平成14年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時二分開議
○議長(井出益弘君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第八十九号から議案第百三号まで、並びに報第二号から報第七号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(井出益弘君) 日程第一、議案第八十九号から議案第百三号まで、並びに知事専決処分報告報第二号から報第七号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 四十二番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
 一番目、病病連携、病診連携についてであります。
 重病、重症の患者は、高度な医療設備を持つ病院、危機を脱したがまだ医療的な入院治療が必要な患者は療養型の病院といった急性と慢性の役割分担において病院の連携が必要であります。二〇〇〇年度の国民医療費約三十兆円のうち、老人医療費は三分の一を超えており、高齢化が進む中、医療費は伸び続けると容易に予想され、厚生労働省は医療の効率化を強く推し進めております。病病(病院と病院)連携、病診(病院と診療所)連携は、個々の医療機関がばらばらに医療を提供するのではなく、地域住民により効率よく、効果的に連続した医療が提供されるように医療機関の機能を分け、それぞれの役割を補完し合う形で地域内に医療ネットワークを構築しようというものであります。
 同省は、各医療機関に対し、二〇〇三年八月までに急性期病院か慢性期病院かを選択するように迫っています。急性期の病院は、平均入院日数が二十日以下でなければ診療報酬の加算が受けられないようになり、在院期間の管理が強く求められます。しかし、例えば脳や脊髄などに障害を負い、高度医療と長期医療の両方が必要な患者は少なくありません。入院日数は短くしたいが、急性期か慢性期か単純に患者を区分することは難しいといったジレンマもあります。行き場のない慢性期患者が急性期のベッドをふさぐことも少なくない状況があります。そこで、病院同士が互いに連携協力、補充し合って、患者の需要に合わせた機能を持って適切な病院を紹介し合うことが大切になります。一つの病院が治療を完結させるのではなく、地域全体の医療機関が患者を支え合うシステムづくりが急務ではないでしょうか。
 重篤救急患者は、救命救急センターや大学病院といった第三次医療機関へ運ばれ、一命を取りとめて直接転院できる患者もいれば、転棟あるいは転科して、その後紹介された病院や患者の近隣の病院、診療所を紹介したりして、フォローアップ体制がとられます。この病病連携、病診連携がうまくとれないと、命が助かっても寝たきりになったり、なかなか患者の方が退院したがらなかったりといったことになりかねません。まして、救命救急センターはいつも満床がちであり、後方ベッドの問題でいつも頭を悩ませている状況であります。
 県としても、病病、病診の連携システムづくりが早急に必要と思われますが、いかがでしょうか。
 特に六十五歳未満の若い患者は、介護保険も適用されず、医療費も高くて、寝たきりの状態の人の行き場所がない現実があります。基本は、入院の必要性にすべてこたえることだと思います。厚生労働省の方針で、急性期病院には患者も長くはなかなかおれない状況であります。民間の一般病院も、入院が長期に及ぶ患者を診てあげたくても、病院の報酬システム上受け入れられない現状になってきております。ことし十月から医療改正で患者負担がますますふえる中、二次病院においても診療科に一定の基準を設定して、例えばこの病院は整形外科、あの病院は胃腸科、またある病院は循環器科の患者を集中特化して診てもらうといった色分けを県がリーダーシップをとって行うことが効果的な病病、病診連携を行う上で必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 二番目に、建設労働者の賃金確保についてであります。
 長期に及ぶ不況の中で、和歌山県においては近畿の中でも倒産、失業の比率が高く、我が県の基幹産業の一つである建設業に至っても、不況業種の最たるものであり、受注競争が熾烈をきわめ、著しい低価格での競争になっております。当然、そのしわ寄せは下請業者に来て、末端の労働者、職人の皆さんの賃金を低下させ、仕事も少ないがゆえ、生活を圧迫させている実態があります。地方公共団体の発注する工事においても、設計金額に対して非常に低い金額での落札、契約が少なくないと聞いております。
 そこで、質問事項に移ります。
 一番目、一般的に設計単価というのは積算基準に基づいて、資材費、機械損料、燃料費、そして労務単価などの複合単価として積算されているそうですが、公共工事における末端の建設労働者の賃金が設計労務単価を下回ることのないよう、元請業者が下請業者へダンピング受注させないように監督、指導を強化いただきたいが、いかがですか。
 二番目、公共工事の受注業者に対して、発注者と元請業者だけでなく、下請業者に対しても適切な契約を文面で交わすような下請契約の適正化を指導することが必要ではないでしょうか。
 三番目、建設労働者の労働賃金や下請業者の工事代金に不払いが発生した場合、建設業法に基づいて元請業者への指導を行政で徹底していただきたいが、いかがでしょうか。
 四番目、建設業の倒産件数は和歌山県においても非常に大きな割合を占める中、地元の建設業者の育成施策は必要であると思われます。分離発注を進めて、成長努力を続ける地元の建設業者にこれまで以上に受注機会を確保していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 五番目、建設業退職金共済制度がすべての建設労働者に完全適用される充実した制度となるよう、元請業者への指導を強化していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 三番目に、人権問題であります。
 本年二月四日に、打田町役場のホームページに極めて悪質な差別メールが送信されるという事件が発覚しています。町長あてに、地域名の特定、人道にもとる卑劣きわまりない表現がなされております。
 まず、事件発生当初、県同和室が担当し、那賀振興局、打田町、そして同和委員会が取り組みを進め、四月以降は人権室に引き継がれ、和歌山市もかかわって、それぞれ連携をとりながら取り組まれていると聞くわけですが、この取り組みについて、打田町の住民、特に差別をされている当事者である地域住民にとって、十分に情報も入ってこないし、納得できるものではないというものです。この取り組みが、実は行政関係のみで進められていく中で、差別をされた者の思いとか憤りを、どこでどういう形で踏まえられ反映されるのか、全く不明瞭であります。このことは、新聞でも既に報道されているとおりであります。
 この原因はどこにあるかを考えますと、まず人権室の機能とか姿勢に問題があるのではないかと思います。つまり、人権という反面、具体的で基本的な課題である同和問題が抽象的にしかとらえられていないと言えます。企画部人権室が人権行政全体を担当するように聞いているところですが、考えてみますと、人権のそれぞれの具体的な課題、例えば女性、子供、高齢者、障害者等々については庁内の担当部局・課室が設置されております。ないのは同和問題のみであります。こうした中で、まず同和行政を推進することも人権室の役割であることを明確にすべきであります。その上で、今回のような悪質きわまりない差別事件をしっかり受けとめ、取り組んでいくことが重要ではないかと考えます。
 次に、差別事件の取り組みについてであります。
 これまでに差別事件が発生した場合、処理規程に基づいて進められてきました。ところが今回、このことが全く見えてこないし、さきにも述べましたように、行政関係者のみの取り組みで、差別を受けている側の思いが排除された中で進められており、大いに問題があると思います。この際、そうしたことを十分踏まえた取り組みの方向、処理規程を再構築する必要があると思います。
 さらに、さきの県議会で知事の熱意によって、人権が尊重される社会づくり条例ができましたが、今回のような極めて悪質な差別事件が発生して、条例の視点からどのようにされるのか、また国の人権擁護法とも関係あると思いますが、これまでも差別落書きが続発し、インターネットを使っての差別事件が日常的に横行し、さらに今回の事件等を踏まえたとき、人権を具体的にどのように擁護し、差別行為から抑止するのか、一方的に差別を受けている地区住民と差別行為を行っている側、両方に対してこの条例がどのような効力があるのか、お伺いいたしたいと思います。
 この三月末で特別措置法が期限切れとなって、今後は一般行政の中に同和行政を位置づけて取り組むということになっております。しかし、この時期、同和行政は行わない、人権の中でということで、多くの市町村で窓口が消え、意識的に「同和」から「人権」へということの書きかえが行われています。この背景には、同和問題はもう終わりという考え、風潮があるのではないでしょうか。こうした中で、依然変わらず悪質きわまりない差別事件が続発しているという事実を、私も含め、非常に恐縮ですが、ここにいる皆様で再認識する必要があると思います。そして、今回の場合もそうですが、ここに公務員がかかわっているということに対し、行政にかかわる者皆の共同責任であるというくらいの思いを持つ必要があると思います。こうしたことを十分踏まえられ、一層同和行政を、しかもより具体的に推進していくことを強く要請いたしたく、質問いたします。
 一番目、同和行政はもう終わりという風潮の中、実際に差別事件が続発しております。しかも、今回の事件のように公務員がかかわったということはゆゆしき事態であります。インターネットでの差別事象の具体的な防御策等、二度とこのような問題が起こらないよう、県の取り組みの方向性と処理規程の再構築の必要性について、知事の今後の同和行政への所見をお伺いいたします。
 二番目、今回のようなインターネットでの事件などが起こったとき、県におかれては人権を具体的にどのように擁護し、差別行為を抑止するのですか。
 三番目、差別を受けている地区住民と差別行為を行っている側と両方に対して、人権が尊重される社会づくり条例がどのような効力があるのか、お伺いいたしたいと思います。
 以上、三点にわたって、一回目の質問をさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまの病病連携、病診連携についてお答えを申し上げます。
 各医療機関が互いに連携協力、補完し合い、急性期、慢性期などの患者の状態に合った入院治療を提供できる体制を整備することは重要であると、このように認識をいたしております。
 県といたしましても、県民が質の高い医療を受けられるよう、医師会、病院協会等の協力を得ながら、基幹病院を中心とした連携など、効率的な医療連携システムの確立を図ってまいりたいと考えております。
 次に人権問題についてでございますが、今回のインターネットによる差別事件は、ご指摘のとおり、極めて陰湿にして悪質な差別事件であり、しかも同和行政の第一線に携わる市の職員がかかわったということで、県としても私としても本当に残念であり、あってはならないことであると真剣に受けとめているところでございます。
 インターネットによる差別事件が続いて発生していることから、地方公務員に対する研修を徹底するとともに、厳正に対処してまいりたいと考えております。地対財特法がことしの三月をもって失効いたしましたが、私は差別が存在する限り、同和問題の一日も早い解決を目指した取り組みをしていかなければならないと考えているものでございます。こうしたことから、本年四月に人権に係る教育・啓発の拠点となる人権啓発センターを設置し、県民の人権意識の一層の高揚を図ることとしたところでございます。
 また、さきの二月議会でご承認いただいた人権が尊重される社会づくり条例の具現化を図ることで、同和問題を初めとするすべての人権が尊重され、二度とこうした問題が起こらない社会をつくってまいりたいと考えております。
 なお、事件の処理に当たっては、国において人権救済体制が整備されるまでの間、地方行政が主体的に取り組むという考えのもと、処理体制のあり方を検討するなど、事件の内容に応じた適切な処理を行ってまいりたいと、このように考えております。
○議長(井出益弘君) 福祉保健部長白原勝文君。
  〔白原勝文君、登壇〕
○福祉保健部長(白原勝文君) 病病連携、病診連携で県のリーダーシップをということでございますけれども、これまで各保健医療圏域内を中心に、医師会や関係機関と連携し、かかりつけ医の普及や紹介、逆紹介システムの推進などモデル事業の実施に取り組んでまいりました。また、昨年度は県内の医療施設相互間の機能連携と効率的な医療提供体制の確立を図るため、医師会や病院協会を初め各圏域の基幹病院の皆さんに参加いただき、地域医療連携推進協議会を設置いたしました。本年度は、同協議会で連携システムの構築に向けた方向づけ等をいただく予定でございます。県といたしましても、県民の皆さんに効果的に医療を提供できるよう、病病、病診連携を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(井出益弘君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 建設労働者の賃金確保についての五点のご質問に一括してお答えいたします。
 ダンピング受注の防止、下請契約の適正化及び工事代金等の不払いにつきましては、建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針等に基づき、適正な執行をするよう指導しております。
 また、工事発注に際しましては、県内建設業者の育成を図るため、可能な限り分離発注に努めております。
 さらに、建設業退職金共済制度の適用につきましては、今後も経営事項審査等の際、公共工事の元請業者に対して指導してまいります。
 以上です。
○議長(井出益弘君) 企画部長垣平高男君。
  〔垣平高男君、登壇〕
○企画部長(垣平高男君) 人権問題の二点についてお答えを申し上げます。
 まず、今回のようなインターネットでの人権が起こったときに、人権をどのように擁護し、差別行為を抑止するのかというご質問でございますが、インターネットの発達は、瞬時に情報が伝達されるという利便性がある反面、匿名性、あるいは拡散性を持った重大な人権問題を発生させるおそれがございます。
 このため、不適切な書き込みを防止するための法規制等を国に対し要望を行ってきたところ、いわゆるプロバイダー責任法が五月二十七日から施行されました。この法律の骨子は、重要な二点を規定してございます。まず、インターネットの書き込み等により自己の権利を侵害されたとする者が関係するプロバイダー等に対し、プロバイダーが保有する発信者の情報の開示を請求することができるというのが一点でございます。第二点としては、インターネットの書き込み等により権利が侵害された者からの申し出により、関係するプロバイダー等がこの情報を削除しても、これによって生じた発信者側の損害について、プロバイダー側の賠償の責任を問われないという二点でございます。したがって、この法律に基づき、プロバイダーが発信者の開示を行うことが可能となり、人権の擁護及び差別行為の抑止につながるものと考えてございまして、この周知に努めてまいりたいと考えてございます。
 県としましては、差別的な書き込みが行われない土壌の醸成が重要であるという認識から、本年四月に設置しました和歌山県人権啓発センターの活動等を通じまして、県民に対する人権教育啓発を積極的に行ってまいりたいと考えてございます。
 次に、人権条例の効力についてでございます。
 和歌山県人権尊重の社会づくり条例は、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現を目的として制定をされました。県民一人一人がこの条例を遵守することにより、一人一人の人権が尊重され、差別を受けることも差別を行うこともない社会が実現されると考えてございます。同時に、県としましては、差別を受けた側の思いを勘案し、国において人権救済に関する法律が一日も早く制定されるよう、引き続き強く求めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十二番長坂隆司君。
○長坂隆司君 ご答弁いただきました。
 知事にご決断いただきましたドクターヘリの運航も、いよいよ来年一月に迫ってまいりました。当局も、関係機関とともに準備に追われる毎日であると推察いたしております。しかし、県民、患者の側のニーズからして、ドクターヘリの後は病病連携であります。ぜひ積極的な推進を要望しておきます。
 建設労働者の賃金確保についてですが、丹田にもっと力を込めていただいて、ぜひとももっと目線を低く、職人さんたちの立場に立った指導と対応をお願いいたします。
 人権問題についてでありますが、和歌山県人権尊重の社会づくり条例の前文の中に、「私たちは、社会の構成員としての責任を自覚し、常に他者の人権の尊重を念頭に置いて、自らの人権を行使するようにしなければならない」という表現があります。せっかく今年四月に県人権啓発センターもできました。本当に実効性のあるものとしてこの条例のくだりを、県民すべてが認識できるように人権教育・啓発に全力で取り組んでいただきたいと要望いたしまして、私の質問を終わります。
○議長(井出益弘君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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