平成12年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(鶴田至弘議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
質疑及び一般質問を続行いたします。
三十五番鶴田至弘君。
〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 お許しをいただきましたので、本日最後の質問になりますが、通告に従い、順次質問をさせていただきます。
知事にあっては、厳しい財政状況にかんがみ、聖域なき見直し、「行政の棚卸し」とも言うべき抜本的な見直しを行うという形で予算編成方針を明らかにされました。それによりますと、昨年比で公共事業に九五%、県単事業に七五%、その他の施策費に八五%のシーリングをかけることになっております。県の財政事情の悪化の原因は、主として国の経済対策に呼応する公共事業の拡大と県単事業の異常な増加にありました。原因がそこにあるとすれば、そこに主要なメスを入れなければなりません。しかし、必ずしもそういうことにはならないで、福祉施策を含む一般施策費にまで公共事業を上回るシーリングをかけるなどというのは甚だ理解に苦しむところであります。
そもそも、自治体の最も根本的な任務は民生の安定であり、住民福祉の増進であります。しかるに、莫大な予算を費やす公共事業と一律にというよりも、それよりも高い比率でシーリングをかけるのは、いま一度考え直すべきではないでしょうか。厳しい財政状況の中で、むだなものを省いていこうという努力は当然行わなければならないと考えます。しかし、財政運営プログラムにもなかった「聖域なき見直し」という言葉のもとに、県民が今まで行政の支援で成り立たせていた暮らしやさまざまな事業が大きな打撃を受けるようなことがあってはなりません。とりわけ経済的弱者、あるいは高齢により、あるいはその他の障害により生活に困難を来している人々に対する援助は行政の基本的な責務であり、決して他の施策同様のシーリングの対象とされるべきものではないと思います。
九月議会でこの問題をただした同僚議員の質問に対して、扶助費については昨年どおりだとの答弁もあり、予算編成方針にも明記されているところでありますが、各種補助金については答えがありませんでした。民生費、衛生費の関係を見るだけでも、生活に関連した実に多くの補助金制度があります。さまざまな福祉医療制度のほか、身体障害者福祉工場運営補助、心身障害者小規模通所授産運営補助、国民健康保険制度対策補助、母子生活支援施設整備補助、精神障害者社会復帰施設運営補助、地域医療推進病院施設整備補助、老人ホーム運営補助等々、三十項目を上回る制度が設けられました。しかし、これらの補助施策は、その精神においては扶助制度と同じものであり、内容においても全く変わるものではありません。これらの諸施策は、今日まで住民と県と市町村が力を合わせてつくり上げてきた貴重な成果であります。同和関係の補助金が民生費に組み入れられている以外は、ほとんどが生活に密着した必要費目であり、身体的、経済的、社会的にハンディを持った方々にとっては命の綱とも言うべき費目でもあります。このような補助金は、まさに聖域として、ふやすことはあっても削減すべきところではないと考えます。国の社会保障政策の後退により、今、高齢者、母子家庭あるいは心身に障害をもつ方々は、経済的に実に厳しい風にさらされています。すべての人々がそうだとは言いませんが、新たな厳しさにさらされている方が確かにふえてきているのも事実であります。
私の手元にこんな訴えが参っております。児童扶養手当の所得制限が切り下げられて所得が千二百円オーバーしたことによって、児童扶養手当が月額にして三万六千三百五十円カットされた、それだけでも大変だと思っていたら、児童扶養手当が受給条件だった就学援助が一万五千円カットされた、同じ理由で医療給付がカット、福祉定期の利息の切り下げ等と、打撃的な収入減となった、どうか、母子で必死に生きている者に政治のせいでこんな苦しみを与えないでください。要約すればそんな内容でございます。
また、ある高齢者の方からこんな訴えもありました。自分は高血圧で倒れた夫と二人暮らしだが、自分も足が不自由で買い物にも満足に行けない、今までヘルパーさんに三回来てもらっていたけれども、介護保険ができてから実費を払うのが困難になったから二回にした、全く困ったことになったが、国が決めたことだから仕方がない、そしてまた今度医療費が上がる、どうなることだろうか、生活保護でも申請しなければならないかもしれない、そんな話でした。
あるいは、障害を持つ親御さんの現在と未来に対する切なる不安をしばしばお聞きすることがあります。共同作業所に通っているが、この作業所も運営が厳しくて、果たしていつまでやっていけるのかと不安を抱く方々も少なくありません。
このような、経済的、社会的困難に見舞われている方々に対する援助は、現在も未来にわたっても厚く施策されなければなりません。聖域なし見直しが単に歳出の抑制という観点から出発するならば、このような厳しい生活を余儀なくされている方々を一層寒風にさらしてしまうことになりかねません。今、予算ができていない段階ですから、木村知事の政策がそうだと言っているのではありません。そのような無慈悲なものにしていただきたくないとの願いから、その見直し策に温かい血を通わせていただきたいと念ずるところであります。一律マイナスシーリングによって、県民に最低限の生活基礎まで崩すようなことが決してあってはなりません。知事の、福祉は後退させないという優しい勇断を求めるものであります。いかがお考えでしょうか。
次に、雑賀崎の埋め立てに関連してお尋ねをいたします。
知事にあっては、雑賀崎の埋め立てに関する今年度の調査予算を凍結されました。不景気の時期、しかも財政状況が極めて悪くなっているときに、あえて埋め立てをしなくてもほかにすることがあるじゃないかというのが理由だとされています。それはそれで了とするところですが、今まで埋め立てが必要だとしてきた当局提出の資料を、今どう評価したらよいのか。私は、今まで当局が提出してきた幾つかの資料に、その信憑性を欠くとして幾度も質問をしてまいりました。主として取扱貨物の見通しが過大ではないか、費用対効果の試算は恣意的な数字ではないかという点でありましたが、答弁は変わることなく、埋め立ての必要性を説くものばかりでありました。
知事が一時的にであれ凍結を表明したことは、これら従来の資料の説によらないということを表明されたものと理解しておりますが、いかがでしょうか。
一方知事は、港湾計画を実行できるときが来たらそれを生かせばいい、逆に環境問題がもっともっと大きな位置を占めてくれば計画がおしまいになることもあると表明いたしております。そこで、環境問題について知事の見解をお聞きしておきたいと思います。
雑賀崎が万葉の昔よりその風光をめでられてきたということについては知事も承知のところでありましょうが、現在の社会にあってもそれは極めて貴重な価値を持った景観であろうと私は思っております。世の中が機械化され、電化され、IT社会などという私どもの想像のつかないような社会が来ようとしているとき、自然はますますその価値を高めてまいります。名勝と言われる地であればあるほど、機械と電化でむしばまれた人間の体と心をいやし、再生する力を発揮するに違いありません。雑賀崎とは、都市周辺にあって、まさにその役割を果たす地であります。
さて、港湾計画を作成するに当たっての景観検討委員会も、若干のニュアンスの相違はあっても、その点についてはいささかの異論もあるところではありませんでした。検討委員会の委員の中からも、景観にとっては何もしないのが一番いい、緊急に必要なものなのか港湾整備の必要性を論議すべきだ、二十世紀型の経済効率第一の計画は問題がある、地域の独自性を主張できるよう単体の機能追求はやめるべきだというような意見が出されておりました。ただ、どうしても埋め立てなければならないものであるとするならばという立場から、民意を反映するということを前提に、委員の皆さんの我慢できる範囲が示されたものだったと思います。だからこそ委員の中からは、景観は主観的なもの、科学的根拠はない、住民の声こそが大切だという声も上がったのでしたが、しかしこの検討委員会は景観をめでる地域住民は含まれておらず、その地域に生きる者の切なる声はこの結論に生かされませんでした。また、委員会の委員長であった吉川教授の発言の中にも、「学問として十分な検討時間がなかった。委員会の結論はお墨つきでない」とあるように、この港湾計画が景観保全を十分満たしていないことを物語っています。さらに、中央港湾審議会に計画の承認を求めて提出された資料、景観の絵図が実態を反映せず恣意的に造形されているということも判明してまいりました。地域の方々が、当局が景観保全に極めて冷淡であるという怒りを抱いたのは当然のことでありました。二十一世紀は環境が今まで以上に大きく問われる時代と言われております。知事自身、この雑賀崎の景観が将来にわたって現状を保たれることが必要だとは思われませんか。所信をお伺いいたします。
埋め立て必要の理由の大きな内容の一つに、今後予定されている公共事業から発生する建設残土の処分地というのがありました。建設残土をなぜわざわざ名勝の地に持ってこなければならないのかという、まことに素朴で当たり前の疑問があるわけですが、それはさておき、公共事業による建設残土は、当局の言うほどの量がその処分の緊急性を持ってあるのかどうかという問題があります。雑賀崎埋め立てが一時的にでも延期されるとするならば、今までの当局の言い分ではたちまちにして大変なことになります。計画は一千九十万トンが投下されることになっていますが、そのうち十四メートルバースをつくるためのしゅんせつによる土砂が百五十万立方メートルです。これは、このバースさえつくらなければ発生しないものですから問題になりません。
大きな公共事業で大量の土砂が出るとされた紀の川大堰はどうか。二百万立方メートルが言われておりましたが、これはすべて紀の川の堤防の建設や改修に再利用されるということです。建設省は、和歌山県がホームページでそんなことを流したらしいが、建設省としては雑賀崎への投棄を初めから考えていないということでした。和歌山市の公共下水道はどうか。これはほとんどが埋め戻しに使われ、雑賀崎に埋め立てるなどは当初から考えられておりません。和歌山県の建設副産物対策連絡協議会は、建設残土発生量を一九九九年度で約六百万キロ立方メートルと推定いたしましたが、実際は二百七十万キロ立方メートルにとどまりました。推定の半分以下の量におさまっています。二〇〇〇年度も同じような傾向をたどり、この発生量予測は既に見直しの作業に入ろうとしているやに聞きます。大幅な下方修正が予測されるところです。もちろん、高速道路の建設などに伴う残土の発生は今後とも続くでしょうが、土砂の処分は海洋投棄という単純な発想は全国的にも克服されてきつつあるところです。さらに、和歌山県の残土再利用率は三二%で近畿でも最低で、全国平均四七%をも大きく下回り、その向上が強く求められているところであります。建設省も、リサイクル一〇〇%を二〇一〇年までに達成することを求めています。ストックヤードの建設などにより一時的なストックを行い、再利用を待つことは必ずしも困難ではない状況になってまいりました。
このように考えてくると、雑賀崎を埋め立ててまで残土処理を迫られてきているとは到底考えられません。知恵と工夫で、雑賀崎の名勝を埋めなくても残土処理の展望は十分にあると考えられますが、いかがお考えでしょうか。
また、港湾需要の問題からも、景観保全の問題からも、残土処理の問題から見ても、現在の雑賀崎の埋立計画を含む港湾計画は適正なものとは考えられないと思います。知事にあっては、経済的事情から時期を見るという一時的凍結の意思のようでありますが、以上のような理由により、現在の問題の多い港湾計画を一たん廃止することを求めたいと思います。いかがでしょうか。
さらに知事は、選挙中、梅問題、橋本の産廃問題、そして雑賀崎問題が大きな懸案であると語っておりました。そして、この一部の方々との問題解決のための話し合いを既にされてきたところです。雑賀崎についても既に一つの裁断をされたわけですが、地元の方々の思いとの間にはまだ大きな乖離があります。地元の皆さんと胸襟を開いて意見交換をすることが求められていると思います。早急に機会を設けられるべきだと思いますが、いかがですか。
次に、関連して要望ですが、金属団地の緑化が一向に進まず、殺風景な風情が雑賀崎の景観を損なっています。努力していると聞きますが、見えてまいりません。格段の努力を求めたいと思いますが、いかがお考えですか。
次に、関西空港についてお尋ねをいたします。
関西空港が深刻な地盤沈下に見舞われ、安全上もこのまま放置できない事態になっているように思われます。当局の皆さんは、現在の事態をどのように掌握されておりますか。
空港島の沈下はもともと当然のことで、それ自体は問題があるわけではありませんが、その速度とどこまで沈むかという予測が現実と大きくかけ離れてきつつあるというところに、このままにしておけない重大な問題があります。しかし政府と空港会社は、それは予測の範囲内だということで現実から目をそらし、事実の公表を怠り、安全のための対策が真剣になされておりません。
問題の一つは、地盤沈下の予測値がしばしば変更されていくということです。最初の沈下予測値は開港五十年後八メートルということでした。そのときの専門委員会の沈下予測は八メートルから十三メートルということでしたが、その最低の八メートルを採用したわけです。しかし、それはたちまちにして崩れ、開港延期決定時には十メートルに変更され、さらに十一・五メートルに変更されました。それで、造成地を含めた事業費が一挙に一・五倍に膨れ上がったわけですが、一応現在までの沈下予測とされていたものです。しかし、現在の沈下が既に五十年後沈下予測の十一・五メートルに達してしまっているので土砂荷重を加えるとして、最近になって五十年後は十二メートルと、またまた変更をいたしました。このように地盤沈下の予測がしばしば変更されており、運輸省や会社当局がおおむね予測どおりと言っておりますが、実際は地盤沈下に予測を合わせているというのが現実であります。実際、予測どおりであれば、ターミナルビルの地下室の床が海面と同じ高さまで沈み、高潮が来ると地下水位が急上昇して水圧と浮力で床が壊れ、空港が維持できないおそれなど生じなかったはずであります。ところが、そういう事態が生まれてまいりました。空港当局は巨大な人工島の特殊性からくるもので予測し得なかったことだとしていますが、学者の中からも、予測以上の沈下が原因だと批判の声が挙がっております。空港当局の発表どおりに見ても、五十年後の沈下予測が十二メートルで、現在実測が十一・五メートルです。五十年後予測と現在との差はわずかに五十センチです。しかも、昨年一年間の沈下が二十二センチですから、あと二、三年でまたまた五十年後の予測をオーバーしてしまいます。予測以上に進むとすれば、新たな安全対策がまた必要となってくるでしょう。
また、空港島は海面から四メートルの高さで安定した島となるよう設計され、最高潮位三・二メートルになっても八十センチの余裕を持って安全性が確保されているということになっています。しかし、既に海面から二・九メートルにまで沈下しているところもあり、最高潮位との関係では随分危険な状況さえ生まれているわけです。既に二百七十億円の改修計画がパートIIの事業としてその費用をもって当たられることになっておりますが、これはごく部分的な対策費であります。これらの数字は一般的には公開されたものですが、それが何を意味しているのかは解析されておりません。また、それ以上の資料は公開されておらず、部外者の研究も阻害されています。国会の議論を見ても、当局は予測範囲の沈下だと言うだけであります。会社も運輸省も、この事態に根本的な対応をしようとしている姿は見えません。安全と環境を最優先した根本的な見直しが必要だと思われます。知事にあっては、空港と県民の安全を保障するため、空港当局を招き、沈下予測数値の変遷の根拠、実測値の経年の数値などの公表、安全のための検討と対策を求められたいと思いますが、いかがでしょうか。
次に、二期事業の問題であります。
私は、この問題について本年の二月議会でも質問したところでありますが、二期事業をめぐる情勢はその後複雑に推移しているようであります。
そこで重ねてお尋ねをするわけですが、ご承知のように、現在の関空の空港需要は依然として低迷をしたままで、十六万回の発着陸の能力を持つ滑走路は、九八年、九九年とも十一万八千回の利用にとどまっています。そのために、その経営内容は極めて深刻で、本年三月の決算によると、負債合計約一兆一千四百億円、借金の利息だけで年四百四十億円、一日に換算して一億二千万円、それに対して営業利益は二百十四億円、一日当たり五千九百万円で、支払い利息の半分しかない。利息の返済もできない。空港建設に充てた長期債務は借りかえるだけで全く減らない。毎年赤字で累積赤字が千五百七十一億円にもなった。経営見通しは完全に破綻してしまいました。これでは、新しい二期工事などはとんでもない話だということになるのが常識であります。
一本の滑走路で需要引きとめに必死になっているというのに、なぜ二本目の滑走路が必要なのかと大蔵省幹部がつぶやいたとの報道がありましたが、殊のほか公共事業の好きな政府の中にも、ようやくにしてではありますが、疑問の声が上がり始めました。新東京国際空港の暫定滑走路が二〇〇二年に、神戸空港と中部国際空港が二〇〇五年に供用開始されます。関空が多大な影響を受けないわけにはまいりません。関空を利用していた外国の数十社が、「二期事業よりも現滑走路を利用しやすくしろ。さもなくば撤退だ」というような声明を出す事態さえ生まれています。これに対して関空当局は強気の経営見通しを発表しましたが、それをまともに信用した筋は余り見かけられず、疑問の声や甘さの指摘の方が多く聞こえてきたのが実際でした。
私のさきの質問で、前知事に二期事業の無謀さをただしたのに対して、「楽観している」という根拠のない答弁をちょうだいして随分失望したものですが、木村知事にあっても、二期事業の中止などとんでもない話だと報道機関に語ったとされています。しかし、累積赤字一兆五千億円という巨額、現滑走路の利用状況の低迷、それに起因する関空会社の経営不振、周辺空港の供用開始、関空の説得力のない経営見通し、大蔵省のちゅうちょ、そして現滑走路の競争力強化という名分での地方負担の示唆等々、二期事業をめぐっては中止または凍結が妥当という環境が整ったというような状況であります。和歌山県が関空に支出している資金は、全体の事業費から見ればコンマ以下のものであります。しかし、県民一人一人の受益と負担の関係から見れば決して少ないものではありません。知事にあっては、この見通しのない関空二期事業を中止されるよう進言されるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
さらに最近では、国際競争力強化のための地方負担が言われ始めています。そもそも国際空港は国の責任で建設され、運営されるのが原則です。ところが、その原則が破られ、和歌山県も相応の負担を余儀なくされてきているわけですが、今度は経営改善のための負担です。新聞報道によると、この地方負担についてのアンケートに答えた府県の知事や自治体幹部の声として、「競争力強化で地域住民はこれ以上便利になるのか」とか、「追加支援はいつまで続くのだろうか」とか、「経営改善の抜本策も議論せずに支援するのでは県民に説明がつかない」とか、「関空に支援すると、他の赤字の第三セクターにも民間企業にも支援せざるを得なくなるのでは」との抵抗感を示しているという報道がありました。自治体首長や幹部の思いとしては実に当然のことと思われるところですが、とりわけそれぞれの自治体にどれだけのメリットがあるのか、経営見通しは本当のところどうなのかということは真剣に研究されなければならないところです。現段階では地方負担そのものが定められたわけではありませんが、地方に問題が提起されるときには当然それぐらいのことは国も空港会社も明らかにし、それをまた県当局も受けて研究するのが当然の責務であります。
いずれにしろ、このような問題は明確に国と会社で解決する問題であって、地方自治体に転嫁すべきものではないと考えます。大阪府は早々と承諾のニュアンスで動き始めているようですが、知事にあっては、このような地方頼みの関空政策はきっぱりとお断りすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
以上で、第一問を終わります。
○副議長(尾崎要二君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 初めに、予算編成方針についてお答えをいたします。
まず、平成十三年度当初予算におけるシーリングについてでございますが、限られた財源をより緊急性、重要性の高い事業に重点配分するため、初めて公共事業についてもこのシーリングの対象としたところでございます。また、ご指摘の福祉関係経費につきましては、制度的な経費が多いことから、その大部分についてシーリングを除外するなど配慮をしているところでございます。
なお、福祉予算にしわ寄せすべきでないとのご質問についてでございますが、「行政の棚卸し」とも言うべき聖域なき事業見直しにつきましては、あらゆる事業について時代のニーズに合ったものにしていくため、事業の必要性や効果等を検討するものでございます。福祉予算につきましても、今後、高齢化の進展等に伴い、ますます増嵩することが予想される中で見直しの対象となるものと考えておりますが、福祉事業の性格やその重要性にかんがみ、画一的な歳出削減を行うのでなく、十分に配慮してまいりたいと考えております。
次に雑賀崎の埋め立てについてでございますが、和歌山下津港の雑賀崎沖の港湾計画につきましては、平成二十年代前半を目標にしたものであり、和歌山県の将来の発展にとって必要なものであると考えております。ただ、事業実施時期につきましては、県内外の経済動向や和歌山下津港の取扱貨物量の動向など社会経済状況を見きわめていく必要があり、環境調査費の執行を見送ることといたしました。当面は、既にある施設を十分活用し、より一層の地域活性化に結びつけてまいりたいと考えております。
次に景観についてでございますが、和歌山県にとって自然景観は大きな財産であり、今後も景観は大切にしていかなければならないと考えております。一方で、外に向かっての経済発展を考えるとき、海の玄関口とも言える和歌山下津港の整備も必要でございます。これらの調和を図っていくことが重要であると考えております。
次に建設残土の問題につきましては、大きな課題ではございますが、雑賀崎沖埋め立てと切り離して考えております。当面は発生土のリサイクルに努めるなどいたしますが、下水道整備、道路整備などの公共事業の建設発生土に対応する処分場が必要であり、鋭意確保に努めているところでございます。
次に雑賀崎沖の港湾計画に関しましては、冒頭に申し上げたとおり、県内外の経済状況や和歌山下津港の取扱貨物量の動向など社会経済状況を見きわめながら、柔軟かつ現実的な判断を考えてまいりたいと考えておりますが、現時点では和歌山県の発展にとって現港湾計画は必要なものと考えております。
次に住民の方との対話の問題でございますが、いろいろな場面を通じて雑賀崎沖の港湾計画に関する県民の方々のご意見をお聞きしております。地元住民の方々との話し合いについては、今後、社会経済状況を見きわめていく中で、その必要性があれば検討してまいりたいと考えております。
次に、関空についてのご質問でございます。
沈下の現状の認識と安全対策についてのご質問でございますが、関空会社から、空港島の沈下は場所によりばらつきがあるものの、おおむね予測の範囲内で推移しており、沈下速度から推測し、今後も予測と大きくずれずに収束するとの報告を受けております。本県といたしましては、引き続き関空会社に対し、適時適切な情報提供を求めてまいります。
なお、安全重視の観点から、旅客ターミナルビル周辺地区及び給油施設地区に止水壁の設置工事が既に進められているところでございます。
次に空港需要と二期事業の必要性についてでございますが、関空会社から仁川空港の開港、成田第二滑走路の供用開始の影響を考慮しても、二〇〇七年には現在の滑走路の処理能力の限界に達する見通しであるとの報告を受けております。
関空は我が国全体の社会資本であり、世界第一級の国際ハブ空港となるものでございます。空港至近に位置する本県としても、飛躍の可能性が非常に高まってまいります。また、地域社会の発展にとっても不可欠なプロジェクトであると認識しており、二期事業は早期に推進する必要があると考えております。
次に、国際競争力と地方負担についてのご質問でございますけれども、関西国際空港が我が国の基幹空港としての機能を十分に発揮するため、着陸料等空港使用料のさらなる引き下げを行い、国際競争力を強化することは重要なことであると認識いたしております。現在、地元自治体負担の対応について、関空会社に出資している十二関係自治体で支援の必要性やその効果等について協議検討しているところでございます。
○副議長(尾崎要二君) 土木部長大山耕二君。
〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 雑賀崎の埋め立ての六点目、金属団地の緑化推進をについてのご質問のうち、港湾部分についてお答えいたします。
雑賀崎地区の港湾緑地につきましては、現在、鋭意その整備を進めているところであります。
以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 企業局長辻 健君。
〔辻 健君、登壇〕
○企業局長(辻 健君) 雑賀崎の埋め立てについてのうち、金属団地の緑化推進についてのご質問にお答えいたします。(「緑化推進という表現あったか」と呼ぶ者あり)
雑賀崎地区都市再開発用地への進出企業につきましては、立地申し込み要領におきまして敷地の二〇%以上を緑化することとし、木の種類につきましても耐塩性のある常緑の高木とするなど、常に緑の環境を維持することに留意するよう求めてございます。
さらに、工場等の建設に係る建築確認申請時におきましても、緑化等について指導を行っているところでございます。
なお、現在のところ、操業中の事業所でおおむね二〇%以上の緑地を整備している事業所は七〇%程度となってございます。
今後とも、未操業の事業者も含めまして緑地の整備を指導してまいります。
以上でございます。
〔「議長、議事進行」と呼ぶ者あり〕
○副議長(尾崎要二君) 四十七番和田正人君。
○和田正人君 ただいま、「緑化推進」という表現を当局答弁の中で言われました。
質問予定表には確かに雑賀崎の関係の中で、鶴田議員の事前通告には「金属団地の緑化推進を」とあります。しかし、発言者の質問事項を聞いておりまして、「鉄鋼団地」という表現と、「緑化推進を進めろ」という表現は、私の耳には入っておりません。
きょうは、議事録を精査してということは申し上げませんが、当局との打ち合わせの中ででき上がったものを、この本会議場で質問の言葉として出てないのに、答弁する必要なし。
以上、申し上げておきます。
○副議長(尾崎要二君) 暫時休憩いたします。(「休憩しないで続行」と呼ぶ者あり)──今の発言を取り消します。
答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
三十五番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 予算要求についてでございますが、予算の中で福祉関係費をカットしないようにという要望をいたしました。以前に職員の皆さん方と話し合ったときにも、一生懸命に努力をしているというお答えをいただいております。それについて、住民の願いもさらに切なるものでありますから、知事は住民の願いにも職員の努力にも十分こたえられるように、ひとつ今後とも頑張っていただきたいと思います。
それから雑賀崎の埋め立て問題でありますが、今のところ現在の計画が生きているものだ、それを大事にしていきたいという内容の発言がございました。それ自体の問題についてはいろいろと議論するところが多いわけですが、きょうは景観の問題に限って再質問をしたいと思います。
雑賀崎の景観の問題の重要性については知事も十分承知しているところだと思いますが、要は経済の発展と景観の調和をどうするのかというところが問題だとおっしゃっておられました。今日まで、環境というのは常に経済の犠牲にされてまいりました。現在もそういうことがしばしば起こっているわけですが、雑賀崎の問題についても、現在の計画であるならば、私は雑賀崎景観が大きく犠牲にされていくものだと考えているわけです。ただ、今の経済情勢が変化して現在の港湾計画を実施しなければならないというような事態は、私は経済的な情勢変化では起こってくるとは考えておりませんから、そういう点では無傷なのかなと思うんですけれども、そういう経済情勢にかかわらず、また何らかの港湾計画が実施されるということにもなりかねません。
そういう問題がある中で、知事自身、今の港湾計画に示されている景観の問題は、あれでバランスがとれたものだと思っておられるのですか、それとも本来ならば原形のまま維持したいと考えられておるのか、そこのところをお考えいただきたいと思います。
それから、景観の問題というのは非常に主観的な問題があるというのも確かでありまして、それだからこそ地元の方々の意見は非常に大切にしなければならんというのが大方の考えるところだと思います。現在の計画と地元の方々との間に大きな考え方の差があるわけですから、そういう点で、知事が率先して住民の皆さん方の意見を聞くというのが大事なことだと思うんです。ところが答弁は、住民との話は「今後、社会経済状況を見きわめていく中で、その必要性があれば検討してまいりたいと考えております」と。住民との話し合いにこんな難しいことが必要なんでしょうか。知事と親しメールと言って、何でも気軽に意見を聞きましょうという知事でしょう。ところが、この問題についてはこういうように開き直ってくるというのは、ちょっとこれは合点できないところなんです。率直に、フランクにいろんな意見を聞いて、そして知事は知事なりの意見を開陳していくというのが本来の姿じゃないですか。開かれた県政だとか、行政は説明責任があるんだということを常日ごろおっしゃっている知事でしょう。そういう点では、この態度は非常にかたくなな、理解に苦しむところです。そこのところをひとつ答えてください。
関空の問題について。
これは、沈下の問題にしろ、経営の見通しの問題にしろ、二期事業の必要性とその展望にしろ、関空会社の言っている言葉どおりなんですね。和歌山県としてそれをどういうふうにとらえているのかというのがよくわからない。沈下の問題なんかも、確かに関空から資料が送られてきています。当局が持っておられます。ところが、先ほど言いましたように、ちょっと見てみれば矛盾だらけなんですよ。現在の十一・五メートルの沈下は、予測が十一・四メートルだから十センチの差で大したことはないんだと言われています。ところが、この十一・四メートルの予測はいつ出てきたのかということです。これは、六月に県当局も知ったというような内容ですよ。だから、いつから予測されておったかもわからない。沈下が始まって、十一・五メートルができてから出てきた、後から出てきた予測数値なんです。おかしな話です。
こういう問題は、県はもっと主体的になって検討しなければならんと思うんです。あの巨大な工事です。それが、五センチ沈むか、十センチ沈むか、それがどんな影響があるんかと言われたら、私ら素人には全くわかりません。わからない部分だけに、それなりの疑問が起こるんですよ。そういうことに対して、関空も国も知事も十分説明できるようにしなければならんと思うんです。それが、本当に安全問題で心配があることなのか、心配をしなくてもいいことなのか、そこのところを明らかにしなければならない。それがないままに、ある日突然二百七十億円の工事をしなければならないということが出てきたって、これは一体どうしたことだということになるんです。それが、予測を超えてまださらに沈下しているんですよ。このままいきますと、五、六年後には七十センチから八十センチの沈下になります。そうすると予想と本当に大きく狂ってくるということになるんで、やはりこういうのを主体的に研究することが必要だと思います。
二期事業の見通しの問題についてもそうですね。これが和歌山県にとってどんなに必要なのか、それが果たして経営的に成り立つのか、県民負担をこれ以上ふやすことがないのか、本当にそれが和歌山県の県益として保障されたものなのかどうかというあたりがもっと十分研究されなければならないと思います。確かに、和歌山県のそばに巨大な空港があるということ自体は決して悪いことではないでしょう。しかし、それは空港の存在だけではなくて、非常に大きな財政的負担ということが片一方についてくるわけですから、その辺を考えなければならないと思いますので、しっかりした考え方を持っていただきたい。
国際競争力の問題についてもそうですね。知事自身がどんな考えで関係市町村の会議に臨んでいるのか、そこのところが私たちにはわかりません。もっと和歌山県の主体性を持って、これ以上の財政負担はできないということをはっきりと申し上げるのが本来の立場ではないかと思うんです。そういう点をどのように考えておられるか、答弁を求めたいと思います。
○副議長(尾崎要二君) この際、申し上げます。
当局の答弁は、要を得て的確に答弁するよう求めておきます。
以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) ご質問にお答えを申し上げます。
雑賀崎の景観、私も先週自転車に乗って見てまいりましたけれども、非常にすぐれた場所であるということは、私も身をもって体験をいたしております。
ただ、先ほども申しましたように、和歌山県の経済発展ということも非常に重要な要素でございます。それから、社会、経済などいろんな状況も見きわめていかなければならない中で、住民の方々の意見とか、私もいろんなものを見たり聞いたりしておりますので、そういうことをトータルに考えた上で先般の判断をしたということでございます。
そしてまた二十一世紀に向かっては、景観という問題が今まで二十世紀に取り上げられていた以上に大きな問題になるという認識は持っておりますので、また経済情勢が変わってきて和歌山下津港をどんどんやっていかなければいかんというときが来たとき、そのときの景観に対する住民の方々のご意見をよく聞きながら、その中でこの港湾計画をさらに進めていくのか、それとも見合わせるのかはその時点で考えていこうということを申し上げておるわけでございまして、現在は私が今表明したとおり進んでいるということでご理解いただきたいと思う次第でございます。これは、住民の方の意見をないがしろにしたり、会ったりするのが面倒だとか、先に延ばしているとか、こういう気持ちでやっているのでは全くありませんので、ご理解をいただきたいと思います。
それから、関空の沈下の問題でございます。
これは、私、大阪にいるときから、いろいろ財政負担の問題がありまして、専門的にもKALD──関西空港用地造成会社とか関空会社の担当者の方から説明を聞いたりいたしました。実際問題として初めてのケースなので、技術者の方にも沈下の問題についてはなかなかわかりにくい事柄があるということは事実のようでございます。ただ、そうは言っても、あれだけ大きな構造物を安全に維持していこうということから、周りに擁壁を入れて水が来ないようにするとか、いろんな工事を鋭意進めておられるところです。
今後の沈下の見通しについては、関空会社が今最高の土木港湾系の学識経験者の方々からこうなっていくだろうという意見を聞いて、いずれ収束すると言っておられるので、私どもとしてこれを信用して対応していくということになっているわけでございます。
それから、もう一点。和歌山県にとって経済的な負担もあるわけだから関空をどういうふうに考えるかというご質問でございますが、私としては、この関西国際空港はどこの県よりも和歌山県にとって有用な、そして和歌山県が二十一世紀に向かって大きな飛躍をするためにはこの関空の整備を切り離しては考えられないと考えておりますので、これは一生懸命進めていかなければいかんだろうと。ただ、これは国際的な空港でございますので、余り何でもかんでも地元の自治体とかそういうものが負担していくというのはおかしいという気持ちがありますので、いろんな経費については国の方で責任を持って対応していただきたい。ただ、国際競争力を強めていく上から、どういうことが地元でできるかということも、全く拒否してしまうということではなく、関係団体と協議をしながらある程度考えていかなければならないのではないかという気持ちを持っておりますし、そういう気持ちで関係団体との協議にも進んで入っていっているということでございますので、ご理解をいただきたいと思います。
以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
〔「議長、四十七番」と呼ぶ〕
○副議長(尾崎要二君) 四十七番和田正人君。
○和田正人君 先ほど議事進行をかけまして、議長の方から暫時休憩という計らいが出されたんですが、我が県にとって大事な雑賀崎問題や関空問題の質問がなされておりましたので、あえて私は休憩していらないということを申し上げましたので、改めて要望いたします。
議長が当局答弁についてお言葉を出されました。まさにそのとおりでありますが、速記録精査の上、私の議事進行にかけた内容をチェックしていただきまして──私の聞く限りでは、この事前に申し込まれた資料の中には雑賀崎の関係で「金属団地の緑化推進を」という項目が挙がっておりますが、鶴田議員は「雑賀崎の鉄鋼団地」という表現をされました。寒々とした状況が雑賀崎地先にある、努力されていると思うが見えてこない、こういうふうな表現だったように私は聞いておりました。
議事録精査をするように、議長から取り計らいをお願いいたします。
○副議長(尾崎要二君) 以上で、鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
次会は十二月十一日再開し、質疑及び一般質問を続行いたします。
本日は、これをもって散会いたします。
午後二時四十三分散会