平成13年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(木下秀男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十三番木下秀男君。
  〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 大変にぎやかな笑いと指呼によって、いろいろ指示された知事初め多くの議員さんがございますが、私は、この議会で定められた海外調査費のもとに中国を訪問してきた調査報告と、ほか一件、教育問題について質問をいたします。
 まず報告でありますが、去る四月二十四日から二十七日までの四日間、中村裕一議員、冨安民浩議員、原日出夫議員、そして県農林水産部の技術職の職員等、一行八名で、中国の梅の栽培状況並びに一次加工の現地加工場等を調査した視察を報告いたします。
 中国全体での生産状況は、正確な統計資料がないため梅干しの処理量から推測いたしますと、栽培面積で約一万数千ヘクタール、生産量で約六万トンで、和歌山県の生産量と同じぐらいと考えられます。中国南部の福建省、広東省などが主たる生産地であります。福建省南部の詔安県、これは海に面した県でありますが、梅、レイシ、バナナ、ビワなどの果樹園の栽培面積が約二万一千ヘクタール、お茶が二千ヘクタール、これは中国で一番よいウーロン茶を産する地域だそうでございます。水田が一万八千ヘクタールといったような農業を主産業とする県であり、そのうち梅は、栽培面積約四千ヘクタール、生産量は三万トンから四万トンということであります。
 今回訪問したのは詔安県の紅星郷で、お話を伺った人民代表大会の主席によりますと、この村での梅の栽培状況は、栽培農家数三千戸、全戸が農業であります。栽培面積約千四百ヘクタール、平成十二年度の生産量約一万トンとなってございます。近年の平均販売価格は、キロ当たり平均で日本円にして百五円であります。ことしは六十円ぐらいであります。また、この村の果実の品質は中国では一番と言われており、日本向け用の生産に努めている農家の生産意欲も大変旺盛で、生産目標を二万トン、これは平成十五年でございますけれども、これを目途として優良品種への更新、改植による若返り等の振興策を実施しているとのことでありました。生産された梅は、福建省、広東省を中心とする加工業者二十七公司(会社)の六十九工場で一次加工され、厳選されたA級品が平成十二年度で約三万六千トンが日本に輸出されております。今回の調査では、梅の一次加工場二工場とシソの加工場一工場──この経営者はいずれも台湾系であります──を見学しましたが、これらの加工場ではキロ当たり日本円にして四十二円で仕入れた梅を九十名の従業員で年間三千トンを処理し、また別の加工場では百二十名の従業員で三千五百トンほどの梅を処理して、A級品を日本に輸出していることでありました。梅酢は紅酢──紅ジソで染めた酢でありますが──でショウガを漬け、ASEAN諸国、特に米を食べる国に輸出しているとのことでありました。
 また福建省は、全世界に進出している華僑の一番大きなふるさとということであり、そのふるさとというか歴史の一端をかいま見るために客家土楼──これは中国で言う漢族でありますが──を見学してまいりました。この客家土楼は、昔、四世紀ごろ、戦乱を避けて南下してきた漢民族の子孫が、一族郎党を守るためにとりでと住居を兼ねた土楼──土で固めた家でございますが、この囲い屋を建てた巨大な建物でありまして、一つの建物には、一族でございますけれども、何十家族ということで、二百人も三百人も住んでいるということでございました。この客家から海外へ出て成功しているのがリー・クワンユー、国内にあってはとう小平、この人らが客家の出ということでございます。
 総括いたしまして、生産技術──機械器具、化学肥料、消毒施設、作業道等は大変おくれておりますけれども、国策である外貨を稼げる農作物として生産意欲が大変高く、五年から七年後には生産量は倍ぐらいになるだろうと予測してまいりました。また、労務賃が安いことに大変びっくりしましたが、加工場で働く二十歳から二十五歳の女性の日当は十五元で、日本円にして二百二、三十円であります。加工場は、日本の輸入業者の指導で選別機、洗浄機は日本以上の設備をしており、若い労働者の服装もさっぱりしておりまして、ごみや髪の毛が落ちないように全員帽子をかぶり、白長靴を履いて、衛生面でも細心の注意を払って仕事をしております。
 今回の中国の梅の栽培状況調査から和歌山の梅の今後を考えますとき、国内での産地間競争に加えて、中国等との国際競争がより一層激しいものになると予測されます。このため、生産者、加工業者、販売業者等、梅産業にかかわるすべての人々が一致団結し、英知を結集する中で和歌山県の梅の将来のために取り組む必要があると、強く感じた次第であります。
 以上で、中国の梅の栽培状況調査報告を終わります。
 次に、教育についてであります。
 まず質問に入る前に、米国ハワイ州オアフ島付近で沈没した愛媛県立宇和島水産高校の九人の遭難者と、去る八日に大阪教育大学附属池田小学校で起こった殺傷事件で死亡した八人の子供さんに衷心より哀悼の誠をささげ、重軽傷を負われた児童や先生に心からお見舞いを申し上げるものであります。えひめ丸事故は、被害者側の強い要望でようやく引き揚げが開始されるようでありますが、池田小学校の事件は、取り調べが進むにつれまして、犯人の供述や今日までの行動等を聞くとき、事前に防止できたのではないかと思われる点も多々あり、この惨劇に教育界はもちろんのこと、国民すべてが日本の誇りとしていた治安のよい国日本のイメージダウンに大きな怒りと今後の安全対策に苦慮しているところであります。
 今、日本の教育界は、学力の低下と二〇〇二年から新たに始まる週五日制の問題、教科書検定の問題、大学改革の問題、少子化による学級編制、いろいろの問題が山積しております。政治の世界でも教育制度改革が大きく取り上げられ、教育の憲法とも言われる教育基本法も見直しを検討されております。「教育は国の礎」と言われますが、現状を見る限り、今の教育問題は文部科学省だけの問題ではなく、国民全体の問題として取り組む時期に来ていると思います。前段はこれぐらいにいたしまして本論に入ります。
 県教委は、開かれた学校を目指して、空き教室の開放や体験学習、高校と大学の連携、他府県との交流、高校入試問題自校作成、中高一貫教育、さらに高校五年一貫教育と、新しい教育に取り組まれております。教育長初め関係者のご努力に敬意を表し、この成果に注目しているところであります。
 まず、学級編制の統合化、複式化ということでお尋ねいたします。
 少子化と過疎化で学級編制に悩んでいる町村の数が、県内で半数以上と言っていいほどあると思います。既に小規模校を統廃合してスクールバスで通学をしている町村もあります。また、少人数であっても複式学級は反対という父兄の強い要望で、学齢期の子供を持つ転入家族を募集する学校もあります。今、教育改革が大きな政治課題となっていますが、教育学者や教職員組合は今の学級編制の定数を半分にせよという提言の本や各種の集まりの報告がされております。私は、切磋琢磨をさせることからも、統合すべきであると思います。しかし、万が一統合できない場合は、複式編制でもいたし方ございません。しかし、中学校を複式にした場合は、教科のレベルの差があるので複式は無理と思います。この点について、教育長のご所見を伺います。
 次に、教員の特別選考についてであります。
 この前説明に来てくれた先生の話では取り入れておるということでありますが、この方法は九六年四月、文部省が「成績よりも人物評価を重視した教員選考への移行」という通知を各都道府県に出したことから全国に広がり、既に北海道や鹿児島県を初め二十二都道県で取り入れられてございますが、これは五月中旬の調査結果でございます。
 そういう制度を行っておる二、三を紹介いたしますと、北海道立帯広三条高等学校の有倉雅史先生、三十三歳、日本体育大学の卒業で教員免許証を持っておりますが、前歴はプロ野球選手でありまして、日本ハム、ダイエー、阪神の投手をしておったそうです。もう一人は、埼玉県立南陵高校の千葉(旧姓梁瀬)かおり先生、同じく三十三歳でございますが、前歴は水泳短距離の日本代表選手であります。変わった人では、香川県立高松桜井高校の滝口幸夫先生、五十二歳でありますが、前歴はNTT四国支社法務担当課長、教員免許なしとなってございます。この先生方のほかにも人生経験豊かな先生が各地で誕生し、校長先生になった人もいます。
 高校野球以外は全国最低クラスの和歌山県のスポーツ振興のためにも、この教員選抜制度を導入してはと提言するものでありますが、教育長の積極的なご回答をお願いいたします。
 最後に、今までは大変厳しい中で、また受験戦争に向けての授業でありましたが、最近はゆとり教育、さらに二〇〇二年から週六日制から五日制となります。五日になりますと、おのずと授業時間が少なくなり、低学年の教育の基本とも言われる反復練習をする余裕がなくなり、講義のみで終わらせるのではないかと考えるのであります。
 「ゆとり」を辞書で引いてみますと、「余裕があること。窮屈でないこと」となっております。この教育方針であれば、さらに小学校の学力低下を危惧するものでありますが、これも教育長のご所見をお伺いいたします。
 以上で、私の最終質問としたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) さきの予算委員会での議員のご要望を踏まえてお答えいたします。
 少子化や過疎化による児童生徒数の減少に伴う小規模校の教育の充実につきましては、複式学級の編制を改善し、児童生徒の可能性を伸ばす教育が展開できるよう努めております。また現在、本県の中学校では複式学級編制を行っている学校はありません。教科指導や進路指導に小規模校の特性が最大限生かせるように指導しているところでございます。
 なお学校の統合につきましては、児童生徒数の推移を踏まえつつ、地域住民の十分な理解を得ながら検討するよう市町村教育委員会に助言をいたしているところでございます。
 次に教員の採用選考検査についてでありますが、本県では、豊かな社会経験と専門性を有した教員を採用するとの観点から、教員免許状を有していなくても受検できるよう平成九年度から高等学校の工業に、続いて商業、さらに看護と、順次その対象教科を拡大するとともに、年齢制限を引き上げ、受検機会の拡大と人物評価の重視に努めてまいりました。また、スポーツや芸術等の分野で特別優秀な実績を有する受検者に対しましては、受検願書にそのことを特記してもらうとともに、実技や面接検査においてアピールできるようにするなど、さまざまな分野で活躍した人物を採用できるよう努めているところでございます。
 議員ご提言の特別選考検査につきましては、その趣旨を十分踏まえながら研究してまいりたいと考えております。
 最後に、ゆとり教育についてであります。
 今日の子供を取り巻く社会の急激な変化に伴い、子供たちの社会性が未発達であるとか規範意識が低下しているなどの問題が生じてきております。こうした状況を踏まえ、新学習指導要領におきましては、完全学校週五日制のもとでゆとりある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育の充実をねらいといたしております。確かに全体の授業時数は減少いたしますが、教育内容の厳選や再構成を行いながら、読み、書き、計算を重視するなど、学力の基本となる知識や技能の確実な習得を図るとともに、各教科や総合的な学習時間の指導を通して学ぶ意欲や学び方、探究心を身につけることにより学力の質の向上を目指しております。
 今後とも、教職員にさらにその趣旨を十分徹底するとともに、習熟の程度に応じた指導や複数の教員で授業を行うチームティーチングなど指導の方法を工夫改善することにより、一人一人を生かした教育の充実に努めてまいります。
○議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(阪部菊雄君) 以上で、木下秀男君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問は、これをもって終結するこにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(阪部菊雄君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
  【日程第三 議案等の付託】
○議長(阪部菊雄君) 次に日程第三、議案等の付託について申し上げます。
 ただいま議題となっております全案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
 お諮りいたします。六月二十六日、二十七日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(阪部菊雄君) ご異議なしと認めます。よって、六月二十六日、二十七日は休会とすることに決定いたしました。
 なお、常任委員会の会場はお手元に配付しておりますので、ご了承願います。
 次会は、六月二十八日再開いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時五十六分散会

このページの先頭へ