせなければならないと思います。
 その条件にかなっているのは、日本ではないでしょうか。日本は憲法で戦争を放棄し、どこの国とも第二次世界大戦以降、平和国家として世界に対し、相応の貢献をしてきました。カンボジア、アフガニスタンの復興にも議長国として役割を果たし、世界じゅうが日本の和平仲介の指導的立場を十分認知しています。戦争をやめさせ、あるいは紛争を防止するには、軍事力は抑圧であり、人間をひとしく幸せにするものではないと思います。むしろ、もっと宗教性の高いものが必要ではないでしょうか。
 今、イスラエルのユダヤ教、パレスチナのイスラム教は一神教で、そのほかの宗教は認めないで抹殺しようとしています。それに比べて我が空海の教えは、ほかの宗教を認め、争いで物事を解決することを嫌い、相手を受け入れる寛容性を持っています。やおよろずの神と言われるとおり、何でも受け入れ、相手と敵対関係をつくらず、仲よく平和に生きることが空海の教えの原点なのであります。それゆえ、紛争当事国の双方がこの教えに引き寄せられ、平和的な信条へと向かっていく効果が期待されるのであります。
 アメリカを最後に説得するのは、国連でもないし、ロシアでもないし、安保理の理事会メンバーでもないと思います。アメリカの一番の友好国になろうとしている日本そのものであると私は思います。それだけに、かえって言いにくいことも言える。日本がアメリカにかわって、これから紛争当事者に和平を勧め、世界じゅうの紛争を抑えていく力を発揮して、日本の存在を大きくすることによって、さらに和平への仲介の任務が大きくなっていく。イラクのモハマド君のニュースには私も感動を覚えました。和平を実現していくためにも、紛争国や周辺の子供たちが中心に高野・熊野に集まって平和の話し合いの場をつくり、そうしたことを積み重ねていくことによって国連や日本政府も自然と呼応し、日本が和平の舞台として世界に認知をされていく、そんな役割が世界遺産に登録された高野山、熊野古道の大きな責務の一つとして、私たちは誇らしげにこの遺産を持っていくべきであると考えるのであります。
 本当の楽園とは、地球上の中で平和のことを話し合えることではないでしょうか。このことをEUの関係者に提案をすると、「本当にそうした魅力があれば私たちもぜひ日本に行きたい」と賛同してくれました。もっと深みのある重厚な世界平和の舞台を高野・熊野世界遺産の地につくることが、結果的に多くの訪日観光客を迎えることになると私は確信をします。そうした積み上げが、いつの間にか日本でやろうというPRになって、すばらしい環境の中で平和ということを考えている高野・熊野の世界遺産、単なる世界遺産ではないのであります。その第一歩を実行するために、来る六月二十七日に、紛争国の子供たちを招いて平和のフォーラムを開催いたします。
 知事の御見解をお伺いし、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 高野・熊野の世界遺産と県民運動についての御質問でございます。
 NPOや県民の世界遺産運動に財政支援の先行投資と予算のあり方についてでございますが、まず、施策立案にNPOなどの声を入れるべきであるという御提案に関しましては、行政とNPOの協働を進めるためには施策立案段階からの参画が必要であると私も考えております。その先駆的な取り組みとして、現在、NPOの自由な発想による御提案をいただくふるさとづくり企画提案事業を行っておりますが、これはうまくいっておりまして、世界遺産登録についてもさまざまなよい提案を現在いただいているところでございます。今後、民間団体の活動がますますふえてくることと思われますが、世界遺産に関連したさまざまな活動や地域づくりなど、NPOの特性を生かしたきめ細かいサービスが期待できる分野での協働をさらに積極的に進めてまいりたいと考えております。
 また、環境や世界遺産に関する予算編成ですが、環境や世界遺産は二十一世紀の県政にとって重要なテーマであると考えており、平成十六年度当初予算においても重点分野として取り組んでいるところでございます。今後も事業内容により、通年予算というふうな考え方のもとで積極的に検討をしていきたいと考えております。
 次に、財政支援の先行投資でございますが、先行投資した方がコストが安くなるケースもありますので、どういった経費が適当なのかを含めて、今後研究してまいりたいと考えております。
 次に、高野・熊野世界遺産を世界平和の舞台にすることについてということでございますが、議員も十分御存じのことでございますが、世界遺産を認定するユネスコは、教育・文化の振興を通じて世界の平和と福祉に貢献することを目的として設置された機関でございます。そのユネスコにより高野・熊野が世界遺産登録されるということは、人類のかけがえのない財産であるとともに、平和のシンボルとして位置づけることであろうというふうに考えます。
 また、古来より高野・熊野は、争いの勝者・敗者のいずれも受け入れ、いやし、その心に平和をもたらす地域として人々が訪れた地域でもございます。こういったことから、「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録の後は、世界的なレベルで注目されることを改めて認識し、国際的な視野を常々持ちながら平和のとうとさをアピールしてまいりたいと考えております。
 以上申し上げたこと、議員御提言の趣旨を踏まえ、高野・熊野の世界遺産登録を機に、私たちが暮らす和歌山、そして我が国の平和な社会のありがたさに心をいたすとともに、平和のシンボル高野・熊野の世界遺産が世界平和の実現に向け、なし得る役割についても十分考えてまいります。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 高野・熊野世界遺産とEU観光戦略の三点についてお答え申し上げます。
 高野・熊野の地域は、自然や歴史を愛するEU諸国の人々にとっても非常に魅力のある観光スポットであり、加盟国の拡大に伴い今後ますます重要な市場になるものと認識をしてございます。そのため、EU諸国のメディアや旅行会社による本県視察を実施するとともに、スペインのラジオ局の協力のもと、熊野古道を中心とした高野・熊野の魅力を情報発信したところであります。
 次に、民間旅行会社の活用につきましては、国のビジット・ジャパン・キャンペーンとの連携を図り、現在作成中の欧米五カ国語によるパンフレットを利用し、日本への旅行商品を扱うドイツ、フランス、イギリスを中心とした民間旅行会社への働きかけを強めるとともに、姉妹提携先等を活用した観光PRを実施してまいります。
 また、議員御提案のような県職員のセールス戦略につきましては、検討すべき点もあり、今後の動向等を見きわめた上でさまざまな方法を考えてまいります。
 次に、ドイツ年は日本におけるドイツのPRをするものでありますが、ドイツからの訪日も多く見込まれることから、本県の観光PRに努めるとともに、こうしたさまざまな機会をとらまえ誘客活動を実施してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 高野・熊野といったオープンエリアの中で入場料的な収入源をつくることについてでございますけども、世界遺産を将来にわたり保全するなどの事業には財源が必要であり、入場料あるいは拝観料等を徴している世界遺産が数多くあります。しかしながら、高野・熊野の世界遺産については、古道はもちろん史跡の多くにつきましても基本的にはオープンな形態であり、この手法の適用は困難と考えられます。
 このため、高野・熊野の世界遺産の保全を充実させていくためには、議員御提案のインターホンの貸し出し等、新たなアイデアによる民間のさまざまな取り組みの盛り上がりがぜひとも必要なことでございまして、今後できるだけ多くの方々に世界遺産への関心を持っていただけるよう努め、その中で世界遺産のための財源確保の方法等についても十分研究してまいりたいと考えています。
○議長(尾崎要二君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 和歌山から世界に発信できる県民の誇りとなる食文化を推進することについてでございますが、議員お話しのとおり、和歌山県には地域の風土や暮らしを反映した郷土料理や伝統料理が数多く受け継がれ、地方独自の食文化がつくられております。こうした中、民間の高野熊野世界遺産連絡会が主催する「わかやま食文化フォーラム」が開催されますことは大変意義深いことと考えております。
 農林水産部といたしましては、地域食材を生かした郷土料理の伝承活動として、これまで各地域の生活研究グループを中心に味料理交換会を開催し、また、地域ごとに特色のある郷土料理を次代の人々に紹介するレシピ集の発行などに取り組んでまいりました。
 今後、高野・熊野世界遺産登録を契機とし、これらの活動を発展させ、県内一堂に会する郷土料理交換会を本年秋に開催することを検討してまいりたいと考えております。このような交換会を足がかりに、民間団体、関係機関が一体となった食文化の発信につなげていきたいと考えてございます。
○議長(尾崎要二君) 知事公室長小佐田昌計君。
  〔小佐田昌計君、登壇〕
○知事公室長(小佐田昌計君) 熊野古道とパワーウオーキングをドッキングさせ、世界遺産、観光、健康など、県の新しい総合的事業にすることについてでございますが、本県の持っている温泉、森林、海洋等の恵まれた地域資源を活用して健康づくりを観光に結びつけ、地域の活性化を図っていくことは時代の要請であり、重要なことだと考えております。県におきましては、現在、熊野古道を健康資源として活用する健康村構想に取り組んでいるところでございます。
 議員御提唱のパワーウオーキングは本県が推進する生涯スポーツの振興につながるものであると伺っておりますので、パワーウオーキングと熊野古道をドッキングさせ、世界の健康づくりの拠点として発信していくことにつきましては、こういった観点から検討してまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時十七分休憩
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