平成13年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時二分再開
○副議長(尾崎要二君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十二番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、順次一般質問をさせていただきます
 まず第一に、完全学校週五日制についてであります。
 去る六月八日午前に起こった大阪の児童殺傷事件には、小学校、幼稚園に通う子供を持つ私にとっても、身震いのする衝撃を受けました。被害に遭った八人の若い命に、謹んで哀悼の誠をささげたいと思います。
 教育の中に「ゆとり」という言葉がしきりと多用されるようになってから久しくなります。「広辞苑」によると、「ゆとり」とは「余裕のあること。窮屈でないこと」だそうです。中教審では、「今後の教育のあり方について、我々は、子供たちや社会全体に「ゆとり」を確保する中で、学校、家庭、地域社会が相互に連携しつつ、子供たちに「生きる力」をはぐくむということを基本にして展開されていくべきだと考える」とあります。果たして子供たちは、そのゆとりというものを週二日の休みで確保するでしょうか。それも、学習内容の大幅削減、授業時数の縮減と引きかえに。
 まず、学校週五日制になると、よっぽど生徒に時間の使い方を指導しておかないと、かえって生活が不規則になり、ゲームとにらめっこ、テレビにかぶりつきの時間がふえ、あるいは塾通いを増長することにならないかと思います。家庭、地域社会の体験、活動に充てると言っていますが、義務教育部分を減らして家庭、地域への責任転嫁にならないでしょうか。週末の子供たちの生活、活動には、実施後も、家庭を含めた学校側の今以上の注意と指導が必要になると思います。さまざまな誘惑の多い、危険の多い昨今、本当に健やかな成長を促すことになるのでしょうか。
 生活体験や自然体験の豊富な子供ほど道徳観や正義感が身についていると、調査結果を引き合いに出されております。なるほど、そのとおりですが、学校でも、授業の中、休憩時間の中、クラブ活動の中、よいことはよい、悪いことは悪いということぐらい、日々身につくものであります。週に一日休みがふえたくらいで大して変わらないと思います。
 週末の学校の施設、機能の開放の促進と言いますが、これも先日の凶悪事件といい、学校と保護者の週末の監視を一層徹底しなければならなくなります。地域とのかかわりも、非常に難しい問題となってきます。「わかる授業、楽しい学校の実現」と言っていますが、学習内容を大きく減らしてよいのでしょうか。
 貧しかった日本が他国に負けない勤勉、勤労によって今の繁栄を築いたのです。現在の中国を初めとして東アジア諸国の目覚ましい発展は、まさしく日本に負けない勤勉から来ていると言えます。考える、挑戦していく勉強、勉強後の達成感、充実感というものも尊重すべきではないでしょうか。先生方にもよっぽど特別の意欲がなければ、意欲のある生徒に進んだ内容の授業は行われないでしょう。
 高等学校では、卒業に必要な修得総単位数を六単位も縮減します。恐らく大学進学を目指す高校生は、学力不足を塾や自習により、多くの時間を使って補わなければならないでしょう。今回のカリキュラムの改定は、国公私立の別なく遵守させると言っておりますが、進学を第一義に考える私立学校では独自のカリキュラムを立て、授業時間をふやす努力、各科目の授業内容にさまざまな工夫を取り入れていくことによって、さらに公立、私立の格差は大きくなることでしょう。そのため、ふえた休日にはさらに塾通いがふえることでしょう。
 「学ぶことの楽しさや成就感を味わうことができるようにします」とありますが、それも大切ならば、学ぶことの厳しさを味わうことも大切ではないでしょうか。楽しいばかりでよいのでしょうか。楽しくゆとりがあれば、中教審の言うように、「自ら学び自ら考える力を育成する教育」になるのでしょうか。「自ら学び自ら考える力を育成する」ことを教えるのは、実際、教える側からしても非常に難しいと思います。
 また、総合的な学習として、「体験的な学習、問題解決的な学習を重視します」とありまして、「観察、実験、見学や調査 スピーチ・討論、ディベート 自ら調べ・まとめ・発表する活動 自然体験やボランティアなどの社会体験 ものづくりや生産活動」を学校で「積極的に授業に取り入れていきます」とありますが、果たして先生側も従来型から即座に対応できるのでしょうか。教える側も、随分と問題があるのではないでしょうか。
 塾通いの増加への懸念についても、「過度な塾通いにつながらないよう、学校における授業の改善、入試の改善、保護者や塾関係者の理解の促進など、すべての関係者が協力して対応する必要がある」と言っていますが、果たしてあと九カ月でそんな理解、協力が得られるものでしょうか。大学入試制度や学歴偏重の社会の仕組みが変わらない中では、子供も保護者も、当然進学を重視するのではないでしょうか。
 幼稚園については、明らかに楽しい集団生活の場を、家庭にない社会教育の場を一日でも多く機会を与えてあげるべきなのに、週ごとに二日も休ませてよいのでしょうか。
 もっとも苦言ばかり言っても始まらないので、この新しい学習指導要領が来年度から始まるからには、家庭教育に大きなウエートを置く必要があります。夫婦共働きの多い中、休みのふえた子供たちには、保護者も、中教審の言う家庭や地域社会での生活体験や自然体験、社会体験、文化・スポーツ活動といった体験や活動にできる限り時間をつくってともに参加する努力をし、子供たちと同じ目線でできるだけ対話をしていくしかありません。そして、隣近所から始まって地域の中での遊び、レクリエーション、ボランティア活動などに子供たちと一緒になって参加し、地域の皆様に親子ともどもかわいがってもらえるよう頑張っていく必要があるでしょう。
 ただ、私を含めて今の保護者世代は、何でも与えられて育ってきた、親が子供たちに自分の味わってきた苦労をさせないでそのまま育ってきた人たちが少なくないと思います。そんな親が育てた子供は、善悪についての意識が希薄となり、凶悪な犯罪を生み出しているのではないでしょうか。また、子供たちを甘やかし過ぎて、肝心なところで子供とじかに触れ合いをしていない保護者が多くなっています。そうした保護者を教育していく場が一番必要ではないでしょうか。そういう場を、それこそ休みになる週末に、あるいは平日の夜にでも、先生方から子供たちと一緒にご指導いただく機会が必要ではないかと思います。
 相次ぐ児童殺傷事件が起こる中、地域とのかかわり方も難しく、また来年度から新学習指導要領で教育を行っていく中、それにすんなり適応できるような保護者への教育、指導が絶対に必要です。
 そこで質問に移りますが、完全学校週五日制の実施についての教育長の所見、それに保護者に対して家庭教育の大切さを本当に理解し、親の責務を自覚していただくために、単にパンフレット等を配布するだけでなく、有効かつ定着性のある支援をどう行っていくかについて、また六月八日の児童殺傷事件発生を踏まえた地域のかかわり、学校施設開放のあり方を聞かせていただきたいと思います。
 次に、廃棄物処理についてであります。
 現在、日本では産業廃棄物が年間四億二千万トン排出されますが、一億七千万トンが回収利用され、さらに一億八千万トンが焼却、蒸発等、減容化されます。残った七千万トンに一般廃棄物の五百万トンが加わり、結局、計七千五百万トンをどこかに捨てていることになっています。
 これまで産業廃棄物を埋め立ててきた沿岸部は、ほとんど埋め立てが難しくなっている状況であります。そのため、不法投棄もかなり目立ってふえている状況です。さらに、越境して廃棄物を運んだり、海外へも違法に輸送されて日本へ返送される事件もありました。
 一九九〇年代後半になって、ようやく資源を有効に使い、ごみをリサイクルして環境にできるだけ負担をかけない社会、循環型社会を目指す機運が高まり、二〇〇〇年五月、循環型社会形成推進基本法が成立しましたが、実効性を持たせるには今後の運用にかかっております。
 さきに容器包装リサイクル法、そして本年四月に家電リサイクル法が施行され、排出事業者責任の強化をうたった本年四月施行の改正廃棄物処理法、二〇〇二年四月予定の建設リサイクル法、そして二〇〇四年には自動車リサイクル法が施行される予定で、リサイクルも、順次、法整備によって推進されております。
 国土交通省における物流行政として、資源リサイクル等の効果的な物流を確保するための海運、鉄道を含む既存の物流網等の活用に加え、リサイクル財の回収や集積地等の適正立地を踏まえた交通基盤整備方策による静脈物流システムの構築をうたっており、家電リサイクル法施行にあわせて廃家電の輸送システムの開発、構築を行おうとしております。このように、リサイクル問題は社会的問題、国家的問題として多岐にわたり取り組まれております。
 一方、廃棄物処理については、従来の焼却をダイオキシンの発生や焼却灰の問題から見直す必要が生じ、一般廃棄物については、市町村の互いの連携、協力により、広域的なごみ処理体制の推進を図って旧式炉の合併更新等が開始されているところです。こうして廃棄物を処理しないで埋め立てて投棄することも、焼却処理することも、過去から大量に行われてきた方法が抜本的に見直されるべき社会的課題となっています。
 以上のような社会的要請のもと、ダイオキシンが発生しないような廃棄物処理の高度化技術の開発、物流、処理、副生品の活用を総合した効率化の研究、検討が進められている状況と聞きます。日本においても、環境産業が次世代産業の柱として、官民の連携のもと、取り組みの強化を政府は実践しております。超高温燃焼の二十四時間運転のガス化溶融炉を活用した廃棄物処理施設が多方面で稼働を始めております。温熱の利用によって、産業、福祉等、さまざまなメリットも生み出せるのではないでしょうか。
 本県では、一般廃棄物については、平成十一年三月に策定された和歌山県ごみ処理広域化計画に基づき、県下五十市町村を七ブロックに集約して広域的かつ総合的なごみ処理体制の推進を図り、産業廃棄物については、廃棄物を「県内に持ち込ませず、県外に持ち出さず」を指導して平成十一年に第四次和歌山県産業廃棄物処理計画が策定されましたが、年々移り変わる処理対策に即応すべく、鋭意検討中と聞いております。平成十三年度に十二年度の実態調査をし、その上で県廃棄物処理計画を来年度に発表するとのことです。
 そこで、本県としての取り組みやお考えについて質問いたします。
 一番目に、経済産業省のエコタウン事業のもと、全国でリサイクル候補地が幾つも既に立ち上がっておりますが、本県としても具体的なお取り組みについて何かお考えはありますか。例えば、和歌山下津港湾の未利用地、あるいは和歌山港北港沖地区の待ったなしの産業廃棄物の処理問題に対応するため、ぜひとも前述のガス化溶融炉、それに伴う温熱を利用した農業、保養、福祉施設、開発研究機構、そして廃棄物輸送のための陸上、港湾物流ターミナルの整備も、新しい事業推進の一環で検討してみてはいかがでしょうか。
 二番目、一般廃棄物処理についても、一般に市町村行政任せということで、例えば大型スーパーマーケットがある町に開店と同時に日々大量のごみを生み出したとして、町の施設の処理能力の限界を超えたときにどう対応するかという問題に対し、県内外の行政、官民協力など、あらゆる有効策を検討すべきだと思います。県行政がぜひ積極的にその検討に参画、調整、指導を行うべきと思いますが、いかがですか。
 三番目、二十一世紀の新ビジネスは、観光であれば観光地のホテル、旅館の廃屋処分等、民間ばかりに依存できなくなっているものが多くなってきております。すばらしい自然の資源に恵まれた本県です。他府県に取り残されない、おくれをとらない、廃棄物は汚いものというよりもむしろありがたい資源であるといった発想で、環境リサイクル事業の全県的構築を全庁的に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがですか。
 次に、和歌山県の医療について質問させていただきます。
 一番目に、心肺蘇生の普及についてであります。
 最近、日本においても心臓疾患が増加傾向にあります。一昨年に続いて、和歌山県において岩手医科大学第二内科教授・平盛勝彦先生が、去る五月二十六日、和歌山県心肺蘇生普及学術講演会で、「救急医療のあり方から考える手探り医学医療論断章」と題して講演をされました。岩手県においても、平成五年度から高校生以上の全県民を対象に草の根運動として心肺蘇生普及啓発をされております。急に心臓発作を起こしたときに素早く正しい処置ができるかどうかが、命を左右します。
 よくある重い心臓発作に、狭心症と心筋梗塞症があります。狭心症の症状は主に胸痛ですが、肩やのど等が痛むことがあります。狭心症の発作は、ほとんど一分間から十分間の持続です。心筋梗塞症の発作時の典型的な症状は強烈な胸痛で、三十分から十時間、平均六時間続きます。左肩やのど、背中にも痛みが来たり、吐き気や冷汗が伴ったり、目の前が暗くなったり、気を失ってそのまま心臓がとまってしまうこともあります。心筋梗塞症を発症したときは、一分でも早く専門の病院へ運ばねばなりません。
 心筋梗塞症に限らず、心臓病で心臓が急にとまって救命救急センターに運ばれてきた患者のうち、蘇生されて無事に退院できる人は、日本では百人のうち二人から三人しかありません。しかし、きちんとした処置がなされていれば死なないで済む患者が、百人のうち二十人から三十人にもなるそうです。その処置の第一が、心肺蘇生法であります。
 心臓がとまってから心肺蘇生法の開始までは、四分間以内でなければなりません。心停止から四分以内が勝負ですので、救急隊が間に合わないケースが出てきます。倒れた人のそばにいる人が心肺蘇生法をして助けなければなりません。心臓がとまった場所を調べると、四分の三の人が自分の家でした。まさに、心肺蘇生法を習うのは家族のだれかの命を救うためと言えます。
 我が国では、残念ながら、住民や家族らによる心肺蘇生法施行率は、平成九年で一六・九%のみの状況です。しかるに欧米では、心肺蘇生法は、医師の知識というより、人間としての常識あるいはマナーといった認識のようです。アメリカのシアトルでは、ほとんどの住民が心肺蘇生法をマスターしているようです。さらに欧米では、人の多く集まる場所、例えば空港、駅、ホテルなどに表示板とともに自動式除細動器(AED)が設置されて、資格を持つ市民により、突然死の寸前である心臓が細かく震える症状のケアがなされる時代に突入しております。和歌山県でも、除細動器の普及のために医師へその必要性を徹底的に認識していただき、すべての医療機関への設置が早く実現されることを望みます。
 和歌山県においても、事務局を医大救急集中治療部に置いて、和歌山県心肺蘇生普及会を平成十二年七月に立ち上げたと考えております。和歌山市消防局から各小学校の教職員向けに年一回救急講習に来てくださって心肺蘇生法の講師をしていただいておりますが、県におかれては、ぜひ岩手県に倣って、救命救急センターのある医大と日赤、消防、そして各医療機関が一体となって心肺蘇生法の県民への普及に積極的に努めていただきたいと思いますが、いかがですか。
 二番目に、病院の経営についてであります。
 和歌山県立医科大学附属病院は、平成十三年度当初予算では運営経費等で年間約十八億円の繰入金となっておりますが、人件費は県費補助もあり、看護婦等スタッフも公務員という身分保障がなされているので、どうしても民間の病院に比べると就職先として人気が高いようです。民間は、人件費が六〇%を超えると経営はパンクすると言われます。多くの民間病院が同じ土俵で病院を経営していくためにも、将来的に、医大病院、五稜病院等も独立採算を考えていく時期に来ているのではないでしょうか。
 また、入浴設備のある病院では、入浴患者の入浴を初めとして、水道代が銭湯並みにかかり、一月当たり一人につき一万円以上の費用がかかるようです。公衆浴場では水を循環させている場合が多いのですが、病原菌の問題もあって、病院ではなかなかできません。銭湯には水道代の特別措置があって、半分以下の料金になると聞いております。一般扱いとなると、使えば使うほど水道料金が上がるシステムだそうですが、大量の水を使用する病院にも特別措置があってもよいのではないでしょうか。
 三番目に、精神科の医療についてであります。
 精神科医療といっても、いろんな精神の病気があって、精神分裂症の方だけでなく、心の問題を抱えている人はたくさんあります。精神科の病院では入院期間が平均で三百九十日と長いですが、一般的には二、三カ月の患者が多く、日本では三十三万人から三十四万人が入院しております。長期入院者のうち約三割が、すぐ退院できるか、通院や地域生活の問題が改善されれば退院できると言われておりますが、精神障害者社会復帰施設の整備が進んでいない状況で、今はグループホームや小規模作業所などで対応しているケースが多いようです。
 精神病患者が退院して社会生活を始めても一般企業への完全就職は困難な状況でありまして、また病院へ戻るケースが少なくないようで、よく精神科の病院は患者をしがまえて出さないといった誤解さえ与えてしまいがちです。入院期間の長い患者ほど退院することは少ないと聞いております。
 精神科医が外科や内科など他の科の医師や看護婦、ソーシャルワーカーらと密接に連携をとり合い、定期的に積極的にかかわって患者の精神面を支えるリエゾン精神医療の取り入れも考慮に入れていくべきではないでしょうか。
 休日及び夜間における精神疾患の急性発症等に対応するため、県は精神科救急医療施設を設置していますが、県下では五稜病院と紀南病院新庄別館の二つの病院だけであります。医大附属病院も、男性の看護士等医療スタッフが不足しているからとして、精神病の救急患者を受け入れたくても入院ができない現状であります。救命救急センターであり、和歌山県立の病院としては、今後入院できる体制づくりを検討していくべきではないでしょうか。精神科救急システムの整備について、どうお考えですか。
 また、精神病患者の移送途上、医師が付き添う場合もありましょうが、その費用を保障してあげるシステムも構築していかねばならないのではないでしょうか。触法精神障害者の犯罪が増加している中、精神科医療にも特段の配慮が必要ではないでしょうか。
 次に再生医学についてでありますが、本日、朝日新聞の朝刊を見ますと、「再生医療 見えてきた」という明るい記事が載っております。これに対する和歌山県の取り組みについて、以下、考えを述べさせていただきます。
 二十一世紀は「バイオの世紀」とか「遺伝子の世紀」などと言われるように、再生医学への期待が高まってきます。再生医学とは、培養した細胞や組織、バイオデバイス──生きた細胞を組み込んだ医療器具──などを体内へ埋め込み、機能不全に陥った臓器や組織を再生・回復させる医療でありまして、すなわち簡単に言えば、血管へ血を再び通わせるための医療であります。老人性痴呆や心臓、血管の疾患など臓器や細胞の機能が廃絶する患者がふえていること、高齢化社会で生活の質の向上が必要なこと、提供者不足や拒絶反応への対応で臓器移植が限界に直面していることが期待を高めている理由であります。
 関西においても、新たなバイオ(生命科学)関連施設が相次いで登場しておりまして、研究テーマとして、再生医療や遺伝子解析のデータに基づくゲノム創薬、ITと合体したバイオインフォマティックス(生命情報学)が中心となっております。京都大学の再生医科学研究所を初め、神戸ポートアイランドの理化学研究所発生・再生科学総合研究センター、大阪の国立循環器病センター研究所、国立奈良先端科学技術大学院大学、大津市の宝酒造バイオ研究所等、また大阪市には有数の製薬会社が幾つかゲノム創薬の研究所を設立しており、近畿の各府県でバイオ関連の研究所施設が設立されてきております。
 和歌山県では、わずかに近畿大学生物理工学部研究所で植物遺伝子操作やクローン技術による家畜の品種改良の研究のみが行われており、人体についての研究機関はありません。和医大では、先端医学研究所の中で、分子を中心とした医学に取り組んでいこうという取り組みも実際になされております。せっかく近畿大学、そして和歌山県立医科大学、和歌山大学システム工学部といった高等研究機関が県内にあるのですから、それこそ医大が音頭をとり、三大学が一緒になって再生医学への取り組みを本格的に始めたらどうでしょうか。まさに日本人の三大死因であるがん、脳卒中、心臓病や糖尿病などの克服のため、早急に考えていくべき課題だと思います。
 さらに、来年九月二十二日から二十三日に、和歌山県において日本臨床内科医学界の教育講演がセットされ、再生医学の講演があると聞いておりますし、和歌山県が再生医学、ゲノム解析に本格的に取り組むことによってバイオ、製薬関連会社の企業誘致にもつながってくると思います。
 去る五月八日火曜日の産経新聞にもありましたが、関西文化学術研究都市など四つのサイエンスパークを中核に、二十以上の研究機関を高速大容量の通信回線で接続する関西バイオ情報ハイウエー構想が大阪商工会議所や大阪府で計画されております。和歌山県も再生医学研究の萌芽が見られ始めているのですから、いつまでも乗りおくれないよう、今後のお取り組みを急いでいただきたいと強く要望いたします。
 これで、第一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(尾崎要二君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 環境リサイクル事業についての質問にお答えをいたします。
 廃棄物処理についての質問でございますが、本県の貴重な自然環境を次世代に残していくためには、資源循環型の社会システムを構築することが不可欠であると考えております。このため、県といたしましても、ISO一四〇〇一の認証を取得したのを初め、有機性廃棄物を資源として土づくり等に活用するための有機性資源リサイクルや建設リサイクル法による建設副産物の有効利用推進、また繊維廃棄物リサイクル等の研究推進など、農林水産部、土木部、商工労働部と環境生活部が連携して全庁的な取り組みを行っております。
 限りある資源を有効に利用すると同時に、新たな環境リサイクル事業がさまざまな分野で芽生えて資源循環型の社会システムができるよう、一層取り組みを進めてまいります。
 次に、心肺蘇生の普及についてのご質問でございます。
 従来から、救急に対する県民の正しい理解と認識を深めるとともに、県医師会を通じて、医師や医療関係者の意識高揚を図るため、「救急の日」及び救急医療週間を設け、救命・応急手当ての普及啓発や心肺蘇生法の実技講習などを市町村、医療機関などの協力を得て実施しているところでございます。
 ご指摘のように、医療機関の医師や医療従事者、消防機関が一体となって県民への普及に努めることは重要なことでございます。国におきましても、平成十二年五月に「病院前救護体制のあり方に関する検討会報告書」が取りまとめられ、「心肺蘇生法の官民挙げての啓発・普及に努める」としております。県といたしましても、引き続き普及啓発の充実に努めるとともに、医師会、病院協会、消防機関等とも連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎要二君) 環境生活部長秋月成夫君。
  〔秋月成夫君、登壇〕
○環境生活部長(秋月成夫君) 廃棄物処理についてのご質問にお答えします。
 まず、エコタウン事業につきましては、平成九年に現在の経済産業省と環境省の連携で制度ができ、全国で十四カ所が承認を受けております。本県におきましても、和歌山市において検討されており、県としても協力してまいりたいと考えております。
 また、県では現在、廃棄物処理計画の策定に取り組んでいるところであり、議員ご提案のガス化溶融炉については、公共関与による施設整備等を検討する中で、処理方法の一つとして検討対象にしてまいりたいと考えてございます。
 なお、処理施設の立地につきましては、周辺地域の方々のご理解をいただくことが前提となりますが、適地については、今後、関係部局と協議してまいりたいと考えております。
 次に、一般廃棄物処理についてのご質問にお答えします。
 一般廃棄物については、基本的には、各市町村が策定する一般廃棄物処理計画に基づき、その市町村内で処理すべきものでありますが、大型店舗の新規出店など、事業活動に伴い多量の廃棄物を排出する場合は事前に事業者と市町村で協議を行い、その中で、市町村の処理能力を超えるときは事業者みずからの責任において処理することとしております。
 なお、県といたしましては、焼却炉の改修など、個別市町村で対応できない特別な事情を生じた場合に備えて、各施設間の相互協力を図るよう、ごみ処理施設管理者で構成する連絡協議会などを通じて指導しているところであります。
 以上です。
○副議長(尾崎要二君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) まず医科大学附属病院の経営について、独立採算をとのご質問でございます。
 医大附属病院は、県民の保健医療の中核施設として、地域の医療機関との連携を図る中で中心的な役割を担う病院であり、また大学附属病院としての本来の機能である医師や看護職員等の育成や医学・医療の研究開発を行う使命を持っております。そのため、他の病院とは異なった性格を有しており、教育や研究開発は医療費では負担できないといった面もございます。しかしながら一般医療については、当然のことながら独立採算という考えを基本にして今後とも取り組んでまいりたいと考えております。このため、病床稼働率の向上を初めとする歳入の確保や病院管理経費の合理化による削減を図るなど、医師、看護職員等、職員が一体となって医科大学附属病院としての重要な役割を果たしながら効率的な病院経営を行ってまいりたいと考えております。
 次に、病院に対する水道料金についてのご質問にお答えいたします。
 上水道の料金につきましては、経営するそれぞれの市町村の条例で定めることとされておりますが、お話にございましたように、公衆浴場については、多くの団体で一般より低額となる料金設定が行われております。また病院についても、一部の団体でございますが、別料金設定が行われているところでございます。
 このような水道料金の決定に当たりましては、地方公営企業の運営はその経営に伴う収入を持って充てるという独立採算を基本として、経営主体である市町村がそれぞれの状況に応じて判断すべきものと考えております。
○副議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白井保世君。
  〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) 五稜病院の経営についてお答えを申し上げます。
 県立五稜病院は、地方公営企業法の適用により独立採算を基本として運営をしておりますが、同時に、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づいて県に設置が義務づけられた精神病院として、県下の精神医療の中核的機能を担う病院でございます。このため、精神医療の充実強化、精神科の夜間、休日を含めた救急医療の基幹病院としての役割を果たしていることから、経費の一部については行政で負担をしてございますが、今後ともより一層効率的な病院の運営に努力をし、経営基盤の強化、健全化に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、ご質問の精神科の医療についてでございます。
 精神障害者の適正な医療を確保するため、休日及び夜間において緊急に精神障害者の措置入院等が必要となった場合に対応できる精神科救急医療施設については、議員お話しのございましたように、現在、県立五稜病院、紀南総合病院新庄別館の二病院を基幹病院として指定し、それぞれの病院に空床確保をお願いして緊急時の対応をしている現状にあります。
 精神科救急医療システムの整備につきましては、医療圏を紀北、紀中、紀南の三ブロックに分けての緊急時の対応を原則としてございますので、紀北ブロックについては県立医科大学も視野に入れて検討をしてまいります。
 また、精神保健指定医の診察に係る報酬につきましては、本年四月から一日につき一万三千円に増額し、対応をお願いしているところであります。
 次に触法精神障害者に対する処遇の問題につきましては、平成十一年の精神保健福祉法の改正においても、「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇の在り方について、幅広い観点から検討を早急に進めること」との附帯決議がされておりまして、これを受けて現在、法務省・厚生労働省合同検討会において検討がなされております。
 法制度等の整備につきましては国の動向を注意深く見守ってまいりますが、県といたしましては、現行法規の中において医療を必要とする精神障害者に適切な医療を提供できるように、精神科救急医療システムの充実、保健所が行う地域精神保健福祉活動や精神保健福祉センターの業務等を充実させ、当事者や家族の方が気軽に精神保健の相談ができるように体制の整備に努めてまいります。
 また、精神保健福祉に対する正しい認識がないと、触法精神障害者による重大な事件が発生するたびに精神障害者全般に対する偏見が助長され、それが精神障害者を萎縮させ、結果として精神疾患の正しい受療や社会参加を妨げることにもなります。このため、さまざまな機会を通じ、精神障害者に対する偏見や差別をなくすための啓発活動を実施してまいります。
 以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 学校週五日制についてお答えいたします。
 完全学校週五日制は、子供たちの望ましい人間形成を図ることを基本的なねらいとして、学校、家庭、地域社会が一体となってそれぞれの教育機能を十分に発揮する中で、豊かな人間性や、みずから学び、みずから考える力などの育成を目指すものであります。こうした教育の目指す方向は新しい学習指導要領のねらいと軌を一にするものであり、基礎・基本の確実な定着の上に立った、より質の高い学力を身につけさせるものであると考えております。また、新しく設けられた総合的な学習の時間などでも、子供がふるさと和歌山の豊かな自然や文化、歴史などに直接触れる中で地域とのかかわりに関心を持ち、主体的に学ぼうとする力の育成に重点を置いた指導を行っております。
 こうしたことを通して培われた「生きる力」は、完全学校週五日制が実施され、学校が休業となる土曜日や日曜日においても家庭や地域での活動や体験に生かされ、さらに深まっていくものと期待しております。
 子供の活動する環境を緊急かつ計画的に整備し、議員ご指摘の家庭教育に対する支援を一層進めるため、国では、ただいま全国子どもプランを策定しております。その中で、本県においては、市町村と連携・協力しながら、親子で参加できる工作教室や陶芸品づくりなどの各種体験活動について情報提供を行うとともに、そのような活動の場の提供にも努めているところです。
 他方、人間としての基礎を培う重要な場である家庭について、最近、その教育力の低下が指摘されております。このため、本県においては、講演会の開催、子育てに関するネットワークづくりなどとともに、二十四時間電話相談やカウンセリングなど、相談体制の整備に努めており、今後とも地域や家庭での教育に対する支援を充実させてまいります。
 次に地域に対して開かれた学校づくりにつきましては、これまでにもさまざまな機会をとらえて学校開放を進めてきております。そうした中での安全管理体制の確立を改めて徹底するとともに、家庭、地域、さらに関係機関との連携を一層緊密にして、平素はもちろんのこと、学校施設を開放している場合でも、児童生徒の安全の確保を図ることが何よりも優先されなければならないと考えておるところでございます。
○副議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十二番長坂隆司君。
○長坂隆司君 ご答弁、いただきました。
 廃棄物については、兵庫県では、本年、広域リサイクル拠点整備協議会というものが産・学・官によって立ち上がり、建設廃棄物リサイクル、食品リサイクル、廃プラスチックリサイクル、廃プラスチックガス化リサイクル、適正処理リサイクル、PCB処理、ELV(使用済み自動車)リサイクル、複合廃棄物リサイクル、OAリサイクルといった九つの研究会をつくり、具体的に事業展開を図ろうとしております。和歌山県でも、企業のリサイクル、リユースに対する意欲は日増しに高まっているはずです。差し迫った廃棄物処理問題に対応していくため、ぜひ産・学・官一体となった当局のお取り組みを要望しておきます。
 次に、再生医学です。
 和歌山県立医科大学では、基礎医学講座が中心となって基礎的に再生というものを研究する必要がありましょう。基礎医学の充実は、臨床医学の発展には欠かせません。また医大では、既にがん治療の一つである細胞治療、消化器がんに対する遺伝子治療でも一定の業績を出していると聞いております。ぜひ再生医学研究について、こうした医大等の和歌山県における現状を十分把握いただいた上、前へ進めていただきたいと、改めて要望いたします。
 私の質問、終わります。
○副議長(尾崎要二君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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