平成15年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(全文)


県議会の活動

平成十五年六月 和歌山県議会定例会会議録 第二号
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議事日程 第二号
 平成十五年六月二十日(金曜日)午前十時開議
  第一 意見書・決議案
  第二 議案第百号から議案第百十四号まで(質疑)
  第三 一般質問
会議に付した事件
   一 意見書案
   二 議案第百号から議案第百十四号まで(質疑)
   三 一般質問
出席議員(四十六人)
     一  番       須   川   倍   行
     二  番       尾   崎   太   郎
     三  番       谷       洋   一
     四  番       新   島       雄
     五  番       小   川       武
     六  番       吉   井   和   視
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       町   田       亘
     九  番       大   原   康   男
     十  番       浅   井   修 一 郎
     十一 番       山   田   正   彦
     十二 番       坂   本       登
     十三 番       向   井   嘉 久 藏
     十四 番       大   沢   広 太 郎
     十五 番       平   越   孝   哉
     十六 番       下   川   俊   樹
     十七 番       東       幸   司
     十八 番       山   下   大   輔
     十九 番       小   原       泰
     二十 番       前   芝   雅   嗣
     二十一番       木   下   善   之
     二十二番       山   下   直   也
     二十三番       井   出   益   弘
     二十四番       宇 治 田   栄   蔵
     二十五番       浦   口   高   典
     二十六番       藤   山   将   材
     二十七番       原       日 出 夫
     二十八番       玉   置   公   良
     二十九番       野 見 山       海
     三十 番       冨   安   民   浩
     三十一番       尾   崎   要   二
     三十二番       阪   部   菊   雄
     三十三番       花   田   健   吉
     三十四番       角   田   秀   樹
     三十五番       前   川   勝   久
     三十六番       江   上   柳   助
     三十七番       森       正   樹
     三十八番       長   坂   隆   司
     三十九番       中   村   裕   一
     四十 番       新   田   和   弘
     四十一番       松   坂   英   樹
     四十二番       雑   賀   光   夫
     四十三番       藤   井   健 太 郎
     四十四番       村   岡   キ ミ 子
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       和   田   正   人
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
     知事         木   村   良   樹
     副知事        中   山   次   郎
     出納長        大   平   勝   之
     理事         垣   平   高   男
     知事公室長      小 佐 田   昌   計
     総務部長       宮   地       毅
     企画部長       野   添       勝
     環境生活部長     津   本       清
     福祉保健部長     白   原   勝   文
     商工労働部長     石   橋   秀   彦
     農林水産部長     阪   口   裕   之
     県土整備部長     大   山   耕   二
     企業局長       西       芳   男
     教育委員会委員長   赤   松   壽   男
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員    高   垣   博   明
     警察本部長      高   綱   直   良
     人事委員会委員長   青   木   孝   祐
     代表監査委員     藤   谷   茂   樹
     選挙管理委員会委員長 北   村   亮   三
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       中   原   洋   二
     次長         佐   竹   欣   司
     議事課長       島       光   正
     議事課副課長     藪   上   育   男
     議事班長       鷲   山       智
     議事課主任      尾   崎   善   亮
     議事課主査      土   井   富   夫
     総務課長       土   井   陽   義
     調査課長       宗   野   幸   克
 (速記担当者)
     議事課主任      吉   川   欽   二
     議事課主任      鎌   田       繁
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課主査      保   田   良   春
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  午前十時二分開議
○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。
 過日提出のあった議案第百二号は職員に関する条例案でありますので、地方公務員法第五条第二項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、文書により回答がありました。お手元に配付しておりますので、ご了承願います。
  〔巻末の「参考資料」を参照〕
  【日程第一 意見書・決議案】
○議長(尾崎要二君) 日程第一、和議第一号「「三位一体の改革」に関する意見書(案)」を議題といたします。
 案文はお手元に配付しております。
 お諮りいたします。本案については、提出者の説明等を省略し、これより直ちに採決いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) ご異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 和議第一号を採決いたします。
 本案を原案のとおり決することに賛成の諸君は、ご起立願います。  〔賛成者起立〕
○議長(尾崎要二君) 起立全員であります。よって、本案は原案のとおり可決されました。
  【日程第二 議案第百号から議案第百十四号まで】
  【日程第三 一般質問】
○議長(尾崎要二君) 次に日程第二、議案第百号から議案第百十四号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 十六番下川俊樹君。
  〔下川俊樹君、登壇〕(拍手)
○下川俊樹君 改選後初めての六月議会でございます。冒頭に質問をさせていただく機会をいただきましたことに、まず心から感謝を申し上げたいと思います。本会議冒頭での木村知事の説明を踏まえて、当局の所信をお伺いしたいと思います。
 初めに、分権型社会の実現を目指した国と地方の財源のあり方、すなわち三位一体改革についてお尋ねをいたします。
 戦後の日本は、目覚ましい経済発展を遂げてまいりました。しかしながら、この経済成長の中で、これまでの日本経済の成長に寄与してきた制度や仕組みが逆に新たな展開を阻害する要因になってきております。そのような中で、現在の停滞する日本経済や国民の経済社会に対する閉塞感を打破し、日本の将来を展望する上では、新世紀維新、すなわちこれからの日本が再び活力を発揮するための構造改革が必要であり、そのためには自立した地方が多様な個性と創造性を十分に発揮し、お互いに競争し、活力を引き出していく真の地方分権社会の実現が不可欠であります。そのためには、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲の三つの分野を、まさに三位一体で改革する必要があります。
 国では、去る十八日の経済財政諮問会議において、国庫補助負担金の四兆円程度の削減と、その中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについては八割程度、義務的な事業については徹底した効率化を前提に所要全額を税源移譲する、また地方交付税については、地方財政計画を計画的に縮小し削減するとともに、財源保障機能を縮小していくということなどが示され、今後閣議で決定されるということでありますが、具体的な作業は今後に残されるということで、その動向が大きなかぎを握ることになります。
 しかし、いずれにしましても、この三位一体改革、地方分権改革の実現を目指す以上、我々地方自身の改革も必要になってまいります。これまで、自主財源に乏しく、財源の多くを国庫補助負担金や地方交付税に依存してきた本県にとりましては、地方の事務事業に見合う税源移譲を求めるとしても、非常に大きな影響があると言わざるを得ません。今後の県政運営について、一大転換期とも言うべきときを迎えて、知事のお考えをお伺いしたいと思います。
 次に、東南海・南海地震対策についてお尋ねをいたします。
 去る四月十八日、各新聞紙上は東南海・南海地震に関する記事一色となりました。中央防災会議の調査結果によれば、東南海・南海地震が同時に発生した場合、想定される地震の規模はマグニチュード八・六、地震による被害は関東から九州にかけての広い範囲に及び、建物の全壊が最大で約六十二万棟、死者が最大で約二万人、経済被害については約五十六兆円となっております。本県においても、場所によって震度六強以上の激しい揺れが発生し、特に県南部では最大七メートル以上の津波が到来して、県全体で建物の全壊が最大で約八万棟、死者が最大で五千人にも達するなど甚大な被害が想定をされているところであります。この調査結果を踏まえて、東南海・南海地震に備えた防災体制の強化を早急に進めていくべきであると、改めて確信をした次第でございます。
 そこでまず一点目として、防災センターと現庁舎の整備についてお伺いをいたします。
 県では、防災センターの基本設計にいよいよ着手するとのことでございますが、東南海・南海地震に備えてどのような整備を行っていくのか。また、防災センターを分庁舎として整備するとのことでありますが、分庁舎の整備に伴い、現庁舎の整備をどのようにしていくのか、検討する必要がございます。防災センターができたとしても、議会棟を含めた現庁舎が壊れてしまっては何にもなりません。昨年、諸般の情勢から、当面、建てかえより現庁舎の耐震補強を検討するとの議会答弁があり、耐震改修を念頭に置いて今回の基金条例の改正議案も出されたと思いますが、今後、耐震改修を含め、現庁舎をどのように整備されるのかについてお伺いをいたします。
 二点目として、津波被害に備えた高速道路整備についてお伺いをいたします。
 津波に備え最も大切なのは迅速な避難であり、今後の取り組みとして防災体制の整備や避難訓練などが重要なのは言うまでもありません。特に、地震後の救助活動や復旧活動において、避難した人、けがをした人、子供、お年寄りの命を守り、生活を守るため、緊急輸送道路が重要な役割を果たします。
 ご承知のとおり、紀南地方においては、多くの町や集落は直接海に面したところに位置してございます。そして、これらの町や集落を結ぶ幹線道路は国道四十二号一本だけに頼っています。しかしながら、この国道四十二号は台風時の高潮において、幾度も越波で通行どめになっているなど海岸に近く、また多くの河川を河口付近で横切ってございます。すなわち、津波に対して大変脆弱であると言わざるを得ません。海岸線より高い位置を走るため津波の被害を受けず、かつ耐震性も高い高速道路である近畿自動車道紀勢線は、この国道四十二号にかわって被災した各沿岸地域に緊急物資を運び、また救急活動を担う、まさに紀南住民の生命線であり、その早急な整備が不可欠であると考えます。
 知事も、かねてから高速道路の整備に熱心に取り組んでおられますが、改めて東南海・南海地震に備えた緊急輸送道路の確保という観点から、高速道路整備に対する今後の取り組みをお示しいただきたいと思います。
 次に、コスモパーク加太についてお尋ねをいたします。
 今回の問題は、和歌山県にとってかねてからの課題であるとともに、今後の県政に多大な影響を及ぼす案件であることから、議会においても県政の責任の一翼を担う立場、県民の代表の立場から検討委員会を設置、検討をしたところであります。私も委員の一人として五回にわたる委員会に出席をしたところでありますが、委員会においては、関西国際空港建設に伴う加太土取り事業やその後の土地利用計画等に対する県の関与などを中心としたコスモパーク加太の経緯、今回の問題に対しての弁護士や国等、専門家の意見を踏まえての法的な問題、なぜ現在の借入金に債務の保証を行っていないのかを中心とした現在までの金融機関との交渉経過などについて白熱した議論が交わされたところであります。その結果、コスモパーク加太は、今後とも県主導で秩序ある整備を行うべきであり、今回の公社債務対策については、県、土地開発公社、そして金融機関にはおのおの責任があるところであり、三者それぞれ相応に負担を分かち合い、協調することで解決すべきと委員長から報告されたところであります。
 私は、今回の問題を考えるとき、関西国際空港という国家プロジェクトへ県が積極的に参画する中で、土砂採取事業を公社に代行させてきたこと、跡地利用に対するさまざまな計画を策定したものの実現されないまま今日に至った経過など、県は大きく関与してきたことは否めない事実であると思っております。そこには、和歌山県の熱き思いが込められ、今後についてもコスモパーク加太の土地は和歌山県にとって県土づくりの大きな柱であるとともに、将来に向けて夢のある土地として引き続き県主導で整備していく必要があるものと確信をしております。このように今後の整備を考えたとき、また現実問題として、公社には多額の借入金があるという事実を直視したとき、私は委員会報告にありますように、三者が応分の負担による協調した解決策を図ることが緊要であると認識をしたところであります。
 知事におかれても、今回の委員会の報告を重く受けとめ、早速、金融機関と交渉を開始したとのことでございました。本問題解決に向け、知事はどのような決意で対応されているのでしょうか、お伺いをいたします。
 次に、グリーンピア南紀についてお尋ねをいたします。
 グリーンピア南紀は、昭和六十一年の開業以来、宿泊者五十二万人、日帰り客を含めると二百四十三万人に利用され、地元の観光の核として経済振興や雇用の面において大きな役割を果たしてまいりました。この施設は、全国に十三カ所ある大規模年金保養基地の一つとして設置されたものであり、敷地は那智勝浦町と太地町にまたがり、約百十万坪の敷地に、宿泊はもとより、スポーツ、レクリエーション施設を備えた県内屈指の施設であります。営業が始まった昭和六十一年は、日本全体が右肩上がりで、余暇人口の増加により、テニス、グラススキー、ミニゴルフなど屋外レクリエーションの需要を満たせるこの施設に地域全体が大きな期待を寄せたものであります。しかしながら、バブルの崩壊とともに始まった長引く景気の低迷、また国内旅行より海外旅行へと趣向が変わる中で、国の方針もあり、本年三月末をもって営業が停止され、十七年間の歴史に幕を閉じたことは、地元にとっては大変寂しいものであります。この間、銀行からの借入金の問題が発生し、今回、財団法人グリーンピア南紀がその解決策として和歌山地方裁判所に民事調停を申し立てたとのことでありますが、その民事調停についてお伺いをいたします。
 まず一点目として、財団法人が民事調停を申し立てた背景はどうなのか、また県及び両町が調停に参加する理由があったのか。
 二点目として、当初県は県費投入に対し難色を示したとの記事がありましたが、五月十六日に調停委員会から示された調停案に対して、県としてそれを受け入れていこうとしておりますが、なぜそうした方針に至ったのか、知事の答弁を求めるものであります。
 さらに、今後はあの広大な敷地を持つ施設の有効利用をいかに図っていくかが大きな課題であると考えます。六月末をもって、県はこの施設を厚生労働省の外郭団体である年金資金運用基金に返還すると聞いておりますが、今後の跡地利用について、県としてどのような役割を果たしていくのか、この点について福祉保健部長から答弁をいただきたいと思います。
 次に、緑の雇用事業の農業への展開についてお尋ねをいたします。
 緑の雇用事業は、一昨年九月の発表以来、大変な反響を呼んでございます。今や、失業対策いわゆるセーフティーネットの切り札として、また疲弊する林業の救世主として国の施策にも取り上げられるなど全国的広がりを持つまでになりました。先駆けとなった本県においては、百名を超える都会からのIターン者が定住するなど大きな成果を上げております。とりわけ、新しく住民になられた方が、既に地域の中に溶け込み、地域の新たな活力源となっている話などを伺うと、少子・高齢化に苦しむ地域を長らく目の当たりにしてきた私にとって、それこそ暗やみの一隅に光を見出した気持ちになります。今後も、県を挙げて積極的に取り組んでいくべき事業であると確信をしているところであります。
 さて、去る五月二十三日付の読売新聞に掲載された寄稿文で、これからは林業分野に限らず、農業分野にもこの取り組みを広げていくことを知事は表明をされてございます。私たちは、農山村から都会への人の移動は必然のものとして、半ばあきらめにも似た気持ちで眺めてまいりました。この平成の大不況とも言うべき時代を逆手にとり、都市から農山村への人口の逆流動を生む、いわば時代の転換への壮大なる挑戦をこの農業版緑の雇用事業で仕掛けていくわけであります。しかしながら、知事が寄稿文の中でも書かれているとおり、就農は林業に比較し、さまざまな形態があります。本格的な有機農業に取り組む若者もあれば、定年退職後のついの住みかを田舎に求め、ゆったりと農業を楽しむ人もあるでしょう。また、週末だけ農業にいそしみたいという人の需要もあることと思います。こうした多様なニーズにこたえていくためには、従来の農業支援策の枠を超え、雇用対策、教育、文化、観光、さらには高齢者対策など、幅広い施策の展開が必要であると考えます。これから制度がスタートするわけであります。知事の理念、そしてこれからの取り組みの方向をお伺いするものであります。
 次に、市町村合併についてお尋ねをいたします。
 平成十七年の合併特例法期限内の市町村合併を目指して、全国あるいは県内での動きが活発であります。改めて、原点に返る意味から、いま一度市町村合併の意義と課題を整理しておきたいと思います。
 なぜ市町村合併が議論の俎上に上ってきたか。第一点は、昭和三十五年の合併によって誕生した全国三千三百の市町村という行政単位が、現在の私たちの生活様式に合わなくなってきていることであります。すなわち、情報や交通といった私たちの日々の生活を支えるいわゆる日常生活圏が、道路や通信手段の整備・発達により飛躍的に拡大していることが挙げられます。第二点としては、地方分権といいますか、これからの地方自治体は、これまでの中央依存のみでなく、みずからの努力と責任において地方自治を進めていかなければならないという地方自治体を取り巻く環境の変化も挙げられます。地方の財政基盤を強化するとともに、行政効率を高め、高度化、多様化する行政ニーズに対応しなければならないといった背景が二点目として指摘できます。
 しかしながら、四十年間なれ親しんできた現在の行政組織であります。住民にとって、合併による不安、課題も大きなものがあると思います。一番よく耳にしますのが、中心地と周辺部の格差の問題であります。行政関連施設や医療、商業、教育あらゆるサービスが中心部に集約され、遠いところは置き忘れられるのではないかといった不安があるわけであります。
 今、県内各地の合併問題に目を転ずれば、南部町と南部川村のようなモデルケースとも言うべき理想的な合併の形もあれば、答えを求めてかなり苦戦をしている市町村もまた多数見受けられるといった現状であります。
 私の地元とも言うべき新宮、東牟婁に例を求めてみたいと思います。本地域では、本宮町が田辺圏域への合併を選択し、「新宮・熊野川・北山」、「勝浦・太地」、そして「古座・古座川・串本」の四つのブロックに編成をされようとしてございます。このことは、住民の方々が一生懸命考え、悩み、その上で選択された結果でありますから、私もスムーズに合併事務が進むことを願う者の一人でございます。しかしながら、いま一度合併論議の背景、原因を改めて考えてみますと、こうした細分化された合併では、さきに申し上げた種々の問題、課題に対する答えが見出せるのか、さらには合併の効果として期待されている行政サービスの向上、広域的、一体的な町づくり、行財政の効率化と強化、地域のイメージアップといった面が満たされるのでありましょうか、私はいささか疑問を感ずるものであります。
 そこで、知事にお伺いをいたします。
 第一点は、平成十三年一月に出された市町村合併推進要綱の取り扱いであります。この中では、市町村の合併パターンが示されています。もとより参考資料であり、これをもとに地域の論議を待つといったたぐいの資料であると思いますが、少なくともこの段階では、こうあった方がいいな、こうしてほしいなという県の意思が込められていたのではないかと思います。市町村合併の事務手続が最終の段階を迎え、市町村の苦悩が県内各地から聞こえてまいります。県は、合併パターンで示したこの意思を現時点でどう位置づけ、市町村の判断に対してどう指導し、対処しようとしているのか、見解をお伺いいたしたいと思います。
 第二点は、第二次の合併についてであります。私は、先ほども申し上げましたが、当面の取り組みは理解するものであり、応援する立場であります。しかしながら、長期にこの問題をとらえれば、より強い自治体、より自立した自治体を求めて、もう一段の大合併があってしかるべしとの立場であります。この点に関する知事のご所見をお伺いいたしたいのであります。
 最後に、私の地元の新宮市、熊野川河口大橋の建設に係る要望であります。
 地域の方々、四千名弱の署名を今ここにお持ちをして、知事にその熱意をお伝えしたいと思います。(現物を渡す)
 新宮市内の国道四十二号は、和歌山市の方面から走りますと、国道百六十八号、すなわち新宮から熊野川、本宮を経て奈良に通ずる国道の分岐点までは片側二車線の立派な道路に整備されていますが、ここから熊野川堤防までは市内の中心部を走ることとなり、また熊野川を渡る橋が一本しかないため、一日当たり二万二千台以上の交通量があり、慢性的に交通渋滞を引き起こしてございます。しかしながら、平野部の少ない新宮市にあって、この部分を拡幅することは大変難しい問題であると言わざるを得ません。私は、県会議員に当選直後から、こうした新宮市特有の立地条件を背景に、海岸沿いの新線建設を強く訴えてまいりました。県道あけぼの広角線の建設整備であります。おかげさまで、着実に整備を進めていただいてございます。この路線の持つ意味は、言うまでもなく、新宮市内のバイパス機能であります。さきに申しました四十二号の現状と海岸沿いの県道の役割を考え合わせ、私はこの県道を熊野川河口大橋として延長し、三重県の海岸部と直線で連絡してはどうかと考える次第であります。また、事業手法としては、三重県と和歌山県の合同プロジェクトとして建設されることを提案するものであります。この問題につきましては、折に触れ要望、提案をしてまいりましたので、今回も要望としてとどめておきますが、引き続きこの問題を取り上げてまいりますので、次回は確たる答弁を望むものでございます。
 以上で、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの下川俊樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの質問にお答えを申し上げます。
 まず、第一点の三位一体の改革でございます。
 一昨日、経済財政諮問会議において、総理が決断されて、一応数値目標も入った形での三位一体の改革の中身が出てきたわけでございます。私は、基幹的な税源の移譲ということも含めた形になっておりますので、これは今の時点ではなかなかいい案だというふうに評価しているわけでございますけれども、早速、閣議了解が難しいというふうな動きも出てきておりまして、今後こういうふうな動きは予断を許さないものだというふうに思っております。
 実は、基本的にはこれはこれからの政治過程の中で決まっていくことだと思いますけれども、三位一体──税源は譲らないわ、交付税、補助金は減らすということになると、これはもう和歌山県と和歌山県下の市町村が立ち行かないことになりますので、そういうことにならないように、引き続き声を上げながら、そしてまた具体的な提言をし、地方分権ということの実を上げていくように進めてまいりたいと、このように思っております。
 それから、防災センターと庁舎の整備でございます。
 ご案内のように、東南海・南海地震が三十年以内に四〇%の確率で起こると、しかも全体で二万人以上の方が亡くなることが予想されるというふうな大変厳しいことが示されているというふうな中で、和歌山県には防災センターがございません。これを早急に整備しないといかんということで、以前から議会にもお諮りしてきたところでございますけれども、ようやく場所も決まって、大体こういうふうな形でしていこうというふうなことが出てまいりました。その際、この庁舎、議会棟を含む庁舎、それから警察の庁舎、これ自身の耐震がおぼつかないというふうな状況でございますので、これも三位一体といいますか、一つは防災センターを整備する、それから防災センターとあわせて、一つのビルをつくるときには、そちらにこちらの庁舎の幾つかの部分を移せるような形にして分庁舎的にして、今いろいろ機構改革を行うものの、廊下なんかはもう荷物でいっぱいになっていますので、そういうふうな状況を解消するということ。それからこの庁舎、そして警察──警察がつぶれては地震対策にもなりませんので、そういうことをやりたい。その際、財源が必要なわけでございますけれども、なかなか今新しい庁舎をつくるというほどお金もたまっておりませんし、そういう形にもなかなか難しいという中で、今の基金というふうなものを有効に使わせていただきたいということで今議会にご提案を申し上げたいというふうに考えているところでございます。
 それから次に、津波と高速道路の関係でございます。
 先年来、和歌山県にとっては高速道路の南伸は命の道であると、絶対に大事であるということで、ありとあらゆるところで訴えてまいりました。都市の人を中心に田舎の方の高速道路は要らないというふうな声があったわけですけれども、和歌山県が発展していくためには高速道路の南伸なくしては考えられない。そのときに、時あたかも東南海・南海地震の問題が出てきました。これからは四十二号線一本では人の命は守れないということで、この高速道路を命の道として整備していくということで、初めは六月をめどに直轄方式の高速道路の整備をどこをするかということが決まる予定だったんですが大分延びておりますけれども、この和歌山の南の方の路線というふうなものがちゃんと採択されていくように、この高速道路は防災の問題として大事なんだということを訴えていこうということで、来月、高知県の知事と徳島の知事と三重の知事と私と、それからNHKの解説委員の方なんかで東京でシンポジウムを開きまして、こういう面で高速道路が大事だという新しいことを訴えかけていきたいと、このように考えております。
 それから、コスモパーク加太の問題でございます。
 これにつきましては、先般来、議会で本当にもう全員出席というふうな中で検討委員会を五回にわたって開いていただいて、本当に真摯な議論を尽くしていただいたことに、私は非常に感謝しているところでございます。
 非常に大きな問題でございますし、金額的にも大変な問題、そして法的な問題と実態の問題の乖離とかいろいろな問題があるわけでございますけれども、議会の方から一定の考え方というふうなことが示されましたので、その考え方に沿って、今、金融機関と鋭意交渉を進めているところでございます。これは県民の利益ということが第一義でございますので、これをおろそかにはできませんけれども、そういう姿勢のもと、そしてまた議会の考え方を基本にした交渉がまとまれば今議会にも議案を出していきたいと思いますし、いずれにせよなかなか難しい問題でございますので粘り強く交渉をしていきたいと、このように考えております。
 次に、グリーンピア南紀の問題でございます。
 これは、すばらしい施設であったわけでございますけれども、しかしながら、時利あらずということで赤字がどんどん累積するというふうな中で、この清算ということを決めたわけでございます。そういうふうなときに、清算をするに当たって、県、そしてまた地元の二町から出していたお金があります。これをどういうふうに処理するかと。これも今の三セクの扱いの中で非常に難しい問題になったわけでございます。実態と法的な問題の乖離ということで非常に難しかったわけでございますけれども、これについて、やはり対応を考えるときにはガラス張りでしていかなければならない。私は、今は行政というのは広く皆さんが関与する中で物事を決めていくということが第一義だと思っておりますので、このことについてもいろいろ意見があった中で地方裁判所の調停というふうな、日本では裁判所が一番公正ということになりますので、そこにゆだねたわけでございます。そして、そこからこういうふうな県と地元の二町にも責任があるので負担をしなさいというふうな調停案が示されたので、それにのっとって対応しようと、こういうふうなことを決めたわけでございます。
 次に、緑の雇用を農業分野にということでございます。
 非常にご理解のあるご質問をいただいて喜んでいるところでございますけれども、緑の雇用、おかげさまで議会のご理解も得て、相当全国的な事業になってまいりました。しかしながら、スローライフといいますか、ゆとりのある生活をしたいという人は、何も森林作業をしたいという人ばかりではございません。どちらかといえば、遊休農地とかそういうふうなものを使って農業にいそしみたい、それから週末等に来て、いろんな形で地域で活動して帰りたい、そういうふうな多様なニーズがあるわけでございます。和歌山県の場合、隣に大阪なんかもありますので、そういうことへの対応をしやすい県ではないかということで、そしてまたそれが交流の中から和歌山県に元気をもたらすのではないかということがありまして新聞に投稿して動きを始めたわけでございます。これには農林水産省も非常に乗り気になってくれておりまして、来年度の予算からまた一つの動きが出てくるかもしれません。しかしながら、これも和歌山発の動きでございますし、トータルでこういうことをやっていくということによって、今ともすれば農業というのは、特区を設けて株式会社で大農的に機械化でやるという方向ばかりが注目されますけれども、逆に言えば小さく、そしてまた新しい人、新しい血を入れてきて、付加価値の高いものをやっていくというふうな行き方も僕はあってもいいと思うし、和歌山県ではむしろそういうものの方が似合っているのではないかというふうに思いますので、これをこれから大きな流れにしていきたいというふうに考えているわけでございます。
 最後に、市町村合併についてのご質問でございます。
 市町村合併につきましては、ご質問にありましたように県も合併パターンを示しまして、まあ今の時点ではこんな形が一番いいんではないですかというふうなものを示してやってきたんですけれども、議員もご案内のように、実は地元にはいろんな事情があったりして、それが今ちょっと千々に乱れてきているというふうな状況ではあるんですけれども、しかしながら関係の市町村長さん方には自分の政治生命をかけて一生懸命頑張っていただいているということも、これまた事実であろうと思います。なかなか理想的な形ではない中で、それぞれがその方向を今模索しているというところであろうと思います。
 そうしたら、一次はこういうふうな形でいいけれども二次はどうなんだというふうなご質問でございます。
 これは、最初にも申し上げましたように、三位一体の改革、これもなかなか難しいです。だけれども、こういうことが実際に行われてくると、これは国も大変だけれども地方ももっともっと自立しなさいという話になってきて、今、形だけで幾つかのところが市町村合併しているというふうな状況で十分対応できるものではないと僕は思っております。だから、今回の合併ということを一次の合併として、二次的にはまたそれを踏み台というか土台にしてまた大きな合併ということが模索されるような時期が必ず来ると。しかも地方制度調査会においても、今の合併特例法失効後の新しい法律の枠組みまでもう検討が始まっているということでございますので、県といたしましても、そういうふうな観点の中から、今頑張っている合併については力強く支援していく、そしてまた将来的にはそういうふうな大きな方向も見据えて対応していきたいと、このように考えているところでございます。
○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) グリーンピア南紀の跡地の利活用についてお答えいたします。
 現在の基地施設は、今月末をもって年金資金運用基金に返還することとしております。返還後、当面の間、那智勝浦町及び太地町が基金から維持管理を受託する予定となっており、この間、基地施設の野球場、テニスコート、園地等については住民に開放していく方向で基金と協議中でございます。
 なお、跡地につきましては、現在、那智勝浦町と太地町で基金からの購入も含め利用方法等検討されておりますが、今後は県も二町の検討会に参画し、情報収集し提供するとともに、地域経済や福祉の向上等に資する跡地の有効利用等を検討してまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(尾崎要二君) 以上で、下川俊樹君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十八番玉置公良君。
  〔玉置公良君、登壇〕(拍手)
○玉置公良君 おはようございます。
 きょうは、白浜の中央公民館の婦人学級の皆さん方が議会傍聴に来ておられます。まあ、元気に頑張って一般質問をしたいと思います。
 まず、私たち、今議会で新しく新生わかやま県議団を結成させていただきました。私たちは幾つかの目標を掲げていますが、まず第一に、政策を中心に取り組んでまいりたいと考えております。特に議員の政策提案条例が今まで和歌山県議会では事例がないため、その実現を目指すことを一つの共通の目標として県政に尽くそうと決意をしています。
 ところで、本題に入る前に、ちょっと皆様に報告をさせていただき、お礼を申し上げたいと思います。
 それは、昨年の十二月議会において、私の地元の椿地区の県立軽費老人ホーム無憂園舎の取り壊し猶予とその有効利用について、地元の女性が中心となって立ち上がり、訴えましたところ、知事のご理解を得て、現在、地元の関係者間で歴史のある椿温泉を使っての湯治の復活と予防医学を使っての青写真ができつつあります。今後、県議会、県ともいろいろご支援をいただくことがあると思いますが、どうかよろしくお願いいたしたいと思います。
 さて本題に入りますが、きょう取り上げる環境問題は、既に昨年六月議会で一度取り上げたのですが、例の地球温暖化防止の取り組みのことであります。
 まず、私の話の流れを、皆さんにお配りをしています資料をパネルにしましたので、それをもとに簡単に説明をしたいと思います。
 ご存じのように、地球温暖化というのが、今大きく叫ばれております。これを、このままほうっておきますと地球がつぶれてしまう。また、人類の生存ができない。こういった状況の中で世界が立ち上がりました。そして、京都議定書という中で、この地球温暖化の元凶であります二酸化炭素、これを中心に減らすために、日本は昨年六月に日本全体で六%減らしていこう、そして家庭では二%減らしていこう、こうしたことを批准いたしました。
 そこで、きょうの申したいことであります。
 二〇〇八年でありますけれども、和歌山はもっともっとその前倒しをして、まず家庭から一軒一軒、そういった省エネをやっていく必要があるということをきょうは述べたいと思います。そして、そのことをすることによって、実は数限りない思いがけない恩恵と報酬が得られるんだということを提起したいと思っております。それとともに、これは地球がある限り続くんだということであります。その思いがけない恩恵と報酬でありますけれども、大きく言って二つございます。一つは、家庭みずからが省エネをやることによって家計が助かって、さらに新しい財源が生まれてくる、そしてその一部を、これまた後ほど説明いたしますけれども、財源として出していただければ、こういった環境の省エネの雇用が生まれてくるということを後ほど申し上げたいと思います。
 それともう一つ、家庭とさらに和歌山県内の企業もございます。家庭や企業がこういった省エネをすることによって、もう一方で莫大な財源が県にも国にも入る。こういう仕組みが、実は今、京都議定書の中で検討されております。CO2排出権取引と言いますけれども、簡単に言いますと六%、和歌山の家庭とか企業で省エネを一生懸命やってもらって、そしてそれが目的が達成されて、それ以上に余裕分があれば、つまりその余裕分を外国に売れるということであります。外国からお金が入ってくる。二重の喜びがここに出てくるわけであります。この特定財源、入ってくる特別な財源を使って雇用とか環境銀行とか、これから来年六月に向かって世界遺産登録に取り組んでまいりますが、こういったきれいな和歌山県をつくっていく、こういったことにつながってくるんだということを知事にこれから申し上げてまいりたいと思います。
 それでは、早速説明に入りたいと思います。和歌山県が全国に先駆けて地球温暖化防止の取り組みをすること、そしてそのためには京都議定書による二〇〇八年からの実施時期を前倒しにして取り組むことが大変重要であります。それは、日ごとに病んでいく地球を救うために、一日も早く救済に取り組むことの提案であります。地球が病むということは、そこで生きている人間を筆頭に、あらゆる生き物がここでの生存を許されないということを意味しています。いろいろな学者の意見がありますが、このまま地球をほうっておくと、二一〇〇年には地球の温度が約五・八度C上昇すると言われています。そして、南氷洋の氷山が崩れて海面の水位が一メートルから二メートル上昇し、それによって五分の一の陸地が水没してしまうと言われています。恐ろしい推測として、日本の海岸線の九〇%が沈んでしまうという専門家もいます。人類やすべての生物にとって、かけがえのない地球を温暖化から守るのであります。守らなければ、我々生き物は死滅をしてしまいます。早急に地球温暖化防止対策の実施に踏み切ることにより、数限りない、思いがけない恩恵と報酬が得られるのです。それを知事に提案したいのであります。
 その一つ目は、ご存じのように原子力発電にまつわる不祥事があり、国民への信頼を急速に失わさせています。そのため、夏の電力使用のピーク時には、日本では経験もしなかった停電という事態が起きるかもしれないのです。そういう事態にならないために、省エネによって県民のライフスタイルを変えるという習慣を今のうちに身につける必要があります。地球温暖化防止の対策として、二〇〇八年から世界各国で一斉にスタートします。それに先立って、我が和歌山県では少なくとも各家庭が先陣を担ったらどうでしょうか。なぜならば、家庭の省エネは既にテスト済みです。そのマニュアルも来年できる見通しがついてきました。
 和歌山県は、緑の雇用事業を初めとする環境の先進県であり、来年、世界遺産登録が実現をする県でもあります。電気事業連合会の調べによると、二〇〇一年度の和歌山県の電灯使用電力量は、人口一人当たり二千二百二十七キロワットアワーで、残念ながら福井県に次いで全国第二位であります。こうした事実にかんがみると、本県の地球温暖化防止対策として最も効果的なのは家庭における省エネルギーであると推測されます。だから、反省する意味においても、どこの県よりも先に各家庭が地球温暖化防止に取り組むべきではないでしょうか。私が調べたところ、全国的に見ても、まだ各家庭が一斉にこれを実行するということがなされていません。
 続いて第二番目は、各家庭が省エネをすることによって、家計がかなり助かるという数字が浮かび上がってきました。前回は、環境省の出した家庭の温暖化防止対策の十の取り組み事例で、CO2を二・八%削減すると年間四万一千円浮いてくることを申しましたが、この一年、県内でのテストによってその環境省の見通しが私たちの仲間によって確かに実証をされています。その結果が行く行くは和歌山県が直面をしています雇用問題の、特に知事が唱えています緑の雇用促進の道へのきっかけになるのかもと私は胸を膨らませています。と申しますのは、二〇〇八年から二〇一二年にかけて、日本はCO2六%削減の割り当てが来ていますが、そのうち家庭が二%となっています。企業は、それぞれの方式と独特の機械を使って努力をするので達成をできるという前提に立ち、ここでは家庭の省エネ対策に絞って私の考え方を申し上げたいと思います。
 ところで、家庭の省エネと言っても、電気、ガス、水道、石油等いろいろとエネルギーはありますが、その熱量の計算方式は複雑で難しいため、ここでは電気だけに絞ってみました。家庭の削減は二%を目標、これを乗り越えるのは易しい壁ではありませんが、私たちのNPOの仲間たちと昨年の十一月からことしの二月にかけて五つの家庭でテストをした結果、「案ずるより産むがやすし」という言葉のとおり、その目標は難なく達成されました。その結果を申し上げます。
 家庭の電気の一部の省エネとともに、昼間の電力をできる限り夜間にシフトすることによって、Aさんの家庭では、三人家族で月三千三百六十三円の節約の効果が出ました。商売をしているBさんの家庭では、月三千八百二十四円の節約ができました。年間に直せば、Aさんの家庭では電気だけで年間四万三百六十円、Bさんの家庭では年間四万五千八百九十六円も節約ができたのであります。これからいけば、環境省が示している金額は、電気だけではなく、ガス、水道、石油等も含んで年四万一千円ですので、これ以上の節約の効果があることは私は間違いないと考えます。だからこそ、決して難しい目標ではないのであります。各家庭が努力すれば実現できることがわかりました。「とらぬタヌキの皮算用」ですが、国が言っています年間四万一千円以上浮くことになり、和歌山県全体では約三十八万世帯ですから、四万一千円掛ける三十八万世帯で最低でも百五十六億円以上になるのであります。知事、いかがでしょうか。
 第三番目は、この百五十六億円のお金を約三十八万世帯の和歌山県民すべてに有益に使ってみてはどうかという考えであります。私の記憶ですが、和歌山県民すべてが一つの目標に向かってこの省エネのように努力すると、その恩恵が地球全体につながるという経験をするのは初めてではないでしょうか。だからこそ、この百五十六億円を形にして残したいのであります。その具体的な提案を申し上げます。浮いた四万一千円のうち、千円あるいは二千円をこの地球温暖化防止に関する環境財源として集めてはいかがでしょうか。三十八万世帯ですから、千円で三億八千万円、二千円では七億六千万円であります。これは、まさに環境の時代に到来をしたすばらしい財源だと思います。なぜなら、高知県の新税の場合は、初めから五百円というものを納める新税であります。しかしこの和歌山方式は、省エネをして、財布の中がお金で膨らむ、その膨らんだ財布の中から千円あるいは二千円出してもらうということだから納得して出していただけるのではないでしょうか。つまり、県民から敬遠されやすい新税ではなく、私の和歌山方式では、これこそ県民が納得して協力してくれるお金だと思います。今までの税とは一味違う性格のお金です。この税は、悪税ではなく善税だと呼びたいと思います。これだけ指導していただき、節約ができ、子孫のため、さらに地球のためになるのなら、年間千円や二千円ぐらいだったら寄附してもいいと、そうはっきり主婦の方々は言ってくれているのであります。その上、子々孫々世界の人々に対し、千円あるいは二千円の浄財でも地球に貢献できるという誇らしさがわいてきます。本年二月の予算委員会で私は、これを善税だと言って和歌山方式の方がよいのではないかと質問いたしましたが、そのときは知事も急なことだったので控え目な答弁をされたようですけれども、私は心底からこの案を和歌山県にとって、二十一世紀の財源不足から見るとふさわしい財源の切り札と思っています。実は税の専門家にも、これを知事の権限でできるようにするにはこの取り扱いの名目をどのようにしたらベストなのか、そういったことを相談いたしました。その方は、「確かに今までの新税とは違い、より県民が納得のいく財源である。善税とも言えるだろう。法は、税以外の負担はいけないことになっている。それ以外は、分担金、負担金、使用料のように特定サービスの利益を得る場合のことに限られている。本人の自発性の問題もあるので、県民にPRをし、堂々と税として徴収したらどうか」、そういったヒントをもらいました。
 知事、あなたに先頭に立っていただき、まず県民にPRをし、それが浸透した段階で条例化を実現したらどうでしょうか。これは、極端に言いますと、地球がある限り持続して財源が確保され、県民の努力次第でさらに増大をしていく、安定したこの財源は新しい事業を起こす根幹になるという性質のものだと私は思っています。知事、いかがでしょうか。
 次は、知事が常に唱えています緑の雇用事業等、一人でも多くの人が職につけるよう提案をしたいと思います。
 今、県下の職を求めている人は、先日、ハローワークへ行って調べてみますと、ことしの四月現在で二万二千二百四十一人いるのであります。知事には、緑の雇用事業を重点に積極的に失業者のことを考えていただいていますが、我々は若い人たちのことも考えています。県内の高校卒業者の就職率がことしの三月末現在、全国でもワースト五位に入り、八〇・八%で四百六十五人が就職できない。また、大学卒業生も就職浪人がたくさんいます。この財源でもって彼らを就職させるという構想を描いてみました。なぜならば、若い優秀な労働力は、大阪や東京に流出をしています。彼らを県内にとどめておくためにも、二十一世紀の環境の時代にふさわしい財源確保と雇用の場を創設すべきであると私は思います。
 実は、この六月に私どもが地球温暖化防止の仕事で、ハローワークを通じて五人の募集をしました。二日間で問い合わせを含めて四十数件がありました。反響の大きいのにびっくりしたところであります。県民も、こういった環境の仕事を待っていることを実感いたしました。
 そこで、私たちが今取り組んでいます家庭の省エネマニュアルづくりの実践から、どれだけの雇用が生まれるのか試算をしてみました。県下で約三十八万世帯ありますから、一人で一日四から五軒、一カ月に百軒、月一回同じところを巡回指導する計画ですので約三千八百人が必要となってきます。二割近い人たちが職に恵まれるのであります。私たちがこれから取り組む家庭の省エネマニュアルづくりの場合を例にとりますと、一日日当七千円を出していますから、年間報酬約百八十万円としますと、一家庭千円負担として三億八千万円で割りますと二百十一人、あるいは二千円の場合、七億八千万円で割りますと四百二十二人が実際働けるようになります。これはばかにならない数字であります。
 今、知事が取り組んでおられます緑の雇用事業は、国の雇用対策事業として用意されたお金ですが、しかしそれは雇用期間が一年間に限られており、また予算が終わればそれまでというたぐいのものであります。ですが、この地球温暖化防止にかかわることは、財源の面でも永久に確保ができ、それによって雇用も永続的に確保されると私は思います。もう一度申しますが、県内での雇用促進と地球温暖化とをリンクさせて、省エネをすればするほど財源がたまり、そして雇用促進がされる、さらに地球温暖化防止につながってくるのであります。つまり、一石三鳥ではないかと思います。そしてまた、知事が推奨されている緑の雇用事業の有効な財源になると思います。知事、いかがでしょうか。
 それからもう一つ、これが本命なのであります。この地球温暖化防止の成果が実は莫大な財源として県にも国にも恩恵として入ってくるのであります。と申しますのは、CO2の削減目標が達成をされた場合、達成分を引いたその残りを余裕分として売ることができる。つまり、私たちが一番期待していますCO2の取引、商談についての提案に移っていきたいと思います。
 京都議定書では二〇〇八年から国と国との間でCO2売買の取引が始まることになっており、今の段階では表向きどの国と国との間に取引が成立をしているということははっきりしていません。しかし専門家の話によると、裏ではかなりの動きが始まっているようです。環境省はかなり悲観的に見ているのか、今のところ初めから日本が目標の六%を達成できないという前提に立って、その一・六%不足分を京都メカニズムという名称で海外に投資をして、それを補おうとしているようであります。私も、電話をして担当者に聞きました。その一・六%分をCO2のトン数にすると二千万トンになるそうであります。そこで、CO2一トン当たりの値段は幾らぐらいの金額になるだろうかと関係者に当たってみましたところ、イギリスでは市場価格はCO2一トン当たり約千円という話が出てきました。もう一つ参考にできるのは、環境省が新しく気候ポイントという名目で、具体的にCO2削減を行った地域に助成金を出そうと提案をしようとしたときに、結局は財政難を理由に実行できませんでしたけれども、そのときの試算を参考にしますと、それはCO2一キログラムを五十円で買い上げるということですので、つまり一トン五万円の計算になります。我が国が不足分としていますCO2一・六%、量にして二千万トンは、イギリスの場合の取引価格を採用しますと、一トン千円という安い値段でも総額二百億円になります。また、環境省の試算を参考にしますと、一トン五万円ですから、二千万トンでは一兆円にも膨らむ金額であります。つまり、CO2の容量の売買は、売り手側からすれば途方もない財源が確保されるということになるのであります。県や国は、地方自治体の各家庭や企業のCO2削減努力によって、この巨額の財源を棚からぼたもち式に入ってくる仕組みになっています。
 次に、海外に売って稼いだこの巨額のお金はどうなるのか、環境省の方に問い合わせをして、その話によりますと、その配分については検討中ということですが、国よりも県の方が明らかに努力の度合いが大きいことから見て、県の方に国よりもかなり多くの配分がされると思われます。努力した県は、努力した分だけ当然報酬が入ってきます。今からやるということはそのためなんです。環境省では、このCO2削減の容量をめぐる取引について、至って弱腰です。日本では目標達成が難しいというので、いわゆる買い手組に入っているだろうと見通しています。それというのは、今日のような世界的な不況と経済大国のアメリカが参加しない、そういう状況では市場原理で安い取引ができる、買い手市場でおさまるからです。しかし、私はそうとは考えません。また、考えたくありません。日本は、過去十年間、経済の不況に泣き、公害問題で四苦八苦してきました。この経験が必ずやCO2削減の容量取引にプラス材料として生かされるはずだと私は思います。今の状況で、外国にこのCO2削減の件で一兆円を出すことに国民は許してくれるでしょうか。それと同時に、環境問題にも日本は背を向けることになります。その上、この百年間に今の人口の六十億人が九十億人に増大するという見通しでもあります。人間の爆発的増加こそが地球温暖化の元凶であり、この元凶を維持するために、さらに経済的活動を活発にせざるを得ません。地球はこの二つの元凶によってさらに温暖化されるでしょう。アメリカは、こうした状況でもひとり我が道を行くのでしょうか。つまり、今は買い手市場でも、時代の趨勢からすると、売り手市場に変化する可能性の日は近いと思われます。このCO2削減をめぐる取引は、地球が存在する限り永久に続く財源になるのです。しかも、知事を通じて県民の努力が報われる形でお金が入ってくるのであります。県としては、損をするものはないのであります。しかも、省エネに貢献する和歌山県の地球への貢献として大いに宣伝できるのであります。知事は、このことに対して時代の趨勢をどのように見ているのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
 調子に乗るようですが、私は欲が深いので、私の夢のもう一つを追加させていただきます。
 県内のすべての家庭の努力によって膨大なお金が生まれてくる仕組みをこれまで説明いたしました。そのお金にプラスすること、それは無論、企業などの努力によってもたらされる報酬を加えることは言うまでもありません。さらに、本命のCO2の削減容量、つまり目標の数値を超えた部分を外国に売ることにより外貨を稼ぐその金額は途方もない額になるはずです。このお金を和歌山の新しい県づくりに積極的に生かす方法を考えてみるのはいかがでしょうか。このお金を取り扱う機関を仮に「地球温暖化防止和歌山環境銀行」という名称で呼び、その株主はすべてこの温暖化防止に協力した県民に入ってもらうのです。無論、この資金の使用優先順位はトップが雇用促進、それに環境整備のための費用にします。そして、この銀行の特色は、県民すべてがそれぞれの家庭でCO2削減のために努力をすることによって、環境銀行の利益がおのずと上がってくることにあります。そして、その努力の容量が大きければ大きいほどもう一つの成果が県以外の他県、及び国から報酬として入ってくる、二重の恩恵がもたらされるのであります。しかも、県はそのことによって財源に新しい道が開かれる。つまり、和歌山県だけでも財政的な独立ができるのであります。環境に対するアプローチの仕方いかんによっては、これほどまでに何から何までプラスになるものはありません。ひいては、地球に生存することの環境はさらに豊かになると私は思います。つまり、今の世の中は物とか土地は金融の融資の対象になっていましたけれども、これからは我々が気のつかなかった無尽にある自然価値を、今まではつけられなかった空気とか水、これが新たな価値をもって膨大な付加価値を生み出す時代であると思います。それは、銀行の今までのあり方に対する大きな、また猛省を促す意味があると私は思います。知事、この環境銀行の構想についてはいかがでしょうか。
 以上述べてまいりましたが、ことし六月中旬までの私たちの調査では、ほかの県や市町村ではまだ住民がこぞってこうした省エネに取り組んでいるのは見当たりません。ならば、その模範を示すためにも、環境立県和歌山として先頭を切るべきではないでしょうか。そのマニュアルは既に我々の仲間がつくっていて、今それに肉づけをするために県と連携をして取り組んでいます。来年からスタートできる環境の整ったグループもあります。全世界のスタートは二〇〇八年ですが、それを待つ必要はないのであります。しかも、これは永久に続き、また続けなければならない、私たち人類の宿命であると思います。県民が県を助けるということでこぞって立ち上がり、県の財政を豊かにするということは、和歌山県の歴史の中には余り聞いたことがありません。まさに、自分たちの手で自分たちの県をよくしていこうとする地方自治の精神にぴったりのテーマではないでしょうか。そのために県としては、そういう県民の善意と努力を後押しするための体制として、早急に県庁挙げての地球温暖化防止対策に係る組織を立ち上げていただきたいのであります。例えば、省エネ一一〇番をつくり県民からの相談に乗る等、そうした行政の立ち上がりが早急に必要ではないでしょうか。また、こうした動きは来年の六月、世界遺産登録されることにも大きな意義とつながりがあります。地球温暖化防止に取り組むことは、そこの地域の空気がきれいになるということです。地球温暖化をそのままにしておいて、お客様を歓待するわけにはいかないと思います。そのために、お客様をもてなすためのきっかけになるものではないでしょうか。つまり、この取り組みは来年の登録のタイミングに合わせて、二重三重のものを生むのではないかと私は思います。
 最後に、この取り組みは、大げさに言えば日本の国策を変えるという意味も含んでいます。地方自治というものを、県民の約三十八万世帯が変えていくということ。地球人の宿命である最初の作業を始めたのが和歌山県民であるということであります。これは、日本の顔になるのであります。日本の顔が変わるのです。各国もこの形を一つのサンプルとして考える。日本の他県も同じまねをするでしょう。日本や世界のマニュアルになる。世界の環境をリードすることは、和歌山から出てくるのであります。これは、一つの新しい国策を提案することにつながるのだと私は思います。これは、二十一世紀の人間の生き方ではないでしょうか。地球温暖化防止対策を通じて大きな人間生活の変革をもたらすことにもつながるのだと思います。
 また、国と国とのCO2排出権取引の実現によって世界の先進国と発展途上国は、政府開発援助によっていつの間にか従属関係ができていたのを、これによって対等の関係に戻せるという価値判断が動き始めると思っています。なぜならば、先進国が地球温暖化防止に関してむちゃな環境活動を行っているその罪滅ぼしに、先進国は政府開発援助という名のもとにお金や商品を配るという、これが今までは発展途上国の国づくりに対する先進国の援助という美名の行為とみなされてきたのではないでしょうか。しかし、これからは今までの慣例が変わってくるはずです。CO2削減の容量を売れる国は、これが立派な商品として胸を張って売れる時代が来ます。それによって、国同士の従属、非従属というものがなくなり、国と国とが対等、平等になるというわけであります。そういう価値判断が、私は動き始めると思います。経済のグローバルは、勝ち組が一つで負け組がほとんどであります。しかし、環境のグローバルは、すべての国が対等な関係になり得るのです。つまり、地球の資源を使い果たした、あるいは使っている国というのは、それだけ大きな罰則を支払わなければなりません。二十一世紀の潮流である、自然に逆らわず、自然の流れに順応していく生き方こそが本来の恩恵を受ける資格があるのではないでしょうか。二十一世紀は地方の時代と言われてきました。それなのに、国は県への財源移譲に必ずしも積極的ではありません。いわゆる三位一体論でもめて、地方にのみにくい条件を出してきています。こういう状況のもとで、CO2削減対策は地方独自の財源を生み出す千載一遇のチャンスと見ていますが、知事いかがでしょうか。
 以上申し上げましたが、知事のご見解を賜りたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
○議長(尾崎要二君) ただいまの玉置公良君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 大変実証的かつ高邁なご質問、提言に対して、非常に敬意を表する次第でございます。私が感心いたしましたのは、各家庭が温暖化に取り組むことからいろいろな価値が出てくるという発想でございます。
 実は、緑の雇用を提唱いたしましたのも、和歌山県はこれだけ森林がある、京都議定書を批准した上はこのことが大きな価値を持ち得るだろうということで緑の雇用というものを提唱したわけでございます。ただ、これは笑い話にもならないんですけれども、そのときに、岐阜の知事さんから森林県連合をつくろうと。要するに、吸収して都会に恩恵を与えている県の連合をつくって、当然見返りをちゃんと取るようにしようという話がありまして、それはいいことだと賛同いたしまして、実は和歌山が事務局になって一応連合をつくったんです。ただ、そのときに和歌山県が排出過多県になっているか、吸収過多県になっているかということを調べましたら、岐阜県なんかはもちろん山が多くて吸収過多県なんですが、和歌山県は排出過多県になっている。これだけ山がたくさんあるのにどうして排出過多県になっているかというと、先ほどの質問にもありましたように、電力の消費量が一人当たり全国二位と。これだけ暖かいところだからそんなにあれだけれども、クーラーなんかをたくさん使うのかなというふうに思ったり、いろんな事情があったんですけれども、なかなか事は思ったほど簡単じゃないということがそのとき明らかになったわけです。そういうふうな中から、一方では緑の雇用というような和歌山県にある森林なんかを利用してCO2を吸収して、和歌山にいろんなお金を持ってくるということをやっているんだけれども、もう一方では逆に排出し過ぎている方を削減していくということ。これは両々相まって和歌山が本当の環境県になれるということだと思いますので、そのことに大いに注目していきたいということです。去年議員の方からご質問がありましたことを参考にしながら、ことしから和歌山県では家庭の省エネのモデル実践活動というふうなものを行っておりまして、これをもとにマニュアルをつくって、それで非常にうまくいくと──これはNPOでやられて非常に成果を上げられたということでございますけれども、県がやっている方でもはっきりしてくれば、これをできるだけ全県下に広げていくと。そういう中で、和歌山県がCO2の排出でも吸収でも先進県であるというふうなイメージをつくっていきたいというふうに考えているわけでございます。
 そういうふうな中でいろいろご質問があったわけですけれども、一家庭当たり相当なもうけというか節約になるんで、その中から税金としてお金を出してもらったらどうかと。これは、僕は非常に卓見だと思うんだけれども、頑張ったらお金を取られたということがなかなか理解されるのが難しい面もあります。環境関係の課税につきましては、今地方公共団体でいろんな動きが出てきておりますので、これは議会とも協力しながら、今の考え方も含めて和歌山県は積極的に考えていくべきことだと考えているわけでございます。
 それからまた、モデル事業を行っていることを全県的に広げていくというふうな過程で、それを教えて回るような人をつくったら、そのことから雇用がふえるんじゃないかという話がありました。これも、すぐにいくかどうかわかりませんけれども、一つの大きな卓見だとは思います。和歌山県の高校卒業生の就職率がワースト五位ということだったんですけれども、実はこれは県の方が引っ込み思案になっていてはいけないと、いい就職口があれば積極的にいこうということを去年ガイダンスでやることにしまして、ことしも実は新しい施策でやっているんですが、それをやった結果、近畿二府四県が皆より悪化している中で和歌山県だけは二・何%かプラスに転じたということで、私はこれは努力の成果だと思っているんですけれども、ただそういうふうなガイダンスだけじゃなくて、和歌山の中でこういうふうな環境というようなことを視点にした働き口ができるということになれば、これは一つ新しい方向として希望が持てるというふうに考えるわけでございます。
 それから、CO2の吸収源の国と国との取引の中から和歌山県、そして日本がもうかっていくんじゃないか、当面、環境省は、日本はどちらかと言うと輸入県というか、お金を出す側に回るだろうけどというようなお話でございます。今の京都議定書についてはアメリカが批准しておりませんので非常にバランスを欠いた状況になっているわけですが、ロシアが何か批准を検討しているということで、いずれそういうふうな世界が批准していくのが大きな方向になってくると思います。ただ、そういうふうな中でも日本がCO2の吸収のあれを外国へ売るというところまではなかなかいかないだろうと。日本は工業国ですのでいかないと思うんですが、ただ、よその国にお金を出して買うぐらいだったら、日本の国でいろいろ森林整備をしたり、いろんなことをしたりして、その出すお金を減らそうということにお金を回すということは僕は非常に有意義なことだろうと思うし、このことについては具体的にいずれ動きが出てくると思います。そういう中で、和歌山県が今からそういうふうな家庭の排出制限ということに取り組んでいろんな知見を蓄えていったら、これはそのときに一番にスタートできるというふうなこともありますので、これは僕は非常に大事なことだと思いますし、それに合わせたような組織というふうなものも考えていかないといかんというふうに思っているわけでございます。
 環境銀行というところまではなかなかいかないだろうと思うんですけれども、いずれにせよ、そういう高邁な理想を持って事に当たっていくということは、これからの地方行政にとって非常に大事なことだろうと思っておりますし、世界遺産の登録でありますとか、緑の雇用でありますとか、そういうことで和歌山は環境を大事にする県であるということが大分全国的にも広まってきた今でありますので、そういうことに真摯に取り組んでいきたいと、このように思っております。
○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十八番玉置公良君。
○玉置公良君 答弁ありがとうございました。
 確かに、高校の就職率については、本当に県の教育委員会が、前年度ワーストツーであったのが、今度改善をされて五番になった、これは本当に評価をしたいと思います。さらに、こういう環境の仕事に若者がつきたいということもありますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。
 それと、知事も今申されました。やはり、森林の吸収源だけではなくて、家庭の排出源、これを車の両輪として取り組んでいくという決意表明をしていただきました。ぜひとも、この二〇〇八年ではなしに、今もう既にそういったモデル事業が展開されておりますけれども、和歌山県が全国で一番、そういった取り組みを進めるように要望いたしまして、私の質問を終わります。
○議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で玉置公良君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時三十二分休憩
     ─────────────────────
  午後一時二分再開
○副議長(吉井和視君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十一番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 ご指名をいただきましたので、通告に従って質問をさせていただきます。
 私にとって、県会壇上での初めての質問となります。私は、今回の選挙を通じて、有田と和歌山のこの豊かな自然環境を守り育てるとともに住民の暮らしを温める、そんな県政をと訴えてまいりました。県民の声、願いを県政に届けるために一歩一歩頑張ってまいりますので、どうかご指導のほど、よろしくお願いを申し上げます。
 さて、最初に水と緑の環境保全について質問をさせていただきます。
 昨年、私どもが有田地方で実施をいたしましたアンケートの中で、有田のことで誇りに思っていることは何ですかという問いに対して、八割の方が豊かな自然環境だと、こういうふうに答えておられます。ここには、自然豊かなふるさと和歌山に対する誇りや思いが率直に出されていると思うんです。この自然環境を子や孫の世代に引き継いでいきたい、失われつつある自然をよみがえらせたい、こういう思いを今多くの皆さんがお持ちだと思います。それだけに、自然破壊や環境問題に対する県民の意識や関心は年々大変高まり、橋本でのダイオキシン問題や、また最近では中辺路町の産廃処理施設の処分場計画の問題などが大きな話題となりました。有田地方でも、この間、残土や土砂の処分にかかわる問題があちこちで起き始めています。
 一昨年の秋にマスコミでも報じられまして社会問題化しましたが、湯浅町の谷合いに二十万立米もの土砂が、残土と称して畑に入れられました。畑に土を入れるという申請のもとに、これだけの大量の土砂が運び込まれたわけなんですね。ここでは、土砂にまじって産業廃棄物が投入されているんではないか、こういう住民や町の不安や訴えによって、町当局と保健所が連携をして、当時新設をされた環境専門の警察である県警エコポリスが捜査をし、業者が廃棄物の不法投棄で逮捕をされ、土砂の搬入はストップをしました。この業者に対しては、残土と一緒に廃材などを捨てていたのを発見するたびに、住民と一緒になって町と保健所の皆さんが指導してきたわけです。指導したそのときはよく言うことを聞いてすぐ撤去するわけですが、また始まると。そういうことを繰り返しながら、この残土がいつまでも運び込まれました。夜中のうちに大きな穴を掘って、早朝、暗やみに紛れてその中に産廃まじりの残土を投棄する、明るくなるまでに、保健所や町の職員が来るまでには、もうきれいな土で表を隠してわからなくする、こういうことがあったわけですが、この事実をつかんでストップをさせた保健所やエコポリス、関係者の皆さんのご苦労と活躍に深く感謝を申し上げる次第です。
 ところが、捜査で今回不法投棄が明らかになった分は掘り出して戻したんですが、何しろ二十万立米という土砂の大きな山です。これは十トン積みの大きなダンプカーに直しても、約三万三千台。べらぼうな山なんですね。この山が結局そのまま谷合いに残ったままなんです。この土砂の山を底まで掘り返して全部調査をして、そして違反が発見されれば、もとに戻しなさいという原状復帰命令を出せるんですが、命令を出せば、会社は資産がないですから倒産をして、結局撤去費用を町や県が持たんならんということになって、手出しできない状況というふうになっているわけです。
 一方、この処分場への搬入がストップした直後から、今度はかわって広川町の山の中で残土や土砂の投入が始まりました。ここでも住民は、土砂の中に廃棄物の混入が起こらないかとか、急な坂に大量に捨てられている土砂が崩壊しないかとか、そういうふうな心配で今も悩んでおられます。このような事態がほかの市町村でも生まれてきているんですね。
 私は、この湯浅町の事件から、なぜこれだけ莫大な量が積まれるまで対応できなかったのか、この教訓を導かなければならないと思っているんです。現在では、産業廃棄物の処理は法律によって厳しくルールが決められました。ところが、残土の処理とか土砂の搬入ということになりますと、一ヘクタール以内であれば、先ほど申し上げましたような簡単な届けをするだけで、法や条例による許可も要らなければ、直接的なルールもないんです。一たび不法投棄が発見されれば保健所の出番、崩壊が始まったりすれば建設部の出番というふうになるわけですが、事が起きるまで有効な手が打てない、ここに最大の問題点があると思っているんです。
 こういう状況を解決するためには、私は、環境保全や水源保護のための必要な立地規制とか、また産業廃棄物などと同様に何をどこからどれだけ運んできたかという運搬経路の明確化や記録、そしてこれからどれだけ土砂を入れるのかというような搬入計画、それから崩壊防止措置をするならその措置の計画と、こういったものを提出をさせる、こんなルールを条例によって確立することが求められるというふうに考えています。こういうルールがないからこそ二十万立米もの事態になったと思っています。
 ここに持ってきていますのは、長野県の水環境保全条例とそれに基づく水環境保全総合計画です。そして、こちらにあるのが千葉県の通称残土規制条例、正式な名前は「千葉県土砂等の埋立て等による土壌の汚染及び災害の発生の防止に関する条例」というものですが、これらの県を初め、全国的には県レベルで条例で土砂や残土の処理に関するルールを明確化して、罰則規定もつけてちゃんとルールを決めるというところが生まれてきています。土砂や残土の処分、また土地造成など、水源や自然環境の保全に大きくかかかわる業務に対して適切なルールと指導を確立することが県行政に今後は求められてくるのではないでしょうか。
 一方、県内の市町村でも水源の森を守ることや川や海の水質を改善しようという取り組みが始まっておりまして、環境保全を目的とした条例が、例えば清水町、串本町、大塔村、幾つかの市町村で既に制定をされています。また、今回産業廃棄物処分場計画で揺れた中辺路町も条例制定を検討中だと、最近、新聞報道にもありました。
 清水の町長さんにお話を聞きますと、私が子供だったころと比べると川の水量は三分の一に減ってきている、下流の皆さんにかけがえのない水資源を供給している清水町としては水源の森条例や美化条例を制定して、広葉樹林の植林など森林の保水力の向上や、また自然の再生に努力をし、近隣市町村にも協力を呼びかけているんですよとおっしゃっていました。また有田川漁協の組合長さんは、森林の保水力の低下や生活排水の増大、ダムによる水質悪化など、有田川の水環境は深刻な状況だ、漁協としても漁民の森運動など、海の漁師も一緒になって山に登って環境保全に力を入れているんですとおっしゃいました。どなたも、行政と住民が力を合わせて取り組んでいくその必要性を強調されていましたし、また環境問題は、思想・信条や立場の違いを超えて広く協力と共同が広がっていると感じていたところでございます。
 さて、幾つか述べてまいりましたが、私は、この和歌山県の豊かな水と緑の自然環境を守り育てていくために、一歩踏み込んだ条例整備が必要だと、こんなふうに考えています。
 和歌山県では、既に作成しております和歌山県環境基本条例、そしてこれに基づく環境基本計画、こういう長期計画があります。この基本的な条例・計画は、いわば罰則規定もありませんし、自然環境を大事にしていきましょうという宣言的な、呼びかけ的な、最も基本的な条例です。ですから、この条例・計画を発展、具体化させて、例えば豊かな水環境と水源を守るために水環境保全条例、こういったものの制定の検討に入ってはいかがでしょうか。環境生活部長のご所見をお伺いいたします。
 またあわせて、先ほどから紹介した湯浅町の事例の教訓に立って、不法投棄を未然に防止するために県としてどういう取り組みを進めておられるのか、環境生活部長より答弁をお願いいたします。
 さて、二つ目の柱に移ります。東南海・南海地震に備えた津波対策についてお伺いをいたします。
 津波対策では、避難計画やハザードマップの作成など、地域と行政が力を合わせて取り組む地道な努力が大変重要になってくるわけですが、住民から出された声をもとに幾つかお尋ねをしたいと思います。
 まず、湯浅広港の弁天堀水門という名前の水門の補修・改善についてです。
 昨年十一月に県主催の津波の避難訓練が県下各地で行われました。湯浅町と広川町でも住民の避難訓練をしました。それとあわせて、防潮堤の水門を閉める訓練も、住民や行政関係者が見守る中で行われたわけなんですね。ところが、この弁天堀の水門、動き始めても、待てども待てどもなかなか閉まらない、こういう事態が起こったわけなんです。ずっとごらんになっていた住民の中からは、地震が起こってから津波が三十分や四十分で来るというのに、これ一体どうなっているんだという声が、行政関係者の方からも口々に出されたそうなんですね。詳しく事情を聞いてみますと、この水門は四十五分で閉まる設計のもので、幸い訓練当日は設計どおり四十三分で閉まったそうでありますが、一週間前に管理を任されている町の職員が試験運転をしてみたところ、何と一時間以上たっても閉まらなかったと。早速業者を呼んで点検すると、水門自体が傾いて、軸に無理がかかってかたくて動かなかったと言うんですね。業者を呼んで二日がかりで必死に応急工事をして、訓練本番に臨んだということなんですね。私、改めて水門の調査に先日参ったんですが、高さ二十メートルもある大変立派な水門です。ごっついものなんですが、この水門は、現在あるような一体型になったものではなくて、二つの柱が立ち上がっていまして、その上の操作室と操作室の間にはステンレスの鉄板でつくられた渡り廊下があるわけなんですね。その渡り廊下が、やっぱり傾いている影響でしょうか、張り詰められたステンレスの鉄板がこちらの端っこでこのぐらい盛り上がっているんですよ。いや、これは大変なことになっているなというふうに私は感じました。
 もちろん、この水門は約二十年前につくられたものですから、今では一般的になっている、緊急降下装置と言いまして、非常の際はいつもの半分の時間で水門がおりるという装置がついているんですが、この水門には残念ながらそういうものもついていません。また、この水門はもともと台風など高潮対策用に設計されたものですから、津波に対する設計がなかったのは仕方がないことかもしれません。しかし、幸いにして今回の訓練を機に発見をされたこのふぐあいについては、この際、きちんと調査・点検をして補修や改善を行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。県土整備部長の答弁をお願いいたします。
 また、これを機に県内の海岸部の水門を総点検して、計画的に改修を進める必要があると考えますが、あわせて県土整備部長の答弁をお願いいたします。
 湯浅広港には三つの水門があるんですが、私は実際にこれらを三月から四月に分けて調査をいたしまして──設置は県ですが、操作は町に任されています。その操作を担当する町の職員さんのお話を聞いて心に残っていることがあります。それは、こんなふうに言うんですね。「地震が起きたとき、私たちが水門を操作をするためには、海岸部から避難をしてこられる住民の人の流れに逆らって、車では絶対行けませんから、自分の足で走って水門まで着かなけりゃならない。そして、余震が続く中、大きな揺れの中、あの高い操作部まで、外についているらせん階段を上って上がって、多分停電をしているだろうから停電用の非常の発電装置を始動させて、それからちょっと上へ上げてかぎを外して水門をおろす。こういう操作をその非常時にすること自体、大変危険だし、現実的じゃないと思う。町民何千人の命を守るために自分は死ぬかもしれんが行ってきてくれと、こういうふうに命令するのは非常につらい」と、こういうふうにおっしゃるんですね。それで、今の時代ですから遠隔操作とか、また大きな地震などの揺れがあったら自動的に水門が降下する、そういう装置のついた水門が静岡県などでは既に設置をされているそうですが、そういうものが設置できないのでしょうかと、こういうご要望をいただきました。私も強い浜風が吹く中、町職員さんと一緒に用意ドンでらせん階段を上まで上ってみたんですが、ただでさえ風が吹く中、本当に正直怖かった思いがしました。
 先ほど取り上げました水門の緊急降下装置の設置や遠隔操作、自動下降装置などの機能改善を可能なものからやっていく必要があると思いますが、県土整備部長の考えをお聞かせ願いたいと思います。
 さて、次に広川町が計画の津波防災教育センター──これは仮称ですが──これについて、国、県の支援をお願いしたいというふうに思います。
 先日の黒潮交流シンポジウムには私も参加をさせていただいたんですが、堂本千葉県知事や浜口ヒゲタ醤油の社長さん、大橋和歌山市長と木村知事のシンポは、両県の食文化や産業、そして観光、水と緑の環境保全まで幅広い両県の交流がお話をされて、とても楽しくてよい企画であったと思いました。ちょうどその会場で、広川町の公民館長さんから、こんな話があったんです。「きょうは和歌山の広川町がふるさとの浜口さんが見えていますが、実は、あの「稲むらの火」が今また燃えてきているんですよ」と、こういうお話をされるんですね。今、「稲むらの火」に今日的に光を当てようという機運が町民の中で沸き上がってきているというんですね。シンポジウムでパネラーを務められたヒゲタ醤油の浜口さんの屋敷を広川町の地元では東浜口、「稲むらの火」で有名な初代県議会議長の浜口梧陵さんのところを西浜口というふうに両家を親しみをもって呼ばれています。そういう中で、浜口梧陵の偉功を記念する記念館を建設したいという声が町民の中から広がって、既に基金に取り組まれているそうです。今回、西浜口家の屋敷──浜口梧陵が住んでいた旧家なんですけれども、この広大な屋敷を浜口家が広川町に無償で寄附をしてくださると、そういう話がありまして、町の方ではそのご好意にこたえてぜひやりたいと。旧家の塀とか土蔵とか、そういったたたずまいを残しながらも浜口梧陵記念館を建設して、浜口梧陵の果たした功績や足跡を展示するとともに、その中に津波防災教育センターというものを設置して、この記念館を津波防災教育の拠点としても整備しよう、こういう計画が今練られているわけです。ここでは、津波被害の実際の写真などのパネル展示を初め、3Dの立体映像の映画が見れるようにしたらどうかとか、津波が来るのを再現する、そんな実験水槽ができないものかとか、そういう議論がされているようであります。
 ご存じのように、津波は人がつくるハード的な設備だけでは決して防げるものではありません。津波とはどういうものかを肌身をもって知り、そして津波は何よりも逃げることが大事だという、そういう災害教育と避難訓練などというソフト面での粘り強い時間をかけた取り組みが決定的に重要です。そのためには、津波被害を受けた町というだけじゃなくて、津波から命を守った町としての教訓は大変今日的に大きな意義があると思うんですね。阪神大震災の記念館も立派なものが今建設をされていますが、まさに津波被害を未然に防いだ記念館としてこの津波防災教育センターが機能するならば、津波対策を学ぶならば和歌山の広川町にと、きらりと光る大きな役割を発揮するものだと思います。
 そして、またもう一つの側面から見ますと、広川町では、この記念館と防災教育センターを町づくりの一環として位置づけようとしているんですね。これはおもしろいと思います。この一角は、先ほどお話ししました西浜口家と東浜口家の歴史的な建物だけじゃなくって、船の板を使ってあるという、くぎ跡のあるごっつい板を外壁に使ったようなすごいいいたたずまいの民家などがあって、古くからの町並みが残されています。そこにこの記念館防災センターがあり、浜口梧陵の建設した防波堤がずうっと伸び、そしてその先には耐久舎の建物が残っていると。こういう「稲むらの火」を中心とした散策や交流もできる歴史体験ゾーンにしようと、こういう計画なんですね。私は、これはとてもすばらしい、魅力ある計画だと思っています。
 木村知事、「稲むらの火」という震災・津波から命を守った経験を持つ県として、そして二つ目にはすぐれた先人である浜口梧陵の功績に光を当てるという点からも、そしてまた今回この黒潮交流シンポジウムで知事みずからが築かれた浜口家とのご縁も大いに生かしていただいて、防災教育センターの整備と、そして内容の充実にひとつ積極的なご支援をいただきたいと思いますが、ご所見をお聞かせください。
 さて、次に三番目の柱、和歌山の地場産業であり、基幹産業の一つであるミカン対策についてお伺いをいたします。
 ミカン対策に県が全力を挙げてほしいという声が、地元吉備町初め、多くの皆さんから寄せられています。この冬のミカンの時期に、金屋町にお住まいの三十代の若い専業農家の方からお話を聞きました。東京の太田市場に見学に行くと、和歌山県のミカン、有田のミカンは見つけるのが難しいぐらい本当に少なくて、それぐらいの量しか扱われていない、そういう扱いだ、それに愕然としたと言うんですね。数ある市場の中でも政策市場と言われるこの太田市場では、各県の取り組みの強弱がそのままシェアに忠実に反映されているというふうに言われています。愛媛や熊本に負けていないで、県もミカンの売り込みやコマーシャルなどにしっかり力を入れてほしい、こういうふうにおっしゃっていました。
 今、県内のミカン農家は、ほかの農作物の例に漏れず、深刻な価格低迷に打ちひしがれています。これまでは、収穫量の多い表年は価格は低く、でも収穫量の少ない裏年はまずまずの値段がついたものでした。ですから、価格の乱高下に悩まされながらも、悪い年もあればええ年もあらよと、そう言って辛抱してきたんですね。ところが、最近はそうもいかなくなってきました。
 きょうは、ここに、ミカンの価格がどうなっているかというパネルを用意しました。資料としても配付をさせていただいています。これは、この十年間のミカンの価格と生産量をグラフにしたものです。生産量は全国の生産量で、単位は万トン。ミカンの価格の方は、和歌山県産の価格のキログラム当たりの単価です。このグラフより前の時代は、先ほど申し上げましたように表年と裏年の高い低いがきれいに相関関係があったわけなんですけれども、この十年間を見てみますと、やっぱり生産量の方は表年・裏年でずうっと推移をしているんですが、価格の方に注目いただきたいんですね。裏年で価格のいい年、線グラフの山の部分に当たるわけですが、この山の部分が急降下で下がってきているわけです。特に昨年度の場合は裏年であったわけですが、このグラフのカーブが上がるどころか、もうほとんど横ばいの状態、こういう状況です。そして下の方──表年の暴落した年ですが、九七年、ミカンの価格の大暴落で、緊急融資制度なども発動して大騒ぎをした年です。この年の暴落をしたレベルの価格が毎回毎回豊作の年には繰り返されている、こういう状況なんですね。このまま行けばことしは、予想ですが豊作で、このカーブが、折れ線グラフが落ちる番ということになってきますから、これは一体どうなることかと。豊作でも裏年でももう価格はべたべたに安いと、こういう状態になっているわけなんです。
 ですから、こういうミカンの安値が何年も続いては赤字持ち出しの農家も多くて、奥さんがパートに出て例えば農薬代を稼いでいるとか、高齢者の農家では年金をつぎ込んで何とかミカンづくりを続けている、若い元気な農業後継者のある家でも定期貯金をおろそうかどうしようかという相談ばかりだという実態なんですね。こうなっては、融資と言われても、お金を返す当てが持てないので、今は融資の声すらも出ないと、こういう状態なんです。ですから、こういう値段が続いたら、これから先ミカンづくりが続けられるかどうか、本当に展望が持てない、先が見えてこないという状況です。
 私は、この問題の解決には、日本全体の景気回復を図り、農産物の輸入の野放しを改めて日本農業の再生を図っていく、このことが根本的には大事だと考えています。そしてまた、消費者の味覚の変化や流通の変化にも対応していくという課題もあるでしょう。だからこそ、県としてはこのミカン対策に全力を挙げていただきたいと訴えるものなんです。ミカンが元気でこそ和歌山が元気になる、私はそんなふうに思っています。
 そこで、農林水産部長にお尋ねをいたします。
 私は、このミカン対策としては、県が先頭に立ってミカンの販売やPRの強化、消費拡大に全力を挙げる必要があるというふうに考えますが、県としてのこの点での取り組みの状況をお聞かせ願いたいというふうに思います。
 さて最後に、展望の持てるミカン対策という点でも、品種改良や優良品種の普及に対する期待も大変大きいものがあります。この点では、昨年の九月議会でも議論のあったように、熊本県を初めとする九州各県の取り組みは本当に目覚ましいものがあり、新品種が続々と登場しているという状況です。熊本県では、ことしになってまた一つ新品種を登録したそうですが、この勢いに負けていていいのでしょうか。
 先日、県立の果樹試験場の竣工式にお招きをいただきました。大変立派な施設が完成をし、新しい研究機器も導入をされました。試験場の実験室で研究機器の説明をしていただいた職員の皆さんの緊張感あふれる誠実な姿勢を拝見して大きな期待を感じるとともに、農家の本当に切実な声にこたえて、この試験場を先頭に農家と一体となって品種改良に一層取り組んでいくことが何よりも大切だと改めて感じた次第です。
 そこで、農林水産部長に、県の品種改良や優良品種普及への取り組み状況はどうなっているのか、その状況と今後の方向についてお答えをいただきたいというふうに思います。
 以上、三つの柱についてお尋ねをいたしまして、私の第一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴に感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの広川町の津波防災センターの話でございます。
 浜口梧陵のお話は、戦前は「稲むらの火」──もともとはラフカディオ・ハーンが「生ける神」ということで英語で書いて、それが「稲むらの火」ということで国定教科書に載っていて、昔の人はみんな知っていた話のようなんですけれども、今は余り皆知らないという話になっていたんですが、幸か不幸かというか、南海地震の問題が国の法律になるような状況になってきまして、また「稲むらの火」が燃え始めているというお話がありましたが、今、そのとおりのような状況になってきております。そういうふうな中で、今度の東南海・南海地震でやはり津波対策ということが一番大事になってくるというふうに思っておりますので、この浜口梧陵翁の故事を和歌山県、そしてまた東南海・南海地震に襲われるであろう地域の共通の神話というか──神話じゃないんですけれども、統一の話として生かしていこうという気持ちを私は物すごく持っております。
 そういう中で、西の浜口家というのが寄附をされて、そしてあの地域──私も立派な屋敷が多くていいところだなと思っていたんだけれども、四十二号線から中へ入っているんで、なかなかみんなが知らない地域なんですけれども、その屋敷を中心に津波防災センターと合わせて町づくりの中心にしていくというふうな広川町の考えがあるとしたら、これは僕はすばらしいことだと思いますので、こういうふうな財政状況が非常に厳しい折なんで、県としてどれぐらいの支援ができるかよくわからない面もあるんですけれども、いずれにせよ、いろんな形で町がそういうことを進めていけるように手を差し伸べてやっていきたいと思います。
○副議長(吉井和視君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 水と緑の環境保全についてお答えいたします。
 まず一点目の水環境保全条例の制定についてでございますが、申すまでもなく、きれいで安全な水の確保や清流を守ることは県民みんなの願いであります。
 県では、水質汚濁防止法や瀬戸内海環境保全特別措置法、県環境基本条例、公害防止条例等により、工場・事業場の排水監視指導等、水質の保全に万全を期しているところでございます。また、生活排水が水質汚濁の大きな要因になっていることから、市町村や関係団体と連携して家庭や地域での生活排水対策を促進するため、県民への啓発にも積極的に取り組んでいるところでございます。
 水環境の保全対策につきましては、多岐にわたる環境法令での対応、あるいは環境基本計画に基づく施策などにより、総合的に取り組んでまいります。
 ご提案の条例の制定につきましては、その必要性、有効性等を他府県の動向も見守りながら研究してまいりたいと考えてございます。
 次に、不法投棄の未然防止についてお答えいたします。
 不法投棄を未然に防止することは、県民の生活環境保全上、大変重要なことであると考えております。未然防止策といたしましては、本年度から各振興局に環境指導員を配置するとともに、民間に委託した特別監視パトロールチームと連携しながら巡回パトロールを実施しているところでございます。また、不適正処理やいわゆる残土処理と称した不法投棄が行われている可能性のある地点での定点監視なども実施しております。
 今後とも、庁内関係部局及び市町村や警察などを含めた関係機関で構成する各振興局単位の廃棄物適正処理地域連絡会等で連絡を密にしながら早期発見、早期対応に努め、不法投棄の未然防止を図ってまいります。
○副議長(吉井和視君) 県土整備部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○県土整備部長(大山耕二君) 東南海・南海地震に備えた津波対策について、順次お答えいたします。
 まず湯浅広港弁天堀水門につきましては、点検の結果、老朽化が著しく、補修する必要があるため、国に対して補助事業の予算を要望しております。
 次に、県内の水門につきましては現在点検中でありまして、今年度末までに取りまとめる予定であります。この点検結果を受けまして、必要な箇所につきまして改修計画を策定していきたいと考えております。
 次に水門の遠隔操作等につきましては、津波に対する水門の管理のあり方について検討していく中で機能改善の必要性を検討してまいります。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) ミカン対策についてお答えいたします。
 ミカンの販売、PRの強化、消費拡大についてでございますが、厳しい経済情勢による消費の低迷や若年層を中心とした果実離れが進む中で、ミカンの消費拡大は重要なことであると考えてございます。これまでも県では、生産者団体等と連携しながら、テレビや新聞等のマスメディアを活用した県産ミカンのPR、首都圏でのアンテナショップや農林水産品フェアの開催、健全な食生活を目指した毎日くだもの二百グラム運動の推進など、さまざまな取り組みを行ってございます。また、発がん抑制効果があると言われているベータクリプトキサンチンを多く含むミカンの機能性に着目し、新たな観点からの消費拡大についても努めてございます。
 今後、さらに食生活の改善に関する教育の重要性を踏まえ、学校教育との連携を図りながら、将来を見据えた消費拡大対策に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に品種改良の研究や優良品種の普及についてでございますが、本県におきましても優良品種の育成は果樹振興の中で特に重要な柱の一つと位置づけており、これまでに果樹試験場での育種や枝変わりによる優良系統の探索に努め、宮本早生や紀の国温州など極わせからおくてまでの十数品種を育成してございます。その中で、近年の消費者ニーズに合った、糖度が高く、味のよい由良早生や田口早生といった県内で育成された品種を、県果樹農業振興アクションプログラムに基づき、育苗組合や生産者団体と連携を図りながら生産拡大に向けて取り組んでいるところでございます。県といたしましても、このような取り組みを一層支援するため、改植を推進する新規対策として和歌山の果樹ブランド強化対策事業を今議会にお願いしてございます。
 今後、新しく整備しました果樹試験場を中心に、地元農家との情報交換など連携をより密にしながら、次代の和歌山を担うオリジナル品種の育成に一層努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 再質問をさせていただきます。
 水環境保全条例の制定については、他県の動向も踏まえて勉強していきたいと、こういう意味の答弁をいただきまして、積極的な答弁として受けとめて歓迎をしたいというふうに思います。
 新しいことを一つ起こすということは大変なエネルギーが要ることですので、ぜひ環境行政のトップとしてリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思います。
 産廃処理や残土の処理──残土と称して行われている不正な処理のことですけれども、住民側にとって本当に悩みというのはストレートで、深刻なんですね。例えば、先ほどの土砂の投棄を言いますと、どこの業者さんだかわからないような遠くのトラックが最近どんどん土砂を運んでくるようになった、一体どこの土砂かもわからない、一体この先どれだけ持ってくるつもりなのかも周りの人にはわからない、こういう状況なんですね。
 あるところの話を聞きますと、心配して住民が役場に問い合わせたら、所有者は転々としたあげくに県外の人が所有されている、土砂を搬入されている業者さんもペーパーカンパニーで、実態のない業者さんだ、だから問い合わせをしようにも、注文をつけようにも相手先がないと、こういうことが往々にしてあるわけですよね。それで町や振興局、保健所の方に相談に行くわけですが、廃棄物が混入されて水が危ないというふうに思うし、ひょっとしたらあんな土の入れ方やったらいつ崩れてくるかわからんということで駆け込むわけですけれども、ところがそこでは、廃棄物を捨てたりということがわかったり、それから水路をふさいだりという法律違反があればその法律に基づいて指導はできるけれども、今のところは土を入れるという届けも出ているし、見守る以外にないんだと、そういうやりとりがよくあるわけなんですよ。ですから、住民の側としては非常に心配事はストレート、全然住民には情報が伝わってこないという悩みがある。
 一方、行政の側としても、これまでずっと悩んでこられたというふうに思うんですね。今回、今の答弁の中では、特別パトロールや、また定時定点の観測など、いろんなご苦労や新しい努力についてご答弁いただきましたけれども、今まで本当に歯がゆい思いをしてきたというふうに思うんですね。私どもも、こんなことがあるから見に来てくれと保健所に電話したら、電話一本で飛んできてくれたりと、本当に頭の下がる思いなんですが、広い管内、なかなか行き届かないというもどかしさもあるし、環境の側としては、そういう土砂の投棄があっても周りから見守っていくしかない、違反や事件が起こってから動くと、こういう後追いの行政だという面は否めない。そして、ここが不正な処理をしたということで正したら、今度はまた別の谷で始まるというふうにモグラたたきのような状況にあるというのも、これまた一つの状況だというふうに思うんですね。ですから、今回、新しいメニューも含めて現在枠の中でできること、いろいろいただきましたけれども、現行の枠では限界があるんじゃないですか。その認識があるかどうかというのをもう一度お聞きしたいというふうに思うんですよ。
 私は、水環境の条例というのは、森林の涵養とか下排水の問題とか、また河川の問題とか、いろんな間口があると思うんですけれども、今回特に土砂や残土と称して偽っている問題や、また土地造成、こういったことにかかわっての分野では、やっぱり現行の枠では限界があると、一歩進んでやっていきたいと、そういう問題意識が県としてお持ちかどうかというのが問われると思うんですね。ぜひその部分のご答弁を再度環境生活部長からお願いをしたいと思います。
 それから津波対策では、知事の方からも津波防災教育センターをやっていくのであれば手を差し伸べてやっていきたいというご答弁をいただきました。ありがとうございます。また水門の方では、具体的な予算要望の話もあって、大変いい回答だったと思うんです。
 住民の命を守っていきたいという一番の共通の思いをぜひ胸に、さまざまな要望や避難対策にも住民とキャッチボールしながら今後とも進めていっていただきたいというふうに思います。
 ミカン対策については、販売強化や消費拡大、それから品種改良について部長から取り組みとともに決意も述べていただきました。このままではミカンづくりを続けていけないという、先ほどご紹介したミカン農家の叫びというのは本当に切実です。県としても必死の努力を重ねてお願いをしておきます。
 それから、学校給食のお話も出ましたので、一言要望しておきたいんですが。
 消費拡大には、子供たちの食生活をどうやって豊かにしていくのかというのは大変大事な問題だと思うんですが、ミカン産地の私どもの地元でも、年間に小学校や中学校で一体どれだけミカンが給食に出るのかと調べたら、多分、年間三個か四個ぐらいなんですよ。多い有田市さんなんかでも十個ぐらいだというふうに私は思うんです。ですから、地産地消の運動も含めて、県行政の力を合わせて頑張っていただきたい、こういうことを要望しておきたいと思います。
○副議長(吉井和視君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 廃棄物の不法投棄に関しまして、現行の制度や枠では限界があるのではないかというご質問でございますけれども、本年度から保健所に環境指導員を配置いたしまして、それから民間パトロールの巡回回数も相当ふやしてございます。こうしたことを踏まえまして、地域に設置してございます廃棄物適正処理地域連絡会において十分話し合ってまいりたいと思います。
 また法制度につきまして、先ほどの答弁でその有効性、必要性について勉強すると申し上げましたが、そういった点についても十分検討してまいりたいというふうに考えてございます。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十一番松坂英樹君。
○松坂英樹君 ご答弁をいただいたんですが、大枠は先ほどの答弁から変わらなかったというふうに思うんですね。ですから、私どもはこの先で、例えば議員提案の条例案なんかもお示しをして、皆さんと一緒に具体的な議論を重ねていきたいというふうに思うんです。
 先進県の実態や苦労、そして成果なんかも、私自身も調査して、和歌山県が環境の先進県として、環境を大事にする県として頑張っていけるように、知事初め関係部局が力を合わせて取り組んでいただけますよう要望いたしまして、私からの質問を終わりたいというふうに思います。
○副議長(吉井和視君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十番新田和弘君。
  〔新田和弘君、登壇〕(拍手)
○新田和弘君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 まず初めに、地方税財政改革に関連してお尋ねいたします。
 平成十二年四月、地方分権一括法が施行され、機関委任事務が全廃されるとともに国の関与ルールの法定化、必置規制の廃止・縮小等が実現し、国と地方が対等・協力の関係となる第一次分権改革が行われました。次に実現すべき第二次分権改革は地方税財源のあり方に関するものであり、今日まで政府において地方税財源に関して三位一体の改革が検討されてきました。
 地方税財政制度において分権改革が目指す方向は、地方公共団体の歳入・歳出両面において自己決定、自己責任を拡充すること、さらに地域住民の受益と負担の関係を明確化する観点から地方公共団体の歳出規模と地方税収の乖離を縮小することであります。したがって、この改革は地方歳入における地方税の比重をどれだけ高められるかという点がポイントとなり、今日の厳しい経済状況においては、歳入の中立型の考えに立って、国と地方の税源配分の見直しによって税源移譲を行い、地方税の充実を図ることが現実的であると言われております。
 去る六月十八日、政府の経済財政諮問会議は国と地方を通じた税財政の三位一体改革を小泉首相の判断で決定し、経済財政運営の基本方針いわゆる骨太方針第三弾の原案を固めました。この三位一体改革の内容は、国から地方への補助金約二十兆円のうち、平成十八年までの三年間に四兆円程度の補助金を削減する、削減分のうち義務教育費の人件費など義務的経費については全額を地方に税源移譲し、義務的経費に当たらない補助金は削減分の八割を税源移譲する、公共事業関係の国庫補助負担金等についても改革する、移譲される税源については基幹税を基本とするとして、具体的な税目は示されませんでした。一方、地方自治体が独自のアイデアで課税する課税自主権の拡大が明記されました。地方交付税につきましては、地方の歳入不足を穴埋めする財源保障機能を縮小するとともに、地方交付税の不交付団体の割合を拡大するとしております。また、地方財政計画の歳出を徹底的に見直すことも挙げられております。
 そこで、木村知事にお尋ねをいたします。
 二十一世紀の地方分権型社会の構築を目指す本県にとりまして、三位一体の改革が必要であります。とりわけ税源移譲は、片山総務大臣が提言している、税の中立性から所得税を減税した分、住民税を増税する、消費税の国、地方の割合を見直すことにより安定財源による税源移譲が必要であります。しかし、補助金の削減においては、八割の税源移譲がされても、地方において事業を行っていく場合、二割の事業の整理・縮小を行うか地方単独の財源を求めるか、いずれかとなります。今後の財政運営や本県に必要な公共事業に対して、その手法など、知恵と工夫がぜひとも必要であります。
 知事は、三位一体改革を踏まえて今後本県の財政運営にどのように対応されるのか、平成十六年度予算編成にどう取り組まれるのか、お尋ねをいたします。
 次に、本県では財政健全化に向けた取り組みとして平成十一年八月に財政運営プログラムを策定し、平成十五年までの四年間を財政健全化期間と位置づけ、改革を行い、平成十二年五月には財政運営プログラムIIを策定し、今後のとるべき方策と歳出削減に努めてきました。プログラムIIでは平成十五年度財源不足見込み額百六十億円と想定し、削減目標百二十五億円、要調整額三十五億円とのことでありました。本県では、人件費の削減を初め機構改革の実施、補助金の改革、施策の抜本的見直し等、今日まで収支差の解消に努めてこられたところでございます。
 そこで、関係部長にお尋ねをいたします。
 一、財政健全化期間において本県財政の収支差がどのように改善をされたか。
 二、三位一体改革を受けて国は地方財政計画の見直しを示し、国の十六年度予算を対前年伸び率ゼロ方針と示されておりますが、今後、職員の給与を含む人件費にどう対応されるのか。
 三、地方税財源の充実については、国から税源移譲、法人事業税への外形標準課税の導入、及び課税自主権の拡大による法定外課税等に本県はどのように対応されるのか。また、税収見通しはどうか。
 四、三位一体改革で義務教育費の国家負担金が削減され、十割税源移譲されることになりました。本県では十五年度当初で三百二億円が計上されております。本年度から小学校一年生におきまして少人数学級が県下で十四校実施されておりますが、教育長は少人数学級の拡充にどう取り組まれるのか。
 以上四点、お尋ねいたします。
 次に、食の安全・安心を推進する体制の構築についてお尋ねをいたします。
 一昨年九月、BSE発生で牛肉をめぐるパニックが起きて以来、買い上げ牛肉の偽装問題、食品表示偽装問題、さらには無登録農薬使用や中国冷凍野菜の残留農薬の問題など不祥事が相次ぎ、食の安全に対する消費者の意識は大いに高まってきました。
 本年五月、食の安全と国民の健康を守ることを目的とした食品安全基本法が成立し、施行は七月一日となる見通しであります。さらに、農薬や添加物などの使用規制や罰則強化、有害物質が検出された場合の流通禁止などを盛り込んだ改正食品衛生法と、健康食品の虚偽または誇大広告の禁止条項を盛り込んだ改正健康増進法が五月に成立。さらに牛肉トレーサビリティー法案、農林水産省設置法改正案など、五つの関連法案も六月四日に成立いたしました。これにより、食の安全確保に向けた法体系が総合的に整い、食品安全行政が大きく前進することになりました。
 本県では、本年の機構改革で、環境生活部に食の安全局、農林水産部にエコ農業推進室を設置し、消費者の立場に立った食品の安全を確保するため、総合的な食品の安全対策を推進する体制の構築を目指しております。
 本県は農産物の生産高が、平成十三年度の農水省統計によりますと、梅がシェア五八%と全国第一位を占め、カキ一八・三%、第一位、ハッサク五九%、第一位、ミカン一二・一%、第三位など、果樹王国と言われてきております。また漬物の出荷額でも、梅加工を中心に総額六百十四億八千万円、全国シェア一二・五%と、第一位であります。
 こうした状況を踏まえて、本県では食の安全推進本部及び食の安全推進会議を立ち上げ、BSE、残留農薬、不正表示等の問題発生に対して消費者の食品安全に対する不安を払拭するため、生産から消費に至るまで一貫した食品安全体制の確立を図ろうとしています。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 本県の食の安全推進体制の構築と食の安全確保のための基本指針、アクションプランの策定にどう取り組まれるのか、お尋ねをいたします。
 次に、関係部長にお尋ねをいたします。
 一、食の安全・安心を消費者に直接知っていただくため、本県における農畜産物の生産履歴情報を開示するためのトレーサビリティーシステムの構築にどう取り組まれるのか。
 二、今回、残留基準が設定されていない農薬を含む食品の流通を禁止するポジティブリスト制が導入され、厚生労働省は今後三年をめどに残留基準の策定を急ぐ方針ですが、本県の農産物の安全性の確立のため、今後どう取り組まれるのか。
 三、食の安全性を高め、消費費と生産者の信頼を高める上から、食品製造、加工業者に対し、県による簡易HACCP手法の導入が必要でありますが、どう取り組まれるのか。
 四、昨年三月、県は食品衛生法及びJAS法に基づく食品表示の立入検査を実施し、違反のあった施設に対して行政指導を行ってきていますが、今後、法改正を受けて食品表示の適正化にどう取り組んでいかれるのか。
 以上四点、お尋ねいたします。
 次に、新型肺炎(SARS)対策についてお尋ねいたします。
 本年二月、上海と香港を訪れ、ベトナムのハノイ市に行った方が呼吸器疾患でハノイ市の病院に入院した後、死亡しました。その時点では原因がわからないまま同様の疾患が病院内で発生、さらに香港でも多数の患者が発生しました。こうした呼吸器疾患の多発に対し世界保健機構(WHO)は、三月十二日、全世界に新たな感染症、SARSの発生に警告を発しました。さらに、WHOの調査で、SARSは既に昨年十一月、中国広東省で患者が発生しており、同地から各国に広がったと結論づけました。SARSはその後、香港、台湾、モンゴル、カナダなど三十以上の国と地域に広がり、六月十二日現在、患者発生数は八千四百四十五人、死亡者は七百九十人になっています。世界九カ国十三カ所の研究施設で構成する国際的な共同研究により、コロナウイルス科に属する新型コロナウイルスを発見。WHOはこのウイルスがSARSの病原体であると断定し、「SARSコロナウイルス」と命名しました。
 WHOを初め世界各地での研究結果から、SARSが予想以上に強い感染力を持ち、致死性も高い点から、厚生労働省は四月三日にSARSを感染症法に基づく新感染症に指定しました。この結果、患者が発生した場合、知事は特定感染症指定病院への入院勧告・命令を出せることになりました。さらに厚生労働省は、陰圧室など菌を外部に飛散させない特別な病室の確保を進め、患者が発生したときには感染症専門家四人程度で一チームを編成し、迅速に派遣することを決めました。一方、患者発生の際、各自治体の対応策を確立する措置として、都道府県に対してSARS患者が発生した場合の具体的な行動計画の策定を要請しました。
 六月十二日現在、厚生労働省のまとめによりますと、日本での患者数は、疑い例五十二人、可能性例十六人、確定ゼロとなっております。しかし、SARSに感染した台湾人医師が関西、四国を旅行したことにより、立ち寄った施設、ホテル、飲食店など、安全を守る立場から大変な努力が払われました。相次ぐキャンセル等による風評被害は、新聞報道によると四億五千万にも上るとのことであります。
 木村知事は、六月県議会の説明におきまして、「私は、県民の安全・安心を守る立場から、新型肺炎に対する危機管理体制の整備が重要な課題であると認識しております。そのため、和歌山県重症急性呼吸器症候群行動計画を策定し、具体的な対応策を決定するとともに、専門家による医療関係機関連絡会議を開催するなど、体制整備に努めております」と述べております。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 本県では、高野・熊野の世界遺産登録を目指しており、観光立県としてアジアとの交流を推進してきています。新型肺炎に対する本県の相談患者の実態及び行動計画の充実など、新型肺炎に対する危機管理体制の整備にどう取り組まれるのか。
 次に、関係部長にお尋ねいたします。
 一、SARS対策として、感染者を入国させないことが重要であります。本県における港での検疫体制の整備はどうか。
 二、SARSに対する相談体制、患者の搬送、指定病院の整備及び実態はどうか。
 三、指定病院等における医師の確保と院内感染対策はどうか。
 四、県民への正しい知識や予防方法の周知徹底にどう取り組まれるのか。
 五、SARSによる本県への影響とその対応にどう取り組まれるのか。
 以上五点、お尋ねをいたします。
 次に、和歌山市内における街路事業についてお尋ねいたします。
 財政状況の厳しい中、本県では投資的経費が年々減少し、普通建設単独も同様に減少してきましたが、平成十五年度予算におきましては、県勢の活力導出を図るため、予算規模をプラスに転じられたことに敬意を表する次第であります。
 高野龍神スカイライン無料開放に伴う経費を除いても、投資的経費全体で地財計画五・二%減に対して本県では一・五%減となり、普通建設単独で本県では一二・二%増と、投資的経費に力点を置いた予算措置は県民にとって喜ばしいことであります。また、本年四月には待望の第二阪和国道の和歌山北バイパスが開通し、紀の川を渡る紀の国大橋により市内南北の交通渋滞の改善が図られました。
 和歌山市内においては、従来から東西幹線道路の整備のおくれが指摘されてきました。平成十三年九月に都市計画道路湊神前線東工区が開通したのを初め、各路線において当局の努力で事業が進められているところであります。
 そこで、県土整備部長にお尋ねをいたします。
 一、都市計画道路市駅小倉線については、県道井ノ口秋月線道路改良事業として井ノ口─栗栖間千百メーターは工事中であり、栗栖から国道二十四号線に至る千四百メートルは用地買収等が進められております。事業の進捗状況及び供用開始の見通しはどうか。
 二、都市計画道路湊神前線西工区八百二十三メートルについては、現在、新堀橋から国体道路に至る間で施工中であり、市内東部から中心市街地に入る幹線道路となるため、一日も早い完成が望まれております。事業の進捗状況及び供用開始の見通しはどうか。
 三、都市計画道路南港山東線については、西工区二百七十一メートル、東工区六百五十メーター、県道三田三葛線道路改良事業として五百メーター間で事業が進められております。都市計画道路湊神前線東工区が国体道路まで開通したことにより、県道秋月海南線が恒常的に交通渋滞する状況にあります。そのため、南港山東線の早期整備を願っております。事業の進捗状況及び供用開始の見通しはどうか。
 以上三点、お尋ねをいたします。
 次に、教育問題についてお尋ねをいたします。
 平成十五年度の高校入試においては普通科の学区制を撤廃し、県下の中学生が自分の個性を生かした高校を選択できるようになり、入試結果から見ましても比較的スムーズに実施されたとの印象を受けました。各学校が自校のカラーを鮮明にするため学力検査問題を自校作成で実施する高校もふえ、各高校が特色ある学校づくりに意欲を持って取り組まれていると感じた次第であります。
 文部科学省の平成十五年度スーパーサイエンスハイスクールに桐蔭高校が指定を受け、今後平成十七年までの三年間、科学技術、理科・数学教育を重点に、和歌山大学、近畿大学、県立医科大学との効果的な連携を行って課題研究に取り組むとのことであります。また、本年四月より星林高校と和大附属中学が連携型の中高一貫教育を実施し、その成果が期待されております。さらに本県では、併設型の中高一貫教育や六年間一貫教育を行う中等教育学校の導入を目指して昨年十一月に和歌山県中高一貫教育推進懇談会が設置され、本年三月に報告書がまとめられたところであります。
 そこで、教育長にお尋ねいたします。
 特色ある学校づくりとして、本県における併設型中高一貫教育、中等教育学校の実施へ今後どう取り組まれるのか、また総合学科、単位制高校の導入をどう推進されるのか、お尋ねをいたします。
 次に、スポーツ振興の観点からお尋ねをいたします。
 去る五月、友人の紹介で和歌山オレンジ体操クラブの練習を和歌山北高校の体育館において見学をいたしました。高校生、中学生、小学生が熱心に各種目の練習に取り組んでおり、指導される先生方も一人一人の能力に合わせて指導に当たっておられました。説明によりますと、日本体操協会ジュニア強化選手や日本体操協会優秀選手賞を受賞した選手もいて、充実した練習内容でした。
 また、昨年、県議会文教委員会で長崎県を視察したときに、長崎県の高校ではスポーツ推薦による入試を実施しており、各高校では自校のスポーツ種目を決め、その学校へ県下から優秀な選手を受験してもらって集める、教育委員会はその学校へ指定種目の専門の体育教員を配置することで競技力の向上を図っているとのことでした。こうしたスポーツ推薦は島根県や佐賀県でも実施し、成果を上げているところであります。
 本県においても、推薦入試において、スポーツで活躍した受験生を評価して入学させてきておりますが、各学校がスポーツ種目まで決めていないため、高校総体や国体などでの活躍につながりにくいのではないかと感じる次第であります。
 そこで、教育長にお尋ねいたします。
 一、高校の推薦入試にスポーツ推薦枠を導入し、その学校に指定種目の教員を確保して優先的に配置することにより競技力の向上を図られてはどうか。さらに、現在、行革実施期間ということで体育指導員の採用が中止されておりますが、募集されてはどうか。
 二、本県においては体操競技を行う施設が少ない状況にあり、来年度からビッグホエールを教育委員会が管理委託を受けることから、広く各スポーツ競技に利用していただくためにも体操競技が実施できる会場に改善されてはどうか。
 三、高校生のスポーツ強化事業としてハイスクール強化指定校事業やジュニアの競技力対策としてtotoの助成金と県費によるきのくにジュニアトレーニングセンター事業がありますが、こういった事業を充実させ、競技力向上に取り組まれてはどうか。
 以上三点お尋ねいたしまして、第一回目の質問とさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました。
○副議長(吉井和視君) ただいまの新田和弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、三位一体の改革に伴う来年度を中心とする本県の財政運営についてのご質問でございます。
 三位一体の改革は、総理大臣の決断によって税源の移譲ということも含まれた形で一応決まったわけですけれども、今後の動きというふうなものはなお予断を許さないものがありますし、それから補助金がどうなっていくのか、交付税がどうなっていくのか、細部については何も決まっていない状況でございます。
 しかしながら、今後こういうことの中で、国も税源移譲ということで非常な犠牲を払うわけでございますけれども、地方の方も相当厳しい状況になってくるということは間違いないことだと思いますので、この動きは来年度の和歌山県の予算編成にも大きく影響してまいりますので注視をしてまいりたいと思いますし、それからいたずらに地方に負担がかかってくることのないように必要に応じて国に対しても意見を申していきたいというふうに思っているところでございます。
 それから次に、食の安全推進体制の構築と基本方針やアクションプログラムをつくりなさいというご質問でございました。
 ご案内のように、現在、食品の偽装表示でありますとか、それから無登録農薬の使用ということで世間が非常にこの食の安全ということに関心が高まってきているところでございます。そういう中で、本県でもいち早くこの四月から食の安全局という耳なれない局でございますけれども、つくって、これへの対応に先進的に取り組んでいるところでございます。中身が、まだ割と新しい分野でございますのではっきりしないところがあるんですけれども、まず食の安全推進本部というのを副知事をキャップにして設けまして、そこで基本方針それから具体的なアクションプログラムというのを策定していきたいというふうに思っております。
 それから、この食の安全ということについて、役所の独善というふうなことになってはいけませんので、食の安全県民会議というものを設置して、県民や生産者、もちろん県、それから学識経験者、いろんな人に入ってもらって若干厳し目の対応というのがとれるように、そしてまたそのことが和歌山県でつくっている食品なんかが非常に安心だというふうなことから信頼性を高めていくという面も大事だと思いますので積極的に取り組んでいきたいと、このように思っております。
 それから、SARSへの取り組みでございます。
 SARSにつきましては、幸いなことに、ここのところ外国においても症例が減ってきているというか、なくなってきたところがございます。しかしながら、聞くところによりますと、これまた空気の乾燥する冬になってくると再発するようなおそれもあるということで、手を緩めることができない状況かと思います。そういうふうな中で、県の方といたしましては、今度の騒ぎの中で、保健所を窓口にしたわけですけれども、二百五十件ぐらいの問い合わせが、私の方は大丈夫だろうかというようなことでありました。幸いなことに、これは全部大丈夫だったわけですけれども、いずれにせよ、こういうふうな相談窓口の体制を確実に整備していく、それからまたそういう二百五十件の問い合わせなんかをもとにして、不安の解消とか知識の啓発ということについての知見を蓄積していって適切な対応ができるようにしていかないといかんと思っておりますし、それからアイソレーターという患者を搬送する機械、これも先般購入いたしました。それから、特定の病室を減圧して菌が外へ出ないようにするような設備も整えました。しかしながら、先般、台湾の医師の人がこの近畿を──和歌山県は幸い来なかったんですけれども──回ったときのパニック状態というふうなこともあったわけでございまして、いずれにせよ、こういうことは実際起こったときにどういうふうに迅速に的確な対応がとれるかということが一番大事です。
 先ほど議員のご質問の中にもありましたように、和歌山県は来年世界遺産の登録を目指して観光立県ということで売り出していこうとしているわけで、そういうときに、こういうふうなことでもし万が一不幸にも何か起こったときに適切な対応がとれなかったということになったら大変なことになりますので、流行は、ちょっと今はおさまってきているとはいうものの、こういうふうな危機における管理体制ということについては今後とも十分意を用いてやっていきたい、このように考えております。
○副議長(吉井和視君) 総務部長宮地 毅君。
  〔宮地 毅君、登壇〕
○総務部長(宮地 毅君) 地方税財政改革の関連についてお答えを申し上げます。
 まず、財政運営プログラムに基づく財政健全化期間中の収支改善についてでございますが、平成十二年の五月に策定いたしました財政運営プログラムIIでは、平成十五年度当初予算時点での何も対策を講じない場合の収支不足額を百六十億円と見込んでおりましたのに対しまして、実際の平成十五年度当初予算では収支不足が七十八億円となったところでございまして、相当程度収支不足は解消しておりますが、単純に数字を比較いたしますと、プログラムで計画をしました目標額三十五億円には及びませんでした。
 ただし、この結果につきましては、歳出の方では人件費を初めとして歳出削減に努めて計画を上回る成果を上げましたものの、景気低迷により県税収入が計画策定時点の見込み額を百三億円下回るなど、歳入面で計画どおりにまいらなかったものでありまして、そうした点を加味すれば相当の成果があったものと考えております。
 次に、職員の人件費につきましては本県独自の抑制策に努めておりまして、職員定数の削減のほか、給与カットの実施、特殊勤務手当の見直し、超過勤務手当の縮減などを行ってまいりました。しかしながら、ご質問にもございましたように、今後とも本県におきましては大変厳しい財政運営を余儀なくされるものと予想されるところでありまして、さらに徹底した事務事業の見直しや組織機構の簡素効率化を行うことによります定員削減など、人件費の抑制に引き続き努めてまいりたいと考えております。
 次に、地方税財源の充実と税収見通しについてお答えを申し上げます。
 まず税源移譲につきましては、去る十八日に政府の経済財政諮問会議がまとめました「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」の原案におきまして、税源移譲は基幹税とするなどの方向が示されておりますが、具体的な税目についてはまだ触れられておりません。
 国庫補助負担金の廃止・縮減や地方交付税の縮小に見合う税源移譲は、地方公共団体間に税源の格差がある以上、本県にとって厳しいことも予想されるところでございますが、今後ともより偏在性の少ない所得税や消費税の移譲について提言するなど、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。
 次に法人事業税の外形標準課税につきましては、平成十五年度の地方税法の一部改正によりまして、資本金一億円を超える法人を対象に平成十六年の四月一日以降開始の事業年度から適用され、所得課税の割合を四分の三に、給与報酬額や資本等の金額を基準としました外形標準課税の割合を四分の一とするものでございまして、今議会において県税条例の一部を改正する条例案を提案させていただいております。
 なお、対象となります法人に係る詳細な給与報酬額等につきまして把握しておりませんので、税収の見通しについては不透明なところでありますが、このたびの外形標準課税の導入に当たりましては、過去十年間の全国の事業税額をもとに税収中立で制度設計されているものと承知しております。
 次に、法定外課税の導入や超過課税の実施といった課税自主権の活用につきましては、受益と負担の関係を明確にして今日的な行政課題を解決していく上で有効な手段の一つであると考えておりまして、今後とも検討を進めてまいりたいと考えておりますが、主要な税源が法定税の対象になっているという現状におきましては、自治体の税財政基盤の拡充を図ることには限界があるものとも考えてございます。
○副議長(吉井和視君) 農林水産部長阪口裕之君。
  〔阪口裕之君、登壇〕
○農林水産部長(阪口裕之君) 食の安全・安心を推進する体制の構築についてお答えいたします。
 まず、トレーサビリティーシステムの構築への取り組みについてでありますが、現在、食に対する安全・安心が強く求められており、県といたしましても、消費者の視点に立ち、県産農畜産物の安全性を確保していくことが大変重要と考えてございます。
 まず牛肉につきましては、議員お話しの牛の固体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法が本年十二月から生産段階を対象に施行されますが、県ではこれに先行して、本年度から熊野牛について生産から流通までの経歴をたどる畜産わかやまトレーサビリティシステム導入モデル事業に取り組むこととしてございます。
 一方、農産物につきましては、生産者、流通業者、消費者、学識経験者等の代表から成るトレーサビリティシステム推進本部を六月四日に設置し、農場から食卓まで生産者の顔の見えるシステムづくりに取り組むこととしており、第一回の会合を七月中旬に予定しております。
 また、生産農家では、ことしから農薬や肥料の使用について記帳運動が積極的に展開されており、食の安全性に対する意識が高まっている中で、新たにミカン・梅・カキの主要果樹三品目について国の補助事業を活用し、生産履歴が開示できるシステムの構築に向けて取り組むこととしてございます。
 次にポジティブリスト制導入に伴う本県農産物の安全性の確立への取り組みについてでございますが、国においては食品の安全性を確保するため、去る五月二十三日に食品衛生法を改正し、今後三年以内に残留農薬基準の設定を進め、基準値を超えた食品の流通を禁止するポジティブリスト制を導入することとしてございます。
 一方、農薬取締法におきましても、残留農薬基準との整合を図るため、散布回数、散布濃度などの農薬使用基準の見直しを進めることとなってございます。したがいまして、農薬取締法に基づく使用基準を遵守しておれば食品衛生法の残留農薬基準を超える心配はないものと考えてございます。
 県といたしましては、農薬使用基準の基礎データづくりに取り組むとともに、より一層関係機関、団体と連携を密にし、あらゆる機会を活用しながら農薬使用者に対する適正使用の啓発に努めてまいりたいと考えてございます。
○副議長(吉井和視君) 環境生活部長津本 清君。
  〔津本 清君、登壇〕
○環境生活部長(津本 清君) 食の安全についての簡易HACCP手法の導入についてでございますが、食品の高度な衛生管理手法として国が総合衛生管理製造過程の承認制度に取り入れているHACCPいわゆるハサップは、食の安全確保のため、広く普及させる必要があると考えてございます。
 県といたしましても従来より衛生管理水準の向上に努めておりますが、本県の産品が衛生管理面で高い評価を受けることはブランドとして確立するための基本であり、食の安全確保の基本指針策定に際して、県独自の簡易なHACCP規格の作成を重要課題として検討を進めてまいりたいと考えてございます。
 次に食品表示の適正化についてでございますが、消費者の信頼を回復するために適正な表示を行うことは、基本的には事業者みずからの責任として企業モラルの向上に努めることが必要です。そのため、今回の食品衛生法等の改正により、表示義務違反に対する罰則と監視・検査体制の強化についての法整備が図られたところでございます。
 現行の食品表示制度は、食品衛生法、農林水産物の品質表示のためのいわゆるJAS法など複数の法律により規定されておりますが、県といたしましては、新たに設置した食の安全局を窓口に、各担当部局が密接な連携を図りながら消費者と事業者がともに表示制度を正しく理解し、相互の信頼関係が構築できるよう情報提供を行うとともに、監視指導計画の策定や本年度から新たに設置する食品表示ウオッチャー制度の活用などの取り組みを強化してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) SARS対策についてお答えいたします。
 まず港での検疫体制についてでございますが、検疫所では中国、香港、台湾からの入国者に健康状態質問票を配布し、健康状態を確認するなどし、症状があれば医師が診察するなどの対応を図ることとしております。また、全乗組員に対しても発熱などの健康状態を確認しており、入国後、発熱があれば速やかに保健所等へ連絡するよう指導しております。
 和歌山下津港に関しましては、県、検疫所、入国管理局、海上保安庁等による連絡会議を開催したほか、昨日田辺で、地元保健所、海上保安部、消防本部の合同で、船舶乗組員のSARS感染が疑われるとの想定のもと訓練を行っております。
 次に相談体制ですが、各保健所に相談窓口を開設し、二十四時間体制で対応しております。
 また、今月十三日に患者搬送用車両とアイソレーターを購入し、これを使用した患者搬送訓練を県立医大附属病院紀北分院で実施いたしました。
 患者の診療については県内九病院で、入院については陰圧室を整備した六病院で担当いたします。
 次に医師の確保と院内感染対策についてでございますが、感染症の専門医は全国的に不足しているため、SARSは主として呼吸器の専門医が対応することとなっております。
 院内感染につきましては、従来から各医療機関において対策委員会を設けるなどの取り組みを行っておりますが、入院を担当する六病院では院内感染対策の確認徹底等を行っております。
 次に正しい知識や予防方法の周知についてでございますが、現在までテレビやラジオスポットを放送したほか、チラシ五千枚とポスター百枚を製作し、配布いたしました。また、県ホームページの活用やマスコミへの情報提供を行うとともに、各保健所長が地域に出向く講習会等を四十回開催するなど、県民への正しい知識の普及、不安解消に努めております。今後も積極的に情報提供等を行ってまいりたいと考えております。
 以上です。
○副議長(吉井和視君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) SARSによる本県への影響と対応でございますが、製造業につきましては、発症地域への出張を控える企業が多いものの徐々に緩和の方向に向かっており、現在のところ、県内企業に目立った影響は出ていないという状況でございます。しかし、観光への影響につきましては、香港、台湾を中心とする東アジアからの観光客が激減していることから、観光関連事業者に影響があると考えられます。
 対応といたしましては、関連企業や業界に発症地域の動向や予防対策等の情報提供を行うとともに、県内中小企業の資金繰りへの影響も懸念されることから、県の制度融資などによる金融対策を行ってきたところであります。また観光面では、国内観光客の誘致に取り組む一方、香港、台湾からの観光客は平成十四年実績で四万人と大変多い状況にあり、この問題が終結された時点で一日も早く誘客ができるよう準備を行っているところであります。
 いずれにいたしましても、長期化すると影響も大きくなりますので、今後も引き続き県内企業等への状況を把握し、対応してまいります。
 以上でございます。
○副議長(吉井和視君) 県土整備部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○県土整備部長(大山耕二君) 和歌山市内の街路事業について、順次お答えいたします。
 和歌山市内の幹線道路につきましては、県市で役割分担して整備を行っております。整備に当たっては土地収用法を活用するとともに、複数の渋滞交差点の早期事業化や買収済みの用地を活用して早期に効果を発揮させるべく暫定二車線での供用を図るなど、きめ細かい事業展開に努めております。
 まず市駅小倉線ですが、松下公園から県道岩橋栗栖線までの一・一キロメートルは、平成十六年度供用を目指しております。県道岩橋栗栖線から国道二十四号までの一・四キロメートルにつきましては用地買収率が七〇%になっておりまして、平成二十年ごろの供用を目指しております。
 次に湊神前線西工区ですが、きめ細かい事業展開の一環として本年三月に国体道路から西行きの一方通行を解消し、好評をいただいております。引き続き宮前消防出張所付近の狭隘区間につきましても本年度暫定二車線で供用を図り、平成十六年度には全線供用を目指してまいります。
 次に南港山東線ですが、国体道路から県道三田海南線までの一・九キロメートルを事業中であります。このうち、西工区〇・三キロメートルにつきましては平成十六年度供用を、また東工区〇・七キロメートルにつきましては本年度から和田川橋梁工事に着手しまして平成十八年度供用を目指しております。さらに、続く東側の〇・五キロメートルにつきましては用地買収率が一七%となっておりまして、引き続き用地買収を促進してまいります。
 以上です。
○副議長(吉井和視君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 教育とスポーツに関する八点についてお答えいたします。
 まず少人数学級につきましては、本年度から小学校第一学年の児童が初めての学校生活で基本的な生活習慣や基礎学力を身につけることができるよう、県の単独措置により三十五人程度の学級編制を行ったところです。
 今後、これらの学校でどのような教育効果が見られるか十分検証した上で、学級編制の弾力化のあり方について検討してまいります。
 次に、昨年設置いたしました中高一貫教育推進懇談会で有識者や教育関係者から幅広いご意見を賜り、従来の連携型に加え、特色ある併設型や中等教育学校の設置を軸に推進していくのが望ましいとの提言をいただきました。これを受けて、現在、教育委員会事務局内のプロジェクトチームにおいて、その具体化に向けた協議を行っているところでございます。
 総合学科については、地域性や学校の特色、生徒のニーズ等を勘案し、三校目の設置を目指して取り組みを進めております。
 また、本県では単位制高校を総合学科を含めて十一校設置してきております。現在、その割合は全国的に見て極めて高い状況にございます。
 次にスポーツ競技力の向上対策ですが、議員ご提言のスポーツ推薦枠の導入については、部活動等、各学校の特色に応じて競技種目を特定した形での推薦を取り入れるなど、現行の推薦入学制度をより有効に活用できるよう幅広く検討してまいります。
 また、中学・高校の保健体育科教員をここ八年間継続して採用してきております。その際、各競技種目の専門的な力量の高い者、すぐれた指導者を確保するとともに、教員配置についても各学校の競技力向上につながるよう工夫し、努力してきたところであります。
 次にビッグホエールでの体操競技の実施については、収納スペースの関係で競技用器具が備えられていないという問題があり、これを解決していく必要があると考えております。
 また、きのくにジュニアトレーニングセンター事業において、県内の小中学校から優秀なジュニア選手を発掘し、各地域の拠点施設で育成するとともに、現在、県立高校十一校に導入しているハイスクール強化指定校で継続的な指導を行っております。今後、こうした事業をより一層充実させることにより、全国トップレベルを目指して競技力の向上に努めてまいります。
○副議長(吉井和視君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(吉井和視君) 以上で、新田和弘君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は六月二十三日定刻より再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時四十五分散会

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