平成16年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(原 日出夫議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
質疑及び一般質問を続行いたします。
二十八番原 日出夫君。
〔原 日出夫君、登壇〕(拍手)
○原 日出夫君 では、早速質問に入りたいと思います。
今、紀南は梅の最盛期です。ことしはさる年の梅ということで歴史ある梅で、市場価格も普通だと今の景気の中だったら少し価格が落ちていくんですが、昨年並みの価格を維持しながら活気を呈しております。とりわけ私は以前からも議会でも言わしてもらっていますが、梅の選果場や市場へ行きますと、それを運搬する大型車、箱詰めをする段ボール箱の会社、それから漬けだるの準備とそのたるの生産、そういったこととか、スーパーへ行きますと、青梅とその瓶、そして氷砂糖、それからホワイトリカーとか、たくさん山積みにして、夕方行くともうほとんど売れています。そういう意味で、まさにこういう状況の地域の活性化、とりわけまた非常に働くところがない中で中高年のお母さん方がたくさん梅とりに朝早くから出かけるなど、また一時期ではありますが、お弁当の仕出し屋さんもかなり活気を呈しておりますし、そういったことと相まって、仕事のない土木関係で働く人たちもその時期はある梅の生産農家と契約しながらそこに季節労働者として働くなど、非常に活気を呈しています。
そういった中で、反面、飲食街や商店街は非常に閑散としている状況ではありますが、こういう意味では梅が事実上和歌山県の基幹産業であり、地域の活性化、そしてその梅だけの生産が全体の他の事業に波及効果を呈しながら紀南における唯一の地域の産業として地域の活性化につなげている状況を見ると非常に自信を得ますし、これからも梅産業だけでなくて和歌山県が抱える地域の地場産業が新たにこういうふうに多面的に循環的に、そういう一つのものだけでなしに他に波及する事業として私たちは努力をしていかなければならないということを痛感しております。
では、本題に入らせていただきます。今回の私の質問は次元的には高くありませんし、私自身が経験してきた関係上の考え方、まず私の考えを県当局にぶつけまして問題提起した形で当局の見解をお聞きしたいと思っております。
まず、市町村合併と県行政について私から幾つか問題を提起して県当局の見解をお聞きしたいわけでありますが、まず第一点は市町村合併の現状と課題についてです。
県下五十市町村で合併が予定どおりすると二十七市町村になります。その中でとりわけ二つの枠組みが九、三つの枠組みが三で、全体の八五%を占めています。また合併協議を立ち上げていない市町村は十三あります。しかも現状は、市町村合併に対する住民の声はかなり厳しく、幾つかの町ではノーの声が起こっています。
私は基本的には、合併か単独かは当事者である行政、議会、住民が判断することだと考えますが、少なくとも県行政として合併を支援する立場からするなら、この現状の中でどう対応していくのか、県としての合併に対する具体的指針が求められているのではないでしょうか。また、私が危惧するのは二から三の枠組みが八五%を占め、とにかく合併ありきは、近い将来、三位一体改革による地方財政でさらに悪化しないでしょうか。合併ありき以前に地域の町づくりを展望する上でどういう枠組みがベターなのか、政策議論をもっと県は支援する必要があるのではないでしょうか。
そこで具体的に、市町村合併に関する合併三法がせんだって成立したのに伴い、県の考え方と取り組みについてお聞きしたいと思います。
第一点は、構想策定が義務づけられました。「都道府県は、国の基本指針に基づき、市町村合併推進審議会の意見を聞いて、市町村の合併推進に関する構想を策定すること」というふうに義務づけられております。その策定の考え方と方針はどうでしょうか。とりわけ合併協議会十五の組織への対応、合併協議会を立ち上げていない十三の市町村への対応、単独を選択した市町村への対応はただ単に地方財政の厳しさだけを誇示するのではなく、町づくりの政策を柱に検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。
第二点は、「県知事の合併協議会の設置を勧告する」は、現行合併法と合併新法では知事の対応はどう変わるのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
第三点は、合併する上で市町村が抱える問題点を解決するには当事者同士では大き過ぎて県の指導と協力が求められていますが、いかがでしょうか。国の補助金とか国の事業に対してなかなかうまくいっていない事業が、解決できていない問題が山積しているところもかなりあります。そういった意味では、県の指導がなくてはなかなか当事者同士では解決しない、それが解決しないためになかなか合併にこぎつけられないという当事者の悩みが非常にあります。そういう意味では県の指導と協力が求められていますが、知事の見解をお聞きしたいと思います。
次に、私は合併だけでなくて新市田辺市を事例に──これは私はその枠中だけしかわかりませんので、他の合併協議会の中身については勉強不足なので、自分が該当している新市田辺市を事例に合併のための支援策から合併後の新しい町づくりに対する県の支援策を提起したいと思います。
合併への道筋は、新田辺市は非常に大変なものでしたが、今度六月十九日に合併調印式をし、六月の下旬の各市町村議会で議決する方向で進められていると聞いております。私は、合併のための支援策、いわゆる合併特例債とか合併特例基金とか普通交付税支援措置とか特例交付税措置、また県の市町村補助金など財政支援策だけに目を向けるのではなく、合併後の地域の町づくりをどうするのかというテーマが重要と考えます。そこで、新市田辺市を生み出す中で当初の合併協議会の枠組みが崩れていったことは、先ほど申し上げましたように非常に当事者での問題解決が大き過ぎて現在に至ったと思いますし、それはさておき、私は、合併を考える上で新市田辺市の事例と教訓から合併によって、地域の特性を失うとか、小さい町や村は大きいところに吸収され地域の意見、声が反映されにくくなるなど出されていたと聞いております。これらの問題は、私はこれからの地方政治のあり方が問われていると考えます。
今までの地方自治体は行政と議会という枠組みの中であり、議員にとっては地域への利益誘導、つまり地元のためにを主軸にして行政と住民が成り立っていたのかもしれません。しかし、これからの地方政治は、行政と議会、そして市民参加によって市民の声が行政に反映していくシステムをいかに構築するか、運営していくかの時代に入っているというふうに考えます。一定の地域ごとに地域協議会をつくるなど、地域住民と行政とが一体になった町づくりを目指す組織をつくり出すなら、むしろ合併によって市民の声が今まで以上に反映されるでしょうし、地方財政の厳しさをより受けとめ、行政依存の政治から行政と市民との役割分担と協力・協働の関係がつくり出されるものと考えます。
私は、新市田辺市では、地場産業と観光から見ても、今までの点や、そして個々にあったものから線に結びつけ、さらに面として相乗効果が発揮できる。それは、住民と地域企業、行政が協働してつくり上げていける材料がそろったことになります。田辺市、龍神、中辺路、大塔、本宮が一体化した町づくりを県の支援でつくり出すなら合併がこの新たな市の発展につながると、私はそう前向きに考えています。
今回の私の質問はそういう立場で、合併への支援だけでなく合併後の新しい地方自治体の町づくりを県は具体的にどう支援していくのかを提起したいと考えます。
第一は、市町村合併に伴い、県の地方機関である振興局の見直しについてですが、今回新たに合併する新市田辺市と振興局を事例に、合併による県と新市との役割分担と権限移譲を初め、人的交流を含めた県と新市との効率性をどう図っていくのかお伺いしたいと思います。
次に、新市田辺市における観光と地域産業再生──私は六次産業というふうに位置づけているんですが──その構築についてですが、私はこれまで議会において、地域振興、地域再生について問題を提起し、とりわけ梅産業を事例に、生産する一次、加工する二次、三次の販売・観光・関連産業という多面的循環産業をどう地域で構築するか、まさに六次産業と位置づけ、地域再生の機軸にすることを提起してまいりました。
今回新市としてスタートする田辺市は、県下の観光立地の中核的存在であり、しかも高野・熊野世界遺産指定に伴い、この地域指定でも中核をなしています。新田辺市民は、合併する各市町村の町の特性を有機的に融合していくことが町づくりにとってより大きな相乗効果となり、地域活性につながっていくものと思っています。県も、合併した行政区が合併前より停滞するようでは問題が残るわけで、一時的な特例債や合併時の支援だけでなく、県として継続・発展的支援が求められています。
そこで、高野・熊野世界遺産、エコツーリズム事業指定の中核的役割を果たす新田辺市と県の果たす役割は、とりわけ自然と文化遺産の観光立地には何が求められているのでしょうか。私は、私なりの経験を通した考え方を述べていきたいと思います。
新田辺市の町づくりの柱は観光と地域産業再生、つまり六次産業の構築であり、そのことで相乗効果が発揮されると考えます。高野・熊野世界遺産は、自然と文化を保全するという基本を忘れてはいけません。世界遺産に指定されると、何かすべてバラ色で観光客がわんさとやってきて地域にお金を落としてくれるといった幻想や考え方をしたとしたら、またしているとしたら、そんなものでないと私は考えます。テーマパーク的発想からの脱却が求められています。私は、高野・熊野世界遺産の地域指定を前向きにとらえ、この機会にこそ観光と地域産業再生を構築することだと考えています。
この地域においては、今までの観光の概念から転換し、森林と農村と伝統文化を継承した田舎をコンセプトに、訪れた人たちと地域の人たちの交流をテーマに地域の農業とそのブランド化、森林・林業と環境づくりと木材のブランド化、伝統文化の継承とそこから新たな創出が地域の産業を再生させるとともに、地域社会、地域住民が楽しく、お互いに責任を負いながら創出していくことが結果的には観光と結びついた成果を上げることにつながると私は考えます。高野・熊野世界遺産指定で、地域が県行政やエージェント、観光業界によって与えられ、つくられるものではないと私は考えています。
こういう立場から、私は新市田辺市の地域の特性を正しく評価し、その地域資源を生かし、発展させるための支援、つまり一つは農業、林業の生産、加工、販売、ブランド化、二つは地域文化の継承と創出、三つ目は地域経営会社設立への支援、地域を地域の市民による自主参加で、出資金もお互いに出し合って楽しく経営する組織を確立してこそ地域再生と観光が必然的に融合し、発展すると考えます。知事の見解をお聞きしたいと思います。
さらに私は具体的に一つは、県行政はこれらの地域の情報提供と内外の情報発信での支援をお願いしたいわけですが、いかがなものでしょうか。
二つ目は、高野山を訪れる外国人の中で、特にフランス人が多いと聞いています。私は合気道創始者植芝盛平翁顕彰会の責任者として二十年間活動してきた中で、昭和六十三年に「植芝盛平翁と熊野」をテーマにして合気道世界大会を開催いたしました。そのときに参加国、世界から三十一カ国、参加者一千名を田辺市で開催した経験があるわけですが、今、「高野と熊野」と「植芝盛平翁と熊野」をテーマに──合気道愛好者が世界で約二百八十万人、国内が百二十万人、海外が百六十万人ございます。私は、いわゆる「高野と熊野」、「合気道開祖植芝盛平翁と熊野」をテーマに特にそれを情報発信していきたいということを思っていますが、とりわけ国内の合気道愛好者数に匹敵するフランスに対して特別な企画としてそれをアピールしていきたいということも今検討しているところでありますが、こういった点について県当局としての支援をお願いしたいわけでありますが、いかがなものでしょうか。
三つは、新田辺市では観光ビジョンづくりを和歌山大学とともに取り組んでいるところでありますが、和歌山大学のフォーラムに私行かしていただきましたところ、学長を含めて、和歌山県における観光の重要性を強調されておりました。そういう意味では、和歌山大学に観光学部の創設を求めてはどうでしょうか。
以上三点について、関係部長の見解をお聞きします。
次に、新市田辺市における重要な政策の二つ目として、皆さんのお手元に配らしていただいているんですが、森林・林業政策についてお聞きしたいと思います。
新市田辺市の森林面積は約九万二千ヘクタールあり、和歌山県全森林面積の約二五%、四分の一を占めます。現在の田辺市では森林率が五六%ですが、龍神九五%、中辺路九四%、大塔九六%、本宮九三%ということであります。合計、合わせますと今後の新市の森林面積、森林率は八九・三%と、いわゆる九割方森林面積を占めるという非常に森林面積、森林・林業に重要な役割を果たす新市が誕生するわけでありますが、そういう意味ではこれに対して私はこのことを重視していかないと新市における今後の運営が非常に大変だなというふうに感じながら、県に要望がてら問題提起していきたいというふうに思っております。──下の関係は、それだけ林業事業にかかわる関係事業とかいう問題を問題提起さしていただいております。
これについて、しかも新市田辺市が、今言いましたように森林面積が全体の八九・三%を占め、まさに森林・林業政策を中心課題にしない限り新市全体の発展と町づくりは考えられないといっても過言ではありません。新市における森林・林業の政策の方向は森林率八九%の森林都市としてなることですから、新市では地球規模での環境問題の視点を踏まえた生活基盤維持のための地球最大の資源である森林について、その役割、整備、保全の必要性と木材利用の重要性を行政、市民が共同して将来の世代に引き継いでいく責任を負っています。
私は、具体的に幾つか書かせていただいております私自身の新市における森林・林業政策を担当する農林水産部に提起しております。幾つか羅列をしているんですが、この際省かせていただきまして、森林・林業、そして木材利用の重要性を特に県として具体的にどう取り組んでいくのかについて問題提起したいと思います。
そこで、新市では八九・三%を占める森林都市として組織的に森林局を設置するとしています。これに伴い、県の森林・林業施策において、私は今前段に言いました全体の森林・林業政策に対して県としてどう支援をしていくのかについての農林水産部長の見解をお聞きしたいとともに、これに関連して、県と新市が一体になった施策を進めるために、新市に設置される森林局に森林・林業の専門知識を持った人材を派遣することを要望したいというふうに考えているわけであります。
その部分の最後になりますが、私は、緑の雇用事業の今後の展望について知事にお伺いしたいというふうに思っております。
「都市と地方の共感を深める「緑の雇用」推進県連合」共同政策提言の役割と県独自の今後の展望について、まず基本的に知事の見解をお聞きしたいというふうに思います。
さらに二つ目は、これらの森林整備と雇用についてを踏まえて、国に対して、地域材利用の推進と木材の生産加工、流通体制の整備による木材産業の振興をもう一つの柱として強く求めていくことが必要ではないかというふうに私は考えています。
京都議定書による日本の温室効果ガス削減目標六%のうち、実に三・九%が国内の森林に課せられていることから見ても、緑の雇用が真に森林の整備にとどまらず、木材振興という二つの柱で運動として進めることが大事だというふうに考えているわけであります。
歴史的に見て、ガット・ウルグアイ・ラウンドの一九六〇年以降、貿易の自由化によって海外からの安い林産物の輸入で、今ことしの二〇〇四年に至っては国内消費の八割が輸入材で占めている実情で、緑の雇用事業には限界が来るのではないかというふうに考えているわけであります。しかも、海外では日本への輸出のため乱伐採が行われ、森林が破壊され、地球的規模での問題が発生しています。日本の豊かな森林、しかももう二年以降は日本の森林、その木は消費するに十分対応できる時期を迎える中で、私は、緑の雇用事業とあわせ、森林と木材振興の国の特別な措置を求める運動をしない限り日本の国土と京都議定書の実行につながらないのではないかと考えます。知事の御見解を聞きたいと思います。
ちなみに、環境NGOを中心とする市民エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通し発表を見さしていただきますと、森林に課せられた三・九%の目標は二〇一〇年には実現可能としたそれは、森林においてすべての木材が国産化されること、またバイオマスは木材製品全部をバイオ燃料等に使うという一つの仮定の中でやるならば二〇一〇年に十分三・九%の国内における京都議定書が充足される、満たされるというふうに言われております。あわせて参考にしていただきながら、知事の御見解をお聞きしたいと思います。
第一回の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの原日出夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 市町村合併と県行政についての御質問でございますが、議員御指摘のとおり、本県の合併はさまざまな経緯の結果、大きな枠組みが少なくなってきておりますが、合併に伴う経費節減効果に加え、法期限内合併に対する国のさまざまな財政支援を踏まえますと、それでも十分大きな合併効果が上がり、行財政基盤の強化が図られるものと考えております。また、いわゆる二次合併を念頭にした合併新法も先日成立したところであり、今後も合併の流れは引き続き継続することから、将来的にはより合併効果がある大きな枠組みを目指す動きも出てくるだろうと考えております。そのためにも、法期限内の現段階で基礎となる合併をすることは非常に有意義であると考えております。
合併新法においては、県の役割が強化されており、合併構想の策定、合併協議会の設置の勧告などが盛り込まれております。これらについては、国から今後示される基本指針も踏まえ、住民福祉の維持向上や地域全体の発展という合併の大局を見据え、市町村と一緒になって考えていきたいと思います。
また、合併しないこととなった市町村についてはさまざまな地元の事情があった結果でありますが、将来的に合併は必要と考えている市町村が大半であると認識しております。県としては、新法における県の役割も踏まえ、理想的な枠組みの合併が一日も早く成就できるよう市町村と一緒になって考えていきたいと思っております。
次に、合併する上で市町村が抱える問題については、今後とも県としてできる限りの支援や助言を行い、早期に解決されるよう努力するとともに、市町村に対しては住民の福祉と地域の発展という合併の大局を見据えた議論が行われるよう助言をしてまいりたいと思っております。
次に、市町村合併の進展に伴い、振興局の見直しをどう考えているかという御質問でございますが、地方分権が進展する中、住民に身近な行政は住民に身近な自治体が担うという考え方のもと、住民に最も身近な市町村において地域の課題解決を自主的にかつ完結して行えるということが最も望ましいものと認識しており、今般の市町村合併によりその機能、役割を担っていくことができるような方向で市町村の行財政基盤が強化されていくものと期待をいたしております。
今後は、市町村への権限移譲を積極的に推進するとともに、市町村合併の動向を踏まえ、県と市町村との明確な役割分担のもと、環境や基盤整備といった広域自治体としての県が担っていくべき役割に見合った組織体制を構築していく必要があると認識しております。
このような認識のもと総合調整機能をあわせ持つ現行の振興局制度につきましては、その抜本的な見直しを行い、県民の利便性及び現場性の観点から本庁と振興局との関係を見直すとともに、それぞれの地域において真に必要な県の行政サービスに応じた簡素で効率的な組織体制に再編整備してまいりたいと考えております。
次に、新市である田辺市における観光と地域産業再生の構築を提起されているわけでございますが、高野・熊野の世界遺産登録を契機とする地域づくりに関しては、例えばエコツーリズムなどの新しい観光産業を地域に根づかせることにより、すばらしい高野・熊野の自然、景観を損なうことなく、同時に地域が潤う、そのことにより地域の人々の世界遺産への関心が高まる、こういった世界遺産と地域住民とのかかわりの好循環をつくっていくなど、保全と活用を調和させることが肝要であると考えております。
合併により誕生する新田辺市においては、熊野古道のメーンルートとも言える中辺路ルートが所在することになることから、それぞれの地域のすばらしい史跡、自然景観に加え、都市アメニティー、温泉、色とりどりの食材など、間違いなく活用が可能な地域資源が存在します。その意味で、よりパワーアップした新田辺市が主体となって世界遺産を核として地域資源を活用した新たな産業づくり、地域再生に向けての取り組みが望まれるところであり、県としても精いっぱい支援をしてまいりたいと考えております。
次に緑の雇用の今後の展望についてでございますが、本県では緑の雇用の提唱以来、積極的な取り組みを始め、紀南地域を中心に県内で四百五十一名の方々が緑の雇用で就業されております。国においてもその実績を高く評価し、緑の雇用担い手育成対策事業を制度化したのを初め、本年六月四日に閣議決定された骨太の方針第四弾にも盛り込まれるなど、緑の雇用が国家的な施策としてとらえられていると受けとめているところでございます。
本県におきましても、現在緑の雇用で就業している方が中山間地域に定着し、地域の新たな担い手になるよう、さまざまな支援を講じているところでございます。六月十日には、国に対して本県独自の提案とともに「緑の雇用」推進県連合による共同政策提言を行い、公共施設等への木材利用の推進を含む緑の雇用総合対策の推進について強く訴えてきたところでございます。
今後、緑の雇用の一層の充実により、過疎化、高齢化する中山間地域に新たな息吹をもたらすよう努力をしてまいる所存でございます。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 新田辺市における観光と地域産業再生の構築につきましては、議員御提言のとおり、従来の観光の概念にとらわれることなく地場産業の振興あるいは自然環境の保全に観光という視点を取り入れて複合的に発展させ、国内外に情報を発信していくことが重要であると考えております。
現在取り組んでおります体験型観光は、こうした考え方のもとに、農業や林業、伝統文化、暮らしに至るまで、地域の資源を生かして地元の人々が中心となり、訪れた人々と交流することを基本とした観光地づくりを進めているところであります。
本県が生んだ合気道の創始者植芝盛平翁を初めとする先人の大きな遺産等を有効に活用して、地元の人々の創意工夫で新しい観光の創出が図られることを県としても情報発信に努め、支援してまいりたいと考えています。
以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) 観光学科の創設についてでございますが、和歌山大学では、このほど観光系の新学部構想の検討を始めたと聞いております。県としましても、世界遺産の登録を契機に国内外から観光客の増加が予測される中、観光の国際化、専門化に対応した人材の育成はもとより、観光資源の活用、観光産業の振興の面からも和歌山大学の観光系学部の構想に大きな期待を抱いているところであり、その実現のため協力を行ってまいります。
○議長(尾崎要二君) 農林水産部長阪口裕之君。
〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 新市田辺市への森林・林業の支援についてでございますが、県全体の四分の一の林野面積を持つ新市は、豊かな森林資源を生かして林業を振興する龍神村、中辺路町、大塔村、本宮町などから受け継ぐ山間地域と、多数の製材所を有する田辺市から受け継ぐ木材の生産、加工、消費地域の両面を備えてございます。こうしたことから本地域は、現在まで培ってきた知識、技術、ノウハウ等を創意工夫により結集させ、今までにない森林・林業行政施策の展開が可能となることはもちろん、本県の森林・林業、木材産業の中核的役割を担い、現在の低迷した林業状況を打ち破る新たな可能性を持った新市として期待されているところでございます。
県としましても、広域合併後は森林・林業や山村振興部門を受け持つ新市の関係部局と十分協議し、林道整備等の基盤整備などを積極的に支援するなど、県を代表する森林・林業都市田辺市となるよう積極的に情報の提供、助言等を行ってまいりたいと考えてございます。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
二十八番原 日出夫君。
○原 日出夫君 合併に関する答弁は、聞いておりますと余り具体的、積極的な答弁でなかった感じがするわけで、私の言いたいところはもっと──私自身の考え方を述べさせていただきました。合併新法ができた上で、県として具体的に市町村そのものの主体性を尊重するというのは知事がずっと言い続けていることでありますけれども、新法に伴って県として今後どの程度今までと違ってどうかかわっていくのかということを聞きたかったわけであります。しかも知事の勧告が、現在の特例法では来年の三月末で切れますが、それとあわせて新法が抱き合わせにできたということにかかわって、今後今までの特例法でもできますけれども、新法になってどう具体的にアクションを起こしていくのかと。今までどおりでは新法ができても一緒やというのか、新法できたら県として具体的にどうしていくのかということが答弁の中で何もなかったんで、そのことをもう少し具体的に教えていただけたらありがたいなと、こう思います。
私は、合併の論議の中で、先ほども言わせてもらいましたが、合併でお互いに損とか得するとかという問題ではなくて、その地域がどうそのことをいい意味でつくり出していくかと。隣の町には自分たちの今までの町とはまた違った町のよさがあると。それを、そういうばらばらだったものをお互いによさを持ち合って、一つの合併により地域の町づくりをしていくことによって相乗効果が発揮できるんと違うかというそういう論議をもう少し合併のテーブルの上にのせて論議をしていただけるならば、もっと市民的にも高まってくると思いますし、知事がNPO元年と言われておりますが、今後地方自治体はそういう意味では行政と、もちろん議会もありますけれども、地域住民がそこにどうかかわりながら今の地方財政の厳しい中でお互いに協力、協働しながら役割分担をして町づくりをしていくかということも──いわゆる三位一体だけが表へ出て、何か厳しい、厳しいじゃなくて、現実的に私は大変厳しい状況の中でそこに住む自分たち住民が力を合わせて一つの町づくりをしていくという展望を県行政が与えていく、支援をしていくと。そういうことを力強く打ち出してほしいなという気持ちがあったのですが、そういう点も余り積極的に言われなかったかなというふうに思います。
もう一つは、私は昭和三十九年の田辺市と牟婁合併のことについてちょっと勉強もさしていただきましたけれども、今の平成大合併──前の昭和合併もありますけど、むしろ田辺市が旧牟婁町と合併したことによって、今はむしろ地域活性化していますね。合併させられたと言うと悪いですけど、旧村・町は、むしろ今、田辺市の全体の地域の産業や活性化を支えていると。今度の新市田辺市になった場合、町中よりも、今度合併する町村の森林・林業、または観光資源が本当に有機的に生かされながら発展するというふうに私は期待して──期待というより私たちがつくり出していく素材があると、こう考えていますので、そういう意味でも積極的に支援していただけたらありがたいという考えは持っています。
最後になりますけども、森林問題で私は要望するということを言いましたが、実際に森林・林業の分野において新しくできる分野はほとんど県の分担になっていたわけであります。事業においても、ハードにおいても、ソフトにおいても。しかし、新市になって全体が県の四分の一を占める二五%の面積を抱え、その市そのもの全体の八九%、いわゆる九〇%が森林・林業関係に携わってくるという、もちろん観光も関係してきますけど、そういう地域においては、とりわけ今は三位一体と言っていますけど、今は都道府県の中では四位一体。いわゆる人的な役割──合併する場合には、むしろ人的派遣もやっぱり目指して、森林・林業における専門分野の県の職員をそちらへ派遣していくという部分も一つは考えていくべき時期ではないかと、こう考えているわけですが、そのことについても少し意見を聞かせていただければ、知事の見解を聞かしていただけたらありがたいと思っています。
以上であります。
○議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、合併について新法で県がどういう立場をとるのかということなんですが、今は各市町村とも現行法の枠内で非常に苦しみながら、新たにまた合併の枠組みで頑張っているところもあります。それからまた、苦しみながらなかなかうまくいかなくなったところもあります。そういうふうな状況の中で最終的にどんな形に落ちついてくるのか。これは和歌山県だけじゃなくて、全国的な動静というふうなことも見ながら、動態的に次の新しい法律で県がどのように対応していくかということを考えていかないといけないというふうなことだと思っておりますので、これは熱意がないというようなことじゃなくて、そういうふうな状況を注視しながら、これはもう機械的にこことこことここをひっつければいいというふうな単純なものじゃないし、国の法律ができたからそれで何もかも片がつくというほどのもんでもないというふうに今までの流れを見ていると思いますので、これは改めてそういうふうな形で真剣に対応していきたいというのが私の考えでございます。
それから、田辺市に関して言えば、今回、例えば中辺路町、本宮町、そして大塔村、それから龍神村、こういうふうな和歌山県の中で人口はそんなに多くはないけれども、それぞれが自分のところの持っている資源を活用して非常にいい行政を展開しているところだと思いますし、熊野古道ということについても非常に関係が深いところというふうなことになっております。そういうところが合併する上で、私は皆さん非常にいろんな思いがあると思うんだけども、合併した効果が、例えば観光とかそういうふうな分野、そしてまた林業の振興とか、そういうふうなことでうまく生まれてこなかったらどうして合併したんだというふうな話にもなりかねませんので、一つは観光の問題について、有機的、広域的な連携が図れるようなことを県としてもいろんな形で支援していきたいと思いますし、林業についてはもう言わずもがな、この地域は緑の雇用についても今まで非常に積極的に対応してきてくれているところでございますので、そういうことについてなお一層の支援を行っていきたいと、このように思っております。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、原日出夫君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時二十八分休憩
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