平成12年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(町田 亘議員の質疑及び一般質問)
県議会の活動
午前十時四分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
【日程第一 議案第百二十号から議案第百三十三号まで、並びに報第三号から報第七号まで】
【日程第二 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、議案第百二十号から議案第百三十三号まで、並びに知事専決処分報告報第三号から報第七号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
二十四番町田 亘君。
〔町田 亘君、登壇〕(拍手)
○町田 亘君 おはようございます。
質問に入る前に、不登校の子供と三年余り、現在も頑張っている父親からのメッセージを聞いてやっていただきたいと思います。
私は、PTA役員を長年していて、まさか自分の子供が不登校になるとは夢にも思いませんでした。
幼いころからスポーツ好きで、勉強もそこそこでき、小学校時代には少年野球で四年生よりレギュラーになり、中学校に入ってからはサッカー選手としてキャプテンを務めるほど仲間から信頼され、また指導者には忠実で、かわいがられていました。
高校入試発表の翌日よりサッカー部の練習に行き始めました。少しでも早く高校のサッカー部へ溶け込みたい、レギュラーになりたいと思う気持ちがあったのだと思います。
高校入学後、二カ月ほどたった五月ごろから、腹痛や足痛を訴えるようになってきました。朝食もまばらになり、人との会話も避けるようになり、自分の部屋に雨戸を閉め閉じこもるようになってきました。学校も午後よりの早退が多くなり、一週間に一、二度、休むようになってきました。
クラブでの出来事が息子を苦しめているんだと思ったのは、そのころでした。学校へ行きたいけれども行けない。
六月に入ってからは、学校への拒否反応が一段と激しくなり、一日じゅう腹痛を訴えるようになりました。幾つかの病院へも行き、診察、検査等をしてもらいましたが、原因等はわかりませんでした。妹との口げんかも多くなって、たまには暴力を振るうようになりました。
学校側は、息子のためにサポート委員会を発足してくれました。しかし、その後も休みの繰り返しでした。自殺をほのめかしたこともありました。親戚の子に、どのようにしたら苦しむことなく死ねると聞いたそうです。私は、ぞっとしました。毎晩のように、息子の様子を確かめに部屋をのぞきに行きました。そして、夫婦での外出もできる限り避け、留守にしないようにしました。
そして、息子に、人生は長いんや、今の平均寿命は八十年もあるんや、一年、二年おくれてもすぐに取り戻せる、焦るな、お前の苦しみは将来何らかの役に立つと思う、ゆっくりいこうなと、何度も何度も繰り返し話してやりました。
息子はその後、少しずつではありますが、笑顔を見せるようにもなりました。私のみえとプライドが息子を不登校へと追いやっていたようにも思います。
サポート委員会の応援もあって、息子も三年間頑張ったのですが、初年度のときの出席日数が不足で進級が一年おくれました。その学校での卒業をあきらめ、単位制の大阪の私学へ転入学し、不足単位を修得するために今も頑張って大阪へ通学しています。
私は、子供から学んだことがたくさんあります。今、毎日のように少年の犯罪が報道されています。私も人ごとのようには思えません。子を持つ親として、心配は絶えません。
なぜこのようになったのか。家庭、学校、地域が環境の変化に惑わされ、本来の人間として生きていく力をきちんと教えていないからではないだろうか。
高校の中途退学者も年々増加傾向にあり、一年間で一つ高校がなくなるほど和歌山もあるそうです。中途退学者のための受け皿をきちんと考えなければ、非行の道へと行きかねません。
私は、同じ悩みを持ち苦しんでいる人たちを多く見てきました。お互いに胸の内を語り合い、支え合い、学び合って、子供の回復のために頑張っていきたいと思います。行政にとっても、子供たちがいち早く社会に復帰できる対策、また施設の整備をお願いいたします。
今後も、親子必死になって頑張っていきます。
──こういうメッセージでございます。
本論に入ります。
私は、平成九年九月議会で引きこもりについて少し述べましたが、当時まだ「引きこもり」という言葉さえ余り使われておりませんでした。当局への答弁は求めませんでした。今でも定かな定義もないようですが、我々が携わる行政は、家に引きこもる少年たちにどれだけのことをしてあげているでしょうか。「引きこもり」とは、人間関係がうまくいかないために学校や職場から身を引くことで生活している人を言うそうであります。
人が生きていく上で大切なことは、学歴や財産ではありません。孤立しない人間関係のわざを獲得しているかどうかであります。人とつき合う手だてを失い孤立した若者に、怠け者、甘えん坊というような簡単な言葉でもって見向きも余りしてこなかったのではないだろうか。戦後の日本は、社会に煩わしい人間関係は切り捨てていこうという意識がないだろうか。
このような子供たちが共通して訴えることは、人間関係がつらい、わからない、信じられないということだそうです。先般のバスジャック事件を起こした少年は、その育ちの未熟さを、インターネットの世界に没入し、「僕はヒッキー(引きこもり)で現在昼夜逆転」とホームページの掲示板に書き込んで、だれかが声をかけてくれるのを待っていたのでしょう。そして遂に「ヒヒヒ」と書き込み、犯行をほのめかし、派手なことをして社会にアピールする思いを募らせていったそうであります。
同じ時期に主婦を殺害した愛知県の少年は、いい子の仮面をかぶり続け、人間がどういう生き物かよく知りたいという思いを募らせ、殺人にまで走らせたのでしょうか。
成績優秀な少年二人の共通点は、心が病んで感情を抑止できないまま成人を迎えようとしていたことであります。
引きこもる少年は、人が怖いと言うそうです。友達からの電話にも出ない。心配してくれる友達に伝える近況がない。「今どうしている」という一言が怖かった。教育カウンセラーの富岡先生の本の中に、相談に来た青年が次のようなことを言ったそうです。「僕はこんな中で育ちたかった。家族だけではなく、隣のおじさん、おばさんたちからいたずらしたらしかられて、僕が泣いたら「どうしたんだ」と声をかけられ、病気になったら「熱はないか」と心配してくれ、元気になったら「よかったね」と我がことのように喜んでくれ、よいことをしたときはご褒美と言って抱き締めてくれる、そういうところで育ってみたかった」。
この本を読んで、あの有名な「男はつらいよ」の映画を思い出します。とらやのおいちゃん、おばちゃん、それに隣のタコ社長、そして寅さんの行く先々での出会いであります。近所、社会全体で生きています。
文部省の学校基本調査によれば、大幅な児童生徒の減少にもかかわらず、不登校の子供たちはここ数年で全国で十万人を超え、今もふえ続けていて歯どめがかからない状態にあるそうであります。また、高校中退も十万人を超え、単位制高校の新設あるいは進級、卒業等、弾力的運用を試みていますが、中退が減ったという話は聞こえてきません。
小学校での不登校は中学校でも繰り返され、高校に進学、しかし、長期欠席から中退していく割合が極めて高いと聞いています。高校を中退した子供たちの引きこもりは見えなくなってくるのであります。親はせめて高校ぐらいはと、通信・単位制高校、フリースクール、カウンセリングルーム、アルバイト。そこで、学校の先生たちは子供から逃げられますが、親は子供から逃げることができないのであります。その後は、やみに包まれているのであります。
そこで、教育長並びに関係部長にお尋ねいたします。
県内の中・高校で不登校の生徒の数はどれぐらいあるのか、地域的には関係ないのか、高校を中退した生徒はどれぐらいいるのか、その理由や状況の分析と把握はできているのか、そうしたことにどのように対応しているのか。
私の知る限りでも、仕事にも行かず家にいる少年が大勢いますが、引きこもりの少年たちはどれぐらいあるのか、どのような対応をしているのか。
新聞、テレビで見る少年たちの事件の報道を見ても、家庭内暴力、精神的不安定な子供を抱える家族は、心配の余り児童相談所、病院、警察に相談に行っております。警察に行くと「もし暴力を振るったら連絡してください。病院に行ってみたらどうですか」。病院に行くと、「本人が入院しないと言っているので、入院はできません。少し通院してみてください」。親は相談するすべもなく、毎日おろおろしている家庭が多いのです。苦しさのあげく、我が子を殺害する例もたくさんあります。毎日のように少年の事件が起こっていますが、いつ身近で起こるかもしれません。その対応は、心のケアはどこへ行けばいいのか。県行政に、また警察にこの種の相談はあるのか、その件数、対応はどのようにしているのか、県警本部長、関係部長の所見を伺いたいと思います。
この二十世紀は、世界じゅうに誇るすばらしい経済的な発展をなし遂げてきました。しかし、経済効率を優先する余り、心を忘れ去っていたのではないだろうか。物の豊かさよりも心の豊かさ、今、私たちは二十一世紀の幕開けを間近に控えております。次の時代に何を求められるのか。二十一世紀に求められるものは、経済的豊かさと相まって精神的な豊かさを味わうことができる人間性にあふれた生活の実現であります。すさんだ心のはびこる現代社会にあって、改めて人間の尊厳、存在価値、基本的人権の尊重という基本を再確認すべきであると思います。
若者も高齢者も健常者も、ハンディキャップを持った人も、男性も女性も、ともにすばらしい人生が送れるよう心の行政を進めていこうではありませんか。
次に、地域活性化についてお尋ねします。
黒潮が岸辺を洗うすさみ町は、紀伊半島の紀伊山地を背に雄大な太平洋に面し、海岸線は豪壮なリアス式海岸であり、熊野枯木灘海岸自然公園に指定され、人口は五千九百人余り、面積は百七十四平方キロ、県下五十市町村の中で十番目に広く、九三%が山林で占められ、農林漁業の町であります。気候は温暖多雨で、戦前からレタスの栽培が行われ、今日では質量ともに関西随一と言われています。また、海岸の丘を中心にストックやカスミソウの栽培、また黒潮本流に近い地の利により、明治以来ケンケン船の全国屈指の基地としてカツオの一本釣りでも有名であります。海岸線一帯は関西一のいそ釣り場としても有名であり、加えて国指定天然記念物の江須崎、稲積島の原生林等を中心に自然美豊かな観光地として脚光を浴びてきました。
しかし、町長初め議会、町民の皆さんの必死の努力にかかわらず、残念ながら他の市町村に比べて過疎化が進んでいます。昭和三十年ごろは小中学校生は二千五百人もありました。現在では四百六十一人と、五分の一であります。昭和三十年代後半から若者たちは職を求めて都会に出ていったために、過疎と高齢化が進み、町の活力が低速し始めました。人口も一万一千人余りから五千九百人、約半分になってしまいました。
また、すさみ町は、地理的に観光地の白浜、勝浦の中間にあって通過地となってしまうために、地域の資源を生かし、観光客の足を引きとめるしかありません。
そこで、地域おこし活動等は本来行政主導が多い中、町の商工会青年部や地元で働く職人さん、自営業、会社員等、さまざまな専門分野での若い知識を出し合って検討に検討を加えてまいりました。
そんな中、上富田町、白浜町を経て昭和四十二年に誘致された県の畜産試験場で、前々町長が山で捕らえたイノシシを持ち込み、公的機関として初めてイノブタの飼育研究に成功しました。かわいい動物であることから、昭和五十六年五月四日、すさみ町の海水浴場の砂場で生後三カ月のイノブタを「第一回イノブタダービー」「なんでも朝市」としてやったところ、大盛況でした。イノブタ六頭で二万人余りの人を集めるようになり、ことしで二十回目を迎えることができました。
当日にはダービーの予想新聞も発売され、ダービーの競技方法は、一周七十メートルの特設競豚場にて、明け三歳馬ならぬ三カ月目のイノブタ君を出走豚に仕立てての珍レースであり、六頭のイノブタ君たちは、障害物を乗り越えて一目散にゴールを目指すもの、とまるもの、戻ってくるもの、大爆笑であります。また、出走するイノブタには、おのおの名前がつけられます。ことしはマツザカ、ウエハラ、ヒカル、アンナ、シンキロウ、シンタロウ。レースは競馬と同じで、連勝複式です。なお、投票権は朝市で買い物するか民宿に泊まればもらえ、当たるとすさみの特産品が用意されています。
昭和六十一年にイノブータン王国を建国したことによって、さまざまな事業へと発展していったのであります。その結果、外国のブータン王国よりクレームがついたほどであります。定例行事として五月、イノブータン王国建国祭、八月、王国夏祭り、十月、王国運動会、十一月、王国通常国会。地域への密着の仕方にも、王国国会では首長に町長、カツオ捕鯨長官は漁業組合長、レタス輸出庁長官は農協組合長、王国迎賓館はいこいの村わかやま、各商店は王国御用達店、JR周参見駅はイノブータン駅等、各種団体、町民が一丸となって地域の活性化を図ろうとするなど、大変ユニークなものがあり、また遊び心を生かした町づくりであります。
日本初の童謡公園の建設、パロディー国家の建国、王国グルメピック、ひらがな市町村サミット、また道の駅「イノブータンランド・すさみ」は、国道四十二号にイノブータン城としてドライバーにも好評であります。県からも毎年イノブタダービーの補助金をいただき、平成六年には国土庁から全国地域づくり推進協議会会長賞を受賞しました。
すさみ町では、県からのご指導でイノブタはこれまでイベントや町おこしのシンボル的存在として成功しているものの、畜産業としての振興が見られていません。豚に比べて飼育期間が長く、神経質であるために飼育が難しく、一般農家には普及しなかったものであります。
長々と述べてまいりましたが、すさみ町にとってイノブタは町とは切っても切れないものであることがおわかりいただけたと思います。イノブタは、すさみ町の守り神と言えます。今日まで、県当局におかれましては、いろんな事情があるにもかかわらず大所高所に立ってご協力、ご指導いただいてまいりましたこと、まず心からお礼を申し上げます。
町では、数年前より畜産としてイノブタの飼育に取り組んでまいりましたが、臭い、排便、鳴き声等、総論賛成、各論反対、世の中の習いのごとく近隣の同意を得ることができず、暗礁に乗り上げてしまいました。他の場所をも説得したのでありますが、現時点ではお手上げであります。近隣の町村でもと考えたこともありましたが、町の名物を他町村でというわけにはまいりません。畜産活性化検討委員会の提言の中にも、地域の特産品としてだけではなくて、広い視野での活用を図ると提言され、また畜産試験場を地元活性化に活用する方策、分担等についての協議の場を形成するとあります。私は、このイノブタの飼育や料理等も研究し、すさみ町の特産品として大々的に発展させていくべきだと思います。
そこで、農林水産部長にお尋ねいたします。
長い年月をかけた研究の結果、地元すさみ町で生かされたからこそ成果があったと思うのであります。畜産試験場は研究機関であることはよく承知しています。イノブタが地域の活性化に果たしている役割についてどのように認識しているのか。町に活力があってこそ県にも活力があるのであります。イノブタについて、県と町が共栄するために方策がないのか。例えば、委託方式、また一部土地の返却等、政治配慮ができないのか。黒潮牧場が平成七年に完成しているが、利用方法、状況についてお教えを願いたいと思います。また、観光の面から、町おこしの面から、商工労働部長のお考えをお示し願いたい。愛情ある答弁を求めます。
最後に、長い間の念願でありました国道三百十一号は、熊博の前に知事の英断で見事開通いたしました。内陸部を走るこの道は、商業、観光、農林業にも大きな役割を果たしております。心からお礼を申し上げます。
この国道で、悲しい事故により私の友人である会社社長が四十三歳の若さでとうとい命を失いました。それは、ことし三月九日、新宮市で商談を済ませ自宅に帰る途中、午後九時四十分ごろ、本宮町武住、大瀬トンネル手前の工事中の現場で事故を起こし、死亡したのであります。
私は、その訃報を聞いたとき、スピードの出し過ぎか居眠りか、ばかなと、友人たちと現場に直行し、残された車を見て唖然としました。車の形が残っていないのです。
翌朝、改めて現場に花を供えに行ったところ、また別の車が大破しているではありませんか。近所の人たちに尋ねると、同じ日に同じ場所で、警察への未届けも含めて五件もの事故があったとのことで、事故とまではいかなくても、多くの車が大きくバウンドして車のしりを振りながら走っており、怖くて見ておれなかったと言っていました。
本宮町では、余りの件数と事故の大きさに、住民及び来訪者のドライバーの安全確保の観点から、現状把握の確認と道路管理者である県当局に対して要望するために、本宮町議会総務常任委員会を開催し、県当局及び警察署に町長、議長、委員長名で要望書を提出したのであります。
事故現場の状況を説明しますと、国道三百十一号本宮町大瀬トンネル近くのカーブのところから、舗装をやりかえるために現道のアスファルトを百二十メートルほど道幅いっぱいに取り除いたために、約十センチほどの段がつきました。その上に砂利を敷いていたのであります。その現場の近くまで工事中の看板等はありませんでした。真っすぐなよい道を走ってきて、カーブのところで急な段差でびっくり。転圧していない砂利の上です。ビー玉の上でブレーキを踏んでいるのと同じであります。本人の不注意も多々あったと思います。しかし、同じ日に同じような事故が何件も起こったことについて、土木部長はどう思われますか。
県の職員が、制限速度で走っていれば事故は起こらなかったと言ったと聞きました。もし消防車が、パトカーがスピードを出して走っていたらと思うと、ぞっとします。欠陥箇所であるから改良しなければならない、そんな場所なのに安全対策はどのように指導していたのか。カーブのところから切り取らずに、どうして直進のところから切り取らなかったのか。設計上に問題はなかったのか。「工事中」「段差あり」等の表示看板はほとんど見当たらなかった。その指導はどうしていたのか。
今回の事故から、もう四カ月になります。県当局の責任、業者へのペナルティー等、どのような指導をしたのか、答弁を願います。
死んだ友人は再び返ってくることはありません。奥さんも、犠牲者は主人だけにしてくださいと、今も悲しい毎日を送っています。今後二度とこのような悲しい事故がないように願い、友人のご冥福を祈って、質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの町田亘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
福祉保健部長白井保世君。
〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) 町田議員にお答えを申し上げます。
いわゆる引きこもり等のケースの相談につきましては、児童相談所、保健所及び精神保健福祉センターにおいて、精神科医師、相談員、保健婦等が相談に応じているところでございます。
平成十一年度の相談件数は、児童相談所では、引きこもりを含む不登校に関するものが二百二十五件、県立保健所及び精神保健福祉センターでは引きこもりに関して三十二件でございました。児童相談所では、通所指導のほか、児童の兄または姉に相当する世代の大学生等をその家庭に派遣したり、同じ状況にある児童と交流させるなど、児童の自主性、社会性等の向上や登校意欲の回復を図るとともに、保護者への支援を行ってございます。
また、思春期につきましては特に専門的な対応が必要なことから、保健婦、教育関係者等、専門職員を対象とする思春期精神保健研修会を開催し、対応能力の向上に努めているところでございます。
引きこもり、不登校など、子育てに関する悩み、不安といったご相談につきましては、地域の保健所、福祉事務所、児童相談所等の関係機関が連携して適切に対応してまいりたいと存じております。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長島本隆生君。
〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 町田議員の、地域活性化についてのご質問にお答えいたします。
まず、イノブタが地域の活性化に果たしている役割についてでございますが、本県では全国に先駆けてイノブタ飼育の実用化試験を畜産試験場において実施し、研究成果の普及による生産振興と各種イベント等への参加による消費拡大を図ってきた結果、特産品として利用されるに至ってございます。
また、すさみ町においては、イノブタを町のシンボルに掲げ、イノブタダービーの開催やパロディー国家イノブータン王国の建国等、全国に名を知られる特色ある町づくりを進め、地域活性化のための観光資源として大きな役割を果たしていると認識をしてございます。
次に、県と町が共栄するための方策と黒潮牧場の利用方法についてでございますが、県ではこれまでも、イノブタ生産者の経営安定と生産の拡大を図るため、生産基盤整備等に対する助成や畜産試験場で子イノブタを増殖し、配布してきたところであり、今後ともこうした事業を進めるとともに、すさみ町が実施するイノブタダービー等、地域おこし活動への支援を引き続いて行ってまいりたいと考えてございます。
なお、地域振興に対しての畜産試験場の果たす役割等については、今後、十分研究してまいりたいと考えてございます。
自給飼料の生産研究並びに熊野牛増殖基地として設置しております黒潮牧場につきましては、県民の皆様を初めとした一般消費者と家畜との触れ合いの場として常時見学者を受け入れてございます。
また、「まきばの一日」の開催などにより、平成十一年度には約四千人の来場者がございました。今後、すさみ町が進めておりますイノブタを核とした町づくりの中で黒潮牧場を観光資源として活用することができないか、その方策等について地元すさみ町ともども検討してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長内田安生君。
〔内田安生君、登壇〕
○商工労働部長(内田安生君) 町田議員にお答えをいたします。
すさみ町は、すさみ八景に代表される海、山、川の美しい景色、熱帯魚の泳ぐ海などのすばらしい自然やイノブータン王国、エビとカニの水族館、日本童謡の園、最近ではスルメイカをはがきにした「するめーる」の考案など、日本初あるいはオンリーワンというユニークなアイデアにより、多くの観光客を誘致し、町の活性化を図るべく積極的に取り組んでございます。
特に、地元挙げて取り組んでいるイノブタダービーはゴールデンウイークの人気イベントとして完全に定着するとともに、すさみ町の認知度やイメージを高める効果があったと考えてございます。
県といたしましては、紀南の豊かな観光資源を生かすべく、東京、名古屋、大阪の各観光センターを通じての情報発信や熊野古道大辺路ウオーキングの開催、県外主要都市でのキャンペーンを実施するなど、さまざまな機会をとらえてPRに努めているところでございます。
今後とも、観光が町おこし、地域振興の柱であるとの認識のもとに、町並びに観光協会とともに観光客の誘致に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 議員お尋ねの交通死亡事故についてでありますが、和歌山県発注の工事現場において痛ましい事故が発生し、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、残されたご家族の方々には心からお悔やみを申し上げます。
今回の一連の事故が発生した工事の現場は、舗装後約十年を経過しており、また昨年来の交通量の増加により舗装の状態が悪く、走行性や快適性を回復するために舗装の打ちかえを行っていたものであります。
カーブが連続する箇所においてはもう少し設計の計画を考慮し、施工方法の面からも安全対策を十分にすべきであったと考えています。
現場の安全管理についてですが、契約書では請負者は道路工事現場における標示施設等の設置基準及び道路工事保安施設設置基準等を遵守することになっており、県はその履行状況を監督、指導する立場にあります。事故後、職員により調査を行いましたところ、請負者の現場での安全施設等の設置に不備があることが判明したため、直ちに請負者を呼び、看板等の設置を指導いたしました。結果的には、県の指導が十分でなかったものと反省しております。
県及び請負者の責任に関してですが、同一現場で事故が連続したことについては、現場の安全管理に問題があったと認識し、厳正に対処してまいります。
今後は、今回の事故を教訓に、未舗装の状態で暫定的な供用をしないよう、道路片側交互通行や仮復旧した後の交通開放等の対策を徹底してまいります。その一環で、三月二十四日には各振興局建設部長あてに「建設工事における安全確保について」の文書を通知し、工事施工現場の安全確保について一層の徹底を図ったところであります。また、東牟婁振興局新宮建設部では、県職員及び建設業者に対する講習会をそれぞれ実施したところであります。
二度とこのような事故が起こらないよう、県職員及び建設業者に対する研修や現場パトロール等の指導を強化し、事故の再発防止に努めてまいります。
最後に、お亡くなりになられた方のご冥福を重ねてお祈り申し上げて、答弁を終わらせていただきます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 不登校、中退問題に関連してお答えをいたします。
中学校における不登校生徒は、平成十年度千百三十八人であります。また、高等学校において、病気等のために三十日以上欠席した生徒は五百三人となっております。
こうした問題の背景には、豊かな人間関係を築く力が不足していることや、子供たちを取り巻く生活環境が大きく変化していることなど、学校、家庭、地域社会のさまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられます。しかし、不登校生徒が特定の地域に集中するといったことはございません。
こうした生徒に対応するため、本年度は県全体で臨床心理士の資格を持つスクールカウンセラーを二十校に、生徒理解に豊かな経験を持つ心の教室相談員を六十九校に派遣するとともに、専任の教育相談主事を二十人配置するなど、方策を講じているところであります。さらに、不登校児童生徒の学校への復帰を支援する適応指導教育の充実を図っているところです。
高校の中途退学につきましては、平成十年度では全日制、定時制合わせて七百五十三人となっております。その主な理由は、学校生活や学習に適応できないこと、就職や専門学校等へ進路を変更すること、また成績が不振であることなどが挙げられます。このため、各学校においては基本的生活習慣や学習について指導の充実を図るとともに、生徒一人一人がみずからのあり方、生き方を考え、豊かな学校生活を送ることができるよう指導いたしております。
また、やむを得ず退学していく生徒に対しても、その後の進路について相談に乗るなど、事後指導にも取り組んでおります。
さらに、本年度新たに学校関係者のみならず行政機関や有識者、PTAの皆さんから成る中退問題等対策検討委員会を設置するとともに、中途退学等に関する研究校を指定し、実践研究を進めております。
不登校児童生徒や中途退学に至る生徒の中には、議員ご指摘のいわゆる引きこもりに陥っている子供が多数いることも事実でございます。こうした児童生徒に対して、各学校では家庭訪問や電話相談等、さまざまな方法で状況を把握するとともに、指導に努めているところです。また、必要に応じて関係機関と連携する取り組みを進めております。
今後ともこうした取り組みを一層進めるとともに、地域社会との連携をより充実させ、二十一世紀の社会を心豊かにたくましく生きることのできる人材を育成する教育の充実に取り組んでまいります。
○議長(下川俊樹君) 警察本部長樋口建史君。
〔樋口建史君、登壇〕
○警察本部長(樋口建史君) まず最初に、県下の少年犯罪の状況について申し上げたいと存じますが、昨年は千五十人、ことしは六月末現在で四百三人を刑法犯で検挙いたしております。これは、全刑法犯の半数近くを少年が占めているといった状況であります。
ことしの特徴でありますけれども、新聞でも報道されておりますのでご承知かと思いますけれども、和歌山市内で、これは四月でございましたが、十六歳の男子高校生が十五歳の少女にシンナーを浴びせかけて火をつけた重大傷害事件でありますとか、これも二月から四月にかけてでございましたが、御坊市内において十四歳の女子中学生が率いるグループが連続恐喝事件を引き起こしていたといった事件に見られますように、一段と凶悪化をしている状況にあります。
警察といたしましては、重大な非行を犯した少年に対しましては、みずから犯した犯罪の重さ、そして被害者の痛みを正しく理解させるためにも厳しい捜査を徹底しようということで期しているところであります。
一方、それ自体は犯罪に当たらない少年のいろんな問題行動に対しましても、その対応は──深夜徘回でありますとか、喫煙、飲酒でありますとか、実にさまざまでありますけれども、きめ細かく適切な対応をとることが極めて重要でありますことから、先月八日、警察本部内に少年サポートセンターなるものを設置いたしました。少年の問題行動の実態を把握することと、早期に補導しようという趣旨で設置をしたものでございます。
ちなみに、昨年中、警察に寄せられました少年相談事案の件数でございますが、六百九十八件でございました。議員ご指摘の引きこもりにつきましては、残念ながら、統計上細かくそういった分類をいたしておりませんので正確なところはわかりませんけれども、不登校に関する相談が三十九件、家庭内暴力に関するものが二十三件ございました。
これらの相談を受理した場合の対応でございますけれども、少年本人からの相談であれ、保護者からの相談であれ、まずは親身になって話を聞いた上で──時にまどろっこしいところもあるんですけれども──警察として考えられる範囲内の助言と指導を行うことといたしております。さらに、場合によりまして児童相談所その他の機関に意見を求めたり、相談自体を引き継ぐこともございます。
以上でございますが、県警察といたしましては、今後とも少年の健全育成という基本理念のもとに、行為責任の厳しい追及と保護活動、支援活動といった二本柱から成る総合的な少年非行対策を、バランスよくかつ強力に推進してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
二十四番町田 亘君。
○町田 亘君 答弁ありがとうございました。
昭和五十七年、山崎利雄議長の当時、和歌山県と中国の山東省との友好提携がなされた記念として幻の牛・魯西黄牛の寄贈を山東省に申し入れたと聞いております。その後、六十一年三月にその魯西黄牛という牛が和歌山に着きまして、県庁前で披露されて、前の仮谷知事から「紀州魯西号」と命名されたことを今も覚えておりますけれども、この紀州魯西号が和歌山の畜産に果たした役割は大きなものであったと聞いております。中国から来てもう十五年。大きな仕事をなし終えて魯西号は、すさみの畜産試験場で、年老いたとはいえ、元気に頑張っています。
試験場の入り口に牛のモニュメントがありますが、先ほども質問いたしましたように、イノブタは余りにも有名になりました。町を訪れる人たちから「あのかわいいイノブタはどこで見られるのか」とよく聞かれます。
そこで、国道四十二号の試験場入り口に「イノブタ発祥の地」等の看板を揚げて、家畜と子供の触れ合い等、情操教育にも役立てていただきたい。そのことを要望して、質問を終わります。
ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で町田亘君の質問が終了いたしました。