平成12年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(原 日出夫議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
質疑及び一般質問を続行いたします。
十八番原 日出夫君。
〔原 日出夫君、登壇〕(拍手)
○原 日出夫君 議長の許可をいただきましたので、質問に入っていきたいと思います。
小原議員と同じように、新しい木村知事が誕生しましたので、梅の問題も含め、今までの経過を知事に最大限に理解していただくための発言もあるかと思いますが、ご理解いただきたいと思います。
木村新知事の所信表明を聞き、その後、それを何回となく読んでみますと、新知事の理念、方針に共鳴するところが多くありました。知事選挙のときも、「よそ者」、「輸入者」の言葉に、私はむしろ外から見た人が今の和歌山には必要であることを強調しました。しがらみもなく、和歌山を変革するための施策が思い切ってできると、その手腕に期待しました。本当によかったと、今改めて思う次第であります。
最初の県会冒頭から雑賀崎埋め立て見直し、工科大学の凍結等、県民の中には、何とすることが早い、決断が早いと感じている人が多いのではないかと思います。もちろん、工科大学については地元説明、空港跡地を含める白浜地域の活性化のための施策が今後検討されるでしょうし、時にはそのことによって反発も予想されますけれども、私はその政治姿勢を高く評価したいと思います。
ここで、知事に反発する人、賛同する人の共通の問題指摘を紹介しておきたいと思います。
知事の冒頭記者会見から、議会が始まった関係もあって、かなりの人とお会いもし、電話もかかってきました。その一つは、雑賀崎、工科大学が来たが、今計画中のもの、既に調査に入っているものを含めた公共事業について早い時期に方針を示すべきであるとの意見でした。それから、例えば紀伊丹生川ダムが真に必要なのか、紀淡連絡道路は費用対効果から見てどう判断するのか、フリーゲージトレーン・テクノスーパーライナーの導入は和歌山にとって差し迫った政策課題なのかどうか、その他、市町村が抱えている県主体の公共事業についてこれからどうするのかを県民に早い時期に示してほしいという意見であります。
また、財政が厳しいということがわかっても、そのために何をするのかが具体的に見えないという意見もあります。例えば、公営企業、外郭団体の見直しは、どこをどのようにして見直し、それによってどれだけの効果があるのか、ビッグホエールを初め県の十一施設の赤字運営をどう立て直すのかといった意見に対しては具体策を示し、内に甘いのではないかとの声にきちんと答えていく必要があるのではないかと思います。
さらには、県単独事業の見直しという名のもとに一律シーリングをかけることについての意見であります。市町村の生活環境、産業基盤、環境問題、福祉のための施策等の単独事業費を一律、画一的に減らすことは地域の活性化に水を差すのではないかという疑問や意見、雑賀崎を初め大型プロジェクトを見直した分、本当に地方の生活、福祉、環境に直結した投資へ回すべきだとの意見、知事にはこれらの意見にわかりやすい形で県民に説明する機会やその方針をぜひ示していただきたいことを要望したいと思います。
次に、梅生育不良対策についてであります。梅の生育不良に関し、知事及び農林水産部長に以下の質問をしたいと思います。
ことし六月の梅の収穫時期──私自身も田辺地方で梅取りをしながら、新しい梅の新芽と徒長枝がよく出ているし、葉の色もそこそこよく、一見立ち枯れが少し直ってきたのかなという気分になって気をよくしていたのですが、収穫後八月に入り、田辺、南部、南部川、印南の地区を二回にわたって現地調査する中で、私の思いとは大きく違って、田辺地方は上芳養の石神、小恒地域、平野部いわゆる稲成や三栖地域、南部川は清川の一部を除いて山間部の状況は大変な事態で、しかも晩稲に向けた一部平野地域にまで症状が広がっているのを見て、驚きというか、このままいけば来年は南部郷全域に広がるのではないかと心配になってきました。何はともあれ、原因究明を早期にとの決意を新たにしたところであります。
梅立ち枯れの十二年度発生実態調査が集計されましたが、田辺地方では、ことしの新規発症が一万三千九本、平成三年の調査以来延べ九万五千本に及ぶ被害本数であります。日高郡では、昨年は七万六千本、ことしは八万五千本と、一万本近く上回る被害であります。被害面積も二百五十ヘクタールから二百八十ヘクタールへ、被害地も山間部から平野部へと、全域的にその症状が広がっています。田辺地方は、被害本数が昨年と変わらないわけですが、被害面積は二百七十三ヘクタールから三百十五ヘクタールに広がり、被害地は、今までほとんど発症していなかった地域にも広がりを見せているという特徴があります。
ただ単純に被害本数だけを見ると状況がわかりにくいのですが、被害本数を一本当たりの平均収量から換算すると、田辺・日高地域ではこの十数年間に延べ二十万本近くの被害を受けています。金額に換算すると、約百億円の被害であります。それだけでなく、正常であればしなくてもよい不良樹の伐採や新しい苗木の購入と改植、肥料、客土等、立ち枯れ対策としての新たな育成費を加えるなら、相当な被害金額となってきます。農業経営は大変です。あきらめず、なおかつ挑戦する日本民族、農耕民族の魂は衰えずですが、もう限界に来ているということも事実であります。
そこで、木村新知事には既に紀州の梅、梅産業の重要性について十分事前学習されていることと思いますが、まず梅の立ち枯れ発症とそれに対する、一つ目は原因究明の取り組みがどれだけされてきたのか、二つ目はその中で現時点においてどういう結果が生み出されているのか、三つ目は、梅の立ち枯れの原因究明という共通の命題に対し、県行政と梅生産農家に溝ができて対立の構図として続いているのはどうしてか、何が問題なのか、どうして力を一つにして究明していけないのかということについて、経過を含めて知事にご理解をいただきたいと思います。このことの問題提起については、知事にぜひひとつ聞いていただきたい。
梅の立ち枯れは昭和六十年から秋津川、上芳養から発症し始め、当初は栽培や気象などを含め、余り大きく取り上げることもなかったのですが、一気に広がり始めた中で、私自身も経験があるのですが、谷間が黒ずんでいる、木の葉が黒っぽい、花づくりのハウスが真っ黒になる、車体がすすで手で絵が描ける、それと同時に山桜がどんどん枯れると。そして、これと同時期に御坊火力発電所の稼働が始まったという整合性から見て、私たち梅生産農家が疑問を持ち出したわけであります。
そこで、田辺市とJA紀南は、平成二年から平成五、六年にかけて東京農大、京大、三重大、広島大などに学術研究依頼し、共同研究してきたわけであります。少なくとも現在まで十数年にわたって、栽培管理面から土壌改良、剪定、摘果、摘らい、そして微生物、薬剤、かん水・改植試験、優良台木の検索、土壌かウイルスかを探る研究、微生物等による対策試験、大気関係の試験研究等、幅広い視点で大学、学者、現場の学者である梅生産農家、JA指導員が一丸となって共同研究してきたわけでありますが、その努力の結果、いまだに根本的な原因が何一つ解明されないまま、逆に立ち枯れはその当時の平成七年ごろからさらに広がり、特に日高・田辺地区は万単位で広がってきたわけであります。栽培及び土壌、ウイルスとも、それが主たる要因として考えられないという結果が出されたわけであります。そこで、市町村、JAは、もう限界が来たということで県に助けを求め、積極的に働きかけて、ようやく県も平成三年から実態調査をする中で、実質的には和歌山県うめ対策研究会が平成九年二月二十五日に発足してから始まりました。平成十年十一月十四日にはうめ対策研究会中間報告なるものが出され、その後、平成十二年三月に三年間の研究成果、研究結果が発表されて幕引きされたわけでありますが、時期を同じくして、田辺市には関西電力と紀南農協によって共同研究する梅生育障害対策研究会がつくられたわけであります。
私が原因究明のための経過を述べたのは、この中での問題点、課題を知事にご理解いただきたいからであります。第一は、栽培管理及び土壌面──剪定、ならせ過ぎ、かん水、土の質、除草剤が主たる要因であることを前面に出した当時の県の指導を、実証試験とその理論から、また現場の実態から見ても、それを受け入れる梅生産農家はありませんでした。現実から見てそれが原因であることが何一つ実証されないし、それを正当化したことが、ほとんど結果的には知見の誤りとして実証されてきました。
例を挙げれば、平成八年、県実証園の田辺市稲成の流れ子というところの園地に栽培育成を施し、樹勢を回復したモデル園としました。議会の農林水産委員会も現地踏査をしましたが、当時県は栽培管理面と立ち枯れの関係を強調して、ここが直ってきたんだとの説明を受けたわけであります。ところが、その年、一気に枯れ出し、二年ぐらいで全滅して、その園主は途方に暮れ、今はすべてミカンに改植し直しています。そういう事実関係があります。
昨年の九月議会において、私に対する農林水産部長答弁の中で、南部川市井川、熊瀬川地区の現地実証試験で暖地園芸センターや普及所によって樹勢回復効果が得られたことを反映させたいとありました。その園地の現状は、その後、私は見てきたわけでありますが、既に立ち枯れで、悲惨なものであります。県の言う回復とは裏腹に、半年、一年後に立ち枯れているという事実を私たちは認めなければいけません。田辺の実証園、南部川村高野の実証園も含め、県データの樹勢状況や収集も現状と違ったまとめや報告で、実証園主から訴えられるという騒ぎまで起こしているのが事実であります。
二つ目は、栽培上の問題、つまり剪定、ならせ過ぎ、水、土壌の要因については、梅生産篤農家によって、現場の園と対比してことごとく論破されています。田辺市、JA紀南の指導員も、これが主たる要因でなく、それは農業経営の基礎知識としてしか受けとめていません。それで回復するのであれば現場の学者である農家が早くから原因を解明していることは、だれが見ても明らかであります。そのことは、南部川村広報紙にいみじくも書かれています。「この梅枯れは、標高が高いとか低いとか、日が照るとか照らないとか、水があるとかないとか、土の質がよいとか悪いとか、実のならせていない若木もならせる成木もこれに関係なく、一気に何十本も急激に発症し、立ち枯れる」と書かれております。まさにそのとおりであることを私たちは現場の実例を挙げて説明してきましたが、いまだに県は栽培管理を強調されており、これが今ますます農家に疑念と不信を抱かす結果に至っているわけであります。
二点目は、十年間の栽培、土壌、病理面から研究実証してもそこに要因が見られない中では、他の疑問と思われる分野での研究がなされる必要があります。大気と梅の関係も、この十年間、暴露試験を通じて研究し、ようやく県も腰を上げて、ことしから化石燃料に含まれるニッケルとバナジウムの暴露試験の研究に入りました。しかし、これまでの梅生産農家の疑念は、少なくとも昭和五十九年から稼働した御坊火力発電所と梅枯れ、山桜の枯れが並行して起こったことであり、その因果関係を証明することが大きなテーマであります。
生産農家では、先ほども言いましたが、現地においてビニールシートや車体等がすすで真っ黒になり出したのがこの時期と同じくしているという疑念を、科学的に証明されなくても体験として感じています。幾つかの暴露試験をしても、火電から排煙されるばいじんによって梅に直接的にどういう影響が出るのか、研究実証の必要性が強く望まれています。それは、いわゆる可視被害としてどう起こるのか、見た目で梅の木にどう影響があるか、また可視被害が見られなくても長期的な蓄積による影響があるのかという、いわゆる不可視被害調査も欠かせません。これは、本来県行政として火電操業前と操業後の大気汚染状況と農作物への影響調査ということで継続して調査されなくてはいけないものなのですが、されなかったわけであります。一九八〇年から八七年の大気環境保全対策試験も、その後ぷつっとやみ、御坊火電とその影響調査は、JAと関電との研究会によるトレーサーガス試験といった調査でしかありませんでした。県は、梅を初めとする農作物を守るためにも、生産農家から最も因果関係において疑問視されている御坊火電による影響調査、とりわけ煙突から出されるばいじんの提出を関西電力に求め、その成分分析を初めとする梅への影響、そして可視被害、不可視被害の研究を進めるべきだと思いますが、農林水産部長のご意見をお聞きします。
次に、これらの課題に向けて、知事、梅立ち枯れ原因究明の共通のテーマに団結して信頼し合っていく図式をどうしてもつくらなければいけません。そのために第二点目の課題を克服して、まず一つ目に幅広い研究と柔軟な対応を持つこと、二つ目は、特定の学者、特定の人たちだけでなく、共通のテーマに協力・共同していただく学者、専門家、生産農家を含めた体制を組織することが大切ではないでしょうか。これについても農林水産部長のご見解をお聞きしたい。
次に、知事の梅立ち枯れの現場踏査と梅生産農家との対話についてでありますが、知事の選挙中の公約でもあり、当選後の記者会見を初め今議会の所信表明にもこのことが明確に述べられています。先日の記者会見で既に十月十四日に現地踏査をされるとありましたが、このことはこのこととして私は知事の現地踏査と対話について評価をし、しかし今後の基本姿勢についてだけお尋ねしたいと思います。
和歌山県の七百億円基幹企業である梅産業は今大きな岐路に立っているわけでありますが、梅の立ち枯れは、先ほどの数字からも明らかなように、量的にも面積的にも、また地域的にも非常に拡大していますし、今まで山間部であったところが平野部にまで広がっているという非常な危機感があります。田辺地方を初め、梅が一二〇%とも言われる南部郷では今後大変な状況に陥るのではないかと、私自身歩いて感じました。梅の産地を守る、梅産業を守るという、こんなにも苦しみながら頑張っている梅生産農家の声を聞いてほしい、そして解決への方向のさまざまな考えや意見をぜひ知事に聞いてほしいというのが農家の切なる願いであります。新しい知事に悩みを聞いていただいて、本当に現状を知っていただきたいとの言葉であります。この声は木村新知事に期待する梅の生産農家の本当の声でありますし、こういった立ち枯れで苦しむ梅生産農家との生の対話を期待しています。知事、いかがなものでしょうか。
現地踏査にしても、十四日は国からも来る立場上、通り一遍の視察で終わるかもしれませんが、私は、田辺地方や南部、南部川、印南の立ち枯れ園、実証園、まだ生育不良になっていない園など幅広く踏査され、園主を中心にした説明を聞いて、そして農家の直接の声、意見、考えをぜひ聞いていただける視察をお願いしたい。そういう機会をぜひつくっていただきたいと思います。これこそが開かれた県政、県民との対話の木村県政の政治姿勢と考えます。よろしくお願いしたいと思います。
次に、木村知事の就任所信表明の中で、新生和歌山の創造を目指す上での知事の理念や考え方が示されました。県と市町村とのパートナーシップを一層深める中で県内各市町村それぞれの地域特性を生かすこと、それと同時に、県民が行政に多くを期待するよりも、むしろ県民ができることはみずからやっていただく、県民の県政参加を進める県民自治の発想が今後より一層必要であると述べられました。知事が述べられたように、これからの行政のあり方は、行政が主で民間や県民が従ということでなく、従来の認識や既成の組織形態による公共サービスから行政と県民に役割分担した公共サービスに転換する時代に入っていると考えます。行政が主体でやるべきこと、県民、住民がやるべきこと、またそれを行政が支援・協力すること──行政と県民は支援と共同、対等と協力という関係の位置づけが今求められているとき、木村知事はまさに機を敏にして県民参加の県民自治を基本方針にされたことに対して私は高く評価したいと思います。
知事の言う県民参加の県民自治の考えは、まさにNPO思想であります。県民思想が、行政依存から福祉・環境・地域づくり、町づくり等のテーマに県民みずからが企画・参加・行動するものにして、行政がそれを支援・協力していくという考えや方針に県の職員や民間事業者、県民が到達していくための指導が今求められていると思っております。
全国的に見ても二千百六十五のNPO法人が認証されており、県下では十三法人が認証されています。県民のNPO活動が点から線、さらに面へと広がることが県民自治への前進だと考えます。これらの県民参加の県民自治が確立され、行政がすべての仕事に責任を持って請け負い、行政の役割、住民の役割、そして相互の協力・共同という運動と実践が進めば、行政改革と各分野での民間移行が進むのは必然であります。つまり、地方行政の改革が進むことになるのではないでしょうか。知事の政治理念から見て、いかがなものでしょうか。
そこで、これらの立場に立って具体的に県民の中で実践していく上で、まず現状の県庁中心主義の行政システムの改革が求められています。それは、いみじくも改革県庁が基本にあってこそ進められるものと思います。県民、市町村、また県民に直接責任を負う振興局へ権限委譲をしてこそ、それが具体的に進んでいくのではないかと考えるわけであります。県民参加の県民自治をする上で、各振興局の体質、体制、権限、それと市町村と県民との関係をより具体的な方向に改革することが今求められているのではないか。知事の言う県民参加、そして市町村、県民がともに県の課題に向かって改革するためには広域的な立場にある振興局に権限を負わせ、そこの体制を強めて県庁中心のあり方を思い切り変えない限り、運動として展開していかないと私は考えるわけであります。
時間がございませんので、具体的には、後で答弁を受けて再質問の中で提言していきたいと思います。
次に、紀南地方に総合学科と定時制高校昼間部実現のための一考察について問題提起します。
これについては以前も触れたわけでありますが、総合学科の成果とその評価を見ると、和歌山県は平成六年度に和歌山高校、平成九年度に有田中央高校へそれぞれ総合学科を設置し、教員の努力もあって大きな評価をされています。子供たちが心身の成長や変化の著しい多感な時期にある中等教育のあり方の改善策の一つとして、中学校教育から高等学校教育へは入学者選抜を課することなく六年間の一貫した教育、つまり中高一貫教育を行うことが一番望ましいと考えますが、現状では普通科と専門学科との関係で対応が難しい点を理解しつつ、県教委は古座高校を中高一貫教育に踏み切るなど、それぞれの状況によって画一的でない対策を講じられていることに評価をしたいと思います。
子供たちが中学校段階から高等学校段階へ進むにつれ、ますます多様化する生徒の能力、適性、興味、関心に対応するため、多様な科目の中から生徒の主体的な選択を可能にする総合学科は、少なくとも子供たちにも受け入れられるものと考えます。紀南にも総合学科の設置をという要望が高まっていますし、県教委も積極的な姿勢を示しています。また、定時制高校に昼間部をとの要望に対しては、県教委が実施した青陵高校は評価されています。しかし、県全体では千五百六十五名に達する不登校を抱える親の期待、社会情勢の変化から雇用時間帯の変化に伴う要請もあって、昼間部設置は総合学科とあわせての課題であります。そこで、この二つの課題を実現させる上での私の一考察を提言し、県教委でご検討いただくことをお願いしたいと思います。
いみじくも、田辺市に設置されている高校が一つのエリアに集中しているという特徴があります。田辺高校、南紀高校夜間部、昼間部の衛生看護学科は同一敷地内にございます。そして、田辺商業高校は田辺高校から六百メートルで、徒歩で十分、自転車で三分であります。田辺高校から工業高校までは千メートルありますが、歩いて十二分、自転車で四分。商業高校から工業高校までが一番遠くて千八百メートルで、歩いて二十分、自転車で八分という、パターンとしては千葉県などのマンモス高校の学園と余り大差がなく、これら四つの高校を一つの学園としての今後の将来構想として考えていく必要があるのではないかと思います。私としては発想の一考察でありますが、この四校を田辺高校という一つの学園にする、そこから各学科として分散し、編入可能な総合学科として位置づけられないかという将来構想であります。現実には非常に難しいことでありますが、田高、南紀高校夜間部・衛生看護学科、田商を当面一つのグループとして最も適切な対応をすることによって、二つの課題、いわゆる総合学科と昼間部をこの中にうまく効率的運用できるのではないかということで問題提起したいわけでありますが、教育長のお考えをお聞きします。
以上で、第一回の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの原日出夫君の質問に対する当局の答弁を求めます。
知事木村良樹君。
〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) 梅生育不良対策についてでございます。
ただいま状況についての詳しいご説明をいただき、どうもありがとうございました。改めて問題の深刻さをかみしめているところでございます。
この梅産業が和歌山県の地域経済を支える重要な産業であるとの認識には、非常に深いものを持っております。この生育不良につきましては、依然として、ただいまのお話にもありましたように発生しており、厳しい状況にあることは承知いたしております。また、簡単にはいかないと思いますが、農家の方々の不安な気持ちを解消できるよう積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
こうしたことから、一日も早く産地に出向きたいという思いで、来る十月十四日に現地調査を行うことといたしております。私といたしましても、議員のお話にもありましたように、この今回の調査をすればそれでいいというものではなくて、今後ともできるだけ機会をとらえて現地でより多くの農家の皆さん方とお話し合いをするとともに、地域のいろいろな事情も把握して、非常に難しいことではございますけれども、問題の早期解決に力いっぱい尽くしてまいりたいと考えております。
それから、振興局の組織強化と責任体制の明確化ということでございます。
所信表明の中でも申し上げましたように、地方分権の時代を迎え、県内それぞれの地域の多様性や特性を認めてそれを伸ばしていくためには、県民の県政参加を進める県民自治の発想が必要であると考えております。振興局は、各地域における課題に自主的かつ自己の責任において総合的に対応するとともに、地域の特性に応じた行政を迅速に行うために設置しているものであり、このため、本庁にある権限の振興局への委譲を推進しているところでございます。
今後とも、この振興局設置の趣旨が生かされるよう鋭意検討を進めてまいる所存でございます。
○議長(阪部菊雄君) 農林水産部長島本隆生君。
〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 梅生育不良についてのこれまでの取り組みの成果と問題点、及び今後の取り組みについてのご質問にお答えをいたします。
梅の生育不良についてでございますが、これまで、県農業の最重要課題として関係者の総力を挙げて取り組んできてございます。
原因究明と対策の取り組みについてでありますが、試験研究機関を中心に、大気環境、栽培、土壌、病理面など多方面からの原因究明と、現地実証園の設置や改植、土づくり事業の創設など産地支援対策を講じてきたところでございます。
これまでの試験研究において得られた成績や現地実証試験の結果につきましては、普及指導の現地対策に生かすとともに、県うめ対策研究会においてさまざまな要因が複合的に絡み合ったものとして最終報告で取りまとめられてございます。
また、産地の支援対策としては、百十七ヘクタールの改植更新や四百二十二ヘクタールの土づくりを実施するとともに、生産農家の経営安定を図るうめ対策緊急特別利子補給事業によって二百五十五件、約四億八千万円の融資を行ってございます。
一方、大気環境調査といたしましては、専門家の指導・助言を得る中で、平成十年度より二年間のガス暴露実証試験を行った結果、生育不良の症状は認められてございません。
こうした中、議員お話しの御坊火力発電所のばいじんの直接暴露試験につきましては、県うめ対策研究会の専門家の意見として、ばい煙は大気拡散中に化学変化を生じることや、またばいじんは葉の気孔からは吸収されず、根からの吸収はされたとしても、土壌母材はもとより、肥料、農薬や潮風など由来を特定できないことなどから、科学的な調査ではないとされてございます。また、JA紀南と関西電力で組織する梅生育障害対策研究会の報告の中で、煙道中のばいじんと梅産地の降下ばいじんの成分構成比が異なることやトレーサーガスによる排煙拡散調査の結果などから、両研究会とも御坊火力発電所の排煙と生育不良の関連性は見られないとの報告が示されてございます。
このようなことから、御坊火力発電所のばいじんの提供を受けて直接暴露を行うことは現実的な対応ではないと考えてございますが、昨日、高田議員にお答えしましたとおり、成分分析のためのばいじんの提供については事業者に伝えてまいりたいと考えてございます。
一方、農家の強い要望もあり、大気環境調査の一環として、平成十二年度には化石燃料の指標物質であるバナジウム、ニッケルを用いた暴露実証試験を行ってございます。
今後の取り組みの方向でございますが、現在の生育不良の発生状況は依然として新規の発生が見られ、また本年から新たに実施した県下全域での調査では地域的な広がりもあり、厳しいものと受けとめてございます。
県としましては、県うめ対策研究会から示されている残された課題の解決のため、DNA鑑定等の先端技術の活用も視野に入れ、生理・生態特性の解明、土壌管理技術の開発などを初め、大気環境にかかわる調査等、日本を代表する専門家や国の指導・協力を得て総合的に実施することとしてございます。
また、改植更新や樹勢維持対策を行ううめ総合実証園を拠点として幅広く生産者や関係者と交流する場づくりを行い、組織再編の動きのあるうめ対策協議会との連携を図りながら、この問題の早期解決に努めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(阪部菊雄君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 高校教育についてお答えいたします。
原議員からご紹介ありましたように、本県ではこれまで和歌山高校と有田中央高校に総合学科を設置し、それぞれ大きな成果を上げてきております。また、定時制昼間部を設置している紀の川高校、青陵高校においても、さまざまな動機や学習歴を持った生徒を受け入れ、個に応じた指導を行い、評価されてきております。
現在、田辺市内の県立高校には、普通科を初め工業、商業、家庭、衛生看護等に関する専門学科、及び夜間の定時制課程を設置しております。また、隣接の熊野高校の農業に関する学科を含めると専門学科のほとんどが通学可能な範囲に設置されており、生徒の興味、関心、進路等によって幅広く学科選択が可能な地域であると言えるかと思います。
こうした地域の特性を生かし、田辺市内の四高校と熊野高校の五校間で、生徒のニーズに応じてほかの高校でも学習することができるよう学校間連携を実施し、開かれた学校づくりを推進しているところでございます。
今後、紀南地方での総合学科や定時制昼間部の設置について、議員ご提言の趣旨も含め、多面的に研究・検討してまいりたいと考えております。
○議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
十八番原 日出夫君。
○原 日出夫君 質問というよりも提言というか、当局の農林水産部長の答弁を聞きながら、今までのこととこれからやるということの中で矛盾が起こっていることについて指摘だけしておきたいと思います。
一つは、私が再三述べてきたように、うめ研究会の学者の意見として、いわゆる暴露試験等を含むばいじんの研究が、大気拡散中に化学変化を起こす、そしてばいじんそのものが根からの吸収はされたとしても葉の気孔から吸収されない、したがって科学的な調査ではないとされていると、こう言っているわけです。そう言いながら今後の課題としては、「大気環境にかかわる調査等、日本を代表する専門家や国の指導・協力を得て総合的に実施することとしてございます」というふうに言っているわけです。最初に、調査しても科学的でないからもういいんだと言っておきながら、しかし今回は、今後いろんな日本を代表する専門家や国の指導・協力を得てやっていきたいということで、矛盾を感じるわけであります。
私たちが今求めているのは、御坊火力発電所から排煙されるばいじんに対して、どうして積極的に県の主体で調査研究する姿勢が示されないのかということの疑問であります。知事、これが一番の溝をつくっているわけです。全く実証試験もしないで、いわゆる県の研究会の学者の言い分をそのまま写して私たちに説明をしている。しかも、県の採用した学者の資料は、実際に実証試験をしたり、みずから畑へ行って長期間研究したのではなくて、関西電力が中心になった研究会の資料に基づいて客観的に判断した、評論家的立場での学者の見解でしかなかったわけであります。私たちは、このことに対する疑問を感じているわけです。学者であるなら、もっと現場を実証して、そして科学的解明にしても、実施をした結果それは無理ですよということでなければならない。それなら我々は納得するわけですが、ばいじんそのものは見せない、提出しない、やらない。
知事、十数年、栽培面から始まって大気もすべて必死になってやりました。相当なお金を県もかけ、市町村もJAもかけて、それでなおかつ全国の有名な学者の研究においても、結論的には栽培管理面ではないことがもう究明されているわけであります。先ほど言いましたが、総合的、複合的な要因に絡んであるとしても、今、主たる要因となるべき原因は何かということに我々は集中して取り組んでいかなければなりません。土に肥料をやれ、剪定の仕方をどうせえ、水はどうやということは、もう県の人に言われなくても農家はわかり切っているんです。当たり前のことなんです。我々は、そのことをあえて繰り返し繰り返し言われることが非常につらいわけです。
そのことよりも、十数年調査してきた中で、今、何を原因解明のための命題として設定するかということであります。残されたばいじんをどうして調査しないのか、それを求めることを強く関西電力に望み、それで県が独自に調査をしていく姿勢になぜ立てないんだろうかと私は思うわけであります。ばいじんを提供することを恐れているのか。何に恐れているんだろうか。
関西電力は堂々と提供したらいいんです。はっきり、トレーサーガスによってその影響がないというふうに判断したんですから。関西電力の研究機関は裁定を下しているわけです。ならば、ばいじん、排煙による影響がなければ、堂々とシロという証明を我々に示していただきたい。そして、それに基づいて県が独自の調査機関で調査していくという姿勢なしに、我々梅生産農家は信頼できますか。そのことを私は強くずっと言い続けているわけです。そのようにならない限り、梅生産農家と県が、先ほども述べましたが、本当に一緒になって力を合わせて同じ共通のテーマに基づいて研究していこうという姿勢に立てない。私は、それが情けないわけであります。一緒にやりたい。そのことを強く企業に求めるべきでありますし、企業も自信を持って我々に提供したらいいんじゃないですか。
トレーサーガスにおいて問題がないと自信を持って指摘しているのですから、我々は改めて行政と農家における実証をして、なるほどシロだ、問題なかったなと、こういう研究をすることに何の疑問や抵抗があるんでしょうか。私にはひとつもわからない。そのことについて、農林水産部とりわけ知事にご理解をいただいてしていかないと今までの住民訴訟──知事も大阪でおってよくわかっていると思うんですが、四日市や水俣や、いろんな公害闘争がありました。それらが長期の闘いをしてきたのは、資料の公開をしなかった、隠しておく、違ったデータを示すとかという、住民が行政に不信感が募ったからだろうと思うんです。
梅問題は、何ら対立関係が一切ない。行政も梅生産農家もみんな同じ共通のテーマで──例えば労働組合の権利闘争とかでは労使の闘いというのがありますけれども、我々には行政と梅生産農家が対立する何の要因もないんですよ。そのことを私は強く訴えたいわけであります。今後とも知事には十分理解を深めていただきたい。現地の梅生産農家は、その実情を知っていただくことの中で一緒にやりたいんです。一日も早く解明したい。そういう意味で、県のスタイルが幅広く、そして一つの枠の中で物を見るのではなくて一生懸命一緒になってやる姿勢を示していただくならみんなと汗をかけると思っておりますので、このことについて要望しておきたいと思います。
もう一つは、先ほどの振興局の強化ということです。私、実はこういう立場でないときに熊博で二年ばかり田辺の事務局でボランティア活動をやらせてもらったのですが、その中で感じたことは、いみじくも知事が所信表明の中で述べられた県民参加、県民自治──今まですべて県が請け負い、人も金も組織も丸抱えしてイベントや運動がされてきた要素があった、しかし県民もやるべきことはやるということで、熊博のときにも、県の室の人にいろいろと問題提起をしてきました。こういう体制だと県におんぶにだっこで、熊博が終わったらそれで終わりになりますよと。だから県は、この期間中に住民と民間事業者が一緒になって、このイベントの中でみずからが独立し、商業ベースで地域活性化につなげていく体制をつくる過渡的なアドバイザーでなければならないと。県は将来的にはあくまでもコーディネーターとしての役割であって、人も金も出して事業をして、一年間やって人たくさん集まったよ、成功したよと、こういうことではいけない。そして、それが継続していくために、市町村とそこの市民、住民が本当にその課題に取り組んでいける体制や組織にぜひしてほしいと。市町村も住民も、それを期待していますよ。県におんぶにだっこだと思っていませんよ。余りにも県が極端に抱え込んで、すべて自分たちでやろうとする政治姿勢を、私は二年半の間に経験しました。これではあかんと。だから、知事が言う改革県庁というのは、県庁中心主義のやり方をぜひ改めて、思い切り市町村や住民に頼ったらいい。今そういう体制ができていると私は思います。
例えば、今度、南紀熊野二十一協議会がつくられたり、それからこの十五日には環境生活部で三大県民運動が行われますが、これなども、県が絵をかいてイベントでタレントを呼んでやるということではなくて、環境問題や花いっぱい運動など、三つの運動にかかわったいろんな市民団体や市町村がみずからその経験を持ち寄ってそのイベントを成功させていくというのが本来のあり方ですが、そういうふうになっていません。すべて県が企画して、県がイベントして、タレントを呼んで人を集めて終わりと。今後こういう形態を改めない限り、知事の言う改革県庁、そして県民参加という形になっていかないのじゃないか。そのために、その中心になっている、広域圏の責任を負う振興局にその体制を敷いてくれなかったら、なかなかいきません。振興局はもう自分の日常の業務でいっぱいで、市町村と連携する、住民とともになってやっていくという体制にありません。皆さん忙しいから、私もよう言いません。
だから、そういう意味で、振興局が広域圏の責任を負う、そしてそこの市町村に荷をかけていく、荷をかけられた市町村は住民に荷をかけていくと、そこに一体となった運動が展開されていくと私は考えていますので、ひとつその点も十分調査なりしていただいて、今後とも知事の言う改革県庁、県民自治の確立が、まさに県民一人一人の参加によってできていく、少なくともやっている人と金の削減につながっていくということを──内部で事務を簡素化せよということも大事ですけれども、県民運動の中で、県民参加の中で行政の果たす役割をできるだけ減らしていく、それを住民に返していくと、このことが本来の行財政改革につながっていくのではないかと思っておりますので、問題提起をして私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で原日出夫君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時四十四分休憩
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