令和7年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)
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令和7年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号
議事日程 第5号
令和7年6月20日(金曜日)
午前10時開議
第1 議案第102号から議案第114号まで(質疑)
第2 一般質問
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会議に付した事件
第1 議案第102号から議案第114号まで(質疑)
第2 一般質問
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出席議員(42人)
1番 高田英亮
2番 上山寿示
3番 佐藤武治
4番 鈴木德久
5番 森 礼子
6番 濱口太史
7番 井出益弘
8番 尾崎要二
9番 玄素彰人
10番 山家敏宏
11番 鈴木太雄
12番 岩田弘彦
13番 吉井和視
14番 中村裕一
15番 北山慎一
16番 坂本佳隆
17番 中本浩精
18番 堀 龍雄
19番 新島 雄
20番 山下直也
21番 三栖拓也
22番 川畑哲哉
23番 秋月史成
24番 谷口和樹
25番 山田正彦
26番 坂本 登
27番 岩永淳志
28番 小川浩樹
29番 中尾友紀
30番 岩井弘次
31番 藤本眞利子
32番 浦口高典
33番 尾﨑太郎
34番 藤山将材
35番 小西政宏
36番 浦平美博
37番 中西 徹
38番 林 隆一
39番 片桐章浩
40番 奥村規子
41番 谷 洋一
42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
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説明のため出席した者
知事 宮﨑 泉
理事 山本祥生
知事室長 北廣理人
総務部長 友井泰範
危機管理部長 中村吉良
企画部長 北村 香
地域振興部長 赤坂武彦
環境生活部長 湯川 学
共生社会推進部長 島本由美
福祉保健部長 𠮷野裕也
商工労働部長 中場 毅
農林水産部長 川尾尚史
県土整備部長 福本仁志
会計管理者 高橋博之
教育長 今西宏行
公安委員会委員長 竹山早穗
警察本部長 野本靖之
人事委員会委員長 平田健正
代表監査委員 森田康友
選挙管理委員会委員長 和歌哲也
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職務のため出席した事務局職員
事務局長 中嶋 宏
次長 橋爪正樹
議事課長 岩井紀生
議事課副課長 田中 匠
議事課議事班長 川原清晃
議事課主査 川崎競平
議事課副主査 西 智生
議事課副主査 林 貞男
総務課長 榊 建二
政策調査課長 岩谷隆哉
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午前10時0分開議
○議長(岩田弘彦君) これより本日の会議を開きます。
この際、新任者を御紹介申し上げます。
3月18日、選挙されました選挙管理委員会委員、廣谷行敏君を御紹介申し上げます。
選挙管理委員会委員廣谷行敏君。
〔廣谷行敏君、登壇〕
○選挙管理委員会委員(廣谷行敏君) ただいま御紹介をいただきました廣谷行敏でございます。
去る2月の定例会におきまして、選挙管理委員会委員に3度目の選任をいただき、ありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。もとより微力でございますが、重責を十分認識して、全力を尽くしたいと思っております。皆様の御指導と御鞭撻をよろしくお願いをいたしまして、御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 次に、日程第1、議案第102号から議案第114号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。
42番長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 皆さん、おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。
一つ目に、カスタマーハラスメントについてであります。
接客に当たる従業員らが暴言や暴力、理不尽な要求などを受けるカスタマーハラスメントについては、令和5年12月県議会で質問させていただきましたが、東京都を皮切りに、北海道、群馬県でカスハラ防止条例が相次いで成立しました。三重県桑名市の条例では、事業者からの報告に基づき、カスハラをした人に市が警告し、改善しなければ氏名を公表するといった、顧客に対するペナルティーの規定を盛り込んでいます。
国会においても、去る6月4日、改正労働施策総合推進法が参議院本会議で可決、成立しました。カスハラの定義を、顧客や取引先、施設利用客などの言動で、それが社会通念上許容される範囲を超えたものにより雇用する労働者の就業環境が害されることとし、その対策を企業に義務づけるものです。今後、対策の具体的な内容は厚生労働省が指針として示すことになっていて、企業の方針を明確化して周知や啓発を行うことや、労働者からの相談体制を整備することなどが予定されているとのことです。
和歌山県においても岸本前知事が、3月19日、顧客から理不尽な要求を突きつけられるカスタマーハラスメントを防止するため、県条例を制定する考えを表明し、2026年度以降の施行を目指しておられました。条例に先駆け、県はカスタマーハラスメント対策基本方針を策定し、4月1日に施行されています。県・市町村等公共機関の職員が住民から過度な精神的ストレスを被ったりして、行政サービスの低下につながったり、店で顧客が従業員に対して理不尽な要求や迷惑行為があったり、あるいは介護現場で働くケアマネジャーやヘルパーへの利用者やその家族からの暴力や暴言、不当な要求やクレームを受ける等の悲鳴も聞かれます。
そこで、質問でありますが、宮﨑新知事におかれましては、前知事を受け継いでどのような条例を目指しておられるか、お尋ねいたします。
○議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
知事宮﨑 泉君。
〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) カスタマーハラスメントを受けた人が心身を害し、休職や離職に至ってしまうようなことは、全ての県民のウェルビーイングな生活の実現を目指していた岸本前知事にとって極めて残念なことであり、事業主がその雇用する従業員等を守るために講ずるべき措置を県として示したいとの思いから、条例制定の意向を表明したものであります。
岸本前知事は、条例制定に先駆け、まず、カスタマーハラスメントから県職員を守るとともに、行政サービスを適正に提供するため、カスタマーハラスメントに対する取組の基本姿勢を示した和歌山県カスタマーハラスメント対策基本方針を策定いたしました。私も、知事として前知事の思いを引き継ぎ、次は事業主がその雇用する従業員等を守り、誰もが安心して働ける環境を確保できるよう、条例の制定を目指してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 日本の場合は、とりわけ顧客第一の企業風土が根強いものがありますが、かつてのお客様は神様ですという考え方は変わりつつあります。カスハラをなくすには、互いに相手を思いやる気持ちは欠かせませんが、基本線は、従業員はマニュアルに沿って淡々と対応し、最終的な責任は、従業員でなく企業にあるものと再確認できる体制づくりを進めていただきたいと思います。
2点目に、部活動の地域移行についてであります。
国は、少子化対応や教員の負担減を進めるため、公立中学校の部活動を順次地域移行するとして、国の改革推進期間が今年4月で3年目を迎えました。令和2年9月には、文部科学省が、土日等、休日の部活動における生徒の指導や大会の引率については、学校の職務として教師が担うのではなく、地域の活動として地域の人材が担うこととし、地域部活動を推進するための実践研究を実施する、その成果を基に、令和5年度以降、休日の部活動の段階的な地域移行を図るとともに、休日の部活動を望まない教師が休日の部活動に従事しないこととするとされています。
和歌山県教育委員会は、令和6年2月、和歌山県学校部活動及び地域クラブ活動の在り方等に関する方針を示され、令和8年度までを改革準備期間と定め、各市町村の準備を県が支援するとともに、取組が可能な市町村から改革を実行し、その後、令和10年度までに地域クラブ活動の充実を目指すとされています。
他府県でも、部活動の地域移行に取り組まれている市町が出てきているようです。そこで様々な問題も出てきています。休日は地域指導者、平日は学校顧問が指導する形だと、指導方針が異なる場合もあり、子供に迷いが生じることもあるでしょう。外で事故が発生したときの責任の所在もはっきりさせておく必要があります。民間で部活動が行われると、どうしても費用の面で生徒に格差が生じてこないかとの懸念があります。恐らく平日も休日も兼業して頑張る教師もおられることと思いますが、学校内外ともに、本来自主的な運営であった部活動に係る明確な報酬基準をつくっていただきたいと思います。
部活動の地域移行となると、学校外の施設の使用も必要になってきますが、施設の減免、送迎面の配慮、経済的に厳しい家庭の生徒の地域クラブ活動への参加費用の支援などの検討が必要になるでしょう。また、生徒の中には、授業では気がつかなかったが、部活動では生き生きとして、他の子供をいたわったりリーダーシップを取っていたりといった長所も教師としては見ていただきたいし、関わりを持っていただくことも必要かと思います。
地域クラブになって、競技としての優劣にこだわるあまり、そのスポーツなり文化活動を純粋に楽しみたい子供たちの部活動が冷遇されることがあるとしたら、教育的見地からすると問題があるのではないでしょうか。国も、部活動の地域移行に当たって十分予想され得る状況に対し具体的な財源も示さずに、自治体あるいは民間企業に単に丸投げしているような気がしてなりません。生半可な姿勢では、部活動の地域移行は簡単に進むものではないと思います。学内で指導する教師の場合も、報酬の手だては必要になってくるのではないかと思われます。こうした課題については有識者からも指摘されており、今後、国において大いに善処されることを期待するばかりです。
そこで、質問ですが、一つ目、県及び市町村は、令和6年度以降、地域連携・地域移行を進めるについて情報発信を強化するということですが、どのような情報発信をなされておられますか。教育長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 教育長今西宏行君。
〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 情報発信の内容といたしましては、地域連携・地域移行をどのように進めていくのか、地域内のどこにどのような地域クラブや施設があるのかなどといった情報となります。そして、生徒がスポーツや文化芸術活動に親しむことができるよう、生徒や保護者、地域住民に対し、こうした情報を提供していくことになります。
県内の状況を見ますと、例えば、生徒や指導者、地域クラブの数が少なく、まずは地域人材の活用や合同部活動などの地域連携から始めるところや、もともと地域クラブ活動が活発で、既に地域移行を始めているところなどがあり、市町村によって地域連携・地域移行の進め方が異なっております。そのため、市町村では、それぞれの進め方に応じて情報発信することが求められます。
県教育委員会としましては、各市町村が有効な情報を発信できるよう、先進事例などの情報について、訪問や研修の機会を通じ、個別に提供しているところでございます。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、地域クラブで外部指導者へ指導をお願いする際に、当該競技及び文化芸術分野の専門性を有する退職教員や関係機関のOB、地域の指導者を活用することは大変有効であるとの議論も前述の方針にうたわれていますが、まさにそのあたりから指導者を発掘していくことが必要だと思います。地域移行に当たって、そのような目星もつけてきておられるのでしょうか。地域にも指導できる人材が豊富であるとは決して言えないだけに、スポーツや文化芸術の人材バンクをつくって登録を行っておく必要があると思いますが、いかがでしょうか。教育長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 教育長。
〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 地域クラブ活動の指導者については、専門性を有する退職教員や関係機関のOB、地域の指導者に参加していただくことが有効であり、こうした指導者を発掘していくことはもちろん、指導者となる人材を育成していくことも大切です。また、教職員が地域クラブ活動での指導を希望する場合には、兼職兼業の許可が円滑に得られるよう規定や運用を整備し、周知していくことが必要です。
議員御指摘のとおり、地域人材を把握する手段として人材バンクを設置することは重要であると認識しております。しかしながら、登録者数が増えず、指導者の取り合いにつながるといった課題が生じている他県の事例もあることから、本県における適切な運用の在り方について引き続き検討してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 部活動の地域移行については、くれぐれもあくまで生徒の目線に立って不公平が生じないよう、教育的見地から進めていただきたいと要望させていただきます。
3点目に、日本遺産についてであります。
日本遺産は、文化庁が認定した地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリー、物語で、各地域の魅力あふれる有形・無形の文化財群を地域が主体となって整備、活用し、国内外へ発信することで地域活性化を図ることを目的とした日本の文化遺産保護制度の一つとも言えます。
2020年度まで計104件が認定され、うち和歌山県は、「鯨とともに生きる」、「絶景の宝庫 和歌の浦」、「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」、「『百世の安堵』~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~」、「1300年つづく日本の終活の旅~西国三十三所観音巡礼~」、「女性とともに今に息づく女人高野~時を超え、時に合わせて見守り続ける癒しの聖地~」、「『葛城修験』-里人とともに守り伝える修験道はじまりの地-」と、七つの日本遺産が認定されています。
そして、本年2月に、「北海道の『心臓』と呼ばれたまち・小樽~「民の力」で創られ蘇った北の商都~」が初の小樽市単独の日本遺産に認定されました。一方、太宰府天満宮や佐賀県と福岡県にまたがる基肄城跡などで構成される「古代日本の『西の都』」について、文化庁は、今年2月、地域活性化の取組に改善が必要だとして、観光資源として国内外に発信する日本遺産の認定を取り消しました。
日本遺産審査・評価委員会は、令和6年1月に、「日本遺産認定地域の今後の審査について」と題して、現行認定地域の活発な取組の継続と新たなストーリー、地域の参入による事業自体の活性化の観点から、一つ、新たな候補地域を認定する仕組みと既存の日本遺産地域の活動状況を評価する総括評価、活動継続について判断する継続審査の取組を導入、二つ目、継続審査の結果、条件付き認定とされた地域と候補地域をそれぞれ点数によって評価して、上位の地域を日本遺産とするプロセスを導入として、引き続き、日本遺産のブランド力の向上やさらなる事業の活性化が必要とされています。
まさに、文化庁はブランド価値を維持するため、2021年度に総括評価、継続審査の仕組みを導入したわけでありまして、一つ一つの日本遺産が毎年審査をされており、和歌山県の七つの日本遺産も、絶えずブラッシュアップをかけて、観光客の入り込み数といった経済的側面も気にかけた取組が必要になってきています。文化庁は、昨年、パートナーシップを結んだ企業などに、日本遺産の魅力を発信してもらう事業をはじめ、同10月からは、各認定地域の物語をめぐるショート動画を発信する「まいにち日本遺産」を開始するなど、認知度向上に取り組んでいます。
そこで、質問ですが、和歌山県において、七つもの日本遺産を認定いただいておりますが、引き続き認定されるよう、日頃から認知度のアップやさらなる観光振興への努力等、具体的な取組はなされておられますか。地域振興部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 地域振興部長赤坂武彦君。
〔赤坂武彦君、登壇〕
○地域振興部長(赤坂武彦君) 日本遺産として引き続き認定されるためには、認定を受けてから6年経過後に、この6年間の取組と今後3年間の計画などについて、文化庁から任命された外部有識者による審査を受ける必要があります。
これまで、県が協議会の中核を担っている三つの日本遺産については、地域に受け継がれる歴史や文化、地域の魅力を公式ウェブサイトやインフルエンサーなどにより発信するとともに、地域住民向けの公開講座やガイドの養成、案内板の設置など、受入れ体制の整備を行ってまいりました。また、その他の日本遺産につきましても、関係市町村において情報発信や人材育成、受入れ体制整備などに取り組んでおり、県といたしましても、継続認定の際には、必要に応じてアドバイスなどを行っているところです。
今後も、国や関係市町村、他の全国の日本遺産等とも連携しながら、さらに認知度を高めていくとともに、認定の継続に必要な人材育成など、受入れ体制整備の強化にも努め、七つ全ての日本遺産の認定を継続できるよう、引き続き取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 日本遺産は、そもそも日本人観光客だけでなく、ビジット・ジャパンという訪日外国人観光客誘致と地域活性化を目的とした局面があると思います。当該地域では、絶えず地域の魅力の再発見や新たな物語性を追求し続けていただきたいと思います。
4点目に、労働力人口の増加についてであります。
日本では、人口は減少しているものの、15歳以上の働く意欲のある人の数を示す労働力人口が増え続けています。労働力人口とは、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人数のことで、実際に働いている人と仕事を探している失業者の合計を指します。また、労働力率とは、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた労働力人口が占める割合のことで、すなわち、労働力として数えられる人口が15歳以上の人口全体の中でどれくらいの割合を占めているかを示す指標のことです。
令和6年の平均は6957万人で、7000万人に迫る勢いです。労働力人口に占める65歳以上の割合は、平成12年には7.3%でしたが、令和6年には13.6%と、2倍近くになっています。年齢別で見ると、令和6年は、65歳から69歳の半数超、75歳以上でも1割超が働いていることになります。人手不足に悩む企業にとっても、シニアの方を活用することは欠かせません。
パーソル総合研究所の調査では、60歳から64歳で働いている人が65歳以降も働きたいと答えた割合は、男性が79.2%、女性が73.6%に上っています。こうした層が希望どおりに働くことができれば、令和7年には働き手が男性で79万人、女性で139万人増えると試算しています。
働く意欲のある女性も大きく増えています。令和6年は3157万人と過去最多で、平成12年と比べて404万人増えました。女性の未婚率が増えていることも影響していますが、結婚や子育てを経ても働く女性は増えています。政府や企業が仕事と育児の両立を支援する施策や取組を増やしていることも後押ししています。非正規社員では、まだ女性のほうが多いですが、変化も出てきていて、15歳から64歳の女性で見ると、令和6年は正社員の割合が5割を超えました。平成14年以来、22年ぶりに正社員が非正規社員を上回りました。人手不足の中、女性の正社員としての採用を増やしていることが影響しています。
労働力調査の令和6年の就業者数を比較可能な平成14年と比べると、増加率が大きい業種は、医療・福祉が94.5%増や情報通信業が84.8%増でした。高齢化で介護・福祉の需要が増えているほか、IT化の進展で産業構造が変わっていることなどが背景にあるようです。
県調査統計課で平成12年から令和2年までの国勢調査の時系列データをお調べいただきましたが、労働力人口は、全国的には男性は全体で減少傾向。でも、最近、平成27年から令和2年までの労働力率は伸びております。女性の労働力人口は増加傾向で、労働力率も伸びております。60歳以上の労働力人口も着実に伸びており、60から64歳は、労働力人口は減少していますが、労働力率が伸びており、特に65歳以上の労働力人口とともに労働力率も伸びております。
一方、和歌山県では、男女とも労働力人口は減少していますが、最近、平成27年から令和2年の労働力率は男女とも伸びています。特に女性は、平成12年から令和2年まで、労働力率は伸び続けています。60歳以上は、労働力人口も労働力率も伸びており、60から64歳は、労働力人口は減少していますが、労働力率は伸びていて、65歳以上では、労働力人口は伸びており、労働力率も平成22年から令和2年までで相対的には伸びております。今年の国勢調査の結果はまだ出ていませんが、和歌山県でも、最近になって、女性と高齢者の方の就業希望者は着実に増加していると言ってもいいのではないかと思われます。
そこで、質問ですが、今後の本県における働く意欲のある労働力率の増加について、県はどのようにお考えでしょうか。商工労働部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 商工労働部長中場 毅君。
〔中場 毅君、登壇〕
○商工労働部長(中場 毅君) 議員御指摘のとおり、本県における労働力率は平成27年から令和2年にかけて増加しており、中でも、女性や高齢者において伸びが大きくなっています。人口減少に歯止めがかからず、労働力人口が減少する中において、労働力率は増加しているということは、働く意欲のある方の割合が高くなっているということであり、県としては、労働力率の増加を前向きに捉えています。
また、働く意欲のある女性や高齢者の就業を促進することは、和歌山県の産業の発展や企業の人手不足解消の観点から、非常に重要であると考えます。県では、女性や高齢者を含む全ての働く意欲のある方に対し、合同企業説明会を開催するとともに、県が設置するわかやま就職支援センターにおいて、就職関連情報の提供をはじめ、就業に向けた個別相談やセミナーの開催を通じ、県内企業への就業の支援に取り組んでいるところです。
今後も、働く意欲のある方が円滑に就業できるように取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 人手不足が各方面から叫ばれる中、ぜひとも女性と高齢者の意欲と労働力を生かしていただきたいと思います。
5点目に、がん治療の進歩についてであります。
がんになる人は年間94万人、亡くなる人は38万人ほどと言われます。かつては不治の病と考えられていましたが、今は治る人も増えています。がんと診断された人が5年後に生存している割合は、多くの部位で緩やかに上昇傾向にあります。長らくがん治療は、手術、放射線、旧来型の抗がん剤の3本柱でした。そこに、分子標的薬と免疫療法という新たな2本の柱が加わったと言われます。
旧来の抗がん剤は、健康な細胞も含めて攻撃し、がん細胞を倒すことを狙いにしていました。そのため、患者の副作用も激しかったのです。それに対し、分子標的薬は、がん細胞だけに見られる目印、分子をターゲットにがんを攻撃するため、効果が高く、副作用が少ないとされます。がんは遺伝子の変異によって引き起こされ、その変異に対応した分子標的薬が多く出てきています。
100種類以上の遺伝子の変異を網羅的に調べて合う薬を探すがんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査)は、2019年に公的医療保険の適用が一部の患者に認められました。一人一人のがんの遺伝子変異を調べて対応する治療を行うがんゲノム医療を、国も推し進めています。ほかにも、高度な医療が発達してきています。患者の血液を採取して免疫細胞を活性化させる細工を施して体内に戻すCAR-T細胞療法やがんによって生じた免疫のブレーキを解除する免疫チェックポイント阻害剤など、画期的な治療が実用化されています。このほか、最近では、分子標的薬と従来の抗がん剤の特徴を併せ持つ抗体薬物複合体も、よりピンポイントに効果を発揮する治療として注目されています。
しかし、これらの高度化した治療は、どこでも誰もが受けられるわけではありません。特に、国が推進するゲノム医療の遺伝子パネル検査は、全国282施設でしか受けられず、地域格差が指摘されています。検査をしても、実際に合う薬が見つかり、治療につながった割合は約9%(2019年から22年)、臓器による差も顕著で、膵臓がんなどではさらに低くなっています。
医療費の高額化にもつながります。高度な手術や薬物医療などは、対応できる医師は限られます。薬の選択肢が増え、長期間飲み続けるタイプの薬も多いです。肺がん患者では、薬の費用が月額で数十万円に上る分子標的薬を何年も飲み続ける例もあるそうです。高額療養費制度により、患者の月ごとの自己負担は一定額に抑えられますが、それでも長年続けば大きな負担になります。高額療養費の負担限度額の引上げは見送られたとはいえ、今後の展開は見通せない状況です。
そこで質問ですが、県内の医療機関における2024年度のがんゲノム医療、遺伝子パネル検査の実施内容はどのような状況でしょうか。福祉保健部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 福祉保健部長𠮷野裕也君。
〔𠮷野裕也君、登壇〕
○福祉保健部長(𠮷野裕也君) がんゲノム医療は、がん細胞の遺伝情報を調べ、その遺伝子に変異が起こっているのかを知ることで、患者の状態により適した治療薬を選択することが可能となるもので、治療成績の向上や患者の精神的・身体的負担の軽減などが期待されます。
現在、県内の医療機関でがんゲノム医療を実施できるのは、がんゲノム医療連携病院である県立医科大学附属病院と日本赤十字社和歌山医療センターの2病院で、2024年度に実施した遺伝子パネル検査の件数は、県立医大が93件、日赤が66件の計159件となっています。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 本県においても、副作用が少ないがんゲノム医療のますますの進展を期待しております。
6点目、最後に、南海トラフ地震での災害関連死防止についてであります。
2016年の熊本地震、そして、昨年1月の能登半島地震では、持病の悪化や精神的なストレスで亡くなる災害関連死が、建物の倒壊等の被害で亡くなる直接死を上回りました。能登の被災地では、当初はけがの手当てが主で、1週間近く経過すると、避難所で新型コロナウイルスやインフルエンザの感染が相次ぎました。その後は、長引く避難生活の影響で心筋梗塞を起こしたり、服用している薬がなくなり、糖尿病などの持病が悪化したりする人も見られました。南海トラフ地震でも、同様の事態が規模を拡大して生じるおそれがあります。また、津波で水につかることによる低体温症や肺炎、夏なら脱水症状や熱中症が心配です。
避難所の環境改善も急務です。能登の避難所の多くは、土足で入る場所と生活空間が区別されておらず、避難者は、学校の体育館や教室の硬くほこりっぽい床の上で寝起きしていたとのことです。700人を超える避難者にトイレが三つしかなく、トイレを我慢して水分や食事を控え、体調を崩したり、脱水症状を起こしたりする人もいました。水分を取らず、長時間同じ姿勢のままでいると、足にできた血の塊、血栓が肺の血管で詰まる肺塞栓症、エコノミークラス症候群を引き起こすおそれもあります。
関連死は死亡との因果関係を自治体が認定するまでに時間を要しますが、実際には、その8割が発生から3か月以内に亡くなっているとされます。直接死を免れた命を守るため、災害弱者に配慮した避難所の環境や支援体制を早急に整えることが欠かせません。また、災害関連死は、避難所向けの物資の備蓄や運用法の見直しなど、必要な備えを欠かさなければ、確実に減災につなげることができます。
さて、南海トラフ地震の被害想定に今回初めて盛り込まれた災害関連死の試算だと、国全体での死者数は、最大5万2000人と言われています。国内最多だった2011年の東日本大震災での関連死者約3800人の14倍近い数字であります。
そこで質問ですが、一つ目、過去の災害では、避難者の持病の有無や薬の服用歴が分からないまま、体調が悪化しても行政側が把握できず、適切な治療につながらなかったケースが目立ちます。災害時には、医師や看護師らが避難所を頻繁に巡回して情報を更新するなどするとともに、医療機関や薬局、高齢者施設などで登録された病歴や投薬歴などの共有など、避難してきた人の健康状態を細やかに把握できるシステムづくりが必要だと思いますが、福祉保健部長、いかがですか。
○議長(岩田弘彦君) 福祉保健部長。
〔𠮷野裕也君、登壇〕
○福祉保健部長(𠮷野裕也君) 災害時においては、被災地へ派遣された保健医療活動チームが避難所等を巡回し、医師が避難者の診察を行った上で、全国的に様式が統一された災害診療記録を作成しています。この災害診療記録を含む活動日報を作成し、J-SPEED+というシステムに入力することで、避難者の診療内容等を県保健医療福祉調整本部や保健医療活動チームにリアルタイムで情報を共有することができます。さらに、このシステムにより、診療データの解析を行う被災地外の専門チームから支援を受けることも可能となりますので、本県としましても、災害時にこれを十分に活用し、避難者の健康管理に努めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、南海トラフ地震の国全体での被害想定では、災害関連死につながる可能性が高い人として、まず、介護が必要な避難者は26万5000人、そして、人工透析の継続が難しい患者が12万人と想定されていますが、和歌山県ではどのような対策をお考えですか。福祉保健部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 福祉保健部長。
〔𠮷野裕也君、登壇〕
○福祉保健部長(𠮷野裕也君) 災害関連死を防ぐためには、避難者一人一人に寄り添った個別の状況に応じた支援が重要であり、そのためには、特に医療を要する方を早期に把握することが不可欠です。本県におきましても、その手法である災害ケースマネジメントについて和歌山県地域防災計画に明記し、避難者のニーズ把握や避難所の環境整備に取り組む災害派遣チームDWATの創設など、支援の仕組みの構築に努めているところであり、今年度も災害ケースマネジメントに知見を有するNPO法人に協力をいただき、市町村や社会福祉協議会、災害派遣福祉チームに参加する福祉関係者などを対象とした研修会の開催を予定しております。
また、災害時における人工透析患者への対応は極めて重要であることから、本県では、わかやま透析安心メールシステムを運用しているところです。このシステムにより、患者の安否や所在を把握するとともに、かかりつけ医療機関の診療の可否や、それらが被災した場合の代替医療機関に関する情報を患者に提供し、透析医療機関における患者の円滑な受入れにつなげる体制を構築しております。
本県といたしましては、災害関連死の発生を防ぐため、引き続き、避難者の健康を守る取組を進めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 3点目に、災害関連死の要因として、避難所のトイレ問題があります。
和歌山県みなべ町は、今年1月、トイレカー1台を県内で初めて導入しましたが、県下となると、たくさんのトイレが必要となってまいります。トイレの準備態勢については、危機管理部長、いかがお考えですか。
○議長(岩田弘彦君) 危機管理部長中村吉良君。
〔中村吉良君、登壇〕
○危機管理部長(中村吉良君) 議員御指摘のとおり、災害時にはたくさんのトイレが必要となることから、県といたしましては、市町村の避難所における簡易トイレ等の整備に対しまして、わかやま防災力パワーアップ補助金により、財政支援しているところです。また、能登半島地震の被災地におきまして、衛生的かつ快適な移動式トイレが活躍したことを受け、その整備の必要性を認識したところです。そのことから、市町村に対してトイレカーの整備を働きかけたところ、みなべ町と上富田町で導入済みとなっており、トイレコンテナを含めますと、11市町で導入予定となってございます。
今後、県で導入しますトイレカーを防災訓練等で利用し、多くの県民の皆様にその有用性を理解していただくことで、市町村でのさらなる普及に努めてまいります。このような取組のほか、トイレカーの相互応援体制の構築や学校などの既存トイレの有効活用を進めるなど、市町村と連携して、避難所のトイレの充実を図ってまいります。
一方、トイレの確保は、各個人による災害への備えである自助の取組としても大切なことから、県民の皆様に、日頃から食料等に加え、携帯トイレの備蓄を呼びかけてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 長坂隆司君。
〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 災害時には、人は環境の激変による体調の悪化、また、持病の悪化が起こりがちで、命に関わる事態にまで陥る危険と背中合わせになります。避難する住民は自助、共助を心がけつつも、生命を守るために公助の充実にもお力添えと心配りをよろしくお願いいたします。
これで、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
21番三栖拓也君。
〔三栖拓也君、登壇〕(拍手)
○三栖拓也君 皆様、おはようございます。自由民主党県議団の三栖拓也でございます。令和7年6月定例会におきまして、この場で質問の機会をいただきましたことに感謝申し上げます。議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、一般質問を行います。
大項目一つ目の和歌山県の観光戦略の継承と発展について質問をいたします。
これまで、岸本前知事に対し、幾度にわたり、和歌山県の観光戦略や観光振興の施策について質問をしてまいりました。そのたびにおっしゃっておられたのは、和歌山には日本有数の歴史と文化があり、長い時間をかけて醸成された精神性や静ひつさを有しているということ、豊かな自然と美しい景観を大切にし、持続可能性のある観光を目指していくのだということでした。この考え方は、現在の和歌山県の観光キャッチフレーズである「聖地リゾート!和歌山」に込められています。
宮﨑新知事におかれましては、知事選挙での街頭演説をはじめ、各種メディアのインタビューなどで岸本県政の継承を繰り返し訴えておられました。特に、岸本前知事がまいた種を育て、大きな花を咲かせるのが自分の役目だという話を各地でなさっておられたのがとても印象に残っております。
そこで、改めて宮﨑知事に、和歌山県の観光戦略の継承と発展について質問をさせていただきます。
県では、令和7年度に観光振興アクションプログラム2025を策定し、これまでの施策の内容を整理し、改めて、今後取り組んでいくべき観光振興策についてまとめたものだと承知をしております。その基本方針として掲げている2点を申し上げますと、1点目は、本県の強みを生かした誘客推進です。本県の観光を売り出すために大切な三つのSをコンセプトに、地域の価値を大事にしながら誘客を推進するもの。2点目は、地域と一体となった観光地域づくりです。伝統や文化、環境を守りながら観光資源を磨き上げ、観光から得られる恩恵を地域全体で享受できる持続可能な観光地域を目指すもの。この基本方針に沿って、重点的に取り組むべき項目を設定し、実行しているところであると認識をしております。
これらの観光振興アクションプランで述べられているように、地域に既にある魅力ある自然や文化など、和歌山でしか見られない、味わえない、体験できないというコンテンツに磨き上げていくのが重要であると考えます。人の交流が増え、経済的な波及効果が大きい観光という産業を振興していくことは、人口減少に直面する私たち地方に暮らす者にとって、今後、ますますその重要性が増してくるものだと強く感じておりますし、日本全体で取り組んでいくべき重要な政策であると考えます。
国としても、2006年に観光立国推進基本法が成立し、これ以降、観光というものが21世紀における日本の重要な政策の柱として、初めて明確に位置づけられました。この頃から観光立国という言葉が一般的に浸透してきたように記憶をしておりますが、実は、観光立国という言葉を初めて世に知らしめたのは、我々の郷土の偉人である松下幸之助氏であることはあまり知られていないのではないでしょうか。
松下幸之助氏は、1952年9月に行われた立花大亀老師との対談の中で、次のように述べています。
「富の表現の仕方にはいろいろありますが、私は日本の富の一番大きなものは何かというと、その景観美だと思います。この景観の美は、天与のものであって、我々がつくろうとしてもつくれない。また、石炭や石油のように掘ればなくなるというものでもなく、幾ら見ても減りません。十和田湖の景色は、幾ら見ても減るものではない。それに、掘り出す手間も要らない。この景観美を世界の人に観賞してもらおうというわけです。しかし、それには観賞する施設を造らなければいけない。それを造ってやれば、景観の美は永遠に尽きない。交通も便利になり、飛行機で飛べばすぐ日本に来られますから、サービスさえよくすれば、たくさんの人が外国から訪ねてきて、いわゆる観光立国ができるでしょう。」
今から70年以上も昔から、体験型の観光やサステーナブルツーリズムやインバウンド誘致など、今の観光戦略にも通ずる内容について提唱されております。戦後間もない時期において、既にその重要性を見抜き、現代の観光戦略に通じる考えを持たれていた点は、極めて先駆的であると言えるのではないでしょうか。
特に、私はこの話の中で触れられている「観賞する施設を造らなければならない。それを造ってやれば、景観の美は永遠に尽きない」という文脈が、まさに我が意を得たりで、非常に重要であると感じています。ここでいう施設とは、何も箱物を造るだけではなく、仕掛けや仕組みをつくることであると解釈をしています。
和歌山県には、世界に誇れる文化や歴史、恵まれた自然が織りなす景観美が数多く存在しています。それらを味わうためには仕掛けづくりが重要であり、何の手入れもしていない、ありのままの自然を観賞してくれと押しつけるのは、本当の自然体験、文化体験とは異なるものだと強く感じる次第です。
県のアクションプログラムにおいても言及されているとおり、和歌山県が持つ文化や歴史、自然といった強みを生かして誘客をし、地域と連携しながら持続可能な観光を目指していかなくてはなりません。そのためには、既に存在する豊かな観光資源を観賞するための仕掛けをつくり、その恩恵を地域と共有しながら、持続可能な観光につなげていくことが重要です。
現在、私の地元である白浜町をはじめとする紀南地域においては、6月末にジャイアントパンダが中国に返還されることが発表されて以降、ポストパンダの観光をどうすべきか、官民一体となり、必死に知恵を出し合っているところです。ピンチはチャンスを合い言葉に、今こそ、松下幸之助氏が述べた観光立国の原点に立ち返り、和歌山県の持つ豊かな観光資源を存分に味わっていただくための仕掛けづくりが求められていると考えます。
そこで、宮﨑知事にお伺いします。
岸本前知事がまかれた種を育て、大きな花を咲かせるという思いを継がれた宮﨑県政におかれまして、和歌山県の観光戦略の継承と発展についてどのようにお考えでしょうか。とりわけ、ジャイアントパンダ返還に伴う紀南地域への観光客数の減少が懸念される中にあっては、従来どおりの観光振興策にとどまらない、大胆かつ新たな取組が求められているものと考えます。和歌山県が誇る豊かな自然、歴史、文化といったかけがえのない地域資源を最大限に生かし、観賞のための仕掛けづくりを含めた、持続可能で高付加価値な観光地づくりを一層推進していくべきと考えますが、知事の所見をお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
知事宮﨑 泉君。
〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 三栖議員の御質問にお答えをいたします。
本県は、陽光あふれ、温暖な気候、青い海、緑豊かな山々、清らかな川などの豊かな自然や、多様な信仰によって育まれた世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に代表される貴重な歴史文化、さらには、四季折々の多彩な食材、心を癒やす温泉に恵まれております。
これらの多彩な魅力にあふれた和歌山県は、全ての人を寛容に迎え入れ、まさに聖地リゾートであると考えており、岸本前知事が掲げたキャッチフレーズ「聖地リゾート!和歌山」や精神性、持続可能性、静ひつさや静けさの三つのSをコンセプトとした観光振興に取り組んでまいりたい、このように考えております。
このコンセプトに沿った取組の一つとして、滞在期間が長期間かつ広域周遊の傾向がある欧米豪市場を主なターゲットとする誘客及び高付加価値な観光地域づくりに力を入れ、奈良県、三重県と連携した広域的な取組を展開しているところです。
今後も、さらなる滞在期間の延長や旅行消費額の拡大などに向けた取組を着実かつ強力に進め、本県における観光産業による経済波及効果を最大限に高めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 答弁いただきました。
今、まさに和歌山県の観光における転換期であると思います。観光需要の拡大につなげる絶好のチャンスでありますし、今の知事の答弁にもありますとおり、和歌山県の歴史や文化は、まさに聖地として多くの方々に認知をされ始めているところだと思います。
ただ、世界遺産など、聖地というイメージに結びつく地域に限定することなく、紀南全体であったり、ひいては紀伊半島全体に波及できるような人流を創出していくことが、世界基準に照らしたときに、本当の意味での観光振興であると考えますので、宮﨑知事におかれましては、高い視座を持って、今後の観光施策を実行していただけるようにお願いしたいと思います。
では、次の質問に移ります。
続いては、観光産業における現状と課題についてというテーマで、観光という産業を深掘りしてみたいと思います。
去る5月27日に、政府は、令和7年度版の観光白書を閣議決定しました。この観光白書によると、2024年の日本国内における旅行消費額は34.3兆円となり、コロナ禍前の2019年に比べ、22.8%増加しています。また、観光に付随する経済波及効果としては、40兆円を超えるという試算もございます。この数字は、日本国内全産業の中でも、製造業や小売・流通産業など、日本の基幹産業に次ぐ産業規模となっており、重要な成長産業の一つであると言えます。
もう少し内訳を見てみると、インバウンドの観点では、2024年の訪日外国人旅行者数は3687万人と過去最高を記録しました。訪日外国人旅行消費額は8兆1257億円となり、こちらも過去最高を更新しています。一方で、国内旅行者は、2024年の日本人の国内延べ旅行者数は5.4億人と、コロナ禍前の9割程度に回復。そして、2024年の日本人国内旅行消費額は25.1兆円と、こちらは過去最高になっています。
このように、日本の中で観光産業は成長を続ける貴重な産業であり、本県としても、観光産業の発展・振興を促進することで、経済的な波及効果や関係人口の創出など、様々な恩恵を享受することにつながると考えます。
では、今後どのようにして観光産業の成長をさらに促していくのがよいでしょうか。ここで話を整理するために、訪日外国人旅行者、いわゆるインバウンドと国内旅行者とを分けて考えてみたいと思います。
まず、インバウンドについてですが、先ほど述べたとおり、2024年の訪日外国人旅行者数は3687万人となり、過去最高の数字となっています。そして、今後さらに増加が見込まれており、政府は、2030年までに6000万人を目標に掲げています。2024年に和歌山県を訪れた外国人旅行者宿泊数ですが、速報ベースで約51万人とのことで、これはコロナ禍前の数値を上回って過去最高となっています。したがって、日本に訪れる外国人の数が増えるのに伴い、和歌山県を訪れる外国人旅行者も増えている状況で、観光に携わる方々にとっては歓迎すべき方向に進んでいると考えます。しかし、まだまだ数字としては物足りず、日本全体のインバウンド旅行者3687万人に対して、1.3%程度の51万人しか和歌山を訪れていないとも言えます。
このような単純計算による比較は少し乱暴かもしれませんが、東京や大阪、京都といったインバウンド旅行者で大混雑をしている場所の過密具合を見たときに、和歌山など地方部へインバウンド旅行者を呼び込む施策にもっと注力すべきであると思いますし、本県だけではなく、日本全体で取り組むべきこれからのインバウンド戦略の大きなテーマであると考えます。
観光産業においてインバウンド旅行者を迎え入れる利点は、まず、観光消費額が大きいことです。1人当たりの消費額で見てみると、インバウンド旅行者は、平均すると約22万円程度です。これに対し、国内日本人旅行者の観光消費額は4万円程度であり、インバウンド旅行者は、国内日本人旅行者の5倍以上の消費額を持っています。観光産業への経済的な効果が期待できるのではないでしょうか。
これに加え、インバウンド旅行者が日本を訪れる際の期間や時期についても大きな利点があると考えます。欧米豪などからの旅行者は、長期休暇によるロングステイが多い傾向にあり、一度の訪日で10日以上滞在することが一般的です。そのため、連泊をすることにより、飲食店や交通利用など、地域経済への直接的な波及に加え、長期滞在故の地域との結びつきから生まれる交流、これは関係人口への発展も期待できるものですが、ほかに、文化体験や自然体験を重視した従来の観光資源とは異なる新たな魅力の掘り起こしが期待できるなど、観光振興と持続可能な地域づくりを両立させる可能性を秘めています。
他方、アジア圏においては、3から5日程度の短期滞在型が多く見られます。しかし、中国の春節に代表されるように、日本の国内旅行のハイシーズンとは異なる時期に大型連休を迎えるため、観光産業としては閑散期とも言える時期に多くの集客が期待できるという、日本の観光において重大な弱点を補完できるという利点がございます。
このように、インバウンド旅行者を迎え入れることは、従来の日本国内旅行者に取って代わるものでもなく、単純に観光客数が増えて上乗せされるだけでもない、地域経済、文化、観光産業の持続可能性に多面的な恩恵をもたらすものだと考えています。
一方で、日本人国内旅行者についてはどうでしょうか。
こちらも前述の観光白書によると、2024年の国内旅行者数は5.4億人で、国内旅行消費額は25.1兆円と過去最高を更新しています。昨今、メディアの報道を見ていますと、インバウンドが増えたことにより日本の観光地が大混雑し、オーバーツーリズムの状態に陥っている地域が増えているとのニュースを目にすることが増えました。しかし、繰り返しになりますが、2024年の日本人国内旅行者数は5.4億人であり、日本人国内旅行消費額は約25兆円です。この数値は、インバウンドも含めた国内旅行消費額全体約34兆円の7割を超えており、まだまだ日本の観光産業においては、インバウンドよりも国内旅行がメインであることが分かると思います。
特に和歌山県など地方部においては、延べ宿泊者数の日本人割合は約9割であり、地方部の旅行需要は日本人が下支えをしていると、観光白書でも明確に指摘をしているところです。さらに、旅行単価は物価上昇等により増加傾向にあるが、日本人国内延べ旅行者数や旅行経験率は長期的に伸び悩み、今後はさらに人口減少、少子高齢化が進む中で、国内交流の拡大に一層取り組む必要があるとも述べています。
では、このように伸び悩みをする日本人国内旅行をさらに促進するために必要なことは何か、取り組んでいくべき課題について考えてみたいと思います。
国内旅行の大きな特徴は、大型連休、夏季休暇、年末年始などの連休に旅行が集中するという時期の偏りであると考えます。欧米豪や一部アジアの訪日客は長期休暇を活用した分散型で長期滞在型の旅行が一般的であるのに対し、日本人旅行者はカレンダーに縛られた短期集中型旅行が中心です。日本人の有給休暇取得率は、厚生労働省の最新調査で65.3%と過去最高を記録しましたが、依然として、主要欧米先進国ではほぼ完全消化が一般的であり、個人の働く意識を変えていくことは容易なことではありません。
平日は働き、土日に休むという方が大多数の中で、旅行をする場合、どうしてもカレンダーどおりの旅行計画を立ててしまいます。そうすると、例年、ゴールデンウイークは観光客で過密状態になって高速道路も大渋滞するのが当たり前の光景になっていますが、いざ連休が明けた平日は、観光地も宿泊施設も閑散とした状態になっているのが現実です。これは、星野リゾートを経営する星野佳路氏の表現を借りると、観光産業は、年間100日の黒字と265日の赤字で成り立っている状態です。つまり、ほとんどの国内旅行者が大型連休や土日といった休日に訪れており、それ以外の平日は閑散として、経営としては赤字状態であるというわけです。
これは、観光産業における構造上の問題であり、繁忙期と閑散期の差が激しいために、正規雇用より非正規雇用の労働者に依存をしており、結果として、観光産業従事者の所得が上がらないことにつながっています。実際のデータを見ても、観光産業は、ほかの全産業と比較した場合、賃金や労働生産性の面で大きく下回る結果が出ております。需要については、コロナ禍で大きく落ち込んで以来、順調に回復を続けているものの、供給する側の観光産業においては、依然として人材不足や労働生産性の低さなど、課題が顕在化している状況です。
そこで、質問です。
観光産業は、日本における重要な産業の一つであり、産業規模が年々大きくなっている数少ない成長産業であります。和歌山県は、高野や熊野、日本有数の美しいビーチなど、世界基準と呼べる観光資源を有しており、観光産業をより一層成長させるポテンシャルを秘めていると考えます。しかし、先ほど指摘をさせていただいたとおり、観光産業には構造的に幾つかの大きな課題を抱えているのも事実です。県として、現状の観光産業が抱える課題について、どのようにお考えでしょうか。地域振興部長にお尋ねします。
○議長(岩田弘彦君) 地域振興部長赤坂武彦君。
〔赤坂武彦君、登壇〕
○地域振興部長(赤坂武彦君) 議員御指摘のとおり、観光産業は、人手不足や労働生産性の低さ、観光需要の偏りなど、構造的な課題を抱えていることは認識しております。
本県においても、宿泊施設では、客室を制限した営業や電話やファクス等により予約受付の対応をしている事例などが見受けられます。また、県の観光客動態調査によると、閑散期は繁忙期の約半数の宿泊者数となっており、安定した雇用が困難な状況となっております。
このような課題に対して、県としても、観光客が県公式観光ホームページを通して予約と決済が可能なシステムの構築や、多様な人材を引きつけるための働きやすい環境整備などに取り組んでいるところです。観光産業は、農林水産業や製造業等の幅広い分野にわたる裾野の広い総合産業であり、和歌山県の地域経済を活性化させる重要な産業であることから、これらの課題解決に向けた取組を着実に進めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 御答弁いただきました。
観光産業において構造的な課題があるという共通認識を持っていただいていると聞き、ひとまず安心をしておりますが、人手不足や労働生産性の低さ、また需要の偏りなど、課題は本当に様々だと思っています。もちろん答弁の中にあったデジタル化を推進するなど、観光の現場で取り組むべき施策は、並行でやっていく必要もあると感じておりますが、もっと大胆に取り組まないと、現状を打破することは難しいのではないかと危惧をしております。引き続き、観光産業の現場に寄り添って、課題解決に取り組んでいただきたいと思います。
じゃ、続いて、次の質問に移ります。
先ほど、観光産業の構造的な課題があると指摘をさせていただきました。私なりに観光産業について研究を進めていく上で、やはり観光需要の平準化を目指していくべきであると考えています。
では、この平準化を具体的にどのような施策で取り組んでいくのか。ここで少し海外に目を向けてみたいと思います。
観光産業は、今や世界経済において、製造業、金融、ITと並ぶ基幹産業の一つと位置づけられております。世界観光機関の報告によれば、2024年の世界全体の国際観光客数は14億4500万人を超え、既にコロナ禍前の水準にほぼ回復しております。また、世界全体の観光産業の経済規模は、世界GDPの約10%、総額にして10兆ドル、日本円で約1500兆円規模とも推計されており、世界経済の中核産業の一角を形成しております。雇用面でも、世界で約3億人が観光産業に従事し、特に地域経済の振興、雇用創出、文化交流の促進において、観光は極めて戦略的な役割を果たしていると、国際的にも高く評価されております。
ちなみに、2023年の外国人旅行者受入れ数で、世界1位がフランスの1億人、2位がスペインの8520万人となっています。日本は、世界15位の2510万人で、アジアでは、タイに次いで2番目に多い数字となっています。フランスやスペインは、世界中の旅行者が訪れる、まさに観光立国と言える場所であり、国策として観光産業を支える取組を進めています。
観光需要の平準化を目指す上での代表的な施策が休暇の分散化です。例えばフランスでは、国内を三つのゾーンに分けて、2月と4月にそれぞれ2週間ずつ休暇を設けているそうです。そうすることで、夏と同様のバケーション需要がスキーシーズンと春の行楽シーズンに新たに生まれることにつながっています。また、スペインでは、国が定めた祝日とは別に、県及び市町村がそれぞれ2日ずつ祝日を設けることができるそうです。結果として、どの平日であっても国内のどこかの地域が祝日となり、平日と土日の差を少なくすることにつながっています。文字どおり、世界の観光大国とも言えるフランスやスペインにおいて、需要の平準化につながる施策を実施しているところに重要な示唆があるように感じます。
また、国内でも類似の事例が出てきています。愛知県では、令和4年に県政150周年を迎えたことを契機として、11月27日を「あいち県民の日」とする条例を定めました。そして、あいち県民の日を含む直前1週間、11月21日から27日までを「あいちウィーク」と定め、期間中、県の施設などが割引や無料で利用できたり、愛知県の魅力を発信するイベント等が県内各地で行われているそうです。
なお、このあいちウィークは、愛知県「休み方改革」プロジェクトの一環として取り組むこととしており、県内の学校では、あいちウィーク期間中の1日を県民の日学校ホリデーに指定し、休業日とすることになったそうです。
先日、和歌山大学観光学部の学生たちと意見交換をする機会があり、あいちウィークについて研究をしているとのことで、いろいろな話を伺いました。やはり休暇が分散されることで、愛知県はもとより、近隣の岐阜県や三重県などで愛知県民の方が多く訪れたというのがデータとして表れているとのことでした。このあいちウィークの取組は、昨年の8月に福井県で行われた全国知事会議でも、愛知県の大村知事から御紹介があり、議論に参加された当時の和歌山県知事である岸本前知事も、県民の日について前向きなコメントを残されております。
このように、休暇の分散化については、観光需要の平準化を目指す上で一定の有用性があるように感じますが、必ずしもこれだけが正解ではないことも理解をしているところです。
そこで、質問です。
観光産業の構造的な課題を解決するためには、需要の平準化を目指すことが重要であると考えます。県として、需要の平準化を目指すための施策や取組について、地域振興部長の所見を伺います。
○議長(岩田弘彦君) 地域振興部長。
〔赤坂武彦君、登壇〕
○地域振興部長(赤坂武彦君) 議員御指摘の観光需要の平準化については、閑散期の来訪者増加による年間を通じた収益の安定性や労働生産性の向上が見込めることから、大変重要な取組であると考えております。本県では、平日にも需要が見込める客層として、教育旅行をはじめ年金旅行、ワーケーションなど、多様な誘致活動を展開しているところです。また、休暇時期などが日本と異なるインバウンドを積極的に誘客することとしており、今年1月には、ゴルフツアーを組み込んだ韓国ソウルと白浜間を結ぶチャーター便がほぼ満席となるなど、閑散期となっている冬場の誘客に寄与したところです。
今後とも、様々な施策を展開することにより、観光需要の平準化につながるよう取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 今の答弁を聞きながら、なかなか観光部局としては答えづらい質問に対して努力をしていただいたんだろうなというふうに受け止めています。ただ、需要の平準化、特に旅行者も消費額も大きい国内旅行者の需要を平準化していくというのは、端的に言うと、休みを分散させることは、やっぱり一番近道じゃないかなというふうにも考えています。
全国で見ると、先ほど例に挙げた愛知県のほかに、関東の東京都を含む1都5県では、県民の日というものが独自に設定されて、休みとして運用がなされているようです。和歌山県も、11月22日がふるさと誕生日という県民の日に指定をされておりまして、こちらは、県の施設であったりとか、いろんなところが無料であったり割引で使えるということで、今運用をされていると思います。ただ、休暇を導入するところまでは至っていないのが現状であると認識をしています。
まず、この最も分かりやすくて、かつ県単位で取り組みやすい県民の日というのをお休みに充てるところから試してみるのもいいんじゃないかという御提案をさせていただいて、この質問を締めくくらせていただきたいと思います。
では、続いて、最後の質問になります。
岸本前知事が特に強い思いを持って推進してこられた熊野白浜リゾート空港の滑走路延伸計画について、宮﨑知事のお考えを伺います。
この件については、2月定例会においても私のほうから一般質問をさせていただき、現時点での検討状況と実現に向けて取り組むべき内容について、当時の岸本前知事に答弁を求めたところです。その中で、岸本前知事は、2029年度に30万人の利用者を目標に、利用促進施策を強力に実施し、さらに、滑走路延伸後には利用者数を50万人程度まで伸ばしたいと力強く述べておられたのを聞き、大変心強く感じておりました。さきの知事選において、宮﨑知事も街頭でマイクを握った際に、滑走路延伸について触れられ、継続して取り組んでいくという趣旨の訴えをされているのを聞き、安心をしたところですが、費用対効果を得るためには、超えなければいけない目標達成についての困難さにも言及をされておりました。
そこで、宮﨑知事に単刀直入にお伺いします。
熊野白浜リゾート空港の滑走路延伸計画について、岸本前知事の思いを継承し、継続して取り組むお考えでしょうか。知事の所見をお聞かせください。
○議長(岩田弘彦君) 知事。
〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 現在、熊野白浜リゾート空港につきましては、10年前に比べて2倍となる年間20万人以上が利用しており、非常に好調な状況であります。周辺地域には、世界遺産である紀伊山地の霊場と参詣道や豊富な温泉資源、美しい自然が数多く存在しており、人口、経済の中心である首都圏や成長する東南アジアなど、国内外からこれまで以上の誘客が可能であると見込んでおります。
そのためには、紀南地域への空の玄関口である熊野白浜リゾート空港をより積極的に活用することが重要です。今後、利用者の増加に伴う国内線機材の大型化や様々な地域からの国際線の受入れに対応するためには、滑走路延伸が必要となると考えております。国庫補助を得て滑走路を延伸するためには、費用対効果を上げなければならず、また、国土交通省の指針によれば、主要路線である羽田線の利用者数が年間50万人以上となる需要予測を求められることから、多くの方に利用してもらうことが必要です。まずは、2029年度に年間利用者数を30万人にすること、その上で、滑走路延伸後に50万人とすることを目標に、航空会社や市町村と連携し、全庁を挙げて利用促進策に取り組んでまいります。
空港周辺の環境調査に加え、何より、地域住民の理解を得ることが必要であります。昨年度の調査で、技術的には可能との結論が出ており、私としては、滑走路延伸に向けた準備を着実に進めてまいりたいと考えております。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 知事に答弁いただきました。
滑走路延伸に向けた準備を進めていくという意気込みを改めて聞かせていただき、安心をしたところでございます。
様々なハードルがあることは確かでありますし、賛否両論の意見が出てくることも予想されます。しかし、地元選出の議員として、微力ではございますが、しっかりと応援をさせていただきたいと思います。ただし、その際には、延伸を乗り越えた先にある新しいこの空港の形であるとか地域の姿などのビジョンを、ぜひ県民の皆様にお示しをしていただきながら、高いハードルに向かってチャレンジしていきたいと思いますので、そのことをお願いさせていただいて、私の一般質問を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 以上で、三栖拓也君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩します。
午前11時26分休憩
────────────────────
午後1時0分再開
○副議長(秋月史成君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
1番高田英亮君。
〔高田英亮君、登壇〕(拍手)
○高田英亮君 皆さん、こんにちは。
質問に入ります前に、宮﨑知事の御就任に心よりお祝いを申し上げます。県勢の発展に御尽力いただきますようよろしくお願いいたします。
それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
紀の川市で2015年2月に起こった児童殺害事件から、今年で10年の月日がたちました。当時、小学校5年生の男の子が自宅近くの空き地で遊んでいたところ、近所に住む男に刃物で刺されて亡くなった痛ましい事件であります。10年がたった今もなお、御家族の苦しみや悲しみは癒えることはありません。亡くなられた男の子の御冥福をお祈りするとともに、このような痛ましい事件が二度と起きないことを祈ります。
今回の一般質問では、一つ目の質問として、犯罪被害に遭われた方、そして、その家族に対する支援についてお伺いしていきたいと思います。
平穏な暮らしを送っている中で、突然、犯罪や事件に巻き込まれると、その日を境にそれまでの生活が一変し、犯罪被害者、その遺族としての苦しみが始まります。何より、亡くなった人との未来を思い描いていた遺族にとって、大切な家族を突然奪われた悲しみ、喪失感は計り知れないものだと思います。
事件の直後は、ショックのあまり、亡くなったという事実を受け入れることができない、感覚が麻痺して何もする気力が湧かない、眠れない、食事を取ることができないなど、心や体に様々な不調が生じると言われています。
また、何年たっても事件の記憶は頭を離れることがなく、怒り、恐怖、後悔など、様々な思いが長きにわたって被害者や遺族の心を苦しめます。こうした苦しみや悲しみを少しでも和らげるよう、被害者の心情に寄り添った支援が必要です。
生活を送る上でも、被害者の苦労は大変なものです。けがの治療費や亡くなった際の葬祭費、転居費用など、経済的な負担が重くのしかかる一方で、家計を担っていた人を失ったり、後遺症などによって従来どおりの仕事ができなくなったりすると、収入が途絶えてしまい、日々の生活をどうやって送ればいいのか深刻な問題に直面します。
また、訴訟を起こした場合には、弁護士費用などもかかりますし、たとえ裁判で損害賠償請求が認められても、加害者が支払わない場合には損害賠償金を受け取ることはできず、何の補償も受けることができないまま時効が到来してしまうおそれもあります。
さらに、周囲からの被害者の心情に配慮しない安易な励ましや慰めの言葉、興味本位の質問などによって、傷つけられることもあると聞きます。
このように、犯罪被害者は、様々な困難に直面し、長期間ストレスにさらされることで心身の不調を来し、日常生活もままならない状況に追い込まれることがあります。犯罪に遭われた方々が再び平穏な生活に向け一歩踏み出せるよう、一人一人に寄り添った温かく途切れのない支援が必要であると思います。
そこで、犯罪被害者等の支援に関して、現在、県としてどのように取り組まれているのか、環境生活部長の答弁を求めます。
○副議長(秋月史成君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
環境生活部長湯川 学君。
〔湯川 学君、登壇〕
○環境生活部長(湯川 学君) 県では、2019年に制定した和歌山県犯罪被害者等支援条例に基づき、2020年に和歌山県犯罪被害者等支援基本計画を策定し、犯罪被害に遭われた方などへの支援に取り組んでいるところでございます。
具体的には、県警察本部や公益社団法人紀の国被害者支援センター等と連携し、支援体制の整備を行うとともに、被害に遭われた方などが直面している問題に対し、相談やカウンセリングなどの支援を行い、精神的被害等の回復を図っております。
また、経済的支援としまして、弁護士による無料法律相談の実施や、国の犯罪被害者等給付金が支給されるまでの間、必要となる医療費や転居費等を支援する生活資金の貸付けなどを行っております。さらに、加害者から損害賠償金が支払われず、消滅時効が迫っている場合、時効を更新するため、再度、損害賠償請求訴訟を提起する費用の助成を今年度から新たに行うことといたしました。
その他、犯罪被害に遭われた方の心情に配慮することの重要性に対する理解を深めていただくため、大型商業施設等におけるパネル展示や街頭啓発を実施するとともに、市町村担当職員に対する研修会を開催しております。
○副議長(秋月史成君) 高田英亮君。
〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁いただきました。
県では、相談支援や経済的支援など、様々な支援に取り組まれており、特に、今年度から、時効を更新するため再提訴する費用を助成する制度を始められるなど、新たな取組も進められているとのことでした。ぜひとも広くこうした制度を知ってもらえるよう、周知啓発をよろしくお願いいたします。
次に、今後の取組についてであります。
県において、犯罪被害者等に対して総合的な支援に取り組まれていることは理解をいたしました。ただ、先ほど申し上げたとおり、被害に遭われた方の悩みは、被害直後の心身の不調から経済的な問題、仕事や住居など生活面のものまで多岐にわたっており、時間的にも中長期的な視点に立った継続的な支援が求められます。
このような被害者の多様なニーズに対応して、支援する主体も、県や警察をはじめ、国、市町村、支援団体など、様々であることから、どのような支援があって、どこに行けば支援を受けられるのか、被害者にとって分かりにくくなっているのではないかと思います。
悲しみが癒えず、心身ともに疲れ切っている被害者や家族にとって、適切な支援先を探すのは大変なことです。支援があるのですから、負担なく、必要なときに必要な支援にすぐにたどり着けるようにできればと思います。
そこで、お伺いします。
以上を踏まえ、犯罪被害に遭われた方への支援に関し、負担軽減を図る観点から、今後、県としてどのように考えているのか、環境生活部長にお尋ねします。
○副議長(秋月史成君) 環境生活部長。
〔湯川 学君、登壇〕
○環境生活部長(湯川 学君) 議員御指摘のとおり、犯罪被害に遭われた方は、被害直後から精神的、身体的な苦痛を強いられ、また、その後も、経済的な問題など様々な悩みを抱えることになります。さらに、被害に遭われた方やその御家族が自ら支援機関・団体を探すことや、被害状況を繰り返し説明することによりつらい体験をその都度思い出すことは、大変大きな御負担となります。
今後は、これまでの取組に加え、県警察本部や支援機関・団体とより一層連携し、いずれかの窓口に一度御相談をいただければ、途切れることなく支援を受けられるような仕組みをつくり、また、その周知を図ることで、犯罪被害に遭われた方やその御家族などの負担をさらに軽減してまいりたいと考えております。
○副議長(秋月史成君) 高田英亮君。
〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁いただきました。
犯罪によって大切な家族を亡くされた方の悲しみや被害に遭われた方の苦しみは、消えることはないと思います。日常生活を送ることだけでも大変なことだと思います。ですが、少しでもその悲しみや苦しみを和らげることができるように、県としても、関係機関と連携して寄り添った温かい支援を充実させていただきますようよろしくお願いします。
それでは、次の質問に移ります。
魅力ある学校づくりについてであります。
加速化する少子化などの影響で、どうしても生徒数が減る傾向にありますが、こうした状況だからこそ進学したいと思ってもらえるよう、学校の魅力や特色づくりにより一層取り組む必要があると思います。
そこで、一つ目の小項目として、地域との連携についてお伺いしたいと思います。
私の地元の紀の川市にある貴志川高校は、人間として生き抜く力を身につけた地域と社会に役立つ人材を育成することを目標として、これまで地域の社会や産業を支える人材を多数輩出してきました。生涯学習のまち、旧貴志川町における文教施設の中心であり、人口減少下にあっても、地域の元気を支える存在であり続けてほしいと願っております。
先日、貴志川高校を訪れ、校長先生とお話しする機会がありました。そこで校長先生は、「地域と一緒になって活動していきたい、生徒たちを地域にどんどん出していきたい」とおっしゃっていました。私もまさに同感であり、地域に愛され、地域と共にある学校づくり、それが貴志川高校を盛り上げる一つの鍵ではないかと考えております。
実際、貴志川高校の生徒たちは、校内にとどまらず地域に飛び出し、地域を盛り上げるボランティア活動に熱心に取り組んでおります。例えば、アートの力で地元を元気にしたいという思いの下、貴志川高校美術部と貴志川中学美術部が一緒になって3年前から毎年ウオールアートを制作し、和歌山電鐵貴志川線の西山口駅のホームに設置する活動を行っております。猫のたま駅長も登場する明るく彩られたアート作品は、地元の人から「駅が明るくなった」、「元気をもらえる」と好評を博しております。
また、高校の近隣には、県下最大級のため池である平池があり、周辺の緑豊かな環境に遊歩道や広場が整備され、平池緑地公園として地域の憩いの場となっていますが、そこで毎年12月になると、約11万球のLED電球を使用した幻想的な光のイベントである貴志川イルミネーションが催され、多くの来訪者でにぎわっています。貴志川高校の生徒たちは、このイベントにおいても地域の団体や住民の人たちと一緒になって、イルミネーションを手作りで制作して、池の周りに色とりどりの装飾を飾りつけ、地元のにぎわいづくりに一生懸命取り組んでおります。
そのほか、地域の清掃や、小学校や図書館での読み聞かせなど、地域貢献活動に積極的に取り組んでおり、こうした取組は地元の人たちからの信頼を得ることになりますし、何より年の離れたいろんな年代の大人と関わることで、多様な価値観や考え方を学び、視野を広げることができ、生徒自身の成長につながるものだと考えます。
地域に愛され、地域で生き生きと活躍する生徒を育てることは、学校の魅力向上につながるものと考えます。
そこで、お尋ねします。
高等学校の魅力を高める方策として、地域との連携が重要と考えますが、教育長の考えをお聞かせください。
○副議長(秋月史成君) 教育長今西宏行君。
〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) これからの学校には、社会に開かれた教育課程の実現や地域と共にある学校づくりが求められています。そのために本県では、コミュニティスクールを推進し、地域との連携をより充実発展させているところです。
議員の御発言にもありましたように、貴志川高等学校では、毎回100人を超える生徒による地域清掃活動や、紀の川市と連携し、地元保育所の子供たちと一緒にチューリップの苗を植える花いっぱい運動など、地域に根差した活動を行っております。
貴志川高等学校をはじめ、様々な高等学校で、このような地域との連携に取り組んでいます。地域に出ていき、地域の課題と向き合う取組は、生徒を大きく成長させるとともに、地域の活性化や地域を担う人材育成にもつながると考えておりますので、県教育委員会ではしっかり支援してまいります。
今後も、地域の声を積極的に生かし、地域と共にある学校づくりを進めてまいります。
○副議長(秋月史成君) 高田英亮君。
〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁いただきました。
地元の高校は、地域にとって活力の源であり、地域は高校生にとって学びの場であると思います。高校生たちが地域のいろんなイベントに参加してくれたり、ボランティア活動に加わってくれると、地域に活気が出ます。高校生たちにとっても、地元のいろんな人と一緒になって同じ目標に向かって取り組むことは、知見を広げ、貴重な経験になると思います。高校と地域の連携が進むよう、県教育委員会としてしっかりと取り組んでいただきますようよろしくお願いします。
次に、外部指導者活用による文化部の活性化についてであります。
ここでは、高等学校の文化部の活性化について取り上げたいと思います。
部活動は、生徒の自主性や創造性を引き出すとともに、生徒の心身の成長や豊かな学校生活の実現など、学校教育に欠かすことのできないものです。先ほど質問しました地域との連携に加えて、部活動を盛り上げることも学校の魅力向上につながると考えます。
貴志川高校では、吹奏楽部が地域と連携した活動を積極的に行っております。地元貴志川では、まちを音楽でいっぱいにしようと、住民が主体となって地元のホールで演奏会を開催するなど、音楽によるまちおこしの活動が盛んでございます。貴志川高校の吹奏楽部も、こうした演奏会や文化祭等に招かれ、地域の人を前にすばらしい演奏を披露してくれています。高校生たちにとって、たくさんの人の前で演奏することで自信もつくでしょうし、もっと上手になりたいという向上心も生まれると思います。
ただ、部活動の中には、今申し上げた吹奏楽部のように専門性が高いものもあり、詳しい先生が指導してくれればよいのですが、なかなかそういう先生がいつもいるわけではなく、顧問の先生だけでは継続的で質の高い専門的な指導が難しいケースがあるかと思います。実際、貴志川高校の吹奏楽部では、外部から音楽大学出身の専門的な指導者に来ていただき、指導を仰いでおります。外部の先生の専門的な指導のおかげで、部員一人一人の技術も上達するとともに、部全体の活気も出てきていると聞いています。
音楽、美術、演劇、茶道、華道など、それぞれの専門分野に精通した外部指導者を招聘することで、より専門的な指導を受けることができますし、外部指導者の持つ専門知識や経験によって部活動のレベルを向上させ、生徒のモチベーションを高めることも期待できます。また、外部指導者の存在は、生徒にとって新たな目標や刺激となり、部活動の幅を広げることにもつながります。
あの高校に行けば、部活動で専門的な指導を受けることができるということが広まれば、志望動機の一つになると思います。
そこで、お尋ねいたします。
外部指導者の活用によって、文化部を盛り上げることが学校の魅力づくりに寄与すると考えますが、県の取組はいかがでしょうか、教育長の答弁をお願いします。
○副議長(秋月史成君) 教育長。
〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 地域に在住する専門性を持つ方に文化部の外部指導者として協力いただくことで、部活動が活性化するとともに、生徒と地域の方々との交流が広がると期待されます。
このことから、専門的な技術指導を必要とする高等学校に対して、文化部の外部指導者を派遣する事業を本年度から実施しております。
引き続き、高等学校の文化部の活動を充実させ、学校の魅力化につながるよう取組を進めてまいります。
○副議長(秋月史成君) 高田英亮君。
〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁いただきました。
先ほど申し上げましたように、貴志川高校では、吹奏楽部の外部指導者による丁寧な指導の下で生徒もめきめきと上達し、クラブに行くのが楽しみといったような活気も出てきていると聞いています。今年度から外部指導者の派遣事業を実施されているとのことですので、引き続き、外部指導者による文化部の活性化をよろしくお願いします。
あわせて、貴志川高校では、少人数教育のメリットを最大限に生かして、生徒一人一人を大切にし、個々の進路希望に沿い、得意科目を大きく伸ばせるようなきめ細かな学習指導に力を入れていると聞いております。丁寧に指導してもらったおかげで、積極性が出てきて学業やクラブ活動を頑張り、希望の進路に進めるようになった生徒もいるとのことです。
生徒一人一人のこういうことを学びたい、こうなりたいという希望に寄り添い、かなえられるような学びの環境を用意することも、魅力ある学校づくりを進める上で重要と考えます。こうした生徒一人一人に応じた学びや地域との連携など、高校が自らの魅力づくりや特色化を進められるよう、県教育委員会として一層の取組をお願いしたいと思います。
これで、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(秋月史成君) 以上で、高田英亮君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
6番濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 皆さん、こんにちは。本日最終の質問者です。いましばらくお付き合いをお願いいたします。
まずは、宮﨑泉新知事、改めまして御就任おめでとうございます。岸本知事の思いも寄らなかった急逝に伴う突然の出馬要請に対し、和歌山県民と県の発展のために人生の大きな決断をなされました。その責任感と勇気に深く敬意を表します。宮﨑新知事をかじ取り役として、県議会、県当局、全ての皆様で力を合わせ、頑張りましょう。
それでは、議長のお許しをいただきましたので、一般質問を始めさせていただきます。
一つ目、大阪・関西万博についてであります。
大阪・関西万博が4月13日に開幕いたしました。皆さんも御存じのことでありますが、万博会場にある関西パビリオン和歌山ゾーンでのオープニングイベントが岸本前知事の最後の公務となってしまいました。岸本前知事は、生前、「万博会場で来場者をあっと驚かす仕掛けをしたい」、「誰も和歌山県の展示に期待をしていないからこそ、世界中に和歌山ってすごいと思わせたい」とおっしゃっておられました。和歌祭のみこしを威勢よく担いでいたシーンは、今でも思い出されます。
さて、万博につきましては、当初見込まれていた会場建設予算が物価高の影響で増大したとか、チケットの売れ具合が芳しくないとか、会場の安全確保が不十分だとか、開幕前から開催自体に否定的な声が多く聞かれました。
個人的には、開催地の誘致に多くの関係者が全力を注いでいただいたおかげで勝ち取れた国際的なビッグイベントであります。時間的にも厳しいと言われた会場、各国のパビリオンの建設につきましても、建設業界はもとより、多方面の業界の並々ならぬ御尽力があったからこそ開催が実現できたわけです。
万博による効果は、開催期間中だけでなく、その後の努力次第では経済効果をつくり出す可能性があります。そう考えますと、決してマイナスになるどころか、レベルの高い日本の技術力や文化を世界にアピールする絶好のチャンスであり、必ずや本県、ひいては関西の活性化に向けた活力になるイベントだという認識を持っていましたので、マスコミやネットを通じて批判的な発言をされる方々に対し、「わざわざけちなどつけずにもっと素直に盛り上がればええのに」という思いから、これまでも一般質問で取り上げ、県民の皆さんに御理解いただけるようにと応援してまいりました。
連日の報道によりますと、徐々に来場者数も上向きになり、逆に、入場が困難であるとか、パビリオンに入るまでの待ち時間が長いなど、盛況ぶりが伝えられています。また、関西パビリオンの中でも和歌山ゾーンは評判がよく、多くの来場者でにぎわっているという話も聞こえてきます。
そこで、約2か月がたった現在の万博会場における和歌山県の取組状況やこれまでの結果について、知事室長にお聞きをいたします。
○副議長(秋月史成君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
知事室長北廣理人君。
〔北廣理人君、登壇〕
○知事室長(北廣理人君) 大阪・関西万博が開幕して2か月が経過をいたしました。県では、常設の関西パビリオン和歌山ゾーンにて、和歌山百景をテーマに、展示や映像、食などを通じて県の魅力を余すところなく発信しております。
4月末から5月中旬にかけましては、地場産業を中心に、梅酒などの試飲試食や物づくり体験、産品の販売などを行った和歌山WEEKの開催、また、関西パビリオン多目的エリアにて、地域ごとに魅力を発信するイベントを開催したところでございます。それらの結果として、和歌山ゾーンにおきましては、当初の来場計画の約1.6倍となる1日平均約2600人もの方が来場されております。
次に、4月30日から5月3日までの4日間開催した和歌山WEEKにおきましては、1日平均約1万1500人の方が来場され、産品の販売につきましては、約560万円の売上げがあり、非常に好評を得るものとなりました。また、5月6日から5月18日まで開催した多目的エリアでのイベントでは、1日平均約4400人の方が来場され、各地域の文化や産品について大いに発信することができたと考えてございます。
今後も、海外パビリオンと連携したイベントや海外メディアに対するプロモーションなど、効果的な企画に取り組み、国内外に和歌山県を大いに発信してまいりたいと考えてございます。
○副議長(秋月史成君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
次、2問目に入ります。
先ほども申し上げましたが、開幕前は、財政事情も厳しく、多くの社会課題を有する日本が今さら万博を開催する意味がどれだけあるのか、また、海外パビリオンの建設の遅れや会場の安全性はどうかなどの多くの意見がありました。
とはいえ、本万博は、「未来社会の実験場」をコンセプトに、新たな試みにチャレンジする企業や人たちの世界の英知を集め、未来社会を共創することによる効果は計り知れないものになると期待する声は日増しに大きくなっている感があります。
160近くの世界の国や地域がリアルに一つの場に集う機会となり、多様な価値観が交流し合うことで、日本が抱える諸課題の解決の糸口となり、また、日本の企業や海外のパビリオンでも最先端技術を駆使した展示を行うなど、ビジネスへの進展も期待できるのではと考えます。何より、様々な課題を抱える日本ではありますが、半年間もの長期にわたる国際的なビッグイベントを開催できる底力があることを世界中に証明する機会であると言っても過言ではないと思います。
そのような中で、万博を一時的なお祭りで終わらせるのではなく、和歌山県の経済や地域活性化を促進させるためのツールとすべきであることは、周知の事実であります。万博を契機に国内外に本県の魅力を存分に発信することで、県内への誘客を促進し、また、先端技術などを展示する企業などへ働きかけることなどで、県内で新たな産業、サービスが創出され、好循環が生まれるのではないかと期待しているところです。
さらに、会場には、世界各国の人や物が集まり、最先端技術や文化、芸術などが展示され、これまでの万博と同様、次世代に普及すると思われる新たな革新があり、また、これまで交流が少なかった国との交流を図るきっかけとなる場と考えられます。
そこで、県では、万博後も含め、万博の効果を県内に最大限波及させるためにどのように取り組んでいく所存なのか、宮﨑新知事の意気込みをお聞かせください。
○副議長(秋月史成君) 知事宮﨑 泉君。
〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 大阪・関西万博は、和歌山県経済や関西経済、ひいては日本経済全体に大きな影響を与えるものであり、その効果を県内に最大限波及させることが重要であると認識をしております。また、直接的な経済効果に加え、産業の振興や国際的なプレゼンスの向上といった間接的な効果も期待されます。
まず、観光面では、万博を訪れた方々の県内への誘客を図るため、常設の関西パビリオン和歌山ゾーンや期間限定の多様なイベントを開催することにより、魅力を発信するとともに、それらの出展に関連したツアー商品を企画し、旅行会社などに働きかけを行っているところです。
次に、万博を契機に生まれた技術やノウハウを呼び込むため、次世代のモビリティーである空飛ぶクルマの県内の実用化に向け、関係する企業と連携協定を締結するなど、取組を進めています。
また、万博は、世界中の国々がリアルに集まっている場であり、本県の歴史文化や食などを紹介する交流イベントなどの開催を通じて、様々な国々との関係性を築き深めていくことも重要であると考えています。さらに、万博閉幕後も交流を継続し、世界との結びつきを深めることにより、本県が国際都市として発展し、県全体の活性化につながるよう期待しています。
岸本前知事が和歌祭のみこしを担いだ映像を見て、専門家の方の話で、「とてもあのように担げるような状態ではなかったはずだ」と、「どんな力が働いてあのようなことができたのか本当に分からないな」というふうに言われました。そういう意味からも、今後も時を逸することなく、関係各所に働きかけを行い、万博効果を県内に最大限波及できるよう精いっぱい取り組んでまいります。
○副議長(秋月史成君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
今、宮﨑知事がおっしゃられたように、岸本知事も大変この万博には力を入れてこられていたのはよく皆さんも承知の上だったと思います。ぜひその思いもつなぐ意味で、和歌山県のパビリオンを盛り上げていただきたいのと、それと、今申し上げました10月で閉幕をしてしまうわけですけども、間髪を入れず、熱が冷めやらないうちに次の段階へ進めるように、大変ですけども、御準備をお願いしたいと思います。
続いて、2番目の質問に入らせていただきます。
看護師の確保対策についてであります。
看護師不足の現状と対策について申し上げます。
今年3月、NHKで「全国6割以上の病院が赤字『地域医療は崩壊寸前』」とショッキングなタイトルの報道がありました。病院団体から、物価高などの影響で多くの病院が深刻な経営難に陥り、全国6割以上の病院が赤字になっているとの調査結果が公表され、国に対策を求めているという内容でありました。
しかしながら、地域医療が経営難を招いている原因は、物価高の影響だけでしょうか。医師不足と同様に、いや、それ以上に深刻なのは、医療従事者のうち最も多くを占めている看護師の不足問題ではないでしょうか。私の地元、新宮市立医療センターのように、看護師が不足していることで病床の一部が使えなくなっている病院もあると聞いています。
令和元年に厚生労働省が取りまとめた看護職員の需給推計によりますと、和歌山県では、超過勤務を10時間以内にし、なおかつ有給休暇を5日以上10日未満取得できるようにするためには、令和7年では約300人が不足するという結果となっています。また、県医務課が実施した令和6年の看護実施状況調査を集計しますと、和歌山県内の病院全体で436人不足という結果が出ています。
このように、医療を支える看護職の従事状況は危機的であるということを、今年4月のなぎ看護学校入学式に出席した際にも実感いたしました。1学年の定員は40名、コロナウイルス感染症が拡大する前までは、かなり競争率の高い狭き門との印象が強かったわけですが、驚くべきことに新入生は僅か21名でした。つまり、看護職を目指す若い人たちがここ数年で激減したというのが現実であります。看護職が敬遠されている要因としては、きつい仕事である、夜勤があり、土日祝日も休めない職種であるという印象があるからだそうです。
第八次和歌山県保健医療計画における看護師、准看護師の将来推計での目標数は1万7110人、しかしながら、令和4年度の実際の人数は1万4174人と、その差は2936人となっています。この目標人数に近づけるために、県としてはどのような対策に取り組んでおられますか、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
○副議長(秋月史成君) 福祉保健部長𠮷野裕也君。
〔𠮷野裕也君、登壇〕
○福祉保健部長(𠮷野裕也君) 看護師の確保対策につきましては、県では、養成力確保、離職防止、就業促進が重要であると考えております。
まず、養成力確保の取組として、児童生徒を対象とした出前授業や病院等での体験学習などを行うことにより、看護への関心を高め、看護職を目指す学生の増加を図ろうとしております。
次に、離職防止の取組として、病院内保育所の充実をはじめ、働きやすい勤務環境の整備に努める医療機関への支援を行っております。
また、就業促進の取組として、県内の看護学生や就業希望者を対象に就職説明会を開催するとともに、返還免除つきの修学資金の貸与、離職した看護職員を対象にした就職先に関する情報提供や個別相談などを実施しているところです。
さらに、今年度は、人材確保に向けた情報発信力を強化するため、県内の看護に関する情報を集約した看護職総合ポータルサイトを開設する予定です。今後も、これらの取組を総合的に推進し、看護職員の確保に努めてまいります。
○副議長(秋月史成君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁いただきました。
続きましては、看護師の復職支援のための取組についてであります。
本県でも、大手人材派遣会社などが看護学生などを対象に、就職フェアや国家試験対策などで看護学生を集め、登録を促しています。人手不足解消のために貢献してもらっているのは確かではありますが、このような形での採用には1人当たり80万から100万円程度の報酬が必要となり、そのため、職員の福利厚生やボーナスに利益を反映できず、場合によってはモチベーションが失われることが懸念されます。
また、専門職を一人前に育成するためには、教育に関わる人手と時間がかかりますが、採用に費用がかかりますと病院自体にその余力がなくなります。
それに、一番心配されることは、このまま看護師不足の状況が続きますと、現在現場で奮闘してくださっている看護師に係る業務負担がますます増加し、心身ともに疲れが生じ、やる気が失われてしまい、離職を誘発する要因ともなります。
全国的な看護師不足が叫ばれている中、本県では、看護大学の誘致等、看護職員等の人材確保施策も積極的に進められてきましたが、危機的状況下で早急に看護人材を確保するためには、潜在看護師に現場に復職をしていただき、活躍していただくほかありません。潜在看護師とは、資格を持っているが、様々な理由により看護師として従事していない方のことを指します。
しかしながら、看護師の離職の理由は結婚や出産が多くの割合を占めています。数年から長ければ数十年、現場から離れてしまうケースもあり、ブランクが長ければ長いほど現場に戻る気持ちに不安を覚え、復職への一歩を踏み出しにくくなるため、潜在看護師が抱える不安の解消に向けた取組も求められます。また、勤務時間や業務内容の違いなど、求人先である各施設の正確な情報発信も求められています。
そのような中、潜在看護師の復職をサポートする機関としてナースセンターがあります。ちなみに、令和3年12月定例会におきまして、北山慎一議員がコロナ禍での看護師不足対策としてナースセンターのことを取り上げておられましたが、改めて説明をさせていただきます。ナースセンターは、平成4年、看護師等の人材確保の促進に関する法律に基づき、47都道府県に設置され看護職員の確保対策を行っています。
和歌山県のナースセンターは、公益社団法人和歌山県看護協会が本県から指定を受けて運営しており、県の委託によって、県内の看護職の就業状況や就業希望等の動向の把握などをはじめ、無料職業紹介や看護に関する普及啓発など、幅広く活動を展開して看護師の就業支援をしており、復職支援業務もその一つとされています。平成27年度からは、さらなる取組として、全国的な看護師不足の解消を図るため、看護職が離職した際に住所、氏名、免許番号などを都道府県ナースセンターに登録する制度が運用されています。
このように、年々、ナースセンターの役割、事業は増えています。地域医療存続のためには、ナースセンターが担う復職支援の取組が重要と考えます。県としては、看護師の復職支援にどのように取り組んでいるのでしょうか、福祉保健部長の御答弁をお願いいたします。
○副議長(秋月史成君) 福祉保健部長。
〔𠮷野裕也君、登壇〕
○福祉保健部長(𠮷野裕也君) 看護師の復職支援につきましては、離職中の看護師が知識や技術の学び直しをするための研修や、ハローワークとの連携による就職先とのマッチングなどの事業を実施しております。
加えて、今年度から、インターネットを活用した相談支援を開始し、ナースセンターの利用促進を図っているところです。
○副議長(秋月史成君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 引き続きよろしくお願いいたします。
地域医療に関して、医師の不足や偏在への対策、遠隔地における技術導入などについては、私も議会で度々議論させていただきましたが、医師と患者のつなぎ役として献身的に双方を支え、患者の不安を癒やす重要な役割を担われている多くの看護師の皆さんを取り巻く環境は、大変苛酷さを増しています。多くのその課題を改善すべく、業務の効率化、ストレスの軽減、賃金アップも踏まえた待遇改善や働き方の抜本的見直しなどについて、これまであまり取り上げてこなかったことを大変申し訳なく思います。
今回、看護職の人材不足の改善策を考えるに当たり、看護協会東会長、看護連盟川村会長、ナースセンター職員はじめ各役員など、関係者に御協力をいただき、県やセンターのこれまでの取組による効果や今後の課題を調査させていただきました。
その際、看護師不足による地域医療崩壊の危機感は、県内各地域が抱える問題だと認識しておりましたので、自民党和歌山県連の政務調査会副会長鈴木德久議員、山家議員、自民党県議団福祉議員連盟の看護を考える部会事務局長の北山議員にも同席をお願いし、問題を共有していただきました。
本県から、看護協会に幾つもの事業委託を行っています。看護協会は、その予算を合わせた中から人件費を捻出し、職員を雇用しているとのことですが、ナースセンターが担う業務のほとんどをほぼ1人で担っている現実を知りました。全国で見れば最少であり、他県では大体3人から5人で運営されていることと比べますと、さすがに1人では充実した活動が展開できるのか、出席した議員全員が疑問を抱きました。
とにもかくにも、医療現場に看護師がいなければ、どのような最新技術も取組もままならない。まずは、潜在看護師の復職を促進させるために、ナースセンターの機能向上を図ることが改善の第一歩であり、そこに対するさらなる支援が必要ではないかという結論に達しました。
和歌山県ナースセンターでは、ここ数年で登録者の減少、人材不足で悩む求人施設にすぐに紹介できない状態が続いているとのことです。登録者の希望と施設の求人情報をより的確にマッチングするためには、ナースセンター職員が施設を訪問し、詳細な情報を入手することが求められます。そのようなセンターの役割や機能をさらに向上させるためには、職員の増員が必要不可欠と考えます。ぜひ予算の増額を検討していただきますよう要望いたします。
それでは、次の質問に入らせていただきます。
3番目、新宮高校・新翔高校の統合についてであります。
一つ目、令和8年4月の開校に向けた進捗状況と統合校の在り方についてであります。
新宮地域の高校教育は、大きな変革期を迎えています。少子化が顕著であります私の地元では、二つの高校の統合は本当に大きな関心事でありました。統合の話が出てから、地域と学校、県教育委員会が連携をして新しい学校づくりを進めてきましたが、いよいよ来年、令和8年4月に開校する運びとなりました。統合校は、地域で唯一の公立高校となることから、地域に信頼され、安心して学ぶことができ、何より個々の生徒の力を最大限に伸ばすことのできる教育の実現が期待されています。
両校の統合については、令和4年3月に県が策定した県立高等学校教育の充実と再編整備に係る原則と指針において、「新宮高等学校と新翔高等学校の2校については、地域の教育ニーズに応える1校への再編整備を検討し、着手する」と示されたこと、また、このままでは充実した部活動や行事が行えないなど、生徒の減少による高校小規模化を懸念した地元地域からも望む声が多かったことから、2校の統合に向けた動きがスタートし、この原則と指針による最初の再編整備となりました。
本年6月時点での状況を申し上げますと、校名、校歌、制服、スクールカラー、校章、校訓等は既に決定しており、現在は、学校運営面での統合作業が進められています。
校名は、新宮高等学校と決まりました。統合の際に一番議論になるのが校名ですが、広く一般公募も実施されました。しかしながら、新翔高校の前身である新宮商業高校、私も卒業生の1人ですが、昭和38年に新宮高校商業科が独立して開校したという経緯もあり、大多数の意見によりすんなり決定に至った感じです。校歌は、現新宮高校のものを引き継ぎます。
制服や校章につきましては、統合校の象徴として新たに制作することとなり、生徒を中心としたプロジェクトチームを立ち上げて検討を進め、制服については、いずれ当事者になる中学生にもアンケートを行い、実際に会議にも参加してもらうなどして検討を重ね、紺を基調とした落ち着いたデザインの制服に決定いたしました。
スクールカラーは、新宮高校の紺と新翔高校の青緑の間に位置する色として青、校章は、「おおらかな熊野の恵を受け 伸びやかに学び 未来に向かって大きくはばたけ」をコンセプトにデザインされ、校訓は「自律 敬愛 創造」、校是は「文武両道」に決定しています。
去る5月11日には、統合校の総合説明会が新宮高校の体育館で開催され、中学生や保護者、中学校教職員等、約300名の参加者があり、関心の高さがうかがえます。そこでは、新しく作られた統合校の総合案内パンフレットも配付されました。
現在は、学習面や進路指導、部活動、行事などの学校運営面での統合作業を両校の教職員が連携して進めていると聞いています。
また、新宮高校では、統合に先駆け、普通科改革への取組として、今年4月に学彩探究科が新設されました。学際的、探究的な学びを通して、変化の激しい現代社会でリーダーやイノベーターとして活躍する実力を身につけていくことが学科の目標とのことです。なじみの薄い学科スタイルのため、1期生の志願状況が気になっておりましたが、全国募集枠も含め定員を超える志願者があったと聞き、安心をしたところであります。
統合に向けた取組の立ち上げから準備等にいささかなりとも関わらせていただいた中で、教育委員会や学校だけでプランを立てるのではなく、在校生、中学生とその保護者、そして、卒業生をはじめ関係者、関係団体など、地域の皆様からも広く意見を聞いた上で新しい学校づくりを進めるのが望ましいのではないかと申し上げたところ、両校の歴代校長や教職員の皆様の大変な御尽力により、様々な意見や要望を広く集約していただきました。それにより導き出された内容から、基本コンセプトを「生徒・地域社会の期待に応えるALL IN ONEの学校」としています。
地域で育った子供たちが高校に行きたいと考えたとき、自宅から通える範囲内に自分に合った学びの選択肢が用意されていること、生徒数が増えることによって部活動や行事の充実化が図れることは、大変すばらしいと感じます。自ら目標を掲げ、チャレンジする場所を外に求める人には、地元としても応援してあげたいところです。しかし、やむを得ず他地域の高校にニーズを求めなければならない環境こそが若者人材流出に拍車をかけてきた要因と言えます。
そこで、お尋ねします。
新宮地域の高校再編によって、新しい高校の在り方について検討する機会となりましたが、教育委員会として、この新しい学校の今後の在り方について、教育長の考えを聞かせてください。
○副議長(秋月史成君) 教育長今西宏行君。
〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 新宮地域に、新宮高等学校、新翔高等学校を継承、発展させ、生徒、地域社会の期待に応える新たな学校を令和8年4月に開校します。
新しい統合校は、全日制、定時制、通信制の三つの課程を持つ県内唯一の高等学校になります。本年度から、新宮高等学校に、統合に先駆けて、既存の普通科に加え学彩探究科を設置し、学問領域の垣根を越えた学びや探求的な学びを取り入れ、生徒の高い進路目標に応えられる教育をスタートしています。
また、現在、新翔高等学校に設置している総合学科においては、実社会で活躍できる資質や能力の獲得に向けて、建設、土木、情報、福祉などの専門教育を行えるようカリキュラムを一層充実してまいります。
こうした既存の学科の学びを充実させていくとともに、新たに昼間定時制課程と通信制課程を設置することにより、生徒一人一人の教育ニーズに応じたきめ細やかな対応を行っていきます。
さらに、部活動においては、中学生やスポーツ少年団等と一緒に活動することで、地域との一体感を高めるとともに、全国や世界で活躍する選手の育成を目指してまいります。
また、地域産業や商店街の活性化、担い手育成等、地域課題をテーマとした探求的な学びを充実するとともに、地域活動への積極的な参加を促すことで地域の課題を自分自身の課題として捉え、主体的に考え、解決していこうとする力や態度を育成し、地域の発展に貢献しようとする心情を育んでまいります。
地域で育った子供たちがこの統合校での学びや活動を通じて、それぞれの夢や希望を実現し、統合校が核になって、地域の活性化、発展につながっていくことを期待しております。
○副議長(秋月史成君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁ありがとうございます。
その高校統合を成功に導くための支援についてお聞きをします。
本県において、今後の中学校卒業生の急激な減少を考えれば、著しく小規模化が進んで再編が必要となる高校も出てくると思います。そのときに、新宮地域で進めた再編がスムーズに進み、よい学校ができたというふうにならなければなりません。現在のところは、スムーズに地域の理解を得ながら、大きなトラブルもなく順調に進んでおりますが、勝負はこれからであります。
先ほど答弁にもありましたとおり、全日制3学科、昼間・夜間の定時制、通信制の六つのカテゴリーが用意されたことは、多様性が求められる現代社会にマッチした画期的なことだと思います。この形は、和歌山県内の各地域はもちろんのこと、和歌山県以外の多くの地方都市においても、その地域からの人口流出や活力低下を食い止めることにつながる高校再編のモデルになるのではないかと期待します。
私見ですが、15歳から18歳は子供から大人へと成長する多感な年頃であり、地域で生まれ育った子供たちが高校生活をふるさとで過ごすことにより、同世代との絆を深め、家族や身内からの愛情を直接受けられる、また、地域の人たちや文化に関わる機会を通じて、地元意識が強く育まれるのだと思います。振り返りますと自分自身がそうであったように、慣れ親しんだ地元を将来の生活の場、活動の場にしようという思い、ふるさとを何とか盛り上げたいという愛郷心へと発展していくのではないでしょうか。そのためにも、この再編は何としても成功させなければなりませんが、これだけ多くのカテゴリーを用意して教育を充実させるためには、県の支援が欠かせません。
今回の統合をどちらかの学校が消滅してしまうという悲観的なものではなく、地域の特性や両校の伝統を十分残しつつも新しい学校として生まれ変わる貴重な機会と捉え、将来的に県内他地域において再編が行われるとしたときの成功事例、参考事例とされるように教育委員会としても成功に導いていただきたいと熱望するところでありますが、今後、どのような支援を考えていただいているのか、教育長にお尋ねいたします。
○副議長(秋月史成君) 教育長。
〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 統合に向けては、これまで、新宮市・東牟婁地域教育魅力化フォーラム等の開催や再編整備協議会の設置など、地域の声を十分にお聞きし、着実に準備を進めてまいりました。
議員御発言のとおり、開校後も、計画している教育活動が円滑に進むとともに、生徒一人一人にとってより魅力的なものとなるよう県教育委員会としては継続的に取り組んでいく必要があります。その際には、開校に至るまでのこれまでの姿勢と変わらず、学校の運営状況、生徒や保護者の意見、地域の要望などを丁寧に確認し、課題に一つ一つ対応していくことが大切であると考えております。
全ての地域において、県立高校に求められることは、地域社会を担う人材の育成、日本や世界で活躍できる人材の育成、一人一人の可能性を広げる丁寧な教育であると考えており、新宮市地域ではこれらの使命を一つの学校で担うことになります。
県教育委員会といたしましては、新しい統合校がその使命を果たし続け、魅力ある学校となるよう全力で取り組んでまいります。
○副議長(秋月史成君) 濱口太史君。
〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 大変心強い御答弁をありがとうございます。
今後も、地域の住民や産業界にも理解と協力を強く求めながら、答弁にもあったように、若い力が存分に発揮され主体的に活動できる高校、地域の核となり地域の発展や活性化に貢献できる高校になっていくための取組や、さらに持続可能な学校となっていくために、新たな試みへのチャレンジ、または開校後の軌道修正が必要となる局面なども想定されます。
しかしながら、まずは、統合後数年間は、一番大切である生徒の学習活動をしっかりと支えていくために、教員配置や施設設備の充実など、教育環境の整備が重要となります。御答弁で、魅力ある学校となるよう全力で取り組んでいくという前向きな姿勢を示していただきましたが、統合によって画期的なすばらしい学校ができたと言われるように、特に軌道に乗るまでは、ソフトとハードの両面での最大の支援をぜひともお願いいたします。
教育委員会、知事はじめ県当局、県議会の皆様、県民や地域の皆様に、伏して御理解と御協力をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(秋月史成君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。
これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
次会は、6月23日定刻より会議を開きます。
本日は、これをもって散会いたします。
午後2時14分散会