令和6年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


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令和6年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号

議事日程 第5号
 令和6年3月7日(木曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第69号まで、議案第71号から議案第79号まで、議案第81号から議案第84号まで及び議案第86号から議案第96号まで(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第69号まで、議案第71号から議案第79号まで、議案第81号から議案第84号まで及び議案第86号から議案第96号まで(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(42人)
 1番 坂本佳隆
 2番 三栖拓也
 3番 秋月史成
 4番 川畑哲哉
 5番 藤山将材
 6番 森 礼子
 7番 井出益弘
 8番 尾崎要二
 9番 高田英亮
 10番 玉木久登
 11番 佐藤武治
 12番 濱口太史
 13番 鈴木太雄
 14番 冨安民浩
 15番 吉井和視
 16番 鈴木德久
 17番 玄素彰人
 18番 岩田弘彦
 19番 中本浩精
 20番 中村裕一
 21番 谷 洋一
 22番 山家敏宏
 23番 北山慎一
 24番 堀 龍雄
 25番 谷口和樹
 26番 新島 雄
 27番 山下直也
 28番 小川浩樹
 29番 中尾友紀
 30番 岩井弘次
 31番 藤本眞利子
 32番 浦口高典
 33番 山田正彦
 34番 坂本 登
 35番 小西政宏
 36番 浦平美博
 37番 中西 徹
 38番 林 隆一
 39番 片桐章浩
 40番 奥村規子
 41番 尾﨑太郎
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
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説明のため出席した者
 知事         岸本周平
 副知事        下 宏
 理事         田嶋久嗣
 知事室長       北廣理人
 危機管理監      福田充宏
 総務部長       吉村 顕
 企画部長       前 昌治
 地域振興監      赤坂武彦
 環境生活部長     山本祥生
 福祉保健部長     今西宏行
 商工観光労働部長   三龍正人
 農林水産部長     山本佳之
 県土整備部長     福本仁志
 会計管理者      﨑山秀樹
 教育長        宮﨑 泉
 公安委員会委員    竹山早穗
 警察本部長      山﨑洋平
 人事委員会委員長   平田健正
 代表監査委員     森田康友
 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       林 伸幸
 次長(秘書広報室長事務取扱)
            萩原 享
 議事課長       長田和直
 議事課副課長     岩谷隆哉
 議事課議事班長    伊賀顕正
 議事課主任      菅野清久
 議事課副主査     西 智生
 議事課副主査     林 貞男
 総務課長       葛城泰洋
 政策調査課長     岩井紀生
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  午前10時0分開議
○議長(濱口太史君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第69号まで、議案第71号から議案第79号まで、議案第81号から議案第84号まで及び議案第86号から議案第96号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。
 16番鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕(拍手)
○鈴木德久君 皆さん、おはようございます。自民党県議団、鈴木德久です。3日目のトップバッターということで、よろしくお願いいたします。
 早速ですが、議長のお許しを得ましたので、一般質問に入らせていただきます。
 まず第1項目め、災害対策についてです。
 本年1月1日、能登半島を震源とする最大震度7を記録する地震が発生し、石川県はじめ広範囲に及ぶ被災地は甚大な被害を受けました。お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 知事も、「和歌山県も同じ半島であり、近い将来、南海トラフ地震の発生も予想される中で、とても他人事ではない。地域防災計画の抜本的な見直しが必要だ」とのコメントがありました。災害の被害を最小限に抑えるためにとの観点から、幾つかの質問をしたいと思います。
 皆さん御承知のとおり、災害の被害を最小限に抑えるためには、災害発生前の予防対策、発生直後の緊急対策、災害後の復旧・復興の各段階における適切な対策が不可欠とされています。
 私は、今回の災害対応について、発生直後の緊急対策の遅れによる災害関連死が増えるのではと心配しています。災害関連死は、東日本大震災では令和5年12月末で3802人に上り、2016年の熊本地震では、犠牲者273人のうち、80%以上の218人が関連死したとされています。その原因の多くは、避難所での生活における肉体的、精神的ダメージにあるとされています。そうした生活空間や食生活が健康を害することは明白であり、せっかく災害の直接的な危機を逃れた後に、何日もたってから亡くなる犠牲者は本来救うことのできたはずのものと思います。
 今回も、テレビから流れる映像は、体育館の床に毛布などにくるまって雑魚寝をし、おにぎりやパン、炊き出しの食事といった避難所における生活の非人間的な状態を伝えています。このような状態は、阪神・淡路大震災でも、東日本大震災でも、また、熊本地震や各地での最近の水害でも全く改善されていません。この30年でも全く変わっていない。これは、一体何なのかと思ってしまいます。
 最近、日本と同様に地震、火山、風水害といった自然災害の多いイタリアの防災体制を見習って、日本にも防災省の設置をとの報告がありました。イタリアは、ポンペイ遺跡を造ったベスビオ火山をはじめエトナ山やストロンボリ山などの活火山を抱え、ポー川などの洪水、土砂災害などが頻繁に起きています。
 中でも、地震による被害は深刻で、1883年のイスキア地震、マグニチュード5.6、死者2333人、1908年のメッシーナ地震、マグニチュード7.1、死者8万2000人、1915年のアベッツァーノ地震、マグニチュード7.0、死者3万2610人、1930年のイルピニア地震、マグニチュード6.7、死者1404人、1980年もイルピニア地震、マグニチュード6.7、死者2483人など、大きな被害をもたらす地震が数多く発生しています。近年では、2009年のラクイラ地震、2012年のエミリア・ロマーニャ州地震、2016年のイタリア中部地震がありましたが、今回、ラクイラ地震における防災対策の在り方についてのレポートがありましたので、紹介したいと思います。
 ラクイラ地震は、2009年4月6日、イタリア中部の町ラクイラでマグニチュード6.3の地震があり、298人の死者が出ました。イタリアには防災局という常設の国家組織があり、深夜の地震であったにもかかわらず、30分後には実働委員会会議を開き、2時間後には被害規模の推定がなされ、全国災害として指定し、方針が州、市町村、ボランティア団体などに伝えられるといった仕組みがあり、約5時間後には現地対策本部ができていました。
 避難の状況は、家を失った人は6万2543人で、2万8579人は5553張りのテントに、3万3964人は518のホテルに、2225人は民家に避難したとのことです。日本との違いは、この住環境にあり、テントも10畳ほどの広さに数名程度が入り、中は電化され、エアコンも入っているとのことです。特筆すべきは、指令系統がしっかりしているので、初動48時間に4300人のボランティアを受け入れ、3000の避難テントが設置されていることです。
 日本においては、防災対策を担っているのは最も小さな行政単位の市町村です。市町村長は、避難指示をしたり、警戒区域を設定する等の権限を持っています。さらに、消防や消防団に指示して救助や捜索活動を行い、また、教育委員会に指示して体育館に避難所を開設し、水や食料を用意したり仮設住宅を造ります。それに対して県や国は、市町村を財政的、技術的にバックアップする位置づけになっています。小さな災害であれば、この仕組みも小回りが利いて理にかなっているとも言えますが、今回の能登半島地震や心配されている南海トラフ地震では、計画どおりに機能しないことが予想されます。
 知事は、能登半島地震を踏まえて、地域防災計画の抜本的な見直しが必要だとの見解でしたが、現状での大規模災害時における県の市町村への応援対応と今後さらに検討すべき点について、知事にお伺いします。
○議長(濱口太史君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 市町村は、基礎的自治体として地域住民の生命、身体及び財産を災害から守るため、様々な災害対応を担う役割を有しております。
 ただいま鈴木議員から御指摘のとおりでありまして、大規模災害が発生しましたときに、特に小規模な自治体では、職員自身が被災し、人員不足が生じるとともに応急対策業務が急増いたします。行政の的確な初動対応等が困難になるということが予想されます。
 そのため、和歌山県では、そのような事態を想定いたしまして、本庁から市町村への人的支援として災害時緊急支援要員の制度を創設いたしました。発災直後からの支援体制を現在、整えているところでございます。さらには、大量に発生する災害廃棄物の処理を支援する災害廃棄物処理支援要員や、被災者の早急な生活再建に必要な住家被害認定業務を円滑に進める住家被害認定士リーダーを県職員から任命しておくなど、被災市町村の支援体制を日頃から充実強化してまいりました。
 現在、能登半島地震の被害状況や災害対応を検証いたしまして、県内外の自治体から職員を円滑に受け入れるにはどのような体制をつくればよいのか、被災市町村を応援する対策を改めて検討して、防災計画を見直してまいる所存であります。
 現状でも、現在、1班10人の体制で県の職員が能登町に支援に参っております。1週間交代でありまして、泊まるところは高校の教室、寒いところでありますのでテントを張って、その中で寝袋で休みを取るということをやっていただいて、支援の中で今後、我々の防災計画見直しに何が参考になるか、しっかりと勉強していただいている状況であります。
 なお、議員の皆様にもお伝えしておきたいんですが、これは公用車で参りましたので、当然旅費は出ません。それから、ホテルに泊まるわけではございませんので、宿泊費は出ません。特殊勤務手当が僅か1日800円であります。本当にそういう中で、もちろん金額の問題ではありませんけれども、誠心誠意職務に専念していただいている県の職員の皆さんには、心から敬意を表したいと存じます。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 御答弁ありがとうございます。私からも、今回、県からは延べ5000人規模での応援に行っていただいているとのことで、敬意を表したいと思います。
 現地では、全国から応援の職員が来てくれて、一部ではその対応に苦労しているのではないかと想像されます。県は市町村の支援をしますと言いますが、応援だけではなく、主体となって対応に当たる訓練も必要ではないかと思います。特に体育館での1次避難は1週間が限度ともされ、2次避難所の確保は非常に重要ですが、市町村をまたぐ交渉となりますので、県が主体となっての取組を要望します。
 次に、避難所での住環境の中でも最も心配されるのがトイレの環境です。能登半島でも、停電と水不足の影響で避難所のトイレは排せつ物がたまり、環境が悪化しているとの報道がありました。
 私は、以前にもお話ししましたが、阪神・淡路大震災の際に、地震発生後5日後に東灘区役所の罹災証明の発行のお手伝いで現地に入りました。そのときもトイレの問題は深刻で、一番先にその対策を取るべきだと思いましたが、30年近くたっても、今もあまり改善されていないことにちょっと愕然としてしまいます。
 避難所のトイレの環境悪化が招く影響として、便器の蓋やドアノブを介しての集団感染のリスクが高まるとか、不衛生なトイレの使用を避けるために飲食を控え、運動不足も重なって脱水症状やエコノミー症候群を引き起こす。あるいは、唯一のプライベートな空間と時間が奪われ、精神的なダメージが蓄積されるとされ、災害関連死や感染症を防ぐためには、安心して使えるトイレが必要不可欠になると言われています。
 そこで、最近注目され、期待されているのがトイレトレーラーです。トイレトレーラーは、通常、太陽光発電を備え、個室の洋式トイレを3~4室、計約1200回以上使用できる分量の水を蓄えており、仮設トイレに比べ、はるかに快適なため非常に喜ばれています。災害時に備えて自治体が所有し、1月22日現在で、輪島、珠洲、七尾、能登の3市1町の16か所に設置されているとのことです。全国では、県をはじめ市町村でトイレトレーラーの導入を検討しており、災害時、全国から被災地に結集することができれば、非常に心強いと思います。
 和歌山県内では、現在、このトイレトレーラーを導入している自治体はないとのことですが、今後の県内の整備方針について、危機管理監にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 危機管理監福田充宏君。
  〔福田充宏君、登壇〕
○危機管理監(福田充宏君) 避難所では、ふだんの生活と異なり、避難者の心身に負担が生じることから、県では、市町村と連携して避難所の環境改善を進めていく必要があると考えています。
 中でも、議員御指摘のとおり、トイレの環境が悪くなると、体調を崩したり、最悪の場合は災害関連死を招く可能性もあるため、重要な課題と認識しています。県では、市町村の避難所運営の基準などを定めた市町村避難所運営マニュアル作成モデルを作成し、トイレの衛生管理について清掃手順を示すなど、衛生面に配慮した継続的な清掃及び消毒を行うよう示しているところです。
 今回、2024年度当初予算案においてトイレトレーラーの予算を計上しており、今後、県と市町村の役割分担や平常時と災害時の運用方法などを踏まえ、避難所環境改善に資するトイレの整備方針について検討してまいります。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 私の集落では、平成15年の集会所の建て替え工事の際に、トイレを合併浄化槽にするか、従来のため込み方式にするかの議論をしましたが、私は、神戸の経験もあり、使用頻度のこともあって従来のため込み方式を提案したところ、採用されました。おかげで、平成23年の紀伊半島大水害の際も、長い停電にもかかわらず何の問題もなく使用することができ、ほかの集落の方も使用することができました。
 現状の避難所では、電気、水道がない場合にトイレが使えなくなることが予想されますが、その対応への議論がなされていないのではないかと思います。例えば、現在避難所に指定されている体育館や集会所などに空き地があれば、大きめのタンクだけでも埋めておいて、非常時にはため込み方式の仮設トイレとすれば、使用量も気にせずに利用できるのではないかと思いますので、市町村と共に検討いただければと思います。
 次に、個別避難計画の策定状況についてお伺いします。
 東日本大震災の教訓として、障害者、高齢者、外国人、妊産婦の方々について、情報提供、避難、避難生活等の様々な場面での対応が不十分であったことを受け、こうした関係者の名簿が必要とされたことから、平成25年の災害対策基本法の改正により、災害時に自ら避難することが困難な方の避難行動要支援者の名簿を作成することが市町村の義務とされました。さらに、令和3年の災害基本法の改定では、避難行動要支援者について、個別避難計画が市町村の努力義務とされました。
 能登半島地震の状況を見るにつけ、個別避難計画の策定は大変重要だと思いますが、県内における高齢者や障害者等の要配慮者の避難支援をするための個別避難計画の作成状況とその取組の状況について、福祉保健部長にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 福祉保健部長今西宏行君。
  〔今西宏行君、登壇〕
○福祉保健部長(今西宏行君) 高齢者や障害者など、災害時に自ら避難することが困難な方につきましては、避難行動要支援者名簿の作成に加え、議員御指摘のとおり、避難先や避難方法を記載した個別避難計画を作成することが重要であると考えています。
 県内では、2023年3月時点で要支援者名簿には約5万人が登録されており、そのうち約14%の方は個別避難計画が策定済みとなっています。
 次に、県の取組状況につきましては、毎年、全市町村に対し作成状況のヒアリングを行うとともに、土砂災害の危険性がある地域や洪水による浸水が想定される区域に居住するなど、優先度が高い方から作成に取り組むよう市町村に働きかけているところです。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 ありがとうございます。計画のさらなる推進と避難後の薬の供給方法等についても御配慮をお願いしたいと思います。
 次に、効率的な住家被害認定の発行方法についてです。
 1月29日付の新聞によりますと、「東京からリモートで輪島市の『全壊判定』罹災証明書発行の迅速化へ」との記事がありました。「能登半島地震の被害が大きい輪島市に代わって、東京都と29の区市町の職員らが、被災地住宅の『被害認定』を都庁からリモートで実施している。職員らがパソコンで画像などを見ながら、罹災証明書の発行が可能となる『全壊』かどうかを判断。現地業務の負担を軽減し、証明書発行の迅速化を図りたいとしている。 対象は、輪島市が実施した応急危険度判定で『危険』と判定された住宅約2200軒。区市町の税務系の職場で家屋評価の経験がある職員らがリモートで判定を行い、27、28の2日間で約6割の判定が済んだ。 都の総合防災部は、『リモートでの全壊判定がこの規模でできたのは大きな成果。今後、大規模災害があったときの参考事例になる』と話す」といったような内容の新聞記事でした。
 先ほども申しましたように、神戸市東灘区に罹災証明書の発行のお手伝いに行った経験から、現地の職員の負担を軽減し、また、派遣される職員も自宅に居ながらお手伝いができる、さらに、現地での受入れの負担をなくすことができる大変いい取組だと思います。
 さらに言えば、神戸市の場合には、申請者が殺到して長蛇の列ができていましたが、今の時代、マイナンバーとスマホを駆使して、自宅から申請ができるようなデジタル技術を用いたシステムにならないかと思います。
 そこで、罹災証明を迅速に発行するため、効率的な住家被害認定の取組について、福祉保健部長にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 福祉保健部長。
  〔今西宏行君、登壇〕
○福祉保健部長(今西宏行君) 能登半島地震において、本県から住家被害認定業務の支援職員を派遣している石川県能登町では、タブレット端末を用いた被災家屋の調査が行われています。
 また、国の定める運用指針においては、航空写真等を活用し、一見して全壊と判定できる場合には、現地での被害認定調査を経ることなく被害区分を判定することも可能となっています。
 県といたしましては、輪島市や能登町などの被災地の事例で得られた知見を県内市町村と共有し、県内で災害が発生した際に迅速に調査を実施できる体制を整えてまいります。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 どうぞよろしくお願いします。
 次に、ドローンの活用についてお伺いします。
 最近の県内の水害や今回の能登半島地震でも、迅速な災害箇所とその規模の把握は最重要課題です。紀伊半島大水害の際には、道路の被害状況が分からず、孤立集落の把握に苦労した経験があります。さらに、例えば林道の災害復旧工事の申請をしようとしたときには、林道は国道、県道、市道の先にありますから、なかなかたどり着けない。車で行けるところまで行って、あとは自転車をかついで行ったケースもありました。
 現状では、市町村が災害状況を把握して対応に当たるということでしょうが、知事もおっしゃっているように、将来的には県と市町村が行政を一体化する流れの中で、例えば道路や山腹崩壊等の災害状況の調査等に係る県の支援体制と今後のドローンの整備計画について、県土整備部長にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 県土整備部長福本仁志君。
  〔福本仁志君、登壇〕
○県土整備部長(福本仁志君) 県土整備部では、ドローンを各建設部等に配備し、災害時における道路や河川などの公共土木施設の被害の詳細な確認等に活用しております。
 将来、南海トラフ地震等による大規模災害発生時において、市町村から道路等の被災状況の調査要請があった際には、互いに連携して県保有のドローンによる調査を行うなど、地域の支援に努めてまいります。
 また、新たな取組として、迅速な初動対応の確保や2次災害の危険回避のため、レベル3.5やレベル4飛行に向け、県職員の操縦ライセンスの取得や長距離飛行が可能な機体の導入の手続を現在進めているところです。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 御答弁ありがとうございます。
 最近では、ドローンを飛ばして被害の状況を確認することや、孤立集落への必要な薬を届けたりすることにもドローンが利用されていますが、市町村や県で用途が重ならないように役割分担することも大事かと思います。
 そして、もう少し大胆に考えれば、災害復旧工事の箇所の選定や設計までを事前に災害協定を結んだ測量業界等に任せてしまうぐらいの割り切った考え方も必要だと思います。それは、職員の負担軽減にもつながります。ぜひとも新たな制度設計をお願いしたいと思います。
 続きまして、大項目2、世界遺産20周年を迎えるに当たっての質問です。
 胸をどきどきさせながら結果発表を待っていた20年前の平成16年7月7日のことは、今でもよく覚えています。いわゆる熊野古道に関する県の取組を私なりに振り返ってみますと、私が役場に入った昭和50年代後半には、熊野古道が国の歴史の道の指定を受け、配属された教育委員会でその整備事業に携わることになりました。
 その後、少しずつ知名度も上がり、平成に入った頃の県による熊野古道PRイベント「古道ピア」が一躍有名になる最初の大きなきっかけではなかったかと思います。それからの世界リゾート博や南紀熊野体験博、そして、その合間の大小様々な熊野古道PRイベントのおかげで世界遺産登録につながったのではと思っております。
 世界遺産登録当初は、観光バスが押し寄せ、少しオーバーツーリズムの懸念もありましたが、徐々に落ち着いてまいりました。ほかの世界遺産では、ブームが去るとお客さんが激減といった報告もありますが、こちらは歩くといった体験型のためか、それほどの落ち込みもなく、そのうちにインバウンドの増加もあって、コロナ禍を除けばまずまずの経過だと思います。
 海外メディア等への働きかけもかなり力を入れてこられたのではと思いますが、この20年間の取組とその評価について、商工観光労働部長にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 商工観光労働部長三龍正人君。
  〔三龍正人君、登壇〕
○商工観光労働部長(三龍正人君) 県では、これまで、世界遺産エリアの社寺をはじめ地元市町、関係団体と協働して、案内板や公衆トイレの整備、2次交通における多言語化、語り部の育成、ルートマップの製作やスタンプを活用した押印帳の展開など、様々な受入れ体制の整備を図ってまいりました。さらに、国内外のメディアなどでの効果的な情報発信に加え、旅行会社に対しても商品造成の働きかけを行い、継続して誘客に努めてまいりました。
 一方で、貴重な資産を次世代に引き継ぐため、県では、参詣道の保全活動である道普請を実施しており、企業のCSR活動や教育旅行の体験メニュー等で、延べ約600の企業や団体から3万7000人を超える人々に参加いただいております。
 こうした中で、世界遺産登録された2004年と2019年を比べてみますと、関係市町の外国人宿泊客数は6倍以上の伸びを見せるなど、多くの観光客が訪れることにより、自分たちの住む地域の誇りや愛着が深まり、地域の伝統や文化を発信する方、観光客をおもてなしする方、世界遺産の保全に携わる方など、地域の魅力向上につながる取組も広がってまいりました。
 今後も、地元市町や関係団体と一丸となって和歌山が持つ魅力にさらに磨きをかけ、多くの観光客にお越しいただけるよう取り組んでまいります。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 ありがとうございました。
 私たち地元といたしましても、県に頼るばかりではなく、何かもてなすものはないかということで、平成3年に奥熊野太鼓を結成し、先ほどのリゾート博や南紀熊野体験博、愛・地球博等への参加のほか、東京、名古屋、京都等での様々なイベントに参加させていただきながら、この30年で200回近い公演により熊野をアピールしてまいりました。また、新しい取組として旅行会社のオプションで、宿泊客の夕食の後、和太鼓の体験と公演を聞いていただくツアーが大変好評です。
 県としても、地元との交流や体験メニューによる滞在期間の延長を目指していると思います。今後予定している世界遺産登録20周年を契機とした特別企画や「聖地リゾート!和歌山」におけるブランディングの取組について、知事にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 その前に、奥熊野太鼓、私も数回パフォーマンスを拝見させていただきまして、すばらしい感動を覚えておりますし、特に鈴木德久議員の筋骨隆々としたボディーから打ち鳴らされる勇壮な太鼓の音色には本当に感動していますし、民間の力で熊野の観光促進に貢献していただきまして、心からお礼を申し上げたいと存じます。
 その上で、世界遺産登録20周年に向けました機運醸成として、例えば、昨年12月に京都の城南宮で熊野御幸を再現した令和の熊野詣の出立式を皮切りに、熊野古道紀伊路のリレーウオークを行ってまいりました。また、今年の2月には、世界遺産登録20周年記念サミットと称しまして、東京の秋葉原で三重県、奈良県の両知事と共にプロモーションを行い、各種メディアや旅行事業者に20周年の訴えをしたところであります。
 いよいよ20周年を迎える来年度は、登録月の7月から、JR西日本などの鉄道事業者とタイアップした誘客キャンペーンを実施する予定にしております。また、キャンペーン期間中は、令和の熊野詣の続編として、熊野三山を目指した熊野古道中辺路のリレーウオーク、さらには熊野三山での到着セレモニーなどの特別イベントを実施する予定にしております。
 加えて、出立の地、京都城南宮から熊野三山まで、ゆかりの名所を巡る仕掛けづくりも行うつもりであります。そして、県立博物館におきましては、熊野と高野の名宝を展示する特別展を開催いたします。世界遺産社寺における特別企画や地域の記念イベント、県内の様々な体験メニューなど、世界遺産エリアのみならず県内全域で一体となって本県の魅力を発信することで、国内外からの誘客に努めてまいります。
 これらの取組によりまして、「聖地リゾート!和歌山」の魅力を発信し、和歌山が心と体を癒やす、何度も訪れたくなるようなかけがえのない場所であるというイメージを定着させるべく努力してまいりますので、また奥熊野太鼓も含めて、御指導、御支援よろしくお願い申し上げます。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 大変御評価をいただきましてありがとうございます。
 私は、20周年を契機として、ぜひとも世界遺産の追加登録と世界ジオパークを目指していただいて、さらに世界農業遺産をリンクさせた観光戦略を考えることで、ほかに類を見ない観光地づくりができるのではと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、大項目の3、熊野白浜リゾート空港の利用拡大についてお伺いします。
 1月19日付、紀伊民報で「知事 熊野白浜リゾート空港『滑走路延伸』を宣言 調査予算提案へ」との記事がありました。そして、県議会では、半島振興・空港対策議員連盟南紀白浜空港促進部会において、2月7日、8日に九州佐賀国際空港の視察調査を行いました。
 九州佐賀国際空港も現在、滑走路は2000メートルで、500メートルの延長計画があり、令和15年の供用開始予定に向け準備中とのことでした。既に羽田便のほか、海外ではソウル、上海、台北路線があり、滑走路延長に向けて多くの利用拡大戦略を紹介していただきました。
 中でも、特に特徴的だと思った2点について紹介しますと、まず1点目は、2次アクセスとしてのレンタカーです。佐賀空港到着便利用者が対象で、空港内に有名各社のカウンターがあり、最初の24時間が1000円とのことで、しかも佐賀県内と福岡県、熊本県の指定営業所へは乗り捨て無料という大変利用者にとって使い勝手のよいシステムでした。
 2点目は、空港セールスプロモーション100人チームの取組です。佐賀県庁の副課長職員125名に兼務発令し、空港セールスチームを結成しています。活動目標を国内線では東京便増便に向けた需要喚起、国際線では運航再開を見据えた情報発信とし、活動内容としては、空港課が割り当てる事業所や仕事上あるいは地域活動等で関わりのある事業所等へのセールスを年間5回以上行うもので、県を挙げての営業体制と営業実績を航空会社も大変高く評価しているとのことでした。当然予算を伴うものであり、先ほどのレンタカー等の2次アクセスだけでも数千万円程度の予算措置がなされています。
 たくさん見習うべき点があろうかと思いますが、本県における熊野白浜リゾート空港利用促進への取組について、県土整備部長にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 県土整備部長。
  〔福本仁志君、登壇〕
○県土整備部長(福本仁志君) 議員が視察された九州佐賀国際空港は、1998年に開港し、2016年に九州におけるゲートウエー空港を目指して愛称を設定しました。現在、東京羽田便が1日5往復しているほか、中国、韓国、台湾との国際定期便も就航し、コロナ禍前の2018年度には年間80万人を超える利用者がありました。
 九州佐賀国際空港では、議員御紹介のとおり、空港の様々な利用促進策について官民が一丸となって取り組んだことにより、東京羽田便の増便や国際定期便の就航を実現させました。また、さらなる国際線の増便や就航先の拡大のため、滑走路延伸に向けて、本県よりも先んじて取り組んでいます。
 さて、本県の南紀白浜空港については、九州佐賀国際空港と同様に、本年1月10日に熊野白浜リゾート空港と愛称を設定したところであり、今後、空港の知名度向上を図り、国内外からの誘客を促進してまいります。
 また、2024年度には、これまでも行ってきた東京羽田便の需要喚起や国際チャーター便の誘致をより強化するとともに、空港アクセスの改善のための空港連絡バスの導入や空港の知名度向上のための愛称の命名式典の開催、愛称の看板、標識の整備を行うことを考えています。加えて、東南アジア便や大型の航空機を円滑に受け入れるため、滑走路延伸に向けた調査分析を実施したいと考えており、空港の利用促進について、2024年度の当初予算案を2023年度の当初予算よりも増額して本議会に提案しているところです。
 引き続き、熊野白浜リゾート空港の活性化について、官民が連携して取り組んでまいります。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 まだまだインフラ整備が必要な中で、組織の強化を図りつつ、空港関連予算は別枠として、飛躍的に伸ばしていただけるよう要望しておきたいと思います。
 続きまして、大項目の4、海外の友好都市との交流についてお伺いします。
 1月14日から20日まで、和歌山県議会日印交流促進に関する議員の会、インド訪問に参加させていただきました。
 インドといえば、昨年3月には総人口14億5000万人で中国を抜いて世界トップになり、著しい経済発展を遂げている国といったイメージがあります。国家レベルでは、2022年に国交樹立70周年を迎え、自由で開かれたインド太平洋のための不可欠なパートナーとされています。
 ジェトロ・ムンバイ事務所、在インド日本国大使館での詳しい説明を受け、インドの大きさ、強さを実感したところです。特にマハラシュトラ州副首相や観光大臣表敬では、心からの歓迎を受け、この10年の交流の成果と今後へのさらなる期待を感じました。
 和歌山県における海外の友好都市との現状と今後の目的、方針について、知事にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 現在、和歌山県では、地方政府を提携先とした六つの友好提携と、交流分野を特定し、中央政府などを提携先とした18の覚書を締結しております。
 友好都市との交流というのは、場合によっては形式的なものになることもあるわけですけれども、人的交流や経済交流等の分野での互恵的でかつ本当の意味の実質的な交流となるよう、県としては取り組んできております。特定分野の覚書を締結するに当たりましては、相手方を国あるいは国レベルの団体に限定することなく、一つでも多くの成果が得られるよう、地方自治体レベルとの交流も積極的に進めてきております。
 私も、一昨年就任してから、昨年は5か国行かせていただきましたが、これは本当にですね、海外との交流というのは一朝一夕にできるものでありません。今、インドのお話をされておりましたけども、本当にインドのマハラシュトラ州との交流というのは、歴代の国際課を中心とする和歌山県庁の担当職員の皆さんが20年、30年と築き上げられてきた人的な交流がベースにあるものと思いまして、私も若い頃、国際的な仕事をしていましたけれども、本当に頭が下がる思いであります。和歌山県は、日本の外務省からしても非常に国際的な交流が進んでいるというふうに評価をしていただいておりますことも今、御紹介をさせていただきたいと思います。
 ベトナム政府機関と文化及び観光に関する覚書、人材の送出し、受入れに係る覚書、タイ政府機関とビジネス及び投資促進活動を強化するための覚書、韓国・釜山広域市とワーケーションの普及及び推進に向けた覚書、これらが今年度実施できたところでありますけど、これらも全てこれまでの蓄積の下に行われたというふうに理解しております。
 今後は、県が優先的に動いた上で新しい交流を生むと、その際、常に和歌山県の中小企業を中心としたビジネスミッションも一緒に行っていただいておりますので、和歌山県の中小企業のビジネスチャンスの拡大にも資するものだと考えております。
 今後とも、こうした友好提携や覚書を通じまして、友好都市との人的ネットワークや信頼関係等をさらに深め、交流の実利を創出してまいりたいと存じます。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 御答弁ありがとうございました。
 私は、特に4日目のりら創造芸術高校と現地のGGインターナショナルスクールとの交流事業に合流させていただき、大変感動し、直接交流のすばらしさを実感いたしました。
 現在、国レベルでもインド人学生の日本への留学生数は1000人程度ですが、両国間で日本への留学生の増加について検討することで一致しており、このような取組が交換留学につながり、本格的な留学へと発展すればいいのではと思います。
 和歌山でも、農業や観光、医療、看護や介護などの分野で留学生の受入れが可能かと思いますが、今後の計画について企画部長にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 企画部長前 昌治君。
  〔前 昌治君、登壇〕
○企画部長(前 昌治君) 我が国が受け入れている留学生数は、2019年に過去最高の31万2214人でしたが、コロナ禍の影響で2022年には23万1146人に減少しています。国は、今後のグローバル社会を見据え、2033年までに留学生を40万人に増やす方針を示しています。
 和歌山県では、2023年11月1日現在、県内の4つの大学、一つの高等専門学校、5つの私立専修学校で留学生を受け入れており、その数は過去最高の650人となっております。留学生は、県内各教育機関で専門知識や日本語を身につけるのみならず、歴史や文化など和歌山県の魅力を理解しており、能力の高い留学生が卒業後に県内企業へ就職すれば、言葉や商習慣の壁があった海外との商取引を円滑に進めることができるようになるなど、人手不足が深刻化している県内企業にとって大変貴重な戦力となると考えています。
 このような考えの下、県では、知事をはじめ県幹部が友好提携国である中国、インド、インドネシア、ベトナム、タイ等を訪問する際には、県内の教育機関や企業の皆さんと一緒に現地の大学や日本語学校を訪問するなどして、日本に興味のある優秀な学生が留学先として和歌山を選んでもらえるような取組を実施しているところです。
 今後とも、覚書や友好提携の強みを生かし、引き続き友好提携国に対して本県教育機関等の紹介を進めるとともに、留学生の受入れを積極的に行っている他府県の事例も研究しつつ、県内教育機関等の意向も伺いながら高校生についても検討し、積極的に留学生の受入れを進めてまいりたいと考えております。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
 令和6年度の重点施策の中で、農林水産業、観光産業をはじめとする地域産業の強化が上げられ、人材確保のために外国人材が安定的に雇用される受入れ体制等を整備するとあります。
 我が国では、約30年前から、技能実習制度により外国人労働者を積極的に受け入れてきましたが、劣悪な職場環境や現地の送り出し組織への借金等で年間1万人以上が失踪者となるなど、大きな問題が発生しています。
 これらを踏まえた上で、技能実習制度は、今年、その目的を人材育成による国際貢献から人材確保と人材育成に変更し、技能実習と特定技能の制度改革によって、語学などの一定の条件を満たせば一家で永住も可能となる制度となります。
 このような流れの中で、県としては外国人材の受入れをどのような方針で進めていくのか、知事にお伺いします。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 県内産業の維持発展のためには、外国人材の受入れ促進は絶対不可欠であります。和歌山が就労や生活の場として、外国人材から選んでいただけるような環境を整備することが急務だと考えております。
 県では、友好関係にあるベトナムやタイの大学と連携して、現地でジョブフェアを開催するとともに、留学生など既に来日している方々を対象とした交流会、あるいは合同企業説明会などを開催することで、県内企業の魅力や本県で働くメリットの周知に努めてきております。
 来年度の当初予算案では、外国人材受入促進事業として、外国人材と企業をつなぐマッチング支援、相談対応や手続支援を行うサポートデスクの設置、受入れ企業が実施する職場環境整備への補助などにより、受入れ体制を構築する事業を提案しております。あわせて、これも来年度予算の提案の中で、生活に必要な日本語の学習支援を行うということで、外国人材の安定的な受入れ、定着を図ってまいりたいと存じます。
 その際に大事なことは、外国の人材を一時的な労働者不足の解消手段でありますとか、あるいは、とんでもないことですけれども、安い労働力として見るのではなく、あくまでも私たちの仲間として受け入れ、共に多文化共生社会の実現を図ることで、和歌山県全体の産業のみならず和歌山県民全体の活性化につなげてまいりたいと考えております。
 先ほど鈴木議員からも御指摘がありましたので、その一環として、例えば県立高校にアジアから留学生を受け入れられないか、3年間しっかり勉強していただければ日本語も達者になるでしょうし、県内に寮のある工業高校などがたくさんあります。寮がありますれば、そこに入っていただいて、例えば寮費や授業料を無料にすればアジアからも高校生の方が来ていただけるのではないか、そして資格を、例えば土木とか建築とか資格を取っていただければ、和歌山の県内の中小企業に正社員として就職していただけるようなことも考えられるのではないかということで検討をしております。
 これは、また再来年度の予算にできれば計上していきたいということで、来年度、検討してスタートさせたいと考えております。
○議長(濱口太史君) 鈴木德久君。
  〔鈴木德久君、登壇〕
○鈴木德久君 御答弁いただき、ありがとうございました。ぜひともよろしくお願いいたしたいと思います。
 みんなでしっかりと災害に備え、世界に開かれた和歌山をつくっていきましょう。
 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(濱口太史君) 以上で、鈴木德久君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 2番三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕(拍手)
○三栖拓也君 皆様、おはようございます。令和6年2月定例会の一般質問3日目、こうして登壇の機会をいただきました先輩・同僚議員の皆様に感謝申し上げます。
 昨年の6月定例会において、人生で初めて一般質問に登壇させていただきました。それ以来、4度連続して質問の機会を得られましたことは誠に光栄で、改めて伝統ある和歌山県議会の壇上に立たせていただいていることの重責を感じるとともに、和歌山県勢のさらなる発展のため粉骨砕身の思いで取り組んでまいります。
 令和6年は、大変な幕開けとなりました。前年に新型コロナウイルスの5類移行により、これまでの様々な規制から解放され、ようやく日本全体で明るい年を迎えたと誰もが思っていた矢先、元日の夕方に能登半島を大地震が襲いました。16時6分にマグニチュード5.5の前震、4分後の16時10分にマグニチュード7.6の本震が発生、震度7を記録しました。私たちの日常が当たり前のことではないと痛感したと同時に、日頃からの備えがいかに大切かを改めて肝に銘じることとなりました。
 この地震により、多くの貴い命が失われ、今もなお大勢の方が避難生活を余儀なくされております。お亡くなりになられた方に謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
 さて、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問をいたします。
 まずは、インド共和国マハラシュトラ州の訪問について御報告いたします。
 去る2024年1月14日から20日までの7日間にわたり、和歌山県議会日印交流促進に関する議員の会に所属する議員10名が新島会長を筆頭に、インドを訪問してまいりました。
 初日は、関西国際空港からシンガポール・チャンギ国際空港を経由して、インド・ムンバイへの移動となりました。関西国際空港では、海外からの旅行者が多く、コロナ禍以前のにぎわいが戻りつつあると実感しました。出国手続のアテンドをしていただいた旅行会社の方にも同様の感想を伝えたところ、「まだまだです。特に日本から海外へ行く方が少ないままなので、我々も危機感を持ってプロモーション活動をしています。」とのお話を伺いました。海外からのインバウンド需要に目が行きがちですが、日本から海外へ出かける方も増えなければ、旅行業界全体の完全な復活につながらないことを再認識いたしました。
 関西国際空港からシンガポールまで約7時間、シンガポール・チャンギ国際空港で2時間半の乗り継ぎを経て、さらに約6時間かけてムンバイ国際空港へ到着しました。日本との時差はマイナス3時間30分です。ムンバイへ到着したのが現地時間22時頃で、日本時間は25時30分ということになります。ムンバイ国際空港は、正式名をチャトラパティ・シヴァージー国際空港といい、マハラシュトラ州で英雄視されている17世紀のマラーター王国のチャトラパティ・シヴァージーに由来しているそうです。
 このように、インドでは、歴史や文化などを大切にしており、まさに国威発揚ともいえる仕掛けが町中に多く見られました。例えば、ムンバイ国際空港から宿泊先のホテルへ移動中、オレンジ、白、緑のインド国旗を模した電飾が道路脇に整然と並べられた美しい橋を通過しました。これは、バンドラ・ワーリ・シーリンクと呼ばれる海上高速道路で、市内の渋滞緩和のために海上へ橋を架けて建設された高速道路でした。まさにインドの経済成長を象徴するような景観となっていたのが印象的でした。
 前日の長時間移動の疲れに加え、時差ぼけによる体内リズムの変化により十分に睡眠が取れず、倦怠感を抱いたまま2日目の朝を迎えました。朝食後、ムンバイの歴史的な象徴であるインド門や、世界で唯一駅舎自体が世界遺産登録されているチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅を視察し、インド第2の大都市であるムンバイの活力を体感しました。町なかにはとにかく人が多く、車やバイクも圧倒的な交通量で行き交っています。この駅の利用者も日本とは桁違いに多く、1日300万人とのことです。ちなみに、日本一の新宿駅で1日60万人程度なので、その5倍ともなると想像を絶する混雑であろうと思われます。
 インドでは、人口推計の基となる国勢調査を10年置きに実施しているそうですが、2021年に実施予定だった国勢調査が新型コロナウイルスの蔓延により先送りになっており、2024年1月時点ではまだ実施されておりませんでした。インド政府の公式な発表ではありませんが、国連経済社会局の推計では、2023年4月末までにインドの人口は世界最多の14億2577万5850人に達したと報じられています。
 この日の午後は、マハラシュトラ州政府、ラフール・ナーベカル下院議長を表敬訪問しました。下院に到着した際、下院議長の面会まで少し時間に余裕があり、議会の議場を見学させていただけることになりました。定数は288議席あり、年3回の定例議会が開催されているそうです。このうち1回は、ムンバイではなくナグプールという別の都市で議会を開催しているとのことでした。マハラシュトラ州の面積は、北海道を除く日本の面積よりも広い計算になります。広大な行政区域において議会の開催地を変えることで、住民が行政に対して親近感を覚えるきっかけになっているのではと感じました。
 マハラシュトラ州の下院を後にし、次に向かった会場では、マハラシュトラ州観光大臣を務めるギリーシュ・マハジャン氏と面会をいたしました。実は、ちょうどこのとき、ムンバイでは1月20日から29日の10日間にわたるムンバイフェスティバルの開催を控えており、マハジャン大臣から新島会長に対して熱烈な参加要請がございました。視察日程の都合上、泣く泣く帰国の途に就かなければならない旨を伝えましたが、大臣は大変名残惜しそうな様子だったのが印象に残っています。
 この日の夕食は、ムンバイ市内のレストランでマハラシュトラ州政府関係者を交えた懇談会が予定されており、様々な意見交換をさせていただきました。料理はもちろんカレーを主とするインド料理です。多様なスパイスが感じられ、辛さが苦手な私でも大変おいしく頂くことができました。余談ですが、インドでは夕食の開始が20時が基本とのことで、全日程の夕食が20時開始となっていました。まだこの日は体内リズムが現地に慣れていない状態でしたので、日本時間の23時30分から夕食兼懇談会がスタートしているような感覚で、体力的にかなりハードな日程であったと思いますが、新島会長を筆頭に視察団一同、疲れを見せることなく精力的に現地関係者と交流を図ることができたことを御報告させていただきます。
 3日目は、午前中にマハラシュトラ州政府のファドナヴィス副首相を表敬訪問しました。ファドナヴィス副首相は、和歌山県にとって大変縁の深い方で、2015年に来県されて以降、日印交流の深化に大変御尽力いただいており、その功績をたたえて、2023年12月に高野山大学の名誉博士号を受章されておられます。会談の中で、濱口議長、新島会長から副首相に向けて受章のお祝いの言葉を述べられ、非常に喜んでおられた様子であったのを見て、和歌山県に対する深い愛情を感じました。
 その後、ジェトロ・ムンバイ事務所に移動し、駐在されておられる松永所長からマハラシュトラ州のビジネス環境について御説明をいただきました。ムンバイとプネは、通称Tier1都市と呼ばれるインド8大都市に数えられています。インド全体でもTier1都市を二つ有するのはマハラシュトラ州だけであり、インドの中でも重要な位置づけの州であることが分かります。実際に訪問することで、改めて和歌山県がマハラシュトラ州において和歌山県事務所を設置していることの意義と重要性がよく分かりました。こちらも余談になりますが、一通りの説明を聞いた後、ジェトロ・ムンバイの松永所長の御息女が鈴木德久議員の地元である田辺市本宮出身の方と御結婚されたとお聞きし、奇跡的な御縁に一同驚愕してムンバイ事務所を後にいたしました。
 ムンバイからバスで4時間かけて移動し、プネ市内のホテルに到着したのは深夜でした。インドでの生活には、食事や文化になじむことももちろん大事ですが、広大な面積を移動することに慣れることも大切な要素であると感じます。特にムンバイやプネといった大都市では、車とバイクの交通量がすさまじく、交通渋滞が日常化しており、危険な割り込みや追越しは当たり前で、交通ルールを守るという意識も希薄になっているようでした。プネへの移動は夜間でしたが、クラクションを鳴らす音が鳴りやむことなく、大喧騒の中、長時間揺られているだけで疲労が蓄積していく感覚でした。
 プネでの朝もカレーから始まります。この頃には、チキンや豆の定番カレーだけでなく、見た目だけで敬遠していたホウレンソウカレーなどにも手を出す余裕が出てきていました。結果として、私たちがインドで食べたカレーはどれもおいしく、日本人でも全く問題なく頂ける味であったと思います。
 その後、GGインターナショナルスクールにおいて、りら創造芸術高校との学校交流の模様を視察いたしました。りら創造芸術高校の皆様のパフォーマンスは、いつものように迫力満点です。学校内の講堂に集まった観客の生徒たちも拍手喝采で、最後の曲「ウイ・アー・ザ・ワールド」の合唱時には、壇上で、りらの生徒たちに交じってインドの学生たちが手を取り合いながら一緒に歌う場面もありました。文化や芸術を通じて交流することのすばらしさを再認識し、とても感動いたしました。
 次に向かったのは、日系企業の株式会社クボタのプネ工場です。プネ郊外に位置しているため、車で1時間ほどかけて向かいます。この日は、狭い道を通ることを考慮し、大型バスではなくタクシーでの移動となりましたが、先ほども述べたようにすさまじい交通量の中、文字どおり縫うように車を走らせているため、冷やりとする場面に数え切れないほど遭遇しました。日本での交通事情からは想像し難いですが、片側3車線の道路に常に5~6車線分くらいの車が殺到している状況で、合流時に安全確認のための減速という感覚もなく、常に数十キロのスピードで車線変更しながら走っていきます。なお、路肩も道として運用されており、うかつに停止することもままなりません。プネの町並みを眺める余裕がないまま、気づけば目的地へと到着していました。
 株式会社クボタのプネ工場は、正式にはクボタ農業機械インド株式会社、略してKAIといいます。KAIは、株式の60%をクボタ、40%をエスコーツ社が保持するクボタ農機のインド法人です。エスコーツ社は、インドの地場企業で農業トラクターを販売していた会社で、2022年からクボタの傘下に入り、一体となってインドでのビジネスを進めています。
 インドの作付面積は広く、米や小麦といった穀物に関しては世界一を誇ります。しかし、生産量や作付単位面積当たりの収量において、特に米については中国や日本に及んでおらず、さらなる生産性向上が期待されています。農業ビジネスのポテンシャルが大きいインドでは、トラクターやコンバインといった農業機械の市場規模も拡大傾向にあり、これからの成長が期待できる分野とのことです。その背景として、インド特有の幅広いトラクターの用途があるとのことでした。トラクターを本来の目的だけではなく、トレーラーの牽引や建機用途に使ったり、収穫機と連結させて使ったりなど、独特の工夫を凝らして利用していました。
 プネ工場のある郊外から市内へ戻る際に、現地のコーディネーターからプネ市の副市長への表敬訪問ができることになった旨の連絡が入り、急遽予定変更し、プネ市役所へ向かいました。業務時間外にもかかわらず、快く訪問を受け入れていただいたことに感謝の意を表し、早速意見交換に入りました。プネ市内だけで人口が750万人程度あり、市内には延べ600万台の車両が走っているそうです。副市長は、インフラ整備も重要だが、交通マナー向上につながるソフト面の対策も併せて実施する必要があるとの認識を述べられておりました。
 日程5日目、この日は朝からデリーへ移動する必要があり、早朝4時起きでホテルを出立しました。プネ空港から国内線で2時間20分のフライトです。早朝でしたが、空港には多くの方がにぎわっていました。デリーは、年中スモッグが多く発生しており、視界不良による飛行機遅延が頻発しているようでしたが、幸いこの日は大きな遅れがなくデリー国際空港へ到着することができました。空港の外に出ると、ムンバイやプネとは違い、スモッグの影響で空がどんよりと曇っていて、気温も低く、上着なしでは肌寒いほどでした。我々が到着した日は、デリーの平均的なスモッグであったようですが、真下から30階ほどの高層ビルを見上げると、屋上付近はかすんで見えづらい状態でしたので、いかにスモッグが日常化しているかが分かります。
 この日は、デリーからアグラへ移動し、世界遺産タージ・マハルを視察しました。タージ・マハルの美しさについては、ここで幾ら語るよりも実際に一目見たほうが理解できる、まさに百聞は一見にしかずの壮観さでした。さすが世界遺産だけあり、タージ・マハル周辺は観光地の景観になっており、土産物を売る店が軒を連ねておりました。周辺環境への配慮として排気ガス規制を行っており、自動車は数キロ離れた駐車場へ置いて、近くまで電動の専用車による送迎を行っていました。また、敷地内への持込み品も厳しい規制があり、カメラ、パスポート、常備薬など、最小限の身の回り品のみ許可されていました。入り口付近のセキュリティーでライターなどを没収されている方も多く、世界遺産の環境を守るための保全意識が高いことがうかがえました。
 インドでの日程最終日は、タージ・マハル周辺のホテルで宿泊し、再び3時間半のバス移動でデリーへ戻ります。今回のインド訪問における最終日程となる在インド日本大使館を訪問しました。現地では、横手参事官をはじめ外務省職員の皆様からインドの現地情勢について御説明いただきました。インドの地政学、地経学的な重要性やこれからのポテンシャルに触れつつも、忘れてはならない社会開発課題についてもお話がありました。特にインドでは、人口の約半数が野外排せつをしており、世界全体でトイレがない10億人のうち半分がインド人であるとのこと、また、カースト制度の名残による貧困問題や水や空気の汚染といった負の側面に目を向けることも大切であるとの指摘には、経済成長にばかり意識が向いていた我々を現実に引き戻すかのような思いでありました。
 日本とインドは、2014年より、両国家の首脳による往来を継続し、世界的にも珍しいほどの良好な関係を維持しています。また、インドは日本の最大の円借款受け取り国であり、鉄道や道路といったインフラ整備や医療関連など、多くの支援を行っています。このような国家間交流は盛んである一方で、人的交流や学術交流は限定的であり、さらなる活性化が必要であるとも指摘されていました。実際、和歌山県には2022年度末時点で77名のインド出身の方がおられるとのことですが、インド全体の人口から見れば極めて寂しい数であろうと感じます。
 そんな中、横手参事官は次のようにおっしゃいました。「とりわけ和歌山県とマハラシュトラ州の関係性は日本の自治体でナンバーワン、外務省顔負けです」。先ほど岸本知事の答弁にもあったとおり、ここまでインドの州と日本の自治体で強い関係を構築している例はほかにないそうです。私たちも今回の日程を通じて、その言葉の意味するところを薄々感じているところでしたので、やっぱりそうだったのかと納得した心持ちになりました。これは、和歌山県知事をはじめ関係部署、とりわけ国際課の皆様による長年にわたる不断の努力があればこそで、一朝一夕になし得るものではありません。この場をお借りして、関係職員の皆様に改めて敬意を表し、厚く御礼を申し上げたいと思います。
 これまで築き上げてきた和歌山県とマハラシュトラ州の関係をさらに強固にし、インドとの人的交流や学術交流をより活発化できるよう、和歌山県議会日印交流促進に関する議員の会としても最大限の努力をするようお誓い申し上げ、令和6年1月14日から20日までのインド訪問の御報告とさせていただきます。
 続きまして、大項目二つ目の質問に移りたいと思います。
 県職員の旅費制度の見直しについてお伺いします。
 昨今、円安の進行や物価の上昇が進んだことで、出張時の旅費が旅費法によるところの規定額を上回っている状況になっています。支給額と実際の価格の差額を補うために自己負担が発生しており、こうした問題に対応するため、日本政府は、2月9日に国家公務員の海外出張の宿泊料等を定める旅費法の改正案を閣議決定し、今国会に提出されているところであります。改正案が成立すれば、令和7年の4月より、これまで定額支給であった旅費を実費支給に変更するほか、旅費支給に係る一連の業務を効率化することも目指すと聞いています。
 国家公務員が出張する際の旅費の計算方法や日当、宿泊料を定める旅費法は、1950年に制定されて以来、大枠は変更されておらず、今回の法改正により海外出張の規定が変われば、1984年以来41年ぶりとなり、国内出張の改定は、1990年以来25年ぶりになるそうです。
 和歌山に目を向けてみますと、地方公務員である県職員の旅費規程については、国の旅費法を基にして条例によって制度化していると承知しております。そのため、出張時の旅費は規定された定額支給であり、為替や物価高により生じている前述の課題は、和歌山県職員においても同様であると考えます。
 先ほど御報告したインドのマハラシュトラ州と和歌山県の関係を見ても、海外出張により相互交流を維持しながら築き上げてこられた成果は大きな財産です。海外のみならず国内出張においても、東京などでは宿泊料が高騰しており、数年前の相場とは大きく異なっていると実感します。十分な設備や立地のホテルを選べなかったり、差額を個人負担するというケースも少なくないと想定します。
 特に、対外的に和歌山県の魅力を広報、発信したり、外からの様々な投資を誘致するような、言わば営業部門のような役割を担う組織において、出張は日常業務の一環になっていることでしょう。日常業務を精力的に行い、任された職務を全うしようとする職員が業務に励めば励むほど、個人の持ち出しが増え、負担が大きくなるとすれば本末転倒です。
 そこで、総務部長に質問です。
 和歌山県においても、海外出張はもとより、国内の出張時に宿泊料金が高騰しているために、差額を自己負担したり、規定内の金額に抑えるために目的地から遠く離れた郊外へ宿泊したりと、実務上の弊害が生じていると想定します。県として、これらの問題をどのように考えているのか、お尋ねします。
○議長(濱口太史君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 総務部長吉村 顕君。
  〔吉村 顕君、登壇〕
○総務部長(吉村 顕君) 職員の旅費については、旅費法による国家公務員の制度を基本として、本県では、条例において制度の大枠や宿泊料の額等を定めるほか、規則等により制度を運用しており、必要に応じ改正を行ってまいりました。議員御指摘の宿泊料金の高騰については、規定額との間に顕著な差が生じないように、実勢価格の動向に注目しております。
 現在、国において、国内外の経済社会情勢の変化に対応するとともに事務負担の軽減を図るため、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案が今通常国会に提出されており、同法案は2025年4月1日が施行日とされております。
 県の旅費制度については、国の旅費法の見直しを踏まえて検討する必要があると考えており、まずは国会における法案審議の状況を見守ってまいります。
○議長(濱口太史君) 三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 総務部長に御答弁いただきました。
 旅費に限らず、出張時には何かと経費がかかるものです。職員の自己負担による持ち出しも多く発生していると想像します。和歌山県のためを思い、一生懸命働く職員の方に不利益が生じないよう、適正運用に向けた御検討をぜひよろしくお願いします。
 一方で、この件を一般質問で取り上げるに当たり、旅費関連の制度や業務を研究しましたが、制度を変えるだけでは解決しない部分もあるのだろうと感じています。経済的かつ合理的な旅費支給額の算出や申請内容の適正チェックなど、関連業務が煩雑になっており、制度だけでなく、業務プロセスの見直しや事務処理を最適化する仕組みづくり、いわゆるシステム化も併せて検討する必要があると考えます。この点も重ねてお願い申し上げたいと思います。
 それでは、次の質問に移ります。
 続いて、紀州材を活用したガードレールの整備状況についてお尋ねします。
 これまで、多くの先輩議員の皆様が紀州材の活用をテーマに県議会の一般質問でも取り上げてこられたと承知をしております。私も和歌山県議会の末席に名を連なっている者として、先輩方の思いに触れ、これを継承し、さらに発展させていく決意を持って今回の質問をさせていただきます。
 木材は、和歌山県が紀伊国(きいのくに)と呼ばれていた頃から当地を代表する名産でありました。豊かな森林を有し、良質な木材を多く産出する国ということで、木材の木に国と書いて木国(きのくに)とも呼ばれていたと伝えられています。
 その歴史は古く、古事記にも木国という名前が登場します。史実として日本書紀や万葉集などの文献に登場するのは、7世紀に斉明天皇が牟婁の湯を訪れた場面です。西暦657年、現在の白浜町にある牟婁の湯に有間皇子が訪れた際、そのすばらしさに深く感動し、都に戻り、斉明天皇や中大兄皇子に伝えたところ、早速翌年に斉明天皇は中大兄皇子らを連れ、牟婁の湯に行幸されたそうです。古くから日本三古湯として知られる白浜温泉の歴史は、この故事から始まっているわけでございます。
 私は、今回の一般質問を行うに当たり、幾つかの文献を調べてみましたが、我が県のルーツである木の国の木材と行幸に端を発する温泉文化、つまり現代の観光は、和歌山の歴史を語る上で避けることのできないキーワードであると感じているところでございます。
 さて、和歌山県では、平成29年より木材利用の一層の利用推進を図るため、景観に配慮する必要のある箇所において、原則、木製ガードレールを使用しています。県が令和4年12月に改定した公共土木工事木材利用マニュアルによりますと、木製防護柵工、いわゆる木製ガードレールを採用する箇所として以下の四つを上げています。1、国立・国定公園及び特定景観形成地域内等の道路、2、観光スポットが集中しているエリア内の道路、3、点在する観光スポット等近辺の道路、4、観光スポットが集中しているエリアまでのアクセス道路。
 白浜温泉をはじめとする多くの観光スポットを抱える白浜町においては、そのエリアまでのアクセス道路である県道南紀白浜空港線や白浜温泉線などで木製ガードレールへの切替えが進められており、観光で来られる県外のお客様はもとより、地元の住民からも歓迎の声をよく耳にするところです。やはり観光地の景観を整備し、統一感を持たせていくことで、和歌山を訪れたお客様の満足度を上げるといった観点からも、きのくに和歌山らしさが最もよく伝わる紀州材を使ったガードレールの存在は非常に大きいものであると考えます。
 また、和歌山県は、紀州材とはどういう木材であるかを紀州材認証システム実施要綱において定義しています。その該当部分を引用しますと、以下のような記載がございます。「この要綱において『紀州材』とは、和歌山県内の森林で生産され、和歌山県内で製材加工された木材及び木材加工品とする」、そして、その木材の生産者や証明者のみならず、流通者、使用者までを明確に定義しており、本要綱に基づき認定された木材だけが紀州材を名のることができるというものです。きのくに和歌山のルーツとも言える紀州材の価値を高める取組を継続されてきたことに、改めて敬意を表したいと思います。
 このように、これまで取り組んでこられた紀州材のさらなる活用、とりわけ木製ガードレールの整備については、日本のみならず海外からも多くの観光客を迎え入れる観光地において、きのくに和歌山らしい景観を整備し、観光振興につなげていくための大きな武器にもなり得ると考えます。
 そこで質問です。
 南紀白浜空港線における紀州材を用いた木製ガードレールの整備状況及び今後の展開について、県土整備部長にお尋ねします。
○議長(濱口太史君) 県土整備部長福本仁志君。
  〔福本仁志君、登壇〕
○県土整備部長(福本仁志君) 議員御案内のとおり、公共工事における木材利用については、景観だけでなく、環境保護や観光振興に寄与し、脱炭素社会の構築にも資するものと認識しており、公共土木工事木材利用マニュアルに基づき、国立公園や観光スポットが集中しているエリア内等の道路において、これまでに約12キロメートルの木製ガードレールの整備を行ってきたところです。
 御質問の県道南紀白浜空港線については、国道42号と白浜温泉などの観光スポットが集中するエリアを結ぶアクセス道路であることから、田鶴交差点から藤島北交差点までの間において、2021年度から老朽化した鋼鉄製のガードレール約2.5キロメートルを木製ガードレールに更新する工事を進めており、今年度実施した374メートルを含め、約1.3キロメートルが完了したところです。
 そのほか、世界遺産である高野山周辺の国道370号や西有田県立自然公園内の県道有田湯浅線などにおいても木製ガードレールの設置を進めているところであり、引き続き、公共土木工事木材利用マニュアルに基づき、紀州材を活用した木製ガードレールの整備を推進してまいります。
○議長(濱口太史君) この際、暫時休憩いたします。
  午前11時29分休憩
────────────────────
  午前11時31分再開
○議長(濱口太史君) ただいま確認しましたが、震度2ということで、このまま本会議続行させていただきます。
 三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 次が最後の質問になります。
 くしくも今も地震が発生いたしましたが、まさに災害はいつ起こるやもしれません。災害発生時における火災などの2次災害への備えについてお尋ねします。
 冒頭に申し上げた能登半島地震においても、輪島市の観光名所「朝市通り」で大規模な火災が発生し、200棟以上が焼け、およそ5万平方メートルが焼失する被害が出ています。報道によると、火元となった住宅は、当時、ストーブやコンロといった直接火を扱う器具は使用しておらず、地震の揺れにより電気系統がショートするなどして出火した可能性が高いと見られています。輪島市の場合、古い木造の建造物が密集していたことや断水により消火栓が使えなかったこと、断水時も使えるはずの防火水槽への道路が寸断されてしまったこと、近くを流れる川の水が枯渇していたことなど、想定外の事態が相次いで発生し、初期消火が思うようにできなかったことが大規模火災につながったと見られています。
 和歌山県に暮らす私たちにとっても、決して人ごとではありません。これらの教訓を生かして南海トラフ地震に備えなければなりません。今回は、火災などの2次災害を防ぐための消防用設備の点検に関して取り上げたいと思います。
 消防法で定められている防火対象物のうち学校、病院、旅館等、不特定多数が利用する施設は、消防用設備の定期点検と報告が求められておりますにもかかわらず、県内の消防用設備点検について調査をしたところ、2022年3月31日時点での消防用設備点検の報告率は、全国平均で53.5%と低水準となっており、その中でも和歌山県は43.5%にとどまっていることが分かりました。
 消防用設備が正しく作動しないことにより、火災発生時に被害が拡大することはもちろん、地震などの災害時も火災による2次被害をもたらすことにつながることから、災害対策の観点からも平時の点検を確実に実施することが急務であると考えますが、これらの状況を改善していくに当たって、県としての所見をお尋ねします。
○議長(濱口太史君) 危機管理監福田充宏君。
  〔福田充宏君、登壇〕
○危機管理監(福田充宏君) 議員お示しの県内報告率が43.5%と低い要因は、全ての防火対象物のうち、消防設備士資格がなくとも所有者等が自ら点検できる小規模な防火対象物が全体の約8割を占め、その報告率が36.8%と低いことにあると考えております。
 これらの施設は、例えば消火器のみ設置義務のある小規模飲食店などであり、総務省消防庁は、その対策として2020年3月からスマートフォン用点検アプリの提供を開始し、点検や報告書の作成をデジタル化することで報告率向上を促進しているところです。また、報告の受理や指導等は、市町村の消防本部の所掌であり、個々の消防本部においても立入検査や電話による報告の呼びかけなどの取組が行われており、報告率は徐々に向上する傾向にあります。
 しかしながら、報告率がいまだ低い状況にあることから、県としては、点検アプリの利用についてホームページを通じて呼びかけるとともに、県内消防本部に対して、全国で成果が出ている優良な取組事例を情報提供するなど、報告率が向上するような働きかけを行ってまいります。
○議長(濱口太史君) 三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 今回、火災について取上げさせていただきましたが、災害については、今回の議会でも多くの議員さんから質問が出ているとおり、県民の関心も非常に高まっていると思います。災害に備える取組を多角的な視点でチェックしていくことが重要だと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 以上で、私の一般質問を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(濱口太史君) 以上で、三栖拓也君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時36分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(中本浩精君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 31番藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)
○藤本眞利子君 皆さん、こんにちは。
 能登半島で大変な災害になっておりますが、私の身内も能登半島で牧場を経営している身内がいまして、壁が壊れたり、それから、そこで使っている機械が壊れたりと、なかなか生活の再建までいかないというふうな状況を聞いておりまして、これからの支援をどんなふうにされていくのかなというのは、大変注意深く見ているわけですけど、今回も議長のお許しをいただきましたので、一般質問させていただきます。
 まず、こども基本法についてお尋ねいたします。この問題に関しては、さきの議会、今議会でも先輩・同僚議員より質問されていますが、大綱が出され、いよいよこども計画を作成しようという段階で、よりよい計画にしていただかなければという思いから、何点かお聞きしたいと思います。
 皆様御存じのように、こども基本法は、令和4年6月成立、令和5年4月に施行され、子供施策を社会全体で総合的かつ強力に推進していくための包括的な基本法として示されました。今までの子供に関する法律とは一線を画するような法律となっていると認識しています。それは、このこども基本法の理念が国連の子どもの権利条約の考え方に基づき、それを生かされたものとなっているからです。
 子どもの権利条約は、1989年に国連で採択され、30年以上が経過しています。日本は1990年9月21日に署名、1994年4月22日、世界で158番目に締約国となりました。子どもの権利条約の考え方は、子供は権利の主体であるとの捉え方をしているのが特徴です。子供は弱くて大人から守られる存在という考え方から、それだけではなく、子供も一人の人間として人権を持っている、つまり権利の主体であるという考えに大きく転換させた条約です。
 その上で、子どもの権利条約には四つの原則が示されています。一つ、差別の禁止、全ての子供は、子供自身や親の人種や国籍、性、意見、障害、経済状況など、どんな理由でも差別されず、条約の定める全ての権利が保障されます。二つ目、子供の最善の利益です。子供に関することが決められ、行われるときは、その子供にとって最もよいことは何かを第一に考えます。三つ目、生命、生存及び発達に対する権利、全ての子供の命が守られ、持って生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。四つ目、子供の意見の尊重です。子供は自分に関係ある事柄について自由に意見を表すことができ、大人はその意見を子供の発達に応じて十分に考慮しますとしています。
 30年以上も前にこのような4つの原則を示していることは画期的なことだと捉えています。日本の法律もようやく追いついてきたとの印象です。今回のこども基本法の基本理念の条文と照らし合わせてみると、子どもの権利条約が十分に生かされていると感じます。
 まず、こども基本法の基本理念の第3条に、1、「全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること」とあります。差別を禁止しています。
 二つ、「全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること」とあり、子どもの権利条約にある生命、生存、発達に対する権利が生かされています。
 三つ目、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること」。
 4、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」としています。最善の利益、意見の尊重がしっかりと明記されています。
 このように、こども基本法に示されている理念が果たして教育の現場や福祉の中で生かされているのかといった点検が必要になります。
 そこで、何点かお伺いします。
 まず、こども基本法が成立する以前は、子供を権利の主体として捉え、子供の権利に関する条例を市町村で制定しようという取組が行われてきました。
 2001年に成立した川崎市子どもの権利に関する条例は、条例案づくりをそれこそ市民──大人、子供参加で行っており、200回を超える会議を開くなど、大変な作業を経て成立させたものです。市民や子供たち、研究者、職員等が子供の権利について真剣に語り合い、得ることの大きな取組であったとお聞きしています。組織体制として、学識経験者や市民団体代表などから成る子ども権利条例検討連絡会議と、その作業委員会に当たる調査研究委員会を立ち上げ、検討の過程の会議や資料等全てを公開にして、話合いを進めたと聞いています。また、施策は、教育、福祉、医療等幅広い分野に分かれていたため、庁内の推進体制として関係部局幹事会を設けるなど、丁寧な作業を進めていったそうです。
 その中でも特筆すべきは、調査研究委員会の中に子供委員が構成メンバーとして参加したことです。また、条例案を子供の立場から検討する場として、公募による小学校高学年から高校生までの30人から成る子ども委員会が組織され、学習会をはじめ様々な立場の子供の意見を聞く集会や、公募市民の皆さんによる研究や話合いが行われたと聞いています。そのような丁寧な手順を踏んで、2年越しに条例が制定されました。
 そこでお伺いします。
 今回、こども大綱が示され、県では、こども計画を作成するための準備に入っているとお聞きしています。タイムスケジュールも示され、来年度中にも計画を示されると聞いていますが、今申し上げたように、こども基本法が十分に生かされるためには、子供や県民の皆さんの周知と理解が欠かせないものと思います。特に、当事者である子供の意見が尊重されなければなりません。現在進められようとしている計画づくりについては、幅広い分野からの大勢の皆さんの御意見を聞かせていただくようにしてほしいと思います。
 また、子供に関わって活動を続けておられる皆さんからの意見も貴重です。こども基本法に基づいた、本当に子供たちの最善の利益が優先される、そういった計画をつくり上げていってほしいのです。大綱に沿った計画を県民参加、子供参加で進めていけるよう再検討を提言しますが、子供の意見聴取について、県こども計画に関し、子供から意見を聞く仕組みについて、県はどのようなことを予定しているのか、知事に答弁をお願いします。
○副議長(中本浩精君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 和歌山県では、2025年度から2029年度までを計画期間と定め、県のこども計画の策定を予定しております。
 計画の策定に当たりましては、今年度実施いたしました子育ての意識調査、結婚に関する意識調査、子供の生活実態調査などのほかにも、子供や若者、子育て当事者の皆さんから直接意見をお聞きする機会を設けることとしております。具体的には、小学生、中学生、子供・若者に関係する団体の皆さんへのヒアリング、それから、公募した子供さんや若者のモニターへのアンケート調査など、できる限り広く直接子供さんの声を聞くように取り組んでまいります。
 また、県のこども計画について審議する審議会を設けますけれども、その審議会の委員には、公募により、子供、そして若者、さらには子育て当事者、それぞれに委嘱をお願いする予定にしております。
 また、計画の審議を行う過程におきましても、子供や若者の意見反映の仕組みづくりや社会形成の支援について、具体的にどうしていくべきかということを議論する予定でございます。
 子供からの意見聴取は特に重要と考えており、こども計画策定過程だけでなく、今後、県として子供に関する施策を策定する際には、その都度、当該施策の対象となる子供から意見をお聞きし、その意見が反映できるような仕組みづくりをつくっていくよう努力いたしますので、藤本議員の御指導もよろしくお願い申し上げます。
○副議長(中本浩精君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 こども計画、審議されるこども施策審議会、計画づくりを進めていくということです。知事の御答弁にもありましたように、本当に大勢の皆さんの御意見をいただいて、十分に議論を尽くしていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
 次に、こども基本法では、全ての子供たちに教育を受ける権利がひとしく与えられるというふうにあります。果たして今全ての子供たちにその権利がひとしく与えられ、生かされているのでしょうか。
 皆様御存じのように、教育現場では様々な課題が山積しています。文科省調査による令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果によると、いじめ、暴力行為、不登校児童生徒、自殺する児童生徒の数は、いずれも昨年度よりは増加しており、ここ近年はこれらの数は右肩上がりに増加してきています。
 これらの問題は、国も対症療法的に対策を講じていますが、解決に至りません。それどころか、どんどん増加しています。私は、今の教育制度の中に、子供たちを苦しめている原因があるように思います。このことの根本的な問題解決のために、こども基本法を生かしていただきたいと願うものです。
 現在、教育の形態は多様化しており、公的な学校や私学で学ぶ子供以外にも、フリースクール、インターナショナルスクール、民族教育学校等々で学ぶ児童生徒がいます。また、和歌山県内にも外国からの子供たちも増えています。日本語習得の支援も十分とは言えません。また、それぞれの国の事情があるため、進学に苦慮している子供たちもいます。
 先頃、フリースクールで学ぶ子供たちの様子を視察させていただきました。紀の川市にあるフリースクールでは、シュタイナーの教育方針に従って学習が進められており、少人数のクラスではありましたが、子供たちも本当に生き生きと活動していました。
 また、このフリースクールは、公教育でなじめない子供たちの受皿の一つにもなっていますし、わざわざ他府県からフリースクールを選択して通う子供たちも現れています。
 こども基本法の中では、全ての子供について、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける権利がひとしく与えられると明記されています。教育基本法の精神にのっとりとありますように、第4条にも、全ての国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける権利を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地によって、教育上差別されないとあります。ここでは、教育上は差別されないと明記されています。
 しかし、第6条の法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができるとしているため、先ほどの義務教育課程のフリースクール、インターナショナルスクール、民族学校等は学校とは認められていません。
 そのため、学校と認められていないところに通っている児童生徒に対しては、公教育に与えられている支援が一切ありません。教育を受ける権利がひとしく与えられているにもかかわらず、学ぶ場所によって子供たちへの支援に差があるのは、こども基本法の理念に反すると私は考えます。子供たちへの支援に差があることは、差別ではないでしょうか。犠牲になるのは、公教育では才能や能力を発揮することが難しい子供たちなのです。
 そこで知事にお伺いします。
 こども基本法には、教育を受ける権利がひとしく与えられることとあるにもかかわらず、学ぶ場所によって子供たちの支援に差があるのは、こども基本法の理念に反すると考えます。また、こども基本法には、子供の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されることとあります。自分で教育の場を選択した子供たちが不利益を被ることのないようにしていただきたいと思いますが、教育を受ける権利について、知事の見解をお伺いします。
○副議長(中本浩精君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 私自身も、今、藤本議員がおっしゃった教育基本法の精神にのっとり全ての子供が教育を受ける機会をひとしく与えられるべきであるということは当然のことであると考えております。そして、学校で学ぶことができない不登校の児童生徒が学校外の場、例えば、今、藤本議員が御視察に行かれたフリースクールなどで学習や体験活動などを行っている場合があることも承知しております。また、そのような場が子供の成長や子供の発達にとって大変大きな役割を果たしているということにつきましても認識をしております。
 したがいまして、来年度予算におきまして、新たにフリースクール等に通う不登校児童生徒の調査費用を提案させていただいているところでございます。また、フリースクール等での学びが在籍校の教育内容に照らして適切と判断される場合には、公的な教育支援センター等の場合と同様に、在籍校での出席扱いや学習評価を行うなど、子供の学習に不利益を生じないようにも行っているところであります。
 今後とも、子供を取り巻く状況や学びの多様性に関する制度や、あるいは社会通念の変化に応じまして、教育委員会が柔軟に教育施策を検討し、対応していくよう、共に考えていきたいと思っております。
○副議長(中本浩精君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁いただきました。
 全ての子供が教育を受ける機会をひとしく与えられているというふうに答弁いただきました。
 しかし、現実は、公立学校で学ぶ子供たちとそれ以外の子供たちへの教育には、支援に格差があるわけです。全ての子供が教育を受ける機会がひとしいというのであるならば、どの場所でも学ぼうということの格差があってはならないというふうなことではないでしょうか。子供の学びの多様性を認め、こども基本法にある理念が生かされるよう柔軟に教育施策を検討し、対応していただけるように強く要望いたします。
 次の質問に行きます。
 次に、2022年、国連は障害のある子供とない子供を分離する教育をやめるよう日本政府に勧告しています。全ての子供たちが共に学ぶインクルーシブ教育を進める必要があると指摘しています。多様な子供たちが地域の学校に通うことを保障する取組が必要だと思います。このインクルーシブ教育についての見解と今後の取組について、教育長に見解をお聞きします。
○副議長(中本浩精君) 教育長宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) インクルーシブ教育についてでございますが、障害のある子供もない子供も個別最適な学びが用意され、自らの意思で選択できることが大切であると考えます。
 障害のある子供の就学先を検討する上では、各市町村において、学校見学や体験入学を含めた必要な情報提供や相談を充実させ、合理的配慮による安心な学びなど、子供とその保護者が主体的かつ柔軟に選択できるよう取り組んでいます。
 また、就学先の決定や変更に当たっては、可能な限り本人の意思を適切に表明できるよう努めています。
 義務教育段階における合理的配慮に基づいた学びにおいては、通常の学級での特別な支援や通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校といったものがあります。これらの連続性のある学びの場がより充実するよう、カリキュラムの整理や教員の指導力の向上に努めています。
 あわせて、全ての学校において、障害のある子供と障害のない子供、さらに、地域の人たちが触れ合い、共に活動する交流及び共同学習を推進しています。
 県と市町村が一人一人の子供の学びと成長を保障するという理念を共有しながら、和歌山県としてのインクルーシブな特別支援教育の充実を図ってまいります。
○副議長(中本浩精君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 次の質問に行きます。
 こども基本法では、子供の意見表明、参加の権利が明記されました。しかし、学校現場ではどうでしょう。大声で走り回る理由や事情を聞かずに静かにしなさいと命令する、子供の声がうるさいと公園を廃止する、小学校の放課後の運動場を使えなくする、こんなことはよくあることです。子供の意見をしっかり聞いたのでしょうか。
 最近、ジェンダーフリーに対応するため、近年は制服が見直されています。校則の見直し等も子供たちの意見を尊重する流れに変えていかなければならないと思います。
 そこで、教育長にお伺いします。
 子供たちの意見表明、参加について、どのような取組を行っているのか、お聞きします。
○副議長(中本浩精君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 子供が自らの意見を表明し、合意に至るような経験や機会を設け、みんなで決定し、実践する学びを学校教育において大切にしています。
 小中学校では、児童生徒が運動会や体育祭の内容について意見を出し合い、運営にも積極的に関わる機会を設けるようにしています。また、地域住民との方々と防災活動などで考えを出し合い、よりよいものへとなるように取り組んでいます。
 高等学校では、生徒が学校生活を送る上での課題について、生徒総会などで意見を出し合い、解決を図ることが行われています。その結果、多様性、機能性に配慮した制服の導入や学校の環境整備、校則の一部改正等が実現しています。
 このように、課題を見つけて子供一人一人が主体的に考え、自らの意思を表明し、合意形成を図る力を育成することが豊かな社会を築いていくことにつながると考えます。
○副議長(中本浩精君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 ありがとうございました。
 次の質問に移ります。
 大きい項目の包括的性教育の推進についてということでお伺いしたいと思います。
 令和5年3月に県教育委員会は、17年ぶりに性に関する指導の手引を改訂しました。平成29年(2017年)ですけど、その議会で性教育の必要性について質問させていただき、その後、令和元年9月議会では、令和2年度中に完成させますという答弁をいただいたんですね。それが令和5年3月にようやく改訂ということですので、小学校1年生に入学した子供は既に中学校1年生ということになります。その間、和歌山県における性教育が十分に行われてきたのでしょうか。この変化の激しい中、7年間もの時間を取り返すことはできないんです。
 その間、急速にインターネットが普及し、子供たちの間にはスマホが浸透していく中で、SNS等を介した性犯罪被害が後を絶ちません。また、子供を取り巻く情報環境や状況そのものが激変しているにもかかわらず、性教育については、いまだ前近代的な、寝た子を起こすな論が学校現場で多大な影響を及ぼしています。
 今の若い人たちの意識を調査したものがあります。日本財団が2021年に、18歳の皆さんに性行為について調査したデータがあります。その中で、避妊方法に不安を感じたことはあるかとの問いに、女性73%、男性66.7%が「はい」と答えています。不安を感じているわけですね。また、避妊方法への不安を感じた際の相談相手は、過半数の回答者が「誰にも相談しない」と答えています。性に関する知識の乏しさに限らず、性に関する悩みや不安を本人だけが抱え込んでいることが示唆されます。
 公的教育機会が不足していることが影響し、避妊をはじめとした性に関する情報を求め、友人や先輩に尋ねたり、検索サイトで情報収集をしています。その結果、検索サイトで性に関するワードを検索すると、アダルトサイト等が上位に表示されてしまうことも多く、正確な知識を得ることが容易ではない現状があります。公的な教育機会の確保が喫緊の課題と考えます。
 日本では性教育が放置されてきたこの20年間、諸外国では包括的性教育が主流となってきています。ユネスコがセクシュアリティ教育に関する国際テクニカルガイダンスというのを2018年1月10日に改訂版が出されました。それには、包括的性教育を構成する10の特徴と8つのキーコンセプトに基づくテーマが書かれています。
 提言では、包括的性教育を義務教育段階での必修化を掲げ、次のように説明されています。「包括的性教育は、セクシュアリティの認知的、感情的、身体的、社会的側面についての、カリキュラムをベースにした教育と学習のプロセスである」。そして、包括的性教育を実施する上で特に重視すべき観点は、1、人権がベースである教育であること、2、お互いを尊重し、よりよい人間関係を築くことを目指す教育であること、3、健康とウエルビーイング、尊厳を実現し、子どもや若者たちにエンパワーし得る知識、スキル、態度、価値観を身につけさせることを目的とした教育であることと掲げられています。
 その上で、8つのキーコンセプトは、1、人間関係、2、価値観、人権、文化、セクシュアリティ、3、ジェンダーの理解、4、暴力と安全確保、5、健康とウエルビーイングのためのスキル、人間の体と発達、7、セクシュアリティと性的行動、8、性と生殖に関する健康に分かれており、一般的な性教育ではなく、生殖や性的行動、リスク、病気の予防に関する内容だけでなく、相互の尊重と平等に基づく愛や人間関係のような側面も含む形で示されています。
 そこで、教育長に性に関する指導の手引についてお伺いします。
 昨年度改訂した性教育の手引をどのように活用され、学校現場でどのように生かされているのでしょうか。また、性教育の事例集をさらに充実させていきたいとしていますが、どのような手だてをされているのですか、お伺いします。
○副議長(中本浩精君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) まず、長らく時間がかかりました性に関する指導の手引ですけれども、大変おわび申し上げたいと思います。それとともに、藤本議員にも審議会に入っていただき、貴重な御意見を賜ったこと、感謝申し上げます。ありがとうございます。
 このようなことで作ってきました性に関する指導の手引につきましては、教育委員会のホームページにも掲載しており、保健体育、特別活動及び総合的な学習の時間等、様々な教科で活用されているとともに、配慮が必要な学校行事の前など、機会に応じた指導の際にも参考とされています。さらに、性に関する指導の年間計画の見直しや校内研修会などで活用されています。
 今後、事例集を充実させる手だてにつきましては、刻々と変化する性の課題に対応し、学校現場での指導を充実するために、性に関する指導の研修会で他校の実践を共有します。それに加え、学校で取り組んだ性に関する指導事例について、ホームページを随時更新し、周知してまいります。
○副議長(中本浩精君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁いただきまして、今後、性教育というのは、性教育という捉え方ではなくて、子供たちの命に関わる基本的人権の問題として捉えた包括的な性教育というのをやっぱり進めていく必要があると考えています。
 そこで、教育長にこの包括的性教育についてお伺いしたいんですが、この包括的な教育を実践しやすい学校現場の環境というんですかね、その教育の計画も含めて、環境の醸成が必要だと考えますので、教育委員会として見解をお示ししていただきたいと思います。
○副議長(中本浩精君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 県教育委員会で作成をいたしました先ほど申しました性に関する指導の手引でございますが、これは、御指摘の包括的性教育の視点を踏まえたものとなっています。
 学校関係者を対象にした研修会では、性に関する指導の手引を活用した指導事例のほか、性加害や性被害、性の多様性をテーマにした研修を同時に開催し、性に関する指導について理解を深めました。また、性に関する授業を教員同士で参観することによって、指導力向上を図る取組を行いました。さらに、性に関する保護者の認識を高めるために、性の多様性をテーマにした人権学習啓発用パンフレットを作成しているところです。
 来年度は、生命(いのち)の安全教育推進事業を通じて、生命(いのち)の貴さ、自分や相手を尊重すること、性暴力の加害者や被害者、傍観者にならないことなどに焦点を当てた授業を実践校で行い、指導モデルを作成し、周知していく予定です。
 引き続き、児童生徒が直面する性に関する諸課題に対して、正しい知識を習得し、適切に意思決定や行動選択ができる力をつけられるよう取り組んでまいります。
○副議長(中本浩精君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 よろしくお願いいたします。
 次の3項目めに移ります。
 学校給食におけるジビエ食材の提供についてということで、質問させていただきます。
 県では、平成29年度に、学校給食での和歌山県産品利用拡大戦略アクションプログラムを策定、令和3年度まで5年間にわたって取組を進めてきました。
 この取組により、子供の頃から県産品に親しみ、食文化、農林水産業への理解が定着しつつあるということを踏まえ、県では、県産食材のさらなる利用拡大を推進する必要があるとして、令和4年度から8年度まで5年間、取り組むべき戦略をまとめた次期アクションプログラムを策定しました。
 その中では具体的に5項目に取りまとめ、戦略と目標を設定しています。ジビエに関してもしっかりと明記されており、戦略4の中では、調理講習の開催やジビエ衛生管理認証施設の拡大、学校給食へのわかやまジビエの流通ルートの確立等明記されており、学校給食への積極的なアプローチが示されています。
 近年は、教育の現場でもようやく定着し、栄養士を中心に新たなメニューを開発するなどの機運も盛り上がってきたところでした。全国に先駆けた取組に文科省のほうも一目置いており、視察をしていただいています。
 それが、アクションプログラムの年度途中にもかかわらず、令和6年度の施策の中でこのジビエの学校給食への提供が廃止されてしまいました。これまで県下の希望する9割の学校に6万食のジビエ食材を提供していただいてきました。それが廃止され、来年度は7000食と激減しています。それも関係者に何の相談もなく進められようとしています。
 ジビエの肉は大量に用意できないんですよね。事業者の皆さんが毎日、山で捕獲されるイノシシ等を一頭一頭丁寧に解体されて、ジビエに加工してくれています。そのイノシシも、大方は農家の皆さんが鳥獣害被害から農地を守るために設置したわなにかかったものなんですね。そのわなにかかったときに、そういった解体をしてくれる事業者の方に電話をするわけです。子供たちの給食を賄うために大量のジビエ肉を用意しなければなりませんので、事業者の方は100軒ぐらいの農家にお願いして、わなにかかったらちゃんと連絡して欲しいというふうにお願いをして、そういうことを進めてきたわけです。
 わなにかかったよと連絡が入りましたら、現地に赴いて、その場で処理をして、運搬し、処理場で食肉に加工するという手間をかけて、子供たちの給食用にと準備を進めていただいています。今既に準備を進めていただいているんですね。来年度は、本当にすぐに、1頭ずつしか取れませんので、連絡があって初めてそれを肉にするということが始まりますので、大変な時間がかかるんですね、ある程度の量をたくさんつくろうとしたら。
 それを今回、県の都合で来年は学校給食への提供は廃止です、7000食分だけお願いしますということを言われたばかりです。6万食の1割強の量で残りは5万3000食、このジビエ肉、どうしようとされているんでしょうかね。全く誠意のない、信頼を裏切るやり方だと言わざるを得ないと思います。これが岸本県政のやり方であるなら、県に対する県民の信頼は地に落ちると申し上げても過言ではないというふうに思います。
 しかもこの問題は、学校給食に影響を与えるだけではなくて、鳥獣害被害を防止する上でも大きな影響を及ぼすことになります。農家が設置したわなにイノシシがかかったとしても、需要がなければ、イノシシは穴を掘って埋められるか、その場に捨て置かれます。捨て置かれたイノシシはどうなると思いますか。子供たちに提供するものだと思うからこそ、農家の皆さんも協力してくれていたんだというふうに思います。
 そこで農林水産部長に、学校給食向けジビエ食材の提供の廃止についてお聞きします。
 次期アクションプログラムでは、令和8年度までの計画となっていますが、施策を変更する理由をまずお聞かせください。また、このように県の都合で変更し、準備を進めていただいている皆さんに事前の連絡もせず、突然進めるやり方について、どう思われるのかお聞きします。
○副議長(中本浩精君) 農林水産部長山本佳之君。
  〔山本佳之君、登壇〕
○農林水産部長(山本佳之君) 学校給食向けジビエ食材については、児童生徒たちに喫食する機会を設けることで、わかやまジビエの普及、消費拡大につなげることを目的として、2017年度から提供しています。
 その間、市町村や学校で独自にジビエのソーセージやコロッケ等を給食に取り入れる取組も始まり、利用拡大に一定の成果が得られたと考えています。
 そうした状況を踏まえ、限りある予算の中で新たな施策を考えていく上で、学校給食へのジビエ食材の提供については、来年度から廃止することとし、議員御指摘のアクションプログラムについても見直す予定です。
 なお、議員からお話がありましたが、今後、事業の改廃に当たって影響を及ぼす関係者には、できる限り事前に説明を行うなど、誠意ある対応を心がけてまいりたいと考えています。
○副議長(中本浩精君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 知事にお聞きします。
 本年度は岸本県政のカラーを出した当初予算というふうになっています。それがこのようなことならば、本当に県への信頼がなくなってくるんじゃないかと思います。学校給食へのジビエの提供も、提供していただく事業者の皆さんの努力なしには成り立たないんです。都合のいいときには使って、都合が悪くなったら切り捨てる、そんな県政でいいのでしょうか。県の施策を支えていただいているのは、県民の皆さんです。この問題についてはこのままでは納得できませんので、知事の見解と今後の見通しについてお聞きします。
○副議長(中本浩精君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 御質問にお答え申し上げます。
 少し藤本議員におかれましては、現状についての正確な理解をいただいているのかどうか、少しまた御議論をさせていただければと思いますけれども、わかやまジビエはこの間、本当にこれまで職員の皆さんの御努力もあり、あるいは関係者、それから特に飲食店の皆さんの御努力もありまして、和歌山のジビエについては大変な普及を行うことができております。
 もう本当に10年前に比べますと、ジビエというのはもう定着しておりまして、それでも私どもは引き続き、例えば、わかやまジビエフェスタというようなことで積極的に広報宣伝をしております。きいちゃん食堂でも私も食べさせていただきましたけれども、ジビエをみんなで食べると、もう和歌山のいろんな飲食店、どこへ行きましてももう冬はジビエ、冬だけではありませんけどね、ジビエというのがもう完全に定着をしているというふうに私どもは考えております。
 ますますやるべきではありますよ、ありますけれども、行政としてどこまでやるのかということ、政策でありますから、政策効果がどこまであるのかというのは、我々は不断に見直していかなければいけないということでございます。そういうことの中で、年に1回給食をするのに、県がジビエの食材を無料で提供をさせていただいてまいりました。今、農林水産部長がお答え申し上げましたとおり、本当に子供たちにも定着をし、学校の給食でジビエを食べた子供たちが卒業し、社会に出てきております。その子たちが東京や大阪へ進学したり就職した場合も、ジビエに対する広報宣伝をその子たちがしてくれるようなお話も聞いております。
 そこで、今回、私どもとしては、給食費無償化との関係もありますので、無料で年に1回だけ提供するということの政策効果を考えたときに、そろそろこれはやめるということでよいのではないかというふうに政策を見直したわけであります。
 そして、ただし、これは大体冬に1回やっていただいていましたので、ちょうど10月から学校給食費が無償化になります。これは農林水産部あるいは教育委員会も含めまして、小中学校には年に1回これまでやっていただいていたジビエの給食はぜひ続けてくださいということはもちろんお願いしてまいるつもりでありますし、それは市町村ごとにそれぞれ、場合によってはうちは2回やりますよと、3回やりますよというところが出てきてもいいと思いますし、我々としては、給食でジビエを出していただくことはもちろんお願いをしてまいります。そのために、10月から給食費無償化というのもありますから、半分は県が出すということでありますから、そういうふうに徐々にグラデーションというか、徐々に徐々に政策を変えていくということはぜひ御理解をいただきたい。財源には限度があって、また新しい施策をしないといけないものですから、ちょっとずつ、ちょっとずつ変えていく。
 それから、これも当たり前のことで御存じとは思いますけれども、あくまでも入札でやっておりますので、その事業者の方が、入札の事業者の方がどなたになるか分からない段階で、しかも冬に提供するわけですから、これも県議会への皆さんへの対応もあるものですから、なかなか私ども2月の議会の議会運営委員会が始まるまでには、予算の内容というのは外に出せないということもありますので、例えば、冬に提供していただくジビエについて、今3月でございますので、3、4、5、6、7、8、9、10、大分間もございますので、突然ということでもなかなかないのではないかというふうにも考えられます。
 少なくとも、私どもとしては、無料で食材を提供することはしないけれども、引き続き、同じような量は学校給食で使っていただくよう誠心誠意努力していきたいと考えております。
 さらに申し上げますと、出前授業やわかやまジビエフェスタ等で県民にジビエの活用促進を引き続きしてまいりますし、特に今、首都圏で私ども相当広報宣伝もしておりますので、今まで以上に令和6年度、和歌山のジビエの食材が売れますような努力はもちろん私どもさせていただくつもりでありますし、実は、豚コレラの影響もありまして、イノシシのお肉が去年なんかでありますと、需要と供給のバランスを考えたときに、実はなかなか供給が追いつかないというような場面もあったように伺っておりますので、ともかくトータルで考えて、これまで一生懸命ジビエの提供をしていた皆さん、私も何度か視察に参っております。そういう皆さんと協力して、その方々がお困りにならないようには、私としてはしっかりとやっていきたいと思いますので、ぜひ、藤本議員におかれましては御理解を賜りたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
○副議長(中本浩精君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 進め方が誠意がないと言わせていただいているんですよ。しかも、準備しなくちゃいけないことはもう十分御存じだと思うんですね。そのつもりで準備を始めていくわけですよね。そのことをもう少しせめて半年ぐらい前からでも、少し今回は、いや、入札のことを言っているんじゃないんですよ。入札する方も、そういったジビエの肉を処理して加工してくれているところから、まあ言うたら仕入れるわけですよね。それを和歌山県の中で、そういうことをやってくれている人がいることももちろん御存じなんですよね。それがそこへ、お肉屋さんですか、入札に応じた一ところに肉が集まってくるわけです。そのことをもう少し丁寧に、関係者、そういったことは関係者、幾ら入札で落としたとしても、物がなければ、その事業者だって入札に参加できないわけですよね。そういうことです。ですから、私はこの廃止の進め方があまりにも誠意がないやり方だなというふうに指摘させていただいているわけです。
 同じ量です。同じ量を頑張って使っていくというふうなことをおっしゃっていただいたので、それはちょっと様子を見させてはいただきますけれども、給食を、しかも無料化になるから市町村にまたお願いして使ってくださいと言うのも、それどうなんでしょうかね。使ってほしいんですよ、だけどこのジビエの肉、実は高いんですよね。高いから県が少し補助して、ジビエを普及させるために予算を取っていたわけですから、これを市町村にお願いして果たして使っていっていただけるものかどうかは、どんなふうにしていただけるかは、また見させていただきますけど、ともかく、そのやり方がどうも納得できなかったなというふうなことです。
 県の事業は県民の皆さんにも大きな影響を与えます。そのことをしっかり考えて、今後も進めていただきたいなということです。
 知事は事業の見直し、今年指示されまして、今回こんなふうなことが起こっているんですけど、その事業の見直しに異議を挟むものではないんですよ。ただ、今回のように、県民の仕事とか生活とかに大きな影響を与えることについては、もうちょっと丁寧に親切に説明をしてあげないと、その人たち、生活がかかっていますからね。そういうことを申し上げてこの質問は、一応納得しませんけど、取りあえず終わりたいと思います。
 では、続いてすみません、最後の組織の新体制について、これは要望させていただきます。
 今年度、先ほど申し上げたように、組織の新体制が提案されて、岸本県政のカラーが色濃く出されたように思います。
 その中でも、私は、1番のこどもまんなか社会の実現、人権尊重の社会づくりのための体制強化という点では、強く共感を抱いているものです。本日も子供に関わる質問をさせていただきましたが、こども基本法が本当に子供たちのためになるものになることを願ってやみません。
 ただ、共生社会推進部の中のこども家庭局に、多様な生き方支援課が含まれていることに少し違和感を持っているわけです。昔で言う女、子供というので一緒ですかというふうな感じなんですよ。女、子供は社会的に弱いと捉えられてジェンダー平等推進がどうもこども家庭局に位置づけられているならちょっと心外だなというのと、多様な生き方支援班は、こども家庭局と同じ多様な生き方支援局というふうにできなかったのかなあというふうに感想を持ちました。
 また、共生社会推進部の中に人権局を位置づけていますけど、これまでは企画部の中で県行政の全般にわたって統括というふうな位置づけだったと思っていたんですが、それが一部局になって、県庁全体での人権行政というのを進めていくのに少し弊害がないかなというふうに、少し心配しています。
 でも、新体制になったことで、人権行政がさらに進められることを期待していますので、一言申し上げて参考にしていただければと思います。
 以上で、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(中本浩精君) 以上で、藤本眞利子さんの質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 37番中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕(拍手)
○中西 徹君 皆さん、こんにちは。
 議長の許可を得ましたので、早速ですが、一般質問を始めさせていただきます。
 まず、大項目1、地域経済活性化に向けた各種大会の誘致についてお伺いします。
 昨年、私は、全日本実業団男子ソフトボール選手権大会と日本薬剤師会学術大会へ参加とお手伝いを経験する機会がありました。両大会とも非常に盛況で、分かっている人数だけでも、それぞれ1000人を超える人が和歌山県内に宿泊をされるなど、県外からたくさんの方が和歌山へお越しくださいました。
 スポーツ大会や学術大会等を開催すると、和歌山に多くの人が集まります。それに伴って宿泊施設は満室となり、公共交通機関も使用され、飲食店の利用も増加し、昼食時にはお弁当が消費され、参加者はお土産を買って帰るといったように、大会当日だけでも経済効果は非常に大きいと考えられます。
 また、参加者に和歌山県をうまくアピールできれば、次は家族や友人と観光でぜひ来たいと観光客の誘致活動にもつながります。
 私も実際に参加者とお話しすると、和歌山は初めて来たけど、人が温かいし、酒もうまいし、食べ物もおいしい、今度ゆっくり観光で来たいなどの声をいただきました。
 日本学術会議のホームページに掲載されている学会名鑑には2000以上の学会が掲載され、大学病院医療情報ネットワークのホームページに掲載されている医療系の学術大会は、令和5年度で予定を含め国内で827開催されており、このうち和歌山県で開催されているのは4つのみでした。
 これらは全国で開催されている大会の一部の情報にすぎませんが、大会開催に当たって大きな負担が生じる主催者への支援制度を活用し、誘致活動を積極的にかつ継続的に行えば、和歌山県にとって大きな経済効果を生み出すことができると考えます。
 和歌山県観光連盟コンベンション開催助成金の活用状況について調べてみると、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って多くのイベントが中止となった中で、コンベンション開催助成金採択事業だけでも、令和2年度では、開催予定であった13件のうち9件が中止等になり、令和3年度は、そもそもの開催予定件数が少ない中で3件が中止等になるなど、地域に与える影響は大きかったと考えますが、コロナ禍前の令和元年と令和5年度を比較してみると、令和元年度は助成件数10件、参加人数9037人、令和5年度は年度途中の12月末点で助成件数11件、参加人数1万2285人となっており、コロナ禍前と比べても増加傾向にあります。
 また、令和5年度からは、大会等の開催に合わせ観光などを取り入れていただく仕組みのエクスカーション助成金の制度も設けられています。
 そのほか、和歌山県の文化・スポーツ振興助成事業の補助金を活用し、県内で開催された大会等の状況について、過去5年間の平均で調べてみますと、コロナ禍の影響で令和3年度は少なくなっていますが、文化振興事業補助金では年間平均約25件、国際交流事業補助金で約2件、スポーツ大会開催事業補助金で約7.5件となっています。
 今回の私の質問の趣旨は、経済活性化を目的にした質問となります。
 文化・スポーツ振興助成事業については、子供たちの教育面やスポーツ振興、文化振興などの趣旨で取り組まれている事業となり、主目的は経済活性化ではないと考えますが、私自身は関連してくることとして考えています。
 スポーツ大会や学術大会等は、先ほども申しましたが、県外から多くの誘客が見込まれ、宿泊のみならず、周辺観光やお土産購入など大きな経済効果があります。参加者に再訪していただくためのアピールにもつながり、さらなる経済効果も期待できます。
 各種大会は、地域外から地域内に資金を呼び込む着火剤的な存在になり、多くの人に和歌山県に来ていただき、さらに、地域で稼ぐ力を高め、地域にお金を落としてもらうことと、地域内に来た資金を循環させ、流出を防ぐことができれば、より一層経済活性化につながると考えています。
 そこで、地域経済活性化に向け、本県への各種大会の誘致活動などを率先して行うべきと考えますが、知事のお考えをお伺いします。
○副議長(中本浩精君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 今、中西議員御指摘のとおり、学術大会をはじめとするコンベンションや大規模なスポーツ大会などは、県外から大勢の誘客が見込まれます。したがいまして、周辺での飲食や宿泊、さらにはお土産物の購入といった経済効果もございますし、さらには来ていただいた方々に観光PRをするというチャンスもいただけますので、相当大きな効果があると考えております。
 和歌山県ではこのような大会の誘致を進めるために、例えば日本コングレス・コンベンション・ビューロー、さらには地方都市コンベンション協議会などにも参画をしております。それから、国際MICEエキスポへの出展もしておりまして、それらの場を通じた開催情報の収集、さらには、主催者のニーズや条件に応じた観光情報の提供に取り組むとともに、コンベンション開催助成金など、インセンティブとなる支援制度も活用させていただいて、これまでも積極的に誘致を行ってまいりました。
 また、一日でもより長く滞在していただけるように、いわゆるエクスカーションというものを設けることで、1日1泊延ばしていただくというような、そういうエクスカーションの開催に対する支援制度も今年度から実施をしております。
 引き続き、和歌山県への経済効果が最大になるように、戦略的に誘致に努力してまいる所存でございます。
○副議長(中本浩精君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 答弁ありがとうございました。
 薬剤師会で5000人ぐらい来られていたということなんです。スポーツ大会や学術大会等の開催支援については、今の県の担当はばらばらで、以前から私自身、経済活性化にという観点で、各課が連携して取組ができれば一番面白いだろうなという思いを持っておりました。
 そのような中で、今年4月からの組織改正で、企画政策局にスポーツ課も異動し、イベント系といいますか、大会系といいますか、そういうところが局同士で一緒になるということで、今後連携を取って相乗効果も生まれてくるんじゃないかなということを期待しております。
 次の質問に入ります。
 本県農業の発展についてお伺いします。
 新規就農者の確保に向けた取組について、本県の農業産出額は2022年で1108億円と全国29位の地位にあり、県土面積の約6.6%は農地が占めております。
 2020年農林業センサスによりますと、和歌山県の農業の根幹を支える基幹的農業従事者数は、2010年は約3万6000人となっております。2020年では約2万7000人でしたので、この10年間で約9000人減少しております。65歳以上の割合でも、2010年の54.1%に比べ2020年は63.9%と大きく割合が高くなっています。
 総農家数も約8500戸が減少しております。高齢化で農業をやめる方が年々多くなっており、農業を続けている方も高齢の方が多く見受けられ、若い方が農業を継いでいるという農家は決して多いとは言えません。実際に知り合いの農家からは、自分の代で農家は終わり、息子は農業を継いでほしいが会社を辞めてくれとはなかなか言えないなどの声も聞かれます。
 今後、農家数は、高齢化などの影響で必ず減っていきます。ただ、新規農業者数を見てみると、2010年は180人で2020年は160人となっており、この10年間、数字を見てみたんですけども、あまり動きはありませんでした。
 一方、認定農業法人数は2010年の54法人に対し年々増加しており、2020年は82法人で2022年は101法人と、初めて100法人を突破しました。大規模な法人などでは、農外から農業に興味のある人材を雇い入れ、規模を拡大したり、さらなる経営の発展を目指して、6次産業化に取り組んでいる例も見られます。
 そのため、農業産出額で見ると、2010年の1025億円に対し2020年は1104億円と、79億円増えており、販売農家数は約6000戸減っていますが、産出額は増えている状況です。単純に考えてみると、販売農家1戸当たりの平均金額が443万6000円から642万5000円に増えたことになります。
 ミカン農家の現場の声を聞いても、ここ数年は販売単価も安定しており、昔のような悪い話はほとんど聞かないようになりました。ただ、1戸当たりの耕作面積がもう限界になっているという若い農業者の声も聞きます。
 5年後、10年後の農業を考えたときに、農業がいろんな形でさらなる発展を遂げるには、やはり農業後継者を確保していくことが重要です。しかし、現実は農業者が減少傾向にあり、このまま推移していけば地域農業の崩壊につながりかねない状況であります。
 このような中で、国では新規就農者を確保するために新規就農者育成総合対策を実施していますが、地域農業の発展には幅広く農業後継者を確保することが必要と思います。
 そこで、県の新規就農者の確保に向けた取組について、農林水産部長にお伺いします。
○副議長(中本浩精君) 農林水産部長山本佳之君。
  〔山本佳之君、登壇〕
○農林水産部長(山本佳之君) 県では、新規就農者を確保するため、就農希望者について呼び込みから受入れ、定着までサポートする体制を整えています。
 まず、呼び込みについては、今年度、大阪府や東京都で就農相談会を8回開催し、169人の就農希望者に本県農業の魅力を伝えたところです。
 次に、受入れについては、各産地が得意とする品目で受入れ協議会を設置し、就農に向けた栽培技術の習得や農地の紹介など、実践的な研修を実施しています。例えば、イチゴで就農を希望する方には紀の川市の受入れ協議会を紹介するなど、現在、9つの受入れ協議会で26人が研修中です。
 また、定着については、国の給付金の活用や農機具の整備を支援するなど、受入れ協議会でサポートしています。さらに、来年度からは、これまで国の給付金の対象にならなかった親元就農者への支援を県独自で行う予定としております。
 今後とも、市町村やJAと連携を図りながら受入れ体制を強化するとともに、支援策を十分に活用しながら、幅広く新規就農者の確保に努めてまいります。
○副議長(中本浩精君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 答弁ありがとうございました。
 農業者の皆さんの声をしっかり聞いていただき、今回の予算のように、現場の声を支援に結びつけて予算化していただいているということなので、今後、引き続きよろしくお願いいたします。
 2番目、収益性の高い魅力ある農業の実現についてお伺いします。
 和歌山県の農業が発展するには、農業後継者を確保することは、先ほども言いましたが、重要であります。そのためには、収益性の高い農業にしなければなりません。もうからない産業には、なかなか人が集まらないと思います。魅力ある仕事がある、起業したいと思える和歌山県にすることが大事かと考えます。
 県においても、わかやま農業経営塾を実施し、経営戦略や組織戦略、財務戦略、マーケティングなどの講座も開催し、魅力ある農業にするための若手農業者の育成にも取り組まれていることは聞いています。
 ただ、新規就農者が全部一から土地を買って、機械を買って、貯蔵庫を建ててでは、リスクがあります。今後も高齢化で農家数が減る中で、すぐに使える畑や倉庫などの土地や建物も出てくると考えます。耕作放棄地になる前の畑を借り入れて耕作し生産量を増やしたり、農地を有効活用して副収入を得ることや、SNSなどの活用で自分の理想とする単価で独自販売ができるようになることが理想ではないかと考えます。
 和歌山県の第一次産業は、全国1位の生産額を誇るミカンをはじめ、梅、柿など全国に知られた果実がたくさん生産されており、高品質な作物生産やブランディングで差別化を図ることによる収益性の高い農業の要素は十分にあると思います。
 令和4年12月議会で、私はスマート農業の推進について質問しました。農業分野では、人手に頼る作業や機械操作などの熟練者でなければできない作業が多く、若者など新規参入の妨げになっている部分もあり、省力化や人材の確保、農作業の負担軽減が課題となっています。
 スマート農業は便利な側面が多くあるものの、実際に導入するに当たっては、施設園芸や果樹栽培でも条件が違ってきますが、まだまだ課題があり、活用される機械やサービスは一般的に高価格なため、小規模な農家では導入しても費用対効果に見合わないことが多いのが現状で、近隣の農家などでシェアリングできれば機械のコストを抑えることも可能となりますが、利用する時期が競合することなどが課題で、特に果樹栽培については活用方法が限られてくることなどがあります。
 和歌山県の農業が今後も発展していくために、収益性の高い農業を実現するための県の取組について、農林水産部長にお伺いします。
○副議長(中本浩精君) 農林水産部長。
  〔山本佳之君、登壇〕
○農林水産部長(山本佳之君) 県では、収益性の高い農業を実現するため、生産性の向上や規模拡大、高品質化、販売促進など、生産と経営の両面での取組を支援しているところです。
 生産面では、働きやすい園地づくりのための園内道整備やドローン等のスマート農機の導入をはじめ、災害に強い園芸用ハウスの整備や、高度な環境制御システムの導入、高単価が期待できる県オリジナル品種の早期産地化などの取組を支援しています。
 なお、議員御提案の高価な農業機械のシェアリングについては、導入コストの低減を図る観点から有効と考えておりまして、今後とも共同利用を推進してまいります。
 また、経営面では、農地中間管理機構による農地のあっせんをはじめ、農業法人設立につながる協業化や経営体の大規模化を図るため、機械や施設の導入、営業人材の確保、販路開拓等への総合的な支援を実施しています。
 さらに、将来を担う経営者を育成する農業経営塾を2018年度から開催し、これまで93人が修了しています。今後とも県の施策を総動員し、収益性の高い農業を実践する強い経営体を育成してまいります。
○副議長(中本浩精君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 よろしくお願いします。
 大項目3、地域公共交通政策についてお伺いします。
 地域公共交通計画について。
 地域公共交通は、国の直面する構造的課題である人口減少、少子高齢化、コロナ禍による生活様式の変容も加わり、利用者の減少、担い手の減少、公共交通難民の増加等の問題に直面しています。
 また、地域公共交通事業者は、収益が減少する中で、これまで以上にサービスの水準の向上を求められるという厳しい状況にさらされようとしています。
 2023年10月1日に、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律が全面施行されました。国土交通省では、改正法とあらゆる政策ツールを活用して、人口減少が加速する中で地域公共交通へのリデザイン──再構築を加速していくとされています。
 改正法では、創設、拡充された施策は、1、地域の関係者の連携と協働の促進、2、エリア一括協定運行事業の創設、3、ローカル鉄道の再構築に関する仕組みの創設・拡充、4、交通分野におけるDX・GXを推進する道路運送高度化事業の拡充、5、鉄道・タクシーにおける協議運賃制度の創設、6、社会資本整備総合交付金の拡充、新たな基幹事業の追加などです。
 私は、地域公共交通は、その市町村がまちづくりをどうするかを中心として考え、その中の重要課題の一つとして地域公共交通問題を取り入れることではないかと考えております。
 2020年の11月の地域公共交通の活性化及び再生に関する法律改正により、地域にとって望ましい公共交通の姿を明らかにするマスタープランとして、地域公共交通計画の策定が全ての地方公共団体に対し努力義務化されました。計画では、地域の移動手段を確保するために、住民などの移動ニーズにきめ細かく対応できる立場にある地方公共団体が中心となって交通事業者や住民などの地域の関係者と協議しながら策定することとされています。
 さらに、国では、2024年度末時点での政策目標として、地域公共交通計画の策定件数を1200件、地域公共交通計画を立地適正化計画と併せて策定した市町村数を400市町村、地域公共交通特定事業の実施計画の認定総数200件を目指しています。
 前回の質問時の県内市町村の地域公共交通計画の策定状況は4市でしたが、現在は9市町となっています。市町村の計画策定も進んできていますが、生活圏と市町村の区域は必ずしも一致しておらず、生活圏が複数市町村にまたがる場合も多いと思いますので、特に広域的な問題には、県が主体的に関連市町村と連携した計画が必要と考えています。
 前回、令和3年12月議会で質問したときは、県として地域公共交通計画を取りまとめるべく検討を進めているところと答弁をいただきましたが、広域的な課題への対応も含め、現在の計画策定の状況や、その内容について地域振興監にお伺いします。
○副議長(中本浩精君) 地域振興監赤坂武彦君。
  〔赤坂武彦君、登壇〕
○地域振興監(赤坂武彦君) 和歌山県地域公共交通計画につきましては、2022年4月に県が主導して、市町村、交通事業者、学識経験者、社会福祉協議会、老人クラブ連合会、高等学校PTA連合会など、公共交通に関わる様々な立場の方々で構成する和歌山県地域公共交通活性化協議会を設置し、2024年度からの5年間で実施すべき施策等について議論を進めてまいりました。
 策定に当たりましては、県内の公共交通の現状や県民、交通事業者、市町村及び観光客等を対象とした意識調査の結果などを地域ごとに分析し、地域に根差した公共交通の確保を図るための施策と目標を定め、パブリックコメントを経た上で、先月、協議会において承認されたところです。
 議員御指摘の広域的な課題への対応につきましては、複数の市町村をまたぐ幹線的なバス路線を維持するための支援や、鉄道とバスとの接続ダイヤの見直し、教育や観光など他分野と連携した利用促進の取組などを計画に位置づけているところです。
○副議長(中本浩精君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 先月、地域協議会で承認されたということです。広域的な課題も対応も計画に位置づけられているということですので、引き続き取組のほうよろしくお願いいたします。
 2番目、公共交通の利便性向上についてお伺いします。
 地域公共交通を計画的に整備していくことは重要であり、その際のキーワードの一つに、公共交通の利便性があります。タクシーで言えば、配車アプリなどの活用で対応できる部分もあれば、高齢者の方の要望で多いのは、免許返納後のバスやタクシーの割引特典など、世代によって利便性の考え方も違ってきます。
 コロナ禍でドライバーを引退された方も多くいるようで、インバウンドも戻りつつある中で、需要と供給のミスマッチが起こり、その対応として、ライドシェアを2024年4月から条件つきで解禁する方針と国も動いています。
 ただ、ライドシェアにしてもそうですが、キャッシュが基本で、県内のバスで考えても、いまだに小銭を用意して運賃を支払う必要がある路線もあり、特に外国人観光客にとって優しくない部分もあります。
 キャッシュレスが進んでいないと聞いています。さらに、地域の方々にとっても、運行本数が少なくて不便で使いにくいという話も聞きました。
 このように利用者が減少の一途をたどる公共交通機関をもっと使いやすくしていくことは、非常に大事なことと考えます。このような状況において、県が策定した地域公共交通計画において、利便性の高い公共交通を推進していくことについて、どのように位置づけ、どのように実行していくのか、地域振興監にお伺いします。
○副議長(中本浩精君) 地域振興監。
  〔赤坂武彦君、登壇〕
○地域振興監(赤坂武彦君) 公共交通の利便性向上につきましては、和歌山県地域公共交通計画において、誰もが利用しやすく魅力ある地域公共交通の整備を基本方針の一つとしており、公共交通のデジタル化や駅のバリアフリー化、ノンステップバスの導入推進などの施策を位置づけています。
 また、議員御指摘のキャッシュレス決済の導入につきましては、インバウンドをはじめとする観光客の増加にも対応するため、公共交通のデジタル化を推進する施策の一つとして、全てのバス・タクシー事業者への導入を計画目標としており、来年度の当初予算案においても必要経費を計上させていただいているところです。
 なお、計画の実行に当たりましては、県や市町村、交通事業者などの関係者が連携協力し、一体となって推進することとしており、毎年計画に位置づけた施策の進捗状況を確認しながら、着実に取り組んでまいります。
○副議長(中本浩精君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 答弁ありがとうございました。
 国で議論されているライドシェアについては、タクシー不足から始まっていると思いますが、これはもう私自身の考えといいますか、まず、タクシードライバーを確保することが重要なんじゃないかなと考えております。
 タクシードライバー確保のためには、賃金を上げることも必要ですが、公共交通の運賃価格は、公共の利益、国民生活に深く関わることから国の認可制度となっており、国が定めた基準の範囲でしか価格を設定することができず、運転手の賃上げにも影響が出ているということを聞きました。和歌山ではないですが、一部の地域では、タクシー運転手の最低賃金を守るために会社が相当の負担をしている事例もあると聞いております。
 公共交通の利便性の向上のためには、キャッシュレスの推進は重要です。事業者によっては、設備投資が大変厳しい状況のところもあると聞いております。そのことも理解した上で施策を考え、進めていっていただきたいと思います。
 また、持続可能なまちづくりのためにも、まちづくりと連携した県全体にわたる広域的な地域公共交通を整備していくことは、広域的かつ専門的課題に対して和歌山県が求められている役割と考えます。
 公共交通を普及し、持続することにより得られる経済的利益と社会的利益、健康増進などの利益を県民が享受して、どの地域も持続可能で豊かな未来となるよう県として取り組んでいただきたいと思います。
 最後、4項目め、脱炭素に係る県の取組についてお伺いします。
 地方公共団体における脱炭素について、地球温暖化対策の推進に関する法律では、都道府県及び市町村は、その区域の自然的社会条件に応じて温室効果ガスの排出の削減等のために、総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとされております。
 こうした制度も踏まえつつ、昨今、脱炭素社会に向けて、2050年二酸化炭素実質排出量ゼロに取り組むことを表明した地方公共団体もあります。
 岸本知事におかれましては、知事になる前から脱炭素に積極的に取り組む姿勢を感じました。また、脱炭素先進県を目指して、和歌山県は2030年までの温室効果ガスの排出量削減目標を現行の2013年度比30%から46%に引き上げることを決めております。
 これからです。私は、2050年カーボンニュートラルの達成に向け、県と市町村が一体となって地域脱炭素の取組を進めていく必要があると考えています。
 地域脱炭素は脱炭素を成長の機会と捉え、自治体、地域企業、市民など、地域の関係者が主体となって、今ある技術を適用して再エネ等の地域資源を最大限に活用することにより、防災や暮らしの質の向上の地域の課題も併せて解決するものです。
 国では、全国の先行例、模範となり、地域特性に応じた先進性、モデル性のある取組を脱炭素先行地域として2022年から選定しております。2025年度までに全国で少なくとも100か所選定し、脱炭素に向かう地域特性等に応じた先行的な取組を全国に広げることとしており、これまでに4回の募集がありました。全国36道府県において合計74地域が選定されており、和歌山県においても第1回の募集でかつらぎ町が、第2回及び第4回の募集で和歌山市が提案しましたが、残念ながら選定されず、いまだに和歌山県内で選定された市町村はありません。今は5回目の募集が予定されています。
 この先行地域に選定されると、地域脱炭素推進交付金による支援が受けられます。令和6年度の国の予算案を見ると、全体で425億2000万円となっていますが、脱炭素先行地域の選定は年々ハードルが上がっており、なかなか選定されることは難しいと聞いております。
 このような中、県において市町村の脱炭素がより一層推進されるよう、市町村の取組に対する支援をさらに強化していただく必要があると考えております。
 そこで質問です。
 令和6年度に組織再編を行うようですが、今後、市町村支援を含めて県全体の脱炭素の取組をどのように進めていくのか、環境生活部長にお伺いします。
○副議長(中本浩精君) 環境生活部長山本祥生君。
  〔山本祥生君、登壇〕
○環境生活部長(山本祥生君) 環境生活部では、2050年カーボンニュートラルの達成に向け、2024年度、環境生活総務課を脱炭素政策課に再編し、脱炭素推進班を設置するなど、脱炭素化に向けた推進体制を強化いたします。
 今後の取組については、脱炭素政策課が中心となり、産業部門や運輸部門、家庭部門など各部門の脱炭素を推進するとともに、県内各市町村の実情に応じた脱炭素の取組を県庁全体で支援してまいりたいと考えております。
 また、温室効果ガスの排出量は、消費ベースでは約6割を家庭が占めているという報告があることから、県民の皆様には脱炭素を意識して行動していただけるよう取組を進めてまいりたいと考えております。
 具体的に、今議会にお願いしております取組としましては、まず、いわゆるPPAを活用し、設置可能な県有施設へ太陽光発電設備の導入を行うほか、県有施設へのソーラーカーポート導入に係るポテンシャル調査や、公用車への電気自動車の導入等を行います。
 次に、県内の河川や水路、上水道施設等における小水力発電導入ポテンシャル調査を実施し、市町村における再生可能エネルギー導入に係る取組を支援します。
 また、市町村に脱炭素の先進事例を紹介するとともに、国の補助制度の活用や地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく地方公共団体実行計画の策定を支援してまいります。
 さらに、学校で脱炭素に向けて出前授業を開催するとともに、県広報紙やホームページ等を通じて、脱炭素に係る県民の皆様の機運の醸成を図ります。
 今後も、脱炭素先進県を目指し、全庁一丸となって脱炭素化の取組を進めてまいります。
○副議長(中本浩精君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 脱炭素先進県を目指し、全庁一丸となって取組をよろしくお願いします。そして、先行地域に指定されるような地域が出てくるよう県内市町村への取組支援を引き続きお願いします。
 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(中本浩精君) 以上で、中西徹君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時37分散会

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