平成14年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 九番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 皆さん、おはようございます。議長のお許しを得ましたので、一般質問をさせていただきます。
 今回の一般質問は、地方分権への対応と市町村合併について、農業経営の理念とその構築のための協力社会の実現、そして緑の雇用事業の活用について私の思うところを提言し、受けて木村知事の所見を賜りたいと存じます。
 今、国民は立ちすくみの状態にあります。当面の経済対策はおろか、中長期的な展望が描けない状況のもと、行き場のない日本丸が荒波の中を転覆しないように小泉船長のかじ取りに命運をかけ、あらしの去るまで必死に耐えているのが現状であります。
 一つには、我が国の社会システムそのものが疲弊しているということであります。政治、経済、行政、そして教育等々、すべてであります。特に政治においては、冷戦後、イデオロギーでの対立軸が失われ、都会と地方、高齢者と若年者というような対立軸が見えるようになってきたのが昨今であります。また、物価や株価の下落と消費の低迷によるデフレスパイラルへの移行、失業者の増大、年金制度の疲弊、特に金融破綻に係る企業倒産の増大が今後の大きな懸念であり、大きな不安であります。まさに小泉船長が取り組んでいる構造改革が実を結ぶかどうか、大きな焦点となってきております。
 もう一つの要因は、中国の経済開放政策による近代化の著しい進展であります。特に農業と工業分野の競合が我が国の空洞化を招き、今後もこの傾向が続くと見られます。低賃金下での安価な商品、中国労働者依存による工場移転、さらには日本国内の生産現場での雇用を中国人にゆだねる傾向にもあります。また農産物においても、日本企業による中国での生産を急いでいる状況も見過ごせません。巨大な人口を抱えた中国の台頭は、我が国の物価の下落と雇用の空洞化をより鮮明なものにしつつあります。
 以上が経済を中心として下降局面に至った大きな要因であり、国全体の自信喪失に陥ったシナリオかと考えます。また、現状に目を転ずれば、中高年のリストラによる失業者の増大、就職難から来る新卒者のフリーター化等、我が国の雇用状況の厳しさが一段と高まりつつあり、何ら解決の糸口すら見出せない状況に本当に心を痛めています。
 さて、時代の変革期、新しい地方行政を模索する真っただ中にあって、木村知事を先頭に職員の皆さんの努力によって緑の雇用事業を初め諸施策を次々と打ち出し、また諸問題の解決に当たっておられることに、まず敬意を表します。我々議員も、すばらしい和歌山創造のために行政の皆さんと一緒に取り組めるような提言を行いつつ、また県民の方々にはあらゆる情報を提供するためのなお一層の努力をしていかなければならないと考えております。
 さて、これからの地方自治のあり方として、自分たちのことは自分たちでやっていくのだという決意と、地方自治体も競争する時代に突入したことをまず認識しなければなりません。何よりもみずからの発想による地域づくりに果敢に挑戦し、和歌山がこれから進んでいくであろう道のりの方向づけをいかにするかを、今、最も重要視しなければなりません。もちろん、人類の向かう先、そして日本の進むべき道にアンテナを高くし、理念の構築に和歌山県が独自で取り組まなければなりません。少なくとも、何が県益なのか、また県民一人一人にとって何が幸福なのかを明確にすることから始めることは自明であります。幸福論の構築には、多くの県民の皆さんとのコミュニケーションを図る中からあるべき理想を感知し、多数の気持ちを酌み取っていかなければなりません。潮流として、人の生き方はそれぞれ多様であります。多様な時代ほど将来の何かを予知し、これを政策に生かしていく努力を積み重ねていくことが政治家であり、行政に携わる者の責務と考えます。
 今、テレビ朝日系六チャンネルのテレビ放送で、毎週土曜日の夕方に「人生の楽園」という番組がございます。中高年層になかなかの人気だそうであります。新たに身を転じて地方に暮らす夫婦の生活を密着取材した番組であります。Iターン、Uターン組ありで、自分の思うがままに素直に生きる、自分の最もしたいこと、好きなことを一生懸命に、そしてそれを生活の糧にする、そんな若い夫婦や中高年夫婦が主役であります。特に都会でのエリートサラリーマンを脱して人生のやり直しにチャレンジをしているケースは、まさに田舎型ベンチャー企業の立ち上げであります。日置川が舞台となったときには、より興味深く見たものであります。田舎の暮らし、そして人情あふれる地元の人々との触れ合い、そして助け合い、何よりも大自然の中での人間のあり方を問うところが番組のねらいでしょう。何もない地方にこそほんまもんがあり、自然の宝がある。急がず、ゆっくり自然に身をゆだね、悪戦苦闘、涙と笑顔の日々、そして少しずつ幸福を感じ取っていく過程を随所に見ることができます。
 さて、日本人の生き方の源泉に農耕民族の血が流れているとよく言われますが、妖怪漫画「ゲゲゲの鬼太郎」の作者水木しげる氏がある雑誌に次のような談話を載せています。「日本では、成功しても、その先にもっともっといいものがあるように見える。まるで幸福の峠をあくせくよじ登っているようなものです」と。そして、みずからも暮らした最高の楽園と信じてやまない南洋の島を指して、「ラバウルの原住民たちは今ある畑を耕して残りの時間は昼寝をするんですが、日本人は、今ある畑を耕したら、さらに新しい畑をつくろうとするからおかしくなる。ちゃんと昼寝をして幸せの規則を守ればいいんです。日本人は、努力しないと何か悪いことのように見られているので、一生懸命働きまくって死ぬ人が多い。でも、それで幸せが得られるのかと言えば、そうでもない。日本社会は、金にしろ何にしろ欲の切りがない社会であり、楽園であるラバウルには切りがあるんです」と言って結んでおります。
 日本人にとっての幸福とは、金をもうけることなのか、仕事はそここそに私生活を充実させて心豊かに暮らすことなのか。日本人にとっての究極の幸せについて共通認識が今の日本にはないのが現実であり、社会や経済が方向性を見失っているのも、そこに端を発しているのだろうと思うわけであります。
 雑誌「エコノミスト」にも、こんな記事があります。ご紹介します。「経済成長を見込めなくなった日本で、米国型市場主義経済を国民の新たな価値観に据えようとしている」、しかし一方の米国人について、「米国の市場主義を支えるのは、一世紀近く変わらない、ごく普通の田舎の暮らし。いざとなればそういう生活を送ることができると思うから、米国人は究極の競争社会に身を置くことができる」と解説しています。
 ここで、第一点目として地方分権の対応と市町村合併についてお伺いしたいと思います。
 まず、我が和歌山県の幸福論をどこに据えるのかについてであります。
 地方分権推進法第一条「ゆとりと豊かさを実感できる社会を実現すること(中略)を目的とする」、また第二条には「個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現」云々であります。地方を人生の楽園にすることに価値を見出し構築していきなさいとも読めますし、また大半を地方で考えなさい、そのために自立しなさいとも読み取れます。
 さて、ここで県民の幸福論とは一体何なのかであります。目先の利益に流されずに、これは我々の手で予知し、確立しなければならないのではないでしょうか。そのためにも、二十世紀の科学技術の進展と経済発展、そして戦争と破壊による時代から得たものと失ったものとを精査し、人間の生き方、地方のあり方を根底から見直すべきであります。
 今、県当局支援のもと各市町村では、合併に向けての住民の合意を得るための努力や行政間の調査検討が急ピッチに進んでいるところかと思われます。ただ、現状では、行政事務の効率や広域事業の推進、公共事業の増大等々の財源的なメリットが論議の中心であります。これは、ハード面でのものです。一方で、ソフト面での住民の幸福論が議論の対象になっていないのが気にかかるところであります。
 市町村合併論議は避けて通れませんが、それぞれの地域の幸福論に大きな誤差は生じないのかどうか。また、それを合併協議の焦点に置くべきではないのだろうかと。しかし残念ながら、それぞれの地域では新しい将来像を描き切れないのが現状であろうと思います。それだけに、ビジョン策定にかわっての市町村支援は、県の役割が相当大きなものとなるでしょう。先駆けてみずから県政の目指す方向と県の理念を市町村や住民の皆さんにももっと強くアピールすべきであります。
 国のビジョンを模範として、市場経済主義のもと、スピード社会を目指すのかどうか、それともこれからは違ったものにしていくべきなのかどうか、示さなくてはなりません。私が思うには、この市町村合併は、協力社会の実現が可能であり、なおかつ理念が共有できる結びつきが前提であってほしいと考えます。なぜなら、信頼関係を維持できる合併でなくてはならないし、国の財源上の都合で行う合併であってはならないからであります。
 市町村合併というものは、親から自立しようとする者同士の結婚のようなものであります。新婚当時から無理して大きな家を建てることは、賛同いたしかねます。小さな家を建てて明るい家庭を築く方が大切であります。力を蓄えた後に大きな家を築いていく方が、長い人生においてより充実した夫婦生活が送れるのではないか、そんな気がいたします。小さな家も無理な場合は、しっかり者の兄さんに当分間借りしてでも結構暮らしていけるのではないかと思います。いかがでしょうか。ちなみに、親とは国、兄とは県、そして大きな家とは広範囲な合併、小さな家とは小規模合併のことであります。
 地方分権は、地に足のついた粘り強いものでなければなりません。そのためには、県行政によって、市町村あるいはその先にある地域の人々との直接的なコミュニケーションから施策をつくり上げていくことであります。これが複雑化した県と市町村の役割分担を解きほぐし、住民のニーズに合わして的確に行政を目指すことになります。このことによって、市町村合併推進支援のあり方やなすべき方法がおのずから見えてくるものであります。ここを避けて市町村の独自性も生まれないでしょうし、地方分権そのものが弱肉強食の時代と見る向きも払拭できないのではないでしょうか。
 以上の観点から、市町村合併の推進の立場である県の役割とその理念をお伺いいたします。
 第二点目として、農業経営とその構築のための協力社会の実現についてお伺いいたします。
 まず初めに、県の目指すべき理念として、大地を守り人をはぐくむ行政を今後の県政に生かしていただきたく、私の方から提案いたします。
 地域再生のキーワードは、その土地に根づいた固有の自然や文化を大切にし、その担い手である人づくりからと言っても過言ではありません。人間の生活の場を取り戻すための公共投資であります。土地と労働力は、地域の本源的な生産要素であります。国全体が危機的状況の中で、なおかつ地方の自立が我々に託された選択肢であれば、先人の営々と築いてきた自然の営みを大切にし、将来を託していけるであろう人材をはぐくむことに再び挑むことにほかなりません。大地を守り人をはぐくむ行政──今回はこの「大地を守る」に的を絞って産業経済再生、とりわけ農業振興について具体論を示していきたいと思います。
 本県の基幹産業である農林水産業の安定した経営を目指すために、やはり既存の農山村や海浜を大事にすること、そして消費者に軸足を向けた生産方法と消費者にわかりやすい流通をより以上に徹底することではないかと考えます。特に農業経営の基盤安定のためには、農薬の低使用化と有機栽培の促進、産地や生産者の表示徹底、流通の近代化等を官民挙げて取り組んでいくことであります。そして、より安全な食べ物を安定価格で消費者に提供することが大事であります。これらの農産物や海産物を絶えることなく生み出すこの豊かな山海は、和歌山県の天から授かった大きな恵みであります。
 古来より紀伊半島に暮らす人々は、自然の恵みを大切に享受し、そして生活基盤として農林水産業を守り、発展してまいりました。これからも自然に逆らうことなく、自然の規律を守り、自然の恩恵を受けていかなければなりません。この産業が今後とも発展していくためには、安全性の確保と消費者にどのように流通させるのかが課題であります。このことは、BSEいわゆる狂牛病問題や雪印食品のケースのように、消費者が主役だということを忘れては農林水産業の未来がありません。特に農産物に関しては、品質と安全検査の徹底、あるいは流通支援の連携、そして栽培のための技術指導等は、産・官・学の協力体制による取り組みが不可欠であります。
 あわせて、時代の要請は徹底した情報の開示であります。原産地表示の適正化を急ぐための条例づくりや農協や卸売市場の生産者表示等の協力は欠かせません。とりわけ、安全性確保のための残留農薬検査は四十日も及ぶと言われています。この迅速な検査体制の確立等、消費者の信頼に足る安定供給システムの構築は火急の課題であります。そして、安全、新鮮、美味のアピールを他府県に先駆けて実施できるよう、このマスタープランは早急に打ち立てなければなりません。そのためには、生産過程の徹底分析、そしてそれを生かしつつ流通システムにインターネットなどを駆使した情報処理技術等の導入を図ることからスタートすべきと考えます。
 このように安全性優位を目指す農業経営は、限りなく自然栽培に近い農法を確立し、その生産品を効率よく消費者に提供していくことを目指すことにほかなりません。この実現のため、各分野の連携と協力体制が絶対に欠かせません。
 ここで私は、協力社会の実現を提案する次第であります。行政、公的研究機関、学校、民間企業、さらにはNPO等の協力を得る社会であり、主体である県民一人一人が協力する社会であります。特に行政機関においては、農林学、理化学、経済学、気象学、さらには法律分野を駆使し、専門分野にとらわれない縦横無尽の協力体制を必要とします。同様に、これからの新しい時代は、あらゆる行政分野においても必要性を認識していかなければなりません。かなうものであれば、県庁機構の中に知事直轄の協力社会推進課の新設を木村知事に要望したいところであります。
 さて、提案いたしました理念の一端である「大地を守る」上での農業経営等のあり方を申し上げましたが、協力社会の実現を前提とした新しい農業経営の行政指導と支援面において、県の基本的な考え方と将来に向けての取り組みをお伺いいたします。
 最後に、三点目として緑の雇用事業の活用と観光についてお伺いいたします。
 緑の雇用事業につきましては、知事を初め各部局の方々、そして地元の国会議員さんの協力等々、大変なご尽力によりスタートしたところであります。また本事業は、国の指導のもと、素早い対応で事業案を練り、費用対効果を図られる必要もあったでしょうし、なおかつ実施に当たってはスピードが要求されたことは承知しています。それだけに関係職員の方々の苦労のほどは、十分我々に伝わってまいります。ただ、後年においてももう一踏ん張り願って、森林を守り育てるための雇用対策から暮らしたい町づくり、そして訪れたい町づくりとするダイナミックな理念を掲げて当該事業を拡大活用していけないものかと考えたわけであります。単なる失業対策に終わってほしくない、新世紀にふさわしいすばらしい発想に基づいた公共投資であるだけに、あえて欲張って国の理解を今後とも求めてほしいところであります。
 拡大活用の一例を申し上げますと、美しい町づくりの創出にすべての市町村を対象とすることであります。沿道や公的空間の花づくりを進め、さらに企業や個人に呼びかけてオープンガーデンづくりの取り組みや種苗配布によるすべての家々にガーデニングの普及、そして集落ごとに統一化された生け垣用の植栽事業への支援等であります。
 訪れたい町にするということは、すなわち潜在的に集客能力のある町に位置づけるということであります。もう既に全国津々浦々にこのような美しい町づくりが急ピッチに仕上がっている中で、今までの私たちは、豊富な史跡と自然豊かな風光明媚な土地柄であるだけに、若干手づくりの美しさにむとんちゃくであった気もいたします。
 いずれにいたしましても、今進めようとしている緑の雇用事業の重要性は理解しつつも、自然相手の過酷な山仕事が主であります。それだけに、経済効率性だけを追求して無理をすると、人間も森も傷がついてしまいます。長く働けるように、のんびりとゆっくりやっていくのが山仕事であります。山に住み、山のリズムに合わせる男性的な仕事として雇用を提供しつつ、私が提案しました高齢者の方々や地元の女性の方々も対象となり得る、生活者を優先した美しい町づくりを目指すため、町々に花木を育てる緑の雇用事業があってもいいのではないか。これを一考願いたく提案する次第であります。
 最近のあるテレビ番組で、首都圏で一番行ってみたい町のベストテンはどこかと特集していました。選ばれた町のすべてに共通している点は、やはりきれいでおしゃれな町であるという事実が鮮明に浮かび上がってきています。ちなみに申し上げますと、選ばれた町の大半は、自由が丘等、都心から少し離れた町々であるという事実も印象的でした。多少不便であっても物を買ったり食事に行ったりと、あえて時間をかけて訪れる町、ぶらりと行ってみたい町──本当に目標としたい町々であります。とにかく、都会にいても田舎に住んでも、きれいでおしゃれな町づくりの創出によって生まれる波及効果は普遍であります。そこに住む人々が暮らしたい町づくりに取り組むことが、すなわち訪れたい町づくりとなるわけであります。これを見る限り、博覧会や大きなイベント、テーマパーク、そして過大なPR作戦等、従来型の構えた観光への投資は完全に時代おくれと言わざるを得ないのではないでしょうか。
 このように観光地という定義づけは、今後は大きくカーブをしながら、暮らしたい町を見に行こう、そしてそこでお茶を飲んだり食事をしたり、地元で売っているものを買ってみようというスタイルに変わりつつあります。このスタイルがこれからの時代の人の移動を動機づける大きな要素となり、既に定着しつつあるのではないでしょうか。ふだん着のままの生活を見て人と人との触れ合いが始まり、そしてきれいな町との相乗効果を発揮することがこれからの地域集客能力開発のキーワードであると考えます。
 以上、緑の雇用事業から地域づくり、そして観光の定義まで発展させてきました。暮らしたい町、訪れたい町の創生に至る遠大なプランの実現は、並大抵でありません。しかし、県や市町村が情報発信を行い、地域や各自治会、そして県民一人一人の理解と行動等、協力社会の構築が得られれば実現することは容易であります。
 なお、美しい町づくりのための条例制定や現行法規の遵守徹底及び見直しを行う必要性も生じてこようかと考えます。そして、住民による住民のための地域づくりをコーディネートし、県行政が主導に立って市町村を支援してほしいものであります。
 緑の雇用事業の拡大活用と観光の位置づけを関連して申し上げました。事業化への是非と新たな観光の潮流を踏まえて見解をお願いします。
 以上、三点を申し上げてまいりました。木村知事の大所かつ高所に立った所思をお願いして、一般質問を終わります。どうもありがとうございました。
○議長(井出益弘君) ただいまの坂本登君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ただいまのご質問、私ももう真剣に、本当に感動しながら聞かせていただきました。
 まず、和歌山県のこれからの方向の中で、例えば今都会の人が田舎型の暮らしとかいうものにあこがれるということがある、そういうことをやっぱり考えていくべきだとおっしゃるのは、そのとおりだと思います。
 私が緑の雇用事業を提唱しているのも、現代人の生き方をもっと多様化させていかなければならないという考え方からでありまして、日本の国は今、平均年収が六百万円ということで世界一なんですけれども、二十一世紀には中国なんかの台頭もあって、こういう状況を確保していくのは難しいと。そうしたら、現金収入は仮に二百万円ぐらいであったとしても、心を豊かにする四百万円で合わせて六百万円の収入ということで自分に合った生き方とか、地域をよくしていくような生き方ということを追求していくのが人の一生の中で大事な時代に二十一世紀はなってきたのじゃないかと。そういう中で和歌山県は、持っている自然とかいろんなものをもって情報発信など、いろんなことができていくんじゃないかなという考え方でいるわけでございます。
 そういうふうな中で、今、市町村合併ということが問題になってきておりまして、もう既に三つの重点地域も指定され、それぞれの地域では、例えば任意協議会を設けるとか、そしてまたそれを法定の協議会に進めていくとか、いろいろな作業を苦しみつつ協議しつつ進められているというのが現状でございます。
 しかしながら、これは必ずしも財政的にやっていけなくなるから合併するんだという話では非常に小さい、歪曲化された話であって、そういうふうなことで今まで何十年も培われてきた地域社会が変わっていくということは、これはいいことではないと私は思っております。やはりそこに、こういうふうに合併することによってよくなるんだ、そしてまたよくしていくんだという理念ということが必要であると思いますし、それから合併する数も、三千の団体を千ぐらいにするんだということが一般的に言われていますけれども、これは、二つのものが一つになるということがあってもいいし、三つが一つになるということがあってもいいし、十が一つになるということがあってもいい。これは、やはり地域のそれぞれの実情とか気持ちとか高まりとか、そういうふうなものに合わせて考えていくべきだろうと思います。
 そういう中で、県も、ただ単に国がこういうふうな意見を出しているからとか、こういう補助制度ができたからとか、そういうものの伝達役みたいなことをするのではなくて、やはり県として和歌山県の市町村がどういうふうな形になっていくのが一番いいかということを、これも押しつけるのじゃなくて真剣な形でアドバイスしていくことが私は最も大事なことだと思っておりますので、組織もまた強化していきますし、それからいろんな助成の仕組みも新年度また充実していくというふうな形の中で、関係の市町村と一緒に悩みながらこの市町村合併ということに対処していきたいと、このように考えております。
 それから、農業経営ということでございます。
 農業経営は、和歌山県では基幹的な産業でございます。ただ、やはり今の非常に厳しい状況の中で生産性が低いというような問題があります。しかし、和歌山県の地勢とかいろんなことを考えていくと、やはりこの農林水産業を大事にすることなくしては発展があり得ないということは、これはもう私がずっと就任当時から言っており、今もその思いを強くしているところでございます。
 ただ、今まで型の農業とかというものを続けていると、中国なんかから大変大量生産されたものが入ってくるという中で、ますます苦しくなる。一方には、今、日本の国も、景気は悪いですけれども、皆さん、非常に豊かになって、いいものがあれば幾らでもお金を使う人がいると。きょうの新聞にも載っていましたけれども、そういうふうな状況がある。そういう中で、ぜひ和歌山県は近畿圏の中にあるという土地的な優位性も生かして、今ある製品というか生産物をブラッシュアップし、そしてそれに都会に合うような形、嗜好に合ったような売り方というものを考えていく必要があると思います。これがすべてではありません。もちろん、農協とか系統の形で売っていくということが大部分を占めることは間違いないんだけれども、新しい時代に合った物の売り方というものを考えていく必要があると。
 例えば、先週、私はめっけもん広場へ自分で行ってきたんですけれども──別に特別なところをPRするわけじゃないんです──本当に新しい野菜が町の値段と全く違う安い値段です。あんパンも売っていましたけれども、あんパンもおいしかった。きのうは、あそこで買ったお豆腐を自分で湯豆腐にして食べましたけれども、これも考えられないぐらいおいしかった。そういうふうなこと。それで、大阪の方から来た人なんかで駐車場はもういっぱいなんですね。やはり、いいものをいいような流通の仕方で売っていったら非常に売れるということは、私はあると思います。こういうこともひとつ和歌山県のこれからの農業が目指していく道じゃないかと思っております。
 それから、インターネットの販売も今まだ緒についたところではありますけれども、これからこういうものが非常に大きな役割を持ってくると思います。去年つくりました和歌山わいわい市場も、去年のお歳暮のシーズンから売り上げが伸びてきておりまして、県の農林水産業の生産物などがかなり売れるようになってきておりますけれども、こういうふうなことについてもますます力を入れて、県の農林水産業に携わっている人がみんな何かの形で参画していけるようなものに進めていきたいというふうに思っております。
 それから、緑の雇用事業でございます。
 緑の雇用事業を単なる失業対策に終わらせるべきではないというお考え、全くそのとおりでございます。私は、この緑の雇用事業は、何も枝打ちとか間伐とかをする人を都会から来てもらってというようなことだけ考えているのじゃなくて、もう山仕事というのは──私も、この間山の方へ行ってあれしましたけれども、三十度も四十度も角度のあるようなところで大きな材木を切り出すと。これは大変なことです。すぐにだれでもできることじゃありません。だから、やっぱりそれに向かない人だって当然出てくるんだけれども、そういう人たちもいろんな形で地域づくりとか過疎対策とかに活躍してもらえるような交流を進めていきたいということが根底にあるわけでございます。
 先ほどお話にあった、和歌山県は余りにも自然の豊かさに恵まれているがために手づくりの美しさにむとんちゃくだったんじゃないかということは、私は本当にこれは大事な指摘点だと思っておりますので、そういうふうなことへもこの緑の雇用事業に携わったり入ってきた人たちがかかわっていけるように。そして、これはただ単に来た人だけじゃなくて、地域の住民の人も含めた全体的な運動にしていくことがある意味では和歌山のリーディング産業たるべき観光ということでも非常に大きな役割がある。例えば熊野古道なんかは県も非常に一生懸命に売り出しているんですけれども、これだってやはり周りの環境がよくなかったら、ただ単に平安時代にたくさんの人が歩いたというだけではもう人を呼べるような時代ではないわけでございます。そういう意味で、手づくりの美しさをつくっていく、そして町をきれいにしていくという緑の雇用事業をさらに発展させていくというお考え、非常にあれだと思いますので、私どもも参考にしながら進めてまいりたいと思います。
 以上です。
○議長(井出益弘君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(井出益弘君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前十一時二十五分休憩
     ─────────────────────

このページの先頭へ