平成15年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十一番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。
 私は、さきの六月議会では、和歌山の水と緑の環境保全を進めるために、産業廃棄物や残土処理のルールの確立を求める観点から水環境保全条例の検討を提案をいたしました。この九月議会では、この水と緑の環境保全という課題に、災害を防ぐ災害対策という切り口で質問をさせていただきたいと思います。
 ご承知のように、ことしはあの七・一八水害からちょうど五十年です。また、さきの台風十号の風雨によって多くの被害が県内でも出ました。広川町でも降り始めからの雨量が四百六十二ミリを記録をいたしましたし、湯浅町の山田山では谷を埋め立てた町道の堰堤の内側に二十万トン近い雨水がたまってこの巨大な堰堤が崩壊を始め、あと一歩で全面崩壊かというところでしたが、危険に気がついた町当局が二日がかりで徹夜でポンプでこの水をくみ上げて全面崩壊を免れたというところです。この場所については県の残土処分場でもあり、復旧と安全対策に今後ともお力添えを願うものです。
 一方、有田川では、この十号台風により金屋橋で水位が五・八メートルに達しました。警戒水位の四・一メートルをはるかに超えて危険水位の五・九メートルに迫る水位だったんですね。深夜、県による有田川洪水警報が発令され、金屋町、吉備町、有田市などの流域の自治体では即刻、深夜ではありましたが、地域の消防団にも出動・待機命令が出されました。有田川の支流である鳥尾川も堤防が危険な状態だということで、野田地区など、住民が避難もいたしました。今回の有田川の水位はあの二年前の梅雨前線による大雨の増水よりも水位が高くなって、有田川流域の住民は大変な恐怖を感じました。有田川北岸の国道四百八十号吉備町地内では道路の高さいっぱいまで水位が上がり、流域の河川公園がまたもや流出をいたしました。
 七・一八水害五十年の節目に当たって、水害を未然に防ぐための災害対策について質問をさせていただきます。
 私は、今回の台風の後、改めて有田川の災害対策について、住民や町行政の皆さんにご要望を伺いに回りました。その中で吉備町の住民と行政関係者からそろって出される声は、「有田川に土砂がたまって川の底がうんと上がってきている。あれを何とかならんのか」「鳥尾川や天満川の河川改修を進めても、有田川の川底を下げてもらわないと水が流れないので本当に何ともならない」などなど、一致して有田川の土砂のしゅんせつをしてほしいという声が出されました。この問題については、午前中に有田市選出の浅井議員から厳しい指摘があったところですが、その上流である有田郡内の住民や市町村関係者・議会の中でもそろってこの土砂のしゅんせつの問題が出されています。有田川改修促進委員会の席上でも、ことしも多くの委員さんから土砂しゅんせつの要望が出されています。
 洪水対策として有田川の堆積土砂のしゅんせつをぜひ具体的にスタートをしていただきたいと思いますが、県土整備部長の答弁をお願いをいたします。
 次に、洪水時の二川ダムの問題点についてお尋ねをいたします。
 有田川の洪水に対する意見を聞きますと、今申し上げた砂利を取ってほしいというこの声に続いて出されるのが、ダムができてから土砂がたまるようになったという声、そして、ダムからの放流がとても危険だという、ダムにかかわる声なんですね。金屋町で有田川の警戒に当たった消防隊員の方は「大雨で川の水が目いっぱい上がってきて、本当に怖かった。それに加えてダムの放水が続いたので、この先どうなるのかと思った」とおっしゃっています。ダム下流の住民にとって、ダムによって守られているという実感は感じられない状況です。「大雨のとき、川の水がふえているのにダムが辛抱できやんようになってがばっとゲートをあけるんで悪いわな」と、恐怖感の方が大きいわけですね。
 今回の台風も、ダム下流の金屋町で連続雨量が四百ミリ近くも降りました。不幸中の幸いに、清水町では二百九十九ミリ、高野町で百五十八ミリと、普通なら山間部の方が降雨量が多いんですが、今回はダムより下流の方が多かった。これがもし上流で下流部以上の豪雨が降っていたらと思うと、本当にぞっとします。五十年前の七・一八水害では五百ミリを超える雨量が山間部であり、平野部でも三百ミリを超えました。ところが、この大水害に匹敵する雨量が現実からかけ離れたものでは決してないという思いを今回の台風で強くしたものです。
 台風当日、これだけの異常水位になったことを受けて下流では、一体ダムはどれだけ放流したんだと、二年前につかったときとどっちが多かったんだ、こういう声が実際にありました。私はすぐにダム管理事務所にお聞きをいたしましたが、今回の台風では最大毎秒六百八十トンの放流でした。二年前の梅雨前線による洪水のときは八百八十トンの放流でした。つまり、ダムの放流量はことしの方が少なかったわけですが、有田川の水位は結果としてことしの方が高くなってしまったわけですね。今回は、二年前と比べて上流部の雨が比較的少なかったのと、台風に備えて予備放流をしてダムの水位を落としてダム操作を頑張ってくれた結果だったと思います。
 ところが、私、このダムの資料を調べて感じたんですけども、ダムに対して上流から流れてくる水量とダムから放流している水量の差を見ますと、今回の台風では最大毎秒七百七十トンが入ってきて六百八十トン放流しているんです。二年前は、一千トンが入ってきて八百八十トンを放流しているんです。確かに、流入量以上には流していませんし、ダムの力で流れを少なくしたと言えなくありませんが、しかし、余りにもカットの量が少なくはないでしょうか。両方ともわずか一割のカット量にしかすぎません。
 私、ほかのダムも調べてみました。今回の台風で、先ほどもお話ありました日高川の椿山ダムでは毎秒二千トン入ってきて千四百トンの放流、広川ダムでは八十二トン入ってきて三十八トンの放流だったんです。これらのダムと比べてなぜ二川ダムが違うのかを検討していく必要があるというふうに思います。
 二川ダムには上流から大量の土砂が流れ込み、ダム湖が埋まってきています。ダム湖に蔵王橋という赤いつり橋があるんですが、もうそのすぐ先まで土砂がたまって、渇水期には底が見えています。二川ダムが建設をされて三十五年です。最終的にダムの寿命である百年間でたまると予想をされている堆積量の既に六割がこの三十五年間でたまっているというデータです。このダム湖が土砂で埋まってきたことなどにより二川ダムの洪水調節能力が低下してきているのではないでしょうか。県土整備部長の答弁を求めます。
 次に、このダムのことを調査していく中で私が一番注目すべきだと思ったのは、長くダムとかかわってこられた地元の年配の方のお話でした。「松坂さん、昔はね、雨が降り始めてからダムの水位がだんだん上がり始めるまでほぼ一日かかったんや。一日たってからだんだんダムの水位が上がってきた。ところが、今は本降りになってから二時間ほどでダムの水位が上がり出すんやで」、こうおっしゃったんですね。このお話は、ダム上流部の保水力が急激になくなってきている具体的な証拠ではないでしょうか。地球温暖化等による異常気象や異常降雨などが報告される中、有田川流域のこの保水力の変化、森林の荒廃、田んぼの減少、平地の舗装化、これに加えてダムへの土砂堆積の進行など、建設後三十五年間でこれだけ環境や条件が変化をしたのに、ダムの操作は昔と変わっていないんですね。
 県土整備部長にお尋ねをします。雨の多い時期や台風前の水位をもっと低く設定するとか、ゲート操作のタイミングや放流計画の立て方など、ダム操作規程の見直しが必要ではないでしょうか、答弁をお願いいたします。
 これまで述べてきました有田川の増水状況やダムの状況の上に立って、ダム上流の保水力、森林整備について次にお尋ねをいたします。
 今、林業不振により間伐ができずに放置をされ、昼間でも懐中電灯を持たなければ入っていけないような真っ暗の森林がふえてきています。そういう森林では雑木や下草も生えず、石ころだらけの表土がむき出しになっています。こういう荒廃した森林の状態を指して、一見して山は緑に覆われているように見えるが、緑の砂漠になっているとの指摘がありますが、本当にそうだと思います。「森は海の恋人」という言葉があるように、先日も白浜町が水源の森として富田川源流の森林を購入し整備する計画を明らかにしたように、県民の中でも、また地球規模でも関心が高まっています。
 ところが、この森林整備による保水力や水質向上の効果というのは、もう経験的にははっきりしているんですけども、数値的にデータで示せとなると難しかったわけです。これは森林の二酸化炭素の吸収量や炭素固定量を数値にするというのも苦労しているのと同じだと思うんですが、しかし、今日、森林の持つ多機能な能力とかけがえのない役割を科学的に明らかにしながら、山間部に住む人たちも都市に住む人たちも一緒になって森を大事にしていこうという時代になりました。
 この森林の保水力の問題を勉強しようと、私は実はこの夏に長野県と徳島県に調査に出向きました。長野県では、脱ダム政策の裏づけということで、コンクリートのダムにかわって川を治める治水、飲料水などを確保する利水対策として、流域の保水力向上に取り組んでいます。森林整備による保水力をこれだけふやそうとか、水田のあぜを十センチ上げたらどれだけの効果があるとか、利用が減って荒れているため池を復活させたら全部でこれだけの効果があるとか、積極的かつ具体的に保水力の向上に取り組んでいます。
 私、県庁でお話を伺った後、現場に出向きました。信濃川水系の薄川の大仏ダムの計画中止に伴い、長野県はダムにかわる薄川流域の総合的な治水対策を進めて「森と水プロジェクト」、こういう事業を三年前から立ち上げています。幾つかの谷に雨量計と谷水の流量計を設置し、森林がどれだけの保水力を持っているのかを調べています。ここにあります第一次報告では、雨量にして約百ミリの保水力を森林があるというふうに研究・検証を進めていました。そして、この保水力を高めるために人工林を間伐し、針葉樹の間に広葉樹が生えているような針広混交林をふやし、そして保水力の変化を数値データとして得ようとしています。そして、この試験研究と並行して、このプロジェクトの実験林に多くの県民を招き、そして参加を募り、森林をよみがえらせる試みを県民と一緒に進めていました。林野の分野から河川そして土木と、県の部局を横断する施策を大胆に進めていたのにはびっくりをしました。
 また、徳島県の吉野川では、吉野川河口堰の建設の是非が県民的大議論になったところですが、森の保水力を洪水対策に生かそうと、住民と行政が一緒になって研究をしていました。森林から出てくる雨水は、表面を流れていく水、表土に吸い込まれて後から出てくる水、岩盤まで行ってからゆっくりと出てくる水に、大きく分けて三つに分かれると思うんですが、水の出てき方をグラフにしますと、表面を流れる水は急激に立ち上がって急激になくなっていきます。ところが、土にしみ込んで出てくる水は、ゆっくり出てきて低い山を描きます。岩盤まで行く水はもっともっとゆっくりカーブを描きます。この保水力の部分をふやして水が出てくる時間を後におくらせる、そして最大値も下げようというのがこの研究なんですね。徳島では、森林の間伐、針葉樹、広葉樹の針広混交林化を進めることにより吉野川の洪水ピーク流量を下げようとしていました。現地の皆さんは、縦割り機構で動きのとれない行政にかわり、住民が自前の資金活動をしながら専門家と共同して新たな公共事業を提言する活動なんだと、胸を張っておられました。
 私は、この二つの視察を通して、専門家や研究者と行政、住民が一緒になって研究と森林整備を同時進行で進める必要性を痛感してきました。そしてまた、どちらの県の行政関係者からも「和歌山県は緑の雇用事業など森林整備に頑張っていますね」と褒めていただいたこともあわせてご報告をしておきます。
 さて、話題を和歌山に戻しまして、県内の森林整備は住民にどう映っているでしょうか。清水町のある区長さんはおっしゃいました。「緑の雇用事業で間伐が進んで、本当にありがたいと思っている。間伐したくてもようせん山をこのままほうっておけないという気持ちでいっぱいだ。しかし、この谷の上に三億円かけて砂防ダムをつくっていただいたが、それだけのことを今せんなんかどうか、わしにはわからん。国からのお金の出どころが違うんやろうけど、そのお金で間伐やってもろたら、もっとようけ手が入れられるのになと思う」、これは山を見詰めて暮らしている住民の、私は実感だと思いました。
 これまでは、材木も、そして間伐材も、余すところなく高値で売れたので間伐はしっかりと進んできました。ところが、現在では、間伐材はおろか四十年を超す木材でも山から出す経費にもならないという状況です。これを解決し、森林をよみがえらせるには、林業が業としてきちんと成り立つような国産材を大事にする国の林業政策の根本的な転換が必要だと考えます。そして、森林に関する予算の使われ方を見ると、いわゆる公共事業部分が大部分であり、森林整備の部分はわずかです。公共事業との関係で言えば、私は林道整備や治山工事、砂防工事を軽視するわけではありません。大変大事な役割を果たしてきました。しかし、土木的工法と林業家による間伐が合わさって進んできたこれまでの時代と違って、これだけ森林の荒廃が進んでいる中では、土木的工法で森林に手を入れる予算と、間伐など森林整備に手を入れる予算の配分は思い切って見直して転換を図っていく時期に来ているのではないでしょうか。
 私は、CO2の吸収や温暖化防止、豊かな水資源の供給など、森林の持つ多機能な価値の中でも、今回とりわけその保水力による災害の防止、川を治める治水といった機能に注目し、間伐材の有効利用も進めながら思い切った森林整備事業を進めるべきだと考えています。林業を業として成り立たせるには、間伐材をどう活用できるかが一つのかぎになると思うんです。間伐することが割に合わないから、お金にならないから、事業としての間伐が成り立たないわけです。税金や補助金で間伐をするのは、今はおのずから限界があります。間伐材がいろいろな用途に使われ売れるようになるとか、木質バイオマスの原料としてクリーンなエネルギー資源として安定的に出荷できるようになるとか、間伐材がお金になる仕組みを応援する必要があります。そうすれば、山に活気と雇用が生まれます。
 この点では、知事も提案されているように、木材を公共や県の事業に使っていく工夫をどんどん進めるべきだと思います。例えば、今は森林組合などに間伐をお願いしても、間伐材を切ってそのまま山の中に放置してある状況が多いですね。これらの材木は、水害のときに、例えば災いになります。しかし、間伐をする現場の立場からすれば、縦にほうっておくより横にそろえて置いた方がいいと言われるのはわかるけども、面積当たり幾らで請け負っておる仕事だし、次を急がなければならないし、実際そこまで手が回らないというのが実態だと思うんですね。
 ところが、これを新たな事業として位置づければ、違ってくると思うんです。例えば、間伐の現場、その間伐材を現地で調達できる安価な建築資材として活用し、横に並べてくいでとめていくというような、保水力を高め、土砂の流出を防ぐ有効な工法が研究開発されていけば、間伐とは別にこれが一つの効果ある土木的な手法として山を守ることになる、公共事業としての雇用も生まれる、そしてまた山主にとっては──これ大事だと思うんですが──工事の資材として間伐材を幾らかでも買い取ってもらえれば間伐の自己負担金にも回せると、随分メリットが出てくるんじゃないでしょうか。奥の山から間伐材を出してきて、加工して、また現場まで持って上がるというのはコストがかかり過ぎますが、こういう工夫でうまく回転する方法もあるはずです。ぜひそういった工夫や努力を森林整備の中でも、土木工法の中でも大いに進めていくべきだと考えています。
 これまで述べました森林整備の必要性について、知事にお尋ねをいたします。緑のダムとしての森林の保水力回復という位置づけを高め、森林の間伐や針葉樹と広葉樹の混交林化を進めること、広葉樹林を拡大することなど、総合的な見地から一層の事業展開を進めるべきだと考えますが、いかがでしょうか、答弁をお願いいたします。
 あわせて、先ほども触れました保水力にかかわる研究と実践についてですが、和歌山県内でも清水町に京都大学の研究林があります。八百四十ヘクタールの広大で貴重な実験林を持っています。近年では県立有田中央高校清水分校との交流も深め、生徒が授業で研究林に通い、ユニークな実践に一役買っていただいています。
 この研究林が、試験研究のために一切手を加えていない自然林、そして間伐をして手を入れた実験林、そしてわざと間伐せずに放置した実験林、こういうのがあるんです。これらを生かしてそれぞれに谷からの水量をはかるなどして、その違いや間伐による変化を調査しようという研究をスタートをしています。県や林業試験場にも協力の要請が届いているようです。
 私は、この和歌山県が水と緑の環境保全に熱心な県として、森林と地球環境の未来を照らす研究、情報発信と森林整備を相乗効果を持って進めていくことが大事だと思います。この京都大学研究林が実験林を活用して取り組み始めた森林保水力の調査研究に県としても大いに連携・協力をしていくべきだと思いますが、農林水産部長の答弁をお願いします。
 続いて、二つ目の柱の農業問題に移ります。ここでは二点についてお伺いをします。
 まず第一に、イノシシやシカによる鳥獣被害についてです。
 今、実りの秋を迎え、農家は収穫の喜びの季節を迎えています。しかし、ここ数年のイノシシやシカなどによる鳥獣被害は、一層ひどくなってきています。今議会でも、昨日お二人の議員からこの問題が取り上げられましたが、この事態の深刻さを物語っていると思います。この問題では、さきに登壇された議員の質問と重複しないように質問させていただきます。
 有田地方においては、清水町や金屋町、広川町など、山間地を初めすべての町から被害の訴えが出されています。その中でも、最近では被害が拡大し、人家のすぐそばまで被害が及んできているのが特徴だと思うんです。シカも、最近は人家の近くまでおりてきます。金屋町糸川では、シカによってミカンの枝と葉っぱが食べられて、白く骨のようにむかれてしまいました。イノシシの被害では、清水町の各地で冬から春にかけて、田んぼやサンショウの畑の土をまるでトラクターのように掘り起こし、石垣をむちゃくちゃに破壊されました。ミミズを掘り起こして食べているそうです。以前は冬場の山にえさのない時期に被害が出ていたのですが、今は年じゅうです。そして、この実りの秋には収穫前の田になだれ込み、容赦なく稲を歯でしごくようにして食べ荒らします。
 先週の月曜日、イノシシに荒らされたという清水町の田んぼに案内していただきましたら、まるでテレビに出てくるミステリーサークルのように、イノシシが暴れ回った輪が田んぼの中にできていました。稲は無残に踏み倒され、土の中に練り込まれていました。農家の方は、「この踏まれた後の稲は手で刈り取って始末をしておかないと、土を巻き上げるのでコンバインで刈り取りができんのや。あと収穫まで十日というところなのに」、こんなふうに途方に暮れた様子で訴えられました。
 その人はおっしゃいます。「猟師の人がイノシシを追いかけても、山の向こうの禁漁区に逃げ込むんやて。そしてまたそこから出てきて、こっちへやってくる。何とかならんのか。人間には安全なわなを田んぼの周りへつけられるようにならんかの」、こんなお話なんですね。被害のあった田んぼの周り、私見せていただきましたが、イノシシよけのさくが苦労して張りめぐらされていました。ナイロンの網や鉄の網も食いちぎられていました。それで、トタンを追加したそうです。今度はそれを飛び越えるので、トタンの上に黄色いロープを三段に張りめぐらせていました。決して立派な囲いではありませんでしたが、本当に苦労がにじみ出ていたように思います。それでも、だめだったんです。幾ら防いでも切りがない。このままやったら、この在所で何もつくれんようになってしまう。こういう先が見えない状況なんですね。
 昨日の答弁でも、捕獲方法の拡大や防護さくの対策、追い払う方法などの答弁がありました。そこで、この保護区に関してですが、鳥獣保護区は貴重な生態系を守るために設定されていることは承知していますが、こういう実態に合わせて被害の著しいところは鳥獣保護区や休猟区などの制限を見直すなど、柔軟に対応して捕獲のできるようにならないのかどうか、環境生活部長から答弁をお願いいたします。
 最後に、中山間地でのハウス栽培農家への支援の問題についてお尋ねをいたします。
 金屋町では、近年、スプレー菊という小ぶりの花をたくさんつける、そんな菊の花の生産が盛んです。仏壇や季節の催し事など用途も幅広く、値段も安定していて、スプレー菊の生産は和歌山県が全国第四位と大きく成長しており、その県内でも金屋町が約半分のシェアを占めるというふうに、中山間地ながら大健闘をいたしております。農協のスプレー菊生産部会の皆さんは、若い後継者の皆さんを中心に元気に生産量と仲間をふやし、これまで国や県の補助を受けながらハウスを拡大してきました。
 以前のハウスの補助事業は一カ所にまとまった大規模な面積を持つ施設に対する補助という基準で、金屋町など中山間地ではそのサイズが合わないという問題があったんです。近年になって一カ所でなくて町内に分散して建設していてもよいというようになり、生産者からも喜ばれています。中山間地に合った比較的小さい規模でも取り組める補助事業が拡充されれば、もっと希望者が出てくるとおっしゃっています。中山間地での担い手を支え、元気な特産品づくりを応援する事業に一層の支援を求めたいと思いますが、今後の取り組みについて農林水産部長の答弁をお願いいたします。
 以上の点、お尋ねをいたしまして、第一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの緑のダム関係のご質問、私も非常に勉強になって、聞かしてもらいました。
 私自身はいわゆるセメントでつくったダムというのもまあ大きな役割を果たしているという考え方なんですが、ただ、百年間で埋まる予定だったものがもう三十五年で六割ぐらい埋まってしまってて、そしてそれの保水力が非常に減ってきていると、それを地元の人からの聞き取りによって実証的にお話しされた。非常に私は参考になりました。
 そしてまた、そのことからやはり山の保水力というふうなものを大いに回復していくような施策が大事だということについても、私はもう全面的にそのとおりだと思います。
 今進めております緑の雇用事業というのは、一つにはCO2の吸収というふうな側面に留意して行っているわけでございますけれども、これとあわせて、いわゆる緑のダム的な山の持つ保水力というふうなものの重要性ということにもあわせて目を向けていけばいいと思いますし、そしてまた、そのことの中でそこへ、ある意味では緑の公共事業的に、いわゆるセメントのいろんな工事とのバランスをとりながら緑の公共事業的なものとして緑のダムを考えていくという発想は非常に大事なものだというふうに思っています。
 県でも、この緑の雇用事業の中でどんどん広葉樹を植えていくというふうなことをやっているわけです。実は先般、私は三重県の速水林業というところへ行きまして、これは非常に立派な林業家の方ですけども、なかなか実は、針葉樹というのは割と植えて育てやすいんだけれども、広葉樹というのはなかなか植えたからつくというふうなものでもないというふうなことで非常に難しいという話を聞いてきましたけれども、しかしながら、そうではあってもそういうふうな努力をして森林の持つ保水力を高めていく、旧来のダムとあわせてそういう形で洪水が出ないようにするというふうなことは非常に大事。先般も古座川で同じような問題がありまして、これも非常に苦慮したんですけども、有田川でもこの間そういうふうな話があったということで、そういうこととあわせて真剣に対応していきたいと、このように思います。
○副議長(吉井和視君) 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) 洪水対策としての有田川の河床堆砂土砂のしゅんせつにつきましては、先ほどのご質問にもお答え申し上げましたが、現在の有田川の河床は堆積と洗掘が入りまじった状態であり、今後の変動状況を見ながら対応を検討してまいりたいと存じます。
 次に、二川ダムの問題でございます。
 ダム湖への堆砂により二川ダムの洪水調整能力が低下しているのではないかということでございますが、ダムを計画する場合には、あらかじめ一定の堆砂量を見込んでおります。二川ダムにおけます現在の堆砂量はその容量以内であるため、洪水調整能力が現在低下しているという状況にはございません。
 また、ダムを取り巻く諸条件の変化に対応してダムの操作規程を見直すべきではないかというご質問ですが、二川ダムの操作規程の見直しにつきましては、より効果的な洪水調整を行う観点から今後検討を行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) まず、京都大学が取り組み始めた森林保水力の調査研究に連携と協力をという項目についてお答えいたします。
 森林には、水源涵養を初め、多様で貴重な機能がございます。こうした機能を一層高めていくためにはどのような森林整備が必要であるのかという点に関しては、さまざまな自然条件等が複雑に関係し合うことや、植栽、間伐、枝打ちといった森林施業が及ぼす効果の検証に長期間を要することなどから、間伐、枝打ち等の森林整備や樹種、樹齢等の変化が水源涵養機能に与える影響の解明が今後の重要な課題となってございます。
 こうした試験研究については森林整備のあり方を検討する基礎となるものであり、国レベルでの研究に加え、地域での研究についても本県の森林の地域特性を探る上から意義があるものと考えてございます。このようなことから、今後は地域での森林の保水機能の検証方法などを初めとして、大学等の研究機関とも連携できる研究課題や方策を研究、検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、農業問題の中の中山間地での立地条件に適した中小規模のハウス栽培への支援策拡大についてでございますが、県では、中山間地域の定住条件の整備など、さまざまな施策に取り組んでいるところでございます。特に、市町村が地域の振興に必要と認める産品に関する施設整備等につきましては、県単独の補助制度を設け、支援しているところでございます。今後、市町村の事業計画に基づきまして協議してまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 農業問題につきまして、一点目の鳥獣被害対策として鳥獣保護区等の制限の見直しについてでございますが、本州の最南端に位置する本県には、温暖な気候、地形等により豊富な種類の生物が存在し、中には希少鳥獣も多く含まれていることから、これらの保護・繁殖を図ることは重要であります。このため、現在、県内では百一カ所の鳥獣保護区、三カ所の休猟区を指定しております。
 鳥獣保護区の存続期間は十年間、休猟区は三年間となっており、休猟区は原則として期間満了後引き続き指定することはございませんが、鳥獣保護区につきましては、更新時に保護の必要性と農産物被害の状況等について地元市町村の意見を聞くとともに、県環境審議会での審議を経た上で区域の変更等の見直しを行っているところでございます。
 これらの区域では、狩猟による捕獲は禁止されてございますが、有害鳥獣捕獲で対応することは可能であり、農作物被害の大きい地区での取り組みを市町村と連携して促進してまいりたいと考えております。
 なお、イノシシ等、野生鳥獣による農作物被害や生活環境への影響について、ただいま議員から詳細にご報告をいただきました。また、昨日、二人の議員からもご指摘をいただいてございます。県といたしましては、総合的な対策を講じるため関係する部局横断型の検討会を立ち上げて対応してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 知事並びに関係部長から積極的なご答弁をいただいたというふうに思います。ぜひ県民の期待にこたえて、森林整備や中山間地の支援に一層思い切った努力を期待申し上げるものです。
 時間がないので、一点だけ再質問をさせてもらいます。
 有田川の土砂のしゅんせつの話ですが、部長の答弁をいただきましたが、率直に申し上げましてこの点は大変不満であります。現在の川底の状況を危険な状態とか、何とかしなければいけない課題として認識されるまでには至っておられないようです。やろうと思うがなかなかできないという回答でなくて、いい状態ではないと。たまっているところもあれば、削れているところもあるけどもと、そういう答弁だったように思います。たまっているところが危ないとか、こうしたいとか、そういう具体的な作業を進めていただきたいというふうに思うんですね。
 これは、私と答弁者の見解の相違ということではなくて、流域住民や自治体の認識と県行政の認識に開きがあるという問題だというふうに思うんですね。先ほどは、鳥尾川やそれから天満川など、支流にも危険が及んでいるんだと、それほど堆積があるというふうに私からは指摘をさせていただきました。地元では、もう土砂をどこかに持っていけなくても、掘って川の両脇に寄せるだけでもできないかと、こんな声まで出されるぐらい切実なんです。
 本当に、それほど心配する程度ではないとお考えなんでしょうか。河川管理者としての立場もあるでしょうし、しゅんせつによる川の濁りや生態系への影響なども慎重に対応しなければならないでしょう。それから、しゅんせつした土砂を持っていくところも要るでしょうし、何よりもその予算の問題もあるでしょう。しかし、これほど流域の自治体が切望している課題で具体的な動きがないというのは、私は問題だと思うんです。
 県土整備部長に再質問をします。この河床のしゅんせつについて、地元の市町村の意見や関係機関の意見、これを聞く機会をこれまで以上に持って協議を重ねながら現状と今後の方向を一緒に見出していく、その努力を重ねる用意がありますか、お答えをお願いします。
 あわせて、今度は要望ですが、一つだけ。
 昔はこの川の土を──有田の方では「キゴウ」って呼ぶんですが──栄養分が豊富なので、農家が田んぼや畑の客土として取りに行く習慣がありました。一方、災害防止のために村人総出で川の底をさらっていたという地方もあるそうです。こういった川と地域とのかかわりが今なくなってきているというふうに思うんですね。
 きちんとした管理のもとで、農家の皆さんにキゴウを取りに来てもいいぞと、こういう場を持てば結構それだけでも取りに来てくれるのになと、町の方も言っておられました。試験的にやってみるのもおもしろいと思うんです。ぜひこういったことも検討されるよう、これは要望しておきます。
 以上です。
○副議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 県土整備部長酒井利夫君。
  〔酒井利夫君、登壇〕
○県土整備部長(酒井利夫君) ただいまの有田川の河床堆積土砂のしゅんせつの問題でございますが、単純に掘削すればいいという問題ではないということは、まさに議員ご指摘のとおりでございます。
 これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、今後の変動状況を見ながら対応を検討してまいりたいと考えておりますが、あわせて関係の皆様のご意見を承り、よりよい方法があるのであれば、そういうことも含めて検討をしてまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(吉井和視君) 以上で、松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は、九月二十二日、定刻より再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後三時十六分散会

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