平成15年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(平越孝哉議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時四分再開
○議長(宇治田栄蔵君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 この際、報告いたします。
 議案の追加提出がありました。
  〔巻末の「参考資料」を参照〕
  【追加日程 議案第七十八号から議案第九十五号まで】
○議長(宇治田栄蔵君) お諮りいたします。ただいま報告の議案第七十八号から議案第九十五号までを本日の日程に追加し、これより直ちに議題といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(宇治田栄蔵君) ご異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 議案第七十八号から議案第九十五号までを一括して議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず当局の説明を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいま上程されました諸議案について、ご説明申し上げます。
 今回追加提案いたしました補正予算案は、冒頭ご提案いたしました経済対策予算以外の平成十四年度一般会計予算等の所要の補正でございます。
 その主な内容といたしましては、合併後の新市町村が実施する町づくり等を支援するための市町村合併特例交付金(仮称)の創設に向け、地域振興基金に所要財源の一部を積み立てるほか、公共事業、災害復旧事業等の事業費の確定等に伴う所要の補正でございます。
 また、特別会計、企業会計におきましても、事業費の確定等に伴う所要の補正を行っております。
 その他の案件といたしまして、議案第九十五号は建設事業施行に伴う市町村負担金について議決を求めるものでございます。
 何とぞ、ご審議の上、ご賛同賜りますようよろしくお願いを申し上げます。
○議長(宇治田栄蔵君) 以上で、当局の説明が終わりました。
  【日程第二 議案第一号から議案第十九号まで、議案第二十
二号から議案第六十六号まで、及び議案第六十
八号から議案第七十七号まで】
  【日程第三 一般質問】
○議長(宇治田栄蔵君) 次に日程第二、議案第一号から議案第十九号まで、議案第二十二号から議案第六十六号まで、及び議案第六十八号から議案第七十七号までをあわせ一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 三十一番平越孝哉君。
  〔平越孝哉君、登壇〕(拍手)
○平越孝哉君 議長の許可を得て、今期最終の平成十五年二月定例会の一般質問に当たって、最初の質問の機会をお与えいただきました皆さんに心から感謝を申し上げますとともに、今期を最後にご勇退される議員諸兄に、長年にわたる和歌山県勢発展へのご労苦に対し深甚なる謝意を表し、今後さらに一層のご活躍をお祈り申し上げながら、私の質問をいたします。
 一昨年の同時多発テロやその後の戦争、さらには新たなテロ、そして戦争への不安などにより、時代は混迷しております。米国の景況後退により、まさに世界同時デフレ不況の様相を示し、グローバル社会時代の一翼を担う我が国の政治経済への影響が直ちに響いてまいっております。また、拉致問題や北朝鮮の核開発問題など課題は山積しており、我が国の社会経済は今大きな転換期にあります。そして、戦後我々が経験したことのないデフレ経済が継続し、経済活動と国民生活に大きな影響を与えています。このような中、地方の行政も大転換を求められております。中央の発想に基づく画一的な行政運営でなく、地域の発想や個性に根差す多様な地域経営を展開し、地域から始まる行政への大転換を進める必要があります。
 このような社会経済情勢の著しい変化の中で、木村知事は、和歌山らしさを売り出す積極性を持って、これまでも緑の雇用事業の推進を初め、地方基準による公共事業の推進や地球温暖化防止対策のための環境林整備、そして特区構想など、地域の特性、風土を生かした地域発のスタンダードづくりを進められ、全国に向け、日々、和歌山発の情報を発信されております。最近では、どこに行っても木村知事は改革派知事として名が通るようになり、それと同時に和歌山県の名も全国に発信され、私も県民の一人として大変心強く思っている次第であります。
 我が和歌山県は、悠久の時を重ねた歴史に根差した文化や伝統が息づいております。地域が持つ潜在能力や魅力を引き出し、和歌山県の経済とその魅力を再生すべきであると考えております。このような視点から、以下の質問をいたします。
 まず、平成十五年度当初予算についてであります。
 我が国経済は、デフレ不況の出口を見出せない状況にあります。国民が期待する不良債権処理など国の構造改革も一向に進まない中、本県の状況を見ましても、幾つかの経済予測で平成十四年度の企業収益が増益に転じると言われてはいるものの、現実には昨年一年間の企業倒産が一昨年を上回り、高い失業率、高校生の就職難など、雇用情勢も依然として極めて厳しい状況のまま推移しております。また、このような状況の中で、個人消費も好転の兆しが見えないなど、県民生活にも閉塞感があふれております。このように、我々県民の心も萎縮しつつある中、県民が県政に対して最も望んでいるのは一刻も早い活力あふれる和歌山県の復活ではないでしょうか。
 知事は所信表明の中で、本年が我が国経済の歴史的分岐点であり、現在の閉塞感を打ち破るには、ただ国の改革を待つのではなく、地方がまずその迅速性を生かし、日本のあるべき姿を見据えた地方独自の改革を積み重ねることが何よりも重要である、また地方が改革を実践し、活力を取り戻すことが我が国の再生に大きな展望を開くものであると述べられております。知事のこの言葉は実に力強く、また私を初め県民皆、大いに期待するところでもあります。
 さて、現在の経済状況を反映して、県税収入が来年度なお六・二%の減収が見込まれるなど、極めて厳しい財源状況の中で、予算編成にも大変なご苦労があったものと推察をいたします。平成十五年度予算は対前年度比五・八%、高野龍神スカイラインに係る経費を除いても〇・八%増と、四年ぶりに前年度を上回る積極型と言える明るい予算となっております。
 知事は、県民の期待にこたえるため、今回の予算編成においてどのような基本姿勢で臨まれ、どのようなところに重点を置かれたのか、お伺いをいたします。
 また、知事が打ち出された通年予算の考え方が平成十五年度予算にどう生かされているか、あわせてお伺いをいたします。
 次に、今後の財政運営についてであります。
 本県財政は、基金の減少が続くなど、将来に向けての不安が全くないわけではありません。また、県の基幹収入である県税収入は、ここ数年来減少の一途をたどっております。また、地方財政制度改革の動向などを考えてみても、地方交付税や国庫支出金については、今後もこれまでと同様に、いやそれ以上に厳しく推移するのではないかと考えざるを得ません。これまでも知事は、財政運営プログラムを策定し、厳しい財政環境の中にあっても、県勢活性化と財政健全化の両立に熱心に取り組まれてきたところであります。さらに県民の県政への信頼をより確かなものにするためには、今後とも財政健全化に向けた一層の取り組みの継続が必要と考えます。
 そこで、知事は今後どのように財政運営の健全性確保に向けて取り組まれていくのか、ご所見をお伺いいたします。
 次に、雇用対策であります。
 この二月の政府月例経済報告によりますと、景気は弱含みであるとのことであり、三カ月連続で下方修正してきた景気判断が据え置かれました。特に雇用は、失業率が五・五%という過去最高の水準に並び、厳しい状況が続いています。また、近畿地方の失業率六・四%と、全国地域別に見て最も高い数値であり、和歌山県においても六・一%と高い水準であります。大きくたわんだ幹も、しなる限界となって、そこかしこからみしみしという音が聞こえているような状況であろうと思います。
 このような厳しい状況の中にあって知事は、緑の雇用事業を初め多様な施策を展開され、この状況を打破しようと努力をされております。白浜町に進出する株式会社エスアールアイや株式会社アスクソフトクリエイト、マリーナシティにはトランス・コスモス株式会社、印南町に進出する恵和株式会社といった企業の進出は、知事を初めとする関係者の努力のたまものであります。これら企業の誘致については、私も高く評価をするものであります。
 また、県民、観光客、ビジネス客などが訪れるにぎわいのある町づくりを進めるものの一つとして、去る二月七日、ダイワロイヤル株式会社と県との間で、県立医大跡地のホテルや商業施設等の整備についての基本協定が締結をされました。大型店舗の相次ぐ撤退や破綻が和歌山市の中心市街地の活力低下に大きな影響を与えていることを考えるとき、この事業が果たす役割は大変重要であります。県内外から多くの買い物客、観光客等が訪れ、既存商業施設との間で補完性や多様性といった相乗効果を生み出す、高さ八十メートル、二十階建ての複合施設は県都にふさわしいシンボルタワーであり、和歌山市の中心市街地活性化の起爆剤になるものとして大いに期待をしております。
 また、雇用の創出には、和歌山の経済再生、魅力再生を目指す総合的な施策の結集が必要であると考えますが、雇用拡大のための基本的な施策とその方向性について、知事のお考えをお伺いいたします。
 次に、本県の重要課題であります道路の整備についてであります。
 高速道路を初めとする高規格幹線道路は、広域的な人の流れ、そして物の流れを可能とし、地域の自立に欠くことのできない社会資本であります。本県は、東西南北に長く、紀の川を初めとする河川の流域ごとに平野があり、それぞれが山地で分断されているという地理的特性を持っております。それゆえ幹線道路は、人の交流や経済活動はもとより、救急医療や福祉を支え、災害時の緊急輸送手段としても重要な役割を担うライフラインであるだけでなく、大都市圏の人々に地方の豊かな自然や文化に触れてもらうことによって心のいやしを提供するという、言うならば、まさに命の道であります。古典をひもときますと、「道」という字は、万葉の時代には「美しきを知る」と書いて道と読んだそうであります。すなわち、美しいものを見るために、触れるために、大勢の人が行き交うことによってできるのが道であると、私はそのように解釈をするのであります。このようないにしえの知恵に思いをめぐらすとき、道づくりにあっては、経済効率のみで投資効果を判断する二十世紀型から今こそ脱却し、安全、安心、そして文化といった私たちの生活の質の向上に判断基準を置く二十一世紀型に転換すべきではないでしょうか。
 京都、奈良、和歌山を結ぶ京奈和自動車道は、関西の大環状道路を形成し、経済活動の活性化に大いに寄与するものであります。それと同時に、世界遺産登録を目前に控えた高野・熊野と、京都、奈良の世界遺産とをネットワークで結ぶ歴史・文化の道でもあります。私は、京奈和自動車道は歴史・文化の道として、二十一世紀の道として強力に整備推進をしていただきたいと思っております。そして、一日も早い完成を大いに期待しているところであります。
 また、地域の特色ある発展のためには、京奈和自動車道とネットワークを形成する主要道路の整備も重要であると考えます。特に、京奈和自動車道から世界遺産登録を目前に控えた国際観光地高野山へのアクセス道の整備は、本県の観光政策、地域振興の上で非常に重要であります。昨年竣工いたしました紀の川にかかる高野参詣大橋を通って、九度山町の町石道に沿って高野山大門に至る高野表参詣道路については、地元住民の方々はその構想の具体化を熱く希望しており、期待しております。
 また、現在の参詣道のメーンルートである国道三百七十号は、夏季を中心とする観光シーズンの混雑は大変な状況であり、救急車や消防車といった緊急車両さえ通行できないという、まさに危機的な状況であります。このことは、他府県から来られた観光客の方々に気持ちよく高野山に参っていただくということにとどまらず、沿線に住む住民の方々の生命にもかかわる大きな問題でもあります。道路改良によって、速やかにこの渋滞問題を解決すべきではないかと考えております。高野山へのアクセス道は、本県を代表する歴史・文化の道として積極的に、また情熱をもって整備すべき道であると考えております。ぜひ、早期の検討と事業化を図っていただくよう、強く要望する次第であります。
 また、国道四百八十号の整備は、紀の川流域の地域振興に欠くことができない事業であります。府県間道路の難所でありましたかつらぎ町四郷地区については、完成が楽しみとなるほど事業が進んでいるようであります。また、高野山を結ぶ梨子ノ木峠については、早期の事業促進が待たれております。
 さらに、道路のネットワークを考えると、国道四百八十号に接続する高野口野上線や花園美里線といった路線の整備も急がなければなりません。
 また、泉南地方から本県への窓口として、かつらぎ町四郷付近に、都市住民との交流などをねらいとした道の駅のような情報発信の場であり、かつ地域住民の触れ合いの場でもある施設を整備されることを地元から要望されております。
 そこで、改めて、高速道路を初めとする高規格幹線道路の整備について、知事にお伺いをいたします。知事の基本的なお考え、決意を述べていただきたいと思います。
 また、国道四百八十号平道路、そして仮称・鍋谷トンネル、先ほど申し上げました梨子ノ木トンネルの整備予定及び県道高野口野上線、花園美里線の整備計画やその進捗状況について、土木部長にお伺いをいたします。
 次に、紀伊山地の霊場と参詣道の世界遺産登録に向けての今後の対応と活用についてであります。
 このたび推薦書が世界遺産センターに提出されたとのことでありますが、思い起こせば、平成十年に「高野を世界遺産に」と地元で運動が起こり、県に働きかけましたところ、県当局の温かい理解と支援を得ることができ、平成十二年四月、教育委員会に世界遺産登録推進室が設置されました。それからわずか三年という短い期間で推薦書が提出されることになり、地元選出の議員として大変うれしく思っているところであります。また、これまでの関係者の方々の努力に敬意を表しますとともに、今後ともより一層ご精励されることをお願いいたす次第であります。順調にいけば、ことしは世界遺産センターの協力機関であるイコモス──国際記念物遺跡会議のことでありますが、その現地調査が行われ、来年にはいよいよ世界遺産委員会で登録の審議がなされると聞いております。世界遺産の登録が地域に与えるインパクトは、大変大きなものが期待できます。平成七年に登録された白川郷では、翌年の観光客が三〇%以上増加し、年間百万人以上となったと聞きます。これは、単なる登録による効果もあろうかと思いますが、そこにはさまざまな創意工夫による観光戦略があったに違いありません。
 高野・熊野の世界遺産への登録は、紀伊半島に脈々と受け継がれてきた精神・歴史文化を人類共通の宝物として未来に引き継ぐとともに、これに触れる環境を整備するという責任を改めて問われるものであります。また、世界遺産への登録は、観光を中心とした地域振興の新たなスタートであり、そこには新たな観光キャンペーンや観光ルートの充実強化など、これまで以上の観光戦略が、なるべく早い段階から緻密な計算と計画のもとに実施・展開されることが必要になると思います。この十月一日から高野龍神スカイラインが一般無料開放されますが、これもまた高野山と熊野三山をつなぐ幹線ルートの活性化につながることであり、世界遺産の観光戦略の一助となるであろうと思います。
 そこで、登録実現までの間、県としてどのような対応を考えておられるかについて、教育長にお伺いをいたします。
 また、登録実現後においては、世界遺産をどのように幅広く活用していくのか、特に世界遺産登録を見据えた観光戦略について、これからどのような方針で展開されるおつもりであるかについて、商工労働部長にお伺いをいたします。
 次に、構造改革特区に対する取り組みについてであります。
 構造改革特区は、小泉内閣が掲げる構造改革を加速させるための突破口と言われております。これは、自治体などの自発的な立案により、地域特性に応じた規制緩和を導入することで民間活力を最大限に引き出し、地域経済の活性化を図ろうとするものであります。国が何らかのモデルや税、財政面の支援措置を示し、自治体がそれに乗っかっていくといった従来型の手法を逆転し、まさに地域自身が自助・自立の精神を持ち、知恵と工夫を凝らすことが求められていると言えます。このような特区制度の意義に照らせば、本県に特区を導入するに当たっては、和歌山の地域特性や資源あるいは課題というものをきちっと踏まえた地域づくり戦略を持つことが必要であると思います。この点について知事は、これまで一貫して新ふるさと創りを提唱され、本県の豊かな自然環境や歴史・文化資源などを生かし、都市住民とのさまざまなつながりをつくることで、これらの方々にとって、ふるさとは和歌山と思える地域づくりを進めてきておられます。
 紀の川流域ということで考えますと、まず人口八百八十万人を擁する大阪を初め、京阪神地域に隣接するという立地条件のもとに、交流基盤として欠くことのできない府県間道路の整備、京奈和自動車道の建設が粛々と進められています。またこの紀の川流域は、大都市近郊でありながらも豊かな自然が残されており、県内でも有数の農業が盛んな地域であります。さらに、古代から近世、近代に至るまでの貴重な文化遺産が多く残されております。県においては、これら文化遺産の保存と活用を図るべく、平成十五年度から旧県議会議事堂である一乗閣の改修を初めとする紀ノ川緑の歴史回廊事業を展開されると伺っております。紀の川流域におけるこうした立地条件、自然、歴史・文化、産業などを総合的に組み合わせた都市との交流戦略の中で、いわばそれを牽引する積極的なエンジン役として構造改革特区というものを大いに活用してはどうかと考えております。この点に関する県の考え方と特区についての取り組み状況について、知事にお伺いをいたします。
 次に、教育について。
 県立高等学校入試において、今春から撤廃される学区制、及び本県における今後のスポーツ振興、以上二点についての質問であります。
 まず学区の撤廃についてでありますが、これからの時代は、高等学校は、ただ単に希望してくる生徒を受け入れるだけでなく、それぞれの高校がどのような教育を行うのかといった特色を明確にし、生徒や保護者、県民の方々にアピールしていく時代であると思います。また、高校を受験する生徒は、それぞれの高校の特色が自分に合っているかどうかといったことを見きわめ、自分が行きたいと思う高校を自由に選ぶことができ、目標に向かって努力し、そして晴れて合格後にはあこがれの高校に進学できる。このような意味で、学区制という障害がなくなったということは、この機会を積極的に生かして、目標にチャレンジしていく、そのために努力していくという姿勢が生徒においても大切ではないかと考える次第であります。
 今後ますます少子化が進み、学校基本地方調査によると、この春の中学校卒業者は一万二千六百四十五人で、十年後は一万二百二十五人となり、約二千四百人減少し、その後もさらに減少する傾向にあります。こうした状況の中で、学区制が撤廃されるとなれば、厳しい言い方をするならば、当然、高等学校も淘汰されていく時代に入るということであります。各校は、これから危機意識を持って、競争原理のもとに学校運営に熱心に取り組んでいかなければならないと私は強く思います。
 本県では、これまで総合学科の設置や単位制高校への改編などさまざまな改革を行ってきたところであります。今回学区が撤廃される普通科高校においても、さらに魅力ある改革を進めるとともに、全体として和歌山県の高等学校教育が展開されるよう取り組んでいく必要があります。学区制撤廃は、そうした動きを加速化させるまたとない機会であり、学区制撤廃を高校改革に連動させるとともに、生徒や保護者、県民の方々にアピールできる各高校の特色づくりを積極的に進めるべきであると思います。
 ところで、今回の県立高校入試は、学区制撤廃のもとでの初めての入試であり、希望する学校に他の地域からどのくらい希望があって、どのくらいの生徒が集まるのか、どの程度の学力があれば合格できるのかといった点での情報がないに等しいという状況であります。そのため、受験生やその親御さんの不安は当然大きなものがあります。また、一生に一度の高校入試であり、受験生やその親御さんの思いには切なるものがあります。その不安を少しでも解消し、でき得る限り生徒一人一人の希望をかなえてあげた上で、県民の理解と支持のもとにこの制度を定着させるべく努力をしていく責任は、当然、学区撤廃を決定した県にあることは言うまでもありません。
 学区制撤廃のねらい、高校改革との関連や位置づけ、今後の展望、そして本県における高校教育のビジョンについていかがお考えでしょうか、教育長にお伺いをいたします。
 また、生徒や保護者が不安を感じないように、そして希望の高校に向学心を抱いて入学できるように、県教育委員会として、今回の県立高校入試については、具体的な形ででき得る限りの配慮をしていくべきであると思います。どのような対応をお考えであるのか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。
 次にスポーツ振興でありますが、スポーツは、健康の保持増進、体力の向上はもとより、仲間づくりやスポーツの持つ楽しみ、喜びを味わうことによって人生を豊かにするものであります。また青少年にとっては、人格の形成によりよい影響を与えるなど、心身の健全な発達に大いに寄与するものであります。
 さて昨年、世界じゅうの人々が注目する中で、アジアで初めての日韓共催のワールドカップサッカー大会が開催されました。一試合一試合の展開に日本国じゅうが沸き、本県においてもデンマーク代表チームが県営紀三井寺公園でキャンプを行いましたことは記憶に新しいことであります。練習非公開のチームが多い中で、練習はすべて公開し、気軽にサインにも応じてくれるという非常に紳士的なチームで、さまざまな形で県民との交流も生まれてまいりました。また、チームも「和歌山に戻ろう」を合い言葉に、韓国での予選リーグを堂々一位で勝ち抜き、和歌山へ帰ってこられました。キャンプ期間中には、チュニジア代表チームとの国際Aマッチで世界一流のわざを披露してもらい、県民の方々も間近で観戦することができました。また、サッカー教室も開催してくれるなど、言葉の壁を超えて和歌山の子供たちに大きな夢と希望を与えてくれました。このような盛り上がりを見たワールドカップサッカーのデンマークチームキャンプを契機に、デンマークとどのような交流を行い、また今後行っていくのか、さらに今後どのようにスポーツ全般の振興を図っていくかについて、教育長にお伺いをします。
 最後に、要望であります。
 スポーツの振興を推進していく上で、すべてのスポーツ施設の環境整備はなくてはならないものであります。過日、県営和歌山競輪場の一部を改築してスポーツ施設として有効利用してはとの提案がホッケー協会よりありました。財政事情の厳しい折、このような既存施設を積極的に活用することは本当によいアイデアだと思います。競輪場は和歌山市内の便利なところにあり、駐車場も広く、競輪場のバンクの中のフィールドを人工芝で改装すれば、サッカーは無理としても、フットサルやゲートボール、ホッケーなど多目的な利用が可能かと思います。ぜひご検討いただきますとともに、スポーツ愛好家がすばらしい環境のもとで楽しく、そしてスポーツ選手が思う存分の力が発揮できるようなスポーツ施設の環境整備にぜひ取り組まれますことを要望いたしまして、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(宇治田栄蔵君) ただいまの平越孝哉君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまのご質問にお答えを申し上げます。
 まず、来年度の予算に対する考え方ということでございます。
 ご質問にもありましたように、今非常にデフレで大変な経済状況の中、和歌山県も大変厳しいわけでございますが、その中で何とか勢いをつけていこうと、予算で勢いがつくわけでもないんですけれども、そういうふうな意欲を持って予算編成を行ったところでございます。その結果として、予算が実質的〇・八%増、名目上は五・八%増ということで、この五・八%は全国都道府県の第一位でございますし、それから〇・八%というのも二番目ぐらいということで、非常に積極的な内容になっております。中身といたしましては、県の単独事業等々をふやして、できるだけいろいろな仕事が行われていくというふうなことを目指しております。
 そして一方で、非常に税収なども厳しいというふうな状況の中で、一つは人件費でありますとか、それから借金の返済に充てる公債費、こういうふうなものを減らし、さらには借金、県債を抑制するというふうな形の健全化も大いに図ったところでございます。
 その結果といたしまして、和歌山県の県債の残高、借金の残高は、全国で少ない方から四番目ということで、こういう意味では片方でいろんな事業の見直しを行いながら積極的な予算編成を行い、片方で健全化も図ったということで、「二兎を追う」という言葉がございますけれども、一応そういうふうな形になっているのではないかと思っているところでございます。
 そして、通年予算ということを言っているけれども、どういうことかというご質問がございました。
 これは特段のことを言っているわけではないわけでございますけれども、とかく役所というものは、一度予算ができてしまうと、もうそれを当然のこととして、この変化の激しい時代にあっても一年間通してやってしまうというふうなことが多いわけでございます。しかしながら、今の社会の情勢を見れば、その年度の間においても早急に手を打たないといけないような事業が次から次へと出てくるわけですし、それから議会にご審議いただいてでき上がった予算の中身であったとしても、場合によっては必要なくなってくるというふうなものも出てくるわけです。こういうふうなものについて、随時、適宜適切に見直していく。当然のことながら、議会に諮りながらということでございますけれども、そういうふうな形での心構えというものを通年予算主義ということで言っているわけでございます。そしてまた、これは予算編成だけじゃなくて、後の執行過程でも、できるだけ県民にとって損が出ないようにしていくような心構えということで県の予算運営に当たっていくということが私は大事だというふうに考えております。
 それから、こういう時代なので非常に税収も厳しいと、その中でやはり長期的な見通しを持ってやるべきじゃないかという質問でございます。これは、もっともなことでございまして、和歌山県でも、実はあと数年たってくると退職金の額が非常に大きくなってくるということがございます。そういうふうなこともありますし、それから現在、和歌山県の場合、税収が大体八百億円、地方交付税が二千億円、そして国からの補助金が一千億円、こういうふうな非常に他律的な形で予算を編成している。ところが、この財政の仕組みについてはこれから大きく変わってくることも予測されるということでございますので、今あるものを当然のこととせずに、やはり自立を目指していく、そしてまた長期的な見通しの中でどういうふうな財政運営を図っていくかという観点を常に持ちながら予算編成をしていきたいと、このように思っているところでございます。
 次に、雇用対策ということでございます。
 今、非常に雇用ということが大きな問題となっておりまして、失業率も非常に高まっているということがございます。そして、このデフレの時代に、なかなかこれが決定的な雇用対策だというふうな決め手はないわけでございます。しかし、だからといって何もしないでいいというわけではございませんので、私が予算編成において心がけましたのは、まず一つは、和歌山県の場合、いい悪いは別として公共事業というものが、ある意味では県の基幹産業的なものになっているというふうなところがあります。こういうふうな実態を踏まえて、できるだけ地元で土木建設業に雇用されている人たちの雇用がなくなってしまうということのないような配慮をする。しかしながら一方で、だからといって公共事業をどんどんやればいいということではございませんので、そのあたりの兼ね合いを考えながらやっていくというふうな配慮を、まずいたしました。
 それから、後は緑の雇用事業でありますとか、このごろは福祉施設というふうなものが非常に大きな雇用の場になってきているということもありまして、そういうことも踏まえた予算編成ということを行っております。
 それから、なかなか難しいんですけれども、新規に企業を呼んでくるということでいろいろ努力を行っておりまして、田辺、白浜地区を中心にIT関係の集積が徐々に高まってきております。今度、全国的なIT地域の指定というのがあるわけですけれども、これに田辺、白浜がなれば、また起爆剤になってより勢いがついてくると思っております。
 それから、一昨年から行っております和歌山、橋本、新宮、田辺とかでやっているSOHO事業についても、一回入ってしまったらそれでいいという形ではなくて、適宜見直しを行いながら積極的にふやしていくというふうな努力をする。いずれにせよ、いろんなことをしながら県内の雇用を確保していくというふうな努力をしているところでございます。
 次に、高規格道路についてのご質問でございます。
 道が「美しさを知る」というのは、私も今初めて知りましたけれども、そういうことで言うと、議員ご質問の京奈和自動車道、非常に私は大事な道であると思っております。都がだんだんと京都の方へ上がっていったのと逆に、ずっとつながっている道ですので、歴史という意味でも京奈和自動車道というのは非常に大きな意味を持っているわけでございます。
 この京奈和自動車道につきましては、昨年皆さん方と一緒に努力した成果として百億円を超える事業費が計上されたわけでございますが、ことしはこれが都市圏道路というふうなことに位置づけられまして、ことしも相当大きな予算が期待できるということですので、これについては引き続き大いに努力していかなければなりません。
 それから、開かれた県政ということを進めていく上でも府県間道路というふうなものが非常に大事でございます。私もいつも車で運転するんですけれども、泉佐野岩出線なんか非常に便利になってきております。これがもっと整備が進めば、どんどん大阪の方なんかから人が来てお金を落としていくということで和歌山県の活性化にもつながるというふうに思っておりますので、こういうふうな道路については、これからも思い切り積極的に整備を進めていきたいと思っております。
 それから、構造改革特区でございます。
 構造改革特区は、いっとき地方が要望したやつが余り盛り込まれなかったということでちょっと下火になっていたんですけれども、ここへ来て鴻池大臣が大分頑張っておられるということで、私も来週か再来週、鴻池大臣にお会いするんですけれども、いずれにせよ、日本の制度を変えていく大きな突破口として今新たにまた注目を集め始めているということでございます。
 そういうふうな中で、和歌山県では昨年、市民農園の開設主体、今までは個人の農家はそれができなかったんですけれども、これを個人の農家もできるようにして、和歌山県のような地域の発展、農村部の発展に資そうということで要望しておりましたところ、これはもう第一次で認められまして、既に法律の改正も行われました。これを受けて、紀の川筋を新たな和歌山の手軽な観光の拠点という形にしていきたいということを考えております。これはどういうことかというと、歴史があって、緑があって、それからおいしい農産物を中心とした食べ物ができる。これをうまく有機的に関連づけて、この地域を都市から来た人が泊まりがけじゃないけれども、そういういろんな自然なんかを楽しんで、そしてお金を落としていくような地域にしていこうということを考えておりまして、この特区制度も受けて、実は今、紀の川緑の交流特区という形でこの地域を特区に指定してもらうよう作業を進めているところでございます。一乗閣の問題もございまして、この地域の発展、これから大いに図っていきたいと、このように考えているところでございます。
 私からは、以上でございます。
○議長(宇治田栄蔵君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 地方幹線道路の整備についてお答えいたします。
 まず、府県間道路の一つであります国道四百八十号についてでありますが、府県境部の仮称・鍋谷トンネルにつきましては、長大であり、高度な技術を要するため、今後とも直轄代行事業の採択を国に強く要望してまいります。
 県といたしましては、鍋谷トンネルへの取りつけ道路として平道路の工事を引き続き進めてまいります。
 梨子ノ木トンネルにつきましては、調査設計を進めるとともに、地元の皆様にご協力をいただきながら、坑口までの用地買収及び工事を促進し、トンネルに早期着手するように目指してまいります。
 次に県道高野口野上線につきましては、平成十三年度に天野トンネルが完成しまして、引き続きかつらぎ町御所地区及び天野地区において用地買収と工事を進めてまいります。
 また、県道花園美里線の地蔵トンネルにつきましては、工事を進めておりまして、平成十六年度の完成を目指してまいります。
 以上でございます。
○議長(宇治田栄蔵君) 商工労働部長石橋秀彦君。
  〔石橋秀彦君、登壇〕
○商工労働部長(石橋秀彦君) 世界遺産登録を見据えた観光戦略の方針と展開についてでございますが、平成十六年予定の高野・熊野世界遺産登録は、本県の観光振興にとって極めて重要なものと位置づけており、本年度から計画的に機運を盛り上げるための祈りの道キャンペーンを実施し、首都圏や全国主要都市において、高野・熊野の歴史・文化資源を紹介してきたところでございます。平成十五年度も引き続き、高野・熊野をキーワードとした情報発信の強化による観光客の誘致や大都市圏での認知度向上を進めてまいりたいと考えてございます。また、世界遺産登録後には、JR六社とタイアップして全国的な大規模キャンペーンを実施することとしており、現在、その準備の作業を進めているところでございます。
 以上でございます。
○議長(宇治田栄蔵君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) まず、世界遺産登録に向けての今後の対応についてでございますが、紀伊山地の霊場と参詣道の貴重な文化遺産は、人類共通の財産として後世に継承すべきものであり、世界遺産への登録がその出発点であると考えております。そのためにも、文化的景観の保全や地元住民はもちろん、県民すべてが誇りを持てるような啓発に一層力を入れていく必要があると考えております。また、このことは地域の活性化にも大きく貢献するものであり、環境の整備や活用について各自治体や地域住民等との調整を図ってまいります。
 なお、十五年夏ごろに予定されておりますイコモスの現地調査に当たっては、国、三重県、奈良県とも連携しながら、遺漏のないよう万全の体制で臨んでまいります。
 次に、高等学校の学区制の撤廃は、生徒の学校選択幅を拡大するとともに、高校教育の個性化、多様化を一層推進し、本県がこれまで取り組んできたさまざまな改革をさらに推し進めていくものと考えております。今後とも、総合学科や中高一貫教育などを推進するとともに、それぞれの高校が特色づくりに努め、県民にアピールできる魅力を持つよう、県教育委員会として最大限の支援を行ってまいりたいと思います。
 また、今春の入学者選抜に当たっては、生徒や保護者が出願状況を見た上で志願先を変更できる二段階出願を導入するとともに、郡市間における生徒の流入、流出状況を想定した弾力的な募集定員を設定するなど、できる限りの配慮をしたところでございます。さらに、ハイスクールガイドを発行したり、各高等学校がホームページを開設してそれぞれの特色を紹介するなど、きめ細かな情報提供にも努めております。
 最後に、スポーツ振興についてお答えいたします。
 デンマーク代表チームと県民との友好的な交流でたくさんの思い出を残してくれたワールドカップから九カ月が過ぎました。その後、二十一の国と地域が参加した世界少年野球大会和歌山大会にデンマークの少年少女が特別参加したほか、体操チームの来県や本県の教員や観光ミッション団による訪問など種々の交流がこれまでに行われており、今後も民間団体による合唱団の招聘や本県サッカーチームの派遣などが計画されています。また、デンマークキャンプ成功のおかげでJリーグの名古屋グランパスエイトの春季キャンプが実現し、連日県内外から多くのサポーターが訪れるなど、成功のうちに終了することができました。このほか、本年九月には、全国から約六千人のスポーツ愛好者が参加し、県内八つの市と町で十三種目を競う日本スポーツマスターズ二〇〇三の開催を予定しております。
 なお、去る二月十六日の第二回市町村対抗ジュニア駅伝も、多くの方々のご協力を得て盛大に開催することができ、地域のきずなをたすきにつなぐ大会として定着しつつあると思っております。
 このようなさまざまなスポーツイベントを契機として、さらに本県のスポーツ振興を図るため、その条件整備に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(宇治田栄蔵君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(宇治田栄蔵君) 以上で、平越孝哉君の質問が終了いたしました。

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