平成15年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(山下大輔議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午前十時二分開議
○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。
【日程第一 議案第百号から議案第百十四号まで】
【日程第二 一般質問】
○議長(尾崎要二君) 日程第一、議案第百号から議案第百十四号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
十八番山下大輔君。
〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 おはようございます。
さて、今、国も地方も大きな転換期を迎え、非常に厳しい局面にある中で、多くの県民の皆様にご期待をいただき、この歴史と伝統ある和歌山県議会に送っていただいた、その緊張感をかみしめて、今この場に立たせてもらっています。大変光栄に感じるとともに、その責任の重さに身の引き締まる思いです。今、和歌山は長い低迷期からの脱出を図らねばなりません。和歌山には、自然条件、気候風土、立地条件、また文化・歴史遺産も含めて、他地域にはない、これからの時代にこそ価値を高められる潜在的な力があるのだと思います。それらをしっかりと生かすための知恵を絞ることができれば、この二十一世紀は和歌山が主役となれる時代だと私は信じます。和歌山が新たな価値を創造し、光り輝き、そして和歌山発でこの国をも元気にしていけることを心から願い、私にとって県議会での初質問に臨みます。私自身、もちろん微力ではありますが、県勢発展のため全力を傾注して取り組む覚悟です。知事を初め和歌山県庁の職員の皆様、先輩・同僚議員におかれましては、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従って質問をさせていただきます。
最初に、知事の考える和歌山の将来ビジョンについて。
現在の和歌山県は、急速に進む高齢化社会における対応、都市基盤を整えるインフラ整備の問題、これからの未来を担う子供たちの教育制度の充実、深刻さを増している環境問題への対応、そして地域産業の再建から雇用の創出など、積み残された多くの行政課題があり、大変厳しい状況となっております。さきの選挙戦を戦ってくる中でも、たくさんの県民の皆様から、生活、仕事にかかわる切実なお話を聞かせていただいてきました。今、和歌山も地域の根幹となる部分から徹底した見直しを行い、地域を一からつくり直すという気概を持って再出発するときを迎えているのだと思います。この国の形を歴史家として温かい視点から研究されていたのは司馬遼太郎さんですが、今こそ私たちも未来に向かってこの国の形、地域のあり方について危機感を持って真剣に議論していかなくてはならないときだと強く感じます。
さて、その地域のあり方を変えていくためには、そこに住む住民みずからが誇りを持ち、地域の将来像に期待し、ある面では楽しみながら地域づくりへの参加意欲を高めることが大切です。そのためには、まず何よりも、地域がどういう方向に向かっているのか、何を目指すのか、その先にある将来ビジョンをしっかりと指し示すことが必要とされるのだと思います。将来の地域のビジョンを皆で共有し、一致協力してそれぞれの立場で努力してこそ目標とする将来像も実現していけるのではないでしょうか。
県議会議員に当選させていただいてから、県から出されているさまざまな資料に目を通し、和歌山県が向かおうとしている方向、知事がこの地域にかける夢、将来ビジョンといったものを自分なりに見きわめるべく努力してきました。現在、木村知事が打ち出されている個々の政策、施策、また具体的な事業については、全国的に見ても先進の自治体として評価される数多くの取り組みがあり、率直に誇りを感じるところです。これまでの行政運営ではなかなか手のつけられなかった部分まで踏み込み、リーダーシップを発揮されていると思います。しかし、それらを束ねる確固としたビジョン、和歌山がどこに向かっているのかといったことについては、その指し示す方向を見出すことはできませんでした。先行きの見えにくい不確かな時代であるからこそ、計画、約束そして将来ビジョンといったものがやはり大切だと感じます。
再建、再生といったことで注目を集める企業として日産自動車がありますが、日産リバイバルプランを現実のものとしたゴーン社長は、企業の立て直しの中で、特に信念を貫くビジョン、そして計画の重要性を説いています。明確な将来ビジョンと具体的な計画がない限り、改革も再建もあり得ないと指摘されています。短期、中期、長期、そしてそれぞれの計画にも時々の目標を設定して実行していく──民間の例ではありますが、参考にできる点は多いように思います。
私の高校時代の同級生で、現在、日産自動車で技術者として働いている仲のよい友人がいるのですが、彼によると、「ゴーン社長が来るまでは、仕事は毎日やっているのだけれども、どこに向かっているのかわからない。結果として、能率が上がるよい仕事ができなくなっていた。まず、ゴーンさんが来てからは、ごまかさずに、このままではだめだとはっきりと指摘された。まず初めに、あきらめではなく前向きな健全な危機感を持たされて、そして何が悪いのか、どこに問題があるのか、その対策として何が必要なのかを明確に打ち出された。そして、改善、再建に向けた綿密な計画を練り上げ、それを全社員で理解するよう徹底した意識の共有が図られた。そうする中で、計画の実現に向けて、個々の社員にも自主的な問題解決のための目的意識が芽生え、小さなところからさまざまな変化が起こった」と、話してくれました。また、改革を進める上では三つのキーワードがあったようで、ターゲット(目標)、コミットメント(目標達成の約束)、ミッション(使命・役割)という言葉が会社内でよく使われ、それぞれの立場で個々の責任についても明らかにし、改革を現実のものとしていったようです。「仕事は以前よりも物理的には負担のかかるものとなっているが、しかし何よりも先にある希望の持てるビジョンが示されることで仕事の苦労は精神的には軽減されたと思う」と、熱心に話してくれました。
これからの地方自治は、本当に生半可ではなく厳しい時代となり、住民の皆様にも大変なご苦労、我慢をお願いしなくてはならないことも数多く出てくることが予想されます。そうであればこそ、いっときの苦しみを乗り越えてもらうためにも、未来への希望をしっかりと指し示すことが大切だと考えます。ぜひ、手間はかかるし労力も必要とされますが、地域の将来ビジョン、木村良樹知事の考える理想とする将来の和歌山像を示していただきたいと思います。そして、それを私自身も真剣に勉強させていただきたいと思います。
そこでまず、私の県議会議員としての最初の質問ともなりますので、県政に臨むに当たって、基本的な部分として、和歌山県の将来ビジョン、和歌山再建の方向性、地域運営の理念といったことについて知事の考えておられるところをお示しいただきたいと思います。
また、あわせて地域の再建を図るため、どういった政策を重点的なものとして優先順位をつけて取り組んでいこうとしておられるのか、幾つかをご教示願えればと思います。
次に、地域の再建、具体的な地域の活性化策として、観光医療産業の提案、予防医療、ヘルスケアといった視点から地域の立て直しを考える。
一九九九年、二十世紀の最終章で、私たちの和歌山は熊野博という非常に興味深い博覧会を開催しました。その年には「癒し」という言葉で流行語大賞のトップテンにも選ばれるという功績の大きかった事業です。この「いやし」という言葉は、これからの時代にも多くの人の心にしっかりと響く言葉となるように思います。「広辞苑」で「いやす」という言葉を引くと、「病気や傷をなおす。飢えや心の悩みなどを解消する」とあります。この実践ができる地として、「いやし」を抽象的な精神世界の話にとどめずに、医学的な背景をしっかりと確立し、実際に心身の健康を取り戻せる、人間を健康にする地域を切り口として、その可能性を追求する中に和歌山再建の知恵が生まれるように思います。特に、高野・熊野が世界遺産として推薦され、さらに「いやしの地・和歌山」のイメージが強まることが期待される中で、「いやし」、「いやす」をキーワードとして地域再建への具体的な戦略を描けるのではないかと期待します。
和歌山は今、既存産業の地盤沈下から働き口が少なくなり、人口が流出、特に働き盛りの労働人口が減少し、高齢化率の急激な上昇とあわせて地域内の消費が低迷、それらが地域経済の衰退につながり、また働き口が減っていくという、まさに悪循環に陥ろうとしています。今、地域の基盤産業の再整備が緊急の課題となっています。
そんな中、本県の特徴ある基盤産業の一つに観光産業が挙げられますが、これも例外ではなく、厳しい状況となっています。これまで和歌山県は、観光立県、観光によって立つ地域を標榜してきました。しかし、県内の旅館、ホテルの総数は昭和五十年のピーク時で八百十一軒あったものが現在では三百五十九軒と半減し、関連のさまざまな事業、サービスも縮小・均衡の傾向にあり、現状では残念ながら苦戦を強いられている状況にあります。今、その厳しい現実を直視し、これまでの観光のあり方をもう一度基本から見直し、知恵を絞り、何らかの付加価値をつけ、新たに和歌山の観光の価値を創造していくことが望まれています。
そこで、今回の提案としては、何とかこの観光を立て直し、地域全体の未来にも光を差していきたいといったところから観光医療産業といった概念、「いやし」を切り口として、観光と医療、中でも予防医療、代替医療、ヘルスケアの分野とを結びつけ、新産業として徹底した育成を図っていくことを提案させていただき、そのことについて知事並びに当局のご見解を賜りたいと思います。
そもそも、産業としての観光、医療は、それぞれに我が国において大きな期待を受けている分野です。観光は、旅行業、宿泊業、運輸業にとどまらず、飲食、土産、アミューズメント、広告業、さらには農林水産業、製造業、建設業など、あらゆる産業に関係するすそ野の広い総合産業であり、地域の活性化にもここが動いてくると大きな影響の出る分野です。国としても、現在の小泉内閣で観光産業を二十一世紀の日本の基幹産業として位置づけ、内閣を挙げてその振興策に取り組む決意を表明しているところです。
国交省の平成十三年度時点の調査で、旅行消費額は二十・六兆円、これによる直接の雇用創出効果は百八十一万人、旅行消費がもたらす生産波及効果は国内の全産業で四十八・八兆円にも上り、これにより三百九十三万人の雇用創出効果があると推計されています。国内産業において、戦略的にも非常に重要な産業であります。また、医療、ヘルスケアも、二十一世紀の我が国の経済をリードする数少ない大きな成長分野の一つとして見られ、超高齢化社会、医療費膨張のトレンドの中で、既に三十兆円を超える市場規模を持つものとなっています。今後も年代に関係なく、若者からお年寄りまで健康志向は強まるものと見られ、その地位は揺るぎないものと考えられています。ちなみに市場規模として、先ほど言った医療産業の分野につきましては三十兆円、国内における自動車産業は四十一兆円、鉄鋼産業においては十五兆円であり、また雇用者数を見ても、医療分野では二百万人を超える就業者に対して自動車産業では百万人弱の規模であり、今、医療産業は確実に我が国の主力産業と位置づけられています。
そんな今、医療も大きな転換期を迎えるものとなっています。二十一世紀の医療は、従来の病気になって治療することを主眼とする対症療法的医療行為から、病気にならないように事前の予防を行う予防医療へと移行すると言われています。そんな中、健康の増進、発病の予防、病気の早期発見・早期治療を目的とした第一次・第二次予防医療が注目され、また療法としては、自然環境を生かして自然治癒力を増す自然療法、東洋医学の価値を見直す代替医療、先進の科学分野を取り込むナノテク、ゲノム療法などにより、医療分野の新境地が切り開かれようとしています。この医療が病気を治療することから予防することへ移り変わっていく状況において、和歌山に大きなチャンスが訪れるのだと考えます。
そもそも、予防医療、ヘルスケアというものは観光分野との組み合わせが非常によく、特に和歌山県には豊かな自然や伝統・風土にはぐくまれた予防医療、ヘルスケアに応用可能な観光資源がたくさんあります。
幾つかを具体的に見てみると、まず農産物では、健康ブームで脚光を浴びている梅や、最近がんの予防効果で注目されているミカンなど、また水産物でも新鮮な魚介類に恵まれた地であり、DHAを豊富に含むアジ類やサバ類などの漁獲量は全国でも上位に入り、ヒジキやテングサなどの海藻類の生産量も多くなっております。また、食文化としても、茶がゆ、なれずし、サンマずしを初め、多くの郷土食が健康志向の強い商品としてその価値を高められる可能性があります。温泉は、古来より湯治として利用され、現在でもリハビリテーション等の治療、予防医療においても欠かせない資源です。自然環境としても、海洋資源なども申し分ない環境を持っており、海を活用したセラピー、例えば現代人のストレスを減退させる医学的にもその効果が認められるイルカセラピー、海辺の環境を利用するタラソテラピー、これらに代替医療の東洋医学の手法を取り入れ、自然治癒力を増加させるさまざまな可能性が考えられます。こういった恵まれた観光資源をばらばらに活用するのではなく、「人間を健康にする地域」、「いやしの地・和歌山」といった統一した切り口でそれぞれを連携させたメニュー、プランづくりを進め、より価値の高いものとして商品化していく。そしてさらに、地域全体としてブランド化して売り出していく。そういった知恵が私たちにあれば、この和歌山の観光をより価値の高いものに生まれ変わらせていくことができると考えるのです。旅館、ホテルといった観光施設なども、これまでのように物見遊山に来るお客様をただ待っている単なる宿泊施設として利用するのではなく、例えば療養機関、医療施設として一部業態を変えていくことにより新たな価値を生み出せる可能性があります。和歌山は、予防医療、ヘルスケアといった視点でさまざまな資源に恵まれた地であり、従来の観光と組み合わせる観光医療産業は、和歌山の地域の特性を十分に生かした和歌山独自の新たな新産業として大きな成長が期待できるものと考えます。今の日本の幾つかの地域でも、健康、医療を切り口としてさまざまな取り組みが始められようとしています。しかし、まだまだポイントの整備にとどまっており、地域づくりのメーンテーマ、地域全体でのブランド化を目指した取り組みを進められている地域はありません。こういった取り組みは、集中、集積させることによりスケールのメリットが出てくるもので、今地域全体として「いやしの地・和歌山」、「健康になる地・和歌山」を切り口に徹底した整備が進められれば、地域発展の可能性が大きく膨らむものと考えます。
そこで質問ですが、まず基本的なところとして、本県における観光産業の位置づけと観光産業が置かれている現状に対する認識、また今後の取り組みといったことについてどのように考えておられるか、商工労働部長にそのご見解をお聞かせ願いたいと思います。
次に、医療を産業として見る視点、またそれが二十一世紀にどういった可能性を持つものとなると考えておられるか。また、その中で予防医療、ヘルスケアといったものを地域産業として和歌山に取り入れることの意義についてどのように考えておられるか。これは、企画部長にお答えいただきたいと思います。
次に、予防医療、ヘルスケア産業と観光の融合について、その可能性をどのように考えられるか。これは、知事並びに関係部長にお答えいただきたいと思います。
次に、今後の対応として、ぜひとも具体的に今回の提案に係る調査研究を進めていただきたいと思います。また、そこでは医療事情の専門家のみならず、商品開発、宣伝広告、産業コンサルタントなど民間の専門家も含め、幅広く、そして中身の濃い検討を加えていっていただきたいと思うのですが、知事のご見解を賜りたいと思います。
最後に、ヨット・セーリング競技のナショナルトレーニングセンターの和歌山への誘致について当局のお考えをお聞きしたいと思います。
ことしに入って、この四月二日、文部科学省スポーツ青少年局が設置した諮問委員会のナショナルトレーニングセンターの設置等のあり方に関する調査研究協力者会議から中間まとめが出され、国として初めてナショナルトレーニングセンターの設置について一定の方向が示されました。これまで、大規模集中型とするのか、中核拠点を設置したネットワーク型とするのか、最終まで議論が分かれている状況となっていました。和歌山県としても、ここまでは大規模集中型の施設の誘致としてコスモパーク加太への誘致など積極的な取り組みを行い、議会においても先輩議員から質問、提案が行われてきたところです。しかし今回の報告書では、今後はトレーニングセンターの整備として、昨年、東京で国立スポーツ科学センターが設置されたことを受けて、そこを中核拠点として、特にその中核拠点では対応できない冬季競技、海洋・水辺の競技及び高地トレーニングなどの強化活動を行う競技別強化拠点を全国に分散設置し、それらを統合する形のネットワーク型ナショナルトレーニングセンターとする見解がまとめられました。今後の国における検討課題としては、設置場所の指定を行うとともに、高度なトレーニング機能を持った拠点となるよう検討を加えていくとしています。この施設の誘致は、今さら言うに及びませんが、和歌山県にとって極めて大きな意義のある事業となると考えます。
その一つとして例を挙げると、海洋型ナショナルトレーニングセンターは、日本のセーリング競技の中心的な施設となり、国内におけるヨット競技の聖地、ナショナルトレーニングセンターがある地域ということで、恵まれた自然、海、ヨットハーバー、快適なリゾート地といったイメージが大量に情報として県外に発信され、第一級の海洋リゾート地として認知されるチャンスが生まれます。オリンピック候補選手の強化場所ともなる施設で、その取材などを通じて和歌山の海がマスコミで紹介される機会もふえ、出版物等による露出も含めて、その広告効果ははかり知れません。
さて、これまでの状況としては、本県の積極的な取り組みとあわせて地元和歌山市も和歌山マリーナシティへの誘致活動を積極的に行い、たびたび日本セーリング連盟、日本オリンピック委員会へ設置に向けて要望を重ねてきたところです。こういった県市の取り組みの成果として、平成十三年九月十日に日本セーリング連盟からの要請を受ける形で、日本オリンピック委員会がセーリング競技の強化拠点として和歌山マリーナシティを正式に認定するに至っております。せっかく皆の努力でここまで来たのですから、もう一押しです。今後の急がれる対応としては、日本オリンピック委員会、日本セーリング連盟が推薦する和歌山マリーナシティについて、国からも海洋競技の強化拠点、海洋型ナショナルトレーニングセンターとして正式認定を受けられるよう積極的な働きかけを行うことがまず何よりも大切なものとなります。あわせて、認定を受けるためにも、既存施設の活用と並行して、官民を挙げたトレーニング拠点の整備充実が望まれるところです。
そこで質問ですが、まずこれまでナショナルトレーニングセンター誘致の窓口となってきていただいている教育長に、これまでの取り組みに対する評価と今後の取り組みに関してのご見解をお聞かせ願いたいと思います。
次に、企画部長にも、これは和歌山県全体にとっても、地域づくり、地域のブランド化といった視点で重要な事業と考えますが、県の将来計画と重ね合わせて、その意義、また今後の誘致に取り組む姿勢をお聞かせいただきたいと思います。
また、今後は、国に対してさまざまな交渉を進めていく地域の受け皿、窓口の整備も必要となってきます。本格的な誘致活動を進めるためには、和歌山県、和歌山市、日本オリンピック委員会、日本セーリング連盟、和歌山県セーリング連盟などから成る誘致委員会の立ち上げがどうしても必要とされると考えますが、この誘致の窓口となる体制の整備について、知事の考えておられるところをお聞かせいただきたいと思います。
以上で、私の第一問の質問とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの山下大輔君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 大変示唆に富む質問で、私も感心をしながら聞かせていただいたわけでございます。
まず、和歌山県がこれからどこへ向かうのかというふうなことで、どんなことを考えているかということです。
ご質問にもありましたように、今、日本の国自身がどんな方向へ向かうかわからないような状況の中ではありますけれども、やはりそういうふうな国の変化、世界の変化に合わせて、和歌山県について一定のビジョンを持って仕事を進めていくということは、お説のとおり非常に大切なことだろうというふうに思っております。
幾つか私が思っていることを申し上げますと、いつも言っていることですけれども、一つは、この変化の中で和歌山県がおくれたグループに入るようなことのないようにしていこうと。これだけ世の中の変化が大きくなってくると、地方自治体のあり方なんというものもどんどん変わっていっているわけです。そういうときに、ぼさっとしていたら一番最後の方へ持っていかれてしまう。常に先頭で意見を言っていて、ようやく普通かというふうな状況だと思いますので、私はそういうことで職員ともどもアンテナを高くして、そういうことの先頭に立っていこうということにしております。
それから、外へ開かれた県政ということです。和歌山県は紀伊国屋文左衛門──この間、劇がありましたけれども、昔からどんどん外へ出ていくという進取の気性のあったところです。もう一度これを生かした県づくりをしようということで、道路で言えば、例えば京奈和自動車道、府県間道路、そして高速道路の南伸、こういうものを重点的に進めて、外と連絡をとりながら外の富を和歌山へ呼び込んでくる努力をしていこうというふうなこと、そしてまた情報も外から来る情報を一方的に受けるんじゃなくて、和歌山からいろんな情報を発信していく、そういう地域になろうという努力をしております。
それから、これは私は大事なことだと思うんですけれども、普通の人が普通に思うことをやっていこうということです。というのは、一般の人が考えることというのは意外と何かレベルが低いというふうな批判をする人がいますけれども、僕は普通の人が普通に考える、何かおかしいなと思うようなことの中にやっぱりおかしいことがあるんだろうというふうな考え方です。私自身も、知事になっていろいろ既成の権限なんかが私に集まっているわけですから、いつもそういうことを自戒しながら、自分にそういう権限があるから考え方が変わっていくというふうなことのないように、いつも普通の人が考えて、普通に思うようなことに基準を合わせて仕事をしていこうというふうに思っております。
それから、県にあるものを生かしていこうということです。ないものねだりは、これからの二十一世紀には非常に難しいわけです。和歌山県にはすばらしい自然、そして培われた第一次産業、そして地場産業、こういうふうなものがあるわけです。みんないろいろ苦戦はしています。しかし、例えば農業なんかについても、大量消費型の農業であれば、これはもうはっきり言って非常に難しい。しかしながら、高付加価値、少量生産であれば、和歌山県の農産物というのは必ずしも──米に偏っていないということが非常に有利な点になる可能性もあるわけです。そういうふうなことを思い切りやっていきたいと思いますし、地場産業なんかについても繊維とか化学とか非常に厳しいわけですが、こういうふうなものも、例えばいろんな研究機関なんかと協力しながら新しい分野を開いていく。その際、国のお金なんかも大いに導入してやっていくということの中から、僕は新生面が開けてくるのではないかというふうに思っているわけです。
それから、これからの行政というのはNPOであるとか女性、こういう方々の力をどんどん県政の中に生かしていかなければならないということで仕事を進めております。NPOも相当進んでまいりましたし、それから女性の方もたくさん県の仕事の中でも活用して頑張ってもらうような形にしていっております。
それから、そうは言っても、やはり新しい産業というようなことについても努力をしなければならないということで、ITの関係でありますとか、次にお話ししますけれども観光分野での新生面を開くと、こういうふうなことで新しい分野を見出していかなければならない。緑の雇用なんかも、実は単なる雇用の問題ではなくて、広く和歌山の森林というふうなものを生かして新しい産業をつくり出していこうということの一環であるというふうに考えております。
それからもう一つは、これからまた道州制とかそういうふうなことが非常に問題になってきております。道州制にすぐに行くかどうかは別の問題といたしまして、和歌山県のポテンシャルというものを、この近畿とか関西の地域で十分認識してもらって、そしてそれに向けて集中的にその分野で和歌山が名誉ある地位を担えるような形の協力を他府県にも求めていくというふうなことも考えております。
それから、もう一つは人づくりの問題で、県の仕事においても、職員の人たちが能力によって評価され、力を発揮することによって伸びていくというふうな組織づくり、人づくりということを進めております。
それから、子供の教育ということは非常に大事だと思います。和歌山県は、ここ三年ほどの間に相当新しいことを教育委員会を中心に行っておりますけれども、こういう面をもっともっと進めていって、そして「仏つくって魂入れず」にならないように、外形だけじゃなくて内実もある教育改革ということを進めていきたいと思います。
それからもう一つ、最後に一番大事なのは、こういうふうなことは行政が行えることではないということです。これからは、県民、住民の自主自立の気持ちということが中心になってまいります。これは、日本の国が規制型の社会から自由主義型の社会──今までも一応自由主義だったんですけれども、本当の意味の自由主義社会に変化していかざるを得ない状況にあると。そういう中では、当然、県民とか市町村の住民の意識も変わっていかなければならないし、県もそういう方向の中で対応していかなければならないというふうに思っております。もしそうならなかったら、逆にそうならないものが不幸になってくるだろうというふうな社会であろうと思います。
そして、私が今一番大きく期待しておりますのは、こういう事柄を議会と共同してやっていきたいということでございます。いろいろ新しい動きが出てくるという可能性もあると思いますけれども、私はそういうふうな気持ちで頑張っていきたい。
お答えになったかどうかわかりませんが、そして施策については、はっきり言って一発で一発当てるということではなくて、「置きざお論」ということで、たくさんの置きざおを出しておく、当たるものもあれば当たらないものもあると、そういうふうな気持ちでやっております。大分当たるものも出てきていると、こういうふうなことでございます。
次に観光医療産業の導入と。これは非常に大事な視点で、これから和歌山が生きていく道の一つの方向性を示していると思います。
それはどういうことかと言いますと、今、国を挙げて新しい雇用創出ということを考えているわけです。この観光医療産業ということが進んでくれば、例えば和歌山県は実は土木建設業が六千二百数十社ありまして、千人当たりの土木建設業の会社の数というのは日本で一番です。和歌山県の指標というのは全国で四十番目ぐらいです。それが日本で一番ということは、これは非常に厳しい状況、そして公共事業が減ってきているという中で、新しい雇用口を探していかなければならない。福祉の面もあるでしょう。いろんな面があると思うんですけれども、この観光医療産業というのは、そういう面で非常に大きな役割を果たし得るのではないかというふうに思っております。
今月、経済産業省が研究会で報告書を出しておりますけれども、そういう中でもこの医療・健康サービス産業の創出ということが大事で、例えば温泉とか森林とか海洋とか、こういうふうな地域資源を活用した健康サービス、森林浴であるとか、タラソテラピー──海洋療法、体験農業、エコツーリズム、こういうものをあわせた、公民一体となったコミュニティービジネスというものを考えていくべきだというふうに言っております。これは、僕はもうそのとおりだと思いますし、和歌山県に一番ぴったりくるものであろうというふうに思っております。早急に関連の研究組織を立ち上げたいと、このように思っております。
それから、最後に海洋型ナショナルトレーニングセンターの誘致でございます。
今度七月に世界の英雄であるラッセル・クーツが和歌山へ来て、いろいろな活動をしてくれます。和歌山は、海洋ということで非常にすばらしいものが南から北の方まであるわけです。これを生かさない手はありません。そして、もうここ数年、このナショナルトレーニングセンターの誘致については、教育委員会を中心に本当に一生懸命取り組んできています。実は、国の施設を導入するというのはなかなか難しい問題がありまして、みんな取り合いになってくるんであれなんですけれども、和歌山はこの面でも非常に比較優位性があるというふうに確信しておりますし──まあ、ラッセル・クーツが来るぐらいですから。そういうことで、一昨年、一応セーリング強化センターという地域には指定されているんですけれども、これをてこに国のナショナルトレーニングセンターを呼んでくる努力ということを、これは本当にすべての努力を傾注してもやっていきたいと、このように思っております。
○議長(尾崎要二君) 商工労働部長石橋秀彦君。
〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) ご質問の健康産業の位置づけ、現状認識、今後の対応についてお答え申し上げます。
県内の観光客の入り込み総数は、ここ数年横ばいの傾向にあり、日帰り客が増加し、宿泊客が減少している状況にあります。観光は、直接的、間接的経済波及効果が大きく、経済の活性化にとって大きな役割が期待されていることから、より一層の観光産業の振興に取り組んでまいりたいと考えております。
近年、観光ニーズが多様化する中、本県の持つすばらしい自然や農林水産業、地場産業と融合した「ほんまもん体験」といった新しい観光の推進に積極的に取り組んでいるところであります。観光は、議員ご提言のように、第一次産業から第三次産業のあらゆる分野に経済波及効果を及ぼすすそ野の広い産業と考えており、そういった観点から、これまでの概念にとらわれず、観光を総合産業としてとらまえ、本県の地域資源を生かしたさまざまな分野との連携や新しい視点に立った取り組みが大切であると考えております。
次に、予防医療、ヘルスケア産業と観光産業の融合についてでございますが、これからの観光地づくりを考える場合、人々の観光志向は重要なキーワードの一つであって、本県の持つすばらしい観光資源との組み合わせにより、新しい観光スタイルの創出が期待されるものと考えてございます。
旅には、ストレスの解消や免疫力の向上など、「いやし」の効果があると言われ、特に本県には温泉を利用したクアハウスや薬草ぶろ等がございます。今後は、こうした既存施設のより一層の活用を含め、森林浴、ウオーキングやイルカとの触れ合いなど、地域資源を生かした健康づくりや「いやし」をテーマとした観光振興に関係部局と連携しながら積極的な取り組みを進めてまいります。
以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) まず初めに医療産業の二十一世紀の可能性でございますけれども、議員ご提案の医療、健康産業は、人々の生活を豊かにするとともに、産業としてのすそ野も広く、今後和歌山のポテンシャルを生かした新たな需要喚起による地域経済の活性化に大きな役割が期待される分野であると考えてございます。
本県は、美しい海や温泉を初めとした自然や高野・熊野などの歴史・文化、安全かつ安心で新鮮な農産物などに恵まれておりまして、健康、観光及び食、さらに予防医療といった観点からのポテンシャルを有しており、これらを相互に関連させた新たなサービス産業の創造が大いに期待されるものと考えてございます。
本県では、これまでも「いやし」の地である高野・熊野の世界遺産登録の推進、都会の人々に農林水産業体験などを通じて和歌山県をふるさとと感じてもらい、ひいては都会から地方への人口の逆流動を目指す緑の雇用事業や新ふるさと創り特区の認定など新ふるさと創りの推進、本県の自然や海の楽しさなどを感じてもらう「ほんまもん体験」の推進など新たな観光戦略に積極的に取り組んでいるところでございます。
議員ご指摘の予防医療、ヘルスケア産業と観光産業の融合につきましては、本県の豊かな海洋資源、さまざまな予防医学、治療といった効能を持つ数多くの温泉、豊富で安心・安全な農産物等々を組み合わせた新たな地域産業、新たな観光産業といった視点で、早急に具体的な対応を図ってまいりたいと考えてございます。
次に海洋型ナショナルトレーニングセンターの誘致についてでございますけれども、海洋型ナショナルトレーニングセンターの誘致は、和歌山の資源である海のイメージを広く全国に発信し、ヨットのみならず、海洋レジャー全般の適地としての情報を強力に後押しし、ひいては県の活性化にもつながるものと考えてございます。
なお、七月二十一日の海の日を中心に、ラッセル・クーツ氏の来県を記念して和歌浦湾で開催されるヨットレートにつきましても、和歌山の海の魅力や和歌浦湾の有するポテンシャルを広く内外に発信し、センター誘致にも資するものであると考えております。
今後とも、教育委員会、和歌山市を初めとする関係部局等と連携しながら、誘致に向けて積極的に取り組んでまいります。
以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) ナショナルトレーニングセンター誘致の取り組みについてお答えします。
本県では、平成九年から、当時の文部省、日本体育協会、そしてJOC(日本オリンピック委員会)の指導・助言をいただきながら、誘致に向け精力的に取り組んでまいりました。その間、和歌山マリーナシティはJOCから強化センターに認定され、ジュニアを含むトップアスリートの強化施設として活用されております。また、日本セーリング連盟からは、本県が風、波、海流等、自然条件や交通アクセスの利便性において最適であるとの評価をいただいております。このようなことから、誘致が実現できるよう引き続き関係機関に力いっぱい働きかけてまいります。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
十八番山下大輔君。
○山下大輔君 ご答弁をいただきましたので、再質問をさせていただきます。
まず、海洋型ナショナルトレーニングセンターの誘致について。
ご答弁では、知事を初め企画部長、教育長、それぞれに誘致に向けて積極的に取り組んでいく旨のお話をいただきましたので、ぜひそのお言葉どおり、前向きな取り組みを一貫して進めていただけるようお願いをしたいと思います。
そもそもこのナショナルトレーニングセンターを誘致する先となる和歌山マリーナシティは、県としてもこれまで多額の県費を既に投入して整備してきた場所であり、投資した金額に見合う、またそれ以上の効果を上げられる活用方法について真剣な検討が必要なところで、今回のトレーニングセンター構想については、これを千載一遇のチャンスとしてとらえ、その実現に向けてみんなで力を合わせ進めていければと思います。また、ご答弁でご指摘いただきましたように、各関係機関、団体と緊密な連携をとることも重要で、ぜひその体制づくり、誘致委員会などの立ち上げも早期に実現してもらえるよう、要望として重ねてお願いをしておきたいと思います。
次に、観光医療産業の育成について。
これも、知事の方から、本当に熱のこもったといいますか、ご答弁をいただけてうれしく思います。今、本当に和歌山も厳しいところにある、それを何とかして再建していきたい。これはもう、この議場におられる議員、知事を初め県職員の皆さん、すべての願いだと思います。一丸となって、これも一つの提案として真剣にその可能性を追求していければなと思います。
少しこの観光医療産業の視点について、つけ加えたい部分もありますので。
今、和歌山の社会構造として対応が急がれるものの一つとして、急速に進む高齢化、医療・福祉負担の増大があります。今回の観光医療産業の振興は、地域経済に与える影響、また県行政としても、地域が活性化されることによる財政収入面の可能性だけではなく、あわせて財政支出を抑える地域として、医療費膨張の抑制・抑止政策として取り組む意義は大きいと考えます。国保、老健、介護保険に係る県費の支出は平成十四年度で百五十億円を突破するものとなっていて、ここ数年を平均しても一六%といった高い伸び率を示し、これら医療給付、介護に係る県の支出予測として、平成三十五年の二十年後には約四倍にもなるとの試算も出ています。そういった状況において、単純に医療、介護、福祉サービスの水準を落とすのではなく、コストを抑制していく重要な政策であると考えています。
先ほど知事も少し触れられましたが、これは国策としても取り組んでいくべきものでもあると思います。予防医療による医療コストの削減効果として、アメリカ政府の試算で、病気予防に五ドルかければ医療費が三十ドル削減されるという報告があり、これは本当に国策として大きな意義のある取り組みであり、現在アメリカで強力に進められている予防施策の新戦略であるヘルシーピープル二〇〇〇や、我が国で計画が具体的に策定された、先ほども知事が触れられました健康日本21はまさにその一環となり、今回の政策の推進には社会的にも大きな追い風の吹いている状況であると考えます。現在の日本社会において、福祉、医療と言うと、ついつい受け身でとらえられがちな風潮がありますが、それを逆に和歌山再建のキーワードとして県勢発展につなげていければと考えるものです。
また、今回の提案では、将来的にはあくまで国内向けの内向きの視点だけではなく、外向きの視点もしっかりと持つことが大切だと考えます。関西国際空港のアクセスを最大限に活用し、国外特に近隣のアジア圏を視野に入れ、そこから多くの浮遊層を取り込むことも可能ではないかと考えます。人間の健康に対する欲求は飽くなきものです。日本でお金に余裕のある人が、現実にイルカセラピーを受けるためにオーストラリアのゴールドコーストまで出かけている現状を見ても、大いに可能性はあると思います。そもそも現状においても、日本の医療レベルはその平均として、アジア諸国の中では頭一つ出ている状況にあり、実際にアジア圏の多くの人が日本の医療を受けるために来日している状況があります。そんな中で、特に先進の医療分野として大きな期待のかかる予防医療の分野でこの和歌山が先進地となれれば、予防医療、ヘルスケア、プラス観光の振興によりアジアから来訪者を数多く受け入れられる拠点となる構想も、その可能性は小さくないと考えます。和歌山が人間の基本的欲求である健康にかかわる予防医療、ヘルスケア産業の集積地、拠点として高度に発達することが実現すれば、将来的にはこのアジアの中でも大きな存在価値を持つ地域となり、人の流れ、お金の流れをつくることが期待されます。
また、この観光医療産業の振興を和歌山県を挙げて積極的に取り組む中では、将来的には特区の構想も視野に入るのではないかと考えます。株式会社の参入問題、保険制度の壁など医療を取り巻く現状は大きな規制が立ちふさがるものとなっています。そういった部分に、和歌山独自の視点で風穴をあける取り組みが実現できれば、より早く民間の積極的な投資を呼び込み、予防医療、ヘルスケア関係の事業を和歌山に集積させることが期待されます。
ただ、この特区を視野に入れた他の地域との知恵比べには、特にスピードが必要とされます。とにかく、現状においては急ぎ検討を始めることが求められていると思います。さきのご答弁の中で、本当にスピードを上げて積極的に体制も整備して取り組んでいただけるというご答弁をいただきましたので、ぜひそのように取り組んでいただきたいと思います。
最後に、和歌山の将来ビジョンについてというところですが。
最初の質問の冒頭でもお話しましたが、この二十一世紀こそ和歌山の真価が問われるときで、私は和歌山の可能性を心から信じています。しかし残念ながら、和歌山の現状では、うつむいてしまっている大人がたくさんいる地域になっているように思います。子供は、大人の背中を無意識に見て育ちます。この地域に育つ子供たちが、前向きに夢を持って、将来への可能性を信じて頑張れる地域にするためにも、今こそ私たち和歌山の大人が顔を上げて、胸を張って頑張らなくてはいけないときだと思います。そのためには、まずは皆が頑張ろうと思える、希望の感じられる和歌山のビジョンを何としてもつくれないものかと思います。
ご答弁いただけた中で、行政運営の基本としては、県民参加、参画を積極的に推進していく、県民の自主自立のもとでこの和歌山を他地域におくれない先進の地域としていく、現在の社会情勢に即応するスピードを県行政の中にも持たせていき、和歌山のこの地域を誇りの持てるものにしていく、また和歌山からの情報発信、和歌山からいろんな提案を行っていく中で、地方主導といった国づくりを進めるという部分についても知事の強い思いが伝わるご答弁だったと思います。お聞きしていて率直に納得して、これらが実現していくとよい地域になると心から思います。私自身も同じ視点を数多く持って議員活動をさせていただいているつもりです。それらが一つ一つ実現していく中で和歌山が誇りの持てる地域に変わっていくのだと思いますが、しかし、なかなか簡単にはいかないのだと思います。それらを実現させていくためにも、できる限り理想を目に見える形であらわし、目標をつくりながら努力していくことが必要なのではないかと私は考えます。
今回、私自身初めて県議会の定例会を経験しているわけですが、この間、知事が答弁に立たれる中で、その中でも確固とした信念を端々に感じるものでありました。今の地域づくりに、また行政運営にたくさんの思いを持たれている知事であるのですから、そうであればこそ、知事の頭の中で描かれていることを、そこにだけとどめておかれるのではなくて、できるだけ広く外部に対しても周知し、またそこに寄せられる外部からの意見もしっかりと受けとめられて大いに議論をしていくといったことが大切だと考えます。今回の質問でご答弁いただいた内容に、その上にしっかりと肉づけをしていけば、誇りの持てるすばらしい和歌山独自のビジョンを描けるように思います。やはり、今こそ目に見える形で知事の考えておられる地域づくりの新たな構想、和歌山の将来像といったものをつくっていただきたいと思います。
そこで再質問として、従来の国の方針にのっとった行政計画的なものではなく、木村知事のもと、和歌山独自で考える地域の将来ビジョンといったものを、ぜひとも未来の和歌山のためにもつくっていただきたいと私は思うのですが、このことについて知事のご見解をお聞きしたいと思います。
以上、要望二点、質問一点として、私の質問を終わります。
○議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 今、マニフェストというふうなものがいろんなところで言われています。もともと私と物すごく仲のいい北川知事が言い出したとき、私は何言うてはるのかなと。ただ単なる公約のことやろうというふうな感じだったんですが、その後の動きの中でこれが日本の国を規定していくような大きなものになる可能性もはらみ出しているというふうな感じがあります。
実際、地域の総合計画というふうなものは三千三百の日本の自治体すべてでつくられていて、すべてでほとんど実現されていません。こういうふうな調査研究機関に数千万円のお金を出すだけで終わってきたというのが現実だと思います。しかも、その当時に比べても、今はもっと将来の形をあらわしにくいというふうな時代だと思います。
先ほど私が申し上げましたようなこと、そのほかにもいろんなところで講演をしたりしていることの中で、大体考えはまとまってきてはいるんですが、しかし、それも日々変わっています。実は、きょうもいいことを思いついたな、あすもいいことを思いついたなというような形でやっていくんで、それを「置きざお論」というような言い方をしているんですけれども。私自身は、コンサルタントのようなところへ委託をして、分厚い、印刷したときから倉庫へ入ってしまうようなものをつくろうというふうな気持ちは基本的にはありませんけれども、ただいずれにせよ、県民の人にいろんな形で今考えていること、それからどういうふうな方向へ県が進んでいくのかということ──関心のない人に知ってもらうというのは非常に難しいし、だめだろうと思います。正直言って、いろいろマスコミ等で発表していることを、関心があれば読んでもらえると思うんです。だから、無理に物をつくって押しつけるという気持ちはありませんけれども、しかしながら、そういうことに積極的に関心を示して、和歌山の県づくりに参画していこうというふうな県民の人に考え方を示していくということは、これは知事としての責務だというふうに考えておりますので、いろんな形で和歌山県のあるべき姿というものをこれからも示していきたいと、このように思っております。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、山下大輔君の質問が終了いたしました。