平成15年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(小原 泰議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 十九番小原 泰君。
  〔小原 泰君、登壇〕(拍手)
○小原 泰君 おはようございます。議長のお許しをいただきまして、一般質問をさせていただきます。
 先日来の長雨で、紀南においては何カ所かの道路災害が発生いたしました。県土整備部では、部長初め道路局の幹部の方々が現場で直接対応に当たっていただいたとお聞きしてございます。また、現地の建設部でも昼夜を問わず作業に当たったということに感謝いたしたいと思います。生活面におきましても、観光面におきましても、非常に重要なルートでございます。一日も早く完全復旧できるよう工事を進めていただきますことをお願い申し上げまして、質問に入ります。
 神々が宿る紀州木の国の森林整備についてお伺いいたします。
 幾重にも重なる紀州木の国の山々は、太古の昔から、山や岩、森や樹林、川や滝などをご神体とする自然信仰の精神をはぐくんできた地であります。奥深い常緑樹林や岩塊に覆われた山、また山肌に露出する特定の巨岩や水量豊かな滝など、自然物または自然の地域に神が宿るとされ、その神秘的な姿から、古来より「神々が宿る森」として崇拝の対象とされてきました。熊野信仰の中心地である熊野三山や真言密教の根本道場である高野山など、紀伊山地の各地の霊場とともに人々の心をいやす場としてのみならず、我々日本人の精神文化の形成に対しても大きく寄与してまいりました。
 このような自然環境に根差してはぐくまれた多様な信仰の形態を背景として、紀州木の国の森と一体となって形づくられている紀伊山地の霊場と参詣道が、平成十六年の世界遺産登録に向け、既に国から世界遺産センターに推薦書が提出され、本年一月には正式に受理されたと伺っております。一日も早く世界遺産登録されることを多くの県民の方々とともに心から期待するものであります。
 このような世界に誇り得る森林文化とそれをはぐくんできた豊かな森林を持つ和歌山県ではありますが、まことに残念なことに、最近、これらの森林にも、手入れ不足のまま放置されている森林や、杉やヒノキが伐採された後、植林されずにそのまま置かれているものなどがあちらこちらに散見されるようになってきております。特に日本有数の多雨地帯であり、台風の常襲地帯でもある和歌山県では、このような放置林をそのままにしておくのは山の災害防止の観点からも好ましくない状態であると考えております。
 このような現状に至った大きな要因の一つは、外材の輸入増加や個人住宅の建築様式の変化などによる木材の需要形態の変化、木材使用量の減少に伴う林業の採算性の悪化、不振にあることは容易に推測することができます。
 一例として、過去二十年余りの杉の木材価格の推移を取り上げてみましても、昭和五十五年には一立方メートル当たり四万四千円であったものが、その年をピークに下降を続け、二十一年後の平成十三年時点では一万八千五百円と、ピーク時の四一%の水準にまで下落しております。そして、それと連動するかのように木材生産量も、昭和五十五年の四十六万立方メートルから平成十三年の二十万五千立方メートルへと大幅に減少しております。このような状況のもとでは、林業家の方々がいかに森林整備の必要性と重要性を認識しても、これ以上山に資金を投入することは極めて難しい状況にあると考えざるを得ません。すなわち、森林の整備を林業という産業に任せておくだけでは、森林を健康に保ち、環境保全という観点からの森林の公益性を十分確保して発揮していくことが困難になっているということであります。
 しかしながら一方において、「二十一世紀は環境の世紀」と言われる中で、水資源の涵養や自然環境の保全、さまざまな生物の生息環境、二酸化炭素の吸収・固定を通じて地球温暖化の防止に果たす森林の役割など、森林の持つ公共的な役割がこれまで以上に大きく評価され、かつ期待される時代となってきております。このことは、環境保全の観点からも、森林整備に対するより積極的な公的関与の必要性が高まっているということにほかなりません。
 このような状況の中で、全国の自治体においてもさまざまな取り組みが始まっております。
 高知県では、「環境」と「地方分権」という二つのキーワードに沿って、高知県みずからがどのように取り組むことができるのかということを念頭に置いて、「森はみんなの公共財」という考えのもと、森林の荒廃問題を検討した結果、本年四月から個人・法人県民税に年額五百円を上乗せする超過課税方式による森林環境税を導入し、これを財源として、放置され手入れ不足になっている森林に対する間伐材等の森林整備や県民参加の森づくりの場として活用するモデル林の整備などに活用する取り組みを始めております。
 また県内では、那智勝浦町が平成十一年三月に、豊かでおいしく安全な水を将来にわたって確保することを目的に、森林の購入や水源地への植樹、育成管理などの費用とするため、那智勝浦町豊かな水資源保全基金を設置し森林整備を実施しているほか、十三年三月には、那智勝浦町の大きな財産であり町民の誇りでもある那智の滝を守るため、その源流域の森林を整備し維持管理していくため、ふるさと創生資金として配布された一億円を基金に繰り入れ、那智の滝源流水資源保全事業基金を設置し、日本の名瀑那智の滝を次代に伝える取り組みを行っております。その後十三年十二月には、両基金を合わせた形で那智勝浦町水源涵養林整備計画が策定され、購入すべき地域、整備すべき地域、維持すべき地域を選定し、地域ごとの整備方針を定め、森林の整備を行っております。
 また、今から十二年前には、林業の不振や地域の過疎・高齢化などから森林整備のおくれに危機感を抱いていた中山喜弘前本宮町長は、高い公共性を持っている森林の整備に必要な費用については山村地域だけで負担するのではなく、その恩恵を享受する都市住民等からもひとしく負担を求めるべきであるとの考え方に立って森林交付税構想を提唱し、全国に働きかけを行ってまいりました。その結果、多くの市町村の賛同を得る中で森林交付税創設促進連盟が結成され、今日では一千に近い市町村が加入する団体に成長しております。これらの活動が消極的だった国を動かし、風穴をあけ、国土保全ソフト事業として森林管理対策の充実や後継者対策などに活用されていることは十三年議会の中でも私の方から申し上げましたが、平成十五年度からは、市町村などが森林保全協定により一定の期間以上公的に管理する民有林を対象として実施する間伐材等の森林整備に要する経費についても新たに特別交付税措置二十億円が創設されるなど、目に見える成果となってあらわれてきております。
 知事は、一昨年、緑の雇用事業を提唱され、環境の保全を通じて雇用を創出し、中山間地域を活性化させるという一石三鳥の非常に斬新な事業を全国をリードする形で展開されております。そして先月二十九日には、緑の雇用事業を幅広く全国展開させるため、志を同じくする岩手県や宮城県など八県とともに都市と地方の共感を深める「緑の雇用」推進県連合を結成し、共同アピールを発表するとともに、さらに厚みのあるものとするため、関係省庁に対し総合的な施策提言を行われました。それと時を同じくして自由民主党においても、衆参両院議員五十二名が参加して、緑の雇用事業の積極的な推進を図ることを目的に「緑の雇用」議員の会が発足いたしました。「緑の雇用」推進県連合が行った共同アピール文にも記載されておりますように、私も、緑の雇用事業の中心は森林の環境保全対策であると考えております。そして、公的な関与による森林整備と森林整備を通して地域の活性化という面においては森林交付税の考え方とも共通するものであり、緑の雇用事業は、森林交付税の理念を交付税とは違った形で知事の発案により具体的に事業化したものであると考えます。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 冒頭にも述べましたように、本県の森林は、地域産業のみならず、生活、文化とも密接にかかわっていると思います。このような神々が宿る紀州木の国の森林整備、森林環境整備についてどのようなお考えを持っておられるか、ご所見をお聞かせください。
 次に、地球温暖化防止に係るCO2吸収源としての森林整備についてであります。
 地球温暖化対策については、既に我が国においても地球温暖化防止条約京都議定書が批准され、先進国の温室効果ガスの削減に法的拘束力を持つ京都議定書により六%の削減を約束しており、そのうち三・九%を森林の吸収量により確保することが十四年三月十九日の地球温暖化対策推進本部が決定した地球温暖化対策推進大綱にうたわれております。これに基づいて同年十二月二十六日には農林水産省が地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策を取りまとめ、二〇〇三年から二〇一二年の十カ年にわたって三・九%の削減を実現するため、多様な森林の整備や地域材利用の推進など、さまざまな対策を講じるとしています。また知事は、CO2吸収源としての森林整備の重要性を踏まえ、森林の整備、保全に積極的に取り組み、地球温暖化防止に貢献するため、十四年六月七日、岩手県や岐阜県など五県とともに地球温暖化防止に貢献する森林県連合を結成し、共同アピールを発表するとともに、その後、四十二都府県の賛同を得、同年七月には六つの大きな項目から成る緊急政策提案を行ったところであります。豊かな森林資源を持つ本県としては、国や市町村、森林組合、森林所有者、企業、NPO等、多くの人々と連携し、これに積極的に取り組む必要があると考えます。
 今後、緑の雇用事業を活用して国民的課題である地球温暖化防止の森林吸収源対策に県として具体的にどう取り組んでいくのか、農林水産部長にお伺いいたします。
 三点目は、現在世界遺産登録に向け申請中の紀伊山地の霊場と参詣道の森林景観保全についてであります。
 世界遺産登録推進三県協議会が発行するパンフレット等にも、今回の世界遺産登録へのキーワードとして「文化的景観」が掲げられております。そして、「「紀伊山地の霊場と参詣道」は、三重・奈良・和歌山の三県にまたがる「紀伊山地の自然」がなければ成立しなかった「山岳霊場」と「参詣道」、および周囲を取り巻く「文化的景観」が主役であり、日本で唯一、また世界でも類例のない資産として価値の高いもの」として紹介されており、「これらの「文化的景観」を守っていくには、単に神社や仏閣など文化財として指定されているものを保存すればよいというのではなく、基盤となっている自然もまた良好な状態で維持する必要があります」と記述されています。
 今後、紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産に登録された後、これら地域の文化的景観としての森林景観をどのようにして良好な状態で維持・保全していくのか、農林水産部長にお伺いいたします。
 四点目は、緑の雇用事業で森林作業に従事する人々を活用した環境林整備についてであります。
 本県は全国有数の森林・林業県であり、人工林率も全国の四一%を大きく上回り、六一%に達しております。しかし、それらの人工林が林業の不採算性などにより手入れ不足に陥ったため、県では十二年を期首とする緊急間伐五カ年計画を策定し、積極的に間伐を推進する等さまざまな施策を実施し、森林整備を行っていると伺っております。
 一方、緑の雇用事業は、森林の環境保全のために間伐などの森林整備を行い、環境林をつくることを目的とされておりますが、従来から実施している森林整備と緑の雇用事業による環境林整備をどのように区別して実施していくのか。また今後、緑の雇用事業をきっかけに新たに森林作業に従事した人たち、また従事しようとする人たちをどのように活用して森林整備を行っていくのか。農林水産部長にお伺いいたします。
 次に、JR紀勢線の利便性の向上についてお伺いいたします。
 JR西日本は、紀勢線の紀伊田辺─新宮間の特急料金を一律五百円とすることを決めたということでありますが、このワンコイン割引は最大で千三百六十円から五百円に八百六十円も安くなり、最大六三%の割引率は国内でもほとんど例がないということであります。この割引は早ければ秋からも実施されるということでありますが、紀南へ観光に訪れる行楽客はもちろんのこと、私たち紀南地方に住む住民にとっても、観光交流や地域間交流がより一層図られるなど、大きく歓迎されるものであります。今回の決定は、世界遺産登録に向けての熊野古道を初めとする紀南の観光振興に取り組んでいる県や市町村へのてこ入れとなるものであります。
 また、熊野古道への交通手段を整備しようとしている地元やバス会社と協力して、紀伊田辺と本宮や新宮間でシャトルバスを運行し、現行の路線バスでは行けない箇所をめぐってもらおうと、電車とバスのフリー乗車制度も検討しているということも聞いております。
 これらの取り組みは、デフレ不況のさなか、この区間の平均乗車率が三〇%前後と低迷していることもあって、JR西日本が観光振興とともに乗車率のアップを図ろうというものでもあります。
 紀伊田辺─新宮間での乗車数は年々減少してきております。各駅とも、一日平均乗車数は半減もしくはそれをやや上回っているといった深刻な数字となっており、観光立県を推進する和歌山県にとっても大きな問題であります。
 また、列車の運転本数の推移を見てみますと、平成五年三月には紀伊田辺─新宮間では二十本から三十二本の特急が運行されていたほか、普通列車も二十本から三十六本運行されていました。これに対し、ことし三月時点では、特急列車の運行本数については十年前と同じではありますが、普通列車は最も運行本数の少ない串本─すさみ間で十六本となり、十年前に比べ四本も減少、最も運行本数の多い新宮─紀伊勝浦間では二十三本となり、十年前に比べて十三本も減少しております。
 この普通列車は、公共交通機関の少ない紀南地方の住民にとっては貴重な移動手段であります。列車を使って通学する高校生や自動車の運転免許を有しないお年寄りにとっては大きなウエートを占めています。授業やクラブ活動の影響や病院での診察・治療がちょっと長引いただけで列車を一本乗りおくれると駅の待合で一時間余り待つといったケースも、数多く生じているからであります。
 このように、列車を利用する子供や列車を使って通院するお年寄りたちにとっては、列車の減便は深刻な問題であります。特急料金が五百円になると物すごく利用しやすくなり、ありがたいことではありますが、この値下げとは逆に、JRは普通列車を減らすのではないかと危惧しているところでもあります。
 さらに、紀伊田辺─新宮間においては平成十二年三月から、御坊─紀伊田辺間においては十四年十一月から、車掌のいない普通列車のワンマン化が実施されています。また紀伊田辺─新宮間にあっては、十一年十月にはほとんどの普通列車についてトイレ設備のない車両での運行になるなど、利用者にとっては大変不便なものとなっております。
 このほか、同区間にある全二十九駅の駅舎のうち、二十を超える駅がJRの職員のいない無人駅となるなど、JRの経営改善が進められているところであります。
 JR西日本は民営化された一企業であり、採算性を重視するのは当然の仕組みではありますが、公共性を有する企業として、このお年寄りたちの不安を解消させることも大事なことでないかと考えます。
 県とJR和歌山支社では定期的な協議の場を設けていると聞いてございますが、年々減り続けている普通列車の運行本数や利便性等、紀伊田辺─新宮間の問題についてどのような方針で取り組んでいるのか企画部長にお伺いし、質問を終わります。
 ご清聴、ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの小原泰君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 和歌山の森林整備の基本的な考え方についてのご質問でございます。
 ご質問の中にありましたように、現在、木の値段というものは低迷しておりまして、経済林的な発想でいくと、この豊かな和歌山の自然、森林というふうなものを保護することはなかなか難しい状況になっておりますし、一部の山持ちの人にすべての責任を負わせるということは基本的には難しいという状況にあるということは、私も同感でございます。
 そういうふうな中で「環境」、これがまた二十一世紀に大きなキーワードになってきている。そしてまた、「都市との交流」。こういうことをキーワードにいたしまして、環境林・交流林というふうな形で和歌山の森林を別の方から光を当てて活性化していくということを考えました。新ふるさと創りという理念もそうでございますし、それから緑の雇用事業というのもそういうことでございます。
 緑の雇用事業も、ともすれば何か山仕事に人を入れるというふうなことだけに矮小化されがちでございますけれども、そうじゃなくて大きく、山ばっかりの和歌山県のいいところを伸ばしていくトータルな施策として私は考えているつもりでございます。
 そういうことでございますので、税金だけを使って雇用をしていくということではやはり十分ではないというふうな考え方もございますので、一方には世界遺産の登録なんかとあわせて、観光というふうな面で大きくこの和歌山の神秘の森林というものに光を当てていくということを考えておりますし、それからエネルギー対策でバイオマス発電というようなことが物すごく注目されてきておりますので、そういうふうなことにも打って出たいと思っております。
 それから、もっと大きなことは、例えば公共事業にどんどん県産材を使っていく。今までは腐らないセメント──セメントでつくる、鉄骨でつくるものが一番いいというふうな発想でしたけれども、やはり環境に優しいということから言えば、腐ってくる木の方がいいと。江戸時代は、橋でも何でも皆木でつくっていたわけで、今すべてがそれでいけるというわけにはいかないと思いますけれども、そういうふうな発想の転換が必要だと思いますので、和歌山県の公共事業ではこういうものを優先して使っていくというふうなことも考えているわけでございます。
 こういうふうなことがだんだんと広がってまいりまして、先週も内閣総理大臣が委員会で、和歌山の緑の雇用事業というのが物すごくいいんだということを言っていただきました。それから、きのうかおとついもまた委員会で、これは大阪の議員の質問に対して総理大臣がそういう趣旨のお答えをされました。これは、県が始めた緑の雇用事業というものが総理大臣の頭の中にも十分インプットされて全国的に広がっていくというふうなことで、私はうれしいことだと思っているわけでございます。しかしながら、さらに和歌山の森林というふうなものをもっともっと売り出して、ここから和歌山の富を引き出していくためには、これからより一層県議会等と協力しながら新しい施策というものも生み出していく必要があるのではないかと思いますので、またいろんな形でのご示唆をお願いしたい、このように思っているところでございます。
○議長(尾崎要二君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 紀州木の国の森林整備についての三項目についてお答えいたします。
 まず、地球温暖化防止に係るCO2吸収源としての森林整備についてでございますが、国の地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策に沿い、健全な森林の育成に向けた間伐等の推進を初めとして、保安林の保全対策や路網整備の充実、また緑の雇用担い手育成対策による森林整備の担い手の育成・確保、さらには森林吸収源対策に関する幅広い国民の理解と参画に向けた森林環境教育等の推進などを一層推進してまいりたいと考えてございます。
 特に本県では、現在、緑の雇用事業により、杉・ヒノキ林の間伐を強度に実施することによる広葉樹との混交林化の促進や適地に適正な森林更新を進める観点から常緑広葉樹の植栽を進めるなどの森林の活力を高める環境林整備を推進しているところでございまして、今後ともこうした取り組みなども含めて総合的な森林整備を進め、森林吸収源対策に積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 次に、熊野古道等世界遺産登録後の森林環境保全についてでございますが、県では平成十三年度から緑の雇用事業を活用し、熊野古道や高野山町石道の周辺森林において、手入れ不足のために見晴らしが悪くなっている箇所につきましては枝払いや抜き切りを行い、古道からのすばらしい眺めを取り戻せるよう努めているところでございます。また、植栽後間伐されずに荒廃した森林、あるいは風倒木により美観を損ねている森林につきましても、同様の作業により風景の美化に努めているところでございます。このほか、伐採後植栽されずに放置されたままの箇所につきましても、広葉樹の植栽などにより、自然環境豊かな森林づくりに努めているところでございます。
 世界遺産登録後におきましても、地域の関係者から成る熊野古道周辺森林整備検討会や高野山町石道周辺森林整備検討会などと連携しながら、緑の雇用事業の活用により、多様で美しい森林づくりを進めてまいりたいと考えてございます。
 次に、緑の雇用で森林作業に従事する人たちを活用した環境林整備についてでございますが、林業経営を目的としている森林については各種補助事業により森林の整備を進めてございます。
 一方、採算がとれず、林業経営が放棄された人工林や周辺環境との調和の面から広葉樹林に誘導する必要がある人工林など、従来からの補助事業だけでは整備が進まない森林がふえてございます。緑の雇用事業では、これらの森林を森林所有者と市町村とが環境保全協定を結び、強度な間伐により針葉樹と広葉樹が入りまじった混交林とするほか、放置された伐採跡地については広葉樹を植栽するなど、環境に配慮した多様で豊かな森づくりを行うこととしてございます。
 今後、緑の雇用事業を第一ステップとして、さらにこの事業に従事している方々に環境林の整備に携わっていただくため、緑の雇用推進県連合の八県が共同で地球温暖化防止に向けた新たな環境林整備事業の創設を国に対して強く働きかけているところであり、その実現に向け、一層努力してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 企画部長野添 勝君。
  〔野添 勝君、登壇〕
○企画部長(野添 勝君) JR紀勢本線の紀伊田辺─新宮間の普通列車の利便性向上についてでございますが、議員ご指摘のとおり、利用客の減少に歯どめがかからない状態でございます。またJRは、完全民営化に伴い、減便、ワンマン化などの経営改善策を進めてきたところでございます。
 現在のところ、普通列車のさらなる減便の予定はないとのことでございますが、県といたしましては、沿線市町村とともに利用客を一人でもふやすことや駅でのにぎわいをつくっていくことが最も効果的な対策であるとの認識のもと、地元の広報誌等を利用した住民への啓発や、カヌーレンタル等の観光拠点としての古座駅、また介護拠点としての紀伊富田駅などといった駅舎の有効活用を進めてきたところでございまして、今後も利用促進の啓発や無人駅舎等の活用をさらに進め、トイレなし列車対策等についても鋭意協議をしてまいります。
 来年度の世界遺産登録を控えて沿線への注目度も高まる中、路線の活性化と利便性の確保について、より積極的に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、小原泰君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十二分休憩
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